説明

路面切削装置

【課題】新旧の路面の接合力を増し、段差を生じないシームレス工法において、切削効率を向上させた路面切削装置を提供する。
【解決手段】回転ドラム2の幅方向中央の外周部に円周方向に所定のピッチで配設された垂直面用ビット3と、回転ドラム2の外周部であって垂直面用ビット3の両側部に所定の間隔で離隔するとともに、円周方向に所定のピッチで配設された斜面用ビット4とからなり、前記斜面用ビット4は、先端部を結んだ仮想線S、Sが回転ドラム2の幅方向中央から両側に向けて回転ドラム2の回転軸方向にそれぞれ傾斜するように配設され、垂直面用ビット3は、先端部が前記仮想線S、Sの頂点Aよりも突出するように配設される。その結果、本路面切削装置1で切削した舗装路面の断面形状は、表層側部分が前記斜面用ビット4によって切削された傾斜切断面とされ、その下側部分が垂直面用ビット3によって切削された垂直切断面とされる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新旧の路面の接合力を増し、段差を生じないシームレス工法において、切削効率を向上させた路面切削装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、アスファルト又はコンクリートからなる舗装路面の路床に埋設された地下埋設設備の交換や保守点検などのため、所定範囲に亘って舗装路面を切断し、この範囲のアスファルト又はコンクリート及び土砂等を除去して所定の作業を行った後、再度アスファルト又はコンクリートを充填して補修する作業が行われている。このとき舗装路面の切断工法として、切断面を斜めに傾斜させて切断するシームレス工法が知られている。
【0003】
かかるシームレス工法は、舗装路面を垂直に切断する垂直切断工法に比べ、切断面が斜めに傾斜しているため、補修後に車輌の繰り返し荷重が加わっても圧潰による補修部分の沈下が生じにくく、段差やクラック、割れの発生が低減できるとともに、新旧の路面の接合面積が増し、冬季及び夏季の寒暖の変化による収縮膨張に伴う剥離やクラック、割れの発生が低減でき、且つ補修工事完了までに生活道路として使用する場合でも自転車やバイクなどの車輪がとられて転倒したり、歩行者がつまずいたりする危険が低減できるなどの利点がある。
【0004】
前記シームレス工法に用いられる舗装路面の切削装置として、例えば下記特許文献1、2では、円盤状の回転刃を進行方向に対して左右いずれかの方向に傾斜させたものが開示されている。
【0005】
一方、路面のクラック部分の補修や融雪水の水路用溝形成などのため、路面にV型溝を切削する切削装置が知られている。例えば下記特許文献3には、切っ先部の肉厚をその周囲よりもテーパー状に適宜厚くしてなる逆V字形に突設した切削チップを設けたV型溝切削用回転刃が開示され、下記特許文献4には、回転基板の外周面に外方へ略V字形に突設される切削チップとが供えられたカッターブレードが開示され、下記特許文献5には、水平に設置した回転軸を中心として回転する円筒状のカッタードラムと、該カッタードラムの外周面に所定のピッチで設置された複数個のカッターとを備え、該各カッターのビットの先端が前記カッタードラムの幅方向の中央から左右の側縁に向かって直線的に下降傾斜の軌跡をなし、且つ高さが順次低くなる構成とした舗装面切削装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平11−158811号公報
【特許文献2】特開2003−184027号公報
【特許文献3】特開平9−49208号公報
【特許文献4】特開平5−124028号公報
【特許文献5】特開2003−3418号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記特許文献1、2などに記載される円盤状の回転刃による切削では切削スピードが約1m/分と、切削ビットによる切削スピードの約5m/分に比べて格段に遅く、切削効率が非常に悪かった。
【0008】
また、上記特許文献1、2記載の円盤状の回転刃や、上記特許文献3、4記載のV型の切削チップでは、切断面が滑らかに形成されるため、新旧のアスファルト又はコンクリートの接合強度が弱く、車輌の繰り返し荷重や寒暖の変化によって接合面が剥離するおそれがあった。
【0009】
上記特許文献3、4記載のV型の切削チップでは、V型刃の先端部ほど摩耗が激しくなるため、V型刃の両側部はそれほど摩耗が生じていないにもかかわらずV型刃全体を交換しなければならないので、相当な無駄が生じ経済的負担が大きくなっていた。
【0010】
また、上記特許文献3、4記載のV型の切削チップでは、切削断面に対してV型の線状に接触して切削するため、切削ビットのように切削断面に対して先端部が点状に接触して切削するのに比べて、切削の負荷が大きくなる。
【0011】
このように切削負荷が大きくなると、路面への喰い込み量を小さくして切削負荷を低減しなければならないため、切削スピードを早くすることができない。喰い込み量を小さくすると、切削したスライムが粉状になるため、風に飛ばされたり、雨などによって水分を含むと泥状になって流れ出て周辺を汚すおそれがあった。このため、切削したスライムは4〜5mm程度の粒状であることが望ましいが、前記切削チップによる切削では難しかった。
【0012】
一方、上記特許文献5記載の切削装置では、カッタードラムの幅方向の中央から左右の側縁に向かって各カッターのビットの先端の高さを直線的に順次低くすることによりV型溝が形成されるようにしているため、表面が適度に荒れ凹凸が形成された切断面を得ることができ、新旧のアスファルト又はコンクリートの接合強度を強くすることができるとともに、摩耗したビット毎に交換でき、且つ切削ビットで切削するため切削したスライムを粒状にすることができる。このため、上記特許文献3、4の問題点が解決できるようになる。
【0013】
ところが、仮に上記特許文献5記載の切削装置をシームレス工法に適用しようとすると、図7に示されるように、舗装路面を厚さ方向に亘ってV字形に切削することになるため、切削断面の面積Aが増し(切削部の体積が増し)切削効率が非常に悪いものとなる。
【0014】
具体的には、上記特許文献3〜5記載のV型溝切削装置によって舗装路面の高さHに亘って傾斜角45°のV型溝を形成しようとすると、図7に示されるように、V型切削部の断面積AはHとなる。このため、路面高さHに亘ってV型溝を形成するには、切削体積が膨大となり、作業時間も増加する。
【0015】
そこで本発明の主たる課題は、新旧の路面の接合力を増し、段差を生じないシームレス工法において、切削効率を向上させた路面切削装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
ところで、路面を垂直に切削した場合は、切断面が垂直に形成されることによって、補修部分の沈下に伴う段差やクラック、割れが発生するとともに、寒暖の変化に伴う剥離やクラック、割れが発生し、且つ自転車やバイクの車輪がとられて転倒するなどの危険が生じるが、切削効率は良好である。一方で、前記路面をV字溝状に切削した場合は、補修部分の沈下に伴う段差やクラック、割れを防止できるとともに、寒暖の変化に伴う剥離やクラック、割れも防止でき、且つ自転車やバイクの車輪がとられて転倒するなどの危険を回避できるが、切削体積の増大によって切削効率が低下する傾向にある。
【0017】
そこで、本発明者は、図4に示されるように、舗装路面の断面形状が、表層側部分は断面V字状の傾斜切断面とする一方、その下側部分は垂直な垂直切断面とする、いわば上記シームレス工法と垂直切断工法とを組み合わせた新たな切断工法を開発するに至った。
【0018】
具体的には、前記課題を解決するために請求項1に係る本発明として、回転ドラムと、その幅方向中央の外周部に円周方向に所定のピッチで配設された垂直面用ビットと、前記回転ドラムの外周部であって前記垂直面用ビットの両側部に所定の間隔で離隔するとともに、円周方向に所定のピッチで配設された斜面用ビットとからなる路面切削装置であって、
前記斜面用ビットは、先端部を結んだ仮想線が前記回転ドラムの幅方向中央から両側に向けて回転ドラムの回転軸方向にそれぞれ傾斜するように配設され、前記垂直面用ビットは、先端部が前記仮想線の頂点よりも突出するように配設され、前記路面切削装置で切削した舗装路面の断面形状が、表層側部分の前記斜面用ビットによって切削された断面V字状の傾斜切断面と、このV字状傾斜切断面の頂点部分から下側に連続する前記垂直面用ビットによって切削された垂直切断面とからなることを特徴とする路面切削装置が提供される。
【0019】
上記請求項1記載の発明では、回転ドラムの幅方向中央の外周部に円周方向に所定のピッチで配設された垂直面用ビットと、前記回転ドラムの外周部であって前記垂直面用ビットの両側部に所定の間隔で離隔するとともに、円周方向に所定のピッチで配設された斜面用ビットとから構成し、前記斜面用ビットは、先端部を結んだ仮想線が回転ドラムの幅方向中央から両側に向けて回転ドラムの回転軸方向にそれぞれ傾斜するように配設され、前記垂直面用ビットは、先端部が前記仮想線の頂部よりも突出するように配設したものである。
【0020】
上記構成により、本路面切削装置で切削した舗装路面の断面形状が、表層側部分の前記斜面用ビットによって切削された傾斜切断面と、このV字状傾斜切断面の頂点部分から下側に連続する前記垂直面用ビットによって切削された垂直切断面とからなるようにしてある。
【0021】
ここで、本発明に係る路面切削装置による切削断面の断面積について図4及び図7に基づいて説明すると、本路面切削装置では、図4に示されるように、斜面用ビットによって切削する断面積Aは、舗装路面の厚さHに対して、2/3・Hの高さで設けられるとすると約0.44Hとなる。一方、上述の路面厚さHに亘ってV型溝を形成する場合の断面積AはHとなる(図7参照)。このように、本発明に係る路面切削装置によれば、切削する断面積が約半分程度で済むため、切削体積が大幅に低減でき、切削時間も大幅に改善することができ、切削効率が向上する。
【0022】
また、表面部分に傾斜切断面が形成されるため、補修後に車輌の繰り返し荷重が加わっても圧潰による補修部分の沈下が生じにくく、段差やクラック、割れの発生が低減できるとともに、新旧の路面の接合面積が増し冬季及び夏季の寒暖の変化による収縮膨張に伴う剥離やクラック、割れの発生が低減でき、且つ補修工事完了までに生活道路として使用する場合でも自転車やバイクなどの車輪がとられて転倒したり、歩行者がつまずいたりする危険が低減できるようになる。
【0023】
また、路面の切削には、切削ビットを使用しているため、切断面が適度に荒れ表面に凹凸が形成され、新旧の舗装路面の接合強度が増すとともに、摩耗したビット毎に交換できるため経済的負担が軽減でき、且つ切削したスライムが粒状になるため、スライムが風に飛ばされたり、雨などによって水分を含んでも泥状になって流れ出て周辺を汚すおそれが低減できる。
【0024】
請求項2に係る本発明として、前記路面切削装置で切削した舗装路面の断面形状は、舗装路面の厚さHに対して、少なくとも2/3・Hの厚み範囲に亘って前記傾斜切断面が形成され、その下側部分に前記垂直切断面が形成されるようにしてある請求項1記載の路面切削装置が提供される。
【0025】
上記請求項2記載の発明は、舗装路面の厚さHに対して、少なくとも2/3・Hの厚み範囲に亘って前記傾斜切断面が形成され、その下側部分に前記垂直切断面が形成されるようにしたものである。
【0026】
請求項3に係る本発明として、前記回転ドラムは、幅方向中央部から両側部に向けてそれぞれ直径が回転軸方向に小さくなるように形成され、
前記斜面用ビットが、各直径における回転ドラムの外周部に配設されることにより、前記斜面用ビットの先端部を結んだ仮想線が前記回転ドラムの幅方向中央部から両側に向けて回転ドラムの回転軸方向にそれぞれ傾斜するようにしてある請求項1、2いずれかに記載の路面切削装置が提供される。
【0027】
上記請求項3記載の発明は、斜面用ビットの先端部を結んだ仮想線を回転ドラムの幅方向中央部から両側に向けて回転ドラムの回転軸方向にそれぞれ傾斜して形成するための具体的な構成を規定したものであり、前記回転ドラムとして、幅方向中央部から両側部に向けてそれぞれ直径が回転軸方向に小さくなるように形成されたものを使用し、前記斜面用ビットを、各直径における回転ドラムの外周部に配設するようにしたものである。
【0028】
このように、斜面用ビットの先端部の高さを傾斜させるのに、回転ドラムの直径を変化させて形成することにより、斜面用ビットを共通化することができ、ビット交換の経済的負担が軽減できる。
【0029】
請求項4に係る本発明として、前記垂直面用ビット及び斜面用ビットは、前記回転ドラムを円周方向に展開した状態で、各ビットの先端部が円周方向に異なる位置に配設されている請求項1〜3いずれかに記載の路面切削装置が提供される。
【0030】
上記請求項4記載の発明では、垂直面用ビット及び斜面用ビットとして、回転ドラムを円周方向に展開した状態で、各ビットの先端部が円周方向に異なる位置に配設される構成とすることにより、実質的な路面切削部が各ビットの1点に集中するため、少ない切削負荷でも切削深さを深くすることができ、切削スピードが増加する。
【0031】
請求項5に係る本発明として、前記垂直面用ビット及び斜面用ビットは、前記回転ドラムの回転方向に対して、前記垂直面用ビットを先頭として、前記回転ドラムの幅方向中央寄りの斜面用ビットから順に配設されている請求項1〜4いずれかに記載の路面切削装置が提供される。
【0032】
上記請求項5記載の発明では、垂直面用ビット及び斜面用ビットを、回転ドラムの回転方向に対して、幅方向中央部に配設される垂直面用ビットを先頭として、その両側に配設される斜面用ビットの内、回転ドラムの幅方向中央寄りのビットから順に配設することにより、切削時に、切削したスライムを順次両側に押し出す効果が生じ、作業効率が向上できる。
【発明の効果】
【0033】
以上詳説のとおり本発明によれば、新旧の路面の接合力を増し、段差を生じないシームレス工法において、切削効率を向上させた路面切削装置が提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明に係る路面切削装置1を搭載した作業車30を示す、(A)は正面図、(B)は側面図である。
【図2】路面切削装置1の正面図である。
【図3】その側面図である。
【図4】路面切削装置1によって切削した舗装路面の断面図である。
【図5】回転ドラム2を円周方向に展開した状態における各ビットの配置図である。
【図6】路面切削装置1によって形成した切断面の断面図である。
【図7】従来のV型溝切削装置によって切削した舗装路面の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳述する。
【0036】
本発明に係る路面切削装置1は、図1に示されるように、走行輪31が備えられることによって路面を移動自在とされた作業車30に対し、車体本体32の先端部に、油圧ジャッキ33、33によって上下方向に昇降可能に配置された昇降装置34を介して、路面に対向するように設けられるものである。さらに詳細には、前記路面切削装置1は、前記作業車30の幅方向中央部に設けられた回転モータ35によって回転駆動され、路面と平行に配置される回転軸36の先端部に取り付けられ、前記回転軸36が作業車30の左右両側にそれぞれ設けられることによって、いずれか一方の回転軸36の先端部に対して取付可能とされている。
【0037】
前記路面切削装置1は、図2及び図3に示されるように、回転ドラム2と、その幅方向中央の外周部に円周方向に所定のピッチで配設された複数の垂直面用ビット3、3…と、前記回転ドラム2の外周部であって前記垂直面用ビット3の両側部に所定の間隔で離隔するとともに、円周方向に所定のピッチで配設された複数の斜面用ビット4、4…とから構成されている。
【0038】
前記斜面用ビット4、4…は、図2に示されるように、先端部を結んだ仮想線S、Sが回転ドラム2の幅方向中央から両側に向けて回転ドラム2の回転軸方向にそれぞれ傾斜するように配設されている。また、前記垂直面用ビット3は、図2及び図3に示されるように、先端部が前記仮想線S、Sの頂部Aよりも外方に突出するように突出して配設されている。これにより、図4に示されるように、本路面切削装置1で切削した舗装路面の断面形状が、表層側部分の前記斜面用ビット4、4…によって切削された断面V字状の傾斜切断面と、このV字状断面の頂点部分から下側に連続する前記垂直面用ビット3、3…によって切削された垂直切断面とからなる。
【0039】
前記垂直面用ビット3は、図2及び図3に示されるように、回転ドラム2の幅方向中心線CWに沿って円周方向に3つ、ほぼ等間隔に配設されている。また、前記斜面用ビット4は、図2に示されるように、前記垂直面用ビット3の両側部にそれぞれ3つずつ(左半分の斜面用ビットを4a、4b、4c、右半分の斜面用ビットを4a’、4b’、4c’とする)ほぼ等間隔で離隔して配設されるとともに、図3に示されるように、前記垂直面用ビット3、3間の円周方向に所定のピッチで配設されている。これによって図示例では、1つの前記垂直面用ビット3と、それに後続する6つの斜面用ビット4a、4b、4c、4a’、4b’、4c’によって1群のビット群が形成され、このビット群が3群、回転ドラム2の円周方向にほぼ等間隔で配設されている。
【0040】
前記垂直面用ビット3は、ビット中央部に刃先を有するセンタビットとすることが望ましく、前記斜面用ビット4は、一方側に刃先を有する左右勝手ビットとすることが望ましい。また図示例では、前記垂直面用ビット3及び斜面用ビット4として、ルーフ型ビットが図示されているが、コニカルビットなど公知のビットを使用することができる。
【0041】
前記斜面用ビット4を、先端部を結んだ仮想線S、Sが前記回転ドラム2の幅方向中央部から両側に向けて前記回転ドラム2の回転軸方向にそれぞれ傾斜するように配設するには、図2に示されるように、回転ドラム2の直径を、前記回転ドラム2の幅方向中央部から両側部に向けてそれぞれ回転ドラム2の回転軸方向に小さくなるように形成し、各直径における回転ドラム2の外周部に前記斜面用ビット4を配設することにより形成することができる。図示例では、回転ドラム2が、幅方向中央の中央部分2Aと、その両側部にそれぞれ3段階に小さな直径となるように形成された両側部分2B、2C、2Dとから構成され、前記両側部分2B、2Bに斜面用ビット4a、4a’がそれぞれ配設され、両側部分2C、2Cに斜面用ビット4b、4b’がそれぞれ配設され、両側部分2D、2Dに斜面用ビット4c、4c’がそれぞれ配設されている。なお、前記中央部分2Aには垂直面用ビット3が配設されている。
【0042】
このように、斜面用ビット4、4…の先端部を結んだ仮想線S、Sを傾斜させるのに、斜面用ビット4が取り付けられる回転ドラム2の直径を変化させて形成することにより、斜面用ビット4を共通化することができ、ビット交換の経済的負担を軽減することができる。
【0043】
一方、前記垂直面用ビット3は、先端部が前記仮想線の頂点よりも突出するように設けられている。この突出高さは、図4に示されるように、舗装路面の厚さHに対して、少なくとも2/3・Hの厚み範囲に亘って前記傾斜切断面が形成され、その下側部分に前記垂直切断面が形成されるように、先端部が前記斜面用ビット4より突出して配設されている。
【0044】
図4に示される舗装路面の断面形状では、前記傾斜切断面が2/3・Hの高さで形成され、垂直切断面が1/3・Hの高さで形成されている。このような断面形状とするには、図2に示されるように路面切削装置1の斜面用ビット4による切削可能な高さLを前記2/3・Hとし、その先端部から前記垂直面用ビット3の突出高さLを少なくとも前記1/3・Hとする。
【0045】
このように形成することにより、前記斜面用ビット4、4…によって切削する切削部の断面積Aは、図4に示されるように、傾斜切断面の傾斜角を45°とすると、約0.44Hとなる。これに対して、路面厚さHに亘ってV型溝を形成する場合、切削部の断面積AはHとなる(図7参照)。このように、本路面切削装置1では、切削部の面積が約半分以下に縮小できるため、切削体積が大幅に低減でき、切削時間も大幅に改善でき、切削効率が向上する。
【0046】
次に、回転ドラム2に対する前記各ビットの配設位置について、図5に基づいて詳細に説明する。図5は、回転ドラム2を円周方向に展開した状態における1群の垂直面用ビット3及び斜面用ビット4a、4b、4c、4a’、4b’、4c’の配設図である。前記垂直面用ビット3及び斜面用ビット4は、前記回転ドラム2を円周方向に展開した状態で、各ビットの先端部が円周方向に異なる位置に配設されている。また、前記垂直面用ビット3及び斜面用ビット4は、回転ドラム2の回転方向に対して、前記垂直面用ビット3を先頭として、回転ドラム2の幅方向中央寄りの斜面用ビット4a又は4a’に後続して、4b又は4b’、4c又は4c’の順に配設されている。
【0047】
すなわち、図5に示されるように、垂直面用ビット3の先端部を通る幅方向線Rを先頭に、左側の幅方向中央寄り斜面用ビット4aの先端部を通る幅方向線R、右側の幅方向中央寄り斜面用ビット4a’を通る幅方向線Rの順に設けられ、同様にして左側の斜面用ビット4bの先端部を通る幅方向線R、右側の斜面用ビット4b’の先端部を通る幅方向線Rが続いて設けられ、最後に左側の幅方向側端寄り斜面用ビット4cの先端部を通る幅方向線R、右側の幅方向側端寄り斜面用ビット4c’の先端部を通る幅方向線Rが設けられている。そして、この1群のビット群が回転ドラム2の円周方向に連続して配設されている。
【0048】
これにより、路面切削装置1では、実質的な路面の切削部が各ビットの1点に集中するため、少ない切削負荷でも切削深さを深くすることができ、切削スピードが増加できる。また、回転ドラム2の回転方向に対して、垂直面用ビット3を先頭として、斜面用ビット4が順次両側に拡がるように配設してあるため、切削時に、切削したスライムを順次両側に押し出す効果が生じ、作業効率が向上できるようになる。
【0049】
上述の通り、本路面切削装置1によって切削した切断面は、図6に示されるように、路面の表面部分に複数の斜面用ビット4、4…によって切削された傾斜切断面が形成されるため、表面に適度に荒れた凹凸が形成されるようになる。このため、同図6(B)に示されるように、補修後の新しい路面との接合強度が増し、補修面の沈下や割れ、クラック、剥離等の問題が解決できるようになる。
【符号の説明】
【0050】
1…路面切削装置、2…回転ドラム、3…垂直面用ビット、4…斜面用ビット、30…作業車

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転ドラムと、その幅方向中央の外周部に円周方向に所定のピッチで配設された垂直面用ビットと、前記回転ドラムの外周部であって前記垂直面用ビットの両側部に所定の間隔で離隔するとともに、円周方向に所定のピッチで配設された斜面用ビットとからなる路面切削装置であって、
前記斜面用ビットは、先端部を結んだ仮想線が前記回転ドラムの幅方向中央から両側に向けて回転ドラムの回転軸方向にそれぞれ傾斜するように配設され、前記垂直面用ビットは、先端部が前記仮想線の頂点よりも突出するように配設され、前記路面切削装置で切削した舗装路面の断面形状が、表層側部分の前記斜面用ビットによって切削された断面V字状の傾斜切断面と、このV字状傾斜切断面の頂点部分から下側に連続する前記垂直面用ビットによって切削された垂直切断面とからなることを特徴とする路面切削装置。
【請求項2】
前記路面切削装置で切削した舗装路面の断面形状は、舗装路面の厚さHに対して、少なくとも2/3・Hの厚み範囲に亘って前記傾斜切断面が形成され、その下側部分に前記垂直切断面が形成されるようにしてある請求項1記載の路面切削装置。
【請求項3】
前記回転ドラムは、幅方向中央部から両側部に向けてそれぞれ直径が回転軸方向に小さくなるように形成され、
前記斜面用ビットが、各直径における回転ドラムの外周部に配設されることにより、前記斜面用ビットの先端部を結んだ仮想線が前記回転ドラムの幅方向中央部から両側に向けて回転ドラムの回転軸方向にそれぞれ傾斜するようにしてある請求項1、2いずれかに記載の路面切削装置。
【請求項4】
前記垂直面用ビット及び斜面用ビットは、前記回転ドラムを円周方向に展開した状態で、各ビットの先端部が円周方向に異なる位置に配設されている請求項1〜3いずれかに記載の路面切削装置。
【請求項5】
前記垂直面用ビット及び斜面用ビットは、前記回転ドラムの回転方向に対して、前記垂直面用ビットを先頭として、前記回転ドラムの幅方向中央寄りの斜面用ビットから順に配設されている請求項1〜4いずれかに記載の路面切削装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−1685(P2011−1685A)
【公開日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−142896(P2009−142896)
【出願日】平成21年6月16日(2009.6.16)
【出願人】(309001687)トヨミツ工業株式会社 (4)
【出願人】(509170187)有限会社齋藤組 (1)
【Fターム(参考)】