説明

路面排水帯

【課題】 新設道路に路面排水帯の支持部を支持基盤に馴染ませて当該支持部の回転及び沈みを防止できる路面排水帯を提供する。
【解決手段】 路面排水帯10は、弾性部4と、弾性部4を路面に突出させる支持部5と、支持部5の底面に取り付けられる長尺の支持強化部12とを備えるものである。支持強化部12を支持基盤である切土Qもしくは盛土Qの土面に当接させた状態で路面排水帯10の支持部5を道路に埋設する。支持部5と支持基盤の間に支持強化部12を入れることにより、路面排水帯10の支持部5を支持基盤Q,Qに馴染み、支持部5の回転及び沈みを防止することができ、路上の流水を有効に止水することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、林道、造林等作業道の流水を止水し排水する路面排水帯に関する。
【背景技術】
【0002】
林道や森林等の造林又は伐採の作業を行う際に使用する山間部の作業道は、アスファルト舗装の道路とは異なり、道路の支持基盤の切土や盛土の土面に砂利を敷いた道路である。また、その道路には側溝が設けられていない場合がある。そのため、降雨時などに大量の水が路上を流れると、路面の土砂が流失し、路面の損傷を招いていた。路面が損傷すると、車輛が林道や作業道を利用できなくなり、また、路面の修繕費が多額になるという問題があった。
【0003】
上記問題を解決するため、従来、路上の流水を止水し谷側に排水する路面排水帯(例えば、特許文献1)や造林用作業道横断溝(例えば、特許文献2)が提供されている。
【特許文献1】実公平7−43247号
【特許文献2】実用新案登録第3057844号
【0004】
特許文献1の路面排水帯を図に基づいて説明する。図5は、従来の路面排水帯を示す図である。図5(a)は路面排水帯の平面図、同図(b)は新設道路に埋設された従来の路面排水帯であって(a)のC−C断面図を表す図、同図(c)は(b)のD−D断面図である。
特許文献1の路面排水帯1は、前記弾性材料からなる板状部4とその板状部4を路上に突出させる長尺の補強部5とを備えるものである(図5(a))。道路の地中に補強部5を埋設し、その補強部5により板状部4は挟持され所定の長さの板状部4が路面上に鉛直に突出するように支持されている(図5(b),(c))。補強部5は2本の柱状体で構成され、2本の柱状体はボルト6とナット7により固定されている。
特許文献1の路面排水帯は、道路を横切るように地中に補強部5を埋設し、路上に板状の弾性材料を設けるものである。これにより、路上を流れる雨水を止水し、止水した水を道路の谷側に導くことができ、流水による路面の損傷を防止できる。
【0005】
従来、本願特許出願人は、間伐材を用いた直径約10cmの木材2本で構成した補強部5を有する特許文献1の路面排水帯1を製造販売していた。この路面排水帯1を道路に設置する場合は、道路の支持基盤(路上)に当該道路を横切るように所定の大きさの溝を掘り、その溝に支持基盤と補強部5とがしっかり馴染むようにして埋設されていた。この場合、補強部5は支持基盤に固定された状態にあり、車両が道路を通過しても路上に突出する板状部4の高さは一定に維持される。また、車両の重量を受けて支持基盤が沈下した場合でも、支持基盤の沈下とともに補強部5も均一に沈下することから、板状部4の高さは一定に維持される。このように、特許文献1の路面排水帯1は、路上の流水を有効に止水でき、路面の損傷を防止することができるものであった。
【0006】
しかし、特許文献1の路面排水帯は、道路の支持基盤上に砂利が敷かれたばかりの新設道路では、補強部5を支持基盤に馴染むように埋設することができないことから、従来新設道路には使用されていなかった。なお、新設道路とは、図5の山側の斜面Pを掘り取って平らにした切土Qと谷側の斜面に土砂を盛って平らにした盛土Qからなる土面、切土Qのみからなる土面、又は、盛土Qのみからなる土面により形成される道路の支持基盤の上に砂利が敷かれた状態の道路をいう。
【0007】
新設道路Qには、一般的には支持基盤の切土Qや盛土Qの土面に20cm程度の厚さに砂利Qが敷かれる。この新設道路Qに本願特許出願人が従来提供している路面排水帯1の補強部5を埋設する場合、補強部5は砂利Qの中に止まり、補強部5を支持基盤と馴染むように埋設することはできなかった。
【0008】
新設道路Qに埋設された路面排水帯1の補強部5は、支持基盤Q,Qと馴染むように埋設されていないため、支持基盤Q,Qに固定されていない状態にある。そのため、車両が道路Qを通過する度に、図5(c)中の矢印Xの方向に移動し砂利Qの中にめり込んで地中に沈下し、図5(c)中の矢印Yの方向に回転する。また、支持基盤の切土Qと盛土Qの土面に砂利Qが敷かれた新設道路Qでは、車両が通過する際、その車両の重量が盛土Q側の補強部5に加わり、図5(b)中の矢印Zの方向に沈下する。なお、補強部5の沈下は、切土Qのみからなる土面、又は、盛土Qのみからなる土面の上に砂利Qを敷いた新設道路においても起こる。
以上のような補強部5の沈下又は回転が生じると、道路Qの路上に突出する板状部4の長さが短くなりその高さが不均一になることから、路上の流水を有効に止水できず、路面の損傷を防止することができないという問題があった。
【0009】
特許文献2の造林用作業道横断溝は、特許文献1の路面排水帯の補強部5を2本の角材で構成しそれにアンカー鉄棒を打ち込むことにより、路面排水帯の回転を防止し、路上の流水を有効に止水できるようにしたものである。
【0010】
しかし、特許文献2の造林用作業道横断溝は、新設道路Qに埋設する場合、特許文献1の路面排水帯1と同様、その角材を支持基盤Q,Qと馴染むように埋設できないものである。そのため、車両が通過する際、その車両の重量によって角材が沈下する。したがって、特許文献2の造林用作業道横断溝を埋設した場合も、路上に突出する板状の弾性材料の高さが不均一になり、路上の流水を有効に止水し、路面の損傷を防止することができなかった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、上記問題を解決するために、新設道路に路面排水帯の支持部(従来の路面排水帯の補強部)を支持基盤に馴染ませて前記支持部の回転及び沈みを防止できる路面排水帯を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の路面排水帯は、長尺の板状の弾性部と、道路を横切る方向に埋設させるものであって前記弾性材部を路面上に突出させるように支持する長尺の支持部と、その支持部と前記道路の支持基盤との間に設ける長尺の支持強化部とを備えるようにしたものである。
【0013】
また、前記支持強化部を前記支持基盤の切土もしくは盛土の土面に設けるようにしたものである。
また、前記支持強化部を前記支持部の底面に可動自在に取り付けるようにしたものである。
また、前記支持強化部に前記支持部に用いる材料の廃材を使用するようにしたものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明は、支持部(従来の路面排水帯の補強部)と道路の支持基盤との間に長尺の支持強化部を設けるものである。これにより、支持部を道路の支持基盤にしっかりと馴染ませることができ、支持基盤に支持部を固定された状態にできるため、路面排水帯の回転及び沈下を防止することができる。また、道路の支持基盤が沈下すると支持部も均一に沈下することから、板状部4の高さは一定に維持できるため、路上の流水を有効に止水でき、路面の損傷を防止することができる。
【0015】
また、支持強化部を盛土もしくは切土の土面に設けることにより、盛土側の路面排水帯の沈下を抑制でき、また、支持部5が不均一になることを防止できる。
また、支持強化部を支持部の底面に可動自在に設けることにより、路面排水帯10の切土や盛土の構成に応じて支持強化部12を設ける方向を変更することができる。
また、支持強化部に支持部に用いる材料の廃材を使用することにより、資源の有効利用および製造コストの軽減が図られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明は、道路の流水を有効に止水し排水することを実現するものである。
【実施例1】
【0017】
本発明の路面排水帯を図に基づいて説明する。図1は、本発明の路面排水帯の平面図である。図2は、新設道路に埋設された路面排水帯であって、図1のA−A断面図を表す図である。図3は、図2のB−B断面図である。図4は、砂利を敷く前の新設道路の支持基盤上に本発明の路面排水帯を配置した状態を表す図である。
なお、図1〜図4において、図5と同一の参照番号を付する構成部は図5と同一の構成部であり、当該構成部の機能用途については説明を省略する。また、本発明に係る弾性部は図5の板状部と同一であり、本発明に係る支持部は図5の補強部と同一である。
【0018】
本発明の路面排水帯10は、弾性部4と、支持部5と、長尺の支持強化部12とを備えるものである(図1)。支持強化部12は、支持部5の底面に当該支持部5と交差するようにボルトとナットからなる固定手段14によって取り付けられている(図1及び図2)。
路面排水帯10は、新設道路の支持基盤の切土Q、盛土Qの土面に支持強化部12を当接させた状態で埋設するものである(図2及び図3)。即ち、本発明の路面排水帯10は、支持部5と道路の支持基盤Q,Qとの間に長尺の支持強化部12を設けるものである。新設道路Qに埋設される支持部5および支持強化部12の高さは、切土Q、盛土Qの土面に敷かれる砂利Qの厚さ(高さ)と同じになるように設定されている。
【0019】
支持強化部12を支持部5と道路の支持基盤Q,Qとの間に設けることにより、支持部5が新設道路Qの砂利Qの中に埋設されても、支持部5を支持強化部12を介して支持基盤Q,Qにしっかりと馴染ませることができ、支持部5は支持基盤Q,Qによって固定された状態になる。これにより、車両が道路Qを通過する度に加わる図5(c)中の矢印Xの方向の力によって支持部5が砂利Qの中にめり込むことや、図5(c)中の矢印Yの方向の力によって支持部5が回転することを防止することができる。
【0020】
以上のように、支持部5と道路の支持基盤Q,Qとの間に長尺の支持強化部12を設けることにより、支持部5を支持強化部12を介して支持基盤Q,Qに馴染ませ固定することができる。すなわち、支持部5と道路の支持基盤Q,Qとが一体に構成された状態になるため、車両が道路Qを通過しても路上に突出する弾性部4の高さは一定に維持される。また、車両の重量を受けて支持基盤が沈下した場合でも、支持基盤の沈下とともに支持部5も均一に沈下することから、弾性部4の高さは一定に維持される。本発明によると、弾性部4の高さを一定に維持できることから、路上の流水を有効に止水でき、路面の損傷を防止することができる。
【0021】
また、前記支持強化部12は、切土Qもしくは盛土Qの土面に設け、図4の支持強化部12aのように切土Qおよび盛土Qの両土面に渡って設けない。これにより、車両が通過する際、その車両重量により盛土Q側の支持部5に加わる図5(b)中の矢印Zの方向の力によって盛土側の路面排水帯10が沈下することを抑制でき、また、支持部5が不均一になることを防止できる。
【0022】
前記支持部5の底面に前記支持強化部12を可動自在に取り付ける(図1及び図4)。前記支持強化部12を支持基盤の切土Qもしくは盛土Qの土面に設ける場合、路面排水帯10の切土や盛土の構成に応じて支持強化部12を設ける方向を変更する必要がある。支持強化部を可動自在に設けることにより、例えば、図4の切土Qおよび盛土Qの土面に渡って設けられた前記支持強化部12aを盛土Qの土面にのみ当接する位置(支持強化部12bの位置)に容易に変更することができる。
なお、図1〜図4の路面排水帯10では、前記支持強化部12と支持部5とを1本のボルトとナットから構成される取付手段を用いて、前記支持強化部12は支持部5に可動自在に設けられている。但し、前記支持強化部12の取付手段は上記ボルトとナットに限るものではない。
【0023】
本発明において前記支持強化部12は、支持部5に2本以上取り付けることが好ましい。また、切土Q、盛土Qの土質に応じて本数や長さを調整する。
【0024】
従来、本願特許出願人は、支持部に間伐材を用いた路面排水帯を製造販売している。その路面排水帯のタイプには、支持部の長さが2m、3m、4mのものがあるが、上記3mのタイプの路面排水帯の製造工程で1mの廃材が生じていた。本発明では、この廃材を支持強化部としてそのまま利用することができるため、産業廃棄物の利用が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の路面排水帯の平面図である。
【図2】新設道路に埋設された路面排水帯であって、図1のA−A断面図を表す図である。
【図3】図2のB−B断面図である。
【図4】砂利を敷く前の新設道路の支持基盤上に本発明の路面排水帯を配置した状態を表す図である。
【図5】図5は、従来の路面排水帯を示す図であり、図5(a)は路面排水帯の平面図、同図(b)は新設道路に埋設された路面排水帯であって(a)のC−C断面図を表す図、同図(c)は(b)のD−D断面図である。
【符号の説明】
【0026】
4 弾性部
5 支持部
10 路面排水帯
12 支持強化部
,Q 支持基盤
切土
盛土

【特許請求の範囲】
【請求項1】
長尺の板状の弾性部と、道路を横切る方向に埋設させるものであって前記弾性材部を路面上に突出させるように支持する長尺の支持部と、その支持部と前記道路の支持基盤との間に設ける長尺の支持強化部とを備えることを特徴とする路面排水帯。
【請求項2】
前記支持強化部を前記支持基盤の切土もしくは盛土の土面に設けることを特徴とする請求項1記載の路面排水帯。
【請求項3】
前記支持強化部を前記支持部の底面に可動自在に取り付けることを特徴とする請求項1記載の路面排水帯。
【請求項4】
前記支持強化部に前記支持部に用いる材料の廃材を使用することを特徴とする請求項1記載の路面排水帯。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−249829(P2009−249829A)
【公開日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−95511(P2008−95511)
【出願日】平成20年4月1日(2008.4.1)
【特許番号】特許第4187781号(P4187781)
【特許公報発行日】平成20年11月26日(2008.11.26)
【出願人】(502261598)財団法人林野弘済会 (1)
【Fターム(参考)】