説明

踏切障害物検知装置、及び障害物検知方法

【課題】踏切事故を効果的に防止し得る低コストの踏切障害物検知装置、及び障害物検知方法を提供する。
【解決手段】踏切障害物検知装置は、入口側無線通信部11と、出口側無線通信部12と、検知部とを含み、電子マネー端末装置2を有する人20を検知する。入口側無線通信部11と出口側無線通信部12は、電子マネー端末装置2と無線通信可能であり、踏切道5の入口と出口にそれぞれ設置されている。検知部は、入口側無線通信部11と電子マネー端末装置2の通信に基づいて、人20の踏切道5への進入を検知し、出口側無線通信部12と電子マネー端末装置2の通信に基づいて、人20の踏切道5からの進出を検知する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、列車接近時に踏切道内に存在する人、及び自動車などの車両を検知する踏切障害物検知装置、及び障害物検知方法に関する。
【背景技術】
【0002】
踏切障害物検知装置は、遮断中の踏切道内に取り残された人、及び自動車などの車両を検知し、特殊信号発光器を発光させることによって、該踏切に接近中の列車の運転士に危険を通知するものである。
【0003】
踏切障害物検知装置には、光、ループコイル、あるいはレーザーを利用する検知方式がある。光を利用する場合、雨や雪などによる乱反射に起因する誤検知の問題があり、また、ループコイルを利用する場合、磁力の検知感度に限界があるため、自動車などの大型の金属体を検知できても、自転車や車椅子などの小型の金属体を検知できないという問題がある。したがって、これらの方式は、踏切事故を効果的に防止し得る程度には至っていない。
【0004】
さらに、特許文献1に開示されているように、レーザーを利用する場合、高価な送受信用の素子が必要となるため、設備コストが大きな問題となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−42724号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、踏切事故を効果的に防止し得る低コストの踏切障害物検知装置、及び障害物検知方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決するため、本発明に係る踏切障害物検知装置は、入口側無線通信部と、出口側無線通信部と、検知部とを含み、電子マネー端末装置を所持する人を検知する。
【0008】
前記入口側無線通信部と前記出口側無線通信部は、前記電子マネー端末装置と無線通信可能であり、踏切道の入口と出口にそれぞれ設置されている。
【0009】
前記検知部は、前記入口側無線通信部と前記電子マネー端末装置の通信に基づいて、人の前記踏切道への進入を検知し、前記出口側無線通信部と前記電子マネー端末装置の通信に基づいて、人の前記踏切道からの進出を検知する。
【0010】
本発明に係る踏切障害物検知装置は、踏切道の入口と出口のそれぞれに設置した無線通信部により、踏切道の入口と出口において、通過する人の進入と進出とを検知することができる。この検知は、人が所持する電子マネー端末装置と該無線通信部の通信において、例えば、所定の認証処理が完了したことによりなされる。
【0011】
そして、本発明に係る踏切障害物検知装置は、列車接近が通知されたときに、上記進入の検知結果と、上記進出の検知結果とを照合することによって、踏切道に取り残された人を確実に検知することができる。このとき、該照合にあたっては、電子マネー端末装置の固有情報である固有番号などを利用することができる。
【0012】
本発明に係る踏切障害物検知装置は、電子マネー端末装置との通信を利用するため、検知にあたって天候の影響を受けない。この電子マネー端末装置としては、Suica(登録商標、以下同じ)やPASMO(登録商標、以下同じ)などのNFC(Near Field Communication、近距離無線通信)技術を利用した非接触式ICカード乗車券を採用すると好ましい。この種のICカードの発行数は今や5000万枚を超えているため、本発明に係る踏切障害物検知装置は、使用が容易な汎用技術を利用して、安価な装置構成とすることができる。
【0013】
また、本発明に係る障害物検知方法は、電子マネー端末装置を有し、踏切道内に存在する人を検知する方法である。
【0014】
まず、前記電子マネー端末装置と無線通信可能な無線通信装置を、前記踏切道の入口と出口のそれぞれに設置しておく。
【0015】
そして、前記入口側の前記無線通信装置と前記電子マネー端末装置の通信に基づいて、人の前記踏切道への進入を検知するとともに、前記出口側の前記無線通信装置と前記電子マネー端末装置の通信に基づいて、人の前記踏切道からの進出を検知する。
【0016】
本発明に係る障害物検知方法は、実質的に、上述した本発明に係る踏切障害物検知装置と同様の構成を備えるため、これと同様の作用効果を奏する。
【発明の効果】
【0017】
以上述べたように、本発明によれば、踏切事故を効果的に防止し得る低コストの踏切障害物検知装置、及び障害物検知方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明に係る踏切障害物検知装置を適用した踏切の外観を、列車往来方向から見て概略的に表した図である。
【図2】本発明に係る踏切障害物検知装置の構成図である。
【図3】電子マネー端末装置の認証処理を表したラダーチャートである。
【図4】進入検知部、及び進出検知部の処理を表すフローチャートである。
【図5】障害物検知部の処理を表すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1は、本発明に係る踏切障害物検知装置を適用した踏切の外観を、列車の往来方向から見て概略的に表した図である。本発明に係る踏切障害物検知装置は、入口側無線通信部11と、出口側無線通信部12と、検知部とを含み、電子マネー端末装置2を所持する人20を検知する。なお、検知部は、図1に示されていないが、例えば、当該踏切の近傍に設置された器具箱の中に設けられているものとする。
【0020】
電子マネー端末装置2は、例えばSuicaやPASMOなどに代表される非接触式ICカード乗車券、これと同等の機能を備えるモバイルSuica(登録商標)などに対応する携帯型端末装置(携帯電話機など)、あるいはnanaco(登録商標)などの他の電子マネーカードである。本実施形態では、この種の電子マネー端末装置2を所持する通行者を対象とした代表的な適用例を挙げているが、本発明に係る踏切障害物検知装置は、これに限定されず、自動車、バイク、自転車、または車いす(電動車いす含む)などに乗った、電子マネー端末装置2の所持者も対象に含んでいる。
【0021】
踏切障害物検知装置は、上述した既存のNFC技術を利用し、無線通信部11,12による電子マネー端末装置2の認証によって、踏切道5の入口におけるチェックイン処理と出口におけるチェックアウト処理を実行することによって踏切事故を防止する。
【0022】
入口側無線通信部11は、踏切道5の入口側ゲート開閉装置31に設けられ、出口側無線通信部12は、踏切道5の出口側ゲート開閉装置32に設けられている。具体的には、ゲート開閉装置31,32は、駅の自動改札機のように開閉可能なゲート部30を備えることにより通行を規制するものであって、無線通信部11,12は、自動改札機のタッチセンサ部に相当するものである。
【0023】
また、検知対象が自動車に乗った人である場合、このようなゲート開閉装置31,32に代えて、周知の遮断機を用いて通行を規制するとともに、自動車に乗ったまま、人が電子マネー端末装置2を接触、または近接できる配置態様で無線通信部11,12を別に設けると好ましい。
【0024】
無線通信部11,12は、電子マネー端末装置2を、無線通信により認証することができる。係る無線通信は、国際標準規格「ISO/IEC 18092」により規定される13.56MHzの周波数帯を使用した近距離無線通信方式(上記NFC)に基づいて行われる。このため、無線通信部11,12は、広く普及した技術の恩恵によって、多種の電子マネー端末装置2に対応でき、低コストに構成することができる。
【0025】
踏切障害物検知は、この技術による、踏切道5の入口、及び出口における2回の認証に基づいて行われる。すなわち、検知部は、入口側無線通信部11と電子マネー端末装置2の通信に基づいて、人20の踏切道5への進入を検知し、出口側無線通信部12と電子マネー端末装置2の通信に基づいて、人20の踏切道5からの進出を検知する。そして、踏切障害物検知装置は、列車の接近が通知されたときに、検知部が、踏切道5への進入を検知した人について、踏切道5からの進出を検知していない場合、障害物検知信号を出力する。
【0026】
本実施形態の踏切障害物検知装置は、さらに、ゲート開閉装置31,32のゲート部30が通常遮断状態にあることを前提として、上記の認証が行われるごとにゲート部30の該遮断状態の解除制御する。具体的に述べると、踏切道5を通過しようとする人20は、まず、入口で電子マネー端末装置2を入口側無線通信部11に接触、あるいは近接させる。このとき、入口側無線通信部11により電子マネー端末装置2が認証される。そして、該認証が完了すると、入口側ゲート開閉装置31はゲート部30を遮断位置(符号30が示す実線を参照)から開放位置(符号30が示す点線を参照)にする。入口側ゲート開閉装置31は、赤外線センサなどの検知手段33により人20の通過を検知すると、ゲート部30を遮断位置にする。ただし、列車接近時においては、入口側ゲート開閉装置31は、踏切道5に人20が進入しないように、該認証がなされてもゲート部30を遮断位置に保持する。
【0027】
こうして踏切道5に進入した人20は、出口まで前進(符号Dの矢印を参照)し、電子マネー端末装置2を出口側無線通信部12に接触、あるいは近接させる。このとき、出口側無線通信部12により電子マネー端末装置2が認証される。そして、該認証が完了すると、出口側ゲート開閉装置32はゲート部30を遮断位置(符号30が示す実線を参照)から開放位置(符号30が示す点線を参照)にする。これにより、人20は踏切道5から進出する。出口側ゲート開閉装置32は、赤外線センサなどの検知手段34により人20の通過を検知すると、ゲート部30を遮断位置にする。出口側ゲート開閉装置32は、安全のために、列車接近の有無に関わらず、該認証がなされるとゲート部30を開放位置にする。
【0028】
このように、本実施形態の踏切障害物検知装置は、電子マネー端末装置2の認証を条件として、踏切道5の入口の遮断状態を解除制御するから、人20の踏切道5への不用意な進入を防止することができる。
【0029】
次に、図2を参照して、踏切障害物検知装置の構成を述べる。検知部10は、進入検知部14と、進出検知部15と、障害物検知部16と、第1及び第2記録部171,172とを含む。検知部10は、ソフトウェアとハードウェアの何れで構成してもよい。
【0030】
進入検知部14は、電気ケーブルを介して入口側無線通信部11と接続され、人20の踏切道5への進入を検知する。入口側無線通信部11は、電子マネー端末装置2の認証処理(符号C11参照)が完了すると、電子マネー端末装置2の固体識別情報である固有番号を進入検知部14に出力する(符号C12参照)。
【0031】
図3は、電子マネー端末装置2の認証処理を表したラダーチャートである。無線通信部11は、該電子マネー端末装置2に、固有番号を要求する要求信号REQを送信する。該電子マネー端末装置2は、要求信号REQに応答して、固有番号が含まれた応答信号RESを無線通信部11に送信する。これにより、無線通信部11は、応答信号RESから、該電子マネー端末装置2に対応する固有番号を得る。認証処理が完了すると、無線通信部11は、上述したように、固有番号を進入検知部14に出力する。なお、本実施形態の認証処理では、自動改札機が行うような料金徴収の処理は行なわれないが、仮に踏切道5の通過を有料とする場合、認証処理に料金徴収処理を組み合わせてもよい。
【0032】
図4には、進入検知部14の処理が示されている。進入検知部14は、認証完了後(ステップSt1)、人20が踏切道5に進入したものと認識して、固有番号を第1記録部171に記録する(ステップSt2、図2の符号C13参照)。さらに、進入検知部14は、入口側ゲート開閉装置31(厳密にはその開閉制御部)に踏切道5の入口の遮断状態を解除するための制御信号を出力する(ステップSt3、図2の符号C14参照)。なお、ステップSt2の処理とステップSt3の処理は、何れが先に実行されてもかまわない。
【0033】
入口側ゲート開閉装置31は、制御信号が入力されると、遮断かん30を開放位置にする。入口側ゲート開閉装置31は、既に述べたように、検知手段33によって人20の通過を検知すると遮断かん30を遮断位置にするが、当該検知信号を入口側ゲート開閉装置31から進入検知部14に出力することによって、進入検知部14が進入検知し、固有番号を第1記録部171に記録するようにしてもよい。
【0034】
ここまで述べた進入検知部14の処理は、進出検知部15についても同様に行われる。すなわち、出口側無線通信部12は、電気ケーブルを介して進出検知部15と接続され、図3に示される認証処理を実行することによって電子マネー端末装置2を認証して進出を検知し(図2の符号C21参照)、応答信号RESから取得した固有番号を進出検知部15に出力する(図2の符号C22参照)。そして、進出検知部15は、図4に示されるように、認証処理の完了後(ステップSt1)、該固有番号を第2記録部172に記録し(ステップSt2、図2の符号C23参照)、出口側ゲート開閉装置32(厳密にはその開閉制御部)に踏切道5の出口の遮断状態を解除するための制御信号を出力する(ステップSt3、図2の符号C24参照)。
【0035】
ここで、固有番号の記録処理に関し(ステップ3)、進入検知部14と進出検知部15は、便宜上、固有番号を別々の記録部171,172に記録するようにしているが、これらの記録部171,172は、単一のメモリデバイスや単一のハードディスク装置などによって構成しうることは言うまでもない。
【0036】
次に、列車接近時の処理について説明する。列車が、踏切から所定距離だけ手前に設置された始動点を通過すると、図2に示されるように、列車接近を通知するための接近通知信号S1が、電気ケーブルを介して検知部10に入力される。入力された接近通知信号S1は、進入検知部14と障害物検知部16とにおいて受信処理される。
【0037】
進入検知部14は、接近通知信号S1を受信すると、人20の進入を許容しないように、図4に示された進入検知処理を即時停止する。なお、列車接近時に人20の進出を妨げると事故につながるため、進出検知部15は、進入検知部14とは異なり、進出検知処理を中断することはない。
【0038】
また、無線通信部11は、ポーリングによって認証処理を繰り返して行うことができ、列車通過後でも電子マネー端末装置2を認証できるから、接近通知信号S1の入力時に認証処理を停止する必要はないが、より迅速な進入検知処理の停止、あるいは処理のより確実な中断のために、進入検知部14から無線通信部11に停止信号を出力することによって、これを停止させてもよい。
【0039】
一方、障害物検知部16は、接近通知信号S1の受信を契機として、図5に示されるような障害物の検知処理を行なう。障害物検知部16は、接近通知信号S1を受信すると(ステップSt11)、まず、第1記録部171と第2記録部171とから全ての固有番号を読み出す(ステップSt12,St13、図2の符号C15,C25参照)。ここで、ステップSt12の処理とSt13の処理は、何れが先に実行されてもかまわないものである。
【0040】
そして、障害物検知部16は、第1記録部171から取得した固有番号と、第2記録部172から取得した固有番号とを照合する(ステップSt14)。該照合処理の結果、不一致の固有番号の存在が検出された場合、すなわち、第1記録部171には記録されているが、第2記録部172には記録されていない固有番号の存在が検出された場合、障害物検知部16は、踏切道5内に取り残されている人20、つまり障害物が存在するものと認識して、障害物検知信号S2(図2参照)を出力する(ステップSt15)。言い換えれば、障害物検知部16は、列車の接近が通知されたときに、進入検知部14により踏切道5への進入を検知した人20について、進出検知部15により踏切道5からの進出を検知していない場合、障害物検知信号S2を出力するのである。
【0041】
障害物検知信号S2は、電気ケーブルを介して、踏切の手前に設置された特殊信号発光器に出力され、これを受けた特殊信号発光器が発光することにより接近中の列車に危険が通知される。もっとも、接近通知信号S1の受信の直後には、踏切道5内に残留する人20が存在することが考えられるため、図5に示された障害物検知処理は、例えば遅延時間を設けることにより、適切なタイミングで実行される必要がある。
【0042】
本実施形態において、記録部171,172に記録された固有番号の照合処理は、接近通知信号S1の受信を契機として行なわれるが、これに限定されるものではない。障害物検知部16は、接近通知信号S1の受信に先立ち、例えば、常時、一定の時間周期で該照合処理を行なってもよいし、あるいは、進入検知部14により人20の進入が検知された後、一定時間が経過したことを契機として該照合処理を行なってもよい。もっとも、照合処理には、このような固有番号でなくなくとも、電子マネー端末装置2に記録されている他の固有情報を用いてもよい。
【0043】
また、記録部171,172に記録された固有番号の消去処理は、障害物検知部16により、図5に示された障害物検知処理の終了を契機として行なってもよいし、または一定周期で行ってもよい。あるいは、進出検知部15により、人20の進出が検知されたことを契機として、随時、該検知に係る固有番号のみが消去されるようにしてもよい。
【0044】
このように、固有番号のような固有情報を記録することの副次的な効果として、特定の踏切道5を通過した人20の特定するための情報として利用できる点が挙げられる。すなわち、記録部171,172の情報は、通信ネットワークを介し、例えば犯罪捜査情報として広く利用することも可能である。
【0045】
しかしながら、このような情報の記録が好ましくないとされる場合、本発明に係る障害物検知装置は、固有情報の照合処理によらずに、単に、入口側無線通信部11が認証した電子マネー端末装置2の数を、列車接近時に、出口側無線通信部12が認証した電子マネー端末装置2の数と照合し、不一致であるときに障害物検知信号S2を出力するようにしてもよい。
【0046】
本実施形態の障害物検知装置は、踏切道5を同時に複数人が通過することがありえることを前提としているため、固有情報の記録処理、または上記のような認証数の照合処理を行うようにしたが、一度に一人だけが通過することを前提とする場合、これらの処理は不要である。すなわち、この場合は、電子マネー端末装置2の固有情報や数の取り扱いは不要であるから、図2の構成について言えば、記録部171,172は不要であり、障害物検知部16は、進入検知部14による進入検知の後、所定の時間内に進出検知部15による進出検知が行われることを監視し、該進出検知がなければ、立ち往生などで動けない人20が存在するものと認識して、列車接近の有無に関わらず、障害物検知信号S2を出力すればよい。
【0047】
また、本実施形態の障害物検知装置は、進入検知部14、及び進出検知部15による検知を、ゲート開閉装置31,32の遮断制御に連係させているが、これは必ずしも必要ではない。すなわち、このようなゲート開閉装置31,32を設けずに、周知の遮断機が遮断かんを通常上昇させ、接近通知信号S1を受けて、これを下降させればよい。もっとも、この場合、人20は遮断かんの下降が完了するまで踏切道5に進入可能であるので、進入検知部14は、例えば接近通知信号S1の受信後に遅延時間を設け、遮断かんの下降タイミングにあわせて、進入検知処理を停止する必要がある。
【0048】
これまで述べたように、本発明に係る踏切障害物検知装置は、踏切道5の入口と出口のそれぞれに設置した無線通信部11,12により、踏切道5の入口と出口において、通過する人20の進入と進出とを検知することができる。この検知は、人20が所持する電子マネー端末装置2と該無線通信部11,12の通信において、例えば、図3に示されるように、料金徴収機能を除いた認証処理が完了したことによりなされる。
【0049】
そして、本発明に係る踏切障害物検知装置は、列車接近が通知されたときに、上記進入の検知結果と、上記進出の検知結果とを照合することによって、踏切道5に取り残された人20を確実に検知することができる。このとき、比較にあたっては、電子マネー端末装置2の固有情報である固有番号などを利用することができる。
【0050】
また、本発明に係る踏切障害物検知装置は、電子マネー端末装置2との通信を利用するため、検知にあたって比較的に天候の影響を受けない。この電子マネー端末装置2としては、SuicaやPASMOなどのNFC技術を利用した非接触式ICカード乗車券を採用すると好ましい。この種のICカードの発行数は今や5000万枚を超えているため、本発明に係る踏切障害物検知装置は、使用が容易な汎用技術を利用して、安価な装置構成とすることができる。
【0051】
次に、本発明に係る障害物検知方法について、図1を参照して説明する。本発明に係る障害物検知方法は、電子マネー端末装置2を有し、踏切道5内に存在する人20を検知する方法である。
【0052】
まず、電子マネー端末装置2と無線通信可能な無線通信装置11,12を、踏切道5の入口と出口のそれぞれに設置しておく。
【0053】
そして、入口側の無線通信装置11と電子マネー端末装置2の通信に基づいて、人20の踏切道5への進入を検知するとともに、出口側の無線通信装置12と電子マネー端末装置2の通信に基づいて、人20の踏切道5からの進出を検知する。このとき、進入、及び進出の検知には、図3に示されるような認証処理が利用できる。また、既に述べたように、進入、及び進出の検知にあわせて、ゲート開閉装置31,32を制御して、踏切道5の入口、及び出口の遮断状態の解除を行なってもよい。
【0054】
このように、本発明に係る障害物検知方法によれば、図4に示されたような処理によって、列車の接近が通知されたときに、踏切道5への進入を検知した人20について、踏切道5からの進出を検知していない場合、障害物の存在を検知する。
【0055】
本発明に係る障害物検知方法は、実質的に、上述した本発明に係る踏切障害物検知装置と同様の構成を備えるため、これと同様の作用効果を奏する。
【0056】
以上、好ましい実施例を参照して本発明の内容を具体的に説明したが、本発明の基本的技術思想及び教示に基づいて、当業者であれば、種々の変形態様を採り得ることは自明である。
【符号の説明】
【0057】
10 検知部
11 入口側無線通信部
12 出口側無線通信部
2 電子マネー端末装置
20 人
5 踏切道

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入口側無線通信部と、出口側無線通信部と、検知部とを含み、電子マネー端末装置を所持する人を検知する踏切障害物検知装置であって、
前記入口側無線通信部と前記出口側無線通信部は、前記電子マネー端末装置と無線通信可能であり、踏切道の入口と出口にそれぞれ設置されており、
前記検知部は、前記入口側無線通信部と前記電子マネー端末装置の通信に基づいて、人の前記踏切道への進入を検知し、前記出口側無線通信部と前記電子マネー端末装置の通信に基づいて、人の前記踏切道からの進出を検知する、
踏切障害物検知装置。
【請求項2】
請求項1に記載された踏切障害物検知装置であって、
列車の接近が通知されたときに、前記検知部が、前記踏切道への進入を検知した人について、前記踏切道からの進出を検知していない場合、障害物検知信号を出力する、
踏切障害物検知装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載された踏切障害物検知装置であって、
前記検知部は、前記入口側無線通信部と前記電子マネー端末装置の通信に基づいて、前記踏切道の入口の遮断状態を解除するための制御信号を出力する、
踏切障害物検知装置。
【請求項4】
請求項3に記載された踏切障害物検知装置であって、
前記検知部は、前記出口側無線通信部と前記電子マネー端末装置の通信に基づいて、前記踏切道の出口の遮断状態を解除するための制御信号を出力する、
踏切障害物検知装置。
【請求項5】
電子マネー端末装置を所持し、踏切道内に存在する人を検知する障害物検知方法であって、
前記電子マネー端末装置と無線通信可能な無線通信装置を、前記踏切道の入口と出口のそれぞれに設置しておき、
前記入口側の前記無線通信装置と前記電子マネー端末装置の通信に基づいて、人の前記踏切道への進入を検知するとともに、前記出口側の前記無線通信装置と前記電子マネー端末装置の通信に基づいて、人の前記踏切道からの進出を検知する、
障害物検知方法。
【請求項6】
請求項5に記載された踏切障害物検知方法であって、
列車の接近が通知されたときに、前記踏切道への進入を検知した人について、前記踏切道からの進出を検知していない場合、障害物の存在を検知する、
踏切障害物検知方法。





【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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