説明

車両のレーダー装置の制御方法および制御装置

本発明は、車両(F1)のレーダー装置(1)の制御方法に関するものであり、送/受信ユニット(1.1)によってレーダー信号(RS)が送信および/または受信され、車両(F1)と該車両の前方に存在する対象物との間隔(DIST)が検出され、検出された間隔(DIST)に依存して、および/または無線データ伝送システムの信号(S)が検出される際に送/受信ユニット(1.1)の送信出力(P)が調整される。ここでは、最小降雨レート(RLOW)を上回るときに送/受信ユニット(1.1)の送信出力(P)が低減される。本発明はさらに、車両(F1)のレーダー装置(1)の制御装置に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の上位概念による車両のレーダー装置の制御方法に関する。本発明はさらに、請求項6の上位概念による車両のレーダー装置の制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1から、レーダー信号用の送信ユニットと受信ユニットを備える車両のための、いわゆる超広帯域レーダー(英語:Ultra Wide Band (=UWB))と呼ばれるレーダー装置が公知であり、このレーダー装置によって車両と、この車両の前方にある対象物との間隔が測定可能である。測定された間隔に依存して、危険信号が車両の運転者に出力可能であるか、または車両の安全システム、いわゆるプレクラッシュシステムが作動可能である。さらに通信機能によって、車両と対象物、特に同様に車両である対象物との間で、それぞれの固有の位置を伝送することができ、それによって車両の間隔を障害データの影響を受けずに測定することができる。さらにレーダー装置の動作周波数と伝送出力が固有の位置に依存して可変であり、それによって、電磁波によって操作される他のシステムへのレーダー装置の影響、およびこのシステムからレーダー装置への影響が減少される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】欧州特許公開第1785744号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の基礎とする課題は、車両のレーダー装置の改善された制御方法および制御装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この課題は、方法に関しては請求項1に記載された特徴によって、装置に関しては請求項6に記載された特徴によって解決される。
【0006】
本発明の有利な実施形態は、従属請求項の対象である。
【0007】
特に超広帯域レーダーである車両のレーダー装置の、本発明による制御方法では、送/受信ユニットによってレーダー信号が送信および/または受信され、車両とその前方にある対象物との間隔が検出され、送/受信ユニットの送信出力が、検出された間隔に依存して、および/または無線データ伝送システムの信号の検出の際に調整される。
【0008】
無線データ伝送システムは特に、いわゆる「固定無線サービス」と称される「固定サービス」であり、たとえば送信ポストである所定の固定ポイント間で伝送される。これはたとえば、固定無線サービスのポイント・ツー・ポイント指向性無線通信設備のための無線設備である。無線データ伝送システムが、数GHzの周波数帯域、特に18GHzから27GHzの周波数帯域を使用する場合、信号の伝送が降水、特に雨により不利な影響を受けることがある。というのは、データ伝送システムの伝送帯域幅が小さくなるからである。
【0009】
このように伝送帯域幅が小さいと、レーダー装置により送信されたレーダー信号によって障害が発生したり、データ伝送システムの信号との干渉が発生したりし、これによりシステムが悪影響を受けるので、本発明では、最小降雨レートを上回る場合に送/受信ユニットの送信出力が低減され、これにより特に有利にはデータ伝送システムの不利な影響が発生しない。
【0010】
本発明の方法を実施するために、車両のレーダー装置の本発明による制御装置は、レーダー信号を送信および受信するための送/受信ユニットと、制御ユニットとを含み、この制御ユニットに基づき、車両とこの車両の前方に存在する対象物との間隔に依存して、および/または無線データ伝送システムの信号を検出する際に、送/受信ユニットの送信出力が調整可能である。ここで制御ユニットは、最小降雨レートを上回る場合および/または最大降雨レートを下回る場合に、送信出力が低減可能であるように雨センサと接続されている。雨センサの高い信頼性と、雨センサが広く普及して使用されていることで、この装置はわずかな費用、従ってわずかなコストにより製造することができ、高い信頼性と耐久性を同時に特徴とする。
【0011】
本発明の実施例を、以下、図面に基づき詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】二つの車両の概略図である。
【図2】レーダー装置の制御方法のプログラムフローチャートの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
すべての図面において相互に対応する部分には、同じ参照符号が付してある。
【0014】
図1では、第1の車両F1と第2の車両F2が示されており、ここで第1の車両F1は間隔DISTをおいて第2の車両F2の後方を走行している。
【0015】
第1の車両F1はレーダー装置1を含んでおり、このレーダー装置は広い周波数帯域を有する超広帯域レーダーである。レーダー装置1は、レーダー信号RSを送信および受信するための送/受信ユニット1.1を含み、このレーダー信号は制御ユニット2に供給され、制御ユニットは、第1の車両のF1の前方にある第2の車両F2により反射されたレーダー信号RSから間隔DISTを検出する。検出された間隔DISTの大きさに依存して、たとえば種々の車両安全システムおよび/または運転者支援システム、特にいわゆるプレクラッシュシステムが制御可能である。
【0016】
さらに第1の車両F1は雨センサ3を含み、この雨センサによって目下の降雨レートRISTが車両F1で直接検出され、これに基づき第1の車両F1の詳細に図示していない窓ワイパーのインターバル速度を制御することができる。雨センサ3も同様に制御ユニット2と接続されている。
【0017】
さらに第1の車両F1は、制御ユニット2と接続された位置センサ4、たとえばGPSセンサを、第1の車両F1の目下の位置POSを検出するために含む。
【0018】
車両F1とF2の周囲には無線データ伝送システム5、特にいわゆるポイント・ツー・ポイントデジタル指向性無線通信設備が「固定サービス」または「固定無線サービス」の伝送のために存在しており、このサービスは信号Sの形で、二つの固定ポイントP1,P2間の伝送区間Xを介して伝送される。
【0019】
無線データ伝送システム5が、特に18GHzから27GHzの帯域にある周波数を使用する場合、信号Sの伝送が、降水、特に雨により不利な影響を受けることがある。というのは、データ伝送システム5の伝送帯域幅が小さくなるからである。
【0020】
車両F1のレーダー装置1のレーダー信号RSが、無線データ伝送システム5の信号Sと同じまたはほぼ同じ周波数で送信されると、データ伝送システム5の伝送帯域幅が減少する場合に、レーダー信号によって障害およびデータ伝送システム5の信号Sとの干渉が発生することがあり、従ってデータ伝送システム5の機能に不利に作用することがある。
【0021】
この理由から、送/受信ユニット1.1により信号Sが検出される場合、および制御ユニット2にファイルされた最小降雨レートRLOWを下回る場合には、レーダー装置1の送/受信ユニット1.1の送信出力Pが低減され、これによりデータ伝送システム5の不利な影響が回避される。ここで最小降雨レートRLOWの値は、車両F1bの窓ワイパーの拭き取りインターバル間の特定の第1のインターバル時間を下回るときに、この最小降雨レートが検出されるよう制御ユニット2にファイルすることができる。この第1のインターバル時間はすでに述べたように、雨センサ3により求められた降雨レートRISTに基づき制御される。
【0022】
最大降雨レートRHIGHを上回る場合には伝送区間Xを使用することができず、従って信号SをポイントP1とP2との間で伝送することができないから、制御ユニットに基づいて目下の降雨レートRISTが最大降雨レートRHIGHとさらに比較される。最大降雨レートRHIGHを上回ると、送/受信ユニット1.1の送信出力Pは低減されないか、または低減が行われた後に再び上昇される。最大降雨レートRHIGHの値はたとえば制御ユニット2に、車両F1の窓ワイパーの拭き取りインターバル間の第2の所定のインターバル時間を上回ると最大降雨レートRHIGHが存在するようにファイルされており、ここで第2のインターバル時間は第1のインターバル時間より小さい。
【0023】
レーダー装置1は先行する第2の車両F2までの間隔DISTを求めるために設けられているので、送/受信ユニット1.1の送信出力Pは、目下の間隔DISTが制御ユニット2にファイルされている最小間隔DLOWより小さくなるとさらに減少され、これにより送信出力Pは常に、間隔DISTを常に確実に検出することを保証するための適切な大きさとなっている。最小間隔DLOWよりも大きな間隔DISTを互いに有する車両F1とF2にレーダー装置1が組み込まれている場合における、データ伝送システム5の伝送区間Xの不利な作用もほんのわずかであるか、または存在しない。すなわち車両F1またはF2のレーダー装置1の送信出力Pは、データ伝送システム5の伝送区間Xに不利な作用を引き起こすほどの大きさではない。
【0024】
降水値が頻繁に高い地域、特に降雨の多いことを特徴とする地域では、データ伝送システム5が信号Sの伝送のために、降雨確率の小さい地域Aよりも大きな帯域幅で駆動される。降水値の高い地域では、信号Sを伝送するための帯域幅が大きいため、レーダー装置1のレーダー信号RSによるデータ伝送システム5の不利な影響が発生しない。
【0025】
この理由から、車両F1の制御ユニット2には、降雨確率の小さい地域Aが記憶されており、送信出力Pの低減はこの地域Aでだけ行われる。位置センサ4によって車両F1の位置POSが検出され、制御ユニット2に基づいて車両F1が地域Aにいるかどうか導き出される。
【0026】
図2は、レーダー装置1の制御方法の可能な実施例のプログラムフローチャートを示す。
【0027】
ここではまず、地域A、目下の降雨レートRIST、車両F1とF2との目下の間隔DIST、および無線データ伝送システム5の信号Sが検出される。
【0028】
車両F1の目下の位置POSが降雨の少ない地域Aにあり、目下の降雨レートRISTが最小降雨レートRLOWより大きく、かつ最大降雨レートRHIGHより小さく、同時に最小間隔DLOWを下回り、信号Sが検出される場合、状態が値「1」にセットされ、送/受信ユニット1.1の送信出力Pが減少され、この減少はたとえば20%またはそれより大きな値である。
【0029】
前述のように、データ伝送システム5の信号Sの存在を検査する他に、信号Sの周波数を検出し、レーダー信号RSの周波数と信号Sの周波数とがほぼ一致する場合、すなわち類似の周波数帯域に存在する場合にだけ送信出力Pを低減することがさらに有利である。
【0030】
前記の条件が満たされない場合、送信出力Pは直ちにではなく、所定の時間インターバルの後で初めて上昇される。この目的のためにカウント変数Nが設けられており、このカウント変数は条件が満たされない場合に方法の各実行の際に、所定の限界値NOUTに達するまで高められる。
【0031】
たとえば一回の実行で100msのサイクル時間が設定されていれば、カウント変数Nは各実行で「100」だけ高められる。同時に限界値NOUTが「600」に設定されていれば、送信出力Pは条件が成立しなくなると60秒で高められる。これにより送信出力Pが常に、上昇したり低下したりすることが回避される。
【0032】
カウント変数Nは、すべての条件が満たされると値「ゼロ」にセットされる。
【符号の説明】
【0033】
1 レーダー装置
1.1 送/受信ユニット
2 制御ユニット
3 雨センサ
4 位置センサ
5 無線データ伝送システム
A 地域
IST 間隔
LOW 最小間隔
F1 車両
F2 車両
N カウント変数
OUT 限界値
P 送信出力
P1 ポイント
P2 ポイント
POS 位置
HIGH 最大降雨レート
IST 降雨レート
LOW 最小降雨レート
RS レーダー信号
S 信号
X 伝送区間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両(F1)のレーダー装置(1)の制御方法であって、送/受信ユニット(1.1)によってレーダー信号(RS)が送信および/または受信され、車両(F1)と該車両の前方に存在する対象物との間隔(DIST)が検出され、検出された間隔(DIST)に依存して、および/または無線データ伝送システムの信号(S)が検出される際に送/受信ユニット(1.1)の送信出力(P)が調整される方法において、
最小降雨レート(RLOW)を上回るときに送/受信ユニット(1.1)の送信出力(P)が低減されることを特徴とする、方法。
【請求項2】
最小降雨レート(RLOW)を上回り、最大降雨レート(RHIGH)を下回るときに送/受信ユニット(1.1)の送信出力(P)が低減されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
車両(F1)が所定の地域(A)に存在するときに送信出力(P)が低減されることを特徴とする、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
無線データ伝送システム(5)の信号(S)の周波数が、レーダー信号(RS)の周波数にほぼ対応するときに、送信出力(P)が低減されることを特徴とする、請求項1から3までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
送信出力の低減のための条件の少なくとも一つが満たされなくなると、所定の時間インターバル後に送信出力(P)が高められることを特徴とする、請求項1から4までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
車両(F1)のレーダー装置(1)の制御装置であって、レーダー信号(RS)を送信および受信するための送/受信ユニット(1.1)と制御ユニット(2)とを含み、該制御ユニットに基づき、車両(F1)と該車両の前方に存在する対象物との間隔(DIST)に依存して、および/または無線データ伝送システムの信号(S)が検出される際に送/受信ユニット(1.1)の送信出力(P)が調整される装置において、
前記制御ユニット(2)は、最小降雨レート(RLOW)を上回る場合および/または最大降雨レート(RHIGH)を下回る場合に、送信出力(P)が低減可能であるように雨センサ(3)と接続されていることを特徴とする、装置。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2012−517005(P2012−517005A)
【公表日】平成24年7月26日(2012.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−548585(P2011−548585)
【出願日】平成22年2月2日(2010.2.2)
【国際出願番号】PCT/EP2010/000603
【国際公開番号】WO2010/089074
【国際公開日】平成22年8月12日(2010.8.12)
【出願人】(598051819)ダイムラー・アクチェンゲゼルシャフト (1,147)
【氏名又は名称原語表記】Daimler AG
【住所又は居所原語表記】Mercedesstrasse 137,70327 Stuttgart,Deutschland
【Fターム(参考)】