説明

車両のボンネットの組立方法

本発明は、第1の材料からなるアウタパネル(10)と、第1の材料とは異なる第2の材料からなるライニング(12)とを含む、車両のボンネットの組立方法に関し、前記方法は、樹脂を主成分とする接着剤を、ボンネットが組み立てられるときに接着剤がアウタパネルとライニングとの間に配置されるように、アウタパネルまたはライニングに塗布するステップと、接着剤の少なくとも一部を硬化する硬化ステップとを含み、この硬化ステップが、場合によっては、ボンネットを電気泳動浴に含浸した後で、必要に応じて行われるボンネットの乾燥処理ステップとは別に行われる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両のボンネットに関し、特に、このようなボンネットの組立方法に関する。
【背景技術】
【0002】
双方とも同一材料からなるライニングとアウタパネルとを有するボンネットが知られている。アウタパネルとライニングは組み立てられ、特に、高温で硬化可能な接着剤すなわち所定の温度を超えると固まる接着剤を用いて、最終的に周辺部で相互固定される。たとえばエポキシ樹脂を主成分とする接着剤が用いられる。
【0003】
このようなボンネットの組立方法は、次のように行われる。第1のステップのときに、接着剤が、アウタパネルおよびライニングのいずれか一方にペースト状(または未加工)で塗布される。この2つのボンネット部材は、その後、互いに当接される。組立方法のこの段階では接着剤が硬化されていないので、接着剤は、アウタパネルとライニングをまだしっかりと保持することができない。その場合、アウタパネルとライニングは嵌合される。同様に、アウタパネルおよびライニングは、双方の局部的な打ち抜きに対応する点結合、特に溶接および/またはクリンチ(clinchage)によって、周辺部で局部的に一緒に保持可能にされる。
【0004】
このように保持されたボンネットは、その後、車両の車体に取り付けられ、車体と共に電気泳動浴に導かれる。電気泳動浴は、特に腐食から車体を保護することを可能にする1つまたは複数の浴に車体を含浸することからなる。このステップの後に乾燥処理ステップが行われ、ボンネットを備えた車体が乾燥のために加熱される。恒温器の温度によっても同様に、アウタパネルとボンネットのライニングとを結合する接着剤の硬化が可能である。
【0005】
このようにして、従来技術では、乾燥処理ステップのときにアウタパネルとボンネットのライニングが最終的に組み立てられ、このとき、ボンネットは既に車体に取り付けられている。
【0006】
アウタパネルとライニングが同一材料または異なる2つの材料から構成される一方で、熱に関する挙動がきわめて近く、特に熱膨張特性が同様のものである場合、上記の方法は、アウタパネルとライニングとを互いに申し分なく固定することができる。しかし、本発明の発明者は、このような方法が、たとえばアルミニウム等の第1の材料から構成されたアウタパネルと、温度に対して著しく異なる挙動を有する第2の材料、たとえばプラスチック材料、特にSMC(Sheet Moulding Compound)等の熱硬化性材料から構成されたボンネットのライニングとを備えるハイブリッドボンネットの事例には適さないことを確認した。
【0007】
実際、乾燥処理時は、恒温器内の温度が高いのでボンネットが膨張する。ライニングとアウタパネルとを構成する2つの材料が、温度に対して同じような挙動を有する場合、これらの材料は同じように膨張するので、所望の相対的な位置決めを保ちながら接着剤の硬化によって、アウタパネルとボンネットのライニングとを互いに固定することができ、ボンネットに対して予定されていた形状が守られる。その反対に、膨張状態にあるボンネットを横断面で示す図2に表されるように、アウタパネルがライニングよりも膨張する場合、その結果としてボンネットが変形してしまう。実際、乾燥処理ステップのとき、ライニングの端部22とアウタパネルの端部20は、まだ接着剤18によってしっかりと結合されているわけではなく、互いにスライドするので、膨張したアウタパネルの端部20とライニングの端部22の間の隙間D’は、当初予定されていた理論上の隙間D(図1に示す)とは異なる。ライニングがアウタパネルより膨張する場合も同様に変形が発生する。
【0008】
接着剤は、乾燥処理ステップのときに硬化するので、ライニングとアウタパネルは、相対的に不適切な位置決めによって互いに固定され、そのために冷却後は変形がそのまま残るが、これは、ライニングとアウタパネルが理論上の隙間Dとは異なる隙間D’を互いに有するときに固定されてしまうからである。このため、車両のフェンダ24とボンネットとの間の遊びJ’は、当初予定されていた遊びJ(図1に示す)とは異なることがある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、ボンネットと、たとえば車両のフェンダ等の車両の他の部材との遊びとレベリング調整(affleurements)とが守られるように、異なる2つの材料からなるアウタパネルとボンネットのライニングとの組立における幾何学的構造を改善することをめざしている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
このため、本発明は、第1の材料からなるアウタパネルと、第1の材料とは異なる第2の材料からなるライニングとを含む、車両のボンネットの組立方法を目的とし、この方法は、
ボンネットが組み立てられるときに、接着剤がアウタパネルとライニングとの間に配置されるように、アウタパネルまたはライニングに接着剤を塗布するステップと、
接着剤の少なくとも一部を硬化する硬化ステップとを含み、この硬化ステップが、場合によっては、電気泳動浴にボンネットを含浸した後で、必要に応じて行われるボンネットの乾燥処理ステップとは別に行われる。
【0011】
このようにして、接着剤の硬化は、たとえば加熱により行われるが、電気泳動浴への含浸に続く車体の乾燥のために予定されていた恒温器の温度よりも低い温度で実施されることができる。このため、ライニングとアウタパネルの熱膨張は、それほど大きくない。その結果、この2つの部材の膨張差は同様に小さく、ボンネットの変形は著しく低減される。従って、接着剤の塗布時に互いに位置決めされた位置に近い位置で、アウタパネルとライニングを最終的に固定することができる。さらに、加熱は恒温器内では行われずに、きわめて局部的に、たとえば接着剤ビードの位置で誘導により実施可能であるので、これによって、またアウタパネルとライニングとの膨張を最小化することができる。さらに、硬化ステップの際に、あらゆる膨張差を除去するように室温で硬化する接着剤を使用してもよい。このことによって、ボンネットの幾何学的構造を最大限尊重することができる。なぜなら、ボンネットの2つのパネルの間の膨張差が小さい製造ステップで、アウタパネルとライニングとの間で接着剤を硬化させるからである。
【0012】
実際、アウタパネルとライニングが既に互いに固定されているときに、ボンネットを電気泳動の恒温器に移すと、アウタパネルとライニングとの膨張差が、もはやアウタパネルとライニングとの相対的なスライドとなって表れず、ボンネットの輪郭の一時的な変化によって吸収され、ボンネットは、冷却後に最初の位置に戻る。接着剤がアウタパネルおよび/またはライニングに塗布される前に、ボンネットを電気泳動の恒温器に移す場合、2つのパネルは互いに膨張し、互いに自在にスライドするが、冷却後は双方の最初の相対位置に戻り、従って、電気泳動の恒温器の外での硬化ステップによって、所望の相対的な位置決めでアウタパネルとライニングとを固定することができる。
【0013】
さらに、硬化ステップは、電気泳動の恒温器にボンネットを移することとは別に行われるので、アウタパネルとライニングとの組立保持が改善される。実際、従来技術では、ボンネットが変形した状態で接着剤が硬化してしまうと、ボンネットは、冷却時にその最初の形態に戻る傾向がある。その場合、接着剤にせん断応力が観察され、そのために、アウタパネルとボンネットのライニングとの間の結合が脆弱化される。このようなせん断応力は、本発明による方法を利用する場合は介在しないか、あるいは規模がずっと小さいので、ボンネットの変形は小さく、アウタパネルとボンネットのライニングとの最終位置での固定を強固なものにすることができる。
【0014】
そのため、異なる材料からなるアウタパネルとライニングを含むボンネットの使用は、以前は、このようなボンネットを有する車両の幾何学的構造を保つことが難しいという理由であきらめる傾向があったが、本発明による方法は、車両の幾何学的構造を保ちながら、このタイプのボンネットを車両に装備することができる。このようなボンネットは、ボンネットの重量/製造コストの比率を最適化可能であり、たとえば歩行者の衝突時の処理に関してボンネットの荷重仕様に適切に対応するので非常に有利である。
【0015】
本発明による方法は、また、次のような1つまたは複数の特徴を含むことができる。
【0016】
第1および第2の材料が、以下のリスト、すなわち、
鋼またはアルミニウム等の金属材料と、
特にポリアミド(PA)またはポリプロピレン(PP)等の熱可塑性材料、あるいはSMC(Sheet Moulding Compound)またはAMC(Advanced Moulding Compound)等の熱硬化性材料等の、場合によっては繊維補強プラスチック材料と、
少なくとも1つのプラスチック材料と金属材料とを含む材料集合体と、の中から選択された異なる1つの材料カテゴリにそれぞれ属している。
【0017】
アウタパネルは、たとえばアルミニウムから製造可能であり、その一方でライニングはSMCまたはポリアミドから製造される。アウタパネルは、またプラスチック材料から製造可能であり、その一方でライニングはハイブリッド材料から製造される。
【0018】
硬化ステップのときに、アウタパネルおよび/またはライニング、特に、アウタパネルおよび/またはライニングの接着部分を局部的に加熱する。「接着部分」とは、接着剤が硬化されていない場合でも、ボンネットが組み立てられるときに接着剤に重なるアウタパネルまたはライニングの一部分を意味する。ここでは、アウタパネルとライニングとの接着部分を結合する接着剤が、ペースト状である。アウタパネルの局部的な加熱により、膨張するアウタパネルとライニングとの表面を小さくし、それによって2つの部品の膨張差とボンネットの変形とを低減しながら、接着剤を硬化させることができる。
【0019】
アウタパネルおよび/またはライニングを誘導またはジュール効果によって、または高温空気により加熱する。
【0020】
また、特に付加的な金属部品を介して誘導により加熱が行われる場合、および/または接着剤がこのタイプの加熱に反応する金属粒子を含む場合、アウタパネルおよび/またはライニングが加熱されることなく接着剤を加熱可能である。
【0021】
硬化ステップと同時に、接着部分とは異なるアウタパネルおよび/またはライニングの少なくとも一部を局部的に冷却する。これによって、接着部分の加熱により局部的に生じるアウタパネルおよび/またはライニングのわずかな膨張を、補償することができ、それによりボンネットの変形がさらに最小化される。このようにして、ボンネットと、車両のフェンダ等の車両の他の部材との最適な遊びとレベル調整とが得られる。
【0022】
加熱ステップが、場合によっては電気泳動浴への含浸前に実施され、また必要に応じて車両の車体へのボンネットの取り付け前に実施される。このようにして、溶接点またはクリンチ点等の予備的な保持手段を用いて、ボンネットとライニングを一時的に固定する必要性を回避することができる。これにより、時間と工具の節約となって、ボンネットの組立コストを安価にできる。そのため、ボンネットの組立方法で追加的な加熱ステップを付加することにより発生するコストを補償することができる。
【0023】
電気泳動浴への含浸に続いてボンネットを恒温器に移し、恒温器へボンネットを移すことに続いて、接着剤の塗布ステップが実施される。この場合、たとえばボンネットが車体に既に取り付けられていれば、ボンネットが移される恒温器の温度を懸念する必要はない。なぜなら、恒温器にボンネットを移すときには、まだライニングとアウタパネルとの間に接着剤が塗布されていないので、接着剤は、このように移すことによって硬化することがないからである。
【0024】
硬化ステップは、接着剤の一部だけが硬化される第1の硬化ステップであり、この方法が後段の第2の硬化ステップを含んでいる。
【0025】
第2の硬化ステップは、ボンネットを恒温器に移すステップである。このようにして、まず接着剤を部分的に硬化し、次いで電気泳動の恒温器にボンネットを移すことによって、接着剤を全面的に硬化することができる。第1の硬化ステップは、乾燥処理時にボンネットの変形を可逆的なものにするのに十分であり、すなわち恒温器に移す時に、アウタパネルとライニングとが互いにスライドしないようにするのに十分である。さらに、接着剤は、この第1のステップでは部分的に硬化されるだけなので、この第1のステップに必要な工具のコストを下げ、このステップに必要な使用時間を短縮することができる。
【0026】
接着剤は、エポキシ樹脂またはポリウレタン樹脂(PU)を主成分としており、好適には導電性の添加剤を含んでいる。特にポリウレタンを使用することが有利であるが、その理由は、このタイプの接着剤は、一段と柔軟性があり、たとえばボンネットの寿命中あるいは恒温器にボンネットを移した時に発生するアウタパネルとライニングとの膨張差によりよく耐えるからである。接着剤は、ボンネットを恒温器に移す前に少なくとも部分的に硬化されている。導電性の添加剤、たとえば金属添加剤は、アウタパネルとライニングとの間で熱伝達をしやすくし、特に加熱が誘導用の局部的な加熱である場合、接着剤の硬化を容易にすることができる。
【0027】
アウタパネルおよび/またはライニングは、少なくとも1つの金属部材を含み、この金属部材は、ボンネットが組み立てられたときに、接着剤が金属部材を被覆するように配置されている。さらに、本発明による方法では、好適には、この金属部材に接着剤を塗布する。この金属部材は、たとえば金属ブレードであって接着剤の経路に配置されており、同様に、アウタパネルとライニングとの間で熱伝達をしやすくし、それによって接着剤の硬化を容易にすることができる。
【0028】
ライニングまたはアウタパネルの周辺部で少なくとも1つの縁に沿って、好適には連続して接着剤を塗布することにより、アウタパネルとライニングとの適切に保持できるようにする。
【0029】
本発明は、また、
第1の材料からなるアウタパネルと、
第1の材料とは異なる第2の材料からなるライニングとを含み、
樹脂を主成分とする接着剤を用いてアウタパネルがライニングに接着されることを特徴とする、車両用ボンネットを目的とする。
【0030】
第1および第2の材料は、それぞれ、上記のリストに属する異なる1つのカテゴリから選択可能である。
【0031】
任意選択として、ボンネットは、接着部分の付近に、たとえば溶接、クリンチ(または打ち抜き)、リベット締めまたはスナップ係合による、アウタパネルとライニングとの点結合を備えない。実際、従来技術のボンネットの予備的な保持手段を形成するこのような点結合は、本発明による方法の実施形態を利用する場合はもはや不要である。
【0032】
本発明は、添付図面を参照しながら例としてのみ上げられた以下の説明を読めばいっそう理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明による実施形態のボンネットを示す横断面図である。
【図2】膨張した状態で図1のボンネットを示す横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
次に、本発明の特定の実施形態によるボンネットの組立方法について説明する。
【0035】
この方法を用いる前に、互いに完全に独立したアウタパネル10とボンネットのライニング12とを配置する。アウタパネル10は、たとえばアルミニウムから形成され、ライニング12は、SMC(Sheet Moulding Compound)等の繊維補強された熱硬化性材料から構成される。
【0036】
アウタパネルは、ほぼ平面であり、車両の外側のラインに沿っている。ライニング12は、長手方向の凹部14を含み、各凹部が1つの空洞を画定し、ライニングとアウタパネルが組み立てられるときに中空の本体を形成するようにされている。
【0037】
アウタパネルとボンネットのライニングとを組み立てる場合、ライニングの中央部分に各々の長手方向凹部に沿ってマスチック16を配置し、また、ライニングの周辺全体に連続して延びるように構成された接着剤18を線状に配置する。マスチック16と接着剤18は、アウタパネル側に向けられるように構成されたライニングの面に塗付される。接着剤18は、ポリウレタン(PU)を主成分とするものである。
【0038】
その後、ボンネットのアウタパネル10をライニング12に関して位置決めし、アウタパネルをライニングに押しつける。その場合、アウタパネルの横方向に沿ってアウタパネルの端部20を変形させ、ライニングの対応する横方向端部22の下にこれらを折り込むようにして、ライニングとアウタパネルとを嵌合する。
【0039】
次に、ライニングとアウタパネルとを最終的に一緒に固定するために、ボンネットをその周辺付近で局部的に加熱することにより、接着剤が硬化して、アウタパネルとライニングとを一緒にしっかりと保持するようにする。このステップは電気加熱素子を用いて行われる。
【0040】
このステップの最中、アルミニウム製のアウタパネルは、プラスチック製のライニングよりも膨張するので、冷却された外部部材を用いてアウタパネルを局部的に、たとえばその中心で冷却し、アウタパネルとライニングとの膨張差が著しく低減されるようにする。
【0041】
その場合、アウタパネルとライニングは、最初に位置決めされた状態で最終的に組み立てられる。図1のボンネットは、この状態で示されている。
【0042】
このようにして、ボンネットは、アウタパネルとライニングが位置決めされたときの形状と同じ形状を有するので、ボンネットが車両に取り付けられるとき、ボンネットと、フェンダ24等の車両の他の部品との遊びおよびレベル調整が満足のいくものになる。
【0043】
ボンネットは、自動車の車体に取り付けられる前に、従って、電気泳動浴に含浸されて乾燥処理に移行する前に、最終位置に組み立てられる。
【0044】
かくして、たとえば溶接、クリンチ、リベット締めまたはスナップ係合等による結合点を用いて、アウタパネルとライニングを一時的に固定する必要はない。
【0045】
さらに、ボンネットを含む車体の乾燥処理は、接着剤18が既に硬化されたときに実施されるので、ボンネットの最終形状に影響を及ぼさない。実際、ボンネットは、既に凝固しているときに電気泳動の恒温器に移るので、アウタパネルとライニングとの膨張差は、ボンネットの輪郭の一時的な変化となって表れ、冷却後は最初の位置に戻る。
【0046】
上記のような恒温器へ移った時に、接着剤は、アウタパネルとライニングとの膨張差のために、さまざまな応力、特にせん断応力を被る。しかしながら、使用される接着剤が、比較的柔軟な材料で構成されているので、接着剤が弾性変形可能であり、その場合、組立品の堅牢性は、こうした恒温器へ移した後のボンネットの通常の剛性に適合する。
【0047】
次に、本発明の別の実施形態による組立方法について説明する。アウタパネル10とライニング12は、上記の実施形態と同じである。
【0048】
この別の実施形態では、ボンネットのアウタパネル10を、ライニング12に関して位置決めする。その後、アウタパネルとライニングを、少なくともそれらの周辺部でスナップ係合による結合点(図示せず)を用いて固定する。このタイプの固定により、アウタパネルとライニングを予備的に保持することができる。
【0049】
次いで、ボンネットは、車体に取り付けられ、電気泳動と、この電気泳動に続く乾燥処理に移行する。
【0050】
その場合、スナップ係合による結合は取り外し可能であるので、ボンネットは、車体から取り外され、アウタパネルとライニングが分離される。次いで、アウタパネル側に向けられるライニング12の面で、中央部にマスチック16を配置し、装置の全周に、連続して延びる接着剤18を線状に配置する。
【0051】
その後、ライニングにアウタパネルを押しつけ、前述のように、アウタパネルの横方向の端部20とライニングの横方向の端部22で嵌め合わせる。
【0052】
次いで、ボンネットをその周辺部で局部的に加熱して、接着剤18を硬化させる。このステップは、金属製のアウタパネルの接着部分の誘導加熱を用いて実施され、アウタパネルとライニングは支持体で保持される。このようにしてボンネットは、その最終位置に組み立てられる。その後、車両の車体に再び取り付けられる。
【0053】
もちろん、本発明は、記載された実施形態に制限されるものではない。
【0054】
第1の実施形態による方法は、たとえば、接着剤の一部だけが硬化される第1の硬化ステップと、電気泳動の恒温器にボンネットを移して接着剤全体が硬化するステップからなる第2の硬化ステップとを含むことができる。この方法は、実際に第1の硬化ステップが短縮可能であり、ボンネットの組立時間をそれほどかけなくても、満足のいくボンネットの幾何学的構造が得られる。
【0055】
さらに、ボンネットの局部的な冷却ステップは、嵌合テップおよびボンネットへのマスチックの塗布ステップとまったく同様に、たとえば任意選択で行われる。この方法の第2の実施形態では、マスチックの塗布ステップは、同様に、ボンネットを電気泳動に移す前に実施してもよい。この方法の第2の実施形態では、同様に冷却ステップを実施可能である。
【0056】
さらに、硬化は、記載された以外の方法、たとえば高温空気による加熱によって、あるいは、ボンネットを室温に長時間放置することによって実施してもよい。第1の実施形態による方法では、加熱は、誘導により同様に実施可能にされており、第2の実施形態による方法では、電気素子により実施可能にされている。誘導加熱ステップは、ボンネットが車体に取り付けられるときに実施可能であり、これによってアウタパネルとライニングの位置をできるだけ正確に調整することができ、それによって、右側と左側のフェンダとの遊びを対称にすることができる。誘導加熱は、たとえボンネットのアウタパネルまたはライニングが完全に金属製でなくても同様に実施可能である。そのために、ボンネットのアウタパネルまたはライニングは、金属製の周辺ゾーンだけを含むか、あるいは、接着剤の付近に金属部品を付加可能にするハウジングだけを含み、および/または接着剤自体が金属添加物を含むことができる。この場合、アウタパネルまたはライニングが中間で加熱されることなく、接着剤が加熱可能にされる。
【0057】
アウタパネルとライニングを予備的に保持する手段もまた、記載された手段に制限されるものではない。これらの予備的な保持手段は、たとえば、リベット締め、溶接、またはクリンチによる結合手段を含むことができる。この場合、アウタパネルとライニングは取り外し不能であるが、しかし、接着剤の塗布と嵌合は、ボンネットを電気泳動に移した後で実施される。
【0058】
第2の実施形態による方法では、ボンネットを車体に取り付けないで電気泳動浴に移すことも同様に可能であり、それによって付加的な組立および取り外しステップを回避する。
【0059】
ボンネットは、必ずしもその全周ではなく側面の1箇所または2箇所だけに接着および/または嵌合可能であることにも留意されたい。接着剤がボンネットの片側に塗布されない場合、接着剤の代わりにマスチックが、この片側の縁に沿って塗布可能にされる。接着剤は、また、ボンネットの片側に連続して塗布しなくてもよい。
【0060】
さらに、接着剤は、記載された以外の材料からも構成可能である。接着剤の塗布ステップが、車体へのボンネットの組立前に行われても後に行われても、記載されたあらゆるタイプの接着剤を使用可能である。
【0061】
最後に、アウタパネルとライニングは、記載された形状に制限されるものではない。また記載された材料に制限されるものでもない。アウタパネルは、たとえば鋼から構成可能であり、ライニングは、ポリアミド(PA)等の熱可塑性材料または金属/プラスチックのハイブリッド材料から構成可能である。アウタパネルは、特に熱可塑性材料等のプラスチック材料からも同様に構成可能であり、ライニングは、SMCもしくはAMC(Advanced Moulding Compound)等の複合材料、または金属/プラスチック等のハイブリッド材料から構成される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のボンネットの組立方法であって、
前記ボンネットは、第1の材料からなるアウタパネル(10)と、第1の材料とは異なる第2の材料からなるライニング(12)とを含んでおり、
ボンネットが組み立てられるときに接着剤がアウタパネルとライニングとの間に配置されるように、アウタパネルまたはライニングに接着剤を塗布するステップと、
接着剤の少なくとも一部を硬化する硬化ステップとを含み、該硬化ステップが、場合によっては、電気泳動浴でボンネットを含浸した後で、必要に応じて行われるボンネットの乾燥処理ステップとは別に行われることを特徴とする、方法。
【請求項2】
第1および第2の材料が、以下のリスト、すなわち、
鋼またはアルミニウム等の金属材料と、
特にポリアミド(PA)またはポリプロピレン(PP)等の熱可塑性材料、あるいはSMC(Sheet Moulding Compound)またはAMC(Advanced Moulding Compound)等の熱硬化性材料等の、場合によっては繊維補強プラスチック材料と、
少なくとも1つのプラスチック材料と金属材料とを含む材料集合体と、の中から選択された異なる1つの材料カテゴリにそれぞれ属している、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
硬化ステップのときに、アウタパネルおよび/またはライニングまたは場合によっては接着剤のみ、特に、アウタパネルおよび/またはライニングの接着部分を局部的に加熱する、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
アウタパネルおよび/またはライニングまたは場合によっては接着剤だけを、誘導またはジュール効果により、または高温空気により加熱する、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
硬化ステップと同時に、接着部分とは異なるアウタパネルおよび/またはライニングの少なくとも一部を局部的に冷却する、請求項3または4に記載の方法。
【請求項6】
硬化ステップが、場合によっては電気泳動浴への含浸前に実施され、また必要に応じて車両の車体へのボンネットの取り付け前に実施される、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
電気泳動浴への含浸に続いてボンネットを恒温器に移し、恒温器へボンネットを移すことに続いて接着剤の塗布ステップが実施される、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
硬化ステップが、接着剤の一部だけが硬化される第1の硬化ステップであり、車両のボンネットの組立方法が、後段の第2の硬化ステップを含んでいる、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
第2の硬化ステップが、ボンネットを恒温器に移すステップである、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
接着剤(18)が、エポキシ樹脂またはポリウレタン樹脂(PU)を主成分としており、好適には導電性の添加剤、特に金属添加剤を含んでいる、請求項1から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
ライニング(12)またはアウタパネル(10)の周辺部で少なくとも1つの縁に沿って好適には連続して接着剤を塗布する、請求項1から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
アウタパネルおよび/またはライニングが、少なくとも1つの金属部材を含み、該金属部材が、ボンネットが組み立てられるときに接着剤が前記金属部材を被覆するように配置されており、好適には前記金属部材に接着剤を塗布する、請求項1から11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
第1の材料からなるアウタパネル(10)と、
第1の材料とは異なる第2の材料からなるライニング(12)とを含み、接着剤(18)を用いてアウタパネルがライニングに接着されることを特徴とする、車両用ボンネット。
【請求項14】
アウタパネルおよび/またはライニングの接着部分の付近に、たとえば溶接、クリンチ(または打ち抜き)、リベット締めまたはスナップ係合によるアウタパネルとライニングとの点結合を備えない、請求項13に記載のボンネット。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2012−501912(P2012−501912A)
【公表日】平成24年1月26日(2012.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−526541(P2011−526541)
【出願日】平成21年9月8日(2009.9.8)
【国際出願番号】PCT/FR2009/051689
【国際公開番号】WO2010/029251
【国際公開日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【出願人】(504037391)コンパニ・プラステイツク・オムニウム (11)
【Fターム(参考)】