説明

超高感度磁力減少測定システムおよびこれを用いた超高感度、洗浄不要の測定方法

【課題】多重活性エピトープ、単一活性エピトープまたは小生体分子の濃度を高感度で測定することができる超高感度SQUID系磁力減少測定システムを提供する。
【解決手段】当該超高感度磁力減少測定システムの感度は1ppt以下である。当該システムは試料ユニット100aとセンサーユニット100bとを備える。試料ユニットは励磁コイル101,102とピックアップコイル106および該ピックアップコイルの内側に収容した試料105を備え、当該試料は少なくとも検出すべき生体分子に抱合された生体レセプターで被覆された磁性ナノ粒子を含む。センサーユニットはSQUID磁力計109と結合コイル107を備え、ピックアップコイルによって感知した試料の磁化を結合コイルを介してセンサーユニットの磁力計に移送する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生体分子の濃度を測定するためのシステムおよびこれを用いた生体分子の濃度を測定する方法に関する。より詳しくは、本発明は、超高感度磁力減少測定システムおよびこれを用いた超高感度の洗浄不要の測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
血清や尿のような検体中の生体分子の濃度を測定するために、その抗原に対する抗体または複数の抗体の反応に基づく免疫測定法を多くの場合に適用する。かかる免疫測定法の一つは、酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)である。従来のELISA(所謂サンドイッチELISA)は、一つの抗体(捕捉抗体)をプレートウェルの底に付着した固相に結合することを要求する。次いで、未知量の抗原を有する試料を加え、結合した抗体との錯体とする。抗原を固着した後、同一の抗原特異性を有する他の抗体(検出抗体)を固着した捕捉抗体として加えて抗原との錯体を形成する。次いで、検出抗体を酵素に共有結合的に結合することができる。プレートを各ステップ間で通常洗浄してあらゆる未結合タンパク質や抗体を除去する。最終洗浄ステップ後、色素産生基質または蛍光発生的基質を添加することによりプレートを現像して、試料中の生体分子の量を示す信号を生成する。要するに、サンドイッチELISAは、2種類の抗体(捕捉抗体と検出抗体)を必要とする。さらに、2種の抗体は、抗原と重複しないエピトープに結合する。基本的にサンドイッチELISAは、単一の活性エピトープを有する分子、例えば小分子の検出に不適当である。競合ELISA、LC/MS/MS(液体クロマトグラフィー/マススペクトロメトリー/マススペクトロメトリー)、高速液体クロマトグラフィー、キャピラリー電気詠動法のような他の方法論もまた、単一活性エピトープ生体分子を測定するのに適用されている。しかし、これらの方法は、通常無向性で、費用が掛かるか、又は複雑な試料調製若しくは測定プロセスを含む。
【0003】
近年、定量的に生体分子を検出する代替方法が探求されている。例えば、磁性ナノ粒子の表面を生体レセプターで被覆した生体官能化磁性ナノ粒子を用いて特定の生体分子に印をつける。次いで、生体官能化磁性ナノ粒子により印を付けた、すなわち該粒子で抱合された生体分子の磁性特性での差異を、生体分子の量を決定するために測定する。生体官能化磁性ナノ粒子をマーカーとして用いる測定法は、磁気標識診断法(MLD)と称される。
【0004】
研究者の数グループは、MLDに関する可能性の高い方法論、例えば磁気緩和、残留磁気、混合周波数磁化率、飽和磁化等の測定を報告している。これらMLDの方法論の結果によれば、一部は高い利便性の利点を明示する一方、その他は高感度の利点を示す。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、生体分子を測定するための超高感度磁力減少測定システムを提供し、ここで超高感度磁力減少測定システムの感度が1ppt(1兆分の1)以下である。
【0006】
本発明はまた、多重活性エピトープ生体分子又は単一活性エピトープ生体分子の量を測定し得る超高感度磁力減少測定システムを提供し、ここで前記単一活性エピトープ生体分子は小分子を含む。
【課題を解決するための手段】
【0007】
ここに具体化し、広く記載するように、本発明の超高感度磁力減少測定システムは、試料ユニットとセンサーユニットを備え、ここで磁性ナノ粒子を含む試料を前記試料ユニット内に収納し、試料の磁化が結合コイルを介して前記センサーユニット内の磁力計に移送される。
【0008】
本発明の超高感度磁力減少測定システムによれば、磁力計が試料から空間的に遠くにあり、励起磁界を試料に付与する。従って、磁力計は乱されないままであり、測定の感度が強化される。
【0009】
本発明の超高感度磁力減少測定システムによれば、磁力計が超伝電導量子干渉デバイス(SQUID)を備える。
【0010】
本発明の超高感度磁力減少測定システムによれば、磁力計が高遷移温度(高Tc)rf(無線周波数)SQUIDである。
【0011】
本発明の超高感度磁力減少測定システムによれば、試料ユニットが磁束を試料に供給するための2つの励磁コイルをさらに備える。
【0012】
本発明の超高感度磁力減少測定システムによれば、試料ユニットがさらにピックアップコイルを備え、この場合少なくとも生体レセプターで被覆した磁性ナノ粒子を含む試料がピックアップコイルの一部分内に設定される。
【0013】
本発明の超高感度磁力減少測定システムによれば、ピックアップコイルを結合コイルに接続する。
【0014】
本発明の超高感度磁力減少測定システムによれば、当該システムが試料の交流磁化率を測定し、ここで生体分子を磁性ナノ粒子と会合する前後での試料の交流磁化率における差異が生体分子の量の増加とともに増加する。
【0015】
本発明は、生体標的の量を定量的に決定するための超高感度方法を提供し、ここで当該方法の感度が約1ppt以下である。
【0016】
本発明はまた、生体標的の量を定量的に決定するための超高感度方法を提供し、ここで高レベルの特異性が達成される。
【0017】
本発明は、生体標的の量を定量的に決定するための超高感度方法を提供し、ここで当該方法が多重活性エピトープ生体分子または単一活性エピトープ生体分子の量を定量的に測定することができ、さらに当該単一活性エピトープが小分子を含む。
【0018】
本発明は、生体標的の量を定量的に決定するための超高感度方法を提供し、ここで当該方法が洗浄処理をステップ間で実質的に不要にする。
【0019】
ここに具体化し、広く記載するように、本発明の超高感度方法は、磁気試薬を準備し、該磁気試薬の交流磁化率(χac,0)を測定し、前記磁気試薬を生体標的を含む試料溶液と混合し、該試料溶液との混合後に前記磁気試薬の交流磁化率(χac,φ)を測定し、生体分子との混合前後の当該試薬の交流磁化率における差異(Δχac,φ)を算出することを備え、ここでΔχac,φ≡(χac,0−χac,φ)である。
【0020】
本発明の方法によれば、Δχac,φと、生体標的の種々の既知濃度との間の特性曲線を確立し、試料溶液中の生体標的の濃度を当該特性曲線に従って決定する。
【0021】
本発明の方法によれば、Δχac,φ/χac,0と、生体標的の種々の既知濃度との間の標準化特性曲線を確立し、試料溶液中の生体標的の濃度を当該特性曲線に従って決定する。
【0022】
本発明の方法によれば、パラメータΔχac,φ/χac,0を生体標的の濃度に関する指標として定義し、Δχac,φ/χac,0≡(χac,0−χac,φ)/χac,0である。
【0023】
本発明の方法によれば、磁性ナノ粒子を緩衝溶液中で該磁性ナノ粒子に結合した生体レセプターと共に懸濁することにより磁気試薬を形成する。
【0024】
本発明の方法によれば、磁気試薬を試料溶液と混合した後、生体レセプターが生体標的と抱合し得る。
【0025】
本発明の方法によれば、磁性ナノ粒子を親水性界面活性剤で被覆し、生体レセプターを当該親水性界面活性剤に結合する。
【0026】
本発明の方法によれば、当該方法が小生体分子を測定することができ、ここで小分子を生体レセプターで抱合した際に、抱合された小分子の各々が生体レセプターの一つにより実質的に覆われる。
【0027】
本発明の方法によれば、前記生体レセプターが抗体である。
【0028】
本発明の方法によれば、前記抗体がモノクローナルまたはポリクローナルとすることができる。
【0029】
本発明の方法によれば、前記交流磁化率をSQUID系磁力減少測定システムにより測定する。
【0030】
本発明の方法によれば、試料溶液との混合前後の磁気試薬をSQUID系磁力減少測定システムの試料ユニットにおけるピックアップコイルの一部内に置き、該磁気試薬からの誘導磁束をピックアップコイルにより検出し、試料ユニット内のピックアップコイルに接続した結合コイルを介してSQUID系磁力減少測定システムのセンサーユニット内のSQUID磁力計に移送する。
【0031】
本発明の方法によれば、試料溶液と混合後の磁気試薬の交流磁化率(χac,φ)を測定するステップが、遊離した非抱合磁性ナノ粒子または生体標的を除去することなく行われる。
【0032】
本発明の方法によれば、親水性界面活性剤は限定されないが、デキストラン、プロテインG、プロテインA、リポソームおよび有機酸類である。
【0033】
本発明の方法によれば、各磁性ナノ粒子の直径が5nm〜700nmに及ぶ。
【0034】
本発明の方法によれば、磁性ナノ粒子のコア材料は限定されないが、Fe34、MnFe24、Fe23、NiFe24またはCoFe24である。
【0035】
上述の一般的記載および以後の詳細な記載は典型的なもので、請求項におけるような本発明の更なる説明を提供することを意図すると理解すべきである。
【0036】
添付図面はさらなる本発明の理解を提供するために含まれ、本明細書の一部に組み込まれ、かつこれを構成する。当該図面は本発明の実施態様を例証し、本記載とともに本発明の原理を説明する役目を果たす。
【発明を実施するための最良の形態】
【0037】
本発明は磁気的標識化診断法(MLD)の代替方法論を提供し、ここで検出すべき生体標的の量を、磁性ナノ粒子が生体標的で抱合された後の磁性ナノ粒子の多周波数交流磁化率における減少度に相関させることができる。すなわち、本発明の方法は磁力減少測定法(MRA)として既知で、基本的にステップ間での洗浄処理が不要であり、多重活性エピトープ分子、単一活性エピトープ分子または小分子を測定することができる。本発明はまた、超高感度システムを提供して磁力減少測定法を行う。本発明の超高感度MRAシステムは、該システムのセンサーとして超電導量子干渉デバイス(SQUID)のような磁力計または磁場勾配計を採用し、高感度測定法を行うためにサイトカインまたは血管内皮増殖因子(VEGF)または腫瘍により発現したタンパク質のようなある種の生体標的に特に不可欠な磁束移送技術を適用する。
【0038】
磁力減少測定(MRA)
MRAにおいては、親水性界面活性剤と生体レセプターとで被覆し、均一に分散した磁性ナノ粒子を有する溶液である磁気試薬をまず用意する。当該試薬の調製は、磁性ナノ粒子の表面を界面活性剤で被覆するために、主に磁性ナノ粒子を界面活性剤溶液中で混合することを備える。次いで、生体レセプターを当該溶液に添加し、磁性ナノ粒子の表面上で界面活性剤と結合させる。当該生体レセプターとしては、例えば抗体または抗原が挙げられ、これはモノクローナルまたはポリクローナルとすることができる。外部多重交流磁界下で、磁性ナノ粒子が磁気相互作用を介して振動する。外部多重交流界下の磁気試薬は、多周波数交流磁化率χacとして既知の磁気特性を明示する。
【0039】
検出すべき生体分子の溶液を試薬と混合する際、磁性ナノ粒子の最外郭に結合した生体レセプターを介して当該検出すべき生体分子を界面活性剤と生体レセプターとで被覆された磁性ナノ粒子と会合させることができる。検出すべき生体分子の会合によって、界面活性剤と生体レセプターとで被覆された磁性ナノ粒子は、図1の模式図に示すように、大きくなるか、あるいはクラスターを形成する。生体分子が一つの有効な単一活性エピトープのみを有している状況では、各生体分子が一つの磁性ナノ粒子と抱合するか、または結合するだけである。従って、図2に示すように、磁性ナノ粒子はクラスターを形成する代わりにより大きくなるであろう。
【0040】
生体分子との会合後、これらより大きな/クラスター化した磁性ナノ粒子の外部多重交流磁界に対する反応は、本来未抱合の個々の磁性ナノ粒子のものよりもかなり低くなる。その結果、試薬のχacが減少する。従って、この方法を磁力減少測定法と称する。原則として、より多量の検出すべき生体分子を試薬に混入すると、磁性ナノ粒子はより大きくなるか、クラスター化する。最終的に、χacにおいてより大きな減少が見られる。
【0041】
本発明のMRAは、少なくとも次の利点を示す。まず第一に、未結合の検出すべき生体分子と、磁性ナノ粒子とを除去する必要がない。これら未結合生体分子と磁性ナノ粒子とが試薬中に残存しているかもしれない。従って、本発明の測定処理が無価値な洗浄処理を取り除くことによって一層簡単になる。第二に、一種類の抗体のみを用いる。第三に、MRAは直接的で均質な測定法であり、通常高い信頼性と感度を示す。第四に、χacにおける減少度合いを正確に測定して生体分子の濃度に対応させることができるので、生体分子の濃度を定量的に決定することができる。また、MRAは小さな生体分子を測定することができる。小さいサイズのために、かかる小分子は会合後に生体レセプターによってほぼ完全に覆われる。従って、いったん小分子を生体レセプターで抱合すると、小分子上の他のエピトープが他の生体レセプターと結合できない。それ故に、小さな生体分子は、その構造により効果的な単一活性エピトープである。
【0042】
手短に言って、本発明のMRAは一連の洗浄処理を除去することができるための利便性を明示するだけでなく、著しく高感度で、高レベルの特異性を有する。
【0043】
SQUID系MRAシステム
試料の交流磁気信号をMRAで検出するので、超高感度のセンサーを用いて交流磁気信号を探査するか、又は検出すべき交流磁気信号を強化することによって生体分子を検出する際の感度を助成することができる。超電導量子干渉デバイス(SQUID)がMRAシステムにおけるセンサーとして期待の候補であることを示す。
【0044】
磁力減少測定において、生体ターゲットを添加し、磁性ナノ粒子上の生体レセプターで抱合する前後での磁気試薬の交流磁化率χacにおける差異が、2つの励起磁界の作用下で測定される。磁気試薬をSQUIDに近接して配置する場合、SQUIDが2つの励起磁界によって阻害される。その結果、励起磁界のSQUIDへの寄与を補償するための磁界を発生するコイルを有することが必要である。技術的に、補償コイルの正確な位置を確認することは容易ではなく、通常ノイズレベルが周囲ノイズを感知するためのSQUID用のピックアップコイルとして役立つ補償コイルの使用とともに増大する。補償コイルを使用する代わりに、SQUIDが励起磁界により阻害されるのを防ぐための他の方法は、試料を励起磁界とともにSQUIDセンサーから程遠いところに位置させることによるものである。しかしながら、かかる方法は、SQUIDによって検出される磁気信号に顕著な減少をもたらし、言い換えれば、感度が減退する。かかる欠陥を克服するために、遠隔磁束移送技術を活用することによってSQUID系MRAシステムを開発した。
【0045】
図3を参照すると、図3は本発明に係るSQUID系MRAシステムを示す模式図である。一般に、当該システムは2つのユニット;試料ユニット100aとセンサーユニット100bとを備える。試料ユニット100aは、検出すべき試料105にそれぞれ周波数f1およびf2を有する2つの交流れ励起磁界を与えるように2つの独立した関数発生器103、104によって駆動する少なくとも2つの励起コイル101、102を備える。試料105は、逆方向に配線されたコイルの2つの部分から構成されたピックアップコイル106の一方の部分の内側に配置される。2つの励起磁界の作用下における試料105の交流磁化をピックアップコイル106によって検出する。機械的振動や周囲のノイズを回避するために、試料ユニット100aのコイルをスポンジ108上で、磁気シールドボックス112内部に置く。センサーユニット100bは、デュワー110に含まれる液体窒素内に浸漬した少なくとも高遷移温度(高Tc)rf(無線周波数)SQUID磁力計109を備える。デュワーに含まれる液体ヘリウムに浸漬した低遷移温度SQUIDを含む他のタイプのSQUID磁力計または磁場勾配計を本発明のシステムにおけるセンサーとして用いてもよいことは評価すべきである。例えば5Lの液体窒素111を保持し得るデュワー110を磁気シールドボックスの内側でまたrfシールド室113内に設定してSQUIDを周囲の低または高周波数ノイズから予防する。シールドファクターは高周波数で90dBに達する。スポンジ114を用いてSQUIDを機械的振動から防御する。
【0046】
試料部のピックアップコイルによって感知した試料の交流磁化をセンサー部のSQUIDに移送するため、銅(Cu)からなり、ピックアップコイルに接続した結合コイル107を用いる。ピックアップコイル106による交流磁束のために、電圧が誘発され、次いで電流をピックアップコイル106および結合コイル107に沿って発生する。交流電流が結合コイルを介して流れると、交流磁界が発生する。SQUIDを結合コイルの内側に置くので、結合コイルによって発生した交流磁界をSQUIDによって探査する。本発明のSQUID系MRAシステムによれば、試料部で当初発生した交流磁束が、ピックアップコイル106と結合コイル107とからなる移送装置を介してSQUID系MRAシステムのセンサー部に効率的に移送される。この配置では、励起磁界がSQUIDから空間的に離れているために、SQUIDが2つの励起磁界によって阻害されない。すなわち、当該システムは非常に安定で、長時間の操作に適している。SQUID電子機器115および読み出し電子機器116をSQUIDに対して用いて試料部の試料によって当初発生した交流磁束を検出する。かかる電子機器からの出力電圧をスペクトル分析器に供給する。
【0047】
SQUID系MRAシステムを用いた磁力減少測定
次の開示は、種々のタイプの生体標的の測定に対する本発明の磁束移送を有する高TcSQUID系MRAシステムの適用例である。本発明の一態様によれば、ヒトC反応性タンパク質(CRP、分子量=116.67KDa)やヒト凝固因子IX(F9、分子量=36.56KDa)のような「大きな」生体標的に対する本発明のSQUID系MRAシステムの典型的測定仕様を検討する。CRPを磁気的に標識するために、ポリクローナル抗ヤギCRPを磁性ナノ粒子上に被覆する一方、F9を磁気的に標識するために、モノクローナル抗マウスF9を磁性ナノ粒子上に被覆する。従って、検出すべきCRPは多重活性エピトープとして機能し、一方F9は単一活性エピトープとして機能する。本発明の別の態様によれば、例えばロイコマラカイトグリーン(LMG、分子量=26.3Da)のような「小さな」生体標的に対する本発明のSQUID系MRAシステムの典型的測定仕様も検討する。小さなサイズのため、小分子が会合後抗体によってほぼ完全に覆われる。すなわち、各小分子が一旦抗体に抱合されると、他の抗体と結合するために得ることができる小分子上の他のエピトープがない。従って、小分子はその構造により効果的な単一活性エピトープ分子である。本発明の高TcSQUID系MRAシステムを用いた多重活性エピトープ分子、単一活性エピトープ分子および小分子に対する当該発明の洗浄不要磁力減少測定を介した超高感度免疫の特徴をより良好に示すため、MRA結果をELISAから得たデータと比較する。
【0048】
生体レセプターで被覆した磁性ナノ粒子の調製
リン酸緩衝食塩水(PBS)溶液中に分散させた磁性ナノ粒子を、デキストラン(GABC社製)のような親水性界面活性剤で被覆する。親水性界面活性剤の他の種類、例えばプロテインG、プロテインA,リポソームまたは有機酸を適用してもよい。当該界面活性剤はPBS溶液中での磁性ナノ粒子の分散を助けるか、或いはまた生体レセプターのナノ粒子表面への結合を改善する。磁性ナノ粒子のコアの材料としては、例えばFe34が挙げられる。しかしながら、MnFe24、Fe23、NiFe24、またはCoFe24を含む他の材料も磁性ナノ粒子の物質として適用可能で、本発明の範囲内に包含されると言及すべきである。磁力顕微鏡(MFM)を用いることによって、磁性ナノ粒子の形態を詳細に調べる。MFMによって撮影した磁性ナノ粒子の代表的な画像を図4(a)に示す。濃い点が個々の磁性ナノ粒子に対応する。大量、例えば200以上の磁性ナノ粒子の分析を介して、図4(b)に描くような磁性ナノ粒子の直径分布を得る。図4(b)のガイドラインはガウス分布に従う。図4(b)の結果によれば、磁性ナノ粒子の直径における平均値および標準偏差は、それぞれ29.3nmおよび1.4nmである。以下の測定に用いた磁性ナノ粒子の平均直径は約5nmから約700nmの範囲である。
【0049】
生体レセプターで抱合して所謂生体官能化ナノ粒子を形成する磁性ナノ粒子の溶液である磁気試薬を調製するために、親水性界面活性剤、例えばデキストランをまず酸化して界面活性剤上にアルデヒド基(−CHO)を生成する。生体レセプター、例えばポリクローナル抗ヤギCRP(シグマ、C8284)またはモノクローナル抗マウスF9(アブノヴァ)のような抗体が磁性ナノ粒子に生体レセプターと「−CH=N−」結合を形成する界面活性剤のアルデヒド基との反応を介して結合される。磁気分離により未結合生体レセプターを除去し、生体レセプターで抱合された磁性ナノ粒子を得る。CRPを磁気的に標識するために、例えばポリクローナル抗ヤギCRPを上述した反応プロセスによる生体レセプターとして用いる。F9を磁気的に標識するために、例えばモノクローナル抗マウスF9を上述した同様の反応プロセスによる生体レセプターとして用いる。LMGを磁気的に標識するために、抗ウサギLMG(グリコネックス社製)をナノ粒子表面上の界面活性剤を介して該ナノ粒子上に塗布し、個々のナノ粒子の全体を実質的に覆う。
【0050】
MRA測定
種々の磁気試薬(それぞれポリクローナル抗ヤギCRP被覆の磁性ナノ粒子の溶液、モノクローナル抗マウスF9被覆の磁性ナノ粒子の溶液、抗ウサギLMG被覆の磁性ナノ粒子の溶液)の100μLの交流磁化率χacスペクトルを、SQUID系MRAシステムを用いて測定する。次いで、各磁気試薬を、それぞれ種々の量のヒトCRP(シグマ、C4063)またはF9(アブノヴァ)若しくはLMG(グリコネックス社製)の20μL溶液と混合して混合物溶液を形成する。CRP抗ヤギCRP(またはF9モノクローナル抗マウスF9若しくはLMG抗ウサギLMG)の免疫錯体の種々の濃度を培養後に混合物溶液で発現する。その後、免疫錯体を有する各混合物溶液のχacスペクトルを、SQUID系MRAシステムを用いることにより分析する。所定周波数でのχacの減少を種々の濃度のCRP(またはF9若しくはLMG)で混合した各試薬溶液について観察する。従って、χacの減少とCRP(またはF9若しくはLMG)の濃度との間の関係が成り立つ。
【0051】
ELISA測定
市販のサンドイッチELISA測定キット(アノゲン、EL 10022)を、ヒトCRPのような巨大分子の定量的検出に用いる。測定手順をここに簡潔に述べる。100μLのヒトCRPを、抗体で予備被覆したプレートを底面に設けたELISAプレートに添加する。ウェルをプラスチックカバーで覆い、CRP抗体免疫錯体を30分間培養する。ウェルを洗浄緩衝液で満たし、溶液を該ウェルから注出することにより、当該溶液を除去する。洗浄処理を4回以上繰り返す。最終洗浄後、プレートを反転させ、明白な湿分がなくなるまで吸収紙上でたたくことにより該プレートをさらに乾燥する。しかる後、100μLのHRP(西洋ワサビパーオキシド)抱合標識化溶液をウェルに分注し、次いで抗体CRP標識免疫錯体を30分間培養する。次いで、蛍光発生基質溶液100μLをウェルに添加して15分間蛍光を活性化させ、続いて停止液100μLをウェルに添加する。最後に、蛍光の光学密度をELISA読み取り装置(シナジー HT)で測定する。
【0052】
サンドイッチELISAをF9の分析にも用いる。抗ヒト凝固因子IX、F9(アブノヴァ、H00002158−M01)およびポリクローナルウサギ抗GST抗体の組み合わせを、組換えGST標識ヒトF9(H000002158−Q01)の定量的検出に用いる。ヒトF9抗体を最初に1μg/100μL/ウェルでマイクロタイタープレート上に塗布し、4℃で一夜置く。次いで、当該ウェルを室温で5%スキムミルクのPBS溶液により1時間遮断する。次いで、異なる濃度の組換えGST標識ヒトF9の100μL希釈液を適切なウェルに添加した。次に当該プレートを室温で1時間培養する。ヤギ抗ウサギInG(H+L)、HRP二次抗体をウェルに適用し、当該プレートを室温で1時間培養する。次いで、100μLのOPD基質溶液をウェルに添加して30分間発育させ、続いてウェルに停止液を添加する。最後に、ウェル中の溶液の光学密度をELISA読み取り装置(BIO−TEK uQuant)で測定する。
【0053】
LMGのような小分子に関して、サンドイッチELISAは不適当である。代わりに、競合ELISA(グリコネックス社、101G002A)を用いてLMGを定量的に検出する。競合ELISAの一般的手順は、通常測定キットのマニュアルで入手できるので、さらに繰り返さない。
【0054】
SQUID系MRA測定対ELISA
超高感度のSQUID系MRAシステムと、従来のELISAとにより測定したCRPに対する結果を以下に要約する。CRPは人体が損傷もしくは感染したときに発現する。従って、血清中のCRP濃度は、診療所における感染疾患を診断するための代表的な指標である。交流(ac)磁化率減少に基づく磁気検出の詳細なメカニズムは、先行米国特許出願第11/164,275号明細書に議論されており、ここに参照して援用する。
【0055】
ターゲット周波数mf1+nf2周辺のSQUID系MRAのノイズスペクトルを測定し、図5(a)に示し、ここでf1およびf2は数kHzから数十kHzの励起周波数であり、mおよびnは0でない整数である。χacスペクトルに対する結果は1.7×10-5(a.u.)でのノイズレベルを明示する。0.32emu/g濃度の磁気試薬100μLをピックアップコイルの一方の部分内に配置した際の磁気試薬の周波数依存性χacを図5(b)に示す。117×10-5(a.u.)の最大値を有する明瞭なピークがmf1+nf2で観測される。この最大値をχac,0と称する。図5(b)に示す結果は、SN比に関して約76の値を示唆する。所定濃度φCRP、例えば10-5mg/Lの20μLCRP溶液を磁気試薬に添加した後の安定なχacスペクトルを図5(c)に示す。mf1+nf2でのピークの最大値は84.4×10-5(a.u.)であり、これをχac,φと称する。明らかに、χac,φはχac,0よりも小さい。パラメータΔχac,φ/χac,0はCRPの量の濃度に関する指標として定義され、ここでΔχac,φ/χac,0≡(χac,0−χac,φ)/χac,0である。10-5mg/LのCRP溶液に関し、Δχac,φ/χac,0は27.9%と決定される。
【0056】
5×10-7〜10-3mg/LのφCRPの関数としてのΔχac,φ/χac,0を図6に描く。より低いφCRPでのΔχac,φ/χac,0対φCRP曲線を図6の差し込み図に拡大する。その結果、本発明のSQUID系MRAシステムを用いて測定したCRPの濃度における感度が10-6mg/L近傍、すなわち1pptであることを明示する。CRP溶液の容積が20μLで、CRPの分子量が116.67KDaであるので、モル単位におけるCRP測定の感度は1.4×10-20モル近傍である。本発明のSQUID系MRAシステムの超高感度をより良好に図示するために、図7に各々実線と点線で示すように、Δχac,φ/χac,0対φCRP曲線をELISAにより測定した特性曲線(OD450-φCRP曲線)と比較する。ELISAによるCRP測定感度は0.1mg/L近傍で、SQUID系MRAシステムのものより105だけ低い感度であることが明らかである。
【0057】
超高感度のSQUID系MRAシステムと、従来のELISAとによって測定したヒト凝固因子IX(F9)に対する測定結果を以下に要約する。F9は不活性な酵素前駆体として血液中を循環する。F9は、活性化ペプチドを切除して一つ以上のジスルフィド結合により重鎖と軽鎖を一緒に発生する第XIa因子により活性型に変換される。血液凝固カスケードにおける活性化F9の役割は、Ca+2イオン、リン脂質膜および第VIII因子との相互作用により第X因子をその活性型に活性化することである。点突然変異、挿入および欠失を含むF9変質は、劣性X結合遺伝疾患で、血友病Bまたはクリスマス病として既知のF9欠乏を誘発する。本発明のこの態様における磁性ナノ粒子上に被覆した抗マウスF9がモノクローナルであることは注目に値する。これは、この場合におけるF9が効果的な単一活性エピトープ分子であることを暗示している。SQUID系MRA測定によるF9に関するΔχac,φ/χac,0曲線を図8に実線で描く。SQUID系MRAシステムの感度は10-6mg/L、例えば1pptであることが明示される。比較目的のために、ELISAによるOD450-φF9曲線を図8に点線で示す。ELISA結果は10-3mg/L、例えば1pptの感度を明示する。従って、F9に対するELISAの感度は、ちょうどSQUID系MRIシステムのものの千分の一である。手短に言って、単一活性エピトープ分子の測定に関する超高感度もSQUID系MRAで達成できる。
【0058】
超高感度のSQUID系MRAと、従来の競合ELISAとによって決定された小分子LMGに対する測定結果を以下に要約する。23.6Daの分子量を有するLMGは、一般に小分子として受け入れられている。LMGは水生生物中のマラカイトグリーンの主代謝物である。マラカイトグリーンは、医薬的には希釈溶液中で局所殺菌剤として、すなわち寄生虫や、水性卵および若い稚魚の真菌感染症を処理するのに用いられる。しかしながら、LMGの過剰投与量はヒトに対して肝臓癌をもたらすかもしれない。すなわち、LMGはヒトにとって発癌性物質の一種である。
【0059】
図9を参照すると、実線はSQUID系MRA測定によるΔχac,φ/χac,0とLMG濃度φLMG間の関係に関する特性曲線を示す。感度は10-9mg/L近傍、例えば10-3pptを示す。OD450とLMG濃度φLMG間の関係に関する特性曲線を図9において点線で示す。競合ELISAの感度は5×10-5mg/L、例えば0.005ppbの感度を有することが示されている。図9に示す結果は、SQUID系MRAがLMGのような小分子の測定に関してELISAよりも約4倍規模で感度が高いことを明示する。
【0060】
本発明によれば、小分子を含む生体標的を超高感度で測定するのに高TcSQUID系MRAシステムを開発した。磁束移送技術を用いることにより、SQUIDセンサーが交流励起磁界によって阻害されるのを防止する;従って、SQUIDセンサーを長時間の操作において安定にすることができる。また、移送コイルのセンサー末端ループをSQUIDに極めて近接して配置することができ、超高感度が検出磁気信号を調べるために達成されたことを暗示する。本発明はまた、超高感度SQUID系MRAシステムを適用して多重活性エピトープ、単一活性エピトープまたは小分子に対する測定を行うことができることを示す。測定結果は、本発明のSQUID系MRAシステムに関する感度が1ppt以下であることを示す。検出分子に対し高い力価を有する抗体を磁性ナノ粒子上に被覆する場合に感度をさらに改善し得ると考えられている。従って、SQUID系MRAは、タンパク質、毒性分子、バクテリア、ウイルスまたはDNAでさえ超低レベルの濃度で検出するための有望な診断ツールである。
【0061】
当業者にとって、様々な修正および変更が、本発明の範囲および精神から逸脱することなく本発明の仕組みを作り上げることができるのは明らかである。前述の説明からみれば、本発明は、この発明の修正および変更が、仮にこれらが請求の範囲および均等物の範囲に入るとしてもこれらに及ぶことを意図している。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】図1は検出すべき生体分子と抗体で被覆された磁性ナノ粒子との会合を示す模式図であり、当該磁性ナノ粒子が破線で囲んだように検出すべき生体分子との結合によりクラスター化になることを示す。
【図2】図2は検出すべき生体分子と抗体で被覆された磁性ナノ粒子との会合を示す模式図であり、当該磁性ナノ粒子が破線で囲んだように検出すべき生体分子との結合により大きくなることを示す。
【図3】図3は磁束移送技術で補助されたSQUID系MRAシステムを示す模式図である。
【図4】図4(a)は磁力顕微鏡で捉えたデキストラン被覆磁性ナノ粒子の画像であり、図4(b)はデキストラン被覆磁性ナノ粒子の直径分布を示す曲線である。
【図5】図5(a)はSQUID系MRAシステムのノイズレベルのχacスペクトルであり、図5(b)は100μLで0.32emu/gの磁気試薬のχacスペクトルであり、図5(c)は100μLで0.32emu/gの磁気試薬と、20μLで10-5mg/LのCRP溶液との混合物のχacスペクトルである。
【図6】図6は5×10-7〜10-3mg/LのφCRPの関数としてのΔχac,φ/χac,0を示した図であり、より低いφCRPでのΔχac,φ/χac,0−φCRP曲線を差し込み図に拡大して示す。
【図7】図7はΔχac/χac(実線)およびOD450(点線)によるCRP濃度φCRPを示した図である。
【図8】図8はΔχac/χac(実線)およびOD450(点線)によるF9濃度φF9を示した図である。
【図9】図9はΔχac/χac(実線)およびOD450(点線)によるLMG濃度φLMGを示した図である。
【符号の説明】
【0063】
100a:試料ユニット
100b:センサーユニット
101、102:励起コイル
103、104:関数発生器
105:試料
106:ピックアップコイル
107:結合コイル
108:スポンジ
109:高遷移温度(高Tc)rf(無線周波数)SQUID磁力計
110:デュワー
111:液体窒素
112:磁気シールドボックス
113:rfシールド室
114:スポンジ
115:SQUID電子機器
116:読み出し電子機器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
検体中の生体標的の濃度を測定することができる超高感度磁力減少測定システムであって、当該生体標的が多重活性エピトープ生体分子または単一活性エピトープ生体分子からなり、
独立した関数発生器により駆動する励磁コイルと、少なくとも生体レセプターで被覆された磁性ナノ粒子を含む試料を収容し、かつ該試料から誘導された磁束を感知するピックアップコイルとからなる試料ユニットと、
磁気センサーと、前記ピックアップコイルに接続した結合コイルとからなるセンサーユニットとを備え、
前記試料ユニットのピックアップコイルによって感知した試料の誘導磁束を前記結合コイルを介して前記センサーユニットの磁気センサーに移送することを特徴とする超高感度磁力減少測定システム。
【請求項2】
前記磁性ナノ粒子を親水性界面活性剤で被覆し、前記生体レセプターを当該親水性界面活性剤に結合する請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記生体レセプターが抗体または抗原からなる請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
前記試料が前記生体標的を含む検体からなる場合にも、当該生体標的が生体レセプターで抱合される請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
前記単一活性エピトープ生体分子が小生体分子も含み、当該小生体分子を前記生体レセプターで抱合する際、小生体分子のそれぞれが一つの生体レセプターのみによって実質的に覆われる請求項1に記載のシステム。
【請求項6】
前記試料の交流磁化率(χac,φ)を測定し、かつ前記試料の交流磁化率減少(Δχac,φ)を決定し、当該試料の交流磁化率減少をΔχac,φ≡(χac,0−χac,φ)として定義し、ここでχac,0が遊離した非抱合磁性ナノ粒子の交流磁化率であり、Δχac,φが生体標的の濃度に比例する請求項4に記載のシステム。
【請求項7】
パラメータΔχac,φ/χac,0を前記生体標的の濃度に関する指標として定義し、当該パラメータΔχac,φ/χac,0をΔχac,φ/χac,0≡(χac,0−χac,φ)/χac,0として定義する請求項6に記載のシステム。
【請求項8】
前記試料の交流磁化率減少Δχac,φと、調節された溶液中における前記生体標的の種々の既知濃度との間の特性曲線を確立し、検体中の生体標的の濃度を該特性曲線に従って決定する請求項7に記載のシステム。
【請求項9】
前記磁気センサーが超電導量子干渉素子(SQUID)磁力計または磁場勾配計を備える請求項1に記載のシステム。
【請求項10】
試料溶液における生体分子の濃度を定量的に決定するための超高感度方法であって、
磁性ナノ粒子を含む試薬を用意し;
当該試薬の交流磁化率(χac,0)を測定し;
当該試薬を多重活性エピトープ生体分子または単一活性エピトープ生体分子からなる生体分子を含む試料溶液と混合し、ここで前記磁性ナノ粒子を前記生体分子で会合し;
前記生体分子での会合後の前記試薬の交流磁化率(χac,φ)を測定し;
前記生体分子での会合前後での前記試薬の交流磁化率における差異(Δχac,φ)を計算し、ここでΔχac,φ≡(χac,0−χac,φ)とすること
を備える生体分子濃度の決定方法。
【請求項11】
前記磁性ナノ粒子を緩衝溶液中で懸濁することによって前記試薬を形成し、当該磁性ナノ粒子を親水性界面活性剤で被覆し、かつ生体レセプターを当該親水性界面活性剤に結合する請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記生体分子を前記生体レセプターで抱合する請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記単一活性エピトープ生体分子が小生体分子も含み、当該小生体分子を前記生体レセプターで抱合する際、小生体分子のそれぞれが一つ生体レセプターのみによって実質的に覆われる請求項11に記載の方法。
【請求項14】
前記磁性ナノ粒子をFe23、Fe34、MnFe24、NiFe24およびCoFe24からなる群より選択する請求項11に記載の方法。
【請求項15】
前記親水性界面活性剤をデキストラン、プロテインG、プロテインA、リポソームおよび有機酸からなる群より選択する請求項11に記載の方法。
【請求項16】
前記生体レセプターが抗体または抗原からなる請求項10に記載の方法。
【請求項17】
前記試薬の交流磁化率における差異(Δχac,φ)と、調節された試料中における生体分子の種々の既知濃度との間の標準化特性曲線を確立し;
当該標準化特性曲線に従って試料溶液中の生体分子の濃度を決定すること
をさらに備える請求項10に記載の方法。
【請求項18】
パラメータΔχac,φ/χac,0を前記生体分子の濃度に関する指標として用い、当該パラメータΔχac,φ/χac,0をΔχac,φ/χac,0≡(χac,0−χac,φ)/χac,0として定義する請求項10に記載の方法。
【請求項19】
Δχac,φ/χac,0と、調節された溶液中における生体分子の種々の既知濃度との間の標準化特性曲線を確立し;
試料溶液中の生体分子の濃度を当該標準化特性曲線に従って決定すること
をさらに備える請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記生体分子との会合後の前記磁気試薬の交流磁化率(χac,φ)を、遊離した非抱合生体分子を除去することなく測定する請求項10に記載の方法。
【請求項21】
前記試薬の交流磁化率を磁力減少測定システムによって測定し、
当該システムが前記試薬を試料溶液とともにまたは試料溶液なしに収容し、可変磁束を当該試薬に供給し、該試薬から誘導された磁束を検出するための磁束供給ユニット;
前記磁束供給ユニットからのある部位に位置し、少なくとも誘導磁束を感知するためのSQUIDを備える磁束読み取りユニット;および
前記部位で前記試薬の誘導磁束を前記SQUIDに移送するための磁界移送ユニット
を備える請求項10に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−98145(P2009−98145A)
【公開日】平成21年5月7日(2009.5.7)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2008−259020(P2008−259020)
【出願日】平成20年10月3日(2008.10.3)
【出願人】(508298732)
【出願人】(508298743)
【出願人】(508298754)
【出願人】(508298776)
【Fターム(参考)】