説明

車両のハンドルストッパ構造

【課題】車両のハンドルストッパ構造が占有するスペースを小さくするとともに、ハンドルストッパ構造のコストを下げる。
【解決手段】電動パワーステアリングユニット24の上部に備えるインプットシャフト81にステアリングシャフト38が取付けられ、電動パワーユニット24の下部に備えるアウトプットシャフト82が車輪側に連結され、ステアリングシャフト38と電動パワーステアリングユニット24の上部に付設されたハウジング101との間にステアリングシャフト38の回動角度を規制する上部ハンドルストッパ161が設けられ、上部ハンドルストッパ161を、ステアリングシャフト38から軸直角方向に突出する軸直角方向突出部材90と、この軸直角方向突出部材90の回動を規制するためにハウジング101からステアリングシャフト38の軸方向に突出する軸方向突出部101A,101B(奥側の符号101Bのみ示す。)とから構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両のハンドルストッパ構造の改良に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の車両のハンドルストッパ構造として、操作ハンドルに連結するアウトプットシャフトとシャーシとの間にハンドルストッパを設けたものが知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】実開平3−1877号公報
【0003】
特許文献1の第5図及び第8図を以下に説明する。
電動パワーステアリング装置は、操作ハンドル3に連結されたインプットシャフト5と、このインプットシャフト5に操舵トルクセンサ7及び減速機9を介して連結されたアウトプットシャフト11とを備え、アウトプットシャフト11は、タイロッド13を介して図示せぬ車輪に連結されている。
【0004】
アウトプットシャフト11から突出する係止部材35と、シャーシ37に取付けられた一対のストッパ部材39,39は、車輪の最大切れ角を規制するストッパ機構33を構成するものである。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ストッパ部材39,39は、シャーシ37から半径方向に突出するため、これに伴って、ストッパ部材39,39に当てる係止部材35も半径方向に延びているので、車体内でストッパ機構33が占有するスペースが大きくなり、他の部品の配置に影響を及ぼすことになる。
【0006】
また、電動パワーステアリング装置はシャーシから延びるブラケット43で支持されているため、このブラケット43の寸法誤差がアウトプットシャフト11を介してストッパ機構33の係止部材35の位置精度に影響を与えるため、係止部材35とストッパ部材39,39との距離の精度管理が難しい、即ち、その距離の誤差が大きくなり易い。
【0007】
更に、係止部材35はアウトプットシャフト11に設けられ、ストッパ部材39,39はシャーシ37に設けられているため、これらの係止部材35とストッパ部材39,39との間には、アウトプットシャフト11の下端を回動自在に支持する軸受、軸受を支持するブラケット、下部シャーシ、シャーシ37というように多くの部品が介在するため、例えば、これらの部品自体の寸法誤差、組付誤差が累積されれば、係止部材35とストッパ部材39,39との間の距離の誤差が大きくなり、車輪を所定の最大切れ角に規制することが難しくなる。そこで、各部品の加工精度、組付精度を高めれば、所定の最大切れ角に規制することは出来るが、コストは増大する。
【0008】
本発明の目的は、車両のハンドルストッパ構造が占有するスペースを小さくするとともに、ハンドルストッパ構造のコストを下げることにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1に係る発明は、車体フレームに電動パワーステアリングユニットが取付けられ、この電動パワーステアリングユニットの上部に備えるインプットシャフトにステアリングシャフトを介してバーハンドルが取付けられ、電動パワーユニットの下部に備えるアウトプットシャフトが車輪側に連結され、ステアリングシャフトと電動パワーステアリングユニットの上部に付設されるとともにステアリングシャフトの下部を支持するハウジングとの間にステアリングシャフトの回動角度を所定角度に規制するハンドルストッパが設けられた車両において、ハンドルストッパを、ステアリングシャフトから軸直角方向に突出する軸直角方向突出部と、この軸直角方向突出部の回動を規制するためにハウジングからステアリングシャフトの軸方向に突出する軸方向突出部とから構成したことを特徴とする。
【0010】
作用として、軸方向突出部は、ステアリングシャフトに沿って延びるため、ステアリングシャフトに近接するように設けられれば、大きなスペースを占有しない。
軸直角方向突出部は、その軸直角方向の突出量が軸方向突出部に当たるように小さくてよいから、操舵に伴って回動しても大きなスペースを占有しない。
【0011】
また、ステアリングシャフトの下部がハウジングで支持されるため、軸直角方向突出部と軸方向突出部との間にはハウジングのステアリングシャフトを支持する部分が介在するだけであり、介在する部品の数が多い場合に比べて累積する寸法誤差を小さくすることが可能である。
【0012】
請求項2に係る発明は、軸方向突出部を、ステアリングシャフトを回動自在に支持するためにハウジングに設けられた軸受の近傍に設けたことを特徴とする。
作用として、軸受が設けられた部分はステアリングシャフトを支持するだけの剛性を少なくとも有するから、軸直角方向突出部が軸方向突出部に当たったときの力を上記した剛性で受けることが可能である。
【発明の効果】
【0013】
請求項1に係る発明では、ハンドルストッパを、ステアリングシャフトから軸直角方向に突出する軸直角方向突出部と、この軸直角方向突出部の回動を規制するためにハウジングからステアリングシャフトの軸方向に突出する軸方向突出部とから構成したので、軸方向突出部をハウジングからステアリングシャフトの軸方向に突出させることで、ステアリングシャフトから軸直角方向に突出する軸直角方向突出部を短くすることができ、ハンドルストッパが占有するスペースを小さくすることができる。従って、電動パワーステアリングユニット周りの小型化を図ることができる。
【0014】
また、軸直角方向突出部と軸方向突出部との間にはハウジングのステアリングシャフトを支持する部分が介在するだけなので、軸直角方向突出部と軸方向突出部との間に介在する部品数を少なくして累積する寸法誤差を小さくすることができ、軸直角方向突出部と軸方向突出部との距離の精度を高めることができる。従って、ステアリングストッパの回動規制精度を高めることができる。
【0015】
請求項2に係る発明では、軸方向突出部を、ステアリングシャフトを回動自在に支持するためにハウジングに設けられた軸受の近傍に設けたので、軸受が設けられた部分はステアリングシャフトを支持するだけの剛性を少なくとも有するから、軸直角方向突出部が軸方向突出部に当たったときの力を受けるための剛性を確保することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明を実施するための最良の形態を添付図に基づいて以下に説明する。なお、図面は符号の向きに見るものとする。
図1は本発明に係るハンドルストッパ構造を採用した車両の側面図であり、車両としての不整地走行車両10は、車体フレーム11の中央部にエンジン12及び変速機13からなるパワーユニット14を搭載し、変速機13の前部にフロントプロペラシャフト16を介してフロント終減速装置17を連結し、このフロント終減速装置17に図示せぬドライブシャフトを介して左右の前輪18,18を連結し、変速機13の後部にリヤプロペラシャフト21を介してリヤ終減速装置22を連結し、このリヤ終減速装置22に図示せぬドライブシャフトを介して左右の後輪23,23を連結し、前輪18,18を操舵する操舵力を軽減する電動パワーステアリングユニット24を備えた四輪駆動車である。
【0017】
車体フレーム11は、前後に延ばすとともに前部を下方に屈曲させた左右一対のアッパメインフレーム31,32(手前側の符号31のみ示す。)と、これらのアッパメインフレーム31,32の下端及び中間部のそれぞれに連結した左右一対のロアメインフレーム34,36(手前側の符号34のみ示す。)と、アッパメインフレーム31,32及びロアメインフレーム34,36のそれぞれに渡して連結することで電動パワーステアリング装置24の下部を支持する左右一対の傾斜フレーム43,44(手前側の符号43のみ示す。)と、アッパメインフレーム31,32及び傾斜フレーム43,44のそれぞれに渡して連結した左右一対のサブ傾斜フレーム46,47(手前側の符号46のみ示す。)とを備える。
アッパメインフレーム31,32は、上端にバーハンドル37を取付けたステアリングシャフト38の上部を回転自在に支持する部材である。
【0018】
ここで、55はフロントキャリア、56は前輪18の上方及び後方を覆うフロントフェンダ、57は燃料タンク、58はシート、61はリヤキャリア、62はエンジン12のシリンダヘッド63の後部側に連結したキャブレタ、66はキャブレタ62にコネクティングチューブ67を介して連結したエアクリーナ、68はシリンダヘッド63の前部から車両後方に延ばした排気管、69は排気管68の後端に接続した消音器、71はロアメインフレーム34,36側に対して後輪23,23をスイング自在に支持するスイングアーム、72,72(手前側の符号72のみ示す。)はスイングアーム71とアッパメインフレーム31,32側とに渡して取付けた左右一対のリヤクッションユニット、73はパワーユニット14の側方に配置したボディサイドカバー、74は後輪23の上方及び前方を覆うリヤフェンダ、75はステップフロア、76は左右のロアメインフレーム34,36の前部下部及びロアメインフレーム34,36の前方を覆うスキッドプレートである。
【0019】
図2は本発明に係る車両の要部側面図であり、車体フレーム11の上部でステアリングシャフト38の中間部を回転自在に支持し、ステアリングシャフト38の下端部に電動パワーステアリングユニット24の上部に備えるインプットシャフト81を連結し、この電動パワーステアリングユニット24の下部を車体フレーム11の下部に取付けるとともに、電動パワーステアリングユニット24の下部に備えるアウトプットシャフト82を車体フレーム11の下部で回転自在に支持したことを示す。
【0020】
ステアリングシャフト38は、上端にバーハンドル37(図1参照)を取付けたアッパシャフト85と、このアッパシャフト85の下端に上端を溶接にて接合したミドルシャフト86と、このミドルシャフト86にセレーション結合するとともに下端をインプットシャフト81にセレーション結合したロアシャフト87とからなる。
【0021】
アッパシャフト85は、左右のアッパメインフレーム31,32に渡して取付けたステアリング支持ブラケット88に上部軸受部91を介して回転自在に取付けた部材であり、下端にミドルシャフト86の上端に嵌合する大径部85aを形成している。
【0022】
ミドルシャフト86は、ロアシャフト87に形成した雄セレーション87aに結合する雌セレーション86aを形成するとともに、雌セレーション86a側と外周面側とに通じる軸方向に延びる割り溝86bを形成し、この割り溝86b(図4参照)の両縁部にそれぞれ突出部86c、86d(奥側の符号86dのみ示す。)を一体成形し、突出部86cにめねじ(不図示)を形成し、突出部86dにボルト挿通穴86eを開け、このボルト挿通穴86eにボルト92を通し、ボルト92の先端を突出部86cのめねじにねじ込むことで、ミドルシャフト86でロアシャフト87の上端を締め付ける。
【0023】
ロアシャフト87は、ステアリングシャフト38の下端部を構成するとともにインプットシャフト81に接続された筒状の部材であり、中間部に大径部87bを形成し、内周面にインプットシャフト81に形成した雄セレーション81aに結合する雌セレーション87dを形成した部材であり、大径部87bで軸方向に位置決めするようにステアリングシャフト38の軸直角方向且つ後方に突出する軸直角方向突出部材90を嵌合及び溶接にて取付けた部材である。
【0024】
ステアリング支持ブラケット88は、アッパメインフレーム31,32に渡したクロス部材93と、このクロス部材93に取付けた左右のボス部94,94(手前側の符号94のみ示す。)とからなり、ボス部94,94にそれぞれボルト95をねじ込むことで上部軸受部91を固定する。
【0025】
上部軸受部91は、アッパシャフト85に滑り自在に嵌合させたブッシュ(不図示)と、このブッシュを保持する一対の保持金具97,97とからなり、これらの保持金具97,97がボルト95,95でボス部94,94にそれぞれ共締めされる。
【0026】
電動パワーステアリングユニット24は、上部を覆うハウジング101を付設したものであり、ハウジング101は、下部を電動パワーステアリングユニット24のギヤケース102に複数のボルト(不図示)で取付けられ、上部で中間部軸受部104を介してロアシャフト87を回転自在に支持した部材である。
【0027】
中間部軸受部104は、ハウジング101の上部に開けた穴部101a及びロアシャフト87に嵌合された複列式の上部ベアリング107と、この上部ベアリング107の一端を位置決めする止め輪108と、ロアシャフト87の先端のおねじ87fにねじ込むことで上部ベアリング107にロアシャフト87を固定するためのナット113とからなる。
【0028】
上部ベアリング107は、両側にそれぞれシール111,114が付いたシールベアリングであり、このように、上部ベアリング107の両側がシールされているので、他にシールを設ける必要がなく、部品点数削減、構造のコンパクト化を図ることができる。
【0029】
以上に示したように、ステアリングシャフト38のロアシャフト87は、その上端部をアッパシャフト85にミドルシャフト86を介して結合され、その下端部を電動パワーステアリングユニット24のインプットシャフト81と共に上部ベアリング107を介してハウジング101で支持された部材である。
【0030】
電動パワーステアリングユニット24は、前述のインプットシャフト81及びアウトプットシャフト82と、操舵トルクを検出するトルクセンサ部121と、操舵力を補助する動力を発生させるパワーアシスト部122とからなり、トルクセンサ部121によって検出した操舵トルク等に基づいてパワーアシスト部122を図示せぬ制御装置で制御する。
【0031】
トルクセンサ部121は、インプットシャフト81とアウトプットシャフト82とに連結したトーションバー126を備えたものである。
バーハンドル37(図1参照)の操作によりインプットシャフト81を回転させると、インプットシャフト81とアウトプットシャフト82との間に相対回転角が生じ、トーションバー126が捩られる。この捩れ量をトルクに変換することで操舵トルクが求まる。
【0032】
パワーアシスト部122は、電動モータ128と、この電動モータ128の出力軸及びアウトプットシャフト82のそれぞれの間に介在されたクラッチ(不図示)及び減速機(不図示。ウォームギヤ及びウォームホイールからなる。)とで構成された部分である。
【0033】
電動パワーステアリングユニット24は、アウトプットシャフト82よりも前側のギヤケース102をアッパメインフレーム31,32及び傾斜フレーム43,44に渡して取付けられたプレート状の下部ブラケット131に前部支持部材132を介してボルト133で取付け、アウトプットシャフト82よりも後側のギヤケース102を傾斜フレーム43,44に設けられた後部支持部材134にボルト136で取付けたものである。
【0034】
このように、電動パワーステアリングユニット24は、ギヤケース102の下部を前部支持部材132及び後部支持部材134の前後2箇所でアウトプットシャフト82を挟むように支持される部材である。
【0035】
制御装置は、トルクセンサ部121により検出された操舵トルク、舵角センサ(不図示)により検出された舵角、不整地走行車両10(図1参照)の車速等に基づいてパワーアシスト部122を制御する。
【0036】
アウトプットシャフト82を回転自在に支持する下部軸受部140は、下部ブラケット131の中央部に取付けられた軸支持部材141と、アウトプットシャフト82を回転自在に支持するために軸支持部材141に取付けられた自動調心式の下部ベアリング142と、この下部ベアリング142をダスト等から保護するためのシール部材143とを備える。
【0037】
軸支持部材141は、車両前方側にアウトプットシャフト82にほぼ沿って下側に突出する下方突出部141aを形成したものである。
147はセンターアームであり、雌スプライン147aを形成することで、この雌スプライン147aをアウトプットシャフト82の下端部に形成された雄スプライン82aとスプライン結合する。
【0038】
151はボールジョイントであり、端部に設けられたボルト部151aをセンターアーム147の後部にナット152で取付けた部材である。
154はアウトプットシャフト82の先端に設けられたおねじにねじ結合することでアウトプットシャフト82にセンタアーム147を固定するナットである。
上記した軸支持部材141の下方突出部141aとセンターアーム147の一対の側方突出部(不図示)とは、下部ハンドルストッパ156(詳細は図6で説明する。)を構成するものである。
【0039】
図3は本発明に係る上部ハンドルストッパを説明する要部側面図であり、ステアリングシャフト38の下端部を構成するロアシャフト87に軸直角方向突出部材90を取付け、ハウジング101の上端にステアリングシャフト38の軸方向に突出する左右一対の軸方向突出部101A,101B(手前側の符号101Aのみ示す。)を一体成形し、これらの軸直角方向突出部材90と軸方向突出部101A,101Bとで、ステアリングシャフト38の回動角度を所定角度に規制する上部ハンドルストッパ161を構成したことを示す。
【0040】
軸方向突出部101Aは、ハウジング101の上面101bに円弧面101cを介して接続されてステアリングシャフト38の軸線38Aに沿って延びるストッパ面101dと、このストッパ面101dの上縁から上面101bにほぼ平行に延びる上端面101eと、この上端面101eから上面101bへ下るように傾斜した斜面101fとを備える。 ストッパ面101dは軸直角方向突出部材90が当たる部分である。
【0041】
図4は図3の4−4線断面図であり、ハウジング101の上端部に軸方向突出部101A,101Bを設け、ハウジング101の上部で上部ベアリング107を介してロアシャフト87を回転自在に支持し、上部ベアリング107に近接するようにロアシャフト87に軸直角方向突出部材90を取付けたことを示す。なお、86fは突出部86cに形成されためねじである。
【0042】
軸方向突出部101Bは、軸方向突出部101Aと左右対称な形状であり、ストッパ面101hを備え、他の部分の名称及び符号は軸方向突出部101Aと同一である。
上部ベアリング107を支持するハウジング101の上部は、厚肉に形成されてステアリングシャフト38のロアシャフト87及び電動パワーステアリングユニットのインプットシャフト81(図2参照)を支持するのに必要な剛性を有する。このハウジング101の上部の剛性はハウジング101の他の部分の剛性よりも大きい。
【0043】
従って、このような剛性を有するハウジング101の上部の上部ベアリング107の近傍に軸方向突出部101A,101B及び軸直角方向突出部材90を設けることで、ステアリングシャフト38が回動して軸直角方向突出部材90が軸方向突出部101A,101Bの一方に当たったときの荷重を上記したハウジング101の上部の大きな剛性で支えることができる。
【0044】
また、軸方向突出部101A,101Bと軸直角方向突出部材90との間には、上部ベアリング107及びロアシャフト87が介在するだけであるから、従来のハンドルストッパに比べてハンドルストッパを構成する2部品間に介在する部品数が少ないため、各部品(上部ベアリング107及びロアシャフト87)の累積する寸法誤差が小さくなり、軸方向突出部101A,101Bと軸直角方向突出部材90との間の寸法精度が高まり、所定の回動角度(後述するθ1)の精度を容易に確保することができる。
【0045】
図5は本発明に係る上部ハンドルストッパを説明する平面図であり、軸直角方向突出部材90(輪郭を太線で示した部分である。)は、ロアシャフト87に取付けられた環状部90aと、この環状部90aから左方斜め後方に延びる左突出部90bと、この左突出部90bに隣り合うように形成されるとともに環状部90aから右方斜め後方に延びる右突出部90cとからなる。
【0046】
左突出部90bは、回動したときにハウジング101のストッパ面101dに当たる当たり面90eが形成された部分であり、右突出部90cは、回動したときにハウジング101のストッパ面101hに当たる当たり面90fが形成された部分である。
【0047】
ストッパ面101dと当たり面90eとの間、及びストッパ面101hと当たり面90fとの間のそれぞれの角度θ1は、バーハンドルの操舵角ゼロからの時計回り及び反時計回りのロアシャフト87(即ち、ステアリングシャフト38(図2参照))の回動角度である。
【0048】
ハウジング101は、軸方向突出部101A,101Bが上部に形成された筒状部101kと、この筒状部101kの下縁に形成されたフランジ部101m,101n,101p,101qとを備え、これらのフランジ部101m,101n,101p,101qにそれぞれ、ハウジング101を電動パワーステアリングユニットのギヤケース102(図2参照)に取付けるボルトを挿入するためのボルト挿通穴101rが開けられている。
【0049】
図6は本発明に係る下部ハンドルストッパを説明する平面図である。
軸支持部材141は、下方突出部141aの左右にストッパ面141c、141dが形成されたものである。
【0050】
センターアーム147は、左右に側方突出部147f,147gを備え、側方突出部147fは、回動したときに下方突出部141aのストッパ面141cに当たる当たり面147jが形成された部分であり、側方突出部147gは、回動したときに下方突出部141aのストッパ面141dに当たる当たり面147kが形成された部分である。
【0051】
ストッパ面141cと当たり面147jとの間、ストッパ面141dと当たり面147kとの間のそれぞれの角度θ2は、バーハンドルの操舵角ゼロからの時計回り及び反時計回りのアウトプットシャフト82の回動角度であり、図5に示したロアシャフト87の回動角度θ1よりも大きい。即ち、上部ハンドルストッパ161(図6参照)は下部ハンドルストッパ156よりも先に作動する、即ち先に回動角度規制が行われる。
【0052】
図中の165,166はタイロッドであり、センターアーム147の後部に設けられたタイロッド連結部147c,147dに連結され、これらのタイロッド165,166が左右の前輪18,18(図1参照)に連結されて、アウトプットシャフト82の回転に伴い、前輪18,18(図1参照)が転舵される。
【0053】
以上の図1、図2及び図5に示したように、本発明は第1に、車体フレーム11に電動パワーステアリングユニット24が取付けられ、この電動パワーステアリングユニット24の上部に備えるインプットシャフト81にステアリングシャフト38を介してバーハンドル37が取付けられ、電動パワーユニット24の下部に備えるアウトプットシャフト82が車輪18,18側に連結され、ステアリングシャフト38と電動パワーステアリングユニット24の上部に付設されるとともにステアリングシャフト38の下部を支持するハウジング101との間にステアリングシャフト38の回動角度を所定角度θ1に規制する上部ハンドルストッパ161が設けられた車両10において、上部ハンドルストッパ161を、ステアリングシャフト38から軸直角方向に突出する軸直角方向突出部材90と、この軸直角方向突出部材90の回動を規制するためにハウジング101からステアリングシャフト38の軸方向に突出する軸方向突出部101A,101Bとから構成したことを特徴とする。
【0054】
これにより、軸方向突出部101A,101Bをハウジング101からステアリングシャフト38の軸方向に突出させることで、ステアリングシャフト38から軸直角方向に突出する軸直角方向突出部材90を短くすることができ、上部ハンドルストッパ161が占有するスペースを小さくすることができる。従って、電動パワーステアリングユニット24周りの小型化を図ることができる。
【0055】
また、ステアリングシャフト38の軸直角方向突出部材90とハウジング101の軸方向突出部101A,101Bとの間には、ハウジング101のステアリングシャフト38を支持する部分、即ち、上部ベアリング107が介在するだけである。詳しくは、上部ベアリング107に加えて、ステアリングシャフト38の一部分であるロアシャフト87が存在するだけであるから、従来技術に比べて、軸直角方向突出部90と軸方向突出部101A,101Bとの間に介在する部品数を少なくして累積する寸法誤差を小さくすることができ、軸直角方向突出部90と軸方向突出部101A,101Bとの距離の精度を高めることができる。従って、上部ステアリングストッパ161の回動規制精度を高めることができる。
【0056】
本発明は第2に、図4に示したように、軸方向突出部90を、ステアリングシャフト38を回動自在に支持するためにハウジング101に設けられた軸受としての上部ベアリング107の近傍に設けたことを特徴とする。
【0057】
これにより、上部ベアリング107が設けられた部分はステアリングシャフト38を支持するだけの剛性を少なくとも有するから、軸直角方向突出部90が軸方向突出部101A,101Bに当たったときの力を受けるための剛性を確保することができる。
【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明のハンドルストッパ構造は、不整地走行車両等の四輪車に好適である。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】本発明に係るハンドルストッパ構造を採用した車両の側面図である。
【図2】本発明に係る車両の要部側面図である。
【図3】本発明に係る上部ハンドルストッパを説明する要部側面図である。
【図4】図3の4−4線断面図である。
【図5】本発明に係る上部ハンドルストッパを説明する平面図である。
【図6】本発明に係る下部ハンドルストッパを説明する平面図である。
【符号の説明】
【0060】
10…車両(不整地走行車両)、11…車体フレーム、18…車輪(前輪)、24…電動パワーステアリングユニット、37…バーハンドル、38…ステアリングシャフト、81…インプットシャフト、82…アウトプットシャフト、90…軸直角方向突出部(軸直角方向突出部材)、101…ハウジング、101A,101B…軸方向突出部、107…軸受(上部ベアリング)、161…ハンドルストッパ(上部ハンドルストッパ)、θ1,θ2…回動角度。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体フレームに電動パワーステアリングユニットが取付けられ、この電動パワーステアリングユニットの上部に備えるインプットシャフトにステアリングシャフトを介してバーハンドルが取付けられ、前記電動パワーユニットの下部に備えるアウトプットシャフトが車輪側に連結され、前記ステアリングシャフトと前記電動パワーステアリングユニットの上部に付設されるとともにステアリングシャフトの下部を支持するハウジングとの間にステアリングシャフトの回動角度を所定角度に規制するハンドルストッパが設けられた車両において、
前記ハンドルストッパは、前記ステアリングシャフトから軸直角方向に突出する軸直角方向突出部と、この軸直角方向突出部の回動を規制するために前記ハウジングからステアリングシャフトの軸方向に突出する軸方向突出部とから構成されたことを特徴とする車両のハンドルストッパ構造。
【請求項2】
前記軸方向突出部は、前記ステアリングシャフトを回動自在に支持するために前記ハウジングに設けられた軸受の近傍に設けられていることを特徴とする請求項1記載の車両のハンドルストッパ構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−56137(P2008−56137A)
【公開日】平成20年3月13日(2008.3.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−236526(P2006−236526)
【出願日】平成18年8月31日(2006.8.31)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】