説明

超音波送受波器取付具および超音波式流体計測装置

【課題】管壁への超音波送受波器の取付を容易とし、かつ超音波送受波器から管壁へ、あるいは管壁から超音波送受波器へと振動が伝搬することをより効果的に抑制することが可能な、超音波送受波器取付具および超音波式流体計測装置を提供する。
【解決手段】フランジ70を備えたケース52を有する超音波送受波器50を管壁80に設けられた穴82に取り付けるための超音波送受波器取付具100であって、弾性体で構成され、前記フランジ70を挟持することで前記超音波送受波器取付具100に前記超音波送受波器50を固定する第1挟持部11と、前記穴82の縁を挟持することで前記穴82に前記超音波送受波器取付具100を固定する第2挟持部15とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波送受波器取付具および超音波式流体計測装置に関する。より詳しくは、超音波を用いて流体の流量等を計測する装置およびこれに用いられる超音波送受波器取付具に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、超音波により気体や液体の流速を計測する超音波流量計測装置を開示する。同装置は、残響の短い超音波パルスの送受信が可能で、管路壁への振動の伝播を低減させることを目的とする。同装置は、側壁部の外側に設けた支持部と天部のない壁面に固定された圧電体を有する超音波振動子を設けている。また、側壁部の振動を低減する制振体と支持部を保持しうる挟持部を有する振動伝達抑止体を設けている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−159551号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、管壁への超音波送受波器の取付作業を簡略化することが可能な、超音波送受波器取付具および超音波式流体計測装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、超音波式流体計測装置において、計測対象となる流体が流れる管の壁(管壁)への超音波送受波器の取付作業を簡略化すべく、鋭意検討を行った。さらに、超音波送受波器から管壁へ、あるいは管壁から超音波送受波器へと振動が伝搬することをより効果的に抑制すべく、鋭意検討を行った。その結果、以下の知見を得た。
【0006】
ネジなどを用いて超音波送受波器を管壁にネジ止めする場合、取付工程が複雑で、作業に時間を要する。また、超音波送受波器が超音波を送波あるいは受波する際に、取付具を介して超音波送受波器から管壁へ、あるいは管壁から超音波送受波器へと振動が伝達し、超音波信号を受信する上でノイズになる問題が生じうる。
【0007】
一方、超音波送受波器を利用した流量計などの流体計測装置では、超音波送受波器を取り付けた管を、全体として(超音波送受波器と共に)流体の充満したチャンバ内に配設する構成も採りうる。かかる構成では、管壁と超音波送受波器との間を厳密にシールする必要がない。よって、必ずしもネジ止めなどの強力な締結手段を用いて超音波送受波器を管壁に取り付ける必要もない。
【0008】
また、超音波送受波器をより強力でない固定手段により管壁に取り付けることは、超音波送受波器と管壁との間の振動の伝達率を低減させる上でも有効である。より強力でない固定手段を利用できることから、例えば島状の突起により管壁あるいは超音波送受波器と当接する構成を採用することができる。かかる構成では、管壁と取付具との接触面積、あるいは取付具と超音波送受波器との接触面積を低減することができ、超音波送受波器と管壁との間の振動の伝達率をさらに低減させることができる。
【0009】
以上の知見を踏まえ、本発明者らは、超音波送受波器のフランジと、管壁に設けられた穴の縁をそれぞれ挟持するように、ゴムなどの弾性体で超音波送受波器取付具を構成することで、管壁への超音波送受波器の取付作業を簡略化できることに想到した。
【0010】
さらに、挟持部の少なくとも一方に島状の突起を設け、該突起により取付具がフランジおよび管壁の少なくとも一方と当接するように構成することで、超音波送受波器と管壁との間の振動の伝達率をさらに低減させることができることに想到した。
【0011】
すなわち本発明の超音波送受波器取付具は、フランジを備えたケースを有する超音波送受波器を超音波式流体計測装置の管壁に設けられた穴に取り付けるための超音波送受波器取付具であって、弾性体で構成され、前記フランジを挟持することで前記超音波送受波器取付具に前記超音波送受波器を固定する第1挟持部と、前記穴の縁を挟持することで前記管壁に前記超音波送受波器取付具を固定する第2挟持部とを備える。
【0012】
かかる構成では、管壁への超音波送受波器の取付作業を簡略化することができる。
【0013】
上記超音波送受波器取付具は、前記第1挟持部および前記第2挟持部の少なくとも一方に島状の突起が設けられ、該突起により前記超音波送受波器取付具が前記フランジおよび前記管壁の少なくとも一方と当接してもよい。
【0014】
かかる構成では、超音波送受波器から管壁へ、あるいは管壁から超音波送受波器へと振動が伝搬することを効果的に抑制することができる。
【0015】
上記超音波送受波器取付具は、前記第1挟持部と前記第2挟持部とが、前記穴の縁を構成する管壁の厚み方向において同一平面にないことで互いに前記厚み方向に離隔するように構成されていてもよい。
【0016】
かかる構成では、超音波送受波器から管壁へ、あるいは管壁から超音波送受波器へと振動が伝搬することを効果的に抑制することができる。
【0017】
上記超音波送受波器取付具は、単一の部材により構成されていてもよい。
【0018】
かかる構成では、管壁への超音波送受波器の取付作業をさらに簡略化することができる。
【0019】
上記超音波送受波器取付具は、前記ケースのうち前記フランジ以外の部分に当接する当接部を備えていてもよい。
【0020】
かかる構成では、超音波送受波器が超音波送受波器取付具によりさらに安定的に保持される。
【0021】
また本発明の超音波式流体計測装置は、上記超音波送受波器取付具と、前記超音波送受波器と、前記管壁とを有する。
【0022】
かかる構成では、超音波式流体計測装置の組立作業を簡略化できる。
【0023】
上記超音波式流体計測装置は、チャンバを有する筐体を備え、前記超音波送受波器取付具と前記超音波送受波器と前記管壁とが前記チャンバ内部に設けられ、前記管壁は前記チャンバに連通する開口部を有し、前記筐体には前記チャンバと外部とが連通するように、ガス流入口とガス流出口とが形成され、前記管壁がなす流路が前記ガス流入口および前記ガス流出口のいずれか一方と連通していてもよい。
【0024】
かかる構成では、超音波送受波器取付具のシール性によらず、流体を正確に計測できる。
【発明の効果】
【0025】
本発明の超音波送受波器取付具および超音波式流体計測装置によれば、管壁への超音波送受波器の取付作業を簡略化できる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】図1は、第1実施形態の実施例にかかる超音波送受波器取付具の概略構成の一例を示す図であり、図1(a)は第1実施形態の実施例にかかる超音波送受波器取付具を図1(b)の矢印aの方向から見た上面図、図1(b)は第1実施形態の実施例にかかる超音波送受波器取付具を図1(a)および図1(c)のA−A’に沿って切った矢印方向から見た断面図、図1(c)は第1実施形態の実施例にかかる超音波送受波器取付具を図1(b)の矢印cの方向から見た底面図である。
【図2】図2は、フランジを備えたケースを有する超音波送受波器の概略構成の一例を示す断面図である。
【図3】図3は、第1実施形態の実施例にかかる超音波送受波器取付具を用いて超音波送受波器が取り付けられた管壁の穴部分を示す拡大断面図である。
【図4】図4は、第1実施形態の実施例にかかる超音波送受波器取付具を用いて超音波送受波器が取り付けられた管の断面図である。
【図5】図5は、図5は、第1実施形態の実施例およびその変形例の超音波送受波器取付具の概略構成の一例を示す断面図であって、図5(a)は第1実施形態の実施例にかかる超音波送受波器取付具の概略構成の一例を示す断面図、図5(b)は第1実施形態の第1変形例の超音波送受波器取付具の概略構成の一例を示す断面図、図5(c)は第1実施形態の第2変形例の超音波送受波器取付具の概略構成の一例を示す断面図である。
【図6】図6は、第2実施形態の実施例にかかる超音波式流体計測装置の概略構成の一例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態の実施例にかかる超音波送受波器取付具の概略構成の一例を示す図であり、図1(a)は第1実施形態の実施例にかかる超音波送受波器取付具を図1(b)の矢印aの方向から見た上面図、図1(b)は第1実施形態の実施例にかかる超音波送受波器取付具を図1(a)および図1(c)のA−A’に沿って切った矢印方向から見た断面図、図1(c)は第1実施形態の実施例にかかる超音波送受波器取付具を図1(b)の矢印cの方向から見た底面図である。
【0028】
図2は、フランジを備えたケースを有する超音波送受波器の概略構成の一例を示す断面図である。
【0029】
図3は、第1実施形態の実施例にかかる超音波送受波器取付具を用いて超音波送受波器が取り付けられた管壁の穴部分を示す拡大断面図である。
【0030】
以下、図1乃至3を参照しつつ、第1実施形態の超音波送受波器取付具について説明する。なお、符号は本実施形態とその実施例との対応関係をあくまで例示するために付したに過ぎず、本実施形態の流体制御弁の構成が図1に限定されるものではない。以下、他の実施形態においても同様である。
【0031】
図1乃至3に例示されるように、第1実施形態の超音波送受波器取付具は、フランジ70を備えたケース52を有する超音波送受波器50を超音波式流体計測装置の管壁80に設けられた穴82に取り付けるための超音波送受波器取付具であって、弾性体で構成され、フランジ70を挟持することで超音波送受波器取付具に超音波送受波器50を固定する第1挟持部11と、穴82の縁を挟持することで管壁80に超音波送受波器取付具を固定する第2挟持部15とを備える。かかる構成では、管壁80への超音波送受波器50の取付作業を簡略化することができる。
【0032】
図1に例示されるように、第1実施形態の超音波送受波器取付具は、第1挟持部11および第2挟持部15の少なくとも一方に島状の突起12または島状の突起16が設けられ、該突起12により超音波送受波器取付具がフランジ70および管壁80の少なくとも一方と当接してもよい。かかる構成では、超音波送受波器取付具と超音波送受波器50との接触面積、あるいは、超音波送受波器取付具と管壁80との接触面積が低減される。よって、超音波送受波器50から管壁80へ、あるいは管壁80から超音波送受波器50へと振動が伝搬することをより効果的に抑制することができる。
【0033】
図1および図3に例示されるように、第1実施形態の超音波送受波器取付具は、第1挟持部11と第2挟持部15とが、穴82の縁を構成する管壁80の厚み方向(図3の矢印の方向)において同一平面にないことで互いに厚み方向に離隔するように構成されていてもよい。かかる構成では、超音波送受波器50と管壁80との間が、管壁80の厚み方向に離隔することになるため、該厚み方向に沿って振動が伝達する内に振動が減衰する。よって、超音波送受波器50から管壁80へ、あるいは管壁80から超音波送受波器50へと振動が伝搬することをより効果的に抑制することができる。
【0034】
図1に例示されるように、第1実施形態の超音波送受波器取付具は、単一の部材により構成されていてもよい。かかる構成では、管壁80への超音波送受波器50の取付作業がより簡潔化され、作業効率が向上する。
【0035】
図1に例示されるように、第1実施形態の超音波送受波器取付具は、筒体の一方の端部において、該筒体の内側に、フランジ70を挟持することで超音波送受波器取付具に超音波送受波器50を固定する第1挟持部11が設けられ、該筒体の他方の端部において、該筒体の外側に、穴82の縁を挟持することで管壁80に超音波送受波器取付具を固定する第2挟持部15が設けられてもよい。なお、ここで筒体の主軸方向(図1(b)の上下方向)の長さは任意であり、リング形状も筒体に含まれる。
【0036】
図1に例示されるように、第1挟持部11は、該筒体の主軸に沿って該一方の端(図1(b)の上方向)に向かって突出して該他方の端側からフランジ70に当接するための島状の突起12を備えていてもよいし、該筒体の内壁から主軸に向かって突出して該一方の端側からフランジ70に当接するためのリング状の突起14を備えていてもよい。突起12は島状の形状に限定されず、例えば連続するリング状の突起であってもよい。突起14は、該筒体の主軸に沿って該他方の端(図1(b)の下方向)に向かって突出して該一方の端側からフランジ70に当接するための島状の突起であってもよい。
【0037】
図1に例示されるように、第2挟持部15は、該筒体の主軸に沿って該他方の端(図1(b)の下方向)に向かって突出して該一方の端側からフランジ70に当接するための島状の突起16を備えていてもよいし、該筒体の外壁から主軸と反対方向(外側)へ突出して該他方の端側からフランジ70に当接するためのリング状の突起18を備えていてもよい。突起16は島状の形状に限定されず、例えば連続するリング状の突起であってもよい。突起18は、該筒体の主軸に沿って該一方の端(図1(b)の上方向)に向かって突出して該他方の端側からフランジ70に当接するための島状の突起であってもよい。
【0038】
本実施形態における流体は、ガス、液体などが含まれるが、第1実施形態の超音波送受波器取付具は特に流体がガスである場合に好適に適用される。
【0039】
[実施例]
図1を参照しつつ、本実施形態の実施例にかかる超音波送受波器取付具100をより詳細に説明する。
【0040】
超音波送受波器取付具100は、概略として、中央に円形の穴が形成されたリング状の形状を有する弾性体からなる。該リングの軸方向に沿った一方(図1(b)において下側)の端部における穴の半径は、他方(図1(b)において上側)の端部に形成された穴の半径よりも小さくなっている。穴の内壁には一方(図1(b)において下側)から他方(図1(b)において上側)に向けて段差が形成されている。該段差部分において、上記軸方向に垂直な平面をなす同心円状の面には、円周に沿って複数の島状の突起12(島状突起)が等間隔(45度おき)に8個形成されている。該段差部分において、上記軸方向に沿って延びる円筒状の内壁面には、穴の内側方向に突出するように、リング状の突起14(輪状突起)が形成されている。突起12と突起14とで、第1挟持部11が形成される。
【0041】
超音波送受波器取付具100がなすリング形状の、一方(図1(b)において下側)の端部における外壁の半径は、他方(図1(b)において上側)の端部における同心の外壁の半径よりも小さくなっている。外壁には一方から他方に向けて段差が形成されている。該段差部分において、上記軸方向に垂直な平面をなす同心円状の面には、円周に沿って複数の島状の突起16(島状突起)が等間隔(45度おき)に8個形成されている。該段差部分において、上記軸方向に沿って延びる円筒状の外壁面には、円筒の外側方向に突出するように、リング状の突起18(輪状突起)が形成されている。突起16と突起18とで、第2挟持部15が形成される。
【0042】
弾性体とは、超音波送受波器取付具100を管壁80に取り付け、あるいは超音波送受波器50を超音波送受波器取付具100に取り付けることが容易な程度の弾性を有する材料である。管壁80または超音波送受波器50はほとんど弾性を有しない場合が多いので、そのような場合に備え、容易に組立て作業を行えるようにすべく、弾性体の弾性は適宜に調整されうる。弾性体として具体的には、ゴムやプラスチックなどが好適に採用される。
【0043】
弾性体としては、より具体的には、NBR(ニトリルブタジエンゴム、ニトリルゴム)あるいはフロロシリコンゴムが好適に用いられる。弾性体の硬さの下限は、ショアA30以上であることが好ましく、A40度以上であることがさらに好ましい。弾性体の硬さの上限は、ショアA70度以下であることが好ましく、A60度以下であることがさらに好ましく、A50度以下であることが最も好ましい。弾性体の硬さの範囲は、ショアA30度以上A70度以下であることが好ましく、A40度以上A60度以下であることがさらに好ましく、A40度以上A50度以下であることが最も好ましい。
【0044】
図2を参照しつつ、フランジを備えたケースを有する超音波送受波器の構成例をより詳細に説明する。
【0045】
超音波送受波器50は、開口端の全周に亘って外側に広がる鍔を備えた円筒状のケース52を備えている。ケース52の他端は閉じて底面をなしており、該平面の外壁には整合層56がエポキシ系接着剤により接着固定されている。ケース52の開口部は円盤状の封止体58で封止される。封止体58の周縁部とケース52の鍔とが溶接等により接合され、フランジ70が形成される。ケース52と封止体58とがなす空間の内部には圧電体54が配設される。圧電体54は、ケース52の底面にエポキシ系接着剤により接着固定されている。封止体58の中央部には穴が形成され、該穴を埋めるように絶縁体64が配設されている。絶縁体64を貫通するように第1端子62が配設される。第1端子62と圧電体54との間には導電性ゴム60が配設されている。封止体58の外壁には、第2端子66が接続されている。第1端子62と第2端子66とは、絶縁体64により絶縁される。圧電体54には溝55が設けられている。圧電体54とケース52の底面との間には、溝55により分割された電極(図示せず)が電気的導通を確保しうるように10μm以下の薄い接着層を介して接着固定されていてもよい。
【0046】
ケース52および封止体58は例えば厚みが0.1mm以上0.5mm以下のステンレスで構成される。整合層56は例えばエポキシ樹脂と中空ガラス球の混合体からなる材料で構成される。
【0047】
超音波送受波器50が超音波を受信する場合、図2の下方から整合層56へと超音波が入力され、受信した超音波パルスは圧電体54で電気信号に変換される。該電気信号は第1端子62と第2端子66との間から取り出される。
【0048】
超音波送受波器50が超音波を送信する場合、圧電体54は、第2端子66と導通したケース52および封止体58をグランドとし、第1端子62と第2端子66との間に駆動電気入力を印加されることで振動する。該振動が超音波パルスとして、整合層56を介して図2における下方へと出力される。同時に、ケース52も振動する。該振動は、超音波送受波器50が取り付けられる管壁を介して送信側の超音波送受波器50から受信側の超音波送受波器50へと伝達される。受信側では振動と受信した超音波パルスとが合成され、振幅や位相が変化してしまい、計測に誤差を与える原因となる。本実施例では、超音波送受波器取付具100によりかかる問題が低減される。
【0049】
超音波送受波器の外形は、特に限定されない。例えば外形は、主軸(図2の上下方向の軸)に垂直な断面の形状が円形のものに限定されず、断面形状が正方形や長方形などであってもよい。
【0050】
フランジの形状も、特に限定されない。超音波送受波器取付具の第1挟持部が挟持できるものであれば、フランジはどのような構成であってもよい。例えば、上記のようにケースの外周の全部に亘って突出するようにフランジが設けられる必要はなく、ケースの外周の一部においてのみ突出するようにフランジが設けられていてもよいし、ケースの外壁の他の部分からフランジが突出していてもよい。
【0051】
図3を参照しつつ、本実施形態の実施例の超音波送受波器取付具を用いて超音波送受波器が管壁の穴に保持される態様をより詳細に説明する。
【0052】
該態様の概略を述べれば、超音波送受波器50は超音波送受波器取付具100がなすリングの内側に嵌まり込むように保持され、超音波送受波器取付具100は超音波送受波器50を保持した状態で、管壁80に形成された穴82に嵌まり込むようにして保持される。これにより、超音波送受波器50が超音波送受波器取付具100を介して管壁80に所定の位置関係を維持するように保持される。
【0053】
第1挟持部11を構成する突起12と突起14とで、フランジ70の周縁部が挟持される。超音波送受波器50は、超音波送受波器取付具100の穴を通過して第1挟持部11が形成された端部とは反対側の開口からに整合層56がはみ出るように保持される。第2挟持部15を構成する突起16と突起18とで、穴82の縁を構成する管壁80が挟持される。管壁80の厚み方向から見た穴82の形状は、超音波送受波器50が余裕を持って収まる大きさの円形となっている。穴82の縁は、厚みが若干薄くなっていてもよい。
【0054】
以上のような態様により、超音波送受波器取付具100は、管壁80に形成された穴82において、超音波が出力あるいは入力される面が流体の流路を向くように超音波送受波器50を保持する。
【0055】
図4は、第1実施形態の実施例にかかる超音波送受波器取付具を用いて超音波送受波器が取り付けられた管の断面図である。
【0056】
管壁80は、図4の矢印に沿って左から右へと流体を通流させるように流路を構成する。該流路から分岐するように2つの取付管81が、該管壁80がなす流路の主軸と所定の角度をなして延びるように形成されている。該流路内を流れる流体の流れ方向と一方の取付管81とがなす角は、該流れ方向の逆方向と他方の取付管81とがなす角と等しくなっている。換言すれば、一方の取付管81と、他方の取付管81とは、流体の流れる方向と垂直な平面に対して面対称となるように形成される。該流路と取付管81の一端とはその内部が連通しており、取付管81の他端の開口部がなす穴82にはそれぞれ、超音波送受波器取付具100を介して超音波送受波器50が取り付けられている。超音波送受波器50はそれぞれ、超音波の送受波面(整合層56が取り付けられている面)が取付管81の内部を向くように取り付けられている。一方の超音波送受波器50から発信された超音波は、管壁80が形成する該流路の内部を通流する流体中を伝播し、2つの超音波送受波器50の間にある管壁80の内壁のうち、取付管81の形成された側とは反対側の内壁に設けられた反射部84で反射して、他方の超音波送受波器50に到達する。流体の流速に応じて超音波の到達時間が変化する。該変化に基づいて、流体の流速あるいは流量等が計測される。計測の具体的方法については、周知の方法を採用することができるので、詳細な説明を省略する。
【0057】
図4に示した構成は、超音波式流体計測装置において計測対象となる流体が充満するように構成された気密の筐体の内部に配設されることが好ましい。すなわち、超音波送受波器取付具は、フランジを備えたケースを有する超音波送受波器を超音波式流体計測装置の管壁に設けられた穴に取り付け、超音波式流体計測装置の筐体内部に充満する計測対象流体に該管壁と超音波送受波器と超音波送受波器取付具とが浸漬されるように配設するための超音波送受波器取付具であることが好ましい。
【0058】
かかる構成では、第2実施形態で後述するように、超音波送受波器取付具が超音波送受波器と管壁とを隙間なくシールしなくても、超音波送受波器と管壁との間を通流する流体の量を無視できる程度に小さくすることができる。超音波送受波器を用いて管壁内部の流路を通過する流体の速度や量を計測することで、超音波式流体計測装置を通過する流体の流量等を正確に計測できる。超音波送受波器取付具によるシール性が要求されないため、挟持部に島状の突起を設けやすくなる。島状の突起は必然的に超音波送受波器あるいは管壁との間で隙間が生じる。厳密なシール性が要求される場合には採用することが困難となる。
【0059】
超音波送受波器取付具100は、弾性体からなる挟持部により、ネジなどの締結部材を用いずに、超音波送受波器50を管壁80へと取り付けることができる。よって、管壁への超音波送受波器の取付作業を飛躍的に簡略化することが可能となる。
【0060】
超音波送受波器取付具100によれば、フランジ70と超音波送受波器取付具100とは少なくとも一部が、超音波送受波器取付具100に形成された島状の突起12により当接するため、超音波送受波器50から管壁80へ、あるいは管壁80から超音波送受波器50へと振動が伝搬することを効果的に抑制することができる。
【0061】
超音波送受波器取付具100は、フランジの主面のうち流体流路に向く一方の主面と、島状の突起12によってのみ当接する。かかる構成では、超音波送受波器50から管壁80へ、あるいは管壁80から超音波送受波器50へと振動が伝搬することをさらに効果的に抑制することができる。
【0062】
超音波送受波器取付具100によれば、穴82の縁を構成する管壁80と超音波送受波器取付具100とは少なくとも一部が、超音波送受波器取付具100に形成された島状の突起16により当接するため、超音波送受波器50から管壁80へ、あるいは管壁80から超音波送受波器50へと振動が伝搬することを効果的に抑制することができる。
【0063】
超音波送受波器取付具100は、穴82の縁を構成する管壁80の主面のうち流体流路と反対側の主面と、島状の突起12によってのみ当接する。かかる構成では、超音波送受波器50から管壁80へ、あるいは管壁80から超音波送受波器50へと振動が伝搬することをさらに効果的に抑制することができる。
【0064】
超音波送受波器取付具100によれば、フランジ70の主面のうち、流路と反対側の面がリング状の突起14により保持される。超音波送受波器50が超音波送受波器取付具100から流路の外側方向に外れることが抑制される。よって、超音波送受波器50を管壁80により確実に保持できる。
【0065】
超音波送受波器取付具100によれば、穴82の縁を構成する管壁80の主面のうち、流路側の面がリング状の突起14により保持される。超音波送受波器取付具100が穴82から流路の外側方向に外れることが抑制される。よって、超音波送受波器50を管壁80により確実に保持できる。
【0066】
超音波送受波器取付具100では、第1挟持部11と第2挟持部15とが、管壁80の厚み方向(図3参照)において同一平面にないことで互いに前記厚み方向に離隔するように構成されている。よって、超音波送受波器50から管壁80へ、あるいは管壁80から超音波送受波器50へと振動が伝搬することをより効果的に抑制することができる。
【0067】
なお、突起14および突起18はリング状の突起として形成されていたが、いずれか一方または双方が島状の突起として形成されていてもよい。突起12および突起16は島状の突起として形成されていたが、いずれか一方または双方がリング状の突起として形成されていてもよい。
【0068】
超音波送受波器取付具100は、複数の部材により構成されていてもよい。例えば、図1と同様の形状であって、中央で2つに分割されていてもよい。かかる構成では、金型を用いて製造する場合に、金型からの取り出しが容易になる。
【0069】
[変形例]
図5は、図5は、第1実施形態の実施例およびその変形例の超音波送受波器取付具の概略構成の一例を示す断面図であって、図5(a)は第1実施形態の実施例にかかる超音波送受波器取付具の概略構成の一例を示す断面図、図5(b)は第1実施形態の第1変形例にかかる超音波送受波器取付具の概略構成の一例を示す断面図、図5(c)は第1実施形態の第2変形例にかかる超音波送受波器取付具の概略構成の一例を示す断面図である。
【0070】
変形例の超音波送受波器取付具は、ケース52のうちフランジ70以外の部分に当接する当接部を備える。
【0071】
図5(a)に示すように、第1実施形態の実施例にかかる超音波送受波器取付具100は、第1挟持部11がケース52のフランジ70のみと当接している。即ち、超音波送受波器取付具100とケース52の側壁との間には間隙17が存在し、超音波送受波器取付具100と側壁とは接触していない。かかる構成は、ケース52から管壁80へと伝達される振動の量を低減する上で有効である。
【0072】
図5(b)に示す、第1実施形態の第1変形例にかかる超音波送受波器取付具100Aは、ケース52の側壁に面した内壁に当接部として突起19が形成され、突起19により超音波送受波器取付具100Aがケース52の側壁に当接する。かかる構成によれば、ケース52がより安定的に超音波送受波器取付具100Aにより保持される。
【0073】
図5(c)に示す、第1実施形態の第2変形例にかかる超音波送受波器取付具100Bは、ケース52の側壁に面した内壁が全体として当接部となり、ケース52の側壁に当接する。かかる構成によれば、ケース52がさらに安定的に超音波送受波器取付具100Aにより保持される。
【0074】
ケース52のうちフランジ70以外の部分に当接する当接部の形状は、上述したものに限定されない。ケース52がより安定的に超音波送受波器取付具100Aにより保持される上で有効であれば、該当接部はどのような形状であってもよい。
【0075】
(第2実施形態)
第2実施形態の超音波式流体計測装置は、フランジを備えたケースを有する超音波送受波器と、第1実施形態の超音波送受波器取付具と、穴が設けられた管壁とを有する。かかる構成によれば、超音波式流体計測装置の組立作業を簡略化できる。第2実施形態の超音波式流体計測装置においても、超音波送受波器取付具の構成は、第1実施形態で示したのと同様の変形例が適用可能である。
【0076】
以下、第2実施形態の超音波式流体計測装置の実施例について説明する。なお、本実施例では、流体がガスである場合を説明する。
【0077】
図6は、第2実施形態の実施例にかかる超音波式流体計測装置の概略構成の一例を示す断面図である。
【0078】
図6に示すように、実施例の超音波式流体計測装置200は、ガス流入口20とガス流出口30とが設けられ気密にシールされた筐体40と、第1実施形態の実施例にかかる超音波送受波器取付具100を介して超音波送受波器50が取り付けられた管壁80とを備えている。
【0079】
管壁80は、超音波送受波器50および超音波送受波器取付具100と共に、筐体40の内部に形成されたチャンバ42の内部に配設されている。管壁80の一方の端部はチャンバ42に開放され、他方の端部はガス流出口30と接続されており、管壁80がなすガス流路はガス流出口30と連通している。
【0080】
超音波送受波器取付具100と、管壁80と、超音波送受波器50とは、それぞれ、第1実施形態で説明したのと同様の構成としうるので、詳細な説明を省略する。
【0081】
超音波送受波器取付具100と、管壁80と、超音波送受波器50とは、超音波式流体計測装置200において計測対象となる流体が充満するように構成された気密の筐体40の内部に配設される。すなわち、超音波送受波器取付具100は、フランジ70を備えたケース52を有する超音波送受波器50を超音波式流体計測装置200の管壁80に設けられた穴82に取り付け、超音波式流体計測装置の筐体40内部に充満する計測対象流体に管壁80と超音波送受波器50と超音波送受波器取付具100とが浸漬されるように配設される。
【0082】
換言すれば、超音波式流体計測装置200は、チャンバ42を有する筐体40を備え、超音波送受波器取付具100と超音波送受波器50と管壁80とがチャンバ42内部に設けられ、管壁80はチャンバ42に連通する開口部を有し、筐体40にはチャンバ42と外部とが連通するように、ガス流入口20とガス流出口30とが形成され、管壁80がなす流路がガス流入口20およびガス流出口30のいずれか一方と連通している。
【0083】
ガス流入口20から流入したガスは、チャンバ42の内部に充満し、管壁80がなすガス流路を通過した後、ガス流出口30を通じて筐体40の外部へと流出する。かかる構成によれば、ガス流出口30に流入したガスは全量が管壁80の内部を通ってガス流出口30から排出される。よって、超音波式流体計測装置200の内部を通流するガスの流量や流速などを、超音波送受波器50を用いて正確に計測できる。管壁80がガス流入口20と連通し、ガス流入口20から管壁80を通じてガスがチャンバ42へと流入するように構成した場合も同様の効果が得られる。
【0084】
ガスはチャンバ42の内部に充満しており、管壁80の内部と外部とでガスの圧力はほぼ等しい。よって、超音波送受波器取付具100によるシールが不十分であっても、超音波送受波器取付具100と管壁80との隙間、あるいは超音波送受波器取付具100と超音波送受波器50との隙間を通って流れるガスの量は無視できる程度に小さく、流速や流量の計測に与える影響も無視できる。すなわち、超音波送受波器取付具100のシール性によらず、流体を正確に計測できる。
【0085】
超音波式流体計測装置200では、超音波送受波器取付具が超音波送受波器と管壁とを隙間なくシールしなくても、超音波送受波器と管壁との間を通流する流体の量を無視できる程度に小さくすることができる。超音波送受波器を用いて管壁内部の流路を通過する流体の速度や量を計測することで、超音波式流体計測装置を通過する流体の流量等を正確に計測できる。
【0086】
超音波送受波器取付具によるシール性が要求されないため、挟持部に島状の突起を設けやすくなる。島状の突起は超音波送受波器あるいは管壁との間で隙間が生じやすい。厳密なシール性が要求される場合には採用することが比較的困難となる。挟持部が島状の突起を備えることで、超音波送受波器から管壁へ、あるいは管壁から超音波送受波器へと振動が伝搬することをより効果的に抑制することができる。
【0087】
超音波式流体計測装置200においても、超音波送受波器取付具の構成は、第1実施形態で示したのと同様の変形例が適用可能である。
【0088】
上記説明から、当業者にとっては、本発明の多くの改良や他の実施形態が明らかである。従って、上記説明は、例示としてのみ解釈されるべきであり、本発明を実行する最良の態様を当業者に教示する目的で提供されたものである。本発明の精神を逸脱することなく、その構造及び/又は機能の詳細を実質的に変更できる。
【産業上の利用可能性】
【0089】
本発明の超音波送受波器取付具および超音波式流体計測装置は、管壁への超音波送受波器の取付作業を簡略化できる超音波送受波器取付具および超音波式流体計測装置として有用である。
【符号の説明】
【0090】
11 第1挟持部
12 突起
14 突起
15 第2挟持部
16 突起
17 間隙
18 突起
19 突起
20 ガス流入口
30 ガス流出口
40 筐体
42 チャンバ
50 超音波送受波器
52 ケース
54 圧電体
55 溝
56 整合層
58 封止体
60 導電性ゴム
62 第1端子
64 絶縁体
66 第2端子
70 フランジ
80 管壁
81 取付管
82 穴
84 反射部
100 超音波送受波器取付具
200 超音波式流体計測装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フランジを備えたケースを有する超音波送受波器を超音波式流体計測装置の管壁に設けられた穴に取り付けるための超音波送受波器取付具であって、
弾性体で構成され、
前記フランジを挟持することで前記超音波送受波器取付具に前記超音波送受波器を固定する第1挟持部と、
前記穴の縁を挟持することで前記管壁に前記超音波送受波器取付具を固定する第2挟持部とを備える、超音波送受波器取付具。
【請求項2】
前記第1挟持部および前記第2挟持部の少なくとも一方に島状の突起が設けられ、該突起により前記超音波送受波器取付具が前記フランジおよび前記管壁の少なくとも一方と当接する、請求項1記載の超音波送受波器取付具。
【請求項3】
前記第1挟持部と前記第2挟持部とが、前記穴の縁を構成する管壁の厚み方向において同一平面にないことで互いに前記厚み方向に離隔するように構成されている、請求項1および2のいずれかに記載の超音波送受波器取付具。
【請求項4】
単一の部材により構成されている、請求項1乃至3のいずれかに記載の超音波送受波器取付具。
【請求項5】
前記ケースのうち前記フランジ以外の部分に当接する当接部を備えた、請求項1乃至4のいずれかに記載の超音波送受波器取付具。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれかに記載の超音波送受波器取付具と、
前記超音波送受波器と、
前記管壁とを有する、超音波式流体計測装置。
【請求項7】
チャンバを有する筐体を備え、
前記超音波送受波器取付具と前記超音波送受波器と前記管壁とが前記チャンバ内部に設けられ、
前記管壁は前記チャンバに連通する開口部を有し、
前記筐体には前記チャンバと外部とが連通するように、ガス流入口とガス流出口とが形成され、
前記管壁がなす流路が前記ガス流入口および前記ガス流出口のいずれか一方と連通している、請求項6に記載の超音波式流体計測装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−127655(P2012−127655A)
【公開日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−276501(P2010−276501)
【出願日】平成22年12月13日(2010.12.13)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】