距離測定装置及び車高測定装置
【課題】距離を測定する対象となる物体の材質や状態によらず超音波を用いて距離を測定すること。
【解決手段】受信された反射波の電圧値の最大値を記憶するホールド手段106を備え、測定対象物に対して所定周期の超音波を発信し、発信された超音波が測定対象物により反射された反射波を受信し、所定周期よりも短い周期でホールド手段106に記憶されている最大値を読み出し、読み出された値の変化が所定期間にわたって所定値以内である場合に、超音波発信手段104より超音波が発信されたタイミングから、当該所定期間の最初に値が読み出されたタイミングまでの時間に基づき、超音波発信手段104と測定対象物との距離を算出する。
【解決手段】受信された反射波の電圧値の最大値を記憶するホールド手段106を備え、測定対象物に対して所定周期の超音波を発信し、発信された超音波が測定対象物により反射された反射波を受信し、所定周期よりも短い周期でホールド手段106に記憶されている最大値を読み出し、読み出された値の変化が所定期間にわたって所定値以内である場合に、超音波発信手段104より超音波が発信されたタイミングから、当該所定期間の最初に値が読み出されたタイミングまでの時間に基づき、超音波発信手段104と測定対象物との距離を算出する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波を用いて物体間の距離を測定する距離測定装置と、超音波を用いて車両の車高を測定する車高測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、物体間の距離を測定する距離測定装置として、超音波を用いる装置が提案されている(特許文献1参照)。超音波を用いた従来の装置では、反射波検出用の所定の閾値が予め設定されており、超音波を発信してから閾値を超える振幅をもった反射波が検出されるまでの間に要した時間を計測し、距離を算出する。
【0003】
例えば、20kHzのクロックパルスを出力するクロックとクロックパルスをカウントするカウンタを装置に備え、超音波を発信してから閾値を超える振幅をもった反射波が検出されるまでの間のカウント値が50であった場合、超音波発信部から対象物体までの往復の距離は、
0.05(ms)×50(回)×音速350(m/s)=0.875m
として算出される。
【特許文献1】特開昭61−38513号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、例えば超音波の周波数を40kHzとし音速を350メートル毎秒すると、従来技術のように閾値を用いて反射波を検出する場合には、その際の分解能は8.75ミリメートルとなり、8.75ミリメートル単位でしか距離を測定できなかった。このように、分解能は、使用される超音波の周波数に依存している。そして、距離測定装置が発信する超音波の周波数を高くすることは技術的な課題やコストの問題により困難であるという問題があった。また、高い周波数に対して都度距離の演算を行うことは、演算負荷の増大という問題を招いてしまっていた。
【0005】
そこで、上記事情に鑑み、本発明は、使用される超音波の周波数を上げることなく分解能を向上させることを可能とする距離測定装置及び車高測定装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、請求項1に記載した発明は、物体間の距離を、超音波を用いて検出する距離測定装置(例えば、実施形態における距離測定装置1)であって、測定対象物に対して所定周期の超音波を発信する超音波発信手段(例えば、実施形態における超音波センサ104)と、発信された超音波が測定対象物により反射された反射波を受信する反射波受信手段(例えば、実施形態における超音波センサ104)と、反射波受信手段により受信された反射波の振幅値を順次記憶するホールド手段(例えば、実施形態におけるピークホルダー回路106)と、前記所定周期よりも短い周期で前記ホールド手段に記憶されている振幅値を読み出し、前記超音波発信手段より超音波が発信されたタイミングから、該ホールド手段により記憶された振幅値のうちで最大値またはその近傍の値が読み出されたタイミングまでの時間に基づき、前記超音波発信手段と前記測定対象物との距離を算出する対象物距離算出手段(例えば、実施形態におけるCPU101)とを備えたことを特徴とする。
【0007】
請求項2に記載した発明は、前記最大値は、読み出された値の変化が所定期間にわたって所定値以内である場合を指すことを特徴とする。
【0008】
請求項3に記載した発明は、物体間の距離を、超音波を用いて検出する距離測定装置であって、測定対象物に対して所定周期の超音波を発信する超音波発信手段と、発信された超音波が測定対象物により反射された反射波を受信する反射波受信手段と、反射波受信手段により受信された反射波の振幅値の最大値を順次記憶するホールド手段と、前記所定周期よりも短い周期で前記ホールド手段に記憶されている振幅値を読み出し、読み出された値の変化が所定期間にわたって所定値以内である場合に、前記超音波発信手段より超音波が発信されたタイミングから、当該所定期間の最初に値が読み出されたタイミングまでの時間に基づき、前記超音波発信手段と前記測定対象物との距離を算出する対象物距離算出手段とを備えたことを特徴とする。
【0009】
請求項4に記載した発明は、前記超音波発信手段及び前記反射波受信手段の組(例えば、実施形態における超音波センサ104−1、超音波センサ104−2)を複数有し、前記ホールド手段は、いずれか一つの組の反射波受信手段によって受信された反射波の振幅値を記憶し、前記対象物距離算出手段は、前記ホールド手段が対象としている組の超音波発信手段と前記測定対象物との距離を算出し、前記対象物距離算出手段が距離を算出した後、前記ホールド手段は他の組の反射波受信手段によって受信された反射波の振幅値を記憶し、前記対象物距離算出手段は当該他の組の超音波発信手段と前記測定対象物との距離を算出することを特徴とする。
【0010】
請求項5に記載した発明は、前記所定期間は、前記超音波発信手段によって発信される超音波の周期よりも長い時間であることを特徴とする。
【0011】
請求項6に記載した発明は、前記ホールド手段は、前記超音波発信手段が超音波を発信してから所定時間が経過した後に受信された超音波の振幅値を前記反射波の振幅値として記憶することを特徴とする。
【0012】
請求項7に記載した発明は、車高測定装置(例えば、実施形態における車高測定装置2)であって、請求項1〜6のいずれかに記載の距離測定装置が車両(例えば、実施形態における車両V)に設けられ、前記超音波発信手段及び前記反射波受信手段は前記車両の底部(例えば、実施形態における底部5)に設けられて、前記超音波発信手段は路面(例えば、実施形態における路面P)に対し超音波を発信し、前記反射波受信手段は前記路面によって反射された反射波を受信し、前記対象物距離算出手段は、算出された距離を車高として出力することを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
請求項1に記載した発明によれば、ホールド手段によって反射波の振幅値を順次記憶し、対象物距離算出手段が超音波の周期よりも短い周期でホールド手段に記憶されている振幅値を読み出し、反射波が受信されたタイミングを判定する。そのため、距離測定装置の分解能を高め、測定精度を向上させることが可能となる。
【0014】
また、請求項1に記載した発明によれば、対象物距離算出手段は、一定の閾値を用いて反射波が受信されたタイミングを判定するのではなく、実際の反射波の振幅に基づいて反射波が受信されたタイミングを判定する。具体的には、対象物距離算出手段は、所定周期よりも短い周期でホールド手段に記憶されている最大値を読み出し、超音波発信手段より超音波が発信されたタイミングから、該ホールド手段により記憶された振幅値のうちで最大値またはその近傍の値が読み出されたタイミングまでの時間に基づき距離を算出する。そのため、従来技術で用いられていた閾値よりも小さい振幅の反射波についても、受信されたタイミングを正確に判定することが可能となり、対象物体の材質や状態によらずに様々な振幅の反射波に基づいた距離の算出が可能となる。
【0015】
請求項3に記載した発明によれば、対象物距離算出手段は、一定の閾値を用いて反射波が受信されたタイミングを判定するのではなく、実際の反射波の振幅に基づいて反射波が受信されたタイミングを判定する。具体的には、対象物距離算出手段は、所定周期よりも短い周期でホールド手段に記憶されている最大値を読み出し、読み出された値の変化が所定期間にわたって所定値以内である場合に、所定期間の最初に値が読み出されたタイミングを反射波が受信されたタイミングとして判定し、このタイミングまでの時間に基づき距離を算出する。そのため、従来技術で用いられていた閾値よりも小さい振幅の反射波についても、受信されたタイミングを正確に判定することが可能となり、対象物体の材質や状態によらずに様々な振幅の反射波に基づいた距離の算出が可能となる。
【0016】
また、請求項3に記載した発明によれば、ホールド手段によって反射波の振幅値の最大値を常に記憶し、対象物距離算出手段が超音波の周期よりも短い周期でホールド手段に記憶されている振幅値を読み出し、反射波が受信されたタイミングを判定する。そのため、距離測定装置の分解能を高め、測定精度を向上させることが可能となる。
【0017】
請求項4に記載した発明によれば、複数の地点における距離を測定することが可能となるとともに、ホールド手段及び対象物距離算出手段はそれぞれ一つずつ備えれば良いため、距離測定装置の肥大化を抑止することが可能となる。
【0018】
請求項5に記載した発明によれば、反射波の振幅値の変化が落ち着いてから距離を算出することとなるため、測定精度を向上させることが可能となる。
【0019】
請求項6に記載した発明によれば、超音波発信手段によって発信された超音波の残響が反射波受信部によって受信され、反射波ではなく残響に基づいて誤った距離が算出されることを防止することが可能となる。
【0020】
請求項7に記載した発明によれば、路面の状況によらずに車高を正確に算出することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
[システム構成]
図1は、距離測定装置1の構成を表す概略ブロック図である。距離測定装置1は、CPU(Central Processer Unit)101、トリガ発生器102、発振回路103、超音波センサ104、波形整形回路105、ピークホルダー回路106、ピーク値記憶部109を備える。以下、距離測定装置1が備える各構成要素について説明する。
【0022】
CPU101は、所定のタイミング又は他の装置からの指示に応じて、トリガ発生器102に対してトリガ発生パルスを出力する。また、CPU101は、ピークホルダー回路106からピーク値を読み出すことによって、距離測定装置1から対象物体までの距離を算出し、算出された距離を出力する。このとき、ピークホルダー回路106に記憶されているピーク値は、不図示のアナログ/デジタル変換回路によってデジタル値に変換され、CPU101によって読み出される。CPU101の処理の詳細については後述する。
【0023】
トリガ発生器102は、CPU101からトリガ発生パルスを入力されると、トリガパルスを発振回路103に対して出力する。
【0024】
発振回路103は、トリガ発生器102からトリガパルスが入力されると、超音波センサ104に対し、所定の振幅、所定の周波数、所定の波数の駆動信号を出力する。
【0025】
超音波センサ104は、発振回路103から駆動信号が入力されると、駆動信号によって振動子を振動させることによって、駆動信号に応じた振幅、周波数、波数をもった超音波をする。また、超音波センサ104は、外部から入射される音波によって振動子が振動すると、この振動に応じた電気信号を生成し波形整形回路105へ出力する。
【0026】
波形整形回路105は、超音波センサ104から電気信号が入力されると、この電気信号に対し波形整形処理を行い、波形整形処理が施された電気信号を出力する。波形整形処理とは、入力された電気信号の波形からノイズを除去する処理である。波形整形回路105は、例えばローパスフィルタ(Low Pass Filter)を用いて構成され、入力された電気信号の波形から高周波ノイズを除去する。
【0027】
ピークホルダー回路106は、波形整形回路105から出力された電気信号の振幅値(電圧値)のピーク値を記憶し、このピーク値をCPU101に出力する。また、ピークホルダー回路106は、CPU101からクリア信号を入力されると、記憶しているピーク値を破棄し、その後に波形整形回路105から入力された電気信号に基づいて新たにピーク値を記憶する。
【0028】
ピークホルダー回路106は、例えば図1に示されるように比較器17、コンデンサ18を用いて構成される。比較器17は、二つの入力を有し、波形整形回路105から出力される電気信号を一方の入力として受け付け、コンデンサ18に保持されるピーク値を他方の入力として受け付ける。そして、二つの入力のうち大きい方の値をピーク値としてコンデンサ18へ出力する。コンデンサ18は、比較器17から入力されるピーク値を保持する。また、CPU101からクリア信号が出力されると、クリア信号に基づいてピークホルダー回路106に備えられたスイッチ(図1ではトランジスタ)がアースに通電し、コンデンサ18が保持する値がリセットされる。
【0029】
ピーク値記憶部109は、CPU101によってピーク値として判定された値を、CPU101の書込動作に応じて記憶する。
【0030】
図2は、距離測定装置1におけるタイミングチャートである。CPU101がトリガ発生パルスを出力すると、トリガ発生器102がトリガパルスを出力する。このトリガパルスに応じて、発振回路103が駆動信号を出力する。超音波センサ104は、駆動信号に応じて超音波を発信する。ただし、駆動信号が下がった後にも、超音波センサ104はある時間超音波を出し続ける。このように、駆動信号が下がった後に超音波センサ104が超音波を出し続けてしまう時間を残響時間といい、残響時間に発信される超音波を残響波という。超音波センサ104によって発信された超音波が対象物体に反射して超音波センサ104に戻ってくると、超音波センサ104はこの超音波(以下、「反射波」という)を受信する。CPU101は、不図示の計時部を備え、トリガ発生パルスを出力してから反射波が検出されるまでの時間(以下、反射時間という)Tを計時部によって測定し、反射時間に音速を乗算し2で割ることによって対象物体までの距離を算出する。
【0031】
図3は、CPU101が反射波を検出する処理の概略を表す概略図である。以下、図3を用いてCPU101が反射波を検出する処理について説明する。図3において、横軸は時間を表し、縦軸は超音波の振幅を表し、太線の波形は反射波の入力によって超音波センサ104が出力する電気信号の電圧値の時間変化を表し、破線の階段状の折れ線はピークホルダー回路106によって記憶されるピーク値の時間変化を表す。また、図3において1〜24の番号が付された各矢印は、ピークホルダー回路106が記憶しているピーク値をCPU101がピークホルダー回路106から読み出すタイミングを表す。以下、CPU101がピークホルダー回路106からピーク値を読み出す処理を「サンプリング処理」と呼び、サンプリング処理が行われる周期を「サンプリング周期」と呼ぶ。
【0032】
サンプリング周期は、超音波センサ104が発信する超音波の周期よりも短い。好ましくは、サンプリング周期は、超音波センサ104が発信する超音波の周期の1/2よりも短く設定される。さらに好ましくは、サンプリング周期は超音波センサ104が発信する超音波の周期の1/5よりも短く設定される。例えば、超音波の周期が25マイクロ秒に設定され、CPU101のサンプリング周期が5マイクロ秒に設定される。
【0033】
CPU101は、予め設定されたサンプリング周期にしたがってサンプリング処理を行い、サンプリング処理によって新たにピークホルダー回路106から読み出されたピーク値(以下、「今回値」という)と、ピーク値記憶部109に記憶されているピーク値(以下、「前回値」という)とを比較し、前回値が所定回数(M回)以上連続して今回値よりも高い場合には、この前回値が読み出された時点に反射波が検出されたと判定し、この時点の経過時間を反射時間として用いて距離を算出する。ここで、所定回数(M回)は、サンプリング処理をM回繰り返した場合に経過する処理時間が少なくとも超音波の1周期以上の時間よりも長くなるように予め設定される。則ち、
サンプリング周期×M>超音波の周期
となるようにMの値が予め設定される。
【0034】
図4は、距離測定装置1の動作例を表すフローチャートである。図4を用いて距離測定装置1の動作例について説明する。まず、CPU101は初期化処理を行う。具体的には、連続して前回値が今回値よりも高く判定された回数を表す変数m、サンプリング処理の回数を表す変数n、ピーク値記憶部109に記憶される前回値、以上の3つの値にそれぞれ“0”を代入し、各値を初期化する(ステップS101)。次に、CPU101がトリガ発生パルスを出力し、この出力に応じて超音波センサ104が超音波を発信する(ステップS102)。CPU101は、発信される超音波の振幅値が最大値となったタイミングで、計時部による計時をスタートする。なお、CPU101は、トリガ発生パルスを出力してから、発信される超音波の振幅値が最大値をとるまでの時間(オフセット時間)を予め記憶している。このオフセット時間は、距離測定装置1の特性値として予め実験などにより取得される値である。また、CPU101は、超音波が発信されたタイミングで、計時部による計時をスタートするように構成されても良い。
【0035】
次に、CPU101は、サンプリング周期の度に、所定時間が経過したか否か判定する(ステップS103)。この所定時間は、残響時間よりも長い時間として予め設定される時間である。この所定時間が経過するまでサンプリング処理を開始しないことによって、残響波を反射波として誤って検出することを防止することが可能となる。CPU101は、所定時間が経過するまで(ステップS103−NO)、サンプリング周期の度にカウンタnの値をインクリメントする(ステップS104)。
【0036】
所定時間が経過すると(ステップS103−YES)、CPU101はサンプリング周期の度にサンプリング処理を行い、今回値が閾値を超えているか否か判定する(ステップS105)。この閾値は、想定される反射波のピーク値のうち最も電圧値が小さい場合のピーク値よりも低い値に予め設定され、たとえばこのようなピーク値の1/2や1/5や1/10などの値として設定される。この処理によって、明らかに反射波が受信されていないにもかかわらずその後の処理(ステップS107以降の処理)が実行されハードウェア資源が浪費されることを防止することが可能となる。CPU101は、今回値が閾値を超えるまで(ステップS105−NO)、サンプリング周期の度にカウンタnの値をインクリメントする(ステップS106)。
【0037】
今回値が閾値を超えると(ステップS105−YES)、CPU101は前回値から所定の値αを減算し、減算結果と今回値との大小を比較する(ステップS107)。今回値の方が大きい場合(ステップS107−YES)、CPU101は、前回値に所定の値αを加算し、加算結果と今回値との大小を比較する(ステップS108)。なお、所定の値αは、CPU101がピークホルダー回路106からピーク値を読み出す際に生じる誤差に近い値が設定される。ステップS107やステップS108の処理において、αの値が用いられることにより、上述した誤差の影響を無くし、正確にピーク値を判定することが可能となる。
【0038】
ステップS107において今回値の方が小さい場合(ステップS107−NO)、又は、ステップS108において今回値の方が大きい場合(ステップS108−NO)、CPU101は、カウンタmの値に“0”を代入して初期化し(ステップS109)、今回値をピーク値としてピーク値記憶部109に書き込む(ステップS110)。そして、CPU101は、カウンタ値nの値をインクリメントし(ステップS111)、ステップS107の処理に戻る。
【0039】
ステップS108において今回値の方が小さい場合(ステップS108−YES)、CPU101は、カウンタmの値をインクリメントする(ステップS112)。次に、CPU101は、予め設定された値Mとカウンタmの値の大小を比較する(ステップS113)。カウンタmの方がMよりも小さい場合(ステップS113−NO)、まだ前回値が所定回数(M回)以上連続して今回値よりも高く判定されていないため、CPU101はカウンタnの値をインクリメントし(ステップS111)ステップS107の処理に戻る。
【0040】
一方、ステップS113の処理においてカウンタmの方がM以上である場合(ステップS113−YES)、CPU101は、まずカウンタnの値をインクリメントし(ステップS114)、カウンタnの値からカウンタmの値を減算した結果を変数Numに代入し(ステップS115)、変数Numの値を用いて距離を算出する(ステップS116)。具体的には、CPU101は、
サンプリング周期(秒)×Num(回)×音速350(メートル/秒)×1/2
という数式に従って計算を行い、計算結果を測定結果の距離として出力する(ステップS117)。
【0041】
このように構成された距離測定装置1は、従来技術のように所定の閾値を用いて反射波を検出するのではなく、前回値が所定回数(M回)以上連続して今回値よりも大きい場合に反射波の到来を検出する。言い換えれば、前回値よりも小さい今回値が連続して読み出されている時間が所定時間を超えた場合に、反射波の到来が検出され、距離が算出される。そのため、従来技術で用いられていた閾値よりも小さい振幅の反射波を検出することが可能となり、対象物体の材質や状態によらずに様々な振幅の反射波に基づいた距離の算出が可能となる。従来は、対象物体の材質や対象物体の表面の状態(ぬれているか否か、粗いか否かなど)に応じて、超音波の反射時の減衰率が異なり、対象物体に反射して戻ってくる反射波の振幅は変化してしまい、固定的な閾値を設定して反射波の検出を行う従来の装置では対象物体によっては反射波を正確に検出することができなかった。このような問題を、上述した構成によって解決することが可能となる。
【0042】
また、従来技術では閾値を小さく設定しすぎてしまうと、ノイズを拾って誤って反射波の到来を検出してしまうおそれがあったが、距離測定装置1は上述した処理によって反射波の到来を検出するため、誤って反射波の到来を検出することを抑止できる。このように、距離測定装置1によれば、反射波の状況によらず、言い換えれば距離測定の対象となっている物体の状態によらず、安定して正確に距離を測定することが可能となる。
【0043】
また、例えば超音波の周波数を40kHzとし音速を350メートル毎秒すると、従来技術のように閾値を用いて反射波を検出する場合には、その際の分解能は8.75ミリメートルとなり、8.75ミリメートル単位でしか距離を測定できなかった。そして、距離測定装置が発信する超音波の周波数を高くすることは技術的な課題やコストの問題により困難であり、40kHz程度の周波数の超音波が用いられることが一般的であった。このような超音波を用いた従来の距離測定装置は、自動車のオートレベリングに求められる分解能を満足することができなかったため、自動車のオートレベリングには他のセンサが利用されていた。しかし、他のセンサを用いた場合には計測処理などが複雑となり、さらなるセンサの追加などが必要となり、コストが増加してしまうという問題が生じていた。このような問題に対し、上記の距離測定装置1では、ピークホルダー回路106によって常にピーク値を保持し、CPU101が超音波の周波数よりも高い周波数に基づく周期で(図3の場合は200kHz、5マイクロ秒)でサンプリング処理し反射波を検出する。そのため、距離測定装置1の分解能は、8.75ミリメートルのおよそ1/5となり、測定精度を向上させることが可能となる。
【0044】
<変形例>
上述した超音波センサ104は、図1においては一台で超音波の発信と反射波の受信とを行うように構成されているが、発信を行う超音波センサと反射波の受信を行う超音波センサとをそれぞれ別個の装置として構成されても良い。
【0045】
また、距離測定装置1は、図4のステップS103及びステップS104の処理を行わないように構成されても良い。また、距離測定装置1は、図4のステップS105及びステップS106の処理を行わないように構成されても良い。
【0046】
また、距離測定装置1は、図4のステップS107及びステップS108の処理において、前回値に対しαの値を加減算した結果と今回値とを比較しているが、αの値を加減算せずに前回値と今回値とを比較するように構成されても良い。この場合、ステップS107及びステップS108の処理は、「前回値は今回値以上か否か」の判定を行う一つの処理に置き換えられる。そして、前回値が今回値以上である場合には、CPU101はステップS112の処理に進み、前回値が今回値よりも小さい場合には、CPU101はステップS109の処理に進む。
【0047】
また、距離測定装置1は、上述した各構成の一部と他部とをそれぞれ異なる筐体に納めて構成し、各筐体において送受信器を備えるように構成されても良い。図5は、このように複数の筐体を用いて構成された距離測定装置1の構成例を表す図である。図5では、一方の筐体に、トリガ発生器102、発振回路103、超音波センサ104、波形整形回路105、ピークホルダー回路106、送受信器110、A/D変換器112を備え、他方の筐体に、CPU101、ピーク値記憶部109、送受信器111を備える。
【0048】
この場合、CPU101が出力するトリガ発生パルスは、送受信器111から送受信器110へ有線通信又は無線通信によって送信され、送受信器110がトリガ発生器102にトリガ発生パルスを出力する。また、CPU101が出力するクリア信号も同様に、送受信器111から送受信器110へ有線通信又は無線通信によって送信され、送受信器110がピークホルダー回路106にクリア信号を出力する。また、ピークホルダー回路106に記憶されるピーク値は、A/D変換器112によってアナログ/デジタル変換され、このデジタル値を送受信器110が送受信器111へ有線通信又は無線通信によって送信する。そして、送受信器111が、受信されたデジタル値をCPU101に出力し、CPU101がこの値に基づいて処理を行う。
【0049】
距離測定装置1は、複数の筐体を用いて構成される場合は、それぞれの筐体に納められる構成は設計者が自由に決めることが可能であり、図5のような構成には限定されない。
【0050】
[適用例]
図6は、距離測定装置1を車両の車高を測定する車高測定装置2に適用した場合の構成を表す概略ブロック図である。車高測定装置2は、複数の超音波センサを備え、それぞれの超音波センサが設置された箇所における車高(自動車の底面と路面との間の距離)を個々に測定する。以下の説明において、距離測定装置1と同じ構成については図6において図1と同じ符号を付し説明を省略する。
【0051】
車高測定装置2は、CPU201、トリガ発生器102、発振回路103、スイッチ202、第一超音波センサ104−1、第二超音波センサ104−2、波形整形回路105、ピークホルダー回路106、ピーク値記憶部109、出力IF(出力インタフェース)203を備える。
【0052】
スイッチ202は、CPU201から切替信号が入力されると、切替信号に応じて発振回路103の出力先を、第一超音波センサ104−1か第二超音波センサ104−2のいずれかに切り替える。
【0053】
出力IF203は、CPU201によって算出された各超音波センサ104に基づいた距離を、車両に備えられた不図示の制御装置に出力する。
【0054】
CPU201は、スイッチ202によって発振回路103に第一超音波センサ104−1が接続された状態と、発振回路103に第二超音波センサ104−2が接続された状態のそれぞれにおいて、CPU101と同様の処理を実行することにより、各超音波センサに基づいた車高を測定する。具体的には、CPU201は、所定のタイミングでスイッチ202に対し切替信号を出力し、発振回路103に接続される超音波センサを切り替える。そして、CPU201は、トリガ発生器102にトリガ発生パルスを出力した後、CPU101と同様に処理を行うことによって、発振回路103に接続されている超音波センサ104を用いて距離を測定し、出力IF203を介して、発振回路103に接続されている超音波センサ104を表す情報とともに測定結果の距離を出力する。
【0055】
このように構成された車高測定装置2では、超音波センサ104を複数備えることにより複数地点における車高を測定することが可能となる。さらに、車高測定装置2では、スイッチ202によって発振回路103に接続される超音波センサを切り替えているため、CPU201、トリガ発生器102、発振回路103、波形整形回路105、ピークホルダー回路106、ピーク値記憶部109をそれぞれ一つ備えれば良く、装置のダウンサイズを図ることが可能となる。
【0056】
以下、車高測定装置2の車両への取り付け例について説明する。なお、以下の説明において、前後方向は車体の前後方向と一致する。この実施例における車高測定装置2は、その出力が、車両の前照灯の光軸の方向を略水平に保持する光軸調整制御に用いられる。
【0057】
図7および図8に示すように、車両Vには2つの超音波センサ104−1、104−2が設けられている。超音波センサ104−1は車両Vの左前輪2Fの後方側に、超音波センサ104−2は左後輪2Rの後方側に配置されている。なお、以下の説明において、特に超音波センサ104−1、104−2を区別する必要がないときは、超音波センサ104と記載する場合もある。
【0058】
図10および図11に示すように、超音波センサ104−2は、左後輪2Rの後方に設けられたマッドガード3の直ぐ後方における車体4の底部5に取り付けられている。さらに詳述すると、超音波センサ104−2の車体4に対する取り付け位置は、図9に示すように、車幅方向において車両直進時の左後輪2Rの車輪幅内に設定されている。
【0059】
周知のようにマッドガード3は、走行中に左後輪2Rが跳ね上げる水、泥、小石等が後方に飛散するのを防止するものであり、超音波センサ104−2をマッドガード3の直ぐ後方に配置することにより、走行中に車輪が跳ね上げる飛び石等が超音波センサ104−2にぶつかるのを防止することができる。
【0060】
なお、図示を省略するが、超音波センサ104−1の場合も同様であり、左前輪2Fの後方に設けられたマッドガードの直ぐ後方における車体4の底部5に取り付けられている。
【0061】
超音波センサ104は、鉛直下方の路面に向けて超音波を発信し、発信された超音波が路面で反射したときの反射波を受信する。そして、車高測定装置2は、発信から受信までの所要時間に基づいて車体4の底部5から路面までの距離を算出する。
【0062】
また、この実施例における超音波センサ104では、発信される超音波の照射角は、図12に示すように、該超音波の路面Pにおける照射幅Aが車輪の幅(超音波センサ104−1については左前輪2Fの車輪幅、超音波センサ104−2については左後輪2Rの車輪幅)Bよりも小さくなるように設定されている。
【0063】
このように構成された車高測定装置2では、車両Vの走行中に発信した超音波を、自車の移動に伴い自車の車輪が踏んだ後の路面Pの車輪跡に照射することができ、前記車輪跡で反射した反射波を受信することができる。したがって、本来の車高である左前輪2Fあるいは左後輪2Rの接地点から車体4の底部5までの距離を精確に測定することができる。
【0064】
また、車高測定が、左右の車輪間における路面P’の凹凸などに影響を受けることがなく、測定精度が向上する。
【0065】
また、超音波センサ104をマッドガード3の直ぐ後方に配置することにより、走行中に左前輪2Fまたは左後輪2Rが跳ね上げる飛び石等が超音波センサ104−1または104−2にぶつかるのを防止することができるので、超音波センサ104−1及び104−2の損傷を防止することができ、長期に亘って正常に車高を測定することができる。
【0066】
また、超音波センサ104から発信される超音波の照射角を前述の如く設定したことにより、例えば車両Vが「わだち」を走行するときに、図12に示すように、発信された超音波の路面Pにおける照射幅Aを、「わだち」の幅Cよりも小さくすることができる。
【0067】
その結果、車両Vが「わだち」や「降雪路」を走行しているときにも、本来の車高である左前輪2Fあるいは左後輪2Rの接地点から車体4の底部5までの距離を精確に測定することができる。
【0068】
なお、車両Vが大きくヨーイング(車両Vの上下軸回りの回転)やローリング(車両Vの前後軸回りの揺れ:横揺れ)をしているときには、超音波センサ104から発信した超音波を、路面Pにおける自車の車輪跡に照射することができない場合があり、測定誤差が大きくなる虞があるので、車高測定をキャンセルするのが好ましい。
【0069】
また、車両Vが大きなピッチング(車両Vの左右軸回りの揺れ:縦揺れ)をしているときにも、測定誤差が大きくなる虞があるので、車高測定をキャンセルするのが好ましい。
【0070】
そこで、例えば、車両Vのヨーレートを検出するヨーレートセンサ(車両姿勢検出手段)を車両Vに設けておき、検出されたヨーレートが所定の閾値よりも大きいときには、車高測定装置2による車高測定をキャンセルするように構成する。このようにすると、誤差が生じる車高測定を実施しないようにすることができ、結果的に測定精度が向上する。
【0071】
次に、図13に基づいて、車両の前照灯光軸調整装置10について説明する。この前照灯光軸調整装置10は、前述した図4のステップS117からの出力を受けて、この値を各超音波センサ104−1及び超音波センサ104−2によって測定された車高データとして記憶し、この値に基づいて車両前照灯の光軸を上下方向に調整するものである。
【0072】
前照灯光軸調整装置10は、前述した車高測定装置2と、車両Vに発生するヨーレートを検出するヨーレートセンサ11と、前照灯の光軸の上下方向の傾きを調整する光軸アクチュエータ12と、制御装置13とを備えて構成されている。
【0073】
車高測定装置2は、左前輪2Fの後方における車体4の底部5から路面Pまでの距離Fと、左後輪2Rの後方における車体4の底部5から路面Pまでの距離Rとを制御装置13へ出力する。
【0074】
制御装置13は、車高測定装置2によって測定されたそれぞれの距離F,Rと、超音波センサ104−1と超音波センサ104−2との距離Lに基づいて、路面Pに対する車体4の前後方向軸の傾きθを算出し、その算出結果に基づいて、前照灯の光軸を略水平(路面Pと略平行)にするために必要な光軸アクチュエータ12に対する制御量Δθを算出し、光軸アクチュエータ12を制御する。
【0075】
具体的な処理について、図7(a),(b)を用いて説明する。前照灯光軸調整装置10は、車両4が水平の状態である場合に超音波センサ104−1によって測定された車高F0と、同状態である場合に超音波センサ104−2によって測定された車高R0とを予め記憶している。また、同状態における車体4の前後方向軸の傾きθ0は、式1のように表される。
【0076】
【数1】
【0077】
また、車両4が傾いている状態である場合の角度θ1は、超音波センサ104−1によって測定された車高F1と、超音波センサ104−2によって測定された車高R1とに基づいて、前照灯光軸調整装置10が式2に基づいて算出する。
【0078】
【数2】
【0079】
そして、前照灯光軸調整装置10は、式1及び式2によって算出されるθ0及びθ1に基づいて、式3のようにΔθを算出する。
【0080】
【数3】
【0081】
前照灯光軸調整装置10は、算出されたΔθ分だけ前照灯の光軸を変更する。このため、前照灯光軸調整装置10では、高い精度で前照灯の光軸の角度を調整することが可能となる。
【0082】
なお、ヨーレートセンサ11によって検出されたヨーレートが、予め設定された閾値を越える場合には、制御装置13において車高測定装置2の測定結果がキャンセルされ、キャンセルされている間は、路面Pに対する車体4の前後方向軸の傾き算出は行わず、前照灯の光軸は調整しない。
【0083】
この前照灯光軸調整装置10では、車高測定装置2により測定された高精度の車高情報に基づいて前照灯の光軸調整制御が行われるので、光軸調整制御を適正に実施することができる。
【0084】
また、このように車両に対して設置された車高測定装置2によれば、路面の状況(例えば、乾いているか否か、雪が積もっているか否か、水たまりがあるか否か、凍っているか否か、アスファルトであるかマンホールであるか、など)にかかわらず安定して車高を測定することが可能となる。
【0085】
また、超音波を用いた従来の距離測定装置は、自動車のオートレベリングに求められる分解能を満足することができなかったため、自動車のオートレベリングには他のセンサが利用されていた。しかし、他のセンサを用いた場合には計測処理などが複雑となり、さらなるセンサの追加などが必要となり、コストが増加してしまうという問題が生じていた。このような問題に対し、車高測定装置2では、ピークホルダー回路106によって常にピーク値を保持し、CPU201が超音波の周波数よりも高い周波数に基づく周期で(図3の場合は200kHz、5マイクロ秒)でサンプリング処理し反射波を検出する。そのため、車高測定装置2は、車高測定における分解能を向上させることが可能である。
【0086】
以上、この発明の実施形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計等も含まれる。例えば、車高測定装置2の用途は、前照灯の光軸調整制御用に限るものではなく、種々の用途に使用可能である。また、複数の超音波センサ104を用いて車高を測定する場合には、各超音波センサ104を用いてCPU201において測定された距離の平均値を車高として決定しても良い。また、複数の超音波センサ104を用いて車高を測定する場合には、各超音波センサ104を用いてCPU201において測定された距離の各値のばらつきが閾値を超えた場合には、車高の測定処理をキャンセルし、再度各超音波センサ104を用いて距離を測定し直しても良い。また、車高測定装置2のCPU201は、車高の測定結果に基づいてピッチ量やロール量をさらに算出するように構成されても良い。
【0087】
また、本発明は、以下のように構成されても良い。
超音波を発信する超音波発信部と、発信された前記超音波が対象物体によって反射された反射波を受信する超音波受信部と、前記超音波発信部が超音波を発信してからの時間を計時する計時部と、前記超音波受信部によって受信された反射波の電圧値のうち、最大値を記憶する記憶するホールド部と、ピーク値を記憶するピーク値記憶部と、前記ホールド部によって記憶されている前記電圧値を、前記超音波発信部によって発信される超音波の周期よりも短い周期で繰り返し読み出し、最初に読み出された電圧値と次に読み出された電圧値のうち大きい方の値をピーク値として前記ピーク値記憶部に書き込み、その後は新たに読み出された電圧値と前記ピーク値記憶部に記憶されるピーク値とを比較し、新たに読み出された電圧値が前記ピーク値よりも所定量以上大きい場合には当該新たに読み出された電圧値をピーク値として前記ピーク値記憶部に上書きし、前記ピーク値よりも所定量以上大きくはない電圧値が連続して新たに読み出され続けている時間が所定時間以上となった場合に、前記計時部の計時に基づいて、前記ピーク値記憶部に記憶されているピーク値が前記ホールド部から読み出された時点の時間を取得し、取得された時間に基づいて前記超音波発信部から前記対象物体までの距離を算出する距離算出部と、を備える距離測定装置。
【0088】
前記超音波発信手段及び前記反射波受信手段の組を複数有し、前記計時部は、前記複数の組の超音波発信部のうち一つの組の超音波発信部について超音波が発信されてからの時間を計時し、前記振幅ホールド部は、前記計時部が計時の対象としている前記超音波発信部と組となっている前記超音波受信部によって受信された反射波の電圧値を記憶し、前記計時部は、前記距離算出部によって、当該計時部が計時の対象としている前記超音波発信部から前記対象物体までの距離が算出された後に、他の組の前記超音波発信部について超音波が発信されてからの時間を計時し、前記振幅ホールド部及び前記距離算出部は当該他の組について処理を繰り返し実行することを特徴とする上記の距離測定装置。
【図面の簡単な説明】
【0089】
【図1】距離測定装置の構成を表す概略ブロック図である。
【図2】距離測定装置におけるタイミングチャートである。
【図3】CPUが反射波を検出する処理の概略を表す概略図である。
【図4】距離測定装置の動作例を表すフローチャートである。
【図5】複数の筐体を用いて構成された距離測定装置の構成例を表す図である。
【図6】距離測定装置を車両の車高を測定する車高測定装置に適用した場合の構成を表す概略ブロック図である。
【図7】図7(a)は、この発明に係る車高測定装置の実施例における配置を示す車両の側面図であり、図7(b)は、前照灯の制御量Δθを求める処理の概略を表す図である。
【図8】実施例における超音波センサの配置を示す車両の平面図である。
【図9】実施例における超音波センサの配置を示す車両の背面図である。
【図10】超音波センサをマッドガートの後方に設けた場合の車両の要部側面図である。
【図11】超音波センサをマッドガートの後方に設けた場合の車両の要部斜視図である。
【図12】実施例における超音波センサから発信される超音波と車輪幅との関係を説明する図である。
【図13】実施例の車高測定装置を用いた前照灯光軸調整装置の構成図である。
【符号の説明】
【0090】
1…距離測定装置, 101…CPU(対象物距離算出手段), 102…トリガ発生器, 103…発振回路, 104…超音波センサ(超音波発信手段,反射波受信手段), 105…波形整形回路, 106…ピークホルダー回路(ホールド手段), 107…比較器, 108…コンデンサ, 109…ピーク値記憶部, 110…送受信器, 111…送受信器, 112…A/D変換器, 2…車高測定装置,201…CPU(計時部,距離算出部), 202…スイッチ,203…出力IF, 2F…左前輪, 2R…左後輪, 3…マッドガード, 4…車体, 11…ヨーレートセンサ, 12…光軸アクチュエータ
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波を用いて物体間の距離を測定する距離測定装置と、超音波を用いて車両の車高を測定する車高測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、物体間の距離を測定する距離測定装置として、超音波を用いる装置が提案されている(特許文献1参照)。超音波を用いた従来の装置では、反射波検出用の所定の閾値が予め設定されており、超音波を発信してから閾値を超える振幅をもった反射波が検出されるまでの間に要した時間を計測し、距離を算出する。
【0003】
例えば、20kHzのクロックパルスを出力するクロックとクロックパルスをカウントするカウンタを装置に備え、超音波を発信してから閾値を超える振幅をもった反射波が検出されるまでの間のカウント値が50であった場合、超音波発信部から対象物体までの往復の距離は、
0.05(ms)×50(回)×音速350(m/s)=0.875m
として算出される。
【特許文献1】特開昭61−38513号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、例えば超音波の周波数を40kHzとし音速を350メートル毎秒すると、従来技術のように閾値を用いて反射波を検出する場合には、その際の分解能は8.75ミリメートルとなり、8.75ミリメートル単位でしか距離を測定できなかった。このように、分解能は、使用される超音波の周波数に依存している。そして、距離測定装置が発信する超音波の周波数を高くすることは技術的な課題やコストの問題により困難であるという問題があった。また、高い周波数に対して都度距離の演算を行うことは、演算負荷の増大という問題を招いてしまっていた。
【0005】
そこで、上記事情に鑑み、本発明は、使用される超音波の周波数を上げることなく分解能を向上させることを可能とする距離測定装置及び車高測定装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、請求項1に記載した発明は、物体間の距離を、超音波を用いて検出する距離測定装置(例えば、実施形態における距離測定装置1)であって、測定対象物に対して所定周期の超音波を発信する超音波発信手段(例えば、実施形態における超音波センサ104)と、発信された超音波が測定対象物により反射された反射波を受信する反射波受信手段(例えば、実施形態における超音波センサ104)と、反射波受信手段により受信された反射波の振幅値を順次記憶するホールド手段(例えば、実施形態におけるピークホルダー回路106)と、前記所定周期よりも短い周期で前記ホールド手段に記憶されている振幅値を読み出し、前記超音波発信手段より超音波が発信されたタイミングから、該ホールド手段により記憶された振幅値のうちで最大値またはその近傍の値が読み出されたタイミングまでの時間に基づき、前記超音波発信手段と前記測定対象物との距離を算出する対象物距離算出手段(例えば、実施形態におけるCPU101)とを備えたことを特徴とする。
【0007】
請求項2に記載した発明は、前記最大値は、読み出された値の変化が所定期間にわたって所定値以内である場合を指すことを特徴とする。
【0008】
請求項3に記載した発明は、物体間の距離を、超音波を用いて検出する距離測定装置であって、測定対象物に対して所定周期の超音波を発信する超音波発信手段と、発信された超音波が測定対象物により反射された反射波を受信する反射波受信手段と、反射波受信手段により受信された反射波の振幅値の最大値を順次記憶するホールド手段と、前記所定周期よりも短い周期で前記ホールド手段に記憶されている振幅値を読み出し、読み出された値の変化が所定期間にわたって所定値以内である場合に、前記超音波発信手段より超音波が発信されたタイミングから、当該所定期間の最初に値が読み出されたタイミングまでの時間に基づき、前記超音波発信手段と前記測定対象物との距離を算出する対象物距離算出手段とを備えたことを特徴とする。
【0009】
請求項4に記載した発明は、前記超音波発信手段及び前記反射波受信手段の組(例えば、実施形態における超音波センサ104−1、超音波センサ104−2)を複数有し、前記ホールド手段は、いずれか一つの組の反射波受信手段によって受信された反射波の振幅値を記憶し、前記対象物距離算出手段は、前記ホールド手段が対象としている組の超音波発信手段と前記測定対象物との距離を算出し、前記対象物距離算出手段が距離を算出した後、前記ホールド手段は他の組の反射波受信手段によって受信された反射波の振幅値を記憶し、前記対象物距離算出手段は当該他の組の超音波発信手段と前記測定対象物との距離を算出することを特徴とする。
【0010】
請求項5に記載した発明は、前記所定期間は、前記超音波発信手段によって発信される超音波の周期よりも長い時間であることを特徴とする。
【0011】
請求項6に記載した発明は、前記ホールド手段は、前記超音波発信手段が超音波を発信してから所定時間が経過した後に受信された超音波の振幅値を前記反射波の振幅値として記憶することを特徴とする。
【0012】
請求項7に記載した発明は、車高測定装置(例えば、実施形態における車高測定装置2)であって、請求項1〜6のいずれかに記載の距離測定装置が車両(例えば、実施形態における車両V)に設けられ、前記超音波発信手段及び前記反射波受信手段は前記車両の底部(例えば、実施形態における底部5)に設けられて、前記超音波発信手段は路面(例えば、実施形態における路面P)に対し超音波を発信し、前記反射波受信手段は前記路面によって反射された反射波を受信し、前記対象物距離算出手段は、算出された距離を車高として出力することを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
請求項1に記載した発明によれば、ホールド手段によって反射波の振幅値を順次記憶し、対象物距離算出手段が超音波の周期よりも短い周期でホールド手段に記憶されている振幅値を読み出し、反射波が受信されたタイミングを判定する。そのため、距離測定装置の分解能を高め、測定精度を向上させることが可能となる。
【0014】
また、請求項1に記載した発明によれば、対象物距離算出手段は、一定の閾値を用いて反射波が受信されたタイミングを判定するのではなく、実際の反射波の振幅に基づいて反射波が受信されたタイミングを判定する。具体的には、対象物距離算出手段は、所定周期よりも短い周期でホールド手段に記憶されている最大値を読み出し、超音波発信手段より超音波が発信されたタイミングから、該ホールド手段により記憶された振幅値のうちで最大値またはその近傍の値が読み出されたタイミングまでの時間に基づき距離を算出する。そのため、従来技術で用いられていた閾値よりも小さい振幅の反射波についても、受信されたタイミングを正確に判定することが可能となり、対象物体の材質や状態によらずに様々な振幅の反射波に基づいた距離の算出が可能となる。
【0015】
請求項3に記載した発明によれば、対象物距離算出手段は、一定の閾値を用いて反射波が受信されたタイミングを判定するのではなく、実際の反射波の振幅に基づいて反射波が受信されたタイミングを判定する。具体的には、対象物距離算出手段は、所定周期よりも短い周期でホールド手段に記憶されている最大値を読み出し、読み出された値の変化が所定期間にわたって所定値以内である場合に、所定期間の最初に値が読み出されたタイミングを反射波が受信されたタイミングとして判定し、このタイミングまでの時間に基づき距離を算出する。そのため、従来技術で用いられていた閾値よりも小さい振幅の反射波についても、受信されたタイミングを正確に判定することが可能となり、対象物体の材質や状態によらずに様々な振幅の反射波に基づいた距離の算出が可能となる。
【0016】
また、請求項3に記載した発明によれば、ホールド手段によって反射波の振幅値の最大値を常に記憶し、対象物距離算出手段が超音波の周期よりも短い周期でホールド手段に記憶されている振幅値を読み出し、反射波が受信されたタイミングを判定する。そのため、距離測定装置の分解能を高め、測定精度を向上させることが可能となる。
【0017】
請求項4に記載した発明によれば、複数の地点における距離を測定することが可能となるとともに、ホールド手段及び対象物距離算出手段はそれぞれ一つずつ備えれば良いため、距離測定装置の肥大化を抑止することが可能となる。
【0018】
請求項5に記載した発明によれば、反射波の振幅値の変化が落ち着いてから距離を算出することとなるため、測定精度を向上させることが可能となる。
【0019】
請求項6に記載した発明によれば、超音波発信手段によって発信された超音波の残響が反射波受信部によって受信され、反射波ではなく残響に基づいて誤った距離が算出されることを防止することが可能となる。
【0020】
請求項7に記載した発明によれば、路面の状況によらずに車高を正確に算出することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
[システム構成]
図1は、距離測定装置1の構成を表す概略ブロック図である。距離測定装置1は、CPU(Central Processer Unit)101、トリガ発生器102、発振回路103、超音波センサ104、波形整形回路105、ピークホルダー回路106、ピーク値記憶部109を備える。以下、距離測定装置1が備える各構成要素について説明する。
【0022】
CPU101は、所定のタイミング又は他の装置からの指示に応じて、トリガ発生器102に対してトリガ発生パルスを出力する。また、CPU101は、ピークホルダー回路106からピーク値を読み出すことによって、距離測定装置1から対象物体までの距離を算出し、算出された距離を出力する。このとき、ピークホルダー回路106に記憶されているピーク値は、不図示のアナログ/デジタル変換回路によってデジタル値に変換され、CPU101によって読み出される。CPU101の処理の詳細については後述する。
【0023】
トリガ発生器102は、CPU101からトリガ発生パルスを入力されると、トリガパルスを発振回路103に対して出力する。
【0024】
発振回路103は、トリガ発生器102からトリガパルスが入力されると、超音波センサ104に対し、所定の振幅、所定の周波数、所定の波数の駆動信号を出力する。
【0025】
超音波センサ104は、発振回路103から駆動信号が入力されると、駆動信号によって振動子を振動させることによって、駆動信号に応じた振幅、周波数、波数をもった超音波をする。また、超音波センサ104は、外部から入射される音波によって振動子が振動すると、この振動に応じた電気信号を生成し波形整形回路105へ出力する。
【0026】
波形整形回路105は、超音波センサ104から電気信号が入力されると、この電気信号に対し波形整形処理を行い、波形整形処理が施された電気信号を出力する。波形整形処理とは、入力された電気信号の波形からノイズを除去する処理である。波形整形回路105は、例えばローパスフィルタ(Low Pass Filter)を用いて構成され、入力された電気信号の波形から高周波ノイズを除去する。
【0027】
ピークホルダー回路106は、波形整形回路105から出力された電気信号の振幅値(電圧値)のピーク値を記憶し、このピーク値をCPU101に出力する。また、ピークホルダー回路106は、CPU101からクリア信号を入力されると、記憶しているピーク値を破棄し、その後に波形整形回路105から入力された電気信号に基づいて新たにピーク値を記憶する。
【0028】
ピークホルダー回路106は、例えば図1に示されるように比較器17、コンデンサ18を用いて構成される。比較器17は、二つの入力を有し、波形整形回路105から出力される電気信号を一方の入力として受け付け、コンデンサ18に保持されるピーク値を他方の入力として受け付ける。そして、二つの入力のうち大きい方の値をピーク値としてコンデンサ18へ出力する。コンデンサ18は、比較器17から入力されるピーク値を保持する。また、CPU101からクリア信号が出力されると、クリア信号に基づいてピークホルダー回路106に備えられたスイッチ(図1ではトランジスタ)がアースに通電し、コンデンサ18が保持する値がリセットされる。
【0029】
ピーク値記憶部109は、CPU101によってピーク値として判定された値を、CPU101の書込動作に応じて記憶する。
【0030】
図2は、距離測定装置1におけるタイミングチャートである。CPU101がトリガ発生パルスを出力すると、トリガ発生器102がトリガパルスを出力する。このトリガパルスに応じて、発振回路103が駆動信号を出力する。超音波センサ104は、駆動信号に応じて超音波を発信する。ただし、駆動信号が下がった後にも、超音波センサ104はある時間超音波を出し続ける。このように、駆動信号が下がった後に超音波センサ104が超音波を出し続けてしまう時間を残響時間といい、残響時間に発信される超音波を残響波という。超音波センサ104によって発信された超音波が対象物体に反射して超音波センサ104に戻ってくると、超音波センサ104はこの超音波(以下、「反射波」という)を受信する。CPU101は、不図示の計時部を備え、トリガ発生パルスを出力してから反射波が検出されるまでの時間(以下、反射時間という)Tを計時部によって測定し、反射時間に音速を乗算し2で割ることによって対象物体までの距離を算出する。
【0031】
図3は、CPU101が反射波を検出する処理の概略を表す概略図である。以下、図3を用いてCPU101が反射波を検出する処理について説明する。図3において、横軸は時間を表し、縦軸は超音波の振幅を表し、太線の波形は反射波の入力によって超音波センサ104が出力する電気信号の電圧値の時間変化を表し、破線の階段状の折れ線はピークホルダー回路106によって記憶されるピーク値の時間変化を表す。また、図3において1〜24の番号が付された各矢印は、ピークホルダー回路106が記憶しているピーク値をCPU101がピークホルダー回路106から読み出すタイミングを表す。以下、CPU101がピークホルダー回路106からピーク値を読み出す処理を「サンプリング処理」と呼び、サンプリング処理が行われる周期を「サンプリング周期」と呼ぶ。
【0032】
サンプリング周期は、超音波センサ104が発信する超音波の周期よりも短い。好ましくは、サンプリング周期は、超音波センサ104が発信する超音波の周期の1/2よりも短く設定される。さらに好ましくは、サンプリング周期は超音波センサ104が発信する超音波の周期の1/5よりも短く設定される。例えば、超音波の周期が25マイクロ秒に設定され、CPU101のサンプリング周期が5マイクロ秒に設定される。
【0033】
CPU101は、予め設定されたサンプリング周期にしたがってサンプリング処理を行い、サンプリング処理によって新たにピークホルダー回路106から読み出されたピーク値(以下、「今回値」という)と、ピーク値記憶部109に記憶されているピーク値(以下、「前回値」という)とを比較し、前回値が所定回数(M回)以上連続して今回値よりも高い場合には、この前回値が読み出された時点に反射波が検出されたと判定し、この時点の経過時間を反射時間として用いて距離を算出する。ここで、所定回数(M回)は、サンプリング処理をM回繰り返した場合に経過する処理時間が少なくとも超音波の1周期以上の時間よりも長くなるように予め設定される。則ち、
サンプリング周期×M>超音波の周期
となるようにMの値が予め設定される。
【0034】
図4は、距離測定装置1の動作例を表すフローチャートである。図4を用いて距離測定装置1の動作例について説明する。まず、CPU101は初期化処理を行う。具体的には、連続して前回値が今回値よりも高く判定された回数を表す変数m、サンプリング処理の回数を表す変数n、ピーク値記憶部109に記憶される前回値、以上の3つの値にそれぞれ“0”を代入し、各値を初期化する(ステップS101)。次に、CPU101がトリガ発生パルスを出力し、この出力に応じて超音波センサ104が超音波を発信する(ステップS102)。CPU101は、発信される超音波の振幅値が最大値となったタイミングで、計時部による計時をスタートする。なお、CPU101は、トリガ発生パルスを出力してから、発信される超音波の振幅値が最大値をとるまでの時間(オフセット時間)を予め記憶している。このオフセット時間は、距離測定装置1の特性値として予め実験などにより取得される値である。また、CPU101は、超音波が発信されたタイミングで、計時部による計時をスタートするように構成されても良い。
【0035】
次に、CPU101は、サンプリング周期の度に、所定時間が経過したか否か判定する(ステップS103)。この所定時間は、残響時間よりも長い時間として予め設定される時間である。この所定時間が経過するまでサンプリング処理を開始しないことによって、残響波を反射波として誤って検出することを防止することが可能となる。CPU101は、所定時間が経過するまで(ステップS103−NO)、サンプリング周期の度にカウンタnの値をインクリメントする(ステップS104)。
【0036】
所定時間が経過すると(ステップS103−YES)、CPU101はサンプリング周期の度にサンプリング処理を行い、今回値が閾値を超えているか否か判定する(ステップS105)。この閾値は、想定される反射波のピーク値のうち最も電圧値が小さい場合のピーク値よりも低い値に予め設定され、たとえばこのようなピーク値の1/2や1/5や1/10などの値として設定される。この処理によって、明らかに反射波が受信されていないにもかかわらずその後の処理(ステップS107以降の処理)が実行されハードウェア資源が浪費されることを防止することが可能となる。CPU101は、今回値が閾値を超えるまで(ステップS105−NO)、サンプリング周期の度にカウンタnの値をインクリメントする(ステップS106)。
【0037】
今回値が閾値を超えると(ステップS105−YES)、CPU101は前回値から所定の値αを減算し、減算結果と今回値との大小を比較する(ステップS107)。今回値の方が大きい場合(ステップS107−YES)、CPU101は、前回値に所定の値αを加算し、加算結果と今回値との大小を比較する(ステップS108)。なお、所定の値αは、CPU101がピークホルダー回路106からピーク値を読み出す際に生じる誤差に近い値が設定される。ステップS107やステップS108の処理において、αの値が用いられることにより、上述した誤差の影響を無くし、正確にピーク値を判定することが可能となる。
【0038】
ステップS107において今回値の方が小さい場合(ステップS107−NO)、又は、ステップS108において今回値の方が大きい場合(ステップS108−NO)、CPU101は、カウンタmの値に“0”を代入して初期化し(ステップS109)、今回値をピーク値としてピーク値記憶部109に書き込む(ステップS110)。そして、CPU101は、カウンタ値nの値をインクリメントし(ステップS111)、ステップS107の処理に戻る。
【0039】
ステップS108において今回値の方が小さい場合(ステップS108−YES)、CPU101は、カウンタmの値をインクリメントする(ステップS112)。次に、CPU101は、予め設定された値Mとカウンタmの値の大小を比較する(ステップS113)。カウンタmの方がMよりも小さい場合(ステップS113−NO)、まだ前回値が所定回数(M回)以上連続して今回値よりも高く判定されていないため、CPU101はカウンタnの値をインクリメントし(ステップS111)ステップS107の処理に戻る。
【0040】
一方、ステップS113の処理においてカウンタmの方がM以上である場合(ステップS113−YES)、CPU101は、まずカウンタnの値をインクリメントし(ステップS114)、カウンタnの値からカウンタmの値を減算した結果を変数Numに代入し(ステップS115)、変数Numの値を用いて距離を算出する(ステップS116)。具体的には、CPU101は、
サンプリング周期(秒)×Num(回)×音速350(メートル/秒)×1/2
という数式に従って計算を行い、計算結果を測定結果の距離として出力する(ステップS117)。
【0041】
このように構成された距離測定装置1は、従来技術のように所定の閾値を用いて反射波を検出するのではなく、前回値が所定回数(M回)以上連続して今回値よりも大きい場合に反射波の到来を検出する。言い換えれば、前回値よりも小さい今回値が連続して読み出されている時間が所定時間を超えた場合に、反射波の到来が検出され、距離が算出される。そのため、従来技術で用いられていた閾値よりも小さい振幅の反射波を検出することが可能となり、対象物体の材質や状態によらずに様々な振幅の反射波に基づいた距離の算出が可能となる。従来は、対象物体の材質や対象物体の表面の状態(ぬれているか否か、粗いか否かなど)に応じて、超音波の反射時の減衰率が異なり、対象物体に反射して戻ってくる反射波の振幅は変化してしまい、固定的な閾値を設定して反射波の検出を行う従来の装置では対象物体によっては反射波を正確に検出することができなかった。このような問題を、上述した構成によって解決することが可能となる。
【0042】
また、従来技術では閾値を小さく設定しすぎてしまうと、ノイズを拾って誤って反射波の到来を検出してしまうおそれがあったが、距離測定装置1は上述した処理によって反射波の到来を検出するため、誤って反射波の到来を検出することを抑止できる。このように、距離測定装置1によれば、反射波の状況によらず、言い換えれば距離測定の対象となっている物体の状態によらず、安定して正確に距離を測定することが可能となる。
【0043】
また、例えば超音波の周波数を40kHzとし音速を350メートル毎秒すると、従来技術のように閾値を用いて反射波を検出する場合には、その際の分解能は8.75ミリメートルとなり、8.75ミリメートル単位でしか距離を測定できなかった。そして、距離測定装置が発信する超音波の周波数を高くすることは技術的な課題やコストの問題により困難であり、40kHz程度の周波数の超音波が用いられることが一般的であった。このような超音波を用いた従来の距離測定装置は、自動車のオートレベリングに求められる分解能を満足することができなかったため、自動車のオートレベリングには他のセンサが利用されていた。しかし、他のセンサを用いた場合には計測処理などが複雑となり、さらなるセンサの追加などが必要となり、コストが増加してしまうという問題が生じていた。このような問題に対し、上記の距離測定装置1では、ピークホルダー回路106によって常にピーク値を保持し、CPU101が超音波の周波数よりも高い周波数に基づく周期で(図3の場合は200kHz、5マイクロ秒)でサンプリング処理し反射波を検出する。そのため、距離測定装置1の分解能は、8.75ミリメートルのおよそ1/5となり、測定精度を向上させることが可能となる。
【0044】
<変形例>
上述した超音波センサ104は、図1においては一台で超音波の発信と反射波の受信とを行うように構成されているが、発信を行う超音波センサと反射波の受信を行う超音波センサとをそれぞれ別個の装置として構成されても良い。
【0045】
また、距離測定装置1は、図4のステップS103及びステップS104の処理を行わないように構成されても良い。また、距離測定装置1は、図4のステップS105及びステップS106の処理を行わないように構成されても良い。
【0046】
また、距離測定装置1は、図4のステップS107及びステップS108の処理において、前回値に対しαの値を加減算した結果と今回値とを比較しているが、αの値を加減算せずに前回値と今回値とを比較するように構成されても良い。この場合、ステップS107及びステップS108の処理は、「前回値は今回値以上か否か」の判定を行う一つの処理に置き換えられる。そして、前回値が今回値以上である場合には、CPU101はステップS112の処理に進み、前回値が今回値よりも小さい場合には、CPU101はステップS109の処理に進む。
【0047】
また、距離測定装置1は、上述した各構成の一部と他部とをそれぞれ異なる筐体に納めて構成し、各筐体において送受信器を備えるように構成されても良い。図5は、このように複数の筐体を用いて構成された距離測定装置1の構成例を表す図である。図5では、一方の筐体に、トリガ発生器102、発振回路103、超音波センサ104、波形整形回路105、ピークホルダー回路106、送受信器110、A/D変換器112を備え、他方の筐体に、CPU101、ピーク値記憶部109、送受信器111を備える。
【0048】
この場合、CPU101が出力するトリガ発生パルスは、送受信器111から送受信器110へ有線通信又は無線通信によって送信され、送受信器110がトリガ発生器102にトリガ発生パルスを出力する。また、CPU101が出力するクリア信号も同様に、送受信器111から送受信器110へ有線通信又は無線通信によって送信され、送受信器110がピークホルダー回路106にクリア信号を出力する。また、ピークホルダー回路106に記憶されるピーク値は、A/D変換器112によってアナログ/デジタル変換され、このデジタル値を送受信器110が送受信器111へ有線通信又は無線通信によって送信する。そして、送受信器111が、受信されたデジタル値をCPU101に出力し、CPU101がこの値に基づいて処理を行う。
【0049】
距離測定装置1は、複数の筐体を用いて構成される場合は、それぞれの筐体に納められる構成は設計者が自由に決めることが可能であり、図5のような構成には限定されない。
【0050】
[適用例]
図6は、距離測定装置1を車両の車高を測定する車高測定装置2に適用した場合の構成を表す概略ブロック図である。車高測定装置2は、複数の超音波センサを備え、それぞれの超音波センサが設置された箇所における車高(自動車の底面と路面との間の距離)を個々に測定する。以下の説明において、距離測定装置1と同じ構成については図6において図1と同じ符号を付し説明を省略する。
【0051】
車高測定装置2は、CPU201、トリガ発生器102、発振回路103、スイッチ202、第一超音波センサ104−1、第二超音波センサ104−2、波形整形回路105、ピークホルダー回路106、ピーク値記憶部109、出力IF(出力インタフェース)203を備える。
【0052】
スイッチ202は、CPU201から切替信号が入力されると、切替信号に応じて発振回路103の出力先を、第一超音波センサ104−1か第二超音波センサ104−2のいずれかに切り替える。
【0053】
出力IF203は、CPU201によって算出された各超音波センサ104に基づいた距離を、車両に備えられた不図示の制御装置に出力する。
【0054】
CPU201は、スイッチ202によって発振回路103に第一超音波センサ104−1が接続された状態と、発振回路103に第二超音波センサ104−2が接続された状態のそれぞれにおいて、CPU101と同様の処理を実行することにより、各超音波センサに基づいた車高を測定する。具体的には、CPU201は、所定のタイミングでスイッチ202に対し切替信号を出力し、発振回路103に接続される超音波センサを切り替える。そして、CPU201は、トリガ発生器102にトリガ発生パルスを出力した後、CPU101と同様に処理を行うことによって、発振回路103に接続されている超音波センサ104を用いて距離を測定し、出力IF203を介して、発振回路103に接続されている超音波センサ104を表す情報とともに測定結果の距離を出力する。
【0055】
このように構成された車高測定装置2では、超音波センサ104を複数備えることにより複数地点における車高を測定することが可能となる。さらに、車高測定装置2では、スイッチ202によって発振回路103に接続される超音波センサを切り替えているため、CPU201、トリガ発生器102、発振回路103、波形整形回路105、ピークホルダー回路106、ピーク値記憶部109をそれぞれ一つ備えれば良く、装置のダウンサイズを図ることが可能となる。
【0056】
以下、車高測定装置2の車両への取り付け例について説明する。なお、以下の説明において、前後方向は車体の前後方向と一致する。この実施例における車高測定装置2は、その出力が、車両の前照灯の光軸の方向を略水平に保持する光軸調整制御に用いられる。
【0057】
図7および図8に示すように、車両Vには2つの超音波センサ104−1、104−2が設けられている。超音波センサ104−1は車両Vの左前輪2Fの後方側に、超音波センサ104−2は左後輪2Rの後方側に配置されている。なお、以下の説明において、特に超音波センサ104−1、104−2を区別する必要がないときは、超音波センサ104と記載する場合もある。
【0058】
図10および図11に示すように、超音波センサ104−2は、左後輪2Rの後方に設けられたマッドガード3の直ぐ後方における車体4の底部5に取り付けられている。さらに詳述すると、超音波センサ104−2の車体4に対する取り付け位置は、図9に示すように、車幅方向において車両直進時の左後輪2Rの車輪幅内に設定されている。
【0059】
周知のようにマッドガード3は、走行中に左後輪2Rが跳ね上げる水、泥、小石等が後方に飛散するのを防止するものであり、超音波センサ104−2をマッドガード3の直ぐ後方に配置することにより、走行中に車輪が跳ね上げる飛び石等が超音波センサ104−2にぶつかるのを防止することができる。
【0060】
なお、図示を省略するが、超音波センサ104−1の場合も同様であり、左前輪2Fの後方に設けられたマッドガードの直ぐ後方における車体4の底部5に取り付けられている。
【0061】
超音波センサ104は、鉛直下方の路面に向けて超音波を発信し、発信された超音波が路面で反射したときの反射波を受信する。そして、車高測定装置2は、発信から受信までの所要時間に基づいて車体4の底部5から路面までの距離を算出する。
【0062】
また、この実施例における超音波センサ104では、発信される超音波の照射角は、図12に示すように、該超音波の路面Pにおける照射幅Aが車輪の幅(超音波センサ104−1については左前輪2Fの車輪幅、超音波センサ104−2については左後輪2Rの車輪幅)Bよりも小さくなるように設定されている。
【0063】
このように構成された車高測定装置2では、車両Vの走行中に発信した超音波を、自車の移動に伴い自車の車輪が踏んだ後の路面Pの車輪跡に照射することができ、前記車輪跡で反射した反射波を受信することができる。したがって、本来の車高である左前輪2Fあるいは左後輪2Rの接地点から車体4の底部5までの距離を精確に測定することができる。
【0064】
また、車高測定が、左右の車輪間における路面P’の凹凸などに影響を受けることがなく、測定精度が向上する。
【0065】
また、超音波センサ104をマッドガード3の直ぐ後方に配置することにより、走行中に左前輪2Fまたは左後輪2Rが跳ね上げる飛び石等が超音波センサ104−1または104−2にぶつかるのを防止することができるので、超音波センサ104−1及び104−2の損傷を防止することができ、長期に亘って正常に車高を測定することができる。
【0066】
また、超音波センサ104から発信される超音波の照射角を前述の如く設定したことにより、例えば車両Vが「わだち」を走行するときに、図12に示すように、発信された超音波の路面Pにおける照射幅Aを、「わだち」の幅Cよりも小さくすることができる。
【0067】
その結果、車両Vが「わだち」や「降雪路」を走行しているときにも、本来の車高である左前輪2Fあるいは左後輪2Rの接地点から車体4の底部5までの距離を精確に測定することができる。
【0068】
なお、車両Vが大きくヨーイング(車両Vの上下軸回りの回転)やローリング(車両Vの前後軸回りの揺れ:横揺れ)をしているときには、超音波センサ104から発信した超音波を、路面Pにおける自車の車輪跡に照射することができない場合があり、測定誤差が大きくなる虞があるので、車高測定をキャンセルするのが好ましい。
【0069】
また、車両Vが大きなピッチング(車両Vの左右軸回りの揺れ:縦揺れ)をしているときにも、測定誤差が大きくなる虞があるので、車高測定をキャンセルするのが好ましい。
【0070】
そこで、例えば、車両Vのヨーレートを検出するヨーレートセンサ(車両姿勢検出手段)を車両Vに設けておき、検出されたヨーレートが所定の閾値よりも大きいときには、車高測定装置2による車高測定をキャンセルするように構成する。このようにすると、誤差が生じる車高測定を実施しないようにすることができ、結果的に測定精度が向上する。
【0071】
次に、図13に基づいて、車両の前照灯光軸調整装置10について説明する。この前照灯光軸調整装置10は、前述した図4のステップS117からの出力を受けて、この値を各超音波センサ104−1及び超音波センサ104−2によって測定された車高データとして記憶し、この値に基づいて車両前照灯の光軸を上下方向に調整するものである。
【0072】
前照灯光軸調整装置10は、前述した車高測定装置2と、車両Vに発生するヨーレートを検出するヨーレートセンサ11と、前照灯の光軸の上下方向の傾きを調整する光軸アクチュエータ12と、制御装置13とを備えて構成されている。
【0073】
車高測定装置2は、左前輪2Fの後方における車体4の底部5から路面Pまでの距離Fと、左後輪2Rの後方における車体4の底部5から路面Pまでの距離Rとを制御装置13へ出力する。
【0074】
制御装置13は、車高測定装置2によって測定されたそれぞれの距離F,Rと、超音波センサ104−1と超音波センサ104−2との距離Lに基づいて、路面Pに対する車体4の前後方向軸の傾きθを算出し、その算出結果に基づいて、前照灯の光軸を略水平(路面Pと略平行)にするために必要な光軸アクチュエータ12に対する制御量Δθを算出し、光軸アクチュエータ12を制御する。
【0075】
具体的な処理について、図7(a),(b)を用いて説明する。前照灯光軸調整装置10は、車両4が水平の状態である場合に超音波センサ104−1によって測定された車高F0と、同状態である場合に超音波センサ104−2によって測定された車高R0とを予め記憶している。また、同状態における車体4の前後方向軸の傾きθ0は、式1のように表される。
【0076】
【数1】
【0077】
また、車両4が傾いている状態である場合の角度θ1は、超音波センサ104−1によって測定された車高F1と、超音波センサ104−2によって測定された車高R1とに基づいて、前照灯光軸調整装置10が式2に基づいて算出する。
【0078】
【数2】
【0079】
そして、前照灯光軸調整装置10は、式1及び式2によって算出されるθ0及びθ1に基づいて、式3のようにΔθを算出する。
【0080】
【数3】
【0081】
前照灯光軸調整装置10は、算出されたΔθ分だけ前照灯の光軸を変更する。このため、前照灯光軸調整装置10では、高い精度で前照灯の光軸の角度を調整することが可能となる。
【0082】
なお、ヨーレートセンサ11によって検出されたヨーレートが、予め設定された閾値を越える場合には、制御装置13において車高測定装置2の測定結果がキャンセルされ、キャンセルされている間は、路面Pに対する車体4の前後方向軸の傾き算出は行わず、前照灯の光軸は調整しない。
【0083】
この前照灯光軸調整装置10では、車高測定装置2により測定された高精度の車高情報に基づいて前照灯の光軸調整制御が行われるので、光軸調整制御を適正に実施することができる。
【0084】
また、このように車両に対して設置された車高測定装置2によれば、路面の状況(例えば、乾いているか否か、雪が積もっているか否か、水たまりがあるか否か、凍っているか否か、アスファルトであるかマンホールであるか、など)にかかわらず安定して車高を測定することが可能となる。
【0085】
また、超音波を用いた従来の距離測定装置は、自動車のオートレベリングに求められる分解能を満足することができなかったため、自動車のオートレベリングには他のセンサが利用されていた。しかし、他のセンサを用いた場合には計測処理などが複雑となり、さらなるセンサの追加などが必要となり、コストが増加してしまうという問題が生じていた。このような問題に対し、車高測定装置2では、ピークホルダー回路106によって常にピーク値を保持し、CPU201が超音波の周波数よりも高い周波数に基づく周期で(図3の場合は200kHz、5マイクロ秒)でサンプリング処理し反射波を検出する。そのため、車高測定装置2は、車高測定における分解能を向上させることが可能である。
【0086】
以上、この発明の実施形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計等も含まれる。例えば、車高測定装置2の用途は、前照灯の光軸調整制御用に限るものではなく、種々の用途に使用可能である。また、複数の超音波センサ104を用いて車高を測定する場合には、各超音波センサ104を用いてCPU201において測定された距離の平均値を車高として決定しても良い。また、複数の超音波センサ104を用いて車高を測定する場合には、各超音波センサ104を用いてCPU201において測定された距離の各値のばらつきが閾値を超えた場合には、車高の測定処理をキャンセルし、再度各超音波センサ104を用いて距離を測定し直しても良い。また、車高測定装置2のCPU201は、車高の測定結果に基づいてピッチ量やロール量をさらに算出するように構成されても良い。
【0087】
また、本発明は、以下のように構成されても良い。
超音波を発信する超音波発信部と、発信された前記超音波が対象物体によって反射された反射波を受信する超音波受信部と、前記超音波発信部が超音波を発信してからの時間を計時する計時部と、前記超音波受信部によって受信された反射波の電圧値のうち、最大値を記憶する記憶するホールド部と、ピーク値を記憶するピーク値記憶部と、前記ホールド部によって記憶されている前記電圧値を、前記超音波発信部によって発信される超音波の周期よりも短い周期で繰り返し読み出し、最初に読み出された電圧値と次に読み出された電圧値のうち大きい方の値をピーク値として前記ピーク値記憶部に書き込み、その後は新たに読み出された電圧値と前記ピーク値記憶部に記憶されるピーク値とを比較し、新たに読み出された電圧値が前記ピーク値よりも所定量以上大きい場合には当該新たに読み出された電圧値をピーク値として前記ピーク値記憶部に上書きし、前記ピーク値よりも所定量以上大きくはない電圧値が連続して新たに読み出され続けている時間が所定時間以上となった場合に、前記計時部の計時に基づいて、前記ピーク値記憶部に記憶されているピーク値が前記ホールド部から読み出された時点の時間を取得し、取得された時間に基づいて前記超音波発信部から前記対象物体までの距離を算出する距離算出部と、を備える距離測定装置。
【0088】
前記超音波発信手段及び前記反射波受信手段の組を複数有し、前記計時部は、前記複数の組の超音波発信部のうち一つの組の超音波発信部について超音波が発信されてからの時間を計時し、前記振幅ホールド部は、前記計時部が計時の対象としている前記超音波発信部と組となっている前記超音波受信部によって受信された反射波の電圧値を記憶し、前記計時部は、前記距離算出部によって、当該計時部が計時の対象としている前記超音波発信部から前記対象物体までの距離が算出された後に、他の組の前記超音波発信部について超音波が発信されてからの時間を計時し、前記振幅ホールド部及び前記距離算出部は当該他の組について処理を繰り返し実行することを特徴とする上記の距離測定装置。
【図面の簡単な説明】
【0089】
【図1】距離測定装置の構成を表す概略ブロック図である。
【図2】距離測定装置におけるタイミングチャートである。
【図3】CPUが反射波を検出する処理の概略を表す概略図である。
【図4】距離測定装置の動作例を表すフローチャートである。
【図5】複数の筐体を用いて構成された距離測定装置の構成例を表す図である。
【図6】距離測定装置を車両の車高を測定する車高測定装置に適用した場合の構成を表す概略ブロック図である。
【図7】図7(a)は、この発明に係る車高測定装置の実施例における配置を示す車両の側面図であり、図7(b)は、前照灯の制御量Δθを求める処理の概略を表す図である。
【図8】実施例における超音波センサの配置を示す車両の平面図である。
【図9】実施例における超音波センサの配置を示す車両の背面図である。
【図10】超音波センサをマッドガートの後方に設けた場合の車両の要部側面図である。
【図11】超音波センサをマッドガートの後方に設けた場合の車両の要部斜視図である。
【図12】実施例における超音波センサから発信される超音波と車輪幅との関係を説明する図である。
【図13】実施例の車高測定装置を用いた前照灯光軸調整装置の構成図である。
【符号の説明】
【0090】
1…距離測定装置, 101…CPU(対象物距離算出手段), 102…トリガ発生器, 103…発振回路, 104…超音波センサ(超音波発信手段,反射波受信手段), 105…波形整形回路, 106…ピークホルダー回路(ホールド手段), 107…比較器, 108…コンデンサ, 109…ピーク値記憶部, 110…送受信器, 111…送受信器, 112…A/D変換器, 2…車高測定装置,201…CPU(計時部,距離算出部), 202…スイッチ,203…出力IF, 2F…左前輪, 2R…左後輪, 3…マッドガード, 4…車体, 11…ヨーレートセンサ, 12…光軸アクチュエータ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
物体間の距離を、超音波を用いて検出する距離測定装置であって、
測定対象物に対して所定周期の超音波を発信する超音波発信手段と、
発信された超音波が測定対象物により反射された反射波を受信する反射波受信手段と、
反射波受信手段により受信された反射波の振幅値を順次記憶するホールド手段と、
前記所定周期よりも短い周期で前記ホールド手段に記憶されている振幅値を読み出し、前記超音波発信手段より超音波が発信されたタイミングから、該ホールド手段により記憶された振幅値のうちで最大値またはその近傍の値が読み出されたタイミングまでの時間に基づき、前記超音波発信手段と前記測定対象物との距離を算出する対象物距離算出手段と
を備えたことを特徴とする距離測定装置。
【請求項2】
前記最大値は、読み出された値の変化が所定期間にわたって所定値以内である場合を指すことを特徴とする請求項1に記載の距離測定装置。
【請求項3】
物体間の距離を、超音波を用いて検出する距離測定装置であって、
測定対象物に対して所定周期の超音波を発信する超音波発信手段と、
発信された超音波が測定対象物により反射された反射波を受信する反射波受信手段と、
反射波受信手段により受信された反射波の振幅値の最大値を順次記憶するホールド手段と、
前記所定周期よりも短い周期で前記ホールド手段に記憶されている振幅値を読み出し、読み出された値の変化が所定期間にわたって所定値以内である場合に、前記超音波発信手段より超音波が発信されたタイミングから、当該所定期間の最初に値が読み出されたタイミングまでの時間に基づき、前記超音波発信手段と前記測定対象物との距離を算出する対象物距離算出手段と
を備えたことを特徴とする距離測定装置。
【請求項4】
前記超音波発信手段及び前記反射波受信手段の組を複数有し、
前記ホールド手段は、いずれか一つの組の反射波受信手段によって受信された反射波の振幅値を記憶し、
前記対象物距離算出手段は、前記ホールド手段が対象としている組の超音波発信手段と前記測定対象物との距離を算出し、
前記対象物距離算出手段が距離を算出した後、前記ホールド手段は他の組の反射波受信手段によって受信された反射波の振幅値を記憶し、前記対象物距離算出手段は当該他の組の超音波発信手段と前記測定対象物との距離を算出することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の距離測定装置。
【請求項5】
前記所定期間は、前記超音波発信手段によって発信される超音波の周期よりも長い時間であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の距離測定装置。
【請求項6】
前記ホールド手段は、前記超音波発信手段が超音波を発信してから所定時間が経過した後に受信された超音波の振幅値を前記反射波の振幅値として記憶することを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の距離測定装置。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載の距離測定装置が車両に設けられ、
前記超音波発信手段及び前記反射波受信手段は前記車両の底部に設けられて、前記超音波発信手段は路面に対し超音波を発信し、前記反射波受信手段は前記路面によって反射された反射波を受信し、
前記対象物距離算出手段は、算出された距離を車高として出力することを特徴とする車高測定装置。
【請求項1】
物体間の距離を、超音波を用いて検出する距離測定装置であって、
測定対象物に対して所定周期の超音波を発信する超音波発信手段と、
発信された超音波が測定対象物により反射された反射波を受信する反射波受信手段と、
反射波受信手段により受信された反射波の振幅値を順次記憶するホールド手段と、
前記所定周期よりも短い周期で前記ホールド手段に記憶されている振幅値を読み出し、前記超音波発信手段より超音波が発信されたタイミングから、該ホールド手段により記憶された振幅値のうちで最大値またはその近傍の値が読み出されたタイミングまでの時間に基づき、前記超音波発信手段と前記測定対象物との距離を算出する対象物距離算出手段と
を備えたことを特徴とする距離測定装置。
【請求項2】
前記最大値は、読み出された値の変化が所定期間にわたって所定値以内である場合を指すことを特徴とする請求項1に記載の距離測定装置。
【請求項3】
物体間の距離を、超音波を用いて検出する距離測定装置であって、
測定対象物に対して所定周期の超音波を発信する超音波発信手段と、
発信された超音波が測定対象物により反射された反射波を受信する反射波受信手段と、
反射波受信手段により受信された反射波の振幅値の最大値を順次記憶するホールド手段と、
前記所定周期よりも短い周期で前記ホールド手段に記憶されている振幅値を読み出し、読み出された値の変化が所定期間にわたって所定値以内である場合に、前記超音波発信手段より超音波が発信されたタイミングから、当該所定期間の最初に値が読み出されたタイミングまでの時間に基づき、前記超音波発信手段と前記測定対象物との距離を算出する対象物距離算出手段と
を備えたことを特徴とする距離測定装置。
【請求項4】
前記超音波発信手段及び前記反射波受信手段の組を複数有し、
前記ホールド手段は、いずれか一つの組の反射波受信手段によって受信された反射波の振幅値を記憶し、
前記対象物距離算出手段は、前記ホールド手段が対象としている組の超音波発信手段と前記測定対象物との距離を算出し、
前記対象物距離算出手段が距離を算出した後、前記ホールド手段は他の組の反射波受信手段によって受信された反射波の振幅値を記憶し、前記対象物距離算出手段は当該他の組の超音波発信手段と前記測定対象物との距離を算出することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の距離測定装置。
【請求項5】
前記所定期間は、前記超音波発信手段によって発信される超音波の周期よりも長い時間であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の距離測定装置。
【請求項6】
前記ホールド手段は、前記超音波発信手段が超音波を発信してから所定時間が経過した後に受信された超音波の振幅値を前記反射波の振幅値として記憶することを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の距離測定装置。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載の距離測定装置が車両に設けられ、
前記超音波発信手段及び前記反射波受信手段は前記車両の底部に設けられて、前記超音波発信手段は路面に対し超音波を発信し、前記反射波受信手段は前記路面によって反射された反射波を受信し、
前記対象物距離算出手段は、算出された距離を車高として出力することを特徴とする車高測定装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2010−145363(P2010−145363A)
【公開日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−326005(P2008−326005)
【出願日】平成20年12月22日(2008.12.22)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年12月22日(2008.12.22)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】
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