超音波送受波器
【課題】低コストで良好な指向性が得られる超音波送受波器を提供する。
【解決手段】複数に分割されたエリアにまたがって振動子10が同心円状に配列された送受波器1において、隣接するエリア間の境界線A,B上に、当該境界線に沿って配列される振動子10の一部が位置し、かつ、エリアの中心Oから外に向かって、配列ピッチα1〜α5が不等間隔となるように振動子10が配列されている。また、配列ピッチα1〜α5に対しては、空間的な重み付け処理がされている。これにより、振動子配列をできるだけ均等にし、かつ振動子間隔をできるだけ狭くすることができるので、サイドローブやグレーティングローブが抑制され、良好な指向性を得ることができる。
【解決手段】複数に分割されたエリアにまたがって振動子10が同心円状に配列された送受波器1において、隣接するエリア間の境界線A,B上に、当該境界線に沿って配列される振動子10の一部が位置し、かつ、エリアの中心Oから外に向かって、配列ピッチα1〜α5が不等間隔となるように振動子10が配列されている。また、配列ピッチα1〜α5に対しては、空間的な重み付け処理がされている。これにより、振動子配列をできるだけ均等にし、かつ振動子間隔をできるだけ狭くすることができるので、サイドローブやグレーティングローブが抑制され、良好な指向性を得ることができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば計量魚群探知機などに用いられる超音波送受波器に関する。
【背景技術】
【0002】
海中の資源量を調査するために、従来から音響手法を利用した計量魚群探知機が用いられている。計量魚群探知機は、送受波器から送信した超音波の音圧レベルと、魚群で反射したエコーの音圧レベルとの比、すなわち反射強度TS(Target Strength)が魚の体長の2乗に比例することを利用して、水中の魚量を求める装置である。
【0003】
このような計量魚群探知機で魚量を求めるには、反射強度TSの値を正確に測定する必要があるが、送受波器の受信感度は音波の到来方向によって異なり、メインローブ方向(音軸方向)に対する感度が最大であって、この方向からずれるに従って受信感度は低下する。このため、任意の方向から到来するエコーから求めた反射強度は正確な反射強度ではなく、測定誤差が含まれているので、反射強度を到来方向に応じて補正する必要がある。そこで、この到来方向を測定するために、計量魚群探知機ではスプリットビーム方式が広く採用されている。スプリットビーム方式については、例えば後掲の特許文献1に記載されている。
【0004】
図8は、スプリットビーム方式によるエコー到来方向の測定原理を説明する図である。図8(a)は4つのチャンネルCh1〜Ch4に分割された円盤型の送受波器50の下面図を示している。図8(b)のように、例えばチャンネルCh1とチャンネルCh4で受信された各受信信号の位相差をφ、エコーの到来角をθ、チャンネルCh1,Ch4の中心間距離をLとしたとき、これらの間には次式が成立する。
φ=k・L・sinθ (1)
ここで、kは波数であって、k=2π/λ(λ:超音波の波長)である。
上式より、
θ=sin−1 (φ/kL) (2)
【0005】
よって、式(2)より、チャンネルCh1,Ch4の中心間距離Lが分かっておれば、受信信号の位相差φを測定することによって、エコーの到来角θを算出することができる。そして、この算出された到来角θに応じて、送受波器50の指向特性が補正され、エコーから求めた反射強度TS0は、正確な反射強度TSに換算される。送受波器50の指向特性をD(θ)としたとき、反射強度TSは次式のように表される。
TS=D(θ)2・TS0 (3)
【0006】
このようなスプリットビーム方式により反射強度を測定する場合、従来は、図9に示すような円盤型の送受波器50が用いられていた。図9において、送受波器50は、例えば316個の振動子51を備えており、これらの振動子51が密集して送受波器50上に配列されている。後掲の特許文献2には、このように振動子を密集配列した超音波送受波器が記載されている。
【0007】
【特許文献1】特開2002−82155号公報
【特許文献2】特開平8−201512号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
図9のような送受波器50では、振動子間の間隔が半波長(λ/2)以下となるように振動子51を均等に配列(円形配列の場合は、等間隔ピッチで同心円状に配列)することにより、エコーのサイドローブやグレーティングローブを抑制することができるが、その一方で、振動子51の数が非常に多くなって、コストが大幅に上昇するという問題がある。
【0009】
そこで、図10に示したように、ある程度大きな振動子51を同心円状に所定間隔をおいて配列することで、振動子51の数を少なくした送受波器50が考えられる。しかしながら、この送受波器50では、振動子51の径が大きいために振動子間のピッチを半波長以下にすることが困難である。そして、チャンネルCh1〜Ch4の各エリアに属する振動子51が境界線A,Bにより完全に分割され、境界線A,B上に振動子配列の粗い部分が生じることから、図11に示すように、メインローブML以外に、サイドローブSLやグレーティングローブGLの信号レベルが高くなって指向性が低下する。この結果、サイドローブSLやグレーティングローブGLの映像が表示部に雑音として現われ、本来のエコーによる映像を正確に識別できなくなるおそれがある。これは、スプリットビーム方式に限らず、複数の送受信装置により振動子に与える電気信号の振幅や位相を制御してビームを任意の方向へ形成する場合(スタビライズ機能)においても同様である。
【0010】
このようなサイドローブやグレーティングローブを抑制する方法として、振動子に与える電気信号の振幅に対して、例えばチェビシェフ(Chebyshev)関数のような重み付けを行うことが知られている。しかしながら、これを実現するためには、トランスなどの部品やチャンネルごとの振幅制御機能が必要となるため、構造や回路が複雑となってコスト高になるという問題がある。
【0011】
そこで、本発明の目的とするところは、低コストで良好な指向性が得られる超音波送受波器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、水中へ超音波を送信するとともに当該超音波のエコーを受信する複数の振動子を備え、これらの振動子の配列されたエリアが複数に分割されている超音波送受波器において、隣接するエリア間の境界線上に、当該境界線に沿って配列される振動子の一部が位置するように各振動子を配列し、かつ、エリアの中心から外に向かって振動子の配列ピッチを不等間隔としたものである。
【0013】
本発明では、従来と同数の振動子を用いても、エリア間の境界線上に振動子の一部を位置させ、また、配列ピッチをエリア中心から外に向って不等間隔とすることによって、振動子配列をできるだけ均等にし、かつ振動子間隔をできるだけ狭くすることが可能となる。このため、多数の振動子を敷き詰めなくても、振動子の配列を工夫するだけで、サイドローブやグレーティングローブを有効に抑制することができ、低コストで良好な指向性を得ることができる。
【0014】
本発明においては、隣接するエリア間の境界線上に、当該境界線に沿って配列される振動子の一部が位置するように各振動子を配列するだけでも、従来に比べてサイドローブやグレーティングローブを抑制できる効果があり、振動子の数を増加させることなく、良好な指向性を得ることができる。
【0015】
また、本発明においては、エリアの中心から外に向かって振動子の配列ピッチを不等間隔とするだけでも、従来に比べてサイドローブやグレーティングローブを抑制できる効果があり、振動子の数を増加させることなく、良好な指向性を得ることができる。
【0016】
また、本発明においては、分割された各エリアにまたがって振動子が同心円状に配列されている場合、一部の同心円についてはエリア間の境界線上に振動子が存在し、他の同心円については境界線上に振動子が存在しないように各振動子が配列される。これによると、振動子が同心円状に配列された従来のものにおいて、所定の同心円の全振動子を一定角度回転した位置にずらすだけで、本発明の送受波器を得ることができ、振動子配列の設計が容易となる。
【0017】
また、本発明においては、分割された各エリアにまたがって振動子が同心円状に配列されている場合、エリアの中心から外に向かう不等間隔の配列ピッチは、空間的な重み付け処理がされている。これによると、トランスなどの部品やチャンネルごとの振幅制御機能を必要とせず、振動子配列を工夫するだけで重み付けによる指向性の改善を図ることができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、多数の振動子を用いなくても、振動子の配列を工夫するだけで、安価で良好な指向性を有する超音波送受波器を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態を図に従って説明する。図1は、本発明が適用される計量魚群探知機100の実施形態を示した電気ブロック図である。1は本発明に係る超音波送受波器(以下、単に「送受波器」という。)であって、電気/音響変換により水中へ超音波11を送信するとともに、水中の魚群Fで反射したエコー12を受信して音響/電気変換を行う複数の振動子(後述)を備えている。2は送信と受信とを切り替える送受切替部、3は送受波器1へ与える送信信号を出力する送信回路、4は送信信号の波形を生成する波形生成部である。5は送受波器1で音響/電気変換されたエコー12による信号を受信する受信回路、6は受信回路5から出力される信号に対してA/D変換、ビーム形成、単体魚分離、魚体長算出等の処理を行う演算処理部、7は演算処理部6で算出された魚体長のデータや魚群の映像などを画面上に表示する表示部である。
【0020】
図2は送受波器1の構成の一例を示しており、(a)は斜視図、(b)は下面図である。図2(a)のように、送受波器1の下面には多数の振動子10が配列されている。振動子10は、例えば円柱状の圧電セラミック等の電歪素子からなり、これに高周波または低周波の電圧を印加すると、素子が振動して超音波が送信される。8はケーブルであって、振動子10と電気的に接続されている。送受波器1は、図2(b)に示すように4つに分割されたチャンネルCh1〜Ch4を有しており、各チャンネルには複数の振動子10が図3に示すように配列されている。この配列の詳細については後述する。図1においては、送信回路3と受信回路5はそれぞれ1つのブロックで示しているが、実際には、複数の振動子10のそれぞれに対して送信回路3と受信回路5が設けられる。送受波器1は、超音波11の送信時には、全てのチャンネルCh1〜Ch4の振動子10から同相の超音波を送信し、エコー12の受信時には、チャンネルCh1,Ch2の組と、チャンネルCh3,Ch4の組、およびチャンネルCh1,Ch4の組と、チャンネルCh2,Ch3の組により、前後・左右方向からのエコーを受信する。それぞれのチャンネルに属する振動子10が受信した信号は、チャンネルごとに加算され、この加算された信号が当該チャンネルで受信された信号となる。
【0021】
次に、図3を参照して、送受波器1における振動子10の配列について説明する。図3において、AおよびBは隣接するエリア間の境界線であって、Aは右半分のチャンネルCh2,Ch3と、左半分のチャンネルCh1,Ch4との境界線、Bは上半分のチャンネルCh1,Ch2と、下半分のチャンネルCh3,Ch4との境界線である。振動子10は、分割された各エリアにまたがって同心円状に配列されており、エリアの中心O(境界線A,Bの交点)を中心とする同心円上において、円周方向に等間隔で配列されている。この例では、同心円が5周となっており、各同心円上に配列されている振動子10の数は、中心Oから数えて第1周目が4個、第2周目が8個、第3周目が16個、第4周目が20個、第5周目が24個となっており、合計72個の振動子10が配列されている。
【0022】
図3における振動子配列の第1の特徴は、隣接するエリア間の境界線A,B上に、当該境界線に沿って配列される振動子10の一部が位置するように各振動子が配列されていることである。すなわち、中心Oから数えて第3周目と第5周目の各同心円については、境界線A,B上に斜線で示した振動子が存在するように振動子10が配列され、他の同心円については境界線A,B上に振動子が存在しないように振動子10が配列されている。ここで、16個の振動子10が存在する第3周目の同心円上の振動子配列は、図10の従来例における第3周目の同心円上の振動子配列を円周方向に半ピッチ、すなわち(360°÷16)/2=11.25°回転させた配列に相当している。また、24個の振動子10が存在する第5周目の同心円上の振動子配列は、図10における第5周目の同心円上の振動子配列を円周方向に半ピッチ、すなわち(360°÷24)/2=7.5°回転させた配列に相当している。したがって、従来の送受波器50において、第3周目と第5周目の全振動子を一定角度回転した位置にずらすだけで、本発明の送受波器1を得ることができ、振動子配列の設計が容易となる。
【0023】
図3における振動子配列の第2の特徴は、エリアの中心Oから外に向かって、振動子10の配列ピッチが不等間隔となっていることである。すなわち、この例では、各同心円の半径は、同心円間のピッチ(配列ピッチ)α1〜α5が中心Oから外に向かって増加するように設定されており、α1<α2<α3<α4<α5の関係となっている。この結果、同心円の径方向における振動子10の配列ピッチは、中心Oから外に向って大きくなっている。そして、この配列ピッチに対しては、空間的な重み付け処理がされている。この重み付け処理にあたっては、例えば、各同心円の半径の比をそのまま重み付けの値とすることができる。重み付けの値としては、実験から求めた任意の値を用いてもよいし、チェビシェフ関数などの既存の重み付け関数から決まる値を用いてもよい。
【0024】
図3と図10とを対比すればわかるように、図3の振動子配列では、振動子10の数は図10の従来のものと同じであるが、境界線A,B上に振動子10の一部を位置させたことから、境界線A,B上で振動子配列の粗い部分が少なくなる。また、図10の振動子配列では、同心円間のピッチが等間隔であるため、中心部分の配列が粗く外側部分の配列が密となって、振動子の配列がまばらとなるが、図3の振動子配列では、同心円間のピッチが外に向って大きくなっているので、粗密が緩和されて振動子の配列を均一なものに近づけることができる。
【0025】
この結果、図3の振動子配列によれば、全体として振動子配列をできるだけ均等にし、かつ振動子間隔をできるだけ狭くすることができるので、図10の従来のものと比較して、サイドローブやグレーティングローブが抑制され、良好な指向性を得ることができる。図4は、図3の振動子配列による指向特性の一例であって、図11の従来の指向特性に比べて、サイドローブSLやグレーティングローブGLが改善されているのがわかる。特に、グレーティングローブGLの抑制効果は大きく、図11では大きく目立っていたグレーティングローブGLが、図4ではほとんど目立たなくなっている。
【0026】
なお、スプリットビーム方式を用いる場合、図3の境界線A,B上にある斜線で示した振動子は両方のエリア(チャンネル)に跨っているので、それぞれの境界線で分割されるエリアに1/2ずつ属するものとして演算処理を行うことにより、音波の到来角度や反射強度を従来通り正しく測定することができる。
【0027】
このようにして、図3の実施形態によれば、従来と同数の振動子を用いて、振動子の配列を工夫することにより、振動子をできるだけ均等に配置してサイドローブやグレーティングローブを抑制することができ、また、トランスなどの部品やチャンネルごとの振幅制御機能を必要とせずに重み付けができるので、低コストで良好な指向性を備えた送受波器を得ることができる。また、スプリットビーム方式に限らず、複数の送受信装置により振動子に与える電気信号の振幅や位相を制御してビームを任意の方向へ形成する場合(スタビライズ機能)においても同様の効果が得られる。
【0028】
図5は、本発明の他の実施形態に係る送受波器の振動子配列を示した図である。図5において、図3と同一部分には同一符号を付してある。図5の送受波器1では、図3の送受波器1と同様に、エリアの中心Oから外に向かって、振動子10の配列ピッチが不等間隔となっている。すなわち、各同心円の半径は、同心円間のピッチ(配列ピッチ)α1〜α5が中心Oから外に向かって増加するように設定されており、α1<α2<α3<α4<α5の関係となっている。この結果、同心円の径方向における振動子10の配列ピッチは、中心Oから外に向って大きくなっている。ただし、図5の場合は、図3のように境界線A,B上に振動子10の一部を位置させる配列にはなっておらず、同心円の周方向の振動子配列に関しては、図10の従来のものと同様である。
【0029】
図5において、同心円の径方向の配列ピッチに関しては、図3と同様の空間的な重み付け処理がされている。この重み付け処理にあたっては、前述のように、例えば各同心円の半径の比をそのまま重み付けの値とすることができる。この場合も、重み付けの値としては、実験から求めた任意の値を用いてもよいし、チェビシェフ関数などの既存の重み付け関数から決まる値を用いてもよい。
【0030】
図5と図10とを対比すればわかるように、図5の振動子配列では、振動子10の数は図10の従来のものと同じであるが、図10の振動子配列では、同心円間のピッチが等間隔であるため、中心部分の配列が粗く外側部分の配列が密となって、振動子の配列がまばらとなるのに対し、図5の振動子配列では、同心円間のピッチが外に向って大きくなっているので、粗密が緩和されて振動子の配列を均一なものに近づけることができる。
【0031】
したがって、図5の振動子配列によれば、全体として振動子配列をできるだけ均等にし、かつ振動子間隔をできるだけ狭くすることができるので、図10の従来のものと比較して、サイドローブやグレーティングローブが抑制され、良好な指向性を得ることができる。図6は、図5の振動子配列による指向特性の一例であって、先の図4で示した指向特性には及ばないものの、図11の指向特性に比べて、サイドローブSLやグレーティングローブGLが改善されているのがわかる。
【0032】
このようにして、図5の実施形態によれば、従来と同数の振動子を用いて、振動子の配列を工夫することにより、振動子をできるだけ均等に配置してサイドローブやグレーティングローブを抑制することができ、また、トランスなどの部品やチャンネルごとの振幅制御機能を必要とせずに重み付けができるので、低コストで良好な指向性を備えた送受波器を得ることができる。また、スプリットビーム方式に限らず、複数の送受信装置により振動子に与える電気信号の振幅や位相を制御してビームを任意の方向へ形成する場合(スタビライズ機能)においても同様の効果が得られる。
【0033】
図7は、本発明の他の実施形態に係る送受波器の振動子配列を示した図である。図7において、図3と同一部分には同一符号を付してある。図7の送受波器1では、図3の送受波器1と同様に、隣接するエリア間の境界線A,B上に、当該境界線に沿って配列される振動子10の一部が位置するように各振動子が配列されている。すなわち、中心Oから数えて第3周目と第5周目の各同心円については、境界線A,B上に斜線で示した振動子が存在するように振動子10が配列され、他の同心円については境界線A,B上に振動子が存在しないように振動子10が配列されている。ここで、16個の振動子10が存在する第3周目の同心円上の振動子配列は、図10の従来例における第3周目の同心円上の振動子配列を円周方向に半ピッチ、すなわち(360°÷16)/2=11.25°回転させた配列に相当している。また、24個の振動子10が存在する第5周目の同心円上の振動子配列は、図10における第5周目の同心円上の振動子配列を円周方向に半ピッチ、すなわち(360°÷24)/2=7.5°回転させた配列に相当している。ただし、図7の場合は、図3のようにエリアの中心Oから外に向かって、振動子10の配列ピッチが不等間隔となっておらず、同心円の径方向の振動子配列に関しては、図10の従来のものと同様に、等間隔の配列ピッチとなっている。
【0034】
図7と図10とを対比すればわかるように、図7の振動子配列では、振動子10の数は図10の従来のものと同じであるが、境界線A,B上に振動子10の一部を位置させたことから、境界線A,B上で振動子配列の粗い部分が少なくなる。この結果、図7の振動子配列によれば、全体として振動子配列をできるだけ均等にし、かつ振動子間隔をできるだけ狭くすることができるので、先の図4で示した指向特性には及ばないものの、図10の従来のものと比較して、サイドローブやグレーティングローブが抑制され、良好な指向性(図示省略)を得ることができる。
【0035】
なお、図7においても、スプリットビーム方式を用いる場合、境界線A,B上にある斜線で示した振動子は両方のエリア(チャンネル)に跨っているので、図3の場合と同様に、それぞれの境界線で分割されるエリアに1/2ずつ属するものとして演算処理を行うことにより、音波の到来角度や反射強度を従来通り正しく測定することができる。
【0036】
このようにして、図7の実施形態によれば、従来と同数の振動子を用いて、振動子の配列を工夫することにより、振動子をできるだけ均等に配置してサイドローブやグレーティングローブを抑制することができるので、低コストで良好な指向性を備えた送受波器を得ることができる。また、スプリットビーム方式に限らず、複数の送受信装置により振動子に与える電気信号の振幅や位相を制御してビームを任意の方向へ形成する場合(スタビライズ機能)においても同様の効果が得られる。
【0037】
上述した各実施形態では、エリアを4分割した送受波器1の例を示したが、本発明はこれに限らず、エリアを3分割した送受波器や、エリアを5以上に分割した送受波器にも適用することができる。
【0038】
また、上記実施形態においては、合計72個の振動子10を用いた送受波器1を例に挙げたが、これは一例であって、振動子10の数は72個以上でも72個未満でもよい。
【0039】
また、上記実施形態においては、振動子10を円形に配列した送受波器1を例に挙げたが、本発明はこれに限らず、ラインアレイや矩形アレイのような他の振動子配列を備えた送受波器にも適用することができる。
【0040】
さらに、上記実施形態においては、水中の魚量を求める計量魚群探知機に本発明の送受波器を用いた例を挙げたが、本発明の送受波器は、計量魚群探知機以外の魚群探知機にも用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明が適用される計量魚群探知機の実施形態を示した電気ブロック図である。
【図2】送受波器の構成の一例を示す図である。
【図3】送受波器における振動子配列を示した図である。
【図4】図3の振動子配列による指向特性の一例である。
【図5】他の実施形態による送受波器の振動子配列を示した図である。
【図6】図5の振動子配列による指向特性の一例である。
【図7】他の実施形態による送受波器の振動子配列を示した図である。
【図8】スプリットビーム方式の原理を説明する図である。
【図9】従来の振動子配列を示した図である。
【図10】従来の他の振動子配列を示した図である
【図11】図10の振動子配列による指向特性の一例である。
【符号の説明】
【0042】
1 超音波送受波器
2 送受切替部
3 送信回路
4 波形生成部
5 受信回路
6 演算処理部
7 表示部
10 振動子
11 超音波
12 エコー
100 計量魚群探知機
A,B 境界線
Ch1〜Ch4 チャンネル
α1〜α5 配列ピッチ
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば計量魚群探知機などに用いられる超音波送受波器に関する。
【背景技術】
【0002】
海中の資源量を調査するために、従来から音響手法を利用した計量魚群探知機が用いられている。計量魚群探知機は、送受波器から送信した超音波の音圧レベルと、魚群で反射したエコーの音圧レベルとの比、すなわち反射強度TS(Target Strength)が魚の体長の2乗に比例することを利用して、水中の魚量を求める装置である。
【0003】
このような計量魚群探知機で魚量を求めるには、反射強度TSの値を正確に測定する必要があるが、送受波器の受信感度は音波の到来方向によって異なり、メインローブ方向(音軸方向)に対する感度が最大であって、この方向からずれるに従って受信感度は低下する。このため、任意の方向から到来するエコーから求めた反射強度は正確な反射強度ではなく、測定誤差が含まれているので、反射強度を到来方向に応じて補正する必要がある。そこで、この到来方向を測定するために、計量魚群探知機ではスプリットビーム方式が広く採用されている。スプリットビーム方式については、例えば後掲の特許文献1に記載されている。
【0004】
図8は、スプリットビーム方式によるエコー到来方向の測定原理を説明する図である。図8(a)は4つのチャンネルCh1〜Ch4に分割された円盤型の送受波器50の下面図を示している。図8(b)のように、例えばチャンネルCh1とチャンネルCh4で受信された各受信信号の位相差をφ、エコーの到来角をθ、チャンネルCh1,Ch4の中心間距離をLとしたとき、これらの間には次式が成立する。
φ=k・L・sinθ (1)
ここで、kは波数であって、k=2π/λ(λ:超音波の波長)である。
上式より、
θ=sin−1 (φ/kL) (2)
【0005】
よって、式(2)より、チャンネルCh1,Ch4の中心間距離Lが分かっておれば、受信信号の位相差φを測定することによって、エコーの到来角θを算出することができる。そして、この算出された到来角θに応じて、送受波器50の指向特性が補正され、エコーから求めた反射強度TS0は、正確な反射強度TSに換算される。送受波器50の指向特性をD(θ)としたとき、反射強度TSは次式のように表される。
TS=D(θ)2・TS0 (3)
【0006】
このようなスプリットビーム方式により反射強度を測定する場合、従来は、図9に示すような円盤型の送受波器50が用いられていた。図9において、送受波器50は、例えば316個の振動子51を備えており、これらの振動子51が密集して送受波器50上に配列されている。後掲の特許文献2には、このように振動子を密集配列した超音波送受波器が記載されている。
【0007】
【特許文献1】特開2002−82155号公報
【特許文献2】特開平8−201512号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
図9のような送受波器50では、振動子間の間隔が半波長(λ/2)以下となるように振動子51を均等に配列(円形配列の場合は、等間隔ピッチで同心円状に配列)することにより、エコーのサイドローブやグレーティングローブを抑制することができるが、その一方で、振動子51の数が非常に多くなって、コストが大幅に上昇するという問題がある。
【0009】
そこで、図10に示したように、ある程度大きな振動子51を同心円状に所定間隔をおいて配列することで、振動子51の数を少なくした送受波器50が考えられる。しかしながら、この送受波器50では、振動子51の径が大きいために振動子間のピッチを半波長以下にすることが困難である。そして、チャンネルCh1〜Ch4の各エリアに属する振動子51が境界線A,Bにより完全に分割され、境界線A,B上に振動子配列の粗い部分が生じることから、図11に示すように、メインローブML以外に、サイドローブSLやグレーティングローブGLの信号レベルが高くなって指向性が低下する。この結果、サイドローブSLやグレーティングローブGLの映像が表示部に雑音として現われ、本来のエコーによる映像を正確に識別できなくなるおそれがある。これは、スプリットビーム方式に限らず、複数の送受信装置により振動子に与える電気信号の振幅や位相を制御してビームを任意の方向へ形成する場合(スタビライズ機能)においても同様である。
【0010】
このようなサイドローブやグレーティングローブを抑制する方法として、振動子に与える電気信号の振幅に対して、例えばチェビシェフ(Chebyshev)関数のような重み付けを行うことが知られている。しかしながら、これを実現するためには、トランスなどの部品やチャンネルごとの振幅制御機能が必要となるため、構造や回路が複雑となってコスト高になるという問題がある。
【0011】
そこで、本発明の目的とするところは、低コストで良好な指向性が得られる超音波送受波器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、水中へ超音波を送信するとともに当該超音波のエコーを受信する複数の振動子を備え、これらの振動子の配列されたエリアが複数に分割されている超音波送受波器において、隣接するエリア間の境界線上に、当該境界線に沿って配列される振動子の一部が位置するように各振動子を配列し、かつ、エリアの中心から外に向かって振動子の配列ピッチを不等間隔としたものである。
【0013】
本発明では、従来と同数の振動子を用いても、エリア間の境界線上に振動子の一部を位置させ、また、配列ピッチをエリア中心から外に向って不等間隔とすることによって、振動子配列をできるだけ均等にし、かつ振動子間隔をできるだけ狭くすることが可能となる。このため、多数の振動子を敷き詰めなくても、振動子の配列を工夫するだけで、サイドローブやグレーティングローブを有効に抑制することができ、低コストで良好な指向性を得ることができる。
【0014】
本発明においては、隣接するエリア間の境界線上に、当該境界線に沿って配列される振動子の一部が位置するように各振動子を配列するだけでも、従来に比べてサイドローブやグレーティングローブを抑制できる効果があり、振動子の数を増加させることなく、良好な指向性を得ることができる。
【0015】
また、本発明においては、エリアの中心から外に向かって振動子の配列ピッチを不等間隔とするだけでも、従来に比べてサイドローブやグレーティングローブを抑制できる効果があり、振動子の数を増加させることなく、良好な指向性を得ることができる。
【0016】
また、本発明においては、分割された各エリアにまたがって振動子が同心円状に配列されている場合、一部の同心円についてはエリア間の境界線上に振動子が存在し、他の同心円については境界線上に振動子が存在しないように各振動子が配列される。これによると、振動子が同心円状に配列された従来のものにおいて、所定の同心円の全振動子を一定角度回転した位置にずらすだけで、本発明の送受波器を得ることができ、振動子配列の設計が容易となる。
【0017】
また、本発明においては、分割された各エリアにまたがって振動子が同心円状に配列されている場合、エリアの中心から外に向かう不等間隔の配列ピッチは、空間的な重み付け処理がされている。これによると、トランスなどの部品やチャンネルごとの振幅制御機能を必要とせず、振動子配列を工夫するだけで重み付けによる指向性の改善を図ることができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、多数の振動子を用いなくても、振動子の配列を工夫するだけで、安価で良好な指向性を有する超音波送受波器を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態を図に従って説明する。図1は、本発明が適用される計量魚群探知機100の実施形態を示した電気ブロック図である。1は本発明に係る超音波送受波器(以下、単に「送受波器」という。)であって、電気/音響変換により水中へ超音波11を送信するとともに、水中の魚群Fで反射したエコー12を受信して音響/電気変換を行う複数の振動子(後述)を備えている。2は送信と受信とを切り替える送受切替部、3は送受波器1へ与える送信信号を出力する送信回路、4は送信信号の波形を生成する波形生成部である。5は送受波器1で音響/電気変換されたエコー12による信号を受信する受信回路、6は受信回路5から出力される信号に対してA/D変換、ビーム形成、単体魚分離、魚体長算出等の処理を行う演算処理部、7は演算処理部6で算出された魚体長のデータや魚群の映像などを画面上に表示する表示部である。
【0020】
図2は送受波器1の構成の一例を示しており、(a)は斜視図、(b)は下面図である。図2(a)のように、送受波器1の下面には多数の振動子10が配列されている。振動子10は、例えば円柱状の圧電セラミック等の電歪素子からなり、これに高周波または低周波の電圧を印加すると、素子が振動して超音波が送信される。8はケーブルであって、振動子10と電気的に接続されている。送受波器1は、図2(b)に示すように4つに分割されたチャンネルCh1〜Ch4を有しており、各チャンネルには複数の振動子10が図3に示すように配列されている。この配列の詳細については後述する。図1においては、送信回路3と受信回路5はそれぞれ1つのブロックで示しているが、実際には、複数の振動子10のそれぞれに対して送信回路3と受信回路5が設けられる。送受波器1は、超音波11の送信時には、全てのチャンネルCh1〜Ch4の振動子10から同相の超音波を送信し、エコー12の受信時には、チャンネルCh1,Ch2の組と、チャンネルCh3,Ch4の組、およびチャンネルCh1,Ch4の組と、チャンネルCh2,Ch3の組により、前後・左右方向からのエコーを受信する。それぞれのチャンネルに属する振動子10が受信した信号は、チャンネルごとに加算され、この加算された信号が当該チャンネルで受信された信号となる。
【0021】
次に、図3を参照して、送受波器1における振動子10の配列について説明する。図3において、AおよびBは隣接するエリア間の境界線であって、Aは右半分のチャンネルCh2,Ch3と、左半分のチャンネルCh1,Ch4との境界線、Bは上半分のチャンネルCh1,Ch2と、下半分のチャンネルCh3,Ch4との境界線である。振動子10は、分割された各エリアにまたがって同心円状に配列されており、エリアの中心O(境界線A,Bの交点)を中心とする同心円上において、円周方向に等間隔で配列されている。この例では、同心円が5周となっており、各同心円上に配列されている振動子10の数は、中心Oから数えて第1周目が4個、第2周目が8個、第3周目が16個、第4周目が20個、第5周目が24個となっており、合計72個の振動子10が配列されている。
【0022】
図3における振動子配列の第1の特徴は、隣接するエリア間の境界線A,B上に、当該境界線に沿って配列される振動子10の一部が位置するように各振動子が配列されていることである。すなわち、中心Oから数えて第3周目と第5周目の各同心円については、境界線A,B上に斜線で示した振動子が存在するように振動子10が配列され、他の同心円については境界線A,B上に振動子が存在しないように振動子10が配列されている。ここで、16個の振動子10が存在する第3周目の同心円上の振動子配列は、図10の従来例における第3周目の同心円上の振動子配列を円周方向に半ピッチ、すなわち(360°÷16)/2=11.25°回転させた配列に相当している。また、24個の振動子10が存在する第5周目の同心円上の振動子配列は、図10における第5周目の同心円上の振動子配列を円周方向に半ピッチ、すなわち(360°÷24)/2=7.5°回転させた配列に相当している。したがって、従来の送受波器50において、第3周目と第5周目の全振動子を一定角度回転した位置にずらすだけで、本発明の送受波器1を得ることができ、振動子配列の設計が容易となる。
【0023】
図3における振動子配列の第2の特徴は、エリアの中心Oから外に向かって、振動子10の配列ピッチが不等間隔となっていることである。すなわち、この例では、各同心円の半径は、同心円間のピッチ(配列ピッチ)α1〜α5が中心Oから外に向かって増加するように設定されており、α1<α2<α3<α4<α5の関係となっている。この結果、同心円の径方向における振動子10の配列ピッチは、中心Oから外に向って大きくなっている。そして、この配列ピッチに対しては、空間的な重み付け処理がされている。この重み付け処理にあたっては、例えば、各同心円の半径の比をそのまま重み付けの値とすることができる。重み付けの値としては、実験から求めた任意の値を用いてもよいし、チェビシェフ関数などの既存の重み付け関数から決まる値を用いてもよい。
【0024】
図3と図10とを対比すればわかるように、図3の振動子配列では、振動子10の数は図10の従来のものと同じであるが、境界線A,B上に振動子10の一部を位置させたことから、境界線A,B上で振動子配列の粗い部分が少なくなる。また、図10の振動子配列では、同心円間のピッチが等間隔であるため、中心部分の配列が粗く外側部分の配列が密となって、振動子の配列がまばらとなるが、図3の振動子配列では、同心円間のピッチが外に向って大きくなっているので、粗密が緩和されて振動子の配列を均一なものに近づけることができる。
【0025】
この結果、図3の振動子配列によれば、全体として振動子配列をできるだけ均等にし、かつ振動子間隔をできるだけ狭くすることができるので、図10の従来のものと比較して、サイドローブやグレーティングローブが抑制され、良好な指向性を得ることができる。図4は、図3の振動子配列による指向特性の一例であって、図11の従来の指向特性に比べて、サイドローブSLやグレーティングローブGLが改善されているのがわかる。特に、グレーティングローブGLの抑制効果は大きく、図11では大きく目立っていたグレーティングローブGLが、図4ではほとんど目立たなくなっている。
【0026】
なお、スプリットビーム方式を用いる場合、図3の境界線A,B上にある斜線で示した振動子は両方のエリア(チャンネル)に跨っているので、それぞれの境界線で分割されるエリアに1/2ずつ属するものとして演算処理を行うことにより、音波の到来角度や反射強度を従来通り正しく測定することができる。
【0027】
このようにして、図3の実施形態によれば、従来と同数の振動子を用いて、振動子の配列を工夫することにより、振動子をできるだけ均等に配置してサイドローブやグレーティングローブを抑制することができ、また、トランスなどの部品やチャンネルごとの振幅制御機能を必要とせずに重み付けができるので、低コストで良好な指向性を備えた送受波器を得ることができる。また、スプリットビーム方式に限らず、複数の送受信装置により振動子に与える電気信号の振幅や位相を制御してビームを任意の方向へ形成する場合(スタビライズ機能)においても同様の効果が得られる。
【0028】
図5は、本発明の他の実施形態に係る送受波器の振動子配列を示した図である。図5において、図3と同一部分には同一符号を付してある。図5の送受波器1では、図3の送受波器1と同様に、エリアの中心Oから外に向かって、振動子10の配列ピッチが不等間隔となっている。すなわち、各同心円の半径は、同心円間のピッチ(配列ピッチ)α1〜α5が中心Oから外に向かって増加するように設定されており、α1<α2<α3<α4<α5の関係となっている。この結果、同心円の径方向における振動子10の配列ピッチは、中心Oから外に向って大きくなっている。ただし、図5の場合は、図3のように境界線A,B上に振動子10の一部を位置させる配列にはなっておらず、同心円の周方向の振動子配列に関しては、図10の従来のものと同様である。
【0029】
図5において、同心円の径方向の配列ピッチに関しては、図3と同様の空間的な重み付け処理がされている。この重み付け処理にあたっては、前述のように、例えば各同心円の半径の比をそのまま重み付けの値とすることができる。この場合も、重み付けの値としては、実験から求めた任意の値を用いてもよいし、チェビシェフ関数などの既存の重み付け関数から決まる値を用いてもよい。
【0030】
図5と図10とを対比すればわかるように、図5の振動子配列では、振動子10の数は図10の従来のものと同じであるが、図10の振動子配列では、同心円間のピッチが等間隔であるため、中心部分の配列が粗く外側部分の配列が密となって、振動子の配列がまばらとなるのに対し、図5の振動子配列では、同心円間のピッチが外に向って大きくなっているので、粗密が緩和されて振動子の配列を均一なものに近づけることができる。
【0031】
したがって、図5の振動子配列によれば、全体として振動子配列をできるだけ均等にし、かつ振動子間隔をできるだけ狭くすることができるので、図10の従来のものと比較して、サイドローブやグレーティングローブが抑制され、良好な指向性を得ることができる。図6は、図5の振動子配列による指向特性の一例であって、先の図4で示した指向特性には及ばないものの、図11の指向特性に比べて、サイドローブSLやグレーティングローブGLが改善されているのがわかる。
【0032】
このようにして、図5の実施形態によれば、従来と同数の振動子を用いて、振動子の配列を工夫することにより、振動子をできるだけ均等に配置してサイドローブやグレーティングローブを抑制することができ、また、トランスなどの部品やチャンネルごとの振幅制御機能を必要とせずに重み付けができるので、低コストで良好な指向性を備えた送受波器を得ることができる。また、スプリットビーム方式に限らず、複数の送受信装置により振動子に与える電気信号の振幅や位相を制御してビームを任意の方向へ形成する場合(スタビライズ機能)においても同様の効果が得られる。
【0033】
図7は、本発明の他の実施形態に係る送受波器の振動子配列を示した図である。図7において、図3と同一部分には同一符号を付してある。図7の送受波器1では、図3の送受波器1と同様に、隣接するエリア間の境界線A,B上に、当該境界線に沿って配列される振動子10の一部が位置するように各振動子が配列されている。すなわち、中心Oから数えて第3周目と第5周目の各同心円については、境界線A,B上に斜線で示した振動子が存在するように振動子10が配列され、他の同心円については境界線A,B上に振動子が存在しないように振動子10が配列されている。ここで、16個の振動子10が存在する第3周目の同心円上の振動子配列は、図10の従来例における第3周目の同心円上の振動子配列を円周方向に半ピッチ、すなわち(360°÷16)/2=11.25°回転させた配列に相当している。また、24個の振動子10が存在する第5周目の同心円上の振動子配列は、図10における第5周目の同心円上の振動子配列を円周方向に半ピッチ、すなわち(360°÷24)/2=7.5°回転させた配列に相当している。ただし、図7の場合は、図3のようにエリアの中心Oから外に向かって、振動子10の配列ピッチが不等間隔となっておらず、同心円の径方向の振動子配列に関しては、図10の従来のものと同様に、等間隔の配列ピッチとなっている。
【0034】
図7と図10とを対比すればわかるように、図7の振動子配列では、振動子10の数は図10の従来のものと同じであるが、境界線A,B上に振動子10の一部を位置させたことから、境界線A,B上で振動子配列の粗い部分が少なくなる。この結果、図7の振動子配列によれば、全体として振動子配列をできるだけ均等にし、かつ振動子間隔をできるだけ狭くすることができるので、先の図4で示した指向特性には及ばないものの、図10の従来のものと比較して、サイドローブやグレーティングローブが抑制され、良好な指向性(図示省略)を得ることができる。
【0035】
なお、図7においても、スプリットビーム方式を用いる場合、境界線A,B上にある斜線で示した振動子は両方のエリア(チャンネル)に跨っているので、図3の場合と同様に、それぞれの境界線で分割されるエリアに1/2ずつ属するものとして演算処理を行うことにより、音波の到来角度や反射強度を従来通り正しく測定することができる。
【0036】
このようにして、図7の実施形態によれば、従来と同数の振動子を用いて、振動子の配列を工夫することにより、振動子をできるだけ均等に配置してサイドローブやグレーティングローブを抑制することができるので、低コストで良好な指向性を備えた送受波器を得ることができる。また、スプリットビーム方式に限らず、複数の送受信装置により振動子に与える電気信号の振幅や位相を制御してビームを任意の方向へ形成する場合(スタビライズ機能)においても同様の効果が得られる。
【0037】
上述した各実施形態では、エリアを4分割した送受波器1の例を示したが、本発明はこれに限らず、エリアを3分割した送受波器や、エリアを5以上に分割した送受波器にも適用することができる。
【0038】
また、上記実施形態においては、合計72個の振動子10を用いた送受波器1を例に挙げたが、これは一例であって、振動子10の数は72個以上でも72個未満でもよい。
【0039】
また、上記実施形態においては、振動子10を円形に配列した送受波器1を例に挙げたが、本発明はこれに限らず、ラインアレイや矩形アレイのような他の振動子配列を備えた送受波器にも適用することができる。
【0040】
さらに、上記実施形態においては、水中の魚量を求める計量魚群探知機に本発明の送受波器を用いた例を挙げたが、本発明の送受波器は、計量魚群探知機以外の魚群探知機にも用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明が適用される計量魚群探知機の実施形態を示した電気ブロック図である。
【図2】送受波器の構成の一例を示す図である。
【図3】送受波器における振動子配列を示した図である。
【図4】図3の振動子配列による指向特性の一例である。
【図5】他の実施形態による送受波器の振動子配列を示した図である。
【図6】図5の振動子配列による指向特性の一例である。
【図7】他の実施形態による送受波器の振動子配列を示した図である。
【図8】スプリットビーム方式の原理を説明する図である。
【図9】従来の振動子配列を示した図である。
【図10】従来の他の振動子配列を示した図である
【図11】図10の振動子配列による指向特性の一例である。
【符号の説明】
【0042】
1 超音波送受波器
2 送受切替部
3 送信回路
4 波形生成部
5 受信回路
6 演算処理部
7 表示部
10 振動子
11 超音波
12 エコー
100 計量魚群探知機
A,B 境界線
Ch1〜Ch4 チャンネル
α1〜α5 配列ピッチ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水中へ超音波を送信するとともに当該超音波のエコーを受信する複数の振動子を備え、前記振動子の配列されたエリアが複数に分割されている超音波送受波器において、
隣接するエリア間の境界線上に、当該境界線に沿って配列される振動子の一部が位置するように各振動子を配列し、かつ、前記エリアの中心から外に向かって振動子の配列ピッチを不等間隔としたことを特徴とする超音波送受波器。
【請求項2】
水中へ超音波を送信するとともに当該超音波のエコーを受信する複数の振動子を備え、前記振動子の配列されたエリアが複数に分割されている超音波送受波器において、
隣接するエリア間の境界線上に、当該境界線に沿って配列される振動子の一部が位置するように各振動子を配列したことを特徴とする超音波送受波器。
【請求項3】
水中へ超音波を送信するとともに当該超音波のエコーを受信する複数の振動子を備え、前記振動子の配列されたエリアが複数に分割されている超音波送受波器において、
前記エリアの中心から外に向かって振動子の配列ピッチを不等間隔としたことを特徴とする超音波送受波器。
【請求項4】
請求項1または請求項2に記載の超音波送受波器において、
前記振動子は、分割された各エリアにまたがって同心円状に配列されており、
一部の同心円については前記境界線上に振動子が存在し、他の同心円については前記境界線上に振動子が存在しないように各振動子を配列したことを特徴とする超音波送受波器。
【請求項5】
請求項1または請求項3に記載の超音波送受波器において、
前記振動子は、分割された各エリアにまたがって同心円状に配列されており、
前記不等間隔の配列ピッチは、空間的な重み付け処理がされていることを特徴とする超音波送受波器。
【請求項1】
水中へ超音波を送信するとともに当該超音波のエコーを受信する複数の振動子を備え、前記振動子の配列されたエリアが複数に分割されている超音波送受波器において、
隣接するエリア間の境界線上に、当該境界線に沿って配列される振動子の一部が位置するように各振動子を配列し、かつ、前記エリアの中心から外に向かって振動子の配列ピッチを不等間隔としたことを特徴とする超音波送受波器。
【請求項2】
水中へ超音波を送信するとともに当該超音波のエコーを受信する複数の振動子を備え、前記振動子の配列されたエリアが複数に分割されている超音波送受波器において、
隣接するエリア間の境界線上に、当該境界線に沿って配列される振動子の一部が位置するように各振動子を配列したことを特徴とする超音波送受波器。
【請求項3】
水中へ超音波を送信するとともに当該超音波のエコーを受信する複数の振動子を備え、前記振動子の配列されたエリアが複数に分割されている超音波送受波器において、
前記エリアの中心から外に向かって振動子の配列ピッチを不等間隔としたことを特徴とする超音波送受波器。
【請求項4】
請求項1または請求項2に記載の超音波送受波器において、
前記振動子は、分割された各エリアにまたがって同心円状に配列されており、
一部の同心円については前記境界線上に振動子が存在し、他の同心円については前記境界線上に振動子が存在しないように各振動子を配列したことを特徴とする超音波送受波器。
【請求項5】
請求項1または請求項3に記載の超音波送受波器において、
前記振動子は、分割された各エリアにまたがって同心円状に配列されており、
前記不等間隔の配列ピッチは、空間的な重み付け処理がされていることを特徴とする超音波送受波器。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2007−127561(P2007−127561A)
【公開日】平成19年5月24日(2007.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−321651(P2005−321651)
【出願日】平成17年11月5日(2005.11.5)
【出願人】(000166247)古野電気株式会社 (441)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年5月24日(2007.5.24)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年11月5日(2005.11.5)
【出願人】(000166247)古野電気株式会社 (441)
【Fターム(参考)】
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