距離測定装置
【課題】車両と測定対象物との間の距離が変化する場合であっても、測定対象物までの距離を高精度に測定することが可能な距離測定装置を提供する。
【解決手段】投光部11より、水平方向に広がる発光領域を有すると共に、上端部、及び下端部が水平となる直線状の端部を有する時間変調した領域光を投光する。そして、測定対象物にて反射した領域光をカメラ12にて撮像し、撮像した画像から上端エッジ、及び下端エッジを抽出し、更に、上端エッジ、及び下端エッジに基づき、三角測量の原理により第1測定距離、及び第2測定距離を求める。そして、測定対象物が車両から遠ざかる場合には、第2測定距離を選択し、測定対象物が車両に近づく場合には第1測定距離を選択する。その結果、測定対象物との間の距離が変化する場合であっても、距離の測定精度を向上させることが可能となる。
【解決手段】投光部11より、水平方向に広がる発光領域を有すると共に、上端部、及び下端部が水平となる直線状の端部を有する時間変調した領域光を投光する。そして、測定対象物にて反射した領域光をカメラ12にて撮像し、撮像した画像から上端エッジ、及び下端エッジを抽出し、更に、上端エッジ、及び下端エッジに基づき、三角測量の原理により第1測定距離、及び第2測定距離を求める。そして、測定対象物が車両から遠ざかる場合には、第2測定距離を選択し、測定対象物が車両に近づく場合には第1測定距離を選択する。その結果、測定対象物との間の距離が変化する場合であっても、距離の測定精度を向上させることが可能となる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両等の移動体に設けられ、該移動体の周囲に存在する対象物までの距離を測定する距離測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両等の移動体の周辺に存在する対象物までの距離を測定する距離測定装置として、例えば、特開2008−157718号公報(特許文献1)に記載されたものが知られている。該特許文献1では、基線長を有する一対の発光素子、及び受光素子を有し、測定対象物までの距離、及び方向を三角測量方式により検出する。また、トロイダルレンズにより集光されたシートビームを複数回パルス発光させ、発光のタイミングに同期して受光素子から受光位置を抽出し、シートビームの照射方向と反射光の受光素子への入射方向、及び発光素子と受光素子の基線長に基づいて対象までの距離を測定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−157718号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述の特許文献1に記載された従来技術では、測定対象物と光学デバイスとの間の距離の変化しない場合の距離測定について示されており、車両等の移動体にこの光学デバイスを搭載する場合には、複数のパルス光が出射される間に、測定対象物と光学デバイスとの間の距離の変化が発生することがある。このため、測定対象物に投光したパルス光を高精度に抽出できず、正確な距離が測れないという問題が発生する。
【0005】
本発明は、このような従来の課題を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、移動体と測定対象物との間の距離が変化する場合であっても、測定対象物までの距離を高精度に測定することが可能な距離測定装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明に係る距離測定装置は、移動体の周囲に水平方向に広がる発光領域を有し、且つ、上端部、及び下端部が水平となる直線状の端部を有する時間変調したパルス光を投光する投光手段と、投光手段により投光され対象物にて反射したパルス光を撮像する撮像手段とを有する。また、撮像手段により撮像された画像からパルス光を抽出する検波手段と、投光手段による投光、撮像手段による撮像、及び検波手段による検波を制御する制御手段と、検波手段により検出されるパルス光のエッジを検出するエッジ検出手段、及びエッジ検出手段により検出されるエッジの画像位置に基づいて、対象物との間の距離を算出する距離算出手段を有する。
【0007】
そして、エッジ検出手段は、パルス光の上端エッジを検出する上端エッジ検出部、及び下端エッジを検出する下端エッジ検出部を含み、距離算出手段は、上端エッジ検出部で検出される上端エッジに基づいて、対象物までの距離を第1測定距離として算出する第1距離算出部、及び下端エッジ検出部で検出される下端エッジに基づいて、対象物までの距離を第2測定距離として算出する第2距離算出部を含む。
【0008】
更に、第1測定距離の時間変化及び前記第2測定距離の時間変化をそれぞれ算出し、その算出結果と前記第1測定距離と前記第2測定距離との大きさの比較結果に基づいて、第1測定距離、或いは第2測定距離のうち、いずれか一方を選択する距離選択手段を備える。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る距離測定装置は、第1測定距離及び第2測定距離のうちのいずれか一方を選択して測定距離とするので、移動体と測定対象物との間の距離が変化する場合であっても、測定対象物までの距離を高精度に測定することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の第1実施形態に係る距離測定装置の構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の第1実施形態に係る距離測定装置で用いられる同期検波処理部の詳細な構成を示すブロック図である。
【図3】本発明の第1実施形態に係る距離測定装置で用いられる同期検波処理部における各信号の変化を示すタイミングチャートである。
【図4】本発明の第1実施形態に係る距離測定装置により測定対象物までの距離を測定する様子を示す説明図である。
【図5】本発明の第1実施形態に係る距離測定装置のカメラで撮像された画像を示す説明図である。
【図6】本発明の第1実施形態に係る距離測定装置により、測定対象物までの距離を測定する原理を示す説明図である。
【図7】本発明の第1実施形態に係る距離測定装置により、車両に対して離隔している測定対象物を撮像した画像を示す説明図である。
【図8】本発明の第1実施形態に係る距離測定装置により、車両に対して接近している測定対象物を撮像した画像を示す説明図である。
【図9】本発明の第1実施形態に係る距離測定装置による距離測定処理の手順を示すフローチャートである。
【図10】本発明の第1実施形態に係る距離測定装置による同期検波処理の手順を示すフローチャートである。
【図11】本発明の実施形態に係る距離測定装置によるカメラの俯角が0°の場合の、距離分解能を示す説明図である。
【図12】本発明の実施形態に係る距離測定装置によるカメラの俯角がα°の場合の、距離分解能を示す説明図である。
【図13】本発明の第2実施形態に係る距離測定装置の構成を示すブロック図である。
【図14】本発明の第2実施形態に係る距離測定装置により測定対象物までの距離を測定する様子を示す説明図である。
【図15】本発明の第2実施形態に係る距離測定装置のカメラで撮像された画像を示す説明図である。
【図16】本発明の第2実施形態に係る距離測定装置で用いられる同期検波処理部における各信号の変化を示すタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0012】
[第1実施形態の説明]
図1は、本発明の第1実施形態に係る距離測定装置100の構成を示すブロック図である。図1に示すように、該距離測定装置100は、車両等の移動体に搭載されるものであり、車両周囲の距離測定の対象となる測定対象物に向けて領域光を照射する投光部(投光手段)11と、領域光が照射された測定対象物の映像を撮像するカメラ(撮像手段)12と、投光部11による領域光の照射を制御する投光制御部(制御手段)13と、カメラ12で撮像された画像信号に対して同期検波処理を加える同期検波処理部(検波手段)14と、同期検波された画像から測定対象物の上端エッジ(詳細は後述)を検出する上端エッジ検出部15と、同期検波された画像から測定対象物の下端エッジ(詳細は後述)を検出する下端エッジ検出部16と、上端エッジ検出部15で検出された上端エッジに基づいて車両から測定対象物までの距離を算出する第1距離算出部17aと、下端エッジ検出部16で検出された下端エッジに基づいて車両から測定対象物までの距離を算出する第2距離算出部17bと、第1距離算出部17a及び第2距離算出部17bのいずれか一方で算出された距離を選択する距離選択部18と、を備えている。
【0013】
投光部11は、例えば、プロジェクタヘッドライトやリフレクタを備えたヘッドライトであり、水平方向に広がる発光領域を形成する配光特性を有する領域光(パルス光)を照射する。この水平方向に形成された領域光は、時間変調されて測定対象物に照射され、該測定対象物上に照射領域と非照射領域の輝度境界(上側、下側の双方の輝度境界)を鮮明に映し出す配光を実現する。例えば、図5に示す符号Y1,Y2で示す輝度境界を有する配光特性を有する。また、該投光部11は、可視光、赤外光、及び紫外光のうちのいずれか、或いはその組み合わせの光を照射する。
【0014】
カメラ12は、例えば、CDDやCMOS等の撮像素子を備えており、車両周囲の各種画像を撮像すると共に、投光部11より照射された領域光の、測定対象物による反射光を受光する。また、該カメラ12は、投光部11より投光される可視光、赤外光、及び紫外光のうちのいずれか、或いはその組み合わせの光に検出の感度を有している。
【0015】
投光制御部13は、投光部11がパルス点灯する際の点灯、及び消灯時間の長さを制御(PWM変調制御)すると共に、カメラ12に撮像タイミングを示す信号を出力し、同期検波処理部14に投光部11より投光されたパルス光に同期して撮像された画像からパルス光を抽出するために必要な搬送波(sin(2πfct))を出力する。
【0016】
同期検波処理部14は、カメラ12より時系列的に取得される複数の画像を用い、画像中の全画素、或いは画像中に処理領域を制限した場合は、この処理領域中の全画素において、投光部11より照射される領域光の、光パルスに同期した光のみを抽出する。即ち、オン(点灯)、オフ(消灯)を繰り返す領域光の、オン時における光のみを抽出する。
【0017】
上端エッジ検出部15は、同期検波処理部14により抽出された領域光抽出画像に基づき、領域光の上端エッジを検出する。具体的には、図5に示すように測定対象物31に領域光が照射された場合に、該測定対象物31上の領域光の上側となる境界線となるエッジr1を上端エッジとして検出する。
【0018】
下端エッジ検出部16は、同期検波処理部14により抽出された領域光抽出画像に基づき、領域光の下端エッジを検出する。具体的には、図5に示すように測定対象物31に領域光が照射された場合に、該測定対象物31上の領域光の下側となる境界線となるエッジr2を下端エッジとして検出する。上端エッジ及び下端エッジの詳細については後述する。
【0019】
第1距離算出部17aは、上端エッジ検出部15にて検出された上端エッジの画像に基づき三角測量の原理を用いて、領域光の上端エッジの照射方向と、カメラ12の視軸がなす角度、及びレイアウトに基づいて、測定対象物31までの距離を第1測定距離として算出する。また、第2距離算出部17bは、下端エッジ検出部16にて検出された下端エッジの画像に基づき三角測量の原理を用いて、領域光の下端エッジの照射方向と、カメラ12の視軸がなす角度、及びレイアウトに基づいて、測定対象物までの距離を第2測定距離として算出する。詳細な算出手順については後述する。
【0020】
距離選択部18は、第1距離算出部17aで算出された第1測定距離と、第2距離算出部17bで算出された第2測定距離を取得し、それぞれの測定距離の時間変化(例えば、一定時間内に変化する距離の大きさ)に応じて、自車両に対して測定対象物31が接近する場合には第1測定距離を選択し、測定対象物が離隔する場合には第2測定距離を選択する。このような選択処理により、時間遅れの無い正確な距離を取得でき、選択した距離を後段側のシステム(図示省略)に出力する。
【0021】
次に、同期検波処理部14における同期検波の基本原理を、図2に示すブロック図、及び図3に示すタイミングチャートを参照して説明する。照射した領域光のみを頑健に検出する処理として、一般的に同期検波が用いられる。本実施形態では、カメラ12により撮像された画像の全画素、或いは処理領域として設定された画像領域中の全画素について、この同期検波処理を施し、各画素にて照射光の抽出を行う。ここでは、同期検波として、BPSK(Binary Phase Shift Keying:二位相偏移変調)を用いた場合の例を図2、図3を参照して説明する。
【0022】
図2に示すように、送信信号をバイナリ信号とし、S(t)(tは時間)で示す。このバイナリ信号S(t)は、例えば、図3(a)に示すように、一定の時間間隔で「1」、「0」で変化する。このバイナリ信号S(t)を送出する際に、バイナリ信号S(t)に対して十分高い周波数fcを有する搬送波sin(2πfct)をバイナリ信号S(t)で位相変調して、BPSK送信信号を生成する。その結果、図3(b)に示す如くの波形が生成され、投光される(図2の符号q1参照)。上記の搬送波としては一般的には正弦波が用いられ、送出されるBPSK変調信号は、次の(1)式で示される。
【0023】
sin(2πfct+(S(t)−1)×π)
=(2×S(t)−1)×sin(2πfct) …(1)
従って、送信信号S(t)は、図3(b)に示すように変化する。投光部11からは、このBPSK変調信号をDCオフセットさせた信号で強度変調したパルス光を送出している。
【0024】
送出されたパルス光は、測定対象物に照射されて反射し、カメラ12で受光される(符号q2参照)。カメラ12により撮像された画像の各画素に搬送波が重畳され(符号q3参照)、図3(c)に示す如くの時系列信号が得られる。その後、低域通過フィルタ(LPF)により時系列信号の高周波成分が除去され、高周波成分の除去後の時系列信号について正負の符号判定を行うことにより、図3(d)に示す如くの復調した送信信号S(t)を得る。
【0025】
受信側で、このBPSK変調信号を受信し、この受信信号からS(t)を復調する処理を同期検波と称し、処理の内容を数式で記述すると、以下に示す通りとなる。
【0026】
まず、次の(2)式に示すように、受信信号に搬送波であるsin(2πfct)を乗算する。
【0027】
sin(2πfct+(S(t)−1)π)×sin(2πfct) …(2)
次いで、三角関数の積和公式より、(2)式を次の(3)式とする(図3(c)参照)。
【0028】
−(cos(4πfct+(S(t)−1)π)−cos((S(t)−1)π))/2 …(3)
そして、低域通過フィルタ(LPF)を用いて、(3)式の第1項の周波数2fcの高周波成分を除去すると、第2項が残るので、受信信号は次の(4)式に示すように復調されることとなる。
【0029】
cos((S(t)−1)π)/2 …(4)
この復調信号の符合は、送信信号であるS(t)の「1」、「0」に同期しており、正負判定をすることにより、送信信号S(t)が復調できることがわかる(図3(d)参照)。
【0030】
なお、上記では搬送波sin(2πfct)をバイナリ信号S(t)で位相変調する例について説明したが、振幅変調、周波数変調等の他の変調方式を用いることも可能である。
【0031】
次に、投光部11より投光される領域光の投光パターンについて、図4,図5を参照して説明する。上述したように、車両Qに搭載される投光部11は、投光領域の上端部、及び下端部に明暗が鮮明な水平パターンを有し、且つオン、オフが切り替えられる領域光を投光する。以下、この領域光の配光パターンについて説明する。図4は、車両Qに搭載される投光部11より、測定対象物31に向けて領域光を照射する様子を示す説明図であり、図5は、領域光を測定対象物31に照射した際の、カメラ12により撮像された画像を示す説明図である。
【0032】
三角測量の原理を用いて距離の測定を行う際に、測定検出の頑健性を確保するために同期検波を用いた場合に、周知の技術であるスリット状の光を照射する手法では、測定対象物31との間の相対距離が変化すると、画像中における照射光位置にずれが生じてしまうので、同期検波による照射光の抽出ができないという問題がある。
【0033】
本実施形態では、スリット状の照射光の代用として、明暗が鮮明なパターン光を水平方向に有する領域光を用いることにより、車両Qと測定対象物31との間の相対的な距離が変化した場合においても、同期検波による領域光の抽出を継続することが可能となる。この際、同期検波処理した領域光の上端エッジのみを用いて距離を測定すると、車両Qと測定対象物31との間の距離が大きくなる(測定対象物31が相対的に遠ざかる)状況下において、検波開始時における同期検波領域の上端エッジに対して、最新の領域光の上端エッジが変化してしまう。このため、検波開始時の画像フレームで抽出される上端エッジを用いて距離を算出することとなり、算出される距離は同期検波処理時間分の遅延が生じてしまうという問題が生じる。具体的には、後述する図7に示すように、同図(a)の1フレーム目の画像で抽出される上端エッジと、同図(b)のnフレーム目の画像で抽出される上端エッジは異なるので、距離の測定精度が低下する場合が生じる。
【0034】
そこで、本実施形態では、上端エッジに加え、下端エッジを用いることにより、上記の問題を解決する。図4に示すように、投光部11より、上部及び下部に明暗が生成されるパターンを有する領域光が車両Qの周囲に向けて投光され、この領域光が測定対象物31に照射される。
【0035】
そして、カメラ12では、測定対象物31にて反射した領域光を受光することにより、図5に示す如くの上端エッジr1、及び下端エッジr2が写された画像が取得される。本実施形態では、上端エッジr1に基づく距離測定、及び下端エッジr2に基づく距離測定を行い、測定対象物31と車両Qとの間の距離変化に応じて、いずれか一方の距離測定により測定された距離を選択することにより、測定距離の時間遅延を防止することが可能となる。
【0036】
次に、領域光の上端エッジ、及び下端エッジを用いて、測定対象物31までの距離を算出する原理について、図6に示す模式図を参照して説明する。図6に示すように、投光部11より照射される領域光の広がり方向(横方向)とは垂直な方向(縦方向)にオフセットした位置に、カメラ12が配置される。投光部11から投光される領域光が測定対象物31に照射され、カメラ12では、測定対象物31の表面で反射した領域光を撮像する。
【0037】
ここで、投光部11より投光される領域光の上端部を水平(上下角0°)方向とし、下端部を下方角度θの方向とし、投光部11から上方に距離Dy、後方に距離Dzだけオフセットした位置にカメラ12を設置し、該カメラ12を下方角度αの方向に向けて測定対象物31を撮像する。測定対象物31に照射される上端エッジが見える方向の角度βと、下端エッジが見える角度γが測定値となり、測定対象物31までの距離Zは、下記(5)、(6)式によりそれぞれ独立して算出することができる。
【0038】
Z=Dy/tan(α+β) …(5)
Z=(Dy+Dz・tanθ)/(tan(α+γ)−tanθ) …(6)
つまり、図5に示した上端エッジr1を用いる場合には、(5)式により距離Z(第1測定距離)を算出することができ、上端エッジr2を用いる場合には、(6)式により距離Z(第2測定距離)を算出することができる。
【0039】
なお、領域光の上下角度θは、同期検波処理に要する時間と検出距離の最小値、相対速度の最大値に基づいて必要な角度が計算でき、領域光の上下角度をその所定角度以上とすることで、同期検波領域を連続して測定することができるようになる。領域光の上下角度θは、例えば、処理時間0.25秒、最小検知距離2m、相対速度の最大計測値を時速30kmとした場合には、3°度以上が必要な角度となる。
【0040】
次に、車両Qと測定対象物31との間の相対距離が変化する場合でも、時間遅延が生じることなく両者間の距離を精度良く測定できる原理について、図7,図8を参照して説明する。
【0041】
図7は、車両Qと測定対象物31との距離が長くなる場合に、カメラ12で取得された画像を同期検波した画像を示す説明図であり、同図(a)は、同期検波開始時の1フレーム目の画像を示し、同図(b)は同期検波処理に必要なフレーム数(n)後の画像を示している。
【0042】
図7(a)から図7(b)までのn枚の画像で連続して領域光を抽出できる領域は、図7(b)に示す領域R1の内側となる。この領域R1の上端部は、図7(a)の1フレーム目の上端部と同じ高さとなり、同期検波領域の上端部から距離測定した場合、同期検波処理開始時の距離を計算していることとなる。即ち、nフレーム目の画像から抽出される上端エッジは、7(b)に示すr3(領域R1の外側上方)であるから、本来はこの上端エッジr3に基づいて距離を測定することが望まれるが、実際には、領域R1の上端部を上端エッジとして距離を測定するので、同期検波開始時における距離を計算していることになる。他方、下端部は、図7(b)のnフレーム目の領域光の下端部と一致しており、同期検波領域の下端部から算出される距離は最新画像での距離ということになる。
【0043】
従って、測定対象物31が車両Qから遠ざかる場合には、領域R1の下端エッジを用いて両者間の距離を測定することが、測定精度を向上させる上で有利である。
【0044】
また、図8は、車両Qと測定対象物31との距離が短くなる場合に、カメラ12で取得された画像を同期検波した画像を示す説明図であり、同図(a)は、同期検波開始時の1フレーム目の画像を示し、同図(b)は同期検波処理に必要なフレーム数(n)後の画像を示している。図8(a)から図8(b)までのn枚の画像で連続して領域光を抽出できる領域は、図8(b)のR2に示す領域内となる。この領域R2の下端部は、図8(a)の1フレーム目の下端部と同じ高さとなり、同期検波領域の下端部から距離測定した場合、同期検波処理開始時の距離を計算していることとなる。即ち、nフレーム目の画像から抽出される下端エッジは、8(b)に示すr4(領域R2の外側下方)であるから、本来はこの下端エッジr4に基づいて距離を測定することが望まれるが、実際には、領域R2の下端部を下エッジとして距離を測定するので、同期検波開始時における距離を計算していることになる。他方、上端部は、図8(b)のnフレーム目の領域光の上端部と一致しており、同期検波領域の上端部から算出される距離は最新画像での距離ということになる。
【0045】
従って、測定対象物31が車両Qに近づく場合には、領域R2の上端エッジを用いて両者間の距離を測定することが、測定精度を向上させる上で有利である。本実施形態では、測定対象物31と車両Qの間の距離が相対的に長くなる場合と短くなる場合で、上端エッジを用いた距離測定(第1測定距離)、及び下部エッジを用いた距離測定(第2測定距離)のうちのいずれか一方を選択することにより、高精度な距離測定を実現する。
【0046】
次に、第1実施形態に係る距離測定装置の動作を、図9に示すフローチャートを参照して説明する。初めに、ステップS1において、カメラ12により車両周囲に存在する測定対象物31の画像を取得する。
【0047】
ステップS2において、同期検波処理フローを実行する。その後、ステップS3に処理を進める。なお、同期検波処理フローについては、図10に示すフローチャートを参照して後述する。
【0048】
ステップS3において、上端エッジ検出部15は、同期検出された画像から上端エッジを抽出し、更に、下端エッジ検出部16は、同期検波された画像から下端エッジを抽出する。
【0049】
ステップS4において、第1距離算出部17aは上端エッジに基づき、三角測量の原理を用いて車両Qから測定対象物31までの距離(上述した(5)式で算出される距離Zであり、これを第1測定距離D1とする)を算出し、第2距離算出部17bは下端エッジに基づき、三角測量の原理を用いて車両Qから測定対象物31までの距離(上述した(6)式で算出される距離Zであり、これを第2測定距離D2とする)を算出する。
【0050】
ステップS5では、第2測定距離D2が第1測定距離D1より大きいか否かを判定し、大きければステップS6に処理を進め、そうでない場合にはステップS7に処理を進める。
【0051】
ステップS6では、第1測定距離D1と第2測定距離D2の前回計測値からの変化量を検出し、第1測定距離D1の変化量が0以上(正の値)で、第2測定距離D2の変化量より小さいか否かを判定する。即ち、「dD2/dt>dD1/dt≧0」であるか否かを判定し、第1測定距離D1の変化量が正の値で、且つ第2測定距離D2の変化量より小さい場合には(ステップS6でYES)、ステップS8に処理を進める。他方、第1測定距離D1の変化量が0以下(負の値)で、且つ第2測定距離D2の変化量より小さい場合には(ステップS6でNO)、ステップS7に処理を進める。
【0052】
ステップS7では、第1測定距離D1を選択する。即ち、ステップS5でNOと判定された場合(D1≧D2)には、上端エッジより求められる第1測定距離D1の方がより正確な距離である可能性が高いので、演算負荷を低減するためにステップS6の処理を行わず、第1測定距離D1(上端エッジに基づく測定距離)を選択する。更に、ステップS6でNOと判定された場合、即ち、第1測定距離D1の時間変化が負の値で(即ち、距離が小さくなる傾向にあり)、且つ、第2測定距離D2の時間変化よりも小さい場合には、測定対象物31は、車両Qに接近しているものと判断して、第1測定距離D1を選択する。
【0053】
他方、ステップS8では、第2測定距離D2を選択する。即ち、第1測定距離D1の時間変化が正の値で(即ち、距離が大きくなる傾向にあり)、且つ、第2測定距離D2の時間変化よりも小さい場合には、測定対象物31は車両Qから離隔するものと判断し、第2測定距離D2(下端エッジに基づく測定距離)を選択する。そして、選択した測定距離(第1測定距離D1または第2測定距離D2)を後段のシステムに出力する。そして、上記の処理が終了したならば、本処理を終了する。
【0054】
次に、図10に示すフローチャートを参照して、図9のステップS2の処理で実行される同期検波処理について説明する。
【0055】
初めに、ステップS11において同期検波処理を開始し、ステップS12において、取得された画像(カメラ12で撮像された画像)に対して、投光制御部13により規定される搬送波sin(2πfct)(図2参照)をミキシング(乗算)する。具体的には、画像中の処理領域に設定された全画素に対して、取得タイミングに応じた位相における正弦波を掛け合わせる。
【0056】
ステップS13において、搬送波sin(2πfct)をミキシングした画像を、同期検波処理部14が有するフレームメモリ(図示省略)に蓄積する。同期検波処理を実施する際に、連続するnフレームの画像が必要な場合には、nフレーム分のフレームメモリが確保され、例えば、リングバッファ構造により、最も古い画像データを最新の画像データにより更新する。
【0057】
ステップS14において、フレームメモリに蓄積された画像データより、所定アドレスの画素データの時系列データを読み出す。例えば、最新の時刻tに取得された画素位置(xi,yj)の画素データをI(xi,yj,t)とすると、同期検波に用いる最新n画素分のデータ、I(xi,yj,t),I(xi,yj,t−1),…,I(xi,yj,t−n+1)を読み出す。
【0058】
ステップS15において、ローパスフィルタ(図2のLPF参照)を適用する。
【0059】
ステップS16において、ローパスフィルタを適用した画素の時系列データに対し、送信信号の正負判定を行う。例えば、画素値が正の値であれば「1」、負の値であれば「0」を割り当て、送信した信号列(ビット列)を復元する。
【0060】
ステップS17において、処理領域中のすべての画素について、検波が終了したか否かを判定し、処理領域中のすべての画素について検波処理が終了していなければ(ステップS17でNO)、ステップS14に処理を戻し、次の画素位置(例えば、(xi+1、yj))の時系列画素データを読み出し、ステップS15以下の処理を繰り返す。
【0061】
そして、全ての画素について検波処理が終了していれば(ステップS17でYES)、ステップS18において、同期検波画像を出力して終了する。こうして、上端エッジ検出部15で検出される上端エッジに基づいて、車両Qと測定対象物31との間の距離を求めることができるのである。
【0062】
このようにして、第1実施形態に係る距離測定装置100では、投光部11より、水平方向に広がる発光領域を有する発光パターンを有する領域光を投光し、カメラ12にて、測定対象物31で反射する領域光を撮像する。更に、撮像した領域光を同期検波することにより、発光パターンがオンのときに撮像された測定対象物31の画像から上端エッジ、及び下端エッジを抽出する。そして、抽出した上端エッジに基づいて車両Qと測定対象物31との間の距離を第1測定距離D1として算出し、下端エッジに基づいて車両Qと測定対象物31との間の距離を第2測定距離D2として算出する。
【0063】
更に、第1測定距離D1及び第2測定距離D2の時間変化をそれぞれ算出し、この算出結果に基づいて第1測定距離D1、または第2測定距離D2のうちの一方を選択する。従って、車両Qと測定対象物31との間の距離が変化する場合であっても、これらの間の距離を高精度に測定することができる。
【0064】
また、第2測定距離D2が第1測定距離D1よりも大きい場合に、第1測定距離D1の時間変化(dD1/dt)、及び第2測定距離D2の時間変化(dD2/dt)に基づいて、第1測定距離D1または第2測定距離D2のうちの一方を選択するので、比較的簡単な手法でより精度の高い測定距離を選択することができる。
【0065】
更に、第1測定距離D1の時間変化(dD1/dt)が負の値で、且つ第2測定距離D2の時間変化(dD2/dt)よりも小さい場合には、車両Qと測定対象物31との距離は小さくなる傾向にあるので、第1測定距離D1を選択し、第1測定距離D1の時間変化(dD1/dt)が正の値で、且つ第2測定距離D2の時間変化(dD2/dt)よりも小さい場合には、車両Qと測定対象物31との距離は大きくなる傾向にあるので、第2測定距離D2を選択する。従って、車両Qと測定対象物31と間の距離の変化に応じた適切な測定距離(D1またはD2)を選択して測定対象物31までの距離を求めることが可能となる。
【0066】
また、投光部11による照射光と、カメラ12による撮像タイミングは、投光制御部(制御手段)13により制御され、該投光制御部13が生成する搬送波(sin(2πfct))により、同期検波処理部14による同期検波を行うことにより、照射光が抽出される。そして、この同期検波処理は、位相変調、振幅変調、及び周波数変調のうちの少なくとも一つが用いられるので、複数の装置で同時に距離測定が行われる場合の混信を回避でき、且つ、検出頑健性の向上を図ることができる。
【0067】
更に、投光部11の発光源は、赤外線、または紫外線を発するので、カメラ12に特定スペクトルの光を高効率で透過するフィルタを設けることにより、照射光をより一層頑健に検出することが可能となる。また、パルス光照射により他者の視認を妨げず、幻惑を防止することが可能となる。
【0068】
次に、カメラ12の視軸が上端エッジが照射される方向に対して所定の俯角を有するように設定することにより、分解能を向上させることができることについて説明する。
【0069】
1個のカメラ12で広域を観測するためには、通常、広角レンズが用いられる。一般的な広角レンズは、射影方式として等距離射影レンズ(いわゆる、fθレンズ)を採用しており、周辺視野では中心視野に比べて分解能が劣る。このような広角レンズとの組み合わせにおいては、カメラ視軸に俯角(或いは仰角)を持たせ、分解能が高い領域を監視したい領域に向けて適切に設定することが肝要となる。
【0070】
以下、fθレンズとの組み合せにおいて、簡単のために、照射光の上端エッジが路面に対して水平である場合を仮定し、カメラ視軸の俯角がある場合に、被観測対象までの距離計測値の分解能が向上することを、図11,図12を参照して説明する。カメラ視軸に俯角が無い場合を図11に示し、俯角が有る場合を図12に示す。
【0071】
図11,図12で、視軸方向の画素位置をy(j)とし、y(j)の下に隣接する画素位置をy(j+1)とする。このとき、図11に示すように、俯角(仰角)が0度の場合において、画素位置y(j)とy(j+1)で決定される1画素の角度分解能は、実空間距離での距離分解能dD(0)であるとする。一方、図12に示すように、俯角(仰角)がα度の場合において、画素位置y(j)とy(j+1)で決定される1画素の角度分解能は、実空間距離での距離分解能dD(α)であるとする。この場合、dD(α)<dD(0)が成立するので、カメラ視軸に俯角(仰角)を持たせた場合、1画素の角度分解能に対する実空間分解能が高くなる。即ち、俯角αを設けることにより、上端エッジを抽出する際の実空間分解能を高くすることが可能となる。
【0072】
このように、投光部11により投光される領域光の上端エッジは、カメラ12に対して横方向に領域が形成され、カメラ12は上端エッジ照射方向に対して鉛直な方向にオフセットして配置されると共に、上端エッジ照射方向と視軸が所定角度をなすようにすれば、一般的な広角レンズ(魚眼レンズ)を使用した際においても、三角測量の原理に基づき距離計測する際の計測精度が向上する。
【0073】
[第2実施形態の説明]
次に、第2実施形態について説明する。図13は、本発明の第2実施形態に係る距離測定装置の構成を示すブロック図である。図13に示すように、この距離測定装置101は、前述した第1実施形態と対比して、2つの投光部、即ち上段投光部(第1投光部)20と、下段投光部(第2投光部)21を備えている点、下段投光部21より投光する領域光の光パターンの位相をπ[rad]だけ変位させるπ位相器22を備える点で相違する。それ以外の構成は、前述した図1と同一であるので、同一符号を付して構成説明を省略する。
【0074】
第2実施形態に係る距離測定装置101では、上下方向の照射角度が相違する2個の投光部(上段投光部20,下段投光部21)を設置し、各投光部20,21は、上端部にのみ明暗のエッジを有する光源を用いている。そして、下段投光部21に供給する変調信号をπ位相器22を用いて、上段投光部20の変調信号に対して、逆位相とする。
【0075】
そして、図14に示すように、上段投光部20、及び下段投光部21より測定対象物31に向けて領域光を投光すると、カメラ12により図15に示す如くの画像が撮像される。図15に示すように、上段投光部20によりP1に示す領域にパルス光が投光され、下段投光部21によりP2に示す領域にパルス光が投光される。
【0076】
そして、領域P1とP2とが重複する部分(即ち、領域P2)は、変調信号が逆位相により相殺される領域となるので、同期検波処理部14で検出される同期検波検出領域とはならない。従って、測定対象物31の画像上には、上段投光部20より投光される領域光による上端エッジr11、及び、下段投光部21より投光される領域光による上端エッジr12が存在することになる。そして、各上端エッジr11,r12を、第1実施形態に示した上端エッジ、下端エッジ(図5に示すr1,r2)であるものとすれば、2つの上端エッジr11,r12を用いて、車両Qと測定対象物31との間の距離が変化した場合において、高精度な距離測定が可能となる。
【0077】
図16は、第2実施形態に係る距離測定装置101による変調信号、及び同期検波信号の変化を示すタイミングチャートである。図16(a)は、送信信号S(t)を示しており、「0」「1」のビット信号で示されている。(b)は、上段投光部20より投光される領域光の変調信号を示し、(c)は、下段投光部21より投光される領域光の変調信号を示している。図16(b),(c)より、上段投光部20より投光される領域光と下段投光部21より投光される領域光は逆位相(位相差π[rad])となっていることが理解される。
【0078】
図16(d)は、(b)に示した変調信号による上段投光部20の領域光の輝度変化を示しており、上段投光部20のみで投光される領域で検出される領域光の輝度変化となる。また、図16(e)は、上段投光部20より投光される領域光と下段投光部21より投光される領域光が混在した領域(図15の領域P2)での輝度変化を示している。この領域においては、ほぼ輝度変化が発生していないことが理解される。
【0079】
つまり、16(d)に示した輝度変化が検出される領域においては、図16(f)に示すように同期検波処理により送信信号を復調して、図16(g)に示す如くの「0」「1」信号を取得することができるが、(e)に示す領域では同期検波ができないことになる。
【0080】
このようにして、第2実施形態に係る距離測定装置101では、上端部に水平な輝度エッジを有する上段投光部20、及び下段投光部21を設け、各投光部20,21の上下俯瞰角度を所定角度だけ異ならせて領域光を照射し、上段投光部20より投光される領域光の時間変調と、下段投光部21より投光される領域光の時間変調とを互いに逆位相としている。そして、上段投光部20より投光された領域光より抽出される上端エッジと、下段投光部21より投光された領域光より抽出される上端エッジを用いることにより、上述した第1実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0081】
その結果、前述した第1実施形態と同様に、車両Qと測定対象物31との間の距離が変化する場合であっても、2つの上端エッジのうちのいずれか一方を選択して距離を求めることにより、両者間の距離を高精度に測定することができることとなる。
【0082】
なお、投光部より投光する光の波長としては、可視光、赤外光等を使用することが考えられ、その場合にはカメラ12は投光する波長を観測できるような素子を使用したものとすれば良い。
【0083】
以上、本発明の距離測定装置を図示の実施形態に基づいて説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、各部の構成は、同様の機能を有する任意の構成のものに置き換えることができる。
【産業上の利用可能性】
【0084】
本発明は、車両と測定対象物との間の距離を高精度に測定することに利用することができる。
【符号の説明】
【0085】
11 投光部
12 カメラ
13 投光制御部
14 同期検波処理部
15 上端エッジ検出部
16 下端エッジ検出部
17a 第1距離算出部
17b 第2距離算出部
18 距離選択部
20 上段投光部
21 下段投光部
22 π位相器
31 測定対象物
100,101 距離測定装置
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両等の移動体に設けられ、該移動体の周囲に存在する対象物までの距離を測定する距離測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両等の移動体の周辺に存在する対象物までの距離を測定する距離測定装置として、例えば、特開2008−157718号公報(特許文献1)に記載されたものが知られている。該特許文献1では、基線長を有する一対の発光素子、及び受光素子を有し、測定対象物までの距離、及び方向を三角測量方式により検出する。また、トロイダルレンズにより集光されたシートビームを複数回パルス発光させ、発光のタイミングに同期して受光素子から受光位置を抽出し、シートビームの照射方向と反射光の受光素子への入射方向、及び発光素子と受光素子の基線長に基づいて対象までの距離を測定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−157718号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述の特許文献1に記載された従来技術では、測定対象物と光学デバイスとの間の距離の変化しない場合の距離測定について示されており、車両等の移動体にこの光学デバイスを搭載する場合には、複数のパルス光が出射される間に、測定対象物と光学デバイスとの間の距離の変化が発生することがある。このため、測定対象物に投光したパルス光を高精度に抽出できず、正確な距離が測れないという問題が発生する。
【0005】
本発明は、このような従来の課題を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、移動体と測定対象物との間の距離が変化する場合であっても、測定対象物までの距離を高精度に測定することが可能な距離測定装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明に係る距離測定装置は、移動体の周囲に水平方向に広がる発光領域を有し、且つ、上端部、及び下端部が水平となる直線状の端部を有する時間変調したパルス光を投光する投光手段と、投光手段により投光され対象物にて反射したパルス光を撮像する撮像手段とを有する。また、撮像手段により撮像された画像からパルス光を抽出する検波手段と、投光手段による投光、撮像手段による撮像、及び検波手段による検波を制御する制御手段と、検波手段により検出されるパルス光のエッジを検出するエッジ検出手段、及びエッジ検出手段により検出されるエッジの画像位置に基づいて、対象物との間の距離を算出する距離算出手段を有する。
【0007】
そして、エッジ検出手段は、パルス光の上端エッジを検出する上端エッジ検出部、及び下端エッジを検出する下端エッジ検出部を含み、距離算出手段は、上端エッジ検出部で検出される上端エッジに基づいて、対象物までの距離を第1測定距離として算出する第1距離算出部、及び下端エッジ検出部で検出される下端エッジに基づいて、対象物までの距離を第2測定距離として算出する第2距離算出部を含む。
【0008】
更に、第1測定距離の時間変化及び前記第2測定距離の時間変化をそれぞれ算出し、その算出結果と前記第1測定距離と前記第2測定距離との大きさの比較結果に基づいて、第1測定距離、或いは第2測定距離のうち、いずれか一方を選択する距離選択手段を備える。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る距離測定装置は、第1測定距離及び第2測定距離のうちのいずれか一方を選択して測定距離とするので、移動体と測定対象物との間の距離が変化する場合であっても、測定対象物までの距離を高精度に測定することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の第1実施形態に係る距離測定装置の構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の第1実施形態に係る距離測定装置で用いられる同期検波処理部の詳細な構成を示すブロック図である。
【図3】本発明の第1実施形態に係る距離測定装置で用いられる同期検波処理部における各信号の変化を示すタイミングチャートである。
【図4】本発明の第1実施形態に係る距離測定装置により測定対象物までの距離を測定する様子を示す説明図である。
【図5】本発明の第1実施形態に係る距離測定装置のカメラで撮像された画像を示す説明図である。
【図6】本発明の第1実施形態に係る距離測定装置により、測定対象物までの距離を測定する原理を示す説明図である。
【図7】本発明の第1実施形態に係る距離測定装置により、車両に対して離隔している測定対象物を撮像した画像を示す説明図である。
【図8】本発明の第1実施形態に係る距離測定装置により、車両に対して接近している測定対象物を撮像した画像を示す説明図である。
【図9】本発明の第1実施形態に係る距離測定装置による距離測定処理の手順を示すフローチャートである。
【図10】本発明の第1実施形態に係る距離測定装置による同期検波処理の手順を示すフローチャートである。
【図11】本発明の実施形態に係る距離測定装置によるカメラの俯角が0°の場合の、距離分解能を示す説明図である。
【図12】本発明の実施形態に係る距離測定装置によるカメラの俯角がα°の場合の、距離分解能を示す説明図である。
【図13】本発明の第2実施形態に係る距離測定装置の構成を示すブロック図である。
【図14】本発明の第2実施形態に係る距離測定装置により測定対象物までの距離を測定する様子を示す説明図である。
【図15】本発明の第2実施形態に係る距離測定装置のカメラで撮像された画像を示す説明図である。
【図16】本発明の第2実施形態に係る距離測定装置で用いられる同期検波処理部における各信号の変化を示すタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0012】
[第1実施形態の説明]
図1は、本発明の第1実施形態に係る距離測定装置100の構成を示すブロック図である。図1に示すように、該距離測定装置100は、車両等の移動体に搭載されるものであり、車両周囲の距離測定の対象となる測定対象物に向けて領域光を照射する投光部(投光手段)11と、領域光が照射された測定対象物の映像を撮像するカメラ(撮像手段)12と、投光部11による領域光の照射を制御する投光制御部(制御手段)13と、カメラ12で撮像された画像信号に対して同期検波処理を加える同期検波処理部(検波手段)14と、同期検波された画像から測定対象物の上端エッジ(詳細は後述)を検出する上端エッジ検出部15と、同期検波された画像から測定対象物の下端エッジ(詳細は後述)を検出する下端エッジ検出部16と、上端エッジ検出部15で検出された上端エッジに基づいて車両から測定対象物までの距離を算出する第1距離算出部17aと、下端エッジ検出部16で検出された下端エッジに基づいて車両から測定対象物までの距離を算出する第2距離算出部17bと、第1距離算出部17a及び第2距離算出部17bのいずれか一方で算出された距離を選択する距離選択部18と、を備えている。
【0013】
投光部11は、例えば、プロジェクタヘッドライトやリフレクタを備えたヘッドライトであり、水平方向に広がる発光領域を形成する配光特性を有する領域光(パルス光)を照射する。この水平方向に形成された領域光は、時間変調されて測定対象物に照射され、該測定対象物上に照射領域と非照射領域の輝度境界(上側、下側の双方の輝度境界)を鮮明に映し出す配光を実現する。例えば、図5に示す符号Y1,Y2で示す輝度境界を有する配光特性を有する。また、該投光部11は、可視光、赤外光、及び紫外光のうちのいずれか、或いはその組み合わせの光を照射する。
【0014】
カメラ12は、例えば、CDDやCMOS等の撮像素子を備えており、車両周囲の各種画像を撮像すると共に、投光部11より照射された領域光の、測定対象物による反射光を受光する。また、該カメラ12は、投光部11より投光される可視光、赤外光、及び紫外光のうちのいずれか、或いはその組み合わせの光に検出の感度を有している。
【0015】
投光制御部13は、投光部11がパルス点灯する際の点灯、及び消灯時間の長さを制御(PWM変調制御)すると共に、カメラ12に撮像タイミングを示す信号を出力し、同期検波処理部14に投光部11より投光されたパルス光に同期して撮像された画像からパルス光を抽出するために必要な搬送波(sin(2πfct))を出力する。
【0016】
同期検波処理部14は、カメラ12より時系列的に取得される複数の画像を用い、画像中の全画素、或いは画像中に処理領域を制限した場合は、この処理領域中の全画素において、投光部11より照射される領域光の、光パルスに同期した光のみを抽出する。即ち、オン(点灯)、オフ(消灯)を繰り返す領域光の、オン時における光のみを抽出する。
【0017】
上端エッジ検出部15は、同期検波処理部14により抽出された領域光抽出画像に基づき、領域光の上端エッジを検出する。具体的には、図5に示すように測定対象物31に領域光が照射された場合に、該測定対象物31上の領域光の上側となる境界線となるエッジr1を上端エッジとして検出する。
【0018】
下端エッジ検出部16は、同期検波処理部14により抽出された領域光抽出画像に基づき、領域光の下端エッジを検出する。具体的には、図5に示すように測定対象物31に領域光が照射された場合に、該測定対象物31上の領域光の下側となる境界線となるエッジr2を下端エッジとして検出する。上端エッジ及び下端エッジの詳細については後述する。
【0019】
第1距離算出部17aは、上端エッジ検出部15にて検出された上端エッジの画像に基づき三角測量の原理を用いて、領域光の上端エッジの照射方向と、カメラ12の視軸がなす角度、及びレイアウトに基づいて、測定対象物31までの距離を第1測定距離として算出する。また、第2距離算出部17bは、下端エッジ検出部16にて検出された下端エッジの画像に基づき三角測量の原理を用いて、領域光の下端エッジの照射方向と、カメラ12の視軸がなす角度、及びレイアウトに基づいて、測定対象物までの距離を第2測定距離として算出する。詳細な算出手順については後述する。
【0020】
距離選択部18は、第1距離算出部17aで算出された第1測定距離と、第2距離算出部17bで算出された第2測定距離を取得し、それぞれの測定距離の時間変化(例えば、一定時間内に変化する距離の大きさ)に応じて、自車両に対して測定対象物31が接近する場合には第1測定距離を選択し、測定対象物が離隔する場合には第2測定距離を選択する。このような選択処理により、時間遅れの無い正確な距離を取得でき、選択した距離を後段側のシステム(図示省略)に出力する。
【0021】
次に、同期検波処理部14における同期検波の基本原理を、図2に示すブロック図、及び図3に示すタイミングチャートを参照して説明する。照射した領域光のみを頑健に検出する処理として、一般的に同期検波が用いられる。本実施形態では、カメラ12により撮像された画像の全画素、或いは処理領域として設定された画像領域中の全画素について、この同期検波処理を施し、各画素にて照射光の抽出を行う。ここでは、同期検波として、BPSK(Binary Phase Shift Keying:二位相偏移変調)を用いた場合の例を図2、図3を参照して説明する。
【0022】
図2に示すように、送信信号をバイナリ信号とし、S(t)(tは時間)で示す。このバイナリ信号S(t)は、例えば、図3(a)に示すように、一定の時間間隔で「1」、「0」で変化する。このバイナリ信号S(t)を送出する際に、バイナリ信号S(t)に対して十分高い周波数fcを有する搬送波sin(2πfct)をバイナリ信号S(t)で位相変調して、BPSK送信信号を生成する。その結果、図3(b)に示す如くの波形が生成され、投光される(図2の符号q1参照)。上記の搬送波としては一般的には正弦波が用いられ、送出されるBPSK変調信号は、次の(1)式で示される。
【0023】
sin(2πfct+(S(t)−1)×π)
=(2×S(t)−1)×sin(2πfct) …(1)
従って、送信信号S(t)は、図3(b)に示すように変化する。投光部11からは、このBPSK変調信号をDCオフセットさせた信号で強度変調したパルス光を送出している。
【0024】
送出されたパルス光は、測定対象物に照射されて反射し、カメラ12で受光される(符号q2参照)。カメラ12により撮像された画像の各画素に搬送波が重畳され(符号q3参照)、図3(c)に示す如くの時系列信号が得られる。その後、低域通過フィルタ(LPF)により時系列信号の高周波成分が除去され、高周波成分の除去後の時系列信号について正負の符号判定を行うことにより、図3(d)に示す如くの復調した送信信号S(t)を得る。
【0025】
受信側で、このBPSK変調信号を受信し、この受信信号からS(t)を復調する処理を同期検波と称し、処理の内容を数式で記述すると、以下に示す通りとなる。
【0026】
まず、次の(2)式に示すように、受信信号に搬送波であるsin(2πfct)を乗算する。
【0027】
sin(2πfct+(S(t)−1)π)×sin(2πfct) …(2)
次いで、三角関数の積和公式より、(2)式を次の(3)式とする(図3(c)参照)。
【0028】
−(cos(4πfct+(S(t)−1)π)−cos((S(t)−1)π))/2 …(3)
そして、低域通過フィルタ(LPF)を用いて、(3)式の第1項の周波数2fcの高周波成分を除去すると、第2項が残るので、受信信号は次の(4)式に示すように復調されることとなる。
【0029】
cos((S(t)−1)π)/2 …(4)
この復調信号の符合は、送信信号であるS(t)の「1」、「0」に同期しており、正負判定をすることにより、送信信号S(t)が復調できることがわかる(図3(d)参照)。
【0030】
なお、上記では搬送波sin(2πfct)をバイナリ信号S(t)で位相変調する例について説明したが、振幅変調、周波数変調等の他の変調方式を用いることも可能である。
【0031】
次に、投光部11より投光される領域光の投光パターンについて、図4,図5を参照して説明する。上述したように、車両Qに搭載される投光部11は、投光領域の上端部、及び下端部に明暗が鮮明な水平パターンを有し、且つオン、オフが切り替えられる領域光を投光する。以下、この領域光の配光パターンについて説明する。図4は、車両Qに搭載される投光部11より、測定対象物31に向けて領域光を照射する様子を示す説明図であり、図5は、領域光を測定対象物31に照射した際の、カメラ12により撮像された画像を示す説明図である。
【0032】
三角測量の原理を用いて距離の測定を行う際に、測定検出の頑健性を確保するために同期検波を用いた場合に、周知の技術であるスリット状の光を照射する手法では、測定対象物31との間の相対距離が変化すると、画像中における照射光位置にずれが生じてしまうので、同期検波による照射光の抽出ができないという問題がある。
【0033】
本実施形態では、スリット状の照射光の代用として、明暗が鮮明なパターン光を水平方向に有する領域光を用いることにより、車両Qと測定対象物31との間の相対的な距離が変化した場合においても、同期検波による領域光の抽出を継続することが可能となる。この際、同期検波処理した領域光の上端エッジのみを用いて距離を測定すると、車両Qと測定対象物31との間の距離が大きくなる(測定対象物31が相対的に遠ざかる)状況下において、検波開始時における同期検波領域の上端エッジに対して、最新の領域光の上端エッジが変化してしまう。このため、検波開始時の画像フレームで抽出される上端エッジを用いて距離を算出することとなり、算出される距離は同期検波処理時間分の遅延が生じてしまうという問題が生じる。具体的には、後述する図7に示すように、同図(a)の1フレーム目の画像で抽出される上端エッジと、同図(b)のnフレーム目の画像で抽出される上端エッジは異なるので、距離の測定精度が低下する場合が生じる。
【0034】
そこで、本実施形態では、上端エッジに加え、下端エッジを用いることにより、上記の問題を解決する。図4に示すように、投光部11より、上部及び下部に明暗が生成されるパターンを有する領域光が車両Qの周囲に向けて投光され、この領域光が測定対象物31に照射される。
【0035】
そして、カメラ12では、測定対象物31にて反射した領域光を受光することにより、図5に示す如くの上端エッジr1、及び下端エッジr2が写された画像が取得される。本実施形態では、上端エッジr1に基づく距離測定、及び下端エッジr2に基づく距離測定を行い、測定対象物31と車両Qとの間の距離変化に応じて、いずれか一方の距離測定により測定された距離を選択することにより、測定距離の時間遅延を防止することが可能となる。
【0036】
次に、領域光の上端エッジ、及び下端エッジを用いて、測定対象物31までの距離を算出する原理について、図6に示す模式図を参照して説明する。図6に示すように、投光部11より照射される領域光の広がり方向(横方向)とは垂直な方向(縦方向)にオフセットした位置に、カメラ12が配置される。投光部11から投光される領域光が測定対象物31に照射され、カメラ12では、測定対象物31の表面で反射した領域光を撮像する。
【0037】
ここで、投光部11より投光される領域光の上端部を水平(上下角0°)方向とし、下端部を下方角度θの方向とし、投光部11から上方に距離Dy、後方に距離Dzだけオフセットした位置にカメラ12を設置し、該カメラ12を下方角度αの方向に向けて測定対象物31を撮像する。測定対象物31に照射される上端エッジが見える方向の角度βと、下端エッジが見える角度γが測定値となり、測定対象物31までの距離Zは、下記(5)、(6)式によりそれぞれ独立して算出することができる。
【0038】
Z=Dy/tan(α+β) …(5)
Z=(Dy+Dz・tanθ)/(tan(α+γ)−tanθ) …(6)
つまり、図5に示した上端エッジr1を用いる場合には、(5)式により距離Z(第1測定距離)を算出することができ、上端エッジr2を用いる場合には、(6)式により距離Z(第2測定距離)を算出することができる。
【0039】
なお、領域光の上下角度θは、同期検波処理に要する時間と検出距離の最小値、相対速度の最大値に基づいて必要な角度が計算でき、領域光の上下角度をその所定角度以上とすることで、同期検波領域を連続して測定することができるようになる。領域光の上下角度θは、例えば、処理時間0.25秒、最小検知距離2m、相対速度の最大計測値を時速30kmとした場合には、3°度以上が必要な角度となる。
【0040】
次に、車両Qと測定対象物31との間の相対距離が変化する場合でも、時間遅延が生じることなく両者間の距離を精度良く測定できる原理について、図7,図8を参照して説明する。
【0041】
図7は、車両Qと測定対象物31との距離が長くなる場合に、カメラ12で取得された画像を同期検波した画像を示す説明図であり、同図(a)は、同期検波開始時の1フレーム目の画像を示し、同図(b)は同期検波処理に必要なフレーム数(n)後の画像を示している。
【0042】
図7(a)から図7(b)までのn枚の画像で連続して領域光を抽出できる領域は、図7(b)に示す領域R1の内側となる。この領域R1の上端部は、図7(a)の1フレーム目の上端部と同じ高さとなり、同期検波領域の上端部から距離測定した場合、同期検波処理開始時の距離を計算していることとなる。即ち、nフレーム目の画像から抽出される上端エッジは、7(b)に示すr3(領域R1の外側上方)であるから、本来はこの上端エッジr3に基づいて距離を測定することが望まれるが、実際には、領域R1の上端部を上端エッジとして距離を測定するので、同期検波開始時における距離を計算していることになる。他方、下端部は、図7(b)のnフレーム目の領域光の下端部と一致しており、同期検波領域の下端部から算出される距離は最新画像での距離ということになる。
【0043】
従って、測定対象物31が車両Qから遠ざかる場合には、領域R1の下端エッジを用いて両者間の距離を測定することが、測定精度を向上させる上で有利である。
【0044】
また、図8は、車両Qと測定対象物31との距離が短くなる場合に、カメラ12で取得された画像を同期検波した画像を示す説明図であり、同図(a)は、同期検波開始時の1フレーム目の画像を示し、同図(b)は同期検波処理に必要なフレーム数(n)後の画像を示している。図8(a)から図8(b)までのn枚の画像で連続して領域光を抽出できる領域は、図8(b)のR2に示す領域内となる。この領域R2の下端部は、図8(a)の1フレーム目の下端部と同じ高さとなり、同期検波領域の下端部から距離測定した場合、同期検波処理開始時の距離を計算していることとなる。即ち、nフレーム目の画像から抽出される下端エッジは、8(b)に示すr4(領域R2の外側下方)であるから、本来はこの下端エッジr4に基づいて距離を測定することが望まれるが、実際には、領域R2の下端部を下エッジとして距離を測定するので、同期検波開始時における距離を計算していることになる。他方、上端部は、図8(b)のnフレーム目の領域光の上端部と一致しており、同期検波領域の上端部から算出される距離は最新画像での距離ということになる。
【0045】
従って、測定対象物31が車両Qに近づく場合には、領域R2の上端エッジを用いて両者間の距離を測定することが、測定精度を向上させる上で有利である。本実施形態では、測定対象物31と車両Qの間の距離が相対的に長くなる場合と短くなる場合で、上端エッジを用いた距離測定(第1測定距離)、及び下部エッジを用いた距離測定(第2測定距離)のうちのいずれか一方を選択することにより、高精度な距離測定を実現する。
【0046】
次に、第1実施形態に係る距離測定装置の動作を、図9に示すフローチャートを参照して説明する。初めに、ステップS1において、カメラ12により車両周囲に存在する測定対象物31の画像を取得する。
【0047】
ステップS2において、同期検波処理フローを実行する。その後、ステップS3に処理を進める。なお、同期検波処理フローについては、図10に示すフローチャートを参照して後述する。
【0048】
ステップS3において、上端エッジ検出部15は、同期検出された画像から上端エッジを抽出し、更に、下端エッジ検出部16は、同期検波された画像から下端エッジを抽出する。
【0049】
ステップS4において、第1距離算出部17aは上端エッジに基づき、三角測量の原理を用いて車両Qから測定対象物31までの距離(上述した(5)式で算出される距離Zであり、これを第1測定距離D1とする)を算出し、第2距離算出部17bは下端エッジに基づき、三角測量の原理を用いて車両Qから測定対象物31までの距離(上述した(6)式で算出される距離Zであり、これを第2測定距離D2とする)を算出する。
【0050】
ステップS5では、第2測定距離D2が第1測定距離D1より大きいか否かを判定し、大きければステップS6に処理を進め、そうでない場合にはステップS7に処理を進める。
【0051】
ステップS6では、第1測定距離D1と第2測定距離D2の前回計測値からの変化量を検出し、第1測定距離D1の変化量が0以上(正の値)で、第2測定距離D2の変化量より小さいか否かを判定する。即ち、「dD2/dt>dD1/dt≧0」であるか否かを判定し、第1測定距離D1の変化量が正の値で、且つ第2測定距離D2の変化量より小さい場合には(ステップS6でYES)、ステップS8に処理を進める。他方、第1測定距離D1の変化量が0以下(負の値)で、且つ第2測定距離D2の変化量より小さい場合には(ステップS6でNO)、ステップS7に処理を進める。
【0052】
ステップS7では、第1測定距離D1を選択する。即ち、ステップS5でNOと判定された場合(D1≧D2)には、上端エッジより求められる第1測定距離D1の方がより正確な距離である可能性が高いので、演算負荷を低減するためにステップS6の処理を行わず、第1測定距離D1(上端エッジに基づく測定距離)を選択する。更に、ステップS6でNOと判定された場合、即ち、第1測定距離D1の時間変化が負の値で(即ち、距離が小さくなる傾向にあり)、且つ、第2測定距離D2の時間変化よりも小さい場合には、測定対象物31は、車両Qに接近しているものと判断して、第1測定距離D1を選択する。
【0053】
他方、ステップS8では、第2測定距離D2を選択する。即ち、第1測定距離D1の時間変化が正の値で(即ち、距離が大きくなる傾向にあり)、且つ、第2測定距離D2の時間変化よりも小さい場合には、測定対象物31は車両Qから離隔するものと判断し、第2測定距離D2(下端エッジに基づく測定距離)を選択する。そして、選択した測定距離(第1測定距離D1または第2測定距離D2)を後段のシステムに出力する。そして、上記の処理が終了したならば、本処理を終了する。
【0054】
次に、図10に示すフローチャートを参照して、図9のステップS2の処理で実行される同期検波処理について説明する。
【0055】
初めに、ステップS11において同期検波処理を開始し、ステップS12において、取得された画像(カメラ12で撮像された画像)に対して、投光制御部13により規定される搬送波sin(2πfct)(図2参照)をミキシング(乗算)する。具体的には、画像中の処理領域に設定された全画素に対して、取得タイミングに応じた位相における正弦波を掛け合わせる。
【0056】
ステップS13において、搬送波sin(2πfct)をミキシングした画像を、同期検波処理部14が有するフレームメモリ(図示省略)に蓄積する。同期検波処理を実施する際に、連続するnフレームの画像が必要な場合には、nフレーム分のフレームメモリが確保され、例えば、リングバッファ構造により、最も古い画像データを最新の画像データにより更新する。
【0057】
ステップS14において、フレームメモリに蓄積された画像データより、所定アドレスの画素データの時系列データを読み出す。例えば、最新の時刻tに取得された画素位置(xi,yj)の画素データをI(xi,yj,t)とすると、同期検波に用いる最新n画素分のデータ、I(xi,yj,t),I(xi,yj,t−1),…,I(xi,yj,t−n+1)を読み出す。
【0058】
ステップS15において、ローパスフィルタ(図2のLPF参照)を適用する。
【0059】
ステップS16において、ローパスフィルタを適用した画素の時系列データに対し、送信信号の正負判定を行う。例えば、画素値が正の値であれば「1」、負の値であれば「0」を割り当て、送信した信号列(ビット列)を復元する。
【0060】
ステップS17において、処理領域中のすべての画素について、検波が終了したか否かを判定し、処理領域中のすべての画素について検波処理が終了していなければ(ステップS17でNO)、ステップS14に処理を戻し、次の画素位置(例えば、(xi+1、yj))の時系列画素データを読み出し、ステップS15以下の処理を繰り返す。
【0061】
そして、全ての画素について検波処理が終了していれば(ステップS17でYES)、ステップS18において、同期検波画像を出力して終了する。こうして、上端エッジ検出部15で検出される上端エッジに基づいて、車両Qと測定対象物31との間の距離を求めることができるのである。
【0062】
このようにして、第1実施形態に係る距離測定装置100では、投光部11より、水平方向に広がる発光領域を有する発光パターンを有する領域光を投光し、カメラ12にて、測定対象物31で反射する領域光を撮像する。更に、撮像した領域光を同期検波することにより、発光パターンがオンのときに撮像された測定対象物31の画像から上端エッジ、及び下端エッジを抽出する。そして、抽出した上端エッジに基づいて車両Qと測定対象物31との間の距離を第1測定距離D1として算出し、下端エッジに基づいて車両Qと測定対象物31との間の距離を第2測定距離D2として算出する。
【0063】
更に、第1測定距離D1及び第2測定距離D2の時間変化をそれぞれ算出し、この算出結果に基づいて第1測定距離D1、または第2測定距離D2のうちの一方を選択する。従って、車両Qと測定対象物31との間の距離が変化する場合であっても、これらの間の距離を高精度に測定することができる。
【0064】
また、第2測定距離D2が第1測定距離D1よりも大きい場合に、第1測定距離D1の時間変化(dD1/dt)、及び第2測定距離D2の時間変化(dD2/dt)に基づいて、第1測定距離D1または第2測定距離D2のうちの一方を選択するので、比較的簡単な手法でより精度の高い測定距離を選択することができる。
【0065】
更に、第1測定距離D1の時間変化(dD1/dt)が負の値で、且つ第2測定距離D2の時間変化(dD2/dt)よりも小さい場合には、車両Qと測定対象物31との距離は小さくなる傾向にあるので、第1測定距離D1を選択し、第1測定距離D1の時間変化(dD1/dt)が正の値で、且つ第2測定距離D2の時間変化(dD2/dt)よりも小さい場合には、車両Qと測定対象物31との距離は大きくなる傾向にあるので、第2測定距離D2を選択する。従って、車両Qと測定対象物31と間の距離の変化に応じた適切な測定距離(D1またはD2)を選択して測定対象物31までの距離を求めることが可能となる。
【0066】
また、投光部11による照射光と、カメラ12による撮像タイミングは、投光制御部(制御手段)13により制御され、該投光制御部13が生成する搬送波(sin(2πfct))により、同期検波処理部14による同期検波を行うことにより、照射光が抽出される。そして、この同期検波処理は、位相変調、振幅変調、及び周波数変調のうちの少なくとも一つが用いられるので、複数の装置で同時に距離測定が行われる場合の混信を回避でき、且つ、検出頑健性の向上を図ることができる。
【0067】
更に、投光部11の発光源は、赤外線、または紫外線を発するので、カメラ12に特定スペクトルの光を高効率で透過するフィルタを設けることにより、照射光をより一層頑健に検出することが可能となる。また、パルス光照射により他者の視認を妨げず、幻惑を防止することが可能となる。
【0068】
次に、カメラ12の視軸が上端エッジが照射される方向に対して所定の俯角を有するように設定することにより、分解能を向上させることができることについて説明する。
【0069】
1個のカメラ12で広域を観測するためには、通常、広角レンズが用いられる。一般的な広角レンズは、射影方式として等距離射影レンズ(いわゆる、fθレンズ)を採用しており、周辺視野では中心視野に比べて分解能が劣る。このような広角レンズとの組み合わせにおいては、カメラ視軸に俯角(或いは仰角)を持たせ、分解能が高い領域を監視したい領域に向けて適切に設定することが肝要となる。
【0070】
以下、fθレンズとの組み合せにおいて、簡単のために、照射光の上端エッジが路面に対して水平である場合を仮定し、カメラ視軸の俯角がある場合に、被観測対象までの距離計測値の分解能が向上することを、図11,図12を参照して説明する。カメラ視軸に俯角が無い場合を図11に示し、俯角が有る場合を図12に示す。
【0071】
図11,図12で、視軸方向の画素位置をy(j)とし、y(j)の下に隣接する画素位置をy(j+1)とする。このとき、図11に示すように、俯角(仰角)が0度の場合において、画素位置y(j)とy(j+1)で決定される1画素の角度分解能は、実空間距離での距離分解能dD(0)であるとする。一方、図12に示すように、俯角(仰角)がα度の場合において、画素位置y(j)とy(j+1)で決定される1画素の角度分解能は、実空間距離での距離分解能dD(α)であるとする。この場合、dD(α)<dD(0)が成立するので、カメラ視軸に俯角(仰角)を持たせた場合、1画素の角度分解能に対する実空間分解能が高くなる。即ち、俯角αを設けることにより、上端エッジを抽出する際の実空間分解能を高くすることが可能となる。
【0072】
このように、投光部11により投光される領域光の上端エッジは、カメラ12に対して横方向に領域が形成され、カメラ12は上端エッジ照射方向に対して鉛直な方向にオフセットして配置されると共に、上端エッジ照射方向と視軸が所定角度をなすようにすれば、一般的な広角レンズ(魚眼レンズ)を使用した際においても、三角測量の原理に基づき距離計測する際の計測精度が向上する。
【0073】
[第2実施形態の説明]
次に、第2実施形態について説明する。図13は、本発明の第2実施形態に係る距離測定装置の構成を示すブロック図である。図13に示すように、この距離測定装置101は、前述した第1実施形態と対比して、2つの投光部、即ち上段投光部(第1投光部)20と、下段投光部(第2投光部)21を備えている点、下段投光部21より投光する領域光の光パターンの位相をπ[rad]だけ変位させるπ位相器22を備える点で相違する。それ以外の構成は、前述した図1と同一であるので、同一符号を付して構成説明を省略する。
【0074】
第2実施形態に係る距離測定装置101では、上下方向の照射角度が相違する2個の投光部(上段投光部20,下段投光部21)を設置し、各投光部20,21は、上端部にのみ明暗のエッジを有する光源を用いている。そして、下段投光部21に供給する変調信号をπ位相器22を用いて、上段投光部20の変調信号に対して、逆位相とする。
【0075】
そして、図14に示すように、上段投光部20、及び下段投光部21より測定対象物31に向けて領域光を投光すると、カメラ12により図15に示す如くの画像が撮像される。図15に示すように、上段投光部20によりP1に示す領域にパルス光が投光され、下段投光部21によりP2に示す領域にパルス光が投光される。
【0076】
そして、領域P1とP2とが重複する部分(即ち、領域P2)は、変調信号が逆位相により相殺される領域となるので、同期検波処理部14で検出される同期検波検出領域とはならない。従って、測定対象物31の画像上には、上段投光部20より投光される領域光による上端エッジr11、及び、下段投光部21より投光される領域光による上端エッジr12が存在することになる。そして、各上端エッジr11,r12を、第1実施形態に示した上端エッジ、下端エッジ(図5に示すr1,r2)であるものとすれば、2つの上端エッジr11,r12を用いて、車両Qと測定対象物31との間の距離が変化した場合において、高精度な距離測定が可能となる。
【0077】
図16は、第2実施形態に係る距離測定装置101による変調信号、及び同期検波信号の変化を示すタイミングチャートである。図16(a)は、送信信号S(t)を示しており、「0」「1」のビット信号で示されている。(b)は、上段投光部20より投光される領域光の変調信号を示し、(c)は、下段投光部21より投光される領域光の変調信号を示している。図16(b),(c)より、上段投光部20より投光される領域光と下段投光部21より投光される領域光は逆位相(位相差π[rad])となっていることが理解される。
【0078】
図16(d)は、(b)に示した変調信号による上段投光部20の領域光の輝度変化を示しており、上段投光部20のみで投光される領域で検出される領域光の輝度変化となる。また、図16(e)は、上段投光部20より投光される領域光と下段投光部21より投光される領域光が混在した領域(図15の領域P2)での輝度変化を示している。この領域においては、ほぼ輝度変化が発生していないことが理解される。
【0079】
つまり、16(d)に示した輝度変化が検出される領域においては、図16(f)に示すように同期検波処理により送信信号を復調して、図16(g)に示す如くの「0」「1」信号を取得することができるが、(e)に示す領域では同期検波ができないことになる。
【0080】
このようにして、第2実施形態に係る距離測定装置101では、上端部に水平な輝度エッジを有する上段投光部20、及び下段投光部21を設け、各投光部20,21の上下俯瞰角度を所定角度だけ異ならせて領域光を照射し、上段投光部20より投光される領域光の時間変調と、下段投光部21より投光される領域光の時間変調とを互いに逆位相としている。そして、上段投光部20より投光された領域光より抽出される上端エッジと、下段投光部21より投光された領域光より抽出される上端エッジを用いることにより、上述した第1実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0081】
その結果、前述した第1実施形態と同様に、車両Qと測定対象物31との間の距離が変化する場合であっても、2つの上端エッジのうちのいずれか一方を選択して距離を求めることにより、両者間の距離を高精度に測定することができることとなる。
【0082】
なお、投光部より投光する光の波長としては、可視光、赤外光等を使用することが考えられ、その場合にはカメラ12は投光する波長を観測できるような素子を使用したものとすれば良い。
【0083】
以上、本発明の距離測定装置を図示の実施形態に基づいて説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、各部の構成は、同様の機能を有する任意の構成のものに置き換えることができる。
【産業上の利用可能性】
【0084】
本発明は、車両と測定対象物との間の距離を高精度に測定することに利用することができる。
【符号の説明】
【0085】
11 投光部
12 カメラ
13 投光制御部
14 同期検波処理部
15 上端エッジ検出部
16 下端エッジ検出部
17a 第1距離算出部
17b 第2距離算出部
18 距離選択部
20 上段投光部
21 下段投光部
22 π位相器
31 測定対象物
100,101 距離測定装置
【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動体に搭載され、該移動体の周囲に水平方向に広がる発光領域を有すると共に、上端部、及び下端部が水平となる直線状の端部を有する時間変調したパルス光を投光する投光手段と、
前記移動体に搭載され、前記投光手段により投光され対象物にて反射したパルス光を撮像する撮像手段と、
前記撮像手段により撮像された画像から前記パルス光を抽出する検波手段と、
前記投光手段による投光、前記撮像手段による撮像、及び前記検波手段による検波を制御する制御手段と、
前記検波手段により検出されるパルス光のエッジを検出するエッジ検出手段と、
前記エッジ検出手段により検出されるエッジの画像位置に基づいて、前記対象物との間の距離を算出する距離算出手段と、を有し、
前記エッジ検出手段は、前記パルス光の上端エッジを検出する上端エッジ検出部、及び下端エッジを検出する下端エッジ検出部を含み、
前記距離算出手段は、前記上端エッジ検出部で検出される上端エッジに基づいて、前記対象物までの距離を第1測定距離として算出する第1距離算出部、及び前記下端エッジ検出部で検出される下端エッジに基づいて、前記対象物までの距離を第2測定距離として算出する第2距離算出部を含み、
更に、前記第1測定距離の時間変化及び前記第2測定距離の時間変化をそれぞれ算出し、その算出結果と前記第1測定距離と前記第2測定距離との大きさの比較結果に基づいて、前記第1測定距離、或いは前記第2測定距離のうち、いずれか一方を選択する距離選択手段と、
を備えたことを特徴とする距離測定装置。
【請求項2】
前記距離選択手段は、
前記第1測定距離と前記第2測定距離の大きさを比較し、前記第2測定距離が前記第1測定距離よりも大きい場合に、前記第1測定距離の時間変化及び前記第2測定距離の時間変化の算出結果に基づいて、前記第1測定距離、或いは前記第2測定距離のうち、いずれか一方を選択することを特徴とする請求項1に記載の距離測定装置。
【請求項3】
前記距離選択手段は、
第1測定距離の時間変化が負の値で、且つ前記第2測定距離の時間変化よりも小さい場合には、第1測定距離を選択し、
第1測定距離の時間変化が正の値で、且つ前記第2測定距離の時間変化より小さい場合には、前記第2測定距離を選択することを特徴とする請求項1または請求項2のいずれかに記載の距離測定装置。
【請求項4】
前記制御手段及び前記検波手段は、前記時間変調として、振幅変調、位相変調、及び周波数変調のうちの少なくとも1つを用いて、前記投光手段及び前記撮像手段を制御することを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の距離測定装置。
【請求項5】
前記投光手段は、可視光、赤外光、及び紫外光のうちの少なくとも1つを照射する光源を有し、前記撮像手段は、前記光源に応じて、可視光領域、赤外領域、及び紫外領域のうちの少なくとも1つに感度を有することを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の距離測定装置。
【請求項6】
前記撮像手段は、前記投光手段に対して鉛直方向に設けられ、撮影方向が所定の俯角を有することを特徴とする請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載の距離測定装置。
【請求項7】
前記投光手段は、水平方向に発光領域を有し、且つ、上端部が水平となる直線状の端部を有するパルス光を投光する第1投光部と、
前記第1投光部よりも俯角が大きく設定され、水平方向に発光領域を有し、且つ、上端部が水平となる直線状の端部を有するパルス光を投光する第2投光部と、を含み、
前記第1投光部より投光されるパルス光と、前記第2投光部より投光されるパルス光を、互いに逆位相とし、
前記上端エッジ検出手段は、前記第1投光部より投光され、前記検波手段で抽出される上端部のエッジを上端エッジとして検出し、
前記下端エッジ検出手段は、前記第2投光部より投光され、前記検波手段で抽出される上端部のエッジを下端エッジとして検出することを特徴とする請求項1〜請求項6のいずれか1項に記載の距離測定装置。
【請求項1】
移動体に搭載され、該移動体の周囲に水平方向に広がる発光領域を有すると共に、上端部、及び下端部が水平となる直線状の端部を有する時間変調したパルス光を投光する投光手段と、
前記移動体に搭載され、前記投光手段により投光され対象物にて反射したパルス光を撮像する撮像手段と、
前記撮像手段により撮像された画像から前記パルス光を抽出する検波手段と、
前記投光手段による投光、前記撮像手段による撮像、及び前記検波手段による検波を制御する制御手段と、
前記検波手段により検出されるパルス光のエッジを検出するエッジ検出手段と、
前記エッジ検出手段により検出されるエッジの画像位置に基づいて、前記対象物との間の距離を算出する距離算出手段と、を有し、
前記エッジ検出手段は、前記パルス光の上端エッジを検出する上端エッジ検出部、及び下端エッジを検出する下端エッジ検出部を含み、
前記距離算出手段は、前記上端エッジ検出部で検出される上端エッジに基づいて、前記対象物までの距離を第1測定距離として算出する第1距離算出部、及び前記下端エッジ検出部で検出される下端エッジに基づいて、前記対象物までの距離を第2測定距離として算出する第2距離算出部を含み、
更に、前記第1測定距離の時間変化及び前記第2測定距離の時間変化をそれぞれ算出し、その算出結果と前記第1測定距離と前記第2測定距離との大きさの比較結果に基づいて、前記第1測定距離、或いは前記第2測定距離のうち、いずれか一方を選択する距離選択手段と、
を備えたことを特徴とする距離測定装置。
【請求項2】
前記距離選択手段は、
前記第1測定距離と前記第2測定距離の大きさを比較し、前記第2測定距離が前記第1測定距離よりも大きい場合に、前記第1測定距離の時間変化及び前記第2測定距離の時間変化の算出結果に基づいて、前記第1測定距離、或いは前記第2測定距離のうち、いずれか一方を選択することを特徴とする請求項1に記載の距離測定装置。
【請求項3】
前記距離選択手段は、
第1測定距離の時間変化が負の値で、且つ前記第2測定距離の時間変化よりも小さい場合には、第1測定距離を選択し、
第1測定距離の時間変化が正の値で、且つ前記第2測定距離の時間変化より小さい場合には、前記第2測定距離を選択することを特徴とする請求項1または請求項2のいずれかに記載の距離測定装置。
【請求項4】
前記制御手段及び前記検波手段は、前記時間変調として、振幅変調、位相変調、及び周波数変調のうちの少なくとも1つを用いて、前記投光手段及び前記撮像手段を制御することを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の距離測定装置。
【請求項5】
前記投光手段は、可視光、赤外光、及び紫外光のうちの少なくとも1つを照射する光源を有し、前記撮像手段は、前記光源に応じて、可視光領域、赤外領域、及び紫外領域のうちの少なくとも1つに感度を有することを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の距離測定装置。
【請求項6】
前記撮像手段は、前記投光手段に対して鉛直方向に設けられ、撮影方向が所定の俯角を有することを特徴とする請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載の距離測定装置。
【請求項7】
前記投光手段は、水平方向に発光領域を有し、且つ、上端部が水平となる直線状の端部を有するパルス光を投光する第1投光部と、
前記第1投光部よりも俯角が大きく設定され、水平方向に発光領域を有し、且つ、上端部が水平となる直線状の端部を有するパルス光を投光する第2投光部と、を含み、
前記第1投光部より投光されるパルス光と、前記第2投光部より投光されるパルス光を、互いに逆位相とし、
前記上端エッジ検出手段は、前記第1投光部より投光され、前記検波手段で抽出される上端部のエッジを上端エッジとして検出し、
前記下端エッジ検出手段は、前記第2投光部より投光され、前記検波手段で抽出される上端部のエッジを下端エッジとして検出することを特徴とする請求項1〜請求項6のいずれか1項に記載の距離測定装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図5】
【図2】
【図3】
【図4】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図5】
【公開番号】特開2013−44690(P2013−44690A)
【公開日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−184313(P2011−184313)
【出願日】平成23年8月26日(2011.8.26)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年8月26日(2011.8.26)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】
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