説明

路面下空洞の探査方法

【課題】反射信号を適切に処理することによって路面下の空洞の判別を容易にする。
【解決手段】反射信号を受信し、反射信号から空洞に基づく反射波以外の反射信号のうち、舗装構造や地下構造等による連続して共通的に受信される反射信号を除去して空洞に固有の信号を抽出し、所定区間(B)の反射信号をその区間における最大値に基づいて無次元化し、無次元化した信号からエネルギーが集中している所定規模以上の信号を抽出し、空洞上面からの反射信号に固有の極性を有することによって空洞として判別する。更に、当該反射信号、反射信号を所定区間(A)において平均化した信号が空洞特有の反射信号を呈している場合、または所定区間(A)での空洞特有の反射信号の連続性等が認められる場合に空洞と判定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、道路の路面下に発生した空洞を探査する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
道路の路面下に何らかの原因で空洞ができ、空洞が増大していって路面が突然陥没して走行中の車輌が落下するなどの大事故となることがあり、路面下の空洞を早期に発見する必要がある。
陥没事故につながる危険な空洞は地中の比較的浅い所にあることから、電磁波を使用するパルスレーダ、または、FM−CWレーダ等が広く用いられている。いずれも、電磁波を路面から地下に向けて発信し、空洞や地中埋設物、または、界面における反射波を受信して解析することによって空洞を探査している。
【特許文献1】特開平4−194693号公報
【特許文献2】特開平5−87945号公報
【特許文献3】特開平6−324162号公報
【特許文献4】特許第3658643号公報
【特許文献5】特開2003−093956号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
電磁波を利用した地中空洞探査は、地中からの反射波を利用するものであるが、反射信号は不均質な地盤内及び道路構造内を通過してくるので、舗装部での反射信号が卓越し、減衰が大きく、受信できる反射信号が弱く、また、路面下には地層や土を締め固めた際の境界、上下水道、電話、ガス、電力用の地下埋設物が設置されているため、これらからの反射信号や、更には、土質の変化や含有水分の変化による反射信号が重畳されて受信機に到達するので、探査の目的である空洞に基づく反射信号を判読するには熟練を要し、時間とコストがかかっていた。
海岸や河川に隣接する擁壁構造の道路においては、洪水や吸出し現象によって急速に空洞が発生し、そして成長するため頻繁な探査が必要で、安価で自動的に空洞を探査できることが求められている。
【0004】
電磁波を使用した不均質な地中の探査においては、空洞に基づく反射信号以外の信号が重畳されており、空洞の判別を困難にしているため、受信信号から反射波の特定を容易ならしめるため、空洞からの反射信号以外を除去することにより、空洞信号であるか否かを判定する対象となる信号を確実に抽出して判読することが重要である。
【0005】
特許文献4(特許第3658643号)では、媒質表面の直線上の複数の測定点から電磁波を放射して反射波を受信し、媒質内の測定画像を求め、測定画像の目標物からの信号中で強度の大きいグラディエントベクトルを求め、 測定点を基準にし、基準位置からグラディエントベクトルから得られた方向へ傾いて伸びる直線と、目標物からの反射信号が得られるまでの時間を距離とし、この距離を半径とする円と基準位置からグラディエントベクトルから求めた方向へ傾いて伸びる直線との交点を下測交点として求め、目標物の形状又は位置を求めることが提案されている。
【0006】
しかし、特許文献4の方法は、内部に探査対象物が存在することがわかっており、対象物の形状と深さを求めるのを目的とするものであるのに対し、路面下の空洞探査は、空洞の存在位置自体が不明であり、また、空洞には特有の形状というものがなく不定形であるので、解析に適した測定点を決定することが困難であり、路面下に発生する空洞探査への適用は困難であり、本特許を含め、関連特許において共通して、雑音が重畳したそれぞれの信号から反射信号を特定する手法に課題が残っている。
特許文献5は、地中に放射した電磁波の反射波を受信して地中の空洞を検出するもので、反射波の受信データに含まれる検出対象とする空洞の大きさに応じて設定した領域の反射強度を、周辺領域の反射強度または略同深度における平均的反射強度と比較した結果に基づいて、この領域が空洞領域と見なせるか否かを判定するものである。地中の空洞による反射が生ずると、その部分の振幅が大きくなることに着目して、空洞を発見しようとするものであるが、比較領域の設定など、実用化には課題が残る。
本発明は、電磁波を利用した路面下の空洞探査において、反射信号を適切に処理することによって空洞を容易に判別できるようにするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
電磁波レーダから電磁波を路面下に向かって放射して地中からの反射信号を受信し、反射信号から空洞に基づく反射波以外の反射信号のうち、空洞の探査にとって不要信号である舗装構造や地下構造等による連続して共通的に受信される反射信号を除去し、受信信号に、該受信信号を含む所定区間(B)における最大値に基づく増幅率を乗じ深さ方向の減衰に対しては、所定区間(B)の受信信号の深さごとの最大値に基づいて、深いほど大きくなる増幅率を乗じて所定区間(B)の受信信号をその区間における最大値に基づいて無次元化し、電磁波の舗装面等での反射損失や地中での減衰等に起因する信号強度の変化を減じて信号強度の比較を可能とするように無次元化した信号からエネルギーが集中している所定規模以上の信号を抽出して空洞として判別する対象となる信号を抽出して空洞を判定するものである。
【0008】
空洞の判定は、無次元化した反射信号を、一定強度以上となる所定区間(A)または一定強度以上となる区間での極大値を呈する信号を中心とした所定区間(A)を空洞の可能性がある個所とし、当該区間において受信信号を平均化することによって、隣接の信号にない雑音を軽減すると同時に、危険の少ない小さな空洞による信号を除去し、更に、反射信号の振幅が最大となる1周期において、空洞からの反射波が送信波と同じ極性となる正極性などの空洞からの反射信号の特徴の有無によって空洞を判定するものである。
【0009】
空洞が発生する前の信号強度と後の信号強度を比較すると、空洞発生後の方が大きくなる物理的性質を利用し、一定強度以上となる区間での極大値を呈することに加え、過去に得られた同一個所での信号強度より一定値以上大きくなっていることという条件を追加して選択された無次元化した反射信号を中心とした区間を所定区間(A)とすることによって、高い確度で空洞の可能性がある個所とするものである。
【0010】
所定区間(A)における反射信号の平均化を行わない場合は、所定区間(A)における各々の信号について振幅が最大となる1周期について極性を判定し、正極性の位置(信号の時間軸上の位置)が一定の幅にある場合や、信号の時間軸上における所定の幅の中で所定の確率を超えて正極性が出現する場合に空洞と判定するものである。
【発明の効果】
【0011】
この発明によれば、舗装構造や地下構造等による連続して共通的に受信される反射信号を除去し、空洞と判定する条件設定を現場に適合させることが可能となって空洞が発見しやすくなり、修復工事を早期におこない、陥没事故等を未然に防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明の空洞探査方法を図1のフロー図に従って説明する。
(1)不要信号除去
地中に放射した電磁波の反射信号に基づいて空洞を探査する場合、空洞以外に基づく不要な反射信号を除去することによって空洞の判別が容易になる。空洞が存在する個所とその前後の位置においては、地中の状態がほぼ均質であると考えられるので、探査区間において平均的な反射信号を除去することにより、存在する空洞に基づく反射信号が際立つことになり判別が容易となる。しかし、路面下の空洞探査は数キロメートル以上にわたって連続的に行われるので「平均的な反射信号」が全探査区間にわたって一様ではなく変化することから、処理しようとする信号を中心とした所定区間(B)の平均的な反射信号を当該信号から除去する連続的、逐次的な処理により、それぞれの個所における平均的な反射信号が除去される。
なお、信号が持っている低周波、高周波の雑音が大きい場合は、バンドパスフィルタを用いて処理することによって、雑音を除去できるが、サンプル間隔に対する信号の周波数が高く、振幅の変化も急激なため、デジタルフィルタの処理による時間遅れに注意する必要がある。
【0013】
信号処理をおこなう位置を中心として所定区間(B)の反射波の平均値を除去する方法は、舗装構造等が変化する区間では、それらに起因する反射信号が不連続となることから平均値が意味をなさない。従って、平均値を除去する方法を利用する場合は、データが保管してある道路構造や地下埋設物の情報に基づき、不連続とならないように所定区間(B)を適切に設定することが必要である。
除去する平均値を算出する所定区間(B)が狭すぎ、空洞の反射波が捕捉される幅と同程度になると、空洞からの反射信号の特徴をも除去してしまう可能性がある。具体的には、図3の左に示すように、所定区間(B)を空洞信号の幅より狭くすると、空洞信号が強調されず、多くの不要信号が残り、同図の下に示す信号強度の分布では、空洞の存否による差が出現しない。
図3の右側は、所定区間(B)を空洞信号の幅の数倍に設定したものであり、不要信号が消去されて空洞信号が強調され、下側の信号強度の分布においても空洞の存否による差が強調される。
また、所定区間(B)が広すぎると、地中状況が変化してしまい、連続した信号を取り除くことができなくなってしまう可能性があるが、路面下の空洞が問題となる範囲で大きな地質の変化が存在することは少なく、舗装の厚さなどの変化の除去が困難となる問題が発生する可能性が高い。ただし、舗装部は、その他の信号も大きく、後述する方法で、舗装部の信号を無視する処理によって対応が可能である。
なお、上記実施例では、相違を明確にするため、次に示す無次元化の処理を行った結果を示している。
【0014】
(2)無次元化
反射信号は、様々な要因によって減衰する。舗装構造や土質の変化によっても反射の減衰率は影響を受けるので、受信した反射波の振幅やエネルギーを単純に比較することができない。長距離でなければ、舗装構造や土質は均質とみなすことができ、所定区間(B)内の最大値と信号処理上の最大値の比率が所定区間(B)の減衰特性を代表しているとみなすことができるので、当該比率に基づく増幅率を乗じることにより、中央の反射信号を無次元化し、各区間のレベルを揃える方法に従えば、連続した長距離の探査信号や、異なる時点における信号であっても、それぞれの地中の状況によって信号が減衰した影響を減じ、信号強度の相互比較が可能になる。
具体的には、処理しようとする信号を中心とする所定区間(C)における最大片振幅に基づき、処理しようとする信号の増幅率を求める方法がある。所定区間(C)の設定方法は、所定区間(B)と同様であるので、(B)と同じでも、異なってもよい。増幅率は受信信号すべてに乗じることになるので、増幅後の最大片振幅の信号が信号処理上の最大値を超えないように増幅率を算出する。所定区間(C)におけるすべての信号の最大片振幅と信号処理上の最大値との比率を直接的に採用する方法が最も単純である。しかし、比率が小さい時は、最大増幅率を設定し、比率が大きい時よりも小さな増幅率となるような関数の設定をおこなうことにより、極端な増幅による変動を避けることができる。
これと同様に、深さ方向についても、所定区間(C)において、それぞれの深さ(それぞれの信号の時間軸における位置)の最大片振幅を求め、深い所の増幅率が線形的に大きくなるよう、また、途中での増幅結果が振幅の限界を超えないように、増幅率を設定する方法がある。具体的には、深さごとの最大片振幅に基づき、信号処理上の最大値を超えないように、深さ方向に線形的に大きくなる増幅率を設定する。例えば、信号処理上の最大値を深さごとの最大片振幅で除した値をもとに、地表で零となる直線近似で得た増幅率が考えられる。この場合、地表近くの振幅が大きい信号に対しても増幅率が乗じられることになるが、地表近くの増幅率が小さくなるので、実用的には、増幅後の振幅が信号処理上の最大値を超えるといった問題が起きることはほとんどない。
これらの方法によって得た増幅率を受信信号に乗じ、最大振幅を基準とした無次元化をおこなう。
【0015】
(3)判定対象位置の抽出
以上の処理を受けた反射信号では、反射信号が空洞等からの反射信号を含んでいる場合には、反射信号が空洞等からの反射信号を含んでいない場合に比べて、信号強度が大きくなり、空洞に起因する反射信号が含まれている可能性があるとみなすことができる。
更に、このようにして抽出された反射信号の中で、エネルギーの大きな位置、または、振幅が大きな位置に反射波があると考えられる。
具体的には、反射信号の信号強度分布において、空洞の真上での受信波が最も強い空洞反射波を含んでいることから、所定の強度を超える区間において極大値を示す反射信号を中心として、空洞信号が存在していると考えられる。そこで、 受信信号の信号強度分布において極大値を呈する個所を空洞の可能性がある個所とすることができるが、空洞でない個所が含まれる場合が多い。その解決策として、受信信号の信号強度と、当該受信信号を中央とする所定区間(B)における信号強度の平均値に標準偏差に一定の倍率(0〜3)を乗じ、加算したものとの比率を算出し、1以上の値を呈する区間において極大値を呈する場所を、空洞の可能性がある個所として抽出する方法がある。標準偏差に乗じる倍率は0を基本とし、地中の構造が安定している場所(不要信号が少ない場所)では乗じる倍率を大きくすることで、空洞である確率を高めることができる。図2や図3の右側の図の下に示したグラフで、空洞信号が存在する個所で極大値を呈している。
【0016】
また、路面下の空洞の探査は、所定の期間をおいて反復して実施されるものであり、過去の空洞探査データには、地下埋設物や地中構造物の情報が含まれているので、このデータを参照することによって地下埋設物や地中構造物に起因する反射信号を除去することが可能である。
具体的には、過去に得た同一区間での探査信号の信号強度分布などの情報を、新しく得た探査信号の信号強度分布と比較するなど、それぞれの信号の呈する特徴を比較する方法は、不要な信号が適切に除去されていることを前提として、既知の信号を除去する方法より簡易で、同等の効果を得ることができる。この場合、測線方向の位置について、10〜20cmの高い精度で把握する必要がある。
舗装面に金属製の反射テープを貼り、その反射信号で位置調整を行った事例では、空洞ができる前とできた後の信号強度分布(舗装からの反射波を除く。) を比較したところ、空洞が発生した個所での反射信号の強度が大きく増加している。これに対し、空洞が発生した後のデータのみでは、空洞以外の理由によって信号強度が大きくなっているところも、空洞であるか否かを判定する場所として抽出される。
具体的には、新たに得た信号強度の分布においてピークを呈する個所(空洞などの反射物が存在する可能性が高い個所)と、以前に取得された信号強度の分布を新たに得た信号強度の分布から減じた時の信号強度の分布においてピークを呈する個所(新たに発生した空洞などが存在する可能性が高い個所)とが一致する場合には、空洞などが発生した可能性が低いといえる。
その実施例として図4に示す例は、空洞発生前後の受信信号の強度分布を比較することによって、信号強度分布がピークを呈する個所が一致する場所は、空洞の発生によらないピークとして除外できる、また、空洞の発生に起因して信号強度が増加している個所が、それぞれの差を示す「差分」のグラフによって明らかになっている。
【0017】
卓越する反射信号は、舗装盤内での反射波である。また、埋設管等の位置や寸法が特定されておれば、特許文献1(特開平9−292350号公報)に開示された手法を逆に使用することによって反射信号を予測することができるので、舗装や埋設物に関する情報に基づき、地中構造物に起因する反射信号を除去することが可能である。
簡易な方法としては、舗装版の厚さを、国土交通省が管理する道路情報のデータベースシステム「MICHI」から取得したり、事前の調査によって計測したりし、受信信号から、舗装版の厚さに相当する部分の信号を除外して、信号強度比較をおこなう。
また、電磁波を反射する埋設物や舗装の層構造等が判明していれば、それらからの反射信号の特性をあらかじめ得て、反射信号からこれらの反射信号を除去することによって、空洞による反射信号の峻別が容易となる。
図5に示すように、受信された信号同士を直接比較する(新しく得た信号から既知の信号を除去する)ことは、地中の誘電率(伝搬速度)が短期間で変化することから、注意が必要である。例えば、鉄筋が埋め込まれた場所に発生した空洞の信号において、発生前に捕らえられていた鉄筋の反射信号Bを、空洞発生後の信号Aから減じて得られる波形では、測線方向の位置情報のみでは、鉄筋からの反射信号を除去することはできない。この原因は、電磁波の伝搬速度のわずかな変化によって、時間的な位置が異なっているためである。そこで、鉄筋の深さは変化していないことから、鉄筋からの反射波の位置を合わせるように移動すると、鉄筋の反射波をよく消去できる。
【0018】
以上の方法によって空洞の可能性がある個所を抽出することができるので、当該個所における反射信号及び当該反射信号を中心とする所定区間(A)に含まれる複数の反射信号において、それぞれの反射信号の中で信号強度が最大となっている1周期が、空洞からの反射であるか否かを判定する対象として抽出される。
所定区間(A)は、発見しようとする空洞の大きさと同等に設定する。仮に、5cm間隔で信号を取得する場合において、発見しようとする空洞の大きさが50cmであれば、所定区間(A)は50cmまたは10本の信号となる。
次に、これらの信号に含まれる波形を対象に、1周期の振幅またはエネルギー(当該1周期の振幅の二乗和に比例する数値)を計測し、最大振幅となる1周期または受信信号全体とのエネルギーの比が最大となる1周期が空洞判定対象位置になる。
【0019】
(4)空洞判定
抽出された判定対象位置の波形が送信波形と同じ極正(正極性)である場合は、誘電率の高い部分の下側に誘電率の低い部分が存在する境界での反射である。すなわち、空洞上部での反射であると判断できる。
しかし、雑音や反射信号相互の干渉等によって、正確な信号が得られない場合が少なくない状況の下では、所定区間(A)の中心の信号のみなど、単一の信号で判定することは誤判定の可能性が残ることになる。そこで、所定区間(A)において、正極性の反射信号が連続してほぼ同じ深さに発生している場合、所定区間(A)で所定の確率以上で正極性の反射信号が存在する場合、または所定区間(A)の平均的な波形に正極性の反射信号が存在する場合などに、空洞が存在すると判断する方法が実用的である。
更に、受信波が高調波や低周波の雑音を含んでいる場合には、周波数フィルタをかける方法が有効であるが、その適用は、信号処理の初期段階で実施する方法と、判定処理の段階で実施する方法がある。零点がシフトするような低周波の信号を断続的に含む場合は、零点のシフトがエネルギー分布に影響するため、信号処理の初期段階で実施する必要がある。
【0020】
このほか、地中の状況によっては、反射個所が散在し、全体的に大きな振幅になる場合には、当該個所において信号強度分布がピークを呈することになる。このような場合には、正極性と判定された1周期の信号強度(エネルギー)と全体の信号強度(エネルギー)との比が小さくなるので、空洞ではないと判定できる。
【0021】
判定においては、段落0019や段落0020で説明した次の条件を単独、または組み合わせることによって空洞と判定する。
(ア)判定対象位置の1周期に、受信波全体の一定率以上のエネルギーが集中している。
(イ)所定区間(A)において、正極性の反射信号が連続してほぼ同じ深さに発生している。
(ウ)所定区間(A)で所定の確率以上で正極性の反射信号が存在する。
(エ)所定区間(A)の平均的な波形に正極性の反射信号が存在する
これらの複数の条件の積集合を設定すれば、空洞でないところを空洞と判定する確率は低くなるが、空洞を空洞でないと判定する確率が高くなる。誤判定の確率は探査信号の雑音に左右されることが多く、雑音が少ない環境では、物理的に成立する条件をすべて満たすなどとすることによって、空洞判定の確実性を向上できるが、雑音が多い環境では、空洞を空洞でないと判定することが増える。そのため、判定条件の設定に当たっては、対象となる信号の状況、結果の利用目的に応じて適切に設定する必要がある。
例えば、理想的な信号が受信されていれば、物理的には、(ア)の率は95%以上になり、(イ)〜(エ)のすべての条件が成立するはずであるので、これらすべての条件が成立するといった厳しい条件式を設定することで、空洞を見逃す可能性は高いが確実に空洞を判定することができ、(ア)の率を小さく設定したり、(イ)〜(エ)から単一の条件を設定したりすることで、空洞を見逃す可能性は少ないが空洞でないところも空洞と判定してしまう条件式とすることができる。
そこで、見落としを避けると同時に判定個所を減少させるといった目視判定の支援では後者の緩い条件を用い、自動判定結果に基づいて補修等の作業をおこなう場合には前者の厳しい条件式を用いる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の空洞探査方法のフロー図。
【図2】本発明の空洞探査の実施例の説明図。
【図3】所定区間(B)の広狭による影響の説明図。
【図4】信号強度分布比較の説明図。
【図5】地下埋設物の信号処理の説明図。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
路面に電磁波を放射して反射信号を受信し、路面下の空洞を探査する方法であって、各々の受信信号について、該受信信号を中央に含む所定区間(B)内の舗装構造や地下構造に基づく連続して共通的に受信される反射信号の所定区間(B)内の反射信号に共通する信号を除去し、所定区間(B)内の反射信号の最大値に基づいて該反射信号を無次元化し、さらに、所定の区間(B)内の反射信号の時間軸毎の最大値に基づいて時間軸方向に線形的に増幅して反射信号を明瞭化すると同時に信号強度比較を可能とする処理を行って、信号強度が周辺と比較して所定レベル以上で極大となる個所等の空洞の可能性がある個所を中心とする所定区間(A)内の受信信号に現れる空洞からの反射信号の有無によって空洞を抽出する路面下の空洞探査方法。
【請求項2】
請求項1において、反射信号を明瞭にする処理を行った新たに得られた信号と過去に得られた同一個所の信号とを対象に、測線方向の信号強度分布の直接比較差または測線方向の信号強度(最大振幅またはエネルギー)の分布の極大個所等の特徴を比較することによって、信号強度差が所定レベル以上で極大となる個所や新たに出現した信号強度の極大個所を中心として所定区間(A)とする空洞探査方法。
【請求項3】
請求項2において、空洞の可能性がある個所を中心とする所定区間(A)に含まれる信号を平均化したものまたは所定区間(A)に含まれる反射信号について、空洞からの反射の物理的特徴を有する反射信号の存否、連続性または発現確率に基づいて空洞の存否を判定する路面下の空洞探査方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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