説明

車両のシートベルト装置

【課題】必要時に先立って予めシートベルトの状態を把握し、また、必要時に最適な巻き取り制御を行い、そして、乗員保護性能を高く保ち、乗員に不快感を与えることをなくす。
【解決手段】シートベルトを巻き取り巻き出し駆動する電動モータとプリテンショナとして動作する制御装置とを備えた車両のシートベルト装置において、制御装置は、断続する所定のタイミングの都度、乗員を拘束できない程度の微少電流によって電動モータを駆動し、プリテンショナの巻き取り動作を変更する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、車両のシートベルト装置に係り、特にシートベルトを巻き取り巻き出し駆動する電動モータとプリテンショナとして動作する制御装置とを備えた車両のシートベルト装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、車両においては、外力が作用した時の乗員の保護向上、負荷低減を目的として、外力が作用する前に電動モータでシートベルトを巻き取り、乗員をシートベルトで拘束するシートベルト装置が搭載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−271730号公報
【特許文献2】特許第3652683号公報
【特許文献3】特開2002−104135号公報
【特許文献4】特開2008−105510号公報
【0004】
特許文献1に係るシートベルト装置は、直流モータが回転を開始してからベルト巻き取り装置がシートベルトの巻き取りを開始するまでの時間よりも短い時間で直流モータを駆動し、その間のモータ電流とモータ回転数から直流モータの動作の不能状態を判定、つまり、乗員が気づかない程短時間の巻き取りによってベルト巻き取り抑制を判定するものである。
特許文献2に係る可逆ベルト・プリテンショナを作動させる方法は、プリテンショナとして作動する電動モータを備え、プリテンショナを作動した後、ロッキング装置を解除してシートベルトを巻き出す際に、シートベルトの巻き取り方向に少しずつ回転させ、乗員に対して必要最小限の巻き取り荷重とし、特に、荷重を最小限とするために、断続的且つ漸増するようにモータ駆動電流を増加させ、シートベルトを巻き取るために、電動モータを微少電流によって駆動制御するものである。
特許文献3に係るシートベルトリトラクトは、シートベルトのベルトテンションを制御するベルトテンション制御機構を備え、自車と物体との間の状況を加味して電動モータでベルトリールの回転を制御し、ベルトテンションを調整するものである。
特許文献4に係る車両のシートベルト装置は、電動モータへの通電量を調整して電動モータの巻き取り駆動力を制御する制御装置を備え、定電流制御モードを実行している際に、ベルト巻き取り抑制を判定する巻き取り位置検知手段の検知信号が所定条件を満たしたときに、電動モータへの通電量の目標値を変更して、ベルトテンションを調整するものである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、従来、シートベルト装置におけるシートベルトの巻き取り制御は、事前に決められた一定の電流値・タイミングで行われる。そのため、様々な要因(シートベルトヘのゴミの付着、ねじれ及びベルトクリップの使用等)によりシートベルトの巻き取りが抑制され、そして、巻き取り速度が低下すると、シートベルトにより乗員を十分に拘束できない問題があった。
【0006】
即ち、上記の特許文献1では、気付かない程短時間の巻き取りを行って電動モータの状態の確認をしているが、状態に応じてプリテンショナの動作を変えて乗員保護性能を高く保つまでには至っていなく、また、予めテストモードとして実質的な動作を行うため、その動作中の過大なベルト張力をなくしていても、動作の実行そのものによって乗員に違和感を与えてしまうという不都合があった。
また、上記の特許文献2では、プリテンションを行うタイミングが、プリテンショナ動作後のロックを解除する時点であることから、必要時にプリテンショナを最適なタイミングや最適な巻き取り駆動力で制御するものではなく、また、ベルト巻き取りが正常に行われることを前提としており、その阻害要因があることの示唆がなく、つまり、ベルトクリップの使用、異物の付着、シートベルトの振れといったベルト巻き取りの阻害要因の有無を確認するという技術課題があった。
【0007】
そこで、この発明は、シートベルトの使用状態を確認してベルト巻き取りの阻害要因の有無を確認すること、阻害要因の有無を必要時より早い段階で把握すること、阻害要因の有無を確認するための動作によって乗員に違和感を与えないようにすることを目的とする車両のシートベルト装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明は、シートベルトを巻回したベルトリールと、このベルトリールを駆動して前記シートベルトを巻き取り巻き出し駆動する電動モータと、この電動モータの駆動状態を電流によって制御するとともに予め設定した所定パターンの基本巻き取り駆動電流によってプリテンショナとして動作する制御装置とを備えた車両のシートベルト装置において、前記制御装置は、断続する所定のタイミングの都度、乗員を拘束できない程度の微少電流によって前記電動モータを駆動し、プリテンショナの巻き取り動作を変更することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
この発明の車両のシートベルト装置は、シートベルトの使用状態を確認してベルト巻き取りの阻害要因の有無を確認し、阻害要因の有無を必要時より早い段階で把握し、阻害要因の有無を確認するための動作によって乗員に違和感を与えないようにできる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】図1はシートベルト巻き取り制御のフローチャートである。(実施例)
【図2】図2は図1中のシートベルト巻き取り処理のフローチャートである。(実施例)
【図3】図3はシートベルト巻き取り制御のタイムチャートである。(実施例)
【図4】図4はシートベルト装置のシステム構成図である。(実施例)
【発明を実施するための形態】
【0011】
この発明は、シートベルトの使用状態を確認してベルト巻き取りの阻害要因の有無を確認すること、阻害要因の有無を必要時より早い段階で把握すること、阻害要因の有無を確認するための動作によって乗員に違和感を与えないようにすることの目的を、断続する所定のタイミングの都度、乗員を拘束できない程度の微少電流によって電動モータを駆動し、プリテンショナの巻き取り動作を変更して実現するものである。
以下、図面に基づいてこの発明の実施例を詳細且つ具体的に説明する。
【実施例】
【0012】
図1〜図4は、この発明の実施例を示すものである。
図4において、1は車両に搭載されるシートベルト装置である。
このシートベルト装置1は、シートベルト2を巻回したベルトリール3とこのベルトリール3を駆動してシートベルト2を巻き取り巻き出し駆動する電動モータ(アクチュエータ)4とを有するベルト駆動装置5を備えるとともに、電動モータ4の駆動状態を電流によって制御するとともに予め設定した所定パターンの基本巻き取り駆動電流によってプリテンショナとして動作する制御装置(シートベルトコントローラ)6を備え、乗員をシートベルト2で拘束するものである。
電動モータ4には、通電量調整手段7を介して電源8が接続している。通電量調整手段7は、制御装置6に連絡し、この制御装置6によって作動されて電源8から電動モータ4への駆動電流の値を調整するものである。また、制御装置6は、電動モータ4を駆動するとともに、電動モータ4の駆動電流値及び電動モータ4の駆動電流波形状態を検知できるように、電動モータ4に連絡している。
電動モータ4は、車両バス9に連絡している。この車両バス9には、周辺監視装置10に繋がる予防安全関連コントローラ11が接続している。
また、制御装置6には、車両のイグニションスイッチ(IG・SW)12と、メータやディスプレイ等の表示装置13とが連絡している。
【0013】
周辺監視装置10は、基本的にレーダであり、又は、レーダ出力信号と同等の信号として、急制動等のブレーキ信号を用いることも可能である。また、レーダと置き換え可能な代替手段としては、レーザレーダや超音波センサ、あるいは、撮像装置等の光学的視認装置でも可能である。そして、周辺監視装置10によって先行車を検知するタイミングは、設定距離以内に車両が存在することになった時点である。これにより、多過ぎもせず少な過ぎもしない適度な頻度で、断続的に微少電流による電動モータ4の駆動が可能となる。
【0014】
予防安全関連コントローラ11は、周辺監視装置10と繋がるクルーズコントロール装置(ACC)、あるいは、ブレーキコントローラ、それらを統合したACCブレーキ制御装置としている。この予防安全関連コントローラ11は、周辺監視装置10から得た対象物までの距離・相対速度から対物接触予測時間を計算し、回避可否(対物接触可能性)を判断するものであり、特に、対物接触が避けられない時には、未然の状態で注意、警報を発し、必要時として電動モータ4をプリテンショナ動作するように駆動する。
また、予防安全関連コントローラ11は、注意信号や警報信号を出力することとは別に、車間時間(車間距離を車速で割った時間)を出力することができる。
この予防安全関連コントローラ11は、車両の旋回時に不安定な状態となることに応じてブレーキ等を制御して車両の横滑り等を防止して走行安定性を保つスタビリテイ制御(ESP)や、車両の発進時・加速時に空転状態に応じてエンジントルクを抑制したり、ブレーキを作動したりして駆動力の伝達効率を最適にするトラクションコントロール制御(TCS)等の個別のコントローラであっても良く、又は、それらを統合したコントローラであっても良い。
【0015】
制御装置6は、プリテンショナ機能手段6Aと、基本巻き取り駆動電流の所定パターンを設定する電流パターン設定手段6Bと、電動モータ4の駆動電流値を検知する電流値検知手段6Cと、電動モータ4の駆動電流波形状態を検知する動電流波形検知手段6Dと、ベルト巻き取り抑制要因を判定するベルト巻き取り抑制判定手段6Eと、ベルト巻き取りのタイミングを変更するタイミング変更手段6Fと、プリテンショナの基本巻き取り電流の制御電流値及びその制御電流印加時間の積分量を増大する積分量増大手段6Gと、通電量調整手段7を作動して電動モータ4への駆動電流の値を調整させる電流値制御手段6Hとを備えている。
【0016】
そして、制御装置6は、断続する所定のタイミングの都度、乗員を拘束できない程度の微少電流によって電動モータ4を駆動し(図3の時間t1、t2で示す)、プリテンショナの巻き取り動作を変更する。ここで、上記の所定のタイミングは、周辺監視装置10から出力される先行車検知信号の受信時、又は、予防安全関連コントローラ11から出力される注意信号又は警報信号の受信時とする。或いは、図示しないが、制御装置6内に設けた車間時間比較機能によって、受信した車間時間が予め適合試験等により決定した車間時間以下になった時とする。
また、制御装置6は、微少電流に基づく電動モータ4の駆動時に検出された微少電流の増加傾向となる変動に基づいて、プリテンショナの基本巻き取り電流の制御電流値を増量補正する(図3の時間t4で示す)。
更に、制御装置6は、微少電流に基づく電動モータ4の駆動時に検出された微少電流の増加傾向となる変動に基づいて、プリテンショナの基本巻き取り電流の印加間始タイミングを早める補正をする(図3の時間t3で示す)。
更にまた、制御装置6は、微少電流に基づく電動モータの駆動時に検出された微少電流の増加傾向となる変動に基づいて、プリテンショナの基本巻き取り電流の制御電流値及びその制御電流印加時間の積分量を増大する。
【0017】
具体的に述べると、制御装置6は、シートベルト2ヘの巻き取り抑制要因を、ベルト巻き取りが行える最少電流値を検出して判定し、そして、ベルト巻き取り制御を割増することで乗員を十分に拘束するものである。
上記の最少電流値は、微少電流を電動モータ4に流し、駆動電流値を変化させて探索する。例えば、シートベルト2にゴミが付着した場合等には、最少電流値が高くなるので、事前に計測しておいた正常時の値と比較して抑制要因の有無を比較する。電動モータ4の駆動時は駆動電流値が変動するが、電動モータ4の停止時には駆動電流値が一定となるので、ベルト巻き取りの有無は駆動電流波形の変動の有無から判定する。そして、ベルト巻き取りを判定したら、即座にベルト巻き取りを停止し、乗員への負担を最小限にする。また、微少電流の変化範囲を事前に決めておいて、上限値に達した場合には、シートベルト2が巻き取られていなくても異常と判定し、ベルト巻き取りの抑制の検出を終了するようにすることも可能である。
シートベルト2ヘの巻き取り抑制要因の検出タイミングは、周辺監視装置10による先行車の検出によるタイミング、若しくは先行車との車間時間から任意のタイミングで、抑制要因の検出を行う。これにより、ベルト巻き取り動作の開始前までに、巻き取り抑制要因の検出動作を確実に完了することができる。
また、ベルト巻き取りの割増制御においては、検出した最少電流値に基づいて駆動電流を増加させるか、又は、ベルト巻き取り開始のタイミングを早めて、通常よりも長い時間をかけて十分な拘束を得る。なお、シートベルト巻き取りの抑制要因を検出した場合には、表示装置13に表示する。
【0018】
即ち、電動モータ4及び制御装置6によるプリテンショナは、基本的に、車両の接触が未然の場合に、必要な動作としてシートベルト2の巻き取りを行う。
電動モータ4によるプリテンショナとしてのベルト巻き取り巻き出し動作は、基本パターンとして予め決められた一連の動作を行う。例えば、図3に示すように、予め決められた一定の電流値及び一定時間において、ベルト巻き取り状態で所定時間保持し、ロックを解除するよう、さらに巻き取りした後、反転駆動する。
この基本パターンを、微少電流に応じて検出されたシートベルト2の状態に応じて変更する場合、先ず、電流値を一律に増加させ、また、開始タイミングを早める(終了時間は、早めても良く、又は、基本と揃えてもよい)、更に、電流値を別な一定値とし、開始から終了までの時間を長くし、両者の積分量が増加するパターンを予め設定するように変更する。これにより、いずれにしても、電流値又は時間は増大する。
ベルト巻き取りの解除は、車両が停車したとみなせる極低速度以下となった場合に行っても良い。
また、微少電流による一時的なベルト巻き取りは、矩形波、鋸歯状波、三角波等の波形を印加及び停止して行う。
【0019】
次に、シートベルト巻き取り制御を、図1のフローチャートに基づいて説明する。
図1に示すように、制御装置6のプログラムがスタートすると(ステップA01)、先ず、周辺監視装置10又は予防安全関連コントローラ11からの先行車信号又は注意・警報信号があるか否かを判断し(ステップA02)、このステップA02がNOの場合には、この判断を継続する。或いは、このステップA02の判断を、車間時間の判断とする。
このステップA02がYESの場合には、電動モータ4に微少電流を通電し(ステップA03)、電動モータ4の駆動電流波形に変動があったか否かを判断し(ステップA04)、このステップA04がNOの場合には、電動モータ4への微少電流の値を増加し(ステップA05)、前記ステップA03に戻す。
前記ステップA04がYESの場合には、微少電流値≦正常値か否かを判断し(ステップA06)、このステップA06がNOの場合には、ベルト巻き取り電流の値を増加し(ステップA07)、そして、ベルト巻き取りタイミングを変更する(ステップA08)。
前記ステップA06がYESの場合又は前記ステップA08の処理後は、シートベルト巻き取り処理を行い(ステップA09)、プログラムをエンドとする(ステップA10)。
【0020】
図1の前記ステップA09におけるシートベルト巻き取り処理は、図2のフローチャートに基づいて行われる。
図2に示すように、プログラムがスタートすると(ステップB01)、先ず、シートベルト2の巻き取りを要するか否かを判断し(ステップB02)、このステップB02がYESの場合には、シートベルト2の巻き取りを実施する(ステップB03)。
一方、前記ステップB02がNOの場合には、イグニションスイッチ12がオフか否かを判断し(ステップB04)、このステップB04がNOの場合には、前記ステップB02に戻す。
前記ステップB03の処理後又は前記ステップB04がYESの場合は、プログラムをエンドとする(ステップB05)。
【0021】
次いで、シートベルト巻き取り制御を、図3のタイムチャートに基づいて説明する。
図3に示すように、周辺監視装置10又は予防安全関連コントローラ11からの信号が有る時に(時間t1、時間t2で示す)、電動モータ4に微少電流を通電し、そして、駆動電流波形(矩形波又は三角波等)があったかを確認し、そして、時間t3では、補正した早めのシートベルト巻き取りタイミングとし、時間t4では、シートベルト巻き取り駆動電流の値を大きくし、時間t5までの期間T1では、このシートベルト巻き取り駆動電流の値を維持してシートベルト2の巻き取りを行い、この期間T1が経過してロック解除用信号がある時間t6までの期間T2では、乗員を拘束し、そして、ロック解除用信号があった場合に(時間t6)、時間t7までの期間T3で乗員の拘束を解除し、そして、ベルト巻き出し信号があった場合に(時間t8)、時間t9までの期間T4で、ベルトリール3を反転させてシートベルト2を巻き出し、シートベルト2を緩める。
【0022】
以上、この発明の実施例について説明してきたが、上述の実施例の構成を請求項毎に当てはめて説明する。
請求項1に係る発明は、断続する所定のタイミングの都度、乗員を拘束できない程度の微少電流によって電動モータ4を駆動し、プリテンショナの巻き取り動作を変更する。
これにより、必要時に先立って、予めシートベルト2の状態を把握することができ、必要時に最適な巻き取り制御を行うことができ、また、乗員保護性能を高く保つことができ、更に、乗員に不快感を与えることがない。
請求項2に係る発明は、微少電流に基づく電動モータ4の駆動時に検出された微少電流の増加傾向となる変動に基づいて、プリテンショナの基本巻き取り電流の制御電流値を増量補正する。
これにより、阻害要因に応じて、駆動力不足が生じないように巻き取り荷重を最適にできる。
請求項3に係る発明は、微少電流に基づく電動モータ4の駆動時に検出された微少電流の増加傾向となる変動に基づいて、プリテンショナの基本巻き取り電流の印加間始タイミングを早める補正をする。
これにより、阻害要因に応じて、応答遅れが生じないようにタイミングを最適にできる。
請求項4に係る発明は、微少電流に基づく電動モータ4の駆動時に検出された微少電流の増加傾向となる変動に基づいて、プリテンショナの基本巻き取り電流の制御電流値及びその制御電流印加時間の積分量を増大する。
これにより、阻害要因に応じて、駆動力や駆動時間を最適にでき、また、予め設定したパターンからの選択もできる。
請求項5に係る発明は、前記所定のタイミングを、周辺監視装置10から出力される先行車検知信号の受信時とする。
これにより、必要時までに余裕を持ってベルト状態を確認でき、無駄な判断を減らすことができる.
請求項6に係る発明は、前記所定のタイミングを、予防安全関連コントローラ11から出力される注意信号又は警報信号の受信時とする。
これにより、余裕は少ないが、乗員保護性能のために最適なベルトリール3の駆動を確保できる。
請求項7に係る発明は、前記所定のタイミングを、予防安全関連コントローラ11から出力される車間時間を用いて予め決定した車間時間以下になった時とする。
これにより、先行車との車間距離と自車の走行速度とを考慮して、動作タイミングをより幅広く与えることができる。これは、例えば、予防安全システムの設計思想や技術指針によって、前述した先行車検知や注意信号、警報信号が変えられる可能性があることも考えられるが、それらの信号では不都合となる場合にも最適なタイミングとなるように対応させることができるようにするものである。
【0023】
なお、この実施例においては、微少電流値を変化させてシートベルト巻き取りが可能な最少電流値を探索する手法をとったが、あらかじめ最少電流値を予測しておいて、1点もしくは数点でベルト巻き取りの可否を判定しても良い。
また、対物接触をトリガとする第二プリテンショナとして、点火によるガス圧式プリテンショナを備えることも可能である。ガス圧式プリテンショナは、電動プリテンと比較して、より高速より高いベルト荷重(テンション)によって、SRSエアバッグ等と協調制御しつつ、乗員をシートに拘束し、安全性を確保することが可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0024】
この発明のシートベルト装置を、各種車両に適用可能である。
【符号の説明】
【0025】
1 シートベルト装置
2 シートベルト
3 ベルトリール
4 電動モータ
5 ベルト駆動装置
6 制御装置
7 通電量調整手段
8 電源
9 車両バス
10 周辺監視装置
11 予防安全関連コントローラ
12 イグニションスイッチ
13 表示装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートベルトを巻回したベルトリールと、このベルトリールを駆動して前記シートベルトを巻き取り巻き出し駆動する電動モータと、この電動モータの駆動状態を電流によって制御するとともに予め設定した所定パターンの基本巻き取り駆動電流によってプリテンショナとして動作する制御装置とを備えた車両のシートベルト装置において、前記制御装置は、断続する所定のタイミングの都度、乗員を拘束できない程度の微少電流によって前記電動モータを駆動し、プリテンショナの巻き取り動作を変更することを特徴とする車両のシートベルト装置。
【請求項2】
前記制御装置は、微少電流に基づく前記電動モータの駆動時に検出された微少電流の増加傾向となる変動に基づいて、プリテンショナの基本巻き取り電流の制御電流値を増量補正することを特徴とする請求項1に記載の車両のシートベルト装置。
【請求項3】
前記制御装置は、微少電流に基づく前記電動モータの駆動時に検出された微少電流の増加傾向となる変動に基づいて、プリテンショナの基本巻き取り電流の印加間始タイミングを早める補正をすることを特徴とする請求項1に記載の車両のシートベルト装置。
【請求項4】
前記制御装置は、微少電流に基づく前記電動モータの駆動時に検出された微少電流の増加傾向となる変動に基づいて、プリテンショナの基本巻き取り電流の制御電流値及びその制御電流印加時間の積分量を増大することを特徴とする請求項1に記載の車両のシートベルト装置。
【請求項5】
前記制御装置は、前記所定のタイミングを、周辺監視装置から出力される先行車検知信号の受信時とすることを特徴とする請求項1に記載の車両のシートベルト装置。
【請求項6】
前記制御装置は、前記所定のタイミングを、予防安全関連コントローラから出力される注意信号又は警報信号の受信時とすることを特徴とする請求項1に記載の車両のシートベルト装置。
【請求項7】
前記制御装置は、前記所定のタイミングを、予防安全関連コントローラから出力される車間時間を用いて予め決定した車間時間以下になった時とすることを特徴とする請求項1に記載の車両のシートベルト装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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