説明

車両のシートリクライニング装置

【課題】ガイド突起部の大きさに制限を与えずかつ機枠とベースブラケットとの結合強度を大きくする。
【解決手段】ベースブラケット4に結合される機枠5、アームブラケット6に結合され機枠5に対して相対回転自在であって内歯ギヤ7cが形成された蓋体7と、外歯ギヤ10dが内歯ギヤ7cに係脱する方向へ揺動可能に機枠5に設けられたロックツース10と、該ロックツース10を案内するため機枠5に形成されたガイド突起部12A等と、ロックツース10を押圧して外歯ギヤ10dを内歯ギヤ7cに噛合あるいは噛合解除させるカム9とを備え、機枠5に対して蓋体7を径方向および軸方向に規制するホルダ8を設け、該ホルダ8の一方の端部を機枠5に形成した円周切欠部5aに嵌め込んで機枠5に溶接結合し、ベースブラケット4に形成した貫通孔にホルダ8を嵌め込み、ベースブラケット4の一方の側面4bと機枠5の外周面5eとを溶接結合した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は車両のシートリクライニング装置に関し、ユニットタイプのリクライナとブラケットとの結合構造を改良したものである。
【背景技術】
【0002】
シートクッションに対してシートバックを任意の回動位置でロックできるようにするため、車両のシートリクライニング装置が設けられている。
【0003】
従来の車両のシートリクライニング装置としては、例えば特許文献1に記載のものが知られている。このシートリクライニング装置は、特許文献1の図6に示すようにシート側のフランジ5と背もたれ側のフランジ6との間に、図3のヒンジ4を設けて構成されている。該ヒンジ4は円形のユニット(リクライナ)として構成されており、カバー10と、該カバー10に対して回動可能であって回動を拘束することが可能な底部20とを備え、図3に示すようにカバー10に突出形成されたスタッド15がシート側のフランジ5の孔に挿入される一方、底部20に突出形成されたスタッド16が背もたれ側のフランジ6の孔に挿入されている。
【0004】
近年はシートレイアウトの多様性や環境問題の深刻化から、車両のシートリクライニング装置についても小形化と軽量化とが求められている。一方では衝突安全性を確保するため、車両のシートリクライニング装置の強度を下げることはできず、車両のシートリクライニング装置を小形化しかつ強度を大きくすることが求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平10−276850号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが、従来の車両のシートリクライニング装置の構成では、ヒンジ4を構成するカバー10に突出形成されている回り止めのためのスタッド15a,15bは、底部20に形成されている歯21のピッチ円よりも径方向内側に配置しなければならず、前記ヒンジ4の外形寸法を小さくすると、ヒンジ4の中心からスタッド15a,15bまでの距離も小さくなって、カバー10とシート側のフランジ5との結合強度が低下する。しかも、プレート40をガイドするためのスタンピング12がカバー10の内面に形成されており、該スタンピング12とスタッド15a,15bとが表裏の位置関係にあって同じ位置に形成できないため、スタッド15a,15bを大きくすることができず、そのためにカバー10とフランジ5との結合強度を十分に大きくすることができない。
【0007】
また、車両のシートリクライニング装置の小径化と高強度化のため、車両のシートリクライニング装置の軸方向寸法を大きくする傾向がある。ここで、車両のシートリクライニング装置はベースブラケットとアームブラケットとの間に配置され、シートリクライニング装置の軸方向の厚さ分だけオフセットされた状態で、ベースブラケットとアームブラケットとがシートリクライニング装置に取り付けられることから、車両のシートリクライニング装置の軸方向寸法を大きくすると、このオフセットの量が大きくなる。このため、アームブラケットに大きな荷重が作用した際に、アームブラケットが軸方向に倒れたり、ベースブラケットに対してアームブラケットの回動がこじれたりし、シートリクライニング装置の強度低下や作動性低下の要因になる。
【0008】
そこで本発明は、上記の課題を解決し、ベースブラケットとアームブラケットとを近接配置した車両のシートリクライニング装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1に係る発明は、シートクッション側に結合されるベースブラケットとシートバック側に結合されるアームブラケットとのいずれか一方のブラケットに結合されたベース部材と、他方のブラケットに結合されると共に前記ベース部材に対して相対回転自在であって円形凹部が形成され該円形凹部の内周面に内歯ギヤが形成された回動部材と、前記内歯ギヤに噛合可能な外歯ギヤを有し該外歯ギヤが前記内歯ギヤに係脱する方向へ移動可能に前記ベース部材に設けられたロックツースと、該ロックツースを案内するため前記ベース部材に形成されたガイド突起部と、前記ロックツースを押圧して前記外歯ギヤを前記内歯ギヤに噛合あるいは噛合解除させるカムとを備えた車両のシートリクライニング装置において、前記ベース部材の前記回動部材側の面の外周部に、前記回動部材の外径寸法と同一または僅かに大きい外径寸法を有する円周切欠部を形成し、前記ベース部材に対して前記回動部材を径方向および軸方向に規制する筒形状の規制部材を前記回動部材を囲繞した状態で設け、該規制部材の一方の端部を前記円周切欠部に嵌め込んで前記ベース部材に溶接結合し、他方の端部には内周側へ突出させて前記回動部材の軸方向外面と摺動する規制部を設け、前記一方のブラケットに貫通孔を形成し、該貫通孔に前記規制部材を嵌め込んで、前記一方のブラケットの側面と前記ベース部材の外周面とを溶接結合したことを特徴とする。
【0010】
この発明によれば、シートバックに大きな荷重が作用し、ベース部材と一方のブラケットとの間に大きな力が作用すると、ベース部材の外周面と一方のブラケットとを結合している溶接部であって、ベース部材よりも径方向の外周側に位置する部分に円周方向の剪断力が作用する。一方、従来はベース部材の軸方向の外面に複数の回り止め凸部を形成していたために該回り止め凸部の裏側である内面にはロックツースを案内するガイド突起部を大きく形成することができなかったが、この発明ではベース部材の外周面に溶接部を設けることによりベース部材に回り止め凸部を設けない構成としたので、回り止め凸部を考慮することなくガイド突起部を大きくすることが可能である。
【0011】
請求項2に係る発明は、請求項1に係る車両のシートリクライニング装置において、前記ベース部材の外径寸法を前記規制部材の外径寸法よりも大きく設定し、前記ベース部材の外周部をプレスにより反回動部材側へ半抜き形成することにより前記円周切欠部を形成し、前記一方のブラケットの側面を前記ベース部材の前記円周切欠部の側面に当接させ、前記一方のブラケットを軸方向に位置決めしたことを特徴とする。
【0012】
この発明によれば、一方のブラケットの側面とベース部材の外周面との溶接を行う際に、一方のブラケットの側面をベース部材の円周切欠部の側面に当接させ、該一方のブラケットを軸方向に位置決めした状態で行う。
【発明の効果】
【0013】
請求項1に係る車両のシートリクライニング装置によれば、大きな荷重が作用する溶接部はベース部材よりも径方向の外周側に位置するので、溶接部に作用する円周方向の剪断力が小さく、ベース部材と一方のブラケットとの結合強度が大きい。また、ベース部材の外周面に溶接部を設けることによりベース部材に回り止め凸部を設けない構成としたので、回り止め凸部を考慮することなくガイド突起部を大きくすることが可能であり、ガイド突起部によるロックツースの保持力を大きくして、ベース部材に対する回動部材のロック強度を大きくすることができる。更に、ベースブラケットとアームブラケットとの間隔がリクライナの軸方向厚さよりも小さくなるので、従来に比べてベースブラケットとアームブラケットとを軸方向に接近させることができ、両者のオフセット量が小さいので、アームブラケットに大きな荷重が作用した際に、アームブラケットが軸方向に倒れたりこじりが生じたりすることによる作動性の低下が抑制される。
【0014】
請求項2に係る車両のシートリクライニング装置によれば、一方のブラケットの側面をベース部材の円周切欠部の側面に当接させて一方のブラケットの側面とベース部材の外周面とを溶接するので、溶接の際のベース部材と一方のブラケットとの位置決めが容易であり組付性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】車両のシートリクライニング装置の断面図。
【図2】車両のシートリクライニング装置を、蓋体を破断して示す構成図。
【図3】車両のシートリクライニング装置の分解斜視図。
【図4】車両のシートリクライニング装置をリクライナと2つのブラケットとに分解した分解斜視図。
【図5】車両のシートリクライニング装置の外観図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明による車両のシートリクライニング装置の実施の形態を説明する。
(構成)
図5に示すように、座る部分であるシートクッション2が設けられ、該シートクッション2の後部にシートリクライニング装置を介してシートバック3が車両の前後方向へ回動可能に取り付けられている。シートクッション2側に結合されているベースブラケット4に機枠5が結合される一方、シートバック3側に結合されているアームブラケット6に蓋体7が結合され、該機枠(ベース部材)5と蓋体(回動部材)7等によりシートリクライニング装置のリクライナ1が構成されている。そして、シートクッション2に対してシートバック3を車両の前方へ向かって倒す方向へ付勢するため、図示しないスプリングが設けられている。
【0017】
前記リクライナ1の構造を、図1〜図2に基づいて説明する。機枠5は円盤をプレスにより半抜きして形成され、機枠5における後述する蓋体7側の面の外周部には、蓋体7の外径寸法と同一または僅かに大きい外径寸法の円周切欠部5aが形成され、該円周切欠部5aとは反対側の面には半抜きにより円筒外周部5bが形成されている。また、この機枠5の中央部には中心孔5dが形成されている。一方、蓋体7は円盤の外周部を鍛造により略直角に曲げて円形凹部7bを形成したものであり、これにより筒部7aが形成され、該筒部7aの内周面には内歯ギヤ7cが形成されている。また、この蓋体7の中心部には中心孔7iが形成されている。前記機枠5に対して前記蓋体7を径方向および軸方向に規制する規制部材として、筒形状のホルダ8が設けられている。該ホルダ8は蓋体7を囲繞する状態に設けられ、その一方の端部8aは溶接部14を介して前記円周切欠部5aの外周面5cに溶接結合され、他方の端部には内周側へ突出させて蓋体7の軸方向外面と摺動する規制部8bが設けられている。前記溶接部14は、ホルダ8の一方の端部8aを円周切欠部5aに嵌め込んだ状態で、ホルダ8の外周面から径方向へレーザ溶接することにより形成されている。前記規制部8bの軸方向内面には、蓋体7の軸方向外面と点接触させるため、半球状の当接部8cが、円周に沿って略等間隔に複数突出形成されている。
【0018】
ベースブラケット4には貫通孔4aがプレスにより抜き形成され、該貫通孔4aに前記ホルダ8の外周部が嵌め込まれ、ベースブラケット4の規制部8bとは反対側の一方の側面4bと機枠5の円筒外周部5bの外周面5eとが全周に亘って溶接部13を介して溶接結合されている。この実施の形態では、機枠5の外周面5eの外径寸法がホルダ8の外径寸法よりも大きく設定されており、ベースブラケット4の一方の側面4bを機枠5の円周切欠部5aの側面5fに当接させることにより、ベースブラケット4が軸方向に位置決めされて溶接されている。
【0019】
一方、前記リクライナ1を構成する前記蓋体7と前記アームブラケット6とを結合するための構造は従来と同じであり、図3に示すように蓋体7の軸方向の外面に円周方向に沿って複数形成されている回り止め凸部7gがアームブラケット6の嵌合孔6aに夫々嵌合されて溶接結合されている。
【0020】
次に、前記リクライナ1の内部の構造について説明する。図1に示すように、前記機枠5と前記蓋体7との軸方向間には、前記円形凹部7bの中央にカム9が回動可能に配置され、該カム9を挟んで図2の斜め上下位置には一対のロックツース10が配置されている。該ロックツース10を図2の右上と左下の部分を中心とする円弧軌道に沿って揺動自在に案内するため、揺動中心となる軸突起部(ガイド突起部)11が夫々機枠5と一体に円形凹部7bの内側に成形され、該軸突起部11の外周部には内周側ガイド面11aが形成されている。一方、ロックツース10を円弧軌道に沿って揺動自在に案内するための円弧軌道の両端近傍の外周側には、前記軸突起部11を挟む位置に一対の第1ガイド突起部(ガイド突起部)12Aと第2ガイド突起部(ガイド突起部)12Bとが、円筒部5aの内部に機枠5と一体に成形されている。該第1ガイド突起部12A,第2ガイド突起部12Bには、第1外周側ガイド面12a,第2外周側ガイド面12bが形成されている。一方、ロックツース10には、第1外周側ガイド面12a,第2外周側ガイド面12bと夫々摺動する第1摺動外周面10a,第2摺動外周面10bと、前記内周側ガイド面11aと摺動する摺動内周面10cとが形成されている。
【0021】
ロックツース10は円弧軌道に沿って揺動するので、3組の摺動面を構成する6つの摺動面として内周側ガイド面11a,摺動内周面10c,第1外周側ガイド面12a,第1摺動外周面10a,第2外周側ガイド面12b,第2摺動外周面10bは、ロックツース10の図示しない揺動中心に対して同軸の円弧形状に形成されている。そして、円弧軌道に沿って揺動するロックツース10が前記内歯ギヤ7cと対向する面には、前記内歯ギヤ7cに噛合可能な外歯ギヤ10dが形成されている。
【0022】
外歯ギヤ10dを備えたロックツース10を内歯ギヤ7cへ向かって押圧するため、前記カム9が設けられている。該カム9は、中心孔9eを中心として図2中の反時計方向へ回動させることにより、一対のロックツース10をリクライナ1の径方向外側へ押圧して外歯ギヤ10dを内歯ギヤ7cに噛合させたり、逆に時計方向へ回動させることにより噛合を解除させたりすることができる。外歯ギヤ10dを内歯ギヤ7cに噛合させることにより、機枠5に対する蓋体7の回動が拘束され、シートクッション2に対してシートバック3が所定の角度位置で保持される。
【0023】
カム9の外周面には、軸突起部11を中心としてロックツース10を時計方向へ揺動させて外歯ギヤ10dを内歯ギヤ7cに噛合させるためのロックカム面9aと、反時計方向へ揺動させて外歯ギヤ10dを内歯ギヤ7cから引き離すためのロック解除カム面9bとが並べて形成されている。そして、ロックツース10の外周側には凹部10fが形成され、該凹部10fにカム9のロックカム面9a,ロック解除カム面9bの部分が入り込んでおり、該凹部10fの両側には、ロックカム面9a,ロック解除カム面9bと係脱する被押圧部が形成されている。
【0024】
図2における左右の第1ガイド突起部12Aには、カム9の上下のロックカム面9aどうしを結ぶ線分と平行な摺接面12dが夫々形成され、該摺接面12dに摺動接触して回動できるようにするため、カム9の相互に180度をなす位置には摺動外周面9cが夫々形成されている。これらの摺動外周面9cはカム9の中心孔9eを中心とする円弧に沿って形成され、該摺動外周面9cは第1ガイド突起部12Aの摺接面12dに常に摺接しており、カム9の左右方向への移動が規制されて上下方向への移動のみが許容されている。そして、該摺動外周面9cの端部を段差状に切り欠くことにより、後述するばね掛け部9dが形成されている。
【0025】
カム9をロック方向へ付勢するため、円周方向で隣り合う前記第1ガイド突起部12Aと第2ガイド突起部12Bの組と組との間に捩りコイルばね19が配置されている。そして、該捩りコイルばね19の付勢力に抗して前記カム9をロック解除方向へ回動させる操作レバー20が設けられている。以下に、詳細に説明する。
【0026】
円周方向で隣り合う一方の組の第1ガイド突起部12Aと他方の組の第2ガイド突起部12Bとが対向する面には円弧凹部12e,12eが形成されており、対向する円弧凹部12eと円弧凹部12eとの間隔は径方向外周側が広く、中心側が狭く形成されている。このため、径方向外周側に略半円状のばね収容空間21が形成される一方、径方向中心側の端部には互いに向かい合う凸部12cが夫々形成されている。そして、ばね収容空間21に前記捩りコイルばね19の円筒状の巻回部19cが収容されている。コイル状に巻回した捩りコイルばね19の巻回部19cの両端を外側へ曲げて長さの異なる係合部19a,19bが夫々形成され、該係合部19a,19bが相互に開く方向へ付勢されることにより夫々の係合部19a,19bが夫々の前記凸部12cに係合して捩りコイルばね19が保持され、長いほうの係合部19bの先端部がカム9の前記ばね掛け部9dに係合し、カム9をロック方向へ付勢している。
【0027】
前記捩りコイルばね19は巻回部19cの軸心と機枠5の軸心とが略平行になるように配置され、図1に示すように短い方の係合部19aが機枠5の軸方向での下側に位置する一方、長い方の係合部19bが蓋体7側に位置しており、長い方の係合部19bが蓋体7側から反対側の機枠5へ向って「へ」の字形に屈曲形成されている。この長い方の係合部19bが前記のようにカム9の外周面に形成された前記ばね掛け部9dに掛けられている。そして、長い方の係合部19bを軸方向に規制するため、蓋体7の内面から軸方向へ突出する筒部7fにリング板状の規制部材17が嵌合され、該規制部材17に長い方の係合部19bが当接している。
【0028】
このように構成されたリクライナ1は、シートクッション2の幅方向両側にそれぞれ配置されており、左右のリクライナ1における前記カム9の軸孔9eに図5の操作軸15がセレーションを介して嵌合され、該操作軸15の内端部どうしが図示しない連結軸を介して連結されている。そして、図5に示すように、一方の操作軸15の外端部に図示しないセレーションを介して操作レバー20が取り付けられている。
(作用)
次に、シートリクライニング装置の作用を説明する。
【0029】
リクライナ1がシートに組み付けられた状態においては、通常時は図2に示すように、捩りコイルばね19の付勢力によりカム9が反時計方向へ回動した状態を占めており、カム9のロックカム面9aによってロックツース10が押圧され、該ロックツース10が内周側ガイド面11aおよび第1外周側ガイド面12a,第2外周側ガイド面12bに案内されて軸突起部11を中心として時計方向へ揺動し、外歯ギヤ10dが蓋体7の内歯ギヤ7cに噛合した状態になっている。即ち、図5においてシートバック3の回動が規制された状態になっている。
【0030】
次に、操作レバー20を図5中の時計方向に回動させると、操作軸15が回動し、該操作軸15と一体に回動するカム9が捩りコイルばね19の付勢力に抗して回動し、カム9のロックカム面9aとロックツース10との係合が解かれ、ロック解除カム面9bがロックツース10を、軸突起部11を中心とする反時計方向へ押圧する。このため、ロックツース10は、外歯ギヤ10dが内歯ギヤ7cとの噛合から解かれてロック解除状態となり、蓋体7の取り付けられた図5のアームブラケット6及びシートバック3が図示しないばねの付勢力により前倒し方向へ回動する。
【0031】
図示しないばねの付勢力に抗してシートバック3を後倒し方向へ向かって回動させ、シートバック3が希望する角度位置になった状態で操作レバー20から手を放すと、捩りコイルばね19の付勢力によりカム9が反時計方向へ回動し、該カム9のロックカム面9aがロックツース10を押圧する。このため、ロックツース10の外歯ギヤ10dが内歯ギヤ7cと噛合し、再び図2のロック状態に戻る。
【0032】
この発明によれば、シートバック3に大きな荷重が作用し、機枠5とベースブラケット4との間に大きな力が作用すると、機枠5の外周面5eとベースブラケット4とを結合している溶接部13であって、機枠5よりも径方向の外周側に位置する部分に円周方向の剪断力が作用する。一方、従来は機枠5の軸方向の外面に、図3に示す蓋体7の回り止め凸部7gと同様な回り止め凸部を複数形成していたため、該回り止め凸部の裏側である内面にはロックツース10を案内する軸突起部11,第1ガイド突起部12A,第2ガイド突起部12Bを大きく形成することができなかったが、この発明では機枠5の外周面5cに溶接部13を設けることにより機枠5に回り止め凸部を設けない構成としたので、回り止め凸部を考慮することなく軸突起部11,第1ガイド突起部12A,第2ガイド突起部12Bを大きくすることが可能である。
【0033】
この車両のシートリクライニング装置によれば、大きな荷重が作用する溶接部13は機枠5よりも径方向の外周側に位置するので、溶接部13に作用する円周方向の剪断力が小さく、機枠5とベースブラケット4との結合強度が大きい。また、機枠5の外周面5eに溶接部13を設けることにより機枠5に回り止め凸部を設けない構成としたので、回り止め凸部を考慮することなく軸突起部11,第1ガイド突起部12A,第2ガイド突起部12Bを大きくすることが可能であり、これらのガイド突起部によるロックツース10の保持力を大きくして、機枠5に対する蓋体7のロック強度を大きくすることができる。更に、ベースブラケット4とアームブラケット6との間隔がリクライナ1の軸方向厚さよりも小さくなるので、従来に比べてベースブラケット4とアームブラケット6とを軸方向に接近させることができ、両者のオフセット量が小さいので、アームブラケット6に大きな荷重が作用した際に、アームブラケット6が軸方向に倒れたりこじりが生じたりすることによる作動性の低下が抑制される。
【0034】
この発明によれば、ベースブラケット4の一方の側面4bと機枠5の外周面5eとの溶接を行う際に、ベースブラケット4の一方の側面4bを円周切欠部5aの側面5fに当接させ、該ベースブラケット4を軸方向に位置決めした状態で行う。
【0035】
この車両のシートリクライニング装置によれば、ベースブラケット4の一方の側面4bを円周切欠部5aの側面5fに当接させてベースブラケット4の一方の側面4bと機枠5の外周面5eとを溶接するので、溶接の際の機枠5とベースブラケット4との位置決めが容易であり組付性が向上する。
【0036】
なお、本実施の形態では、全周に亘って溶接部13を設けたが、該溶接部13を部分的に設けてもよい。また、本実施の形態では機枠5をベースブラケット4に結合する一方、蓋体7をアームブラケット6に結合したが、取り付けを逆にすることもできる。また、本実施の形態はロックツースが円弧に沿って揺動するように円弧軌道を設けた場合を示すものであるが、ロックツースが径方向に直線に沿って移動するように直線軌道を設けることもできる。更に、本実施の形態では2つのロックツースを円周方向に約180度の間隔で配置しているが、ロックツースを3つまたは4つ円周方向に等間隔又は不等間隔に配置することもできる。
【符号の説明】
【0037】
2…シートクッション
3…シートバック
4…ベースブラケット
4a…貫通孔
4b…一方の側面
5…機枠(ベース部材)
5a…円周切欠部
5e…外周面
6…アームブラケット
7…蓋体(回動部材)
7b…円形凹部
7c…内歯ギヤ
8…ホルダ(規制部材)
8b…規制部
9…カム
10…ロックツース
10d…外歯ギヤ
11…軸突起部(ガイド突起部)
12A…第1ガイド突起部(ガイド突起部)
12B…第2ガイド突起部(ガイド突起部)
13,14…溶接部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートクッション側に結合されるベースブラケットとシートバック側に結合されるアームブラケットとのいずれか一方のブラケットに結合されたベース部材と、他方のブラケットに結合されると共に前記ベース部材に対して相対回転自在であって円形凹部が形成され該円形凹部の内周面に内歯ギヤが形成された回動部材と、前記内歯ギヤに噛合可能な外歯ギヤを有し該外歯ギヤが前記内歯ギヤに係脱する方向へ移動可能に前記ベース部材に設けられたロックツースと、該ロックツースを案内するため前記ベース部材に形成されたガイド突起部と、前記ロックツースを押圧して前記外歯ギヤを前記内歯ギヤに噛合あるいは噛合解除させるカムとを備えた車両のシートリクライニング装置において、
前記ベース部材の前記回動部材側の面の外周部に、前記回動部材の外径寸法と同一または僅かに大きい外径寸法を有する円周切欠部を形成し、前記ベース部材に対して前記回動部材を径方向および軸方向に規制する筒形状の規制部材を前記回動部材を囲繞した状態で設け、該規制部材の一方の端部を前記円周切欠部に嵌め込んで前記ベース部材に溶接結合し、他方の端部には内周側へ突出させて前記回動部材の軸方向外面と摺動する規制部を設け、前記一方のブラケットに貫通孔を形成し、該貫通孔に前記規制部材を嵌め込んで、前記一方のブラケットの側面と前記ベース部材の外周面とを溶接結合したことを特徴とする車両のシートリクライニング装置。
【請求項2】
請求項1に係る車両のシートリクライニング装置において、
前記ベース部材の外径寸法を前記規制部材の外径寸法よりも大きく設定し、前記ベース部材の外周部をプレスにより反回動部材側へ半抜き形成することにより前記円周切欠部を形成し、前記一方のブラケットの側面を前記ベース部材の前記円周切欠部の側面に当接させ、前記一方のブラケットを軸方向に位置決めしたことを特徴とする車両のシートリクライニング装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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