説明

車両のドア構造

【課題】本発明は、ドア駆動ユニットがドアを開くときに、前記ドアとリンク間で生じる振動等を軽減できるようにすることを目的とする。
【解決手段】本発明に係る車両のドア構造は、扉状に回動することで車両の乗降口を開閉するドア12と、一端がドア12に連結されており、他端がドア駆動ユニットの可動部に連結されているリンク41とを備え、前記ドア駆動ユニットがリンク41を引っ張ることでドア12が開方向に回動し、前記ドア駆動ユニットがリンク41を押圧することでドア12が閉方向に回動する構成の車両のドア構造であって、ドア12とリンク41との連結部には、リンク41からの引っ張り力を受けてドア12と前記乗降口間の閉ロックを解除するロック解除部材35が設けられており、ロック解除部材35は、ロック位置からロック解除位置までリンク41の引っ張り方向に移動できるように、ドア12に装着されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、扉状に回動することで車両の乗降口を開閉するドアと、前記ドアに連結されたリンクとを備え、ドア駆動ユニットがリンクを引っ張ることで前記ドアが開方向に回動し、前記ドア駆動ユニットが前記リンクを押圧することで前記ドアが閉方向に回動する構成の車両のドア構造に関する。
【背景技術】
【0002】
これに関連する従来の車両のドア構造が特許文献1に記載されている。
この車両のドア構造は、図9(A)に示すように、扉状に回動することで車両の乗降口を開閉する折戸式のドア100と、一端が前記ドア100に連結されており、他端がドア駆動ユニット102の可動部102mに連結されているリンク103とを備え、ドア駆動ユニット102がリンク103を引っ張ることでドア100が開方向に回動し、ドア駆動ユニット102がリンク103を押圧することでドア100が閉方向に回動する構成である。
また、ドア100の上端部には、図9(B)に示すように、前記ドア100を閉状態にロックする閉ロック機構105が設けられている。閉ロック機構105は、ドア駆動ユニット102の上面に設けられたロック解除レバー106を手動操作することで閉ロック状態を解除できるように構成されている。
このため、ドア100を開く場合には、ロック解除レバー106を操作して閉ロックを解除した後、ドア駆動ユニット102を動作させる必要がある。即ち、ドア駆動ユニット102を動作させる前にロック解除レバー106の操作が必要となるため、ドア100の開操作が面倒である。
【0003】
この点を改善するために、ドア100とリンク103との連結部分に自動ロック解除機構120を設けた技術が、図10(A)〜(C)に記載されている。
自動ロック解除機構120は、図10(A)に示すように、ドア100側に固定される固定部材122と、その固定部材122に連結されたロック解除部材124とから構成されている。固定部材122には、ドア面に平行なガイドピン123が固定されており、ロック解除部材124がそのガイドピン123に沿って移動できる状態で固定部材122に連結されている。そして、ロック解除部材124にリンク103が水平回動可能な状態で連結されている。また、ガイドピン123に沿ったロック解除部材124の動作がワイヤ機構126のワイヤ126wによって前記閉ロック機構105に伝達されるように構成されている。
このため、図10(B)に示すドア100の全閉状態からドア駆動ユニット102がリンク103を引っ張ると、リンク103の引っ張り力がロック解除部材124に加わり、ロック解除部材124は固定部材122のガイドピン123に沿ってワイヤ126を引っ張る方向に移動する。これにより、ドア駆動ユニット102の動作開始時に自動的に閉ロック機構105のロック解除が行われる。そして、この状態からドア駆動ユニット102がリンク103を引っ張ることで、図10(C)に示すように、ドア100が開方向に回動するようになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平8−49458号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、図10に示すドア構造では、リンク103が全閉状態のドア100及びロック解除部材124を引っ張る方向(図10(B)白矢印参照)と、ロック解除部材124がガイドピン123に沿って移動する方向(図10(A)白矢印参照)とが異なる。このため、リンク103がドア100等を引っ張る力がある程度大きくなった後でなければ、ロック解除部材124はガイドピン123に沿って移動しなくなる。即ち、大きな力で引っ張られたときに、初めてロック解除部材124がガイドピン123に沿って移動するようになるため、閉ロック状態を解除する際に、ドア100とリンク103との間で振動や異音が発生し易くなる。
【0006】
本発明は、上記問題点を解決するためになされたものであり、本発明が解決しようとする課題は、ドア駆動ユニットがドアを開くときに、前記ドアとリンク間で生じる振動等を軽減できるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記した課題は、各請求項の発明によって解決される。
請求項1の発明は、扉状に回動することで車両の乗降口を開閉するドアと、一端が前記ドアに連結されており、他端がドア駆動ユニットの可動部に連結されているリンクとを備え、前記ドア駆動ユニットが前記リンクを引っ張ることで前記ドアが開方向に回動し、前記ドア駆動ユニットが前記リンクを押圧することで前記ドアが閉方向に回動する構成の車両のドア構造であって、前記ドアと前記リンクとの連結部には、前記リンクからの引っ張り力を受けて前記ドアと前記乗降口間の閉ロックを解除するロック解除部材が設けられており、前記ロック解除部材は、ロック位置からロック解除位置まで前記リンクの引っ張り方向に移動できるように、前記ドアに装着されていることを特徴とする。
【0008】
本発明によると、ドア駆動ユニットがドアの開方向に動作してリンクがロック解除部材を引っ張ると、ロック解除部材はロック位置からロック解除位置まで前記リンクの引っ張り方向に移動する。これにより、ドアの閉ロックが解除され、前記ロック解除部材を介してドアが前記リンクに引っ張られて乗降口が開放される。このように、ロック解除部材がリンクの引っ張り方向に移動する構成のため、ロック解除部材の移動方向とリンクの引っ張り方向とが異なる場合と比較してロック解除部材の移動がスムーズになる。したがって、ドアを開くときに、前記ドアとリンク間で生じる振動等を軽減できるようになる。
【0009】
請求項2の発明によると、ロック解除部材は、リンクに引っ張られたドアが全開位置まで回動することにより、前記ロック解除位置からロック位置まで戻されるように構成されていることを特徴とする。
このため、ドアを閉じる際、即ち、リンクがドアを押圧する際に、ロック解除部材は既にロック位置まで戻されている。したがって、ドアを閉じる際にロック解除部材が移動することがなく前記ドアとリンク間で振動等が生じ難くなる。
【0010】
請求項3の発明によると、ロック解除部材は水平回動可能な状態でドアに連結されて、そのロック解除部材の回動自由端側に前記リンクが同じく水平回動可能な状態で連結されており、前記ドアが開放限位置にあるときに、前記ロック解除部材の回動中心と、そのロック解除部材と前記リンクとの連結中心とがリンクの長手方向に並ぶように構成されていることを特徴とする。
このため、ドアを閉じる際、リンクからの押圧力がロック解除部材の回動中心に加わるようになる。したがって、ロック解除部材35が不安定に回動方向に動くことがなく、振動等が発生し難くなる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によると、ドア駆動ユニットがドアを開閉するときに、前記ドアとリンク間で生じる振動等を軽減できるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施形態1に係る車両のドア構造を備える小型バスの模式斜視図である。
【図2】前記小型バスの折戸ドアを車室内から見た正面図である。
【図3】車両のドア構造に使用される自動ロック解除機構を表す斜視図である。
【図4】折戸ドアの全閉状態を表す平面図である。
【図5】折戸ドアの全閉状態における自動ロック解除機構を表す平面図である。
【図6】折戸ドアの全閉状態における自動ロック解除機構を表す平面図である。
【図7】折戸ドアの全開状態を表す平面図である。
【図8】折戸ドアの全開状態における自動ロック解除機構を表す平面図である。
【図9】従来の折戸ドアの全閉状態を表す斜視図(A図)、ロック解除機構を表す斜視図(B図)である。
【図10】従来の折戸ドアの自動ロック解除機構を表す斜視図(A図)、折戸ドアの全閉状態を表す平面図(B図)、折戸ドアの全開状態を表す平面図(C図)である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
[実施形態1]
以下、図1から図8に基づいて本発明の実施形態1に係る車両のドア構造について説明する。ここで、本実施形態は、本発明を小型バスの折戸ドアに適用したものであり、図中における前後左右及び上下は、バスの前後左右及び上下に対応している。
【0014】
<折戸ドア10の概要について>
前記小型バス3の車体4には、図1に示すように、左側の中央前寄りの位置に乗客が乗り降りするための乗降口50が形成されており、その乗降口50が折戸ドア10によって開閉されるように構成されている。
折戸ドア10は、図2の室内側正面図に示すように、縦に長い長方形状に形成された前側ドア片12と後側ドア片14とを備えており、その前側ドア片12の後端部と後側ドア片14の前端部とが上部、中央部、及び下部のヒンジ機構(図示省略)によって水平回動可能な状態で連結されている。また、前側ドア片12の前端上下には、その前側ドア片12を水平回動可能な状態で乗降口50の前端位置(前部支柱51(図4参照)の近傍)に連結する主ヒンジ機構11のヒンジピン11pが上下に一定寸法だけ突出した状態で取付けられている。さらに、乗降口50の天井部分には前後方向に延びるガイド溝(図示省略)が設けられており、そのガイド溝に後側ドア片14の後端上部に形成されたガイドピン14pが前記ガイド溝に沿って移動可能なように係合している。
また、乗降口50の天井部分には、図1に示すように、前側ドア片12と後側ドア片14とが乗降口50の外側に回動するのを禁止する板状ストッパ58が設けられている。
【0015】
<ドア閉ロック機構20について>
前側ドア片12の回動自由端側には、図2に示すように、ドア閉ロック機構20が設けられている。
ドア閉ロック機構20は、折戸ドア10が乗降口50を閉じる全閉位置にあるときに、前記乗降口50の天井部分に形成された貫通穴状のストライカ(図示省略)と係合することで、その折戸ドア10を全閉状態にロックする機構である。ドア閉ロック機構20は、前側ドア片12の回動自由端側の上端位置に上下動可能な状態で取付けられたピン状のロック爪22と、そのロック爪22を前側ドア片12の上端位置から上方に突出させるように付勢されたバネ(図示省略)とを備えている。これにより、折戸ドア10が閉じられた状態で、ロック爪22が前記バネの力で前記ストライカと係合し、折戸ドア10が全閉状態にロックされる。
【0016】
ドア閉ロック機構20は、ロック爪22を前記バネ力に抗して下方に移動させて前記ストライカとの係合を解除する上部ロック解除レバー24と、中央部ロック解除レバー26とを備えている。上部ロック解除レバー24は前側ドア片12の回動自由端側の上端位置に設けられており、中央部ロック解除レバー26は前側ドア片12の回動自由端側の略中央位置に設けられている。そして、上部ロック解除レバー24と中央部ロック解除レバー26とがロック解除リンク25によって連結されている。これにより、上部ロック解除レバー24と中央部ロック解除レバー26とが連動するようになり、いずれの解除レバー24,26を操作してもロック爪22と前記ストライカとの係合を解除できるようになる。
さらに、ロック解除リンク25の下部にはワイヤ機構27のワイヤ27w(図4、図5等参照)が連結されており、そのワイヤ機構27の働きで後記する自動ロック解除機構30のロック解除動作がロック解除リンク25に伝達されるようになっている。
【0017】
<自動ロック解除機構30について>
自動ロック解除機構30は、後記するドア駆動ユニット40によって折戸ドア10が開かれる際にドア閉ロック機構20のロック状態を自動的に解除するための機構である。自動ロック解除機構30は、図3に示すように、ベース部材31とロック解除部材35とから構成されている。ベース部材31は、自動ロック解除機構30を、図2に示すように、前側ドア片12の所定位置(例えば、中央下寄りの位置)に固定するための部材であり、前側ドア片12の固定面12sに取付けられる。
ベース部材31は、図3に示すように、前後に長い略角形のベース縦板部32と、そのベース縦板部32の表側で前後方向に延びる平行な上下一対の横板部33とを備えている。そして、上下の横板部33のほぼ中央位置にロック解除部材35の上下の連結ピン36が通される軸受孔33jが形成されている。さらに、ベース部材31の後部には、ワイヤ機構27のチューブ27tの一端を固定するとともに、ロック解除部材35の回動ストッパとして働く門形板部34が設けられている。門形板部34は、上下の横板部33を跨いだ状態で上端部と下端部とがそれぞれ上下の横板部33に固定されている。
【0018】
ロック解除部材35は、折戸ドア10の前側ドア片12と後記する水平リンク41とを連結するとともに、ワイヤ機構27のワイヤ27wを引っ張るための部材であり、前記ベース部材31に対して水平回動可能な状態で連結されている。即ち、ロック解除部材35は、図4〜図6等に示すように、平面略三角形状に形成されており、そのロック解除部材35の一つの頂点近傍位置に上下方向に突出する連結ピン36が設けられている。そして、前述のように、前記連結ピン36が前記ベース部材31の横板部33の軸受孔33jに挿通されている。これにより、ロック解除部材35は、上下の連結ピン36を中心にして水平回動可能な状態で前記ベース部材31に連結されている。
【0019】
ロック解除部材35の連結ピン36に対して車幅方向内側に位置する頂点位置には、ワイヤ機構27のワイヤ27wの先端が固定されるワイヤ受け部35wが設けられている。このため、ロック解除部材35が図3において連結ピン36を中心に左回動することでワイヤ27wが引っ張られ、この動きがドア閉ロック機構20のロック解除リンク25に伝えられる。
また、ロック解除部材35の連結ピン36に対して後方に位置する頂点位置には、ベース部材31の門形板部34の内側からその門形板部34に掛けられるように形成された爪部35tが設けられている。このため、ロック解除部材35は、図5、図6に示すように、爪部35tが門形板部34に掛けられる位置まで連結ピン36を中心に左回動が可能になる。
さらに、ロック解除部材35の略中央位置には、図4〜図6等に示すように、水平リンク41の先端部に設けられた上下のリンクピン41pが通される中央軸受孔38が形成されている。ここで、ロック解除部材35の中央軸受孔38の位置は、図8に示すように、折戸ドア10が全開位置にある状態で、その中央軸受孔38が連結ピン36と水平リンク41の長手方向に並ぶような位置に設定されている。
【0020】
<ドア駆動ユニット40について>
前記水平リンク41の基端部は、図4等に示すように、ドア駆動ユニット40の可動アーム43の先端部に連結ピン43rにより水平回動可能な状態で連結されている。
ドア駆動ユニット40は、折戸ドア10が展開して乗降口50を閉じる位置(全閉位置 図4参照)から折戸ドア10が折り畳まれて乗降口50を開く位置(全開位置 図7参照)まで、その折戸ドア10の前側ドア片12をヒンジピン11p中心に水平回動させる機構である。
ドア駆動ユニット40は、図2、図4等に示すように、前記可動アーム43と、その可動アーム43を水平回動させる駆動部45とからなり、前記駆動部45がモータ・アンド・減速器45mとクラッチ46等から構成されている。駆動部45のモータ・アンド・減速器45mとクラッチ46とは軸心が縦向きになるようにハウジング47に収納されており、その駆動部45の上端に設けられた出力軸46jに可動アーム43の基端部が相対回転不能な構成で連結されている。
ドア駆動ユニット40のハウジング47は、図4等に示すように、乗降口50の内側に位置する乗降ステップ53の前方のフロア上に設置されている。
【0021】
<折戸ドア10の動作について>
全閉状態の折戸ドア10を自動動作で開く場合には、ドア開スイッチ(図示省略)を操作してドア駆動ユニット40をドア開方向に駆動させる。ドア開スイッチ(図示省略)が操作されると、モータ・アンド・減速器45mとクラッチ46が動作して出力軸46jが図4において左回転する。これにより、ドア駆動ユニット40の可動アーム43が出力軸46jを中心にして左回動し、水平リンク41を右前方(白矢印方向)に引っ張るようになる。この結果、自動ロック解除機構30のロック解除部材35が水平リンク41に引っ張られて、図5に示す状態から連結ピン36を中心に左回動する。即ち、ロック解除部材35は水平リンク41の引っ張り方向に移動するようになる。このため、ロック解除部材35の動きがスムーズになり、折戸ドア10(前側ドア片12)と水平リンク41間で振動等が生じ難くなる。
ロック解除部材35が連結ピン36を中心に左回動すると、図6に示すように、ワイヤ受け部35wがワイヤ27wを引っ張り、そのワイヤ27wがドア閉ロック機構20のロック解除リンク25を引っ張るようになる。この結果、ロック解除リンク25がドア閉ロック機構20のロック爪22を下方に引っ張り、そのロック爪22がバネ力に抗して下方に移動する。これにより、ロック爪22と前記ストライカとの係合が外れ、ドア閉ロック機構20のロック状態が解除される。
【0022】
この状態からさらにドア駆動ユニット40の可動アーム43が左回動して水平リンク41が引っ張られると、ロック解除部材35の爪部35tがベース部材31の門形板部34に係合してロック解除部材35の左回動が禁止される(図6参照)。
即ち、ロック解除部材35の爪部35tがベース部材31の門形板部34に係合する位置が本発明のロック解除位置に相当する。
ロック解除部材35がロック解除位置にある状態で水平リンク41が引っ張られると、折戸ドア10の前側ドア片12が図4のヒンジピン11pを中心に左回転し、後側ドア片14が前側ドア片12によって乗降口50の内側前方に引っ張られる。そして、後側ドア片14が前側ドア片12に引っ張られることで、後側ドア片14は前側ドア片12との連結部(上部、中部、下部ヒンジ機構)を中心にして右回動し、さらに後側ドア片14の後端上部のガイドピン14pが乗降口50の天井部分の前記ガイド溝に沿って前方に移動する。そして、図7に示すように、前側ドア片12が約90°左回動して乗降ステップ53の前端位置まで移動した状態で、後側ドア片14が前側ドア片12に重ねられて(折戸ドア10が折り畳まれて)乗降口50が開かれる。
さらに、前側ドア片12が左回動する過程で、自動ロック解除機構30のロック解除部材35が前側ドア片12に対して右回動し、図8に示すように、原位置、即ち、爪部35tがベース部材31に当接する位置まで戻される。これにより、ワイヤ27wが緩められ、ロック解除リンク25、及びロック爪22等がバネ力でロック位置まで上方に移動する。この状態で、図8に示すように、ロック解除部材35の連結ピン36と、水平リンク41のリンクピン41pが通される中央軸受孔38とが水平リンク41の長手方向に並ぶようになる。
即ち、ロック解除部材35の原位置が本発明のロック位置に相当する。
【0023】
全開位置にある折戸ドア10を自動動作で閉じる場合には、ドア閉スイッチ(図示省略)を操作してドア駆動ユニット40をドア閉方向に駆動させる。即ち、モータ・アンド・減速器45mとクラッチ46が動作して出力軸46jが図7において右回転し、これにより可動アーム43が右回動する。これにより、可動アーム43が水平リンク41を左後方に押圧し、前記水平リンク41が、図8に示すように、自動ロック解除機構30のロック解除部材35を白矢印方向に押圧する。このとき、前述のように、ロック解除部材35の連結ピン36と、水平リンク41のリンクピン41pが通される中央軸受孔38とが水平リンク41の長手方向に並んでいるため、水平リンク41の押圧力はリンクピン41pから連結ピン36に加わるようになる。これにより、ロック解除部材35が連結ピン36を中心に回動方向に不安定に動くことがなくなり、折戸ドア10(前側ドア片12)と水平リンク41間で振動等が生じ難くなる。
【0024】
そして、水平リンク41がロック解除部材35を介して折戸ドア10の前側ドア片12を押圧することで、前側ドア片12が図7のヒンジピン11pを中心に右回転するようになる。さらに、前側ドア片12が右回転することで、後側ドア片14が前側ドア片12によって乗降口50の外側後方に押圧され、その後側ドア片14が前側ドア片12との連結部を中心にして左回動する。さらに、後側ドア片14の後端上部のガイドピン14pが乗降口50の天井部分の前記ガイド溝に沿って後方に移動するようになる。そして、図4に示すように、前側ドア片12と後側ドア片14とが同一面上に保持された状態(折戸ドア10が展開された状態)で乗降口50が閉じられる。
また、前側ドア片12が閉じられる過程で、ドア閉ロック機構20のロック爪22が乗降口50の天井部分のストライカとバネ力で係合し、折戸ドア10が全閉位置で閉ロックされる。
【0025】
<本実施形態に係る車両のドア構造の長所について>
本実施形態に係る車両のドア構造によると、ドア駆動ユニット40が折戸ドア10の開方向に動作して水平リンク41がロック解除部材35を引っ張ると、ロック解除部材35はロック位置からロック解除位置まで水平リンク41の引っ張り方向に移動する。これにより、折戸ドア10の閉ロックが解除され、ロック解除部材35を介して折戸ドア10が水平リンク41に引っ張られて乗降口50が開放される。このように、ロック解除部材35が水平リンク41の引っ張り方向に移動する構成のため、ロック解除部材35の移動方向と水平リンク41の引っ張り方向とが異なる場合と比較してロック解除部材35の移動がスムーズになる。したがって、折戸ドア10を開くときに、折戸ドア10と水平リンク41間で生じる振動等を軽減できるようになる。
また、折戸ドア10を閉じる際、即ち、水平リンク41が折戸ドア10を押圧する際に、ロック解除部材35は既にロック位置まで戻されている。このため、折戸ドア10を閉じる際にロック解除部材35が移動することがなく折戸ドア10と水平リンク41間で振動等が生じ難くなる。
また、折戸ドア10を閉じる際、水平リンク41がロック解除部材35の回動中心を押圧するため、ロック解除部材35が不安定に回動方向に動くことがなく、振動等が発生し難くなる。
【0026】
<変更例>
ここで、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における変更が可能である。例えば、本実施形態では、折戸ドア10を開く際に、ロック解除部材35を水平リンク41の引っ張り方向に水平回動させる例を示した。しかし、折戸ドア10を開く際に、ロック解除部材35を水平リンク41の引っ張り方向にスライドさせる構成でも可能である。
また、本実施形態では、折戸ドア10を例示したが、観音開き状のドア、あるいは扉状のドアに本発明を適用することも可能である。
【符号の説明】
【0027】
10 折戸ドア(ドア)
12 前側ドア片(ドア)
27 ワイヤ機構
30 自動ロック解除機構
35 ロック解除部材
40 ドア駆動ユニット
41 水平リンク(リンク)
43 可動アーム(可動部)
50 乗降口


【特許請求の範囲】
【請求項1】
扉状に回動することで車両の乗降口を開閉するドアと、一端が前記ドアに連結されており、他端がドア駆動ユニットの可動部に連結されているリンクとを備え、前記ドア駆動ユニットが前記リンクを引っ張ることで前記ドアが開方向に回動し、前記ドア駆動ユニットが前記リンクを押圧することで前記ドアが閉方向に回動する構成の車両のドア構造であって、
前記ドアと前記リンクとの連結部には、前記リンクからの引っ張り力を受けて前記ドアと前記乗降口間の閉ロックを解除するロック解除部材が設けられており、
前記ロック解除部材は、ロック位置からロック解除位置まで前記リンクの引っ張り方向に移動できるように、前記ドアに装着されていることを特徴とする車両のドア構造。
【請求項2】
請求項1に記載された車両のドア構造であって、
前記ロック解除部材は、前記リンクに引っ張られた前記ドアが全開位置まで回動することにより、前記ロック解除位置からロック位置まで戻されるように構成されていることを特徴とする車両のドア構造。
【請求項3】
請求項1又は請求項2のいずれかに記載された車両のドア構造であって、
前記ロック解除部材は水平回動可能な状態で前記ドアに連結されて、そのロック解除部材の回動自由端側に前記リンクが同じく水平回動可能な状態で連結されており、
前記ドアが全開位置にあるときに、前記ロック解除部材の回動中心と、そのロック解除部材と前記リンクとの連結中心とがリンクの長手方向に並ぶように構成されていることを特徴とする車両のドア構造。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−154069(P2012−154069A)
【公開日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−12895(P2011−12895)
【出願日】平成23年1月25日(2011.1.25)
【出願人】(000110321)トヨタ車体株式会社 (1,272)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】