説明

車両のオイル循環装置

【課題】部品点数の増加を招くことなく、トランスアクスルの熱を効率よく内燃機関を潤滑するオイルに伝達する。
【解決手段】オイルパン7により、トランスアクスル2を潤滑するオイルを循環させる第1オイル回路と内燃機関1を潤滑するオイルを循環させる第2オイル回路との一部が共有化され、それらオイル回路内を循環するオイルとして共通のオイルが用いられるため、トランスアクスル2の熱が効率よく内燃機関1を潤滑するオイルに伝達される。すなわち、トランスアクスル2の熱が同トランスアクスル2だけでなく内燃機関1も潤滑する上記共通のオイルに直接的に伝達されるため、トランスアクスル2の熱を効率よく内燃機関1を潤滑するオイルに伝達することができる。また、トランスアクスル2から上記オイルへの熱の伝達の際に熱交換器等を用いる必要はないため、上記熱の伝達を行うために新たな熱交換器を設けなくてもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両のオイル循環装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、内燃機関とトランスアクスルに設けられたモータとを原動機として搭載したハイブリッド車両が知られている。こうしたハイブリッド車両では、内燃機関の燃費改善を意図して、運転状況等に基づき走行状態を、内燃機関のみによる走行、内燃機関とモータとの両方による走行、及びモータのみによる走行などの間で切り換えるようにしている。また、ハイブリッド車両には、トランスアクスルを潤滑するオイルを循環させる第1オイル回路が設けられるとともに、内燃機関を潤滑するオイルを循環させる第2オイル回路が設けられている。
【0003】
ところで、ハイブリッド車両においては、上述したような走行状態の切り換えに関係して、運転中に内燃機関が停止するという状況が多くあって同機関での発熱が少なくなる一方、運転中にモータが駆動される状況が多くあって同モータでの発熱が多くなるという傾向がある。このため、モータが設けられたトランスアクスルを潤滑する第1オイル回路のオイルは昇温しやすくなるものの、内燃機関を潤滑する第2オイル回路のオイルは昇温しにくくなり、同オイルの粘度が高い状態に維持されて内燃機関の回転抵抗増大を招き、それが同機関での燃費改善の妨げとなる。
【0004】
従って、ハイブリッド車両では、トランスアクスルで発生した熱を内燃機関及びそのオイルに伝達する要求があり、こうした要求に対応すべく特許文献1に示されるようにトランスアクスルと内燃機関との間で熱交換を行うことが考えられる。この特許文献1には、内燃機関を通過して循環する冷却水と同機関を潤滑するオイルとの間で熱交換器を通じて熱交換を行うとともに、上記冷却水とトランスアクスルを潤滑するオイルとの間で熱交換器を通じて熱交換を行うことが開示されている。
【0005】
こうした特許文献1の技術を上記ハイブリッド車両に適用した場合、内燃機関を通過して循環する冷却水と第2オイル回路を循環するオイルとの間で熱交換器を通じて熱交換が行われるとともに、上記冷却水と第1オイル回路を循環するオイルとの間で熱交換機を通じて熱交換が行われることとなる。この場合、第1オイル回路を循環するオイルがトランスアクスルでの発熱により昇温すると、そのオイルの熱が熱交換器を通じて内燃機関を通過して循環する冷却水に伝達され、それによって同冷却水が昇温される。そして、昇温された冷却水の熱が内燃機関に伝達されるとともに熱交換器を通じて第2オイル回路のオイルに伝達され、それによって同オイルが昇温されるようになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2001−280133公報(段落[0003])
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述したように、特許文献1の技術を用いることにより、トランスアクスルの熱を内燃機関及びそのオイルに伝達することができるようにはなる。ただし、このようにトランスアクスルの熱を内燃機関及びそのオイルに伝達するためには、内燃機関を循環する冷却水と第1オイル回路のオイルとの間での熱交換を行う熱交換器、及び同冷却水と第2オイル回路のオイルとの間での熱交換を行う熱交換器といった二つの熱交換器を設けなければならず、部品点数が増加することは避けられない。また、上記熱の伝達は内燃機関を通過して循環する冷却水を介して行わなければならず、その分だけ上記熱の伝達効率が低下し、内燃機関を潤滑するオイル(第2オイル回路のオイル)を昇温させて同オイルの粘度を低下させるまでに長い時間がかかる。そして、内燃機関を潤滑するオイルの粘度を低下させるまでの時間が長くなる分、同機関の燃費改善が妨げられる。
【0008】
本発明はこのような実情に鑑みてなされたものであって、その目的は、部品点数の増加を招くことなく、トランスアクスルの熱を効率よく内燃機関を潤滑するオイルに伝達することのできるハイブリッド車両のオイル循環装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
以下、上記目的を達成するための手段及びその作用効果について記載する。
上記目的を達成するため、請求項1記載の発明では、内燃機関とトランスアクスルに設けられたモータとを原動機として搭載したハイブリッド車両のオイル循環装置であって、前記トランスアクスルを潤滑するオイルを循環させる第1オイル回路と、前記内燃機関を潤滑するオイルを循環させる第2オイル回路と、を備え、前記第1オイル回路と前記第2オイル回路との一部を共有化し、それらオイル回路内を循環するオイルとして共通のオイルを用いることを要旨とした。
【0010】
内燃機関のみを原動機として搭載した車両では、内燃機関からの発熱が多く、同機関を潤滑するオイルの温度がトランスアクスルを潤滑するオイルの温度よりも高くなる傾向がある。このため、内燃機関を潤滑するオイルとトランスアクスルを潤滑するオイルとを分け、それら潤滑に必要なオイルの粘度を通常使用時に各々確保すべく、内燃機関を潤滑するオイルをトランスアクスルを潤滑するオイルよりも粘性の高いものとしている。しかし、ハイブリッド車両では、内燃機関からの発熱が少なく且つモータの設けられたトランスアクスルからの発熱が多いため、同機関を潤滑するオイルの温度とトランスアクスルを潤滑するオイルの温度とが同程度の値となり、それらオイルを同じものとすることが可能になる。上記構成によれば、トランスアクスルを潤滑するオイルを循環させる第1オイル回路と内燃機関を潤滑するオイルを循環させる第2オイル回路との一部が共有化され、それらオイル回路内を循環するオイルとして共通のオイルが用いられるため、トランスアクスルの熱が効率よく内燃機関を潤滑するオイルに伝達される。すなわち、トランスアクスルの熱が同トランスアクスルだけでなく内燃機関も潤滑する上記共通のオイルに直接的に伝達されるため、トランスアクスルの熱を効率よく内燃機関を潤滑するオイルに伝達することができる。また、トランスアクスルから上記オイルへの熱の伝達の際に熱交換器等を用いる必要はないため、上記熱の伝達を行うために新たな熱交換器を設けなくてもよく、その熱の伝達を実現するために部品点数の増加を招くことはない。
【0011】
請求項2記載の発明では、請求項1記載の発明において、前記第1オイル回路でのオイルの循環と前記第2オイル回路でのオイルの循環との両方を行う一つのオイルポンプを備え、前記オイルポンプによる前記第1オイル回路でのオイルの循環を通じて前記トランスアクスルを潤滑した後のオイルと、前記オイルポンプによる前記第2オイル回路でのオイルの循環を通じて前記内燃機関を潤滑した後のオイルとは、それぞれ共通のオイルパンに流れ落ち、前記オイルポンプは、前記オイルパンに溜まったオイルを吸い上げて前記内燃機関及び前記トランスアクスルに送り出すことにより、前記第1オイル回路でのオイルの循環と前記第2オイル回路でのオイルの循環と行うことを要旨とした。
【0012】
上記構成によれば、オイルパンに溜まったオイルがオイルポンプにより吸い上げられ、同オイルポンプから吐出されてトランスアクスル及び内燃機関を潤滑した後、それらトランスアクスル及び内燃機関から上記オイルパンに流れ落ちる。このことから分かるように、第1オイル回路を循環するオイルは、オイルパン、オイルポンプ、及びトランスアクスルを通ってオイルパンに戻る。また、第2オイル回路を循環するオイルは、上記オイルパン、上記オイルポンプ、及び内燃機関を通って上記オイルパンに戻る。従って、上記オイルパンにより第1オイル回路と第2オイル回路との一部を共有化することができるようになる。また、上記構成によれば、内燃機関とトランスアクスルとの両方に共通のオイルポンプによってオイルが送られるため、内燃機関及びトランスアクスルに対し個別にオイルポンプでオイルを送る場合のように同ポンプを二つ設ける必要はなく、オイルポンプの数を一つに減らして部品点数を削減することができる。
【0013】
請求項3記載の発明では、請求項2記載の発明において、前記第2オイル回路における前記オイルポンプと前記内燃機関との間に設けられて同オイルポンプから前記内燃機関に送られるオイルの流量を調整すべく開閉動作する制御バルブと、前記制御バルブを駆動制御して内燃機関の停止中には同機関の駆動中よりも前記制御バルブの開度を小さくするバルブ制御手段と、を更に備え、前記オイルパンの内部は、突起部により、前記第1オイル回路でのオイルの循環を通じて前記トランスアクスルを潤滑した後のオイルが流れ落ちる第1オイルたまり部と、前記第2オイル回路でのオイルの循環を通じて前記内燃機関を潤滑した後のオイルが流れ落ちる第2オイルたまり部とに仕切られ、前記第2オイルたまり部に溜まったオイルの油面上昇により同オイルが前記突起部を越えて前記第1オイルたまり部に流れ落ちることが可能となっており、前記オイルポンプは、前記第1オイルたまり部に溜まったオイルを吸い上げて前記内燃機関及び前記トランスアクスルに送り出すものであることを要旨とした。
【0014】
上記構成によれば、オイルポンプが駆動されると、第1オイルたまり部に溜まったオイルが吸い上げられてトランスアクスル及び内燃機関に向けて吐出される。そして、トランスアクスルに送られたオイルは同トランスアクスルを潤滑した後に第1オイルたまり部に流れ落ち、内燃機関に送られたオイルは同機関を潤滑した後に第2オイルたまり部に流れ落ちる。この第2オイルたまり部に溜まったオイルの油面が突起部よりも上昇すると、そのオイルが突起部を乗り越えて第1オイルたまり部に流れ落ちる。従って、第1オイル回路を循環するオイルは、第1オイルたまり部、オイルポンプ、及びトランスアクスルを通って、第1オイルたまり部に戻る。また、第2オイル回路を循環するオイルは、第1オイルたまり部、オイルポンプ、内燃機関、及び第2オイルたまり部を通って、第1オイルたまり部に戻る。
【0015】
ここで、内燃機関の停止中にはモータの駆動による走行が行われ、同モータの設けられたトランスアクスルからの発熱が多くなる。このときには、制御バルブの開度が内燃機関の駆動中よりも小さくされ、第2オイル回路を循環するオイルの流量が低減されるため、主に第1オイル回路でのオイルの循環が行われて同オイルがトランスアクスルの熱により優先的かつ効果的に昇温される。より詳しくは、上記オイルが多量に第2オイル回路を循環して同オイルの熱が内燃機関に奪われることが抑制され、それによって同オイルがトランスアクスルの熱により優先的かつ効果的に昇温される。また、内燃機関の駆動中には、制御バルブの開度が内燃機関の停止中よりも大きくされ、上述したように昇温された第1オイル回路内のオイル(正確には第1オイルたまり部に溜まったオイル)が、第2オイル回路に多く流れ込んで内燃機関に送られるようになる。こうしたことが行われた場合、内燃機関を潤滑するオイルが効率よく昇温されてトランスアクスルの熱が効率よく内燃機関を潤滑するオイルに伝達されたことになる。
【0016】
従って、内燃機関及びトランスアクスルが共に冷えた状態から走行開始し、モータの駆動のみによる走行から内燃機関の駆動を用いた走行へと移行する際、次のような効果を得ることができる。すなわち、走行開始直後のモータの駆動のみによる走行時には、モータからの発熱により第1オイル回路のオイルを優先的かつ効率よく昇温し、そのオイルの粘度を速やかに適切な値まで低下させてトランスアクスルの潤滑を好適に行い、同トランスアクスルでの摩擦抵抗を低減することができる。その後、内燃機関の駆動を用いた走行に移行したときには、上述したように昇温された第1オイル回路のオイルが第2オイル回路に多く流れ込んで内燃機関に送られ、その昇温されて粘度が適切な値まで低下したオイルによって内燃機関の潤滑が行われる。これにより、上記内燃機関の駆動が開始された後の早期に、上記オイルによる内燃機関の回転抵抗を低減することができ、且つ上記オイルによる内燃機関の適切な潤滑を行うことができるようになる。
【0017】
請求項4記載の発明では、請求項1記載の発明において、前記内燃機関の駆動中もしくはハイブリッド車両の走行中に前記第1オイル回路でのオイルの循環を行う第1オイルポンプと、前記内燃機関に接続されて同機関の回転により駆動されて前記第2オイル回路でのオイルの循環を行う第2オイルポンプと、を備え、前記第1オイル回路でのオイルの循環を通じて前記トランスアクスルを潤滑した後のオイルと、前記第2オイル回路でのオイルの循環を通じて前記内燃機関を潤滑した後のオイルとは、それぞれ共通のオイルパンに流れ落ち、前記第1オイルポンプは、前記オイルパンに溜まったオイルを吸い上げて前記トランスアクスルに送り出すことにより、前記第1オイル回路でのオイルの循環を行い、前記第2オイルポンプは、前記オイルパンに溜まったオイルを吸い上げて前記内燃機関に送り出すことにより、前記第2オイル回路でのオイルの循環を行うことを要旨とした。
【0018】
上記構成によれば、第1オイルポンプが駆動されると、オイルパンに溜まったオイルが吸い上げられてトランスアクスルに向けて吐出され、同トランスアクスルを潤滑した後にオイルパンに流れ落ちる。また、第2オイルポンプが駆動されると、上記オイルパンに溜まったオイルが吸い上げられて内燃機関に向けて吐出され、同機関を潤滑した後に同オイルパンに流れ落ちる。このため、第1オイル回路を循環するオイルは、オイルパン、第1オイルポンプ、及びトランスアクスルを通って、オイルパンに戻る。また、第2オイル回路を循環するオイルは、上記オイルパン、第2オイルポンプ、及び内燃機関を通って、上記オイルパンに戻る。従って、上記オイルパンにより第1オイル回路と第2オイル回路との一部を共有化することができるようになる。
【0019】
ここで、内燃機関の停止中にはモータの駆動による走行が行われ、同モータの設けられたトランスアクスルからの発熱が多くなる。このときには、第2オイルポンプのオイル吐出量が「0」となって内燃機関の駆動中よりも小さくされ、第2オイル回路を循環するオイルの流量が「0」まで低減されるため、第1オイルポンプの駆動による第1オイル回路でのオイルの循環のみが行われて同オイルがトランスアクスルの熱により優先的かつ効果的に昇温される。より詳しくは、上記オイルが多量に第2オイル回路を循環して同オイルの熱が内燃機関に奪われることが抑制され、それによって同オイルがトランスアクスルの熱により優先的かつ効果的に昇温される。また、内燃機関の駆動中には、第2オイルポンプのオイル吐出量が内燃機関の停止中の値(「0」)よりも大きくされ、上述したように昇温された第1オイル回路内のオイル(正確にはオイルパンに溜まったオイル)が、第2オイル回路に多く流れ込んで内燃機関に送られるようになる。こうしたことが行われた場合、内燃機関を潤滑するオイルが効率よく昇温され、トランスアクスルの熱が効率よく内燃機関を潤滑するオイルに伝達されたことになる。
【0020】
従って、内燃機関及びトランスアクスルが共に冷えた状態から走行開始し、モータの駆動のみによる走行から内燃機関の駆動を用いた走行へと移行する際、次のような効果を得ることができる。すなわち、走行開始直後のモータの駆動のみによる走行時には、モータからの発熱により第1オイル回路のオイルを優先的かつ効率よく昇温し、そのオイルの粘度を速やかに適切な値まで低下させてトランスアクスルの潤滑を好適に行い、同トランスアクスルでの摩擦抵抗を低減することができる。その後、内燃機関の駆動を用いた走行に移行したときには、上述したように昇温された第1オイル回路のオイルが第2オイル回路に多く流れ込んで内燃機関に送られ、その昇温されて粘度が適切な値まで低下したオイルによって内燃機関の潤滑が行われる。これにより、上記内燃機関の駆動が開始された後の早期に、上記オイルによる内燃機関の回転抵抗を低減することができ、且つ上記オイルによる内燃機関の適切な潤滑を行うことができるようになる。
【0021】
請求項5記載の発明では、請求項4記載の発明において、前記オイルパンの内部は、突起部により、前記第1オイル回路でのオイルの循環を通じて前記トランスアクスルを潤滑した後のオイルが流れ落ちる第1オイルたまり部と、前記第2オイル回路でのオイルの循環を通じて前記内燃機関を潤滑した後のオイルが流れ落ちる第2オイルたまり部とに仕切られ、前記第2オイルたまり部に溜まったオイルの油面上昇により同オイルが前記突起部を越えて前記第1オイルたまり部に流れ落ちることが可能となっており、前記第1オイルポンプは、前記第1オイルたまり部に溜まったオイルを吸い上げて前記トランスアクスルに送り出すものであり、前記第2オイルポンプは、前記第1オイルたまり部に溜まったオイルを吸い上げて前記内燃機関に送り出すものであることを要旨とした。
【0022】
上記構成によれば、第1オイルポンプが駆動されると、第1オイルたまり部に溜まったオイルが吸い上げられてトランスアクスルに向けて吐出され、同トランスアクスルを潤滑した後に第1オイルたまり部に流れ落ちる。また、第2オイルポンプが駆動されると、第1オイルたまり部に溜まったオイルが吸い上げられて内燃機関に向けて吐出され、同機関を潤滑した後に第2オイルたまり部に流れ落ちる。この第2オイルたまり部に溜まったオイルの油面が突起部よりも上昇すると、そのオイルが突起部を乗り越えて第1オイルたまり部に流れ落ちる。従って、第1オイル回路を循環するオイルは、第1オイルたまり部、第1オイルポンプ、及びトランスアクスルを通って、第1オイルたまり部に戻る。また、第2オイル回路を循環するオイルは、第1オイルたまり部、第2オイルポンプ、内燃機関、及び第2オイルたまり部を通って、第1オイルたまり部に戻る。
【0023】
ここで、内燃機関の停止中にはモータの駆動による走行が行われ、同モータの設けられたトランスアクスルからの発熱が多くなる。このときには、第2オイルポンプのオイル吐出量が「0」となって内燃機関の駆動中よりも小さくされ、第2オイル回路を循環するオイルの流量が「0」まで低減されるため、第1オイルポンプの駆動による第1オイル回路でのオイルの循環のみが行われて同オイルがトランスアクスルの熱により優先的かつ効果的に昇温される。更に、第1オイル回路にはオイルパン全体は含まれず第1オイルたまり部のみが含まれるため、上述したように第1オイル回路でオイルを循環させる際、同第1オイル回路でのオイルの循環量を少なく抑えることができ、そのオイルの昇温をより一層速やかに行うことが可能になる。また、内燃機関の駆動中には、第2オイルポンプのオイル吐出量が内燃機関の停止中の値(「0」)よりも大きくされ、上述したように昇温された第1オイル回路内のオイル(正確には第1オイルたまり部に溜まったオイル)が、第2オイル回路に多く流れ込んで内燃機関に送られるようになる。
【0024】
従って、内燃機関及びトランスアクスルが共に冷えた状態から走行開始し、モータの駆動のみによる走行から内燃機関の駆動を用いた走行へと移行する際、次のような効果を得ることができる。すなわち、走行開始直後のモータの駆動のみによる走行時には、第1オイル回路のオイルをより一層効率よく昇温することができ、同オイルによるトランスアクスルの潤滑を好適に行うこと、及び同トランスアクスルでの摩擦抵抗を低減することを更に早期に実現できる。その後、内燃機関の駆動を用いた走行に移行したときには、上述したように昇温された第1オイル回路のオイルが内燃機関に送られて同機関の潤滑を行うため、上記内燃機関の駆動が開始された後の早期に同機関の回転抵抗の低減、及び適切な潤滑を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明のオイル循環装置、及び同装置が適用されるハイブリッド自動車の全体構成を示す略図。
【図2】同オイル循環装置に設けられた制御バルブの開閉制御手順を示すフローチャート。
【図3】内燃機関及びトランスアクスルが共に冷えた状態から走行開始したときの第1オイルたまり部内及び第2オイルたまり部内のオイルの温度の上昇態様を示すタイムチャート。
【図4】オイル循環装置の他の例を示す略図。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明をハイブリッド自動車のオイル循環装置に具体化した一実施形態を図1〜図3に従って説明する。
こうしたハイブリッド自動車は、図1に示されるように、内燃機関1を原動機として搭載している。ハイブリッド自動車において、内燃機関1の回転を車輪側に伝達するトランスアクスル2には、変速のための遊星ギヤやディファレンシャルギヤ等を構成するギヤ機構3が設けられ、更にモータジェネレータ4,5も設けられている。
【0027】
モータジェネレータ5は、その回転を車輪側に伝達してハイブリッド自動車を走行させるためのものであって、内燃機関1とは別の原動機として同自動車に搭載されている。また、モータジェネレータ4は、その発電量の調整を通じて内燃機関1からトランスアクスル2側に伝達されるトルクを調整する。すなわち、モータジェネレータ4の発電量を大きくすると、内燃機関1の出力トルクの多くがモータジェネレータ4により電気エネルギに変換され、内燃機関1からトランスアクスル側に伝達されるトルクが小さくなる。逆に、モータジェネレータ4の発電量を小さくすると、内燃機関1の出力トルクのうちモータジェネレータ4により電気エネルギに変換される分が少なくなり、内燃機関1からトランスアクスル側に伝達されるトルクが大きくなる。
【0028】
こうしたハイブリッド自動車では、内燃機関1の燃費改善を意図して、運転状況等に基づき走行状態を、内燃機関1のみによる走行、内燃機関1とモータジェネレータ5との両方による走行、及びモータジェネレータ5のみによる走行などの間で切り換えるようにしている。また、ハイブリッド自動車には、トランスアクスル2(ギヤ機構3等)を潤滑するオイルを循環させる第1オイル回路が設けられるとともに、内燃機関1を潤滑するオイルを循環させる第2オイル回路が設けられている。
【0029】
ここで、こうしたハイブリッド自動車と比較して、内燃機関のみを原動機として搭載した自動車では、内燃機関からの発熱が多く、同機関を潤滑するオイルの温度がトランスアクスルを潤滑するオイルの温度よりも高くなる傾向がある。このため、内燃機関のみを原動機として搭載した自動車では、内燃機関を潤滑するオイルとトランスアクスルを潤滑するオイルとを分け、それら潤滑に必要なオイルの粘度を通常使用時に各々確保すべく、内燃機関を潤滑するオイルをトランスアクスルを潤滑するオイルよりも粘性の高いものとしている。
【0030】
しかし、ハイブリッド自動車においては、上述したような走行状態の切り換えに関係して、運転中に内燃機関1が停止するという状況が多くあって同機関1での発熱が少なくなる一方、運転中にモータジェネレータ5が駆動される状況が多くあって同モータジェネレータ5での発熱が多くなるという傾向がある。このため、内燃機関1を潤滑するオイルの温度とトランスアクスル2を潤滑するオイルの温度とが同程度の値となり、内燃機関1を潤滑するためのオイルの粘性をトランスアクスル2を潤滑するためのオイルの粘性と同程度まで低いものとすることができ、それらオイルを同じものとすることが可能になる。こうしたことから、本実施形態では、内燃機関1を潤滑するためのオイルを循環させる第1オイル回路と、トランスアクスル2を潤滑するためのオイルを循環させる第2オイル回路との一部が共有化され、それらオイル回路内を循環するオイルとして共通のオイルが用いられる。
【0031】
次に、第1オイル回路及び第2オイル回路でのオイルの循環、及び同オイルの循環を実現する構造について詳しく説明する。
トランスアクスル2には、第1オイル回路でのオイルの循環と第2オイル回路でのオイルの循環との両方を行う一つのオイルポンプ6が設けられている。このオイルポンプ6に関しては、内燃機関1の運転中に同機関1からトランスアクスル2側に伝達される回転、もしくはハイブリッド自動車の走行中におけるトランスアクスル2側の回転に基づき駆動される。一方、内燃機関1の停止中であって同機関1からトランスアクスル2側への回転伝達が行われず、且つハイブリッド自動車の停止中であって走行中でのトランスアクスル2側での回転も生じない場合には、上記オイルポンプ6の駆動が行われることはなく、同オイルポンプ6が停止するようになる。
【0032】
上記オイルポンプ6の駆動が行われると、オイルパン7に溜まったオイルがオイルポンプ6により吸い上げられ、同オイルポンプ6から吐出される。こうしてオイルポンプ6から吐出されたオイルは、通路9を通じてトランスアクスル2に送られるとともに、通路10を通じて内燃機関1に送られる。トランスアクスル2に送られたオイルは同トランスアクスル2(ギヤ機構3等)を潤滑した後に上記オイルパン7に流れ落ち、内燃機関1に送られたオイルは同機関1を潤滑した後に上記オイルパン7に流れ落ちる。なお、第2オイル回路におけるオイルポンプ6と内燃機関1とを繋ぐ通路10の途中には、同オイルポンプ6から内燃機関1に送られるオイルの流量を調整すべく開閉動作する制御バルブ11が設けられている。
【0033】
以上のことから分かるように、第1オイル回路を循環するオイルは、オイルパン7、オイルポンプ6、通路9、及びトランスアクスル2を通ってオイルパン7に戻る。また、第2オイル回路を循環するオイルは、上記オイルパン7、上記オイルポンプ6、通路10、及び内燃機関1を通って上記オイルパン7に戻る。従って、上記オイルパン7により第1オイル回路と第2オイル回路との一部が共有化されるようになる。そして、上記オイルポンプ6を駆動し、オイルパン7に溜まったオイルを吸い上げて内燃機関1及びトランスアクスル2に送り出すことにより、第1オイル回路でのオイルの循環と第2オイル回路でのオイルの循環との両方が行われる。
【0034】
ここで、上記オイルパン7の内部は、その内側下面から上方に突出する突起部8により、第1オイル回路でのオイルの循環を通じてトランスアクスル2を潤滑した後のオイルが流れ落ちる第1オイルたまり部7aと、第2オイル回路でのオイルの循環を通じて内燃機関1を潤滑した後のオイルが流れ落ちる第2オイルたまり部7bとに仕切られている。そして、オイルパン7に関しては、第2オイルたまり部7bに溜まったオイルの油面が突起部8の上端を越えて上昇すると、同オイルが突起部8の上を乗り越えて第1オイルたまり部7aに流れ落ちるように形成されている。また、上記オイルポンプ6は、第1オイルたまり部7aに溜まったオイルを吸い上げて内燃機関1及びトランスアクスル2に送り出すようになっている。
【0035】
従って、上述したオイルポンプ6の駆動による第1オイル回路でのオイルの循環、及び第2オイル回路でのオイルの循環は、より詳しくは以下のように行われる。すなわち、オイルポンプ6の駆動により、第1オイルたまり部7aに溜まったオイルが吸い上げられてトランスアクスル2及び内燃機関1に送られ、それらを潤滑した後にそれぞれ第1オイルたまり部7a及び第2オイルたまり部7bに流れ落ちる。また、第2オイルたまり部7bに溜まったオイルの油面が突起部8の上端を越えて上昇すると、そのオイルが突起部8を乗り越えて第1オイルたまり部7aに流れ落ちる。従って、第1オイル回路を循環するオイルは、第1オイルたまり部7a、オイルポンプ6、通路9、及びトランスアクスル2を通って、第1オイルたまり部7aに戻る。また、第2オイル回路を循環するオイルは、第1オイルたまり部7a、オイルポンプ6、通路10、内燃機関1、及び第2オイルたまり部7bを通って、第1オイルたまり部7aに戻る。
【0036】
次に、本実施形態におけるオイル循環装置の電気的構成について説明する。
オイル循環装置は、ハイブリッド自動車における内燃機関1の駆動制御、トランスアクスル2のモータジェネレータ4,5の駆動制御、及び制御バルブ11の開閉制御など、各種制御を実行する電子制御装置21を備えている。
【0037】
この電子制御装置21は、各種演算処理を実施するCPU、制御用のプログラムやデータの記憶されたROM、CPUの演算結果やセンサの検出結果等を一時的に記憶するRAM、外部との間で信号を入・出力するための入・出力ポート等を備えている。そして、電子制御装置21の入力ポートには、内燃機関1の回転速度を検出する回転速度センサ22、運転者によるアクセルペダルの操作量を検出するアクセルポジションセンサ23、及びハイブリッド自動車の車速を検出する車速センサ24といった各種センサが接続されている。
【0038】
電子制御装置21は、上記各センサから入力した検出信号に基づき内燃機関1及びハイブリッド自動車の運転状態を把握し、その把握した運転状態に基づいてハイブリッド自動車における内燃機関1の駆動制御、トランスアクスル2のモータジェネレータ4,5の駆動制御、及び制御バルブ11の開閉制御といった各種制御を実行する。
【0039】
図2は、制御バルブ11の開閉制御を実行するためのバルブ制御ルーチンを示すフローチャートである。このバルブ制御ルーチンは、電子制御装置21を通じて、例えば所定時間毎の時間割り込みにて周期的に実行される。同ルーチンにおいては、内燃機関1の駆動が行われているか否かが判断され(S101)、ここで肯定判定であれば制御バルブ11が例えば全開状態となるまで開弁される(S102)。また、S101の処理で否定判定であって、内燃機関1の停止中である旨判断された場合には、制御バルブ11の開度が内燃機関1の駆動中よりも小さくなるよう同バルブ11の閉弁動作が行われる(S103)。より具体的には、制御バルブ11が全閉状態となるよう同バルブ11の閉弁動作が行われる。
【0040】
ハイブリッド自動車では、内燃機関1の停止中にモータジェネレータ5の駆動による走行が行われる場合があり、この場合には同モータジェネレータ5の設けられたトランスアクスル2からの発熱が多くなる。そしてこのときには、上記制御バルブ11の開閉制御を通じて、同バルブ11の開度が内燃機関1の駆動中での値(この例では全開状態)よりも小さい値(この例では全閉状態)とされる。その結果、第2オイル回路を循環するオイルの流量が「0」まで低減され、第1オイル回路でのオイルの循環のみが行われるため、同オイルがトランスアクスル2の熱により優先的かつ効果的に昇温される。より詳しくは、上記オイルが多量に第2オイル回路を循環して同オイルの熱が内燃機関1に奪われることが抑制され、それによって同オイルがトランスアクスル2の熱により優先的かつ効果的に昇温される。更に、上述したように第2オイル回路のオイルの流量が「0」になるということは、オイルの循環する第1オイル回路にはオイルパン7全体は含まれず第1オイルたまり部7aのみが含まれるようになることを意味する。このため、上述したように第1オイル回路でオイルを循環させる際、同第1オイル回路でのオイルの循環量を少なく抑えることができ、そのオイルの昇温をより一層速やかに行うことが可能になる。
【0041】
また、内燃機関1の駆動中には、制御バルブ11の開度が内燃機関1の停止中での値(全閉状態)よりも大きい値(全開状態)とされ、上述したように昇温された第1オイル回路内のオイル(正確には第1オイルたまり部7aに溜まったオイル)が、第2オイル回路に多く流れ込んで内燃機関1に送られるようになる。こうしたことが行われた場合、内燃機関1を潤滑するオイルが効率よく昇温されてトランスアクスル2の熱が効率よく内燃機関1を潤滑するオイルに伝達されたことになる。
【0042】
図3は、内燃機関1及びトランスアクスル2が共に冷えた状態から走行開始し、モータジェネレータ5の駆動のみによる走行から内燃機関1の駆動を用いた走行へと移行する際における第1オイルたまり部7a内及び第2オイルたまり部7b内のオイルの温度上昇態様を示したタイムチャートである。同図において、実線L1は第1オイルたまり部7a内のオイルの温度の推移を示しており、実線L2は第2オイルたまり部7b内のオイルの温度の推移を示している。
【0043】
同図から分かるように、上記走行開始直後のモータジェネレータ5の駆動のみによる走行時(タイミングT1〜T2)には、モータジェネレータ5からの発熱により第1オイル回路のオイルが優先的かつ効率よく昇温することから、第1オイルたまり部7aのオイルの温度も図3に実線L1で示されるように速やかに上昇する。その結果、第1オイル回路を循環するオイルの粘度を速やかに適切な値まで低下させてトランスアクスル2の潤滑を好適に行い、同トランスアクスル2での摩擦抵抗を低減することができる。
【0044】
その後、内燃機関1の駆動を用いた走行に移行したとき(T2)、詳しくはモータジェネレータ5と内燃機関1との両方を用いた走行(T2〜T3)や、内燃機関1のみを用いた走行(T3以降)に移行したときには、上述したように昇温された第1オイル回路のオイルが第2オイル回路に多く流れ込む。このため、第2オイル回路を循環するオイルが効率よく昇温し、第2オイルたまり部7b内のオイルの温度も図3に実線L2で示されるように速やかに上昇する。そして、このように効率よく昇温された第2オイル回路のオイルが内燃機関1に送られることになり、その昇温されて粘度が適切な値まで低下したオイルによって内燃機関1の潤滑が行われる。従って、上記内燃機関1の駆動が開始された後の早期に、上記オイルによる内燃機関1の回転抵抗を低減することができ、且つ上記オイルによる内燃機関1の適切な潤滑を行うことができるようになる。
【0045】
以上詳述した本実施形態によれば、以下に示す効果が得られるようになる。
(1)オイルパン7により、トランスアクスル2を潤滑するオイルを循環させる第1オイル回路と内燃機関1を潤滑するオイルを循環させる第2オイル回路との一部が共有化され、それらオイル回路内を循環するオイルとして共通のオイルが用いられるため、トランスアクスル2の熱が効率よく内燃機関1を潤滑するオイルに伝達される。すなわち、トランスアクスル2の熱が同トランスアクスル2だけでなく内燃機関1も潤滑する上記共通のオイルに直接的に伝達されるため、トランスアクスル2の熱を効率よく内燃機関1を潤滑するオイルに伝達することができる。また、トランスアクスル2から上記オイルへの熱の伝達の際に熱交換器等を用いる必要はないため、上記熱の伝達を行うために新たな熱交換器を設けなくてもよく、その熱の伝達を実現するために部品点数の増加を招くことはない。
【0046】
(2)第1オイル回路でのオイルの循環と第2オイル回路でのオイルの循環との両方が共通のオイルポンプ6によって行われ、そのオイルポンプ6から内燃機関1とトランスアクスル2との両方にオイルが送られる。このため、第1オイル回路でのオイルの循環と第2オイル回路でのオイルの循環とを個別に行い、それらオイルポンプにより内燃機関1及びトランスアクスル2に対し個別にオイルを送る場合のように、同ポンプを二つ設ける必要はなく、オイルポンプの数を一つに減らして部品点数を削減することができる。
【0047】
(3)内燃機関1及びトランスアクスル2が共に冷えた状態から走行開始し、モータジェネレータ5の駆動のみによる走行から内燃機関1の駆動を用いた走行へと移行する際、上記モータジェネレータ5の駆動のみによる走行時に、第1オイル回路のオイルを優先的かつ効率よく昇温することができる。これにより、第1オイル回路のオイルの粘度を速やかに適切な値まで低下させてトランスアクスル2の潤滑を好適に行い、同トランスアクスル2での摩擦抵抗を低減することができる。その後、内燃機関1の駆動を用いた走行に移行したときには、上述したように昇温された第1オイル回路のオイルが第2オイル回路に多く流れ込んで内燃機関1に送られ、その昇温されて粘度が適切な値まで低下したオイルによって内燃機関1の潤滑が行われる。これにより、上記内燃機関1の駆動が開始された後の早期に、上記オイルによる内燃機関1の回転抵抗を低減することができ、且つ上記オイルによる内燃機関1の適切な潤滑を行うことができる。
【0048】
(4)上述したように、内燃機関1及びトランスアクスル2が共に冷えた状態から走行開始し、モータジェネレータ5の駆動のみによる走行から内燃機関1の駆動を用いた走行へと移行した後、その内燃機関1の高負荷運転等により同機関1の発熱が大きくなる場合、その熱を受けてオイルの温度が高くなり過ぎるおそれがある。しかし、上記のように内燃機関1の熱を受けたオイルは、第2オイルたまり部7b内に流れ落ち、そこで冷えた状態で溜まっているオイルと混じって温度低下した後、第1オイルたまり部7aに流れ落ちるようになる。従って、内燃機関1及びトランスアクスル2が共に冷えた状態から走行開始し、モータジェネレータ5の駆動のみによる走行から内燃機関1の駆動を用いた走行へと移行した後、その内燃機関1の高負荷運転等により同機関1の発熱が大きくなる場合に、その熱を受けたオイルの温度が高くなりすぎることを抑制できる。
【0049】
(5)第1オイルたまり部7aのオイル容量を適宜変更することにより、第1オイル回路でのオイルの循環時における同オイルの温度を任意の値に調整することができる。また、第2オイルたまり部7bのオイル容量を適宜変更することにより、第2オイル回路でのオイルの循環時における同オイルの温度を任意の値に調整することができる。
【0050】
なお、上記実施形態は、例えば以下のように変更することもできる。
・オイルポンプ6は、専用のモータによって駆動される電動式のものであってもよい。この場合、オイルポンプ6は、内燃機関1の運転中もしくはハイブリッド自動車の走行中に駆動され、内燃機関1の停止中であって且つハイブリッド自動車の停止中には駆動停止される。
【0051】
・制御バルブ11に関しては、内燃機関1の停止中、必ずしも全閉状態とする必要はな、内燃機関1の運転中の開度よりも小さい開度であって全閉状態よりも開き側の値となるよう閉じ側に動作させるだけでもよい。
【0052】
・第1オイル通路でのオイルの循環と第2オイル回路でのオイルの循環とをそれぞれ別々のオイルポンプで行うようにしてもよい。
例えば、図4に示されるように、第1オイル回路でのオイルの循環を第1オイルポンプ6aで行い、第2オイル回路でのオイルの循環を第2オイルポンプ6bで行うようにしてもよい。この場合、第1オイルポンプ6aはオイルパン7の第1オイルたまり部7aに溜まったオイルを吸い上げた後に通路9を介してトランスアクスル2に送り出し、第2オイルポンプ6bは上記第1オイルたまり部7aに溜まったオイルを吸い上げた後に通路10を介して内燃機関1に送り出すこととなる。なお、第1オイルポンプ6aは、上記実施形態のオイルポンプ6と同様、内燃機関1の駆動中もしくはハイブリッド自動車の走行中に第1オイル回路でのオイルの循環を行うものである。また、第2オイルポンプ6bは、内燃機関1に接続されて同機関1の回転により駆動されて第2オイル回路でのオイルの循環を行うものである。
【0053】
この構成によれば、第1オイルポンプ6aが駆動されると、第1オイルたまり部7aに溜まったオイルが吸い上げられてトランスアクスル2に向けて吐出され、同トランスアクスル2を潤滑した後に第1オイルたまり部7aに流れ落ちる。また、第2オイルポンプ6bが駆動されると、第1オイルたまり部7aに溜まったオイルが吸い上げられて内燃機関1に向けて吐出され、同機関1を潤滑した後に第2オイルたまり部7bに流れ落ち、更に突起部8を乗り越えて第1オイルたまり部7aに流れ落ちる。
【0054】
ハイブリッド自動車において、内燃機関1の停止中にモータジェネレータ5の駆動による走行が行われる場合、同モータジェネレータ5の設けられたトランスアクスル2からの発熱が多くなる。そしてこのときには、内燃機関1によって駆動される第2オイルポンプ6bのオイル吐出量が「0」となって内燃機関1の駆動中よりも小さくされ、第2オイル回路を循環するオイルの流量が「0」まで低減される。これにより、第1オイルポンプ6aの駆動による第1オイル回路でのオイルの循環のみが行われ、同オイルがトランスアクスル2の熱により優先的かつ効果的に昇温される。更に、このときの第1オイル回路にはオイルパン7全体は含まれず第1オイルたまり部7aのみが含まれるため、上述したように第1オイル回路でオイルを循環させる際、同第1オイル回路でのオイルの循環量を少なく抑えることができ、そのオイルの昇温をより一層速やかに行うことが可能になる。
【0055】
また、内燃機関1の駆動中には、同機関1により駆動される第2オイルポンプ6bのオイル吐出量が内燃機関1の停止中の値(「0」)よりも大きくされ、上述したように昇温された第1オイル回路内のオイル(正確には第1オイルたまり部7aに溜まったオイル)が、第2オイル回路に多く流れ込んで内燃機関1に送られるようになる。こうしたことが行われた場合、内燃機関1を潤滑するオイルが効率よく昇温されてトランスアクスル2の熱が効率よく内燃機関1を潤滑するオイルに伝達されたことになる。
【0056】
従って、内燃機関1及びトランスアクスル2が共に冷えた状態から走行開始し、モータジェネレータ5の駆動のみによる走行から内燃機関1の駆動を用いた走行へと移行する際、上記モータジェネレータ5の駆動のみによる走行時に、第1オイル回路のオイルを優先的かつ効率よく昇温することができる。これにより、第1オイル回路のオイルの粘度を速やかに適切な値まで低下させてトランスアクスル2の潤滑を好適に行い、同トランスアクスル2での摩擦抵抗を低減することができる。その後、内燃機関1の駆動を用いた走行に移行したときには、上述したように昇温された第1オイル回路のオイルが第2オイル回路に多く流れ込んで内燃機関1に送られ、その昇温されて粘度が適切な値まで低下したオイルによって内燃機関1の潤滑が行われる。これにより、上記内燃機関1の駆動が開始された後の早期に、上記オイルによる内燃機関1の回転抵抗を低減することができ、且つ上記オイルによる内燃機関1の適切な潤滑を行うことができる。
【0057】
なお、この例において、第1オイルポンプ6aは、専用のモータによって駆動される電動式のものであってもよい。この場合、第1オイルポンプ6aは、内燃機関1の運転中もしくはハイブリッド自動車の走行中に駆動され、内燃機関1の停止中であって且つハイブリッド自動車の停止中には駆動停止される。また、第2オイルポンプ6bも、専用のモータによって駆動される電動式のものであってもよい。この場合、第2オイルポンプ6bは、内燃機関1の運転中に駆動され、同機関1の停止中には駆動停止される。ただし、この第2オイルポンプ6bの駆動に関しては、内燃機関1の停止中、必ずしも上記のように駆動停止される必要はなく、同ポンプ6からのオイル吐出量が内燃機関1の運転中よりも小さい値であって「0」よりも大きい値となるよう同オイル吐出量を減量するだけでもよい。
【0058】
・必ずしもオイルパン7の内部を第1オイルたまり部7aと第2オイルたまり部7bとに仕切る必要はない。
【符号の説明】
【0059】
1…内燃機関、2…トランスアクスル、3…ギヤ機構、4…モータジェネレータ、5…モータジェネレータ、6…オイルポンプ、6a…第1オイルポンプ、6b…第2オイルポンプ、7…オイルパン、7a…第1オイルたまり部、7b…第2オイルたまり部、8…突起部、9…通路、10…通路、11…制御バルブ、21…電子制御装置(バルブ制御手段)、22…回転速度センサ、23…アクセルポジションセンサ、24…車速センサ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関とトランスアクスルに設けられたモータとを原動機として搭載したハイブリッド車両のオイル循環装置であって、
前記トランスアクスルを潤滑するオイルを循環させる第1オイル回路と、
前記内燃機関を潤滑するオイルを循環させる第2オイル回路と、
を備え、
前記第1オイル回路と前記第2オイル回路との一部を共有化し、それらオイル回路内を循環するオイルとして共通のオイルを用いる
ことを特徴とするハイブリッド車両のオイル循環装置。
【請求項2】
請求項1記載のハイブリッド車両のオイル循環装置において、
前記第1オイル回路でのオイルの循環と前記第2オイル回路でのオイルの循環との両方を行う一つのオイルポンプを備え、
前記オイルポンプによる前記第1オイル回路でのオイルの循環を通じて前記トランスアクスルを潤滑した後のオイルと、前記オイルポンプによる前記第2オイル回路でのオイルの循環を通じて前記内燃機関を潤滑した後のオイルとは、それぞれ共通のオイルパンに流れ落ち、
前記オイルポンプは、前記オイルパンに溜まったオイルを吸い上げて前記内燃機関及び前記トランスアクスルに送り出すことにより、前記第1オイル回路でのオイルの循環と前記第2オイル回路でのオイルの循環と行う
ことを特徴とするハイブリッド車両のオイル循環装置。
【請求項3】
請求項2記載のハイブリッド車両のオイル循環装置において、
前記第2オイル回路における前記オイルポンプと前記内燃機関との間に設けられて同オイルポンプから前記内燃機関に送られるオイルの流量を調整すべく開閉動作する制御バルブと、
前記制御バルブを駆動制御して内燃機関の停止中には同機関の駆動中よりも前記制御バルブの開度を小さくするバルブ制御手段と、
を更に備え、
前記オイルパンの内部は、突起部により、前記第1オイル回路でのオイルの循環を通じて前記トランスアクスルを潤滑した後のオイルが流れ落ちる第1オイルたまり部と、前記第2オイル回路でのオイルの循環を通じて前記内燃機関を潤滑した後のオイルが流れ落ちる第2オイルたまり部とに仕切られ、前記第2オイルたまり部に溜まったオイルの油面上昇により同オイルが前記突起部を越えて前記第1オイルたまり部に流れ落ちることが可能となっており、
前記オイルポンプは、前記第1オイルたまり部に溜まったオイルを吸い上げて前記内燃機関及び前記トランスアクスルに送り出すものである
ことを特徴とするハイブリッド車両のオイル循環装置。
【請求項4】
請求項1記載のハイブリッド車両のオイル循環装置において、
前記内燃機関の駆動中もしくはハイブリッド車両の走行中に前記第1オイル回路でのオイルの循環を行う第1オイルポンプと、
前記内燃機関に接続されて同機関の回転により駆動されて前記第2オイル回路でのオイルの循環を行う第2オイルポンプと、
を備え、
前記第1オイル回路でのオイルの循環を通じて前記トランスアクスルを潤滑した後のオイルと、前記第2オイル回路でのオイルの循環を通じて前記内燃機関を潤滑した後のオイルとは、それぞれ共通のオイルパンに流れ落ち、
前記第1オイルポンプは、前記オイルパンに溜まったオイルを吸い上げて前記トランスアクスルに送り出すことにより、前記第1オイル回路でのオイルの循環を行い、
前記第2オイルポンプは、前記オイルパンに溜まったオイルを吸い上げて前記内燃機関に送り出すことにより、前記第2オイル回路でのオイルの循環を行う
ことを特徴とするハイブリッド車両のオイル循環装置。
【請求項5】
請求項4記載のハイブリッド車両のオイル循環装置において、
前記オイルパンの内部は、突起部により、前記第1オイル回路でのオイルの循環を通じて前記トランスアクスルを潤滑した後のオイルが流れ落ちる第1オイルたまり部と、前記第2オイル回路でのオイルの循環を通じて前記内燃機関を潤滑した後のオイルが流れ落ちる第2オイルたまり部とに仕切られ、前記第2オイルたまり部に溜まったオイルの油面上昇により同オイルが前記突起部を越えて前記第1オイルたまり部に流れ落ちることが可能となっており、
前記第1オイルポンプは、前記第1オイルたまり部に溜まったオイルを吸い上げて前記トランスアクスルに送り出すものであり、
前記第2オイルポンプは、前記第1オイルたまり部に溜まったオイルを吸い上げて前記内燃機関に送り出すものである
ことを特徴とするハイブリッド車両のオイル循環装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−117413(P2011−117413A)
【公開日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−277510(P2009−277510)
【出願日】平成21年12月7日(2009.12.7)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】