説明

踏力検出装置を備えた電動車

【課題】 電動モータを補助駆動とする電動車において、補助駆動を行う踏力や手動力の検出信号が不安定であり、精度の良い検知信号と精度の良い制御ができないという問題がある。
【解決手段】 踏力や手動力の影響を受ける非接触センサと、踏力や手動力の影響をあまり受けない非接触センサとのときどきに変化する検知信号をそれぞれ使用できる信号に補償するAGC回路を設け、これらの信号から精度の良い位相差を得た上で、トルク量を算出させて補助駆動を行う信号を生成して電動モータの制御信号とする電動車とするものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、踏力検出によって電動モータの駆動を制御する電動車に関するものである。特に、電動車の搭乗者が走力を増そうと踏力を加えたとき、電動モータの補助駆動によるアシストが可能な電動車に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、自転車は搭乗者がペダルを踏み込んで走行をするが、急な坂道などではペダルを踏み込む力が搭乗者の人力では困難になり、搭乗者は自転車から降りて、ハンドルをもって押し上げていた。そこで、急な坂道などではペダルを踏み込む力が不足するとき、電池で駆動するモータで補助走行できる電動自転車が作製されるようになった。このような電動車は、電動自転車に限らず、例えば、搭乗者が車椅子を手回しで駆動を始めようとするとき、あるいは搭乗者がペダルを踏み込む踏力に応じて電動モータによる補助駆動によるアシストが必要な車の全てに関係する。
このように踏力に応じた電動モータの補助駆動を開始するために、前述の踏力を検出する必要がある。この踏力を検出する方法は、ここ十数年の間、さまざまな方法が提案されている。多くの人に受入れられるためには、低コスト化が可能であると共に、シンプルな構成の仕組みが重要になる。
【0003】
踏力の検出方法は、電動自転車の場合、搭乗者がペダルを踏み込み、ペダルクランクに回転力が与えられ、クランク軸に回転力が付与されるときの変化、すなわちクランク軸によじれが生じる際のわずかな変化などを機械的もしくは電気的に検出する構造である。
【0004】
例えば、図15に示す特許文献1には、次のような踏力の検出装置100が開示されている。すなわち、搭乗者がペダルを踏み込んで電動自転車を走行させるとき、クランク軸101に取り付けられた主スプロケットホイール102は時計方向に回転をする。このとき、後輪側の従スプロケットホイール(図示せず)は後輪に回転力を与えるチェーン(図示せず)を介して伝達する。チェーンは後輪の従スプロケットホイールを時計方向に回転させるために、あたかも主スプロケットホイール102の外周に設けられた歯車部104のそれぞれに反計方向の張力F1が加わるようになる。この張力を主スプロケットホイール102に設けたクランク軸側と外周側を結ぶ複数の肉抜き梁部105のそれぞれに変形が生じる。この肉抜き梁部の長さ方向の中央に突出平坦部105aを設け、図16に詳しく説明するように突出平坦部105aは、張力F1とF2が加わったときに突出平坦部105aの平坦の位置が低くなる変位ΔLの変形を伴う。この変位ΔLを近接センサ106で感知し、検出信号を発信したとき、コントローラ108を介して電動モータ110の電源を接続するスイッチのオン・オフ信号とする。このように搭乗者の踏力に負荷を与えない装置としては、非常に好ましいが、肉抜き梁部105に設けた突出平坦部105aを形成し、しかも適切な変位量を得るための主スプロケットホイール102を設計するには、材質の選択から形状等の選択コストが膨大化し、このような構成では実用化が困難になる。
【0005】
また、図17に示す特許文献2には、踏力の検出装置120が開示されている。図に示していないクランク軸に取り付けられた主スプロケットホイール122の回転力を、チェーン124と伝達ホイール126を介して回転可能な主軸128とこの主軸128の一部の径を細くした細径軸部128aに伝える。この主軸128と細径軸部128aとのそれぞれに回転板130,132が取り付けられている。主軸128に取り付けられた一方の回転板130は開角45°の羽根130aが90°ごとに設けられている。また、細径軸部128aに取り付けられた他方の回転板132には開角30°の羽根132aが90°ごとに設けられている。それぞれの回転板130,132は、図18に示すように羽根が重ならない位置に調整されて固定されている。それぞれの羽根130a,132aの外側には近接スイッチ134a,134bが一つの固定板134の折り曲げ部134c,134dに取り付けられている。他方の回転板132は、後輪に回転を伝達するスプロケットホイール136側であり、一方の回転板130はペダルクランク側の主スプロケットホイール122側となるため、搭乗者がペダルを踏み込んだときに、主軸128と細径軸部128aとの間にねじれが生じる。それぞれの回転板130、132は、それぞれ異なる方向に回転する。このようにねじれたままで、それぞれの回転板130,132が回転したときに、それぞれの近接スイッチがオン・オフ動作し、それぞれの信号図19(a)、(b)を発生し、ねじれが生じているときは信号に重なりが生じ、重なりに相当する信号が図19(c)に示されている。この重なりの信号が出る回路を組み込むことによりねじれのトルクを検知するようになっている。このような踏力(トルク)検知装置120は、部品点数が多くなり、クランク軸以外の主軸を設ける構成が必要であり、また、ねじれ検出のために径を細くする加工などが必要となる。このように構成が複雑化することによるコストアップと、主軸のねじれ検知設計が複雑であり、このような発明も実現性は困難なものとなる。
【0006】
さらに、特許文献3には、これらの問題点を解決した踏力の検出装置10の発明が開示されている。この踏力検出装置10を図2〜図6において、要部のみ説明する。図1に示すように、クランク軸12には、板状のフロントスプロケット15がベアリングを介して取り付けられている。このスプロケット15の外周部分に形成されているギャー部15bにはチェーン17が懸架されている。スプロケット15は、ペダル16を踏み込み、後述する駆動ホイール22を介して時計方向に回転させたときのみ、チェーンが回転するようになっている。スプロケット15のホイール部15aにおいて、ギャー部15bの形成されている径より小径の円周上には、突起部15cが形成されている。この突起部15cの一つに対向する位置に、図示していない固定板に取り付けられたセンサ19が設けられ、突起部15cと対向したときに検知してパルスが発生するようになっている。これら突起部15cが形成された径より小径の直径を有する板状の駆動ホイール22がスプロケット15に対向して、クランク軸12と一体的に回転するように固定されている。この駆動ホイール22の外周側には突起部22cが突起部15cと同ピッチで同様に形成されている。この突起部15cの一つに対向する位置に、図示していない固定板に取り付けられたセンサ24が設けられ、突起部22cと対向したときに検知してパルスが発生するようになっている。スプロケット15と駆動ホイール22とは、図3(A)、(B)で示すように弾性体26を介し、弾性体26を使用し螺子27,28で螺子止めされて連結されている。ペダル16を踏み込んだときには、ペダルクランク13を介してクランク軸12が回転し、駆動ホイール22も一体的に回転する。しかしながら、フロントスプロケット15は、後輪の負荷を背負ってチェーン17で反時計方向Dに引っ張られているために、遅延して回転する。そのためにセンサ24から発せられる突起部22cの検出信号パルスとセンサ19から発せられる突起部15cの検出信号パルスとはタイミングが一致したパルスとならずタイミングがずれたパルスとなって現れる。この状態を、図5のタイミングチャートを参照して説明する。(C)は駆動ホイール22の突起部22cを検出したセンサ24から発せられる検出信号パルスである。(D)はスプロケット15の突起部15cを検出したセンサ19から発せられる検出信号パルスである。この(C)と(D)とは、ペダルに踏力が加えられないとき、突起部22cと突起部15cが位相差のない回転をしているときの検出信号である。次に、ペダル16を踏み込んだときの信号状態の(C)は、(C1)で表してあるが、変化しない信号である。しかし、信号状態の(D)は、(D1)のように変化する。すなわち、(D1)は、時計位置で0時より例えば5°の遅延がでる。理由は上述したとおりであるが、このように遅延した時間Tの分だけ新たな信号(E)を発生するパルス発生回路が設けられている。この遅延時間(位相差)パルスをもって、増幅回路を含むコントローラで電動モータの駆動制御をする。結果的に、搭乗者がペダル16を踏み込みペダルクランク13を回転して、クランク軸12を回転する間は、電動モータを駆動することができるので、踏力に応じた電動モータの補助駆動が可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2000−131161号公報
【特許文献2】特開昭 57− 74285号公報
【特許文献3】特開2003−276672号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述した特許文献3の発明は、構成を簡素化し部品点数を少なくしたことなど優れた点が多い。しかしながら、搭乗者は千差万別で、搭乗者は電動自転車の推進力に関係する踏力のある人ない人、踏み込み速度の速い人遅い人、体重のある人ない人などに分かれる。このようなタイプの異なる搭乗者によって、クランク軸に加える回転力は種々の状態となり、それぞれ異なる。このことによって、フロントスプロケット15と駆動ホイール22に加わる力の加わり方は、種々の状態になる。この結果、クランク軸のねじれ作用のムラが大きく、踏力を検出する駆動ホイール22とフロントスプロケット15とは、単なるねじれではなく、軸方向の左右の傾きが加わるなど、電動モータの駆動を精度良く制御する最も重要な検出信号が複雑に変化していることがわかってきた。また、駆動ホイール22とフロントスプロケット15の取り付け方において、傾きがあった場合でも同様の問題が起こることがわかってきた。このような問題の認識がなかった現状において、実用化が阻まれてきた。
【0009】
この状態を図6で説明する。図5では理想状態の矩形波パルスで説明したが、特に、センサ19、24で感知して発生する波形は、正弦波のような波形になる。この正弦波のような波形から位相検出用の矩形波パルスを発生させる。センサ19、24で検知する信号は、左右のペダルを踏み込むごとに上述のような駆動ホイール22、スプロケット15に左右の傾きが加わることにより、センサ24、センサ19の固定位置と突起部22c、15cとの位置間隔が近くなったり遠くなったりすることにより、出力波形は図6(F)のFa、Fb、Fcのように電圧レベルが異なって現れる。図6(H)も(F)とは異なるが同様の状態になる。しかし、ここでは説明をわかりやすくするため、センサ19の検出信号は、変化しない固定信号とした。この単純な状態において、位相検出用の矩形波パルスは、(G)のGa、Gb、Gcのようにパルス幅が異なってしまう。この結果、図6(I)の下側に示すように、センサ19、24がそれぞれ検知した信号から作成された矩形波パルスから、立ち上がり時間の差、すなわち位相差Ia、Ib、Icが示され、図示のように変化することがわかってきた。このため、回転トルク量を精度良く検出することは困難であり、精度の良い制御信号を生成することが困難であった。 また、踏力の検出において、磁気センサを使用すると、踏力検出部分の周りに、道路に散在する砂鉄や鉄粉の微粉が付着するようになり、経時的に検出信号が安定しなくなることもわかってきた。
【0010】
そこで本発明は、センサが検知して発生した信号における電圧などに大小が生じても、検出信号の安定化を補償し、踏力検出に応じた精度のよい電動モータの駆動制御を行うことが可能な電動車を提案する。また、磁気センサを使用した非接触センサの周りに付着する砂鉄や鉄粉を除けるようにし、経時的に安定した検知信号が得られる電動車を提案する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明による踏力検知の信号によって電動モータの補助駆動を制御する電動車は、クランク軸に固定され、クランク軸と共に回転する駆動ホイールと、前記駆動ホイールに弾性体を介して連結され、クランク軸に与えられる回転力を推進用車輪に伝達するためのスプロケットと、前記スプロケットと前記駆動ホイールとのそれぞれの任意の円周軌道上に配設された複数の被検知部と、前記スプロケットと前記駆動ホイールとのそれぞれに設けられた前記被検知部の回転円周軌道と同一位置で、前記被検知部と離間してそれぞれに配設された第一と第二の非接触センサと、前記被検知部の遠近に伴い前記第一と第二の非接触センサから発生する信号をそれぞれ増幅して増幅信号を出力する第一と第二の増幅器と、 少なくとも前記スプロケットの被検知部に対応する前記第一の非接触センサの信号を増幅する第一の増幅器の出力をゲイン調整して前記第一の増幅器にフィードバックする第一のAGC回路と、前記第一のAGCからの信号をうけて増幅する前記第一の増幅器の出力信号を矩形波パルスに変換する第一の変換回路と、前記第二の増幅器の出力信号を矩形波パルスに変換する第二の変換回路と、前記第一の変換回路から出力された矩形波パルスと前記第二の変換回路とから出力された矩形波パルスとの位相差を検出する検出回路と、前記検出回路から出力された位相差に対応する信号を制御信号に変換する制御回路と、前記制御信号により電動モータの駆動を制御する駆動回路と、
を備えるものである。
また、前記駆動ホイールの被検知部に対応する前記第二の非接触センサにおいても、検出信号を増幅する前記第二の増幅器の出力をゲイン調整して対応する前記増幅器にフィードバックする第二のAGC回路をも備えるものである。
このような電動モータの補助駆動を制御する電動車は、非接触センサが検知した信号が不安定であっても安定した信号にしたうえで、矩形波パルスを生成し、位相信号を得ることにより精度の良い制御信号を生成することができるようになる。この結果、踏力に応じた電動モータの駆動を精度良く制御する電動車の提供に寄与できる。
【0012】
本発明による踏力検知の信号によって電動モータの補助駆動を制御するもう一つの電動車は、
クランク軸に固定され、クランク軸と共に回転する駆動ホイールと、前記駆動ホイールに弾性体を介して連結され、クランク軸に与えられる回転力を推進用車輪に伝達するためのスプロケットと、前記スプロケットと前記駆動ホイールとのそれぞれの任意の円周軌道上に配設された複数の被検知部と、前記スプロケットに設けられた前記被検知部の回転円周軌道と同一位置で、前記被検知部と離間して配設され、永久磁石と磁束の変化を感知するコイルと発生している磁束を打ち消す磁束発生用のコイルとを含む第一の非接触センサと、前記駆動ホイールに設けられた前記被検知部の回転円周軌道と同一位置で、前記被検知部と離間して配設され、永久磁石と磁束の変化を感知するコイルとを含む第二の非接触センサと、前記被検知部の遠近に伴い前記第一と第二の非接触センサから発生する信号をそれぞれ増幅して増幅信号を出力する第一と第二の増幅器と、 前記第一と第二の増幅器からの信号をうけて増幅するそれぞれの増幅器の出力信号を矩形波パルスに変換する第一と第二の変換回路と、前記第一の変換回路から出力された矩形波と前記第二の変換回路とから出力された矩形波との位相差を検出する検出回路と、前記検出回路から出力された位相差に対応する信号を制御信号に変換する制御回路と、前記制御信号により電動モータの駆動を制御する駆動回路と、
を備えたものである。
このように本発明では、非接触センサの構成が永久磁石と磁束の変化を感知するコイルと発生している磁束を打ち消す磁束発生用のコイルとを含むようになっているため、道路上を電動車の走行中に磁束を打ち消す磁束発生用のコイルに電流を流すことによって、非接触センサの周りに磁気的に付着した砂鉄や鉄粉などを引き付けている磁気をなくすと同時に、電動車の走行振動力を利用して払い落とすことが可能である。
【発明の効果】
【0013】
本発明は、非接触センサの検知信号に大小の変動が生じても、検出信号の安定化をはかり、踏力検出に応じた精度のよい安定的な駆動制御を行うことが可能な電動車を提供することができる。更には、磁気センサを使用した非接触センサであっても、磁気センサの周囲に付着する砂鉄や鉄粉などを取り除けるようにした電動車を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の全体構成を説明する構成概略図
【図2】本発明に関する電動自転車の踏力検出装置部分の一部断面の概略説明図。
【図3】図2に示す踏力検出装置のスプロケットと駆動ホイールとの接続部分の一例を示す部分断面図。(A)は、踏力が加えられない状態の部分拡大断面図。(B)は、踏力が加えられた状態の部分拡大断面図。
【図4】図2に示す踏力検出装置部分のみのX−X線側から見た側面図。
【図5】図2の踏力検出装置部分において、検出結果の矩形波パルス信号を示すタイミングチャート図。(C)、(D)は、踏力が加えられない状態の信号を示す図。(C1)、(D1)は、踏力が加えられた状態の信号を示す図、(E)は、(C1)、(D1)の信号の位相差から生成される信号を示す図。
【図6】本発明を適用しない非接触センサ19、24で検知したタイミングチャート図。(F)は第二の非接触センサ24で検知信号を増幅した正弦波状のパルス信号。(G)は、(F)の信号から生成された矩形波パルス信号。(H)は、第一の非接触センサ19で検知信号を増幅した正弦波状のパルス信号。(I)は、(H)の信号から生成された矩形波パルス信号。
【図7】(A)は、第一の非接触センサ19の構成概略図。(B)は、第二の非接触センサ24の構成概略図。
【図8】AGC回路の概要を説明する図。
【図9】本発明を適用した第一の非接触センサ19と第二の非接触センサ24で検知した信号を説明するタイミングチャート図。(M)は、第二の非接触センサ24の検知信号を増幅した正弦波状のパルス信号を示す図。(N)は、(M)の信号から生成された矩形状のパルス信号を示す図。(O)は、第一の非接触センサ19で検知信号を増幅した正弦波状のパルス信号を示す図。(P)は、(O)の信号から生成された矩形波パルス信号を示す図。
【図10】本発明の変換回路の基本を説明する回路の原理図。
【図11】位相差検出回路における概要を説明するエッジ検出の場合のタイミングチャート図。
【図12】位相差検出回路における概要を説明するセンター検出の場合のタイミングチャート図。
【図13】第一の非接触センサ19に永久磁石の磁束を打ち消す磁束発生用のコイルを動作させる回路例を説明する概要図。
【図14】第一の非接触センサ19に永久磁石の磁束を打ち消す磁束発生用のコイルと検知用のコイルを兼ねた場合の回路例を説明する概要図。
【図15】特許文献1の踏力検出装置の概要を説明する側面図。
【図16】特許文献1の踏力検出装置のフロントスプロケットの肉抜き梁部の突出平坦部の部分断面図。(A)は踏力を加えていないときの突出平坦部の部分拡大断面図である。(B)は踏力が加えられたときの突出平坦部の部分拡大断面図である。
【図17】特許文献2の踏力検出装置の概要を示す要部のみの正面図。
【図18】特許文献2の踏力検出装置の二つの回転板のみの位置関係を示す概要側面図。
【図19】特許文献2の踏力検出装置の二つの回転板が検知した信号を示すタイミングチャート図。(a)は一方の回転板が検知したパルス信号を示す図、(b)は他方の回転板が検知したパルス信号を示す図、(c)はこれらの信号の重なり合う時間のパルス信号を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に、図1を参照して本発明に関連する構成概要を説明したうえで、図2〜図14を使用して個々の部分を説明していく。 まず、図1を参照して説明する。本発明の構成の要部である踏力検出装置部分10の概略を説明する。踏力検出部分の一つは、電動自転車のクランク軸12にベアリングを介して取り付けられたスプロケット15の外周部分の同心円軌道上に形成された被検知部15cとこの被検知部15cに非接触で対向する第一の非接触センサ19からなる部分を具備する。したがって、スプロケット15は、クランク軸12の回転力が直接伝わらない構造になっている。踏力検出部分の他の一つは、クランク軸に取り付けられ、スプロケット15と一体的になるように構成された駆動ホイール22の外周部分に形成された被検知部22cとこの被検知部22cに非接触で対向する第二の非接触センサ24からなる部分を具備する。踏力の検出は、これらの非接触センサ19、24の検出信号に基づいて生成される。 なお、クランク軸12の回転力は、クランク軸12の回転と一体に回転する駆動ホイール22から接続部分の弾性体26を介してスプロケット15に伝達される。このスプロケット15の回転力は、チェ−ン17に伝わり推進用の後車輪に伝達され、電動自転車が前進するようになる。
【0016】
次に、非接触センサ19、24の検出信号は非常に小さな正弦波のような信号であるため、増幅器を通じて必要な大きさの電圧に増幅される。 しかしながら、非接触センサ19、24の検出信号は、単に増幅したのみでは安定した信号が得られないので、オートマチックゲインコントロール回路(以下、「AGC回路」という。)でゲインを整えたうえで次の段で使用可能な信号とする。 AGC回路通過した信号を増幅器で増幅して出力された信号は、変換回路を通じて矩形波パルスに変換される。これらは非接触センサ19と24の検出信号は、別々の回路で行われる。このようにして非接触センサ19と24の検出信号を別々の矩形波パルス信号に変換したうえで次の位相差の検出回路へそれぞれ出力する。 非接触センサ19と24の検出信号の変換されたそれぞれの矩形波パルス信号は、位相が常に変化して出力される。この位相を次の段で位相差として検出して出力する。 位相差検出回路で検出された信号に基づき制御信号を生成する制御回路に信号が送られる。この制御回路からの制御信号を応じて電動モータ45を駆動する。すなわち、制御回路の制御信号は、駆動回路の電力スイッチをオン・オフすると同時に制御信号の大小によって電力量も可変する構成になっている。 以上の構成によって、踏力検出の信号に応じた電動モータの補助駆動が可能な電動車とすることができる。
【0017】
この踏力検出装置部分10を特許文献3の説明と一部重複するが、図2ないし図4で詳細に説明する。
まず、パイプ状のシートチューブ11の端部11aがクランク軸12のクランク軸受になっている。クランク軸12の一方の端部には軸を中心にして時計の針のように回転する一方のペダルクランク13の一端13aが螺子などでクランク軸12の一方の端部に取り付けられている。図示していないが、同様にクランク軸12の他方の端部には、ペダルクランク14の一端も同様に螺子などで取り付けられている。図2に示すように、ペダルクランク13の他端13bにはペダル16が回転自在に取り付けられている。
ペダルクランク13とシートチューブ11の間のクランク軸12には、板状のフロントスプロケット15がベアリングを介して回転自在に取り付けられている。なお、駆動ホイール22がクランク軸12に頑丈に固定され、弾性体26を介してスプロケット15が支えられる構造であれば、スプロケット15はクランク軸にベアリングを介して固定する必要はない。スプロケット15の外周部分に形成されているギャー部15bにはチェーン17が、図示されていないリヤースプロケットの外周のギャー部15bとの間に懸架されている。スプロケット15は、ペダル16を踏み込んでスプロケット15を時計方向に回転させたときのみ、チェーンが回転するようになっている。すなわち、スプロケット15を反時計方向に回転させたとき、後輪側のリヤースプロケット(図示せず)に一方向ラチェットが介在しているので、チェーン17は空回り回転し、回動力が加わらないようになっている。場合によって、スプロケット15を反時計方向に回転させたとき、制動がかかりペダル16は時計方向にしか回転することができないようにすることも可能である。
【0018】
スプロケット15のホイール部15aにおいて、ギャー部15bの形成されている径より小径の円周軌道上には、被検知部となる突起部15cがギャー部15bの歯の形成ピッチと同ピッチで形成されている。この突起部15cの円周径であって、突起部15cの一つに対向する円周軌道上の位置に、図示していない固定板に取り付けられた第一の非接触センサ19が取り付けられている。この第一の非接触センサ19は、突起部15cが対向するように近づいたときに検知して正弦波状の信号の最大値が発生するようになっている。この突起部15cが等間隔で形成されていると、正弦波状の信号が連続し、交流正弦波形のような検出信号となって現れる。スプロケット15に対向するシートチューブ11側に、突起部15cが形成された径より小径の直径を有する板状の駆動ホイール22がクランク軸12と一体的に回転するように固定されている。この駆動ホイール22の外周側の円周軌道上には被検知部となる突起部22cが突起部15cと同ピッチで同様に形成されている。この突起部15cの一つに対向する円周軌道上の位置に、図示していない固定板に取り付けられた第二の非接触センサ24が設けられ、突起部22cと対向するように近づいたときに最大検知信号を発生するような正弦波状の信号が発生するようになっている。突起部22cの遠近に伴もなって連続した信号になる。なお、この駆動ホイール22の取り付け位置は、シートチューブ11側に近い方が好ましく、第二の非接触センサ24の検出信号が安定する。上述の突起部15cと突起部22cの形成位置は、クランク軸の同心円の円周軌道上であることが好ましく、同じ中心角の位置に配列形成されていることが重要である。突起部15cと突起部15c同士の間隔が不揃いでも、同じように突起部22cと突起部22cとの間隔が、同様な不揃いの間隔位置になっていれば、本発明の検知信号を得る目的は達成できる。いずれにしても突起部15cと突起部22cの形成位置は、スプロケット15や駆動ホイール22の同心円軌道上で等間隔に設けられていることが好ましい。しかもギヤー部15bの歯の形成ピッチと同ピッチで形成されていれば、さらに好ましい。
【0019】
フロントスプロケット15と駆動ホイール22とは、図3(A)、(B)で示すように硬質ゴム部材のような弾性体26を介し、弾性体26に形成した螺子穴にスプロケット15と駆動ホイール22の外側から螺子27,28で螺子止めされて連結されている。弾性体26の材質は、クランク軸12に回転力が加わりクランク軸12を通じて駆動ホイール22とスプロケット15とに回転差を生じたとき例えば2°〜5°程度の回転差が生じればよく、既製の駆動ベルトの一般的な材質より少し変形力が大きなものであれば、長期間の使用ができる。これら螺子27,28の螺子止め箇所は、駆動ホイール22の突起部22cが形成されている径よりも一回り小さな径の中心角90°おきの4箇所に形成されていれば十分な構成となる。必要に応じて形成箇所を増減すればよい。ペダル16を踏み込んだときには、ペダルクランク13を介してクランク軸12が回転し、駆動ホイール22も一体的に回転する。しかしながら、駆動ホイール22に弾性体26を介して回転するフロントスプロケット15は、図4(B)に示されているように推進用車輪である後輪の負荷を背負ってチェーン17で反時計方向Dに引っ張られているために、遅延して回転する。そのために第二の非接触センサ24から発せられる突起部22cの検出信号の正弦波状の信号と第一の非接触センサ19から発せられる突起部15cの検出信号である正弦波状の信号は同じタイミングの信号波形とならずタイミングが遅延した正弦波状の信号となって現れる。
【0020】
この状態を、図5のタイミングチャート図を参照して説明する。図5は実際の信号を変換して作られた矩形波パルス信号になっているが、正弦波状のパルス信号に置き換えたものとして説明する。(C)の検知信号は駆動ホイール22の突起部22cを検出した第二の非接触センサ24から発せられる検出信号の正弦波状のパルスである。(D)の検知信号はスプロケット15の突起部15cを検出した第一の非接触センサ19から発せられる正弦波状のパルス信号である。(C)の正弦波状パルスと(D)正弦波状パルスとは、ペダルに踏力が加えられないとき、突起部22cと突起部15cが同じ回転位置で回転しているときの検出信号である。次に、ペダル16を踏み込んだときの信号状態は、(C1)で表してあるが、(C)と同様の変化しない信号である。しかし、信号状態の(D1)は、T時間遅延して正弦波状パルスが現れる。遅延する理由は上述したとおりであるが、このように遅延した時間の分だけを検出して、信号処理することについては、後述する。結果的に、搭乗者がペダル16を踏み込みペダルクランク13、14を回転し、クランク軸12を回転する間は、踏力に応じた電動モータの補助駆動が可能となる。なお、弾性体26は、硬質ゴム部材の例で説明したが、スプロケット15に負荷が生じたとき、クランク軸の回転に逆らってスプロケット15の回転に多少の遅れが生じるような駆動ホイール22との間の機械的結合関係であればよく、硬質ゴム材に代えてバネ部材の結合でも良い。踏力が加わらないときには、初期の状態に復帰し、踏力が加わったとき、その踏力に対応する遅延による回転差が生じ、しかもクランク軸12の回転力が伝達できるような機構になっていれば良いのである。バネ部材は、ゼンマイ形状、スプリング形状でも棒形状でも良い。
【0021】
なお、駆動ホイール22の突出部22cの径より小さな径の一箇所に突出部22dと、この突出部22dに対向できる円周軌道上の位置に第二の非接触センサ24と同様の第三の非接触センサ25が、図示していない固定板に取り付けられている。図2ではこの第三の非接触センサ25と突出部22dとは、ペダルクランク14が時計の位置で示す30分(中心角180°進み)の位置に設けてある。一方のペダルクランク13の位置が垂直になる時計で示す12時(中心角0°)の位置に設けても良い。上述のペダルクランク13または14の位置と同期する位置に非接触センサ25と突出部22dとが設けられておれば良く、ペダルクランク13または14の位置が垂直の状態、すなわち時計位置で12時(中心角0°)であることを相対的に確認できるようになっていれば良い。
このように設けておくことにより、搭乗者がペダル16を踏み込んだとき、ペダルクランク13または14の位置が12時(中心角0°)の位置であると、ペダル16を踏み込むときの力が出しにくく、少し踏み込んだ位置で電動モータの補助駆動力を上げる制御が可能になる。例えば、ペダルクランク13または14の位置が、時計位置で12時(0°)の位置から10分(中心角60°進み)の位置近辺まで、力を入れにくくこの区間に補助駆動力を上げることできるようになる。この状態は半周期ごと必要になる。このように第三の非接触センサ25と突出部22dとを設けることで新しい観点から搭乗者のための補助駆動が可能になる。
【0022】
次に、非接触センサ19と24の概略構成を図7(A)と(B)を参照して説明する。非磁性の容器に固定磁気バイアスを作る永久磁石32と、金属などが近づくと磁束の変化量に伴う電圧を発生する検出用コイル34とが収納され、接着剤などで固定された構成になっている。第一の非接触センサ19として示した例は、さらに永久磁石32と検出用コイル34で発生する磁束を一時的に打ち消すための磁束発生用のコイル35が収納されている。第二の非接触センサ24には、コイル35が収納されていない例で示したが、必要に応じてコイル35が収納された非接触センサを使用する。なお、それぞれのコイル34,35は、外部回路に接続用の端子が付設されている。
【0023】
非接触センサ19と24は、金属が近づいたとき、磁気的に電気量の変化をする磁気型センサの例で被検知物を突起として感知する例で示した。スプロケット15や駆動ホイール22に取り付けた被検知物とこの被検知物を検知する組み合わせは、特に限定するものではない。例えば、磁界を利用するセンサでも高周波発信型がある。この場合の被検知部は、非磁性金属が使用される。あるいは電界を利用する静電容量型でも良く、被検知部は、本発の態様と同様の場合と、樹脂などが使用される。あるいは赤外線検出センサは、デュアルタイプが好ましく、被検知部は簡単な熱源になるものを配設する。ホール素子を使用したセンサなどを利用することが可能である。このセンサの被検知部は、磁石が使用される。いづれにしても、この基本は、スプロケット15と駆動ホイール22を利用したねじれの回転トルクを検知できれ使用が可能である。しかし、コストを抑えて設置することを考慮すると、図7で示す磁気センサの方式が推奨できる。
【0024】
次に、非接触センサ19と24からの検出信号は、それぞれの増幅器で増幅するが、検出信号が不安定であり、単に増幅した信号では次段の信号として使用ができないことを先に説明した。このため増幅器の出力信号は、AGC回路を通してゲインを調整したうえで、増幅器に帰還する回路が構成されていることも既に説明した。このAGC回路自体は、新しいものではないが、電動車における本発明の踏力検出装置と組み合わせることが新たな発見であり、実用化をあきらめていた発明をよみがえらせることに成功したのである。AGC回路の原理を図8に基づいて説明する。例えば、(J)に示すような入力信号は、このままだと図6に基づいて説明したような位相差検出が安定してできない。このため、(K)に示すように入力信号の電圧レベルに反比例するゲイン電圧を発生させて、入力信号に合成させることにより、(L)に示すようなピーク電圧を一定にした補正電圧に整えて、補正後の入力信号として増幅器に戻すことにより、次段の回路で使用ができる信号となる。これがAGC回路の働きである。
【0025】
次に、図9を参照して補正増幅された入力信号を受けた変換回路の説明をする。変換回路では正弦波状の補正増幅された入力信号を受け、まず、第1段目で一定レベル以下の電圧をカットする回路を用いて一定レベル以上の電圧信号にする。そうすることにより断続的に正弦波状のパルス信号FaやFdとして得ることができる。その信号の一つを取り出して説明する。まず、第二の非接触センサ24で感知し、AGC回路を経た増幅信号は、(M)に示されている。また、第一の非接触センサ19で感知した信号は、同様に(O)に示されている。これらの信号は、一つの時間軸で示してあるので、第二の非接触センサ24で感知した信号を基準とすると、ペダル16に踏力が加えられている間は、時間軸上で第一の非接触センサ19が感知した信号に遅れが発生し、その遅延の状態を一例として示した。
【0026】
図9の(M)と(O)の信号のままでは、遅延時間がどの程度あるのか定量しがたいので、矩形波パルス信号の生成の仕方を図9と図10を参照して原理的に説明する。図10に示したIC化されている比較器と呼ばれる回路を用いることで矩形波パルスを作ることが可能になる。この原理は、正弦波状のパルス信号Fa、Fdに基準電位以上になる電圧の時間に応じて一定電圧を発生させる信号を生成させることができる。図9の(N)と(P)で示すように矩形波パルス信号Ga、Gdが生成できる。これは図10に示す比較器回路IC素子のプラス端子に正弦波状のパルス信号を入力させる。マイナス端子は、矩形波の電位を決定する基準電位を接地間に接続する。そうすると、出力端子から基準電圧以上になる時間に相当する矩形波パルス信号Ga、Gdを得ることができ、この矩形波パルス信号Ga、Gdを次段の位相差検知回路に送出する。
【0027】
次に、位相差検知回路の説明を、図9、図11(Q)、(R)および図12(Q1)、(R1)を用いて説明する。位相差検知回路では、矩形波パルス信号Ga、Gdを用いて、例えば矩形波パルス信号Gaと矩形波パルス信号Gdのそれぞれの立ち上がり時間の差を用いて、図9に示すような位相差Iaを検出することができる。
【0028】
この点について、図11と図12を用いてもう少し詳細に説明する。
まず、前段の変換回路で生成された矩形波パルス信号を用いて、位相差の検知信号を生成する位相差検出回路を説明する。図11に示すようなエッジ検出の場合、矩形波パルス信号における第一のGa1と続いて検知される第二のGa2のそれぞれの立ち上がりtA1、tA2および矩形波パルス信号における第一のGd1と続いて検知される第二のGd2のそれぞれの立ち上がりtB1およびtB2を時間軸でそれぞれのエッジ検出を行う。このエッジ検出で得られたデータからマイクロコンピュータを活用し、インターバルタイマーとして使用してtA1からtB1までの時間あるいはtA2からtB2までの時間、すなわち位相差を時間で測定し、信号とする方法で得ることができる。
【0029】
次に、上記のデータからトルク量をマイクロコンピュータの活用により求める。すなわち、(Q)の矩形波パルス信号Gd1の立ち上がりtA1から矩形波パルス信号Ga2の立ち上がりtA2の時間T1と、tA2から(R)の矩形波パルス信号Gd2の立ち上がりtB2までの時間T2(位相差)を使用し、T1/T2をマイクロコンピュータで計算させ、トルク量τを求める。
次に、図12において、センター検出の例で位相差とトルク量を求める場合の説明をする。考え方はエッジ検出の場合と同様であるが、データの取り方が少し複雑になる。変換回路で作成されたそれぞれの矩形波パルス信号の立ち上がり時間と立下り時間のデータをとることが必要とされる。(Q1)の矩形波パルス信号Ga1を説明すると、立ち上がり時間tA1と立下り時間tA1eから〔(tA1e―tA1)/2〕+tA1を、マイクロコンピュータを用いて計算することで、この矩形波パルス信号Ga1のセンター時間tA1cを求めることができる。同様に、各矩形波パルス信号Ga2、Gd1およびGd2のセンター時間tA2c、tB1cおよびtB2cを求める。このようにして得られたデータから位相差もトルク量もマイクロコンピュータを活用して求めることができる。
位相差は、tA1cからtB1cまでの時間あるいは時間差で求められる。同様に、tA2cからtB2cまでの時間でも求めることができる。また、tA1cからtA2cまでの時間T1とする。前段で求められたtA2cからtB2cまでの時間T2(位相差)を使用する。前述のエッジ検出の場合と同様にT1/T2をマイクロコンピュータで計算させ、トルク量τを求める。
【0030】
次に、前段の位相差検出回路で求められたトルク量のデータを用い、マイクロコンピュータを活用した制御信号を生成する制御回路の説明をする。トルク量に基づくことにより、電動モータ駆動用の制御信号を生成する。制御信号は、例えばパルスワイズモデュレーション制御、いわゆる「PWM制御」を用いる。すなわち、トルク量に基づいて電動モータの駆動を制御するデジタル信号のパルス幅を変調させる。トルク量が大きければデューティー比の大きなパルス幅にして、オンの時間を長くする。この逆にトルク量が小さければデューティー比を小さなパルス幅にして、オンの時間を短くする。デューティー比が小さければ、電動モータの回転は遅くなり、デューティー比が大きければ、電動モータの回転は速くなる。当然であるが位相差がなくトルク量が零になれば、制御信号パルスは生成されない。制御信号は発生せず、駆動回路への信号はなくなる。このようにしてトルク量に応じた制御信号を制御回路で生成する。
【0031】
次に、駆動回路について簡単に説明する。駆動回路は、前段の制御信号に基づいて例えばFETスイッチ素子などを使用することにより電動モータ駆動の電流をオン・オフする。このような駆動信号、すなわち駆動電流をオン・オフすることで電動モータの駆動を制御することができるのである。そして、電流の大小は、制御回路のデューティー比の幅に比例して駆動電流にが流れるような制御がされている。
【0032】
以上、本発明に関連する電動モータの駆動をする回路を公知の部分を含めて説明したが、本発明の要部に関する以外は、説明していないものも含むことは説明するに及ばず、それらの説明を省略する。
【0033】
次に、非接触センサの構成において、図7で説明しなかった例を図13に基づいて説明する。図7で説明した構成は、同様の番号を付してその説明を省略する。図13の態様は、第一の非接触センサ19に砂鉄、鉄粉などの金属が付着した場合、感知能力が低下することになるので、一定時間ごとあるいは一定距離ごとに制御回路で作られたスイッチング信号でFETスイッチ38を閉じて、磁束キャンセル用の電源36をコイル35に接続させることにより、永久磁石で作られるバイアス磁界の磁束と大きさが等しく逆方向の磁界を発生させる。このことにより、第一の非接触センサ19に付着した砂鉄、鉄粉などの金属を取り除くことができる。電動自転車が走行し、常に振動が与えられているので、逆方向の磁界を発生させることのみで付着した砂鉄、鉄粉などを払い落とすことが可能である。
【0034】
次に、図13の態様とは異なる態様の第一の非接触センサ19に付着した砂鉄、鉄粉などの金属を取り除く例を、図14に基づいて説明する。この態様は、先の例のコイル35を使用せず、検知用のコイル34のみで、第一の非接触センサ19に付着した砂鉄、鉄粉などの金属を取り除くことができる例である。すなわち、検知用のコイル34に一定時間ごとに制御回路で作られたスイッチング信号を与えてFETスイッチ38を閉じ、磁束キャンセル用の電源36をコイル34に接続させることにより、永久磁石で作られるバイアス磁界の磁束と大きさが等しく逆方向の磁界を発生させる。このことにより、第一の非接触センサ19に付着した砂鉄、鉄粉などの金属を取り除くことができる。動作は、図13の例と全く同様になる。このような構成により、小型で安価な非接触センサでありながら、図13の非接触センサと同様の機能を持たせることができる。
【産業上の利用可能性】
【0035】
推進用の車輪に駆動力を伝えるスプロケットを有し、踏力もしくは手動力など人力による駆動を行う力を検出して電動モータの補助駆動力を与える電動車であれば、電動車椅子、電動自転車もしくはその他の電動車であれば、本発明を十分利用が可能である。
【符号の説明】
【0036】
12:クランク軸
15:スプロケット
15c:被検知部
19:第一の非接触センサ
22:駆動ホイール
22c:被検知部
24:第二の非接触センサ
32:磁気バイアス発生用の永久磁石
34:検知用コイル
35:打ち消す磁束発生用のコイル


【特許請求の範囲】
【請求項1】
クランク軸に固定され、クランク軸と共に回転する駆動ホイールと、前記駆動ホイールに弾性体を介して連結され、クランク軸に与えられる回転力を推進用車輪に伝達するためのスプロケットと、前記スプロケットと前記駆動ホイールとのそれぞれの任意の円周軌道上に配設された複数の被検知部と、前記スプロケットと前記駆動ホイールとのそれぞれに設けられた前記被検知部の回転円周軌道と同一位置で、前記被検知部と離間してそれぞれに配設された第一と第二の非接触センサと、前記被検知部の遠近に伴い前記第一と第二の非接触センサから発生する信号をそれぞれ増幅して増幅信号を出力する第一と第二の増幅器と、 少なくとも前記スプロケットの被検知部に対応する前記第一の非接触センサの信号を増幅する前記第一の増幅器の出力をゲイン調整して前記増幅器にフィードバックする第一のAGC回路と、前記第一のAGC回路からの信号をうけて増幅する前記第一の増幅器の出力信号を矩形波に変換する第一の変換回路と、前記第二の増幅器の出力信号を矩形波パルスに変換する第二の変換回路と、前記第一の変換回路から出力された矩形波パルスと前記第二の変換回路とから出力された矩形波パルスとの位相差を検出する検出回路と、前記検出回路から出力された位相差に対応する信号を制御信号に変換する制御回路と、前記制御信号により電動モータの駆動を制御する駆動回路と、
を備えたことを特徴とする踏力検知によって電動モータの補助駆動を制御する電動車。
【請求項2】
前記請求項1に記載の電動車において、前記第二の増幅器には、第二の増幅器の出力をゲイン調整して対応する前記増幅器にフィードバックする第二のAGC回路と、前記第二のAGC回路からの信号をうけて増幅する前記第二の増幅器の出力信号を矩形波に変換する第二の変換回路と、を含むことを特徴とする踏力検知によって電動モータの補助駆動を制御する電動車。
【請求項3】
クランク軸に固定され、クランク軸と共に回転する駆動ホイールと、前記駆動ホイールに弾性体を介して連結され、クランク軸に与えられる回転力を推進用車輪に伝達するためのスプロケットと、前記スプロケットと前記駆動ホイールとのそれぞれの円周軌道上に配設された複数の被検知部と、前記スプロケットに設けられた前記被検知部の回転円周軌道と同一位置で、前記被検知部と離間して配設され、永久磁石と磁束の変化を感知するコイルと発生している磁束を打ち消す磁束発生用のコイルとを含む第一の非接触センサと、前記駆動ホイールに設けられた前記被検知部の回転円周軌道と同一位置で、前記被検知部と離間して配設され、永久磁石と磁束の変化を感知するコイルとを含む第二の非接触センサと、前記被検知部の遠近に伴い前記二つの非接触センサから発生する信号をそれぞれ増幅して増幅信号を出力する第一と第二の増幅器と、 前記第一と第二の増幅器からの信号をうけて増幅するそれぞれの増幅器の出力信号を矩形波パルスに変換する第一と第二の変換回路と、前記第一の変換回路から出力された矩形波パルスと前記第二の変換回路とから出力された矩形波パルスとの位相差を検出する検出回路と、前記検出回路から出力された位相差に対応する信号を制御信号に変換する制御回路と、前記制御信号により電動モータの駆動を制御する駆動回路と、
を備えたことを特徴とする踏力検知によって電動モータの補助駆動を制御する電動車。
【請求項4】
請求項3に記載の電動車において、第二の非接触センサは、永久磁石と磁束の変化を感知するコイルに加えて、永久磁石が発生する磁束を打ち消す磁束発生用のコイルとを含むことを特徴とする踏力検知によって電動モータの補助駆動を制御する電動車。
【請求項5】
前記請求項3および請求項4に記載の電動車において、第一および第二の非接触センサの磁束の変化を感知するコイルは、磁束の変化を感知するコイルと永久磁石が発生する磁束を打ち消す磁束発生用のコイルとを兼ねる一つのコイルであることを特徴とする踏力検知によって電動モータの補助駆動を制御する電動車。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2010−264772(P2010−264772A)
【公開日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−115145(P2009−115145)
【出願日】平成21年5月12日(2009.5.12)
【出願人】(000204284)太陽誘電株式会社 (964)
【Fターム(参考)】