説明

車両のロール警報装置及びロール警報方法

【課題】 簡単な処理によって車両の走行状態に応じた最適時にロール警報を発する。
【解決手段】 車速センサ22は車速を検出し、傾き量算出部20は車両の車幅方向の傾き量を算出する。継続上限時間記憶部24には傾き継続時間の上限値が車速に対応して予め記憶され、傾き量判定部21は、ロール警報設定値をロール警報設定値記憶部19から取得し、傾き量算出部20が算出した傾き量がロール警報設定値を超えたか否かを判定する。タイマ26は、傾き量がロール警報設定値を超えたと傾き量判定部21が継続して判定しているとき、その継続時間を計数する。継続時間判定部25は、車速センサ22が検出した車速に対応する傾き継続時間の上限値を継続上限時間記憶部24から取得し、タイマ26の計数値が上限値に達したか否かを判定する。警報器23は、タイマ26の計数値が上限値に達したと継続時間判定部25が判定したとき、運転者に対して警報を発する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両が横転する可能性があることを運転者に報知するための車両のロール警報装置及びロール警報方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の車両のロール警報装置として、車両のロール角と横加速度とを検出し、横加速度が所定値以上のときにロール角と横加速度とからロール特性を定義するロール指数を演算し、ロール指数に基づく左右のロール特性の平均値から高荷状態を判定し、高荷状態に応じた判定値を設定し、この設定値とロール角との比較に基づいて警報を発するものがある。
【0003】
また、高荷状態の判定に際し、ロール指数の演算値を積算し、その積算処理の経過時間をカウントし、ロール指数の演算停止時に積算処理の経過時間が所定範囲に及ばないときはロール指数の積算値をクリアにすることにより、高荷判定の精度を向上させることも知られている。
【0004】
【特許文献1】特開2003−320913号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、運転者に対して警報を発する必要性の有無は、車両の走行状態によって相違するため、従来のロール警報装置では、不必要に警報が頻繁に発せられてしまう可能性や、反対に必要時に警報が発せられない可能性があった。
【0006】
本発明は、上述の課題に鑑みてなされたものであり、簡単な処理によって車両の走行状態に応じた最適時に警報を発することが可能な車両のロール警報装置及びロール警報方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明に係るロール警報装置は、車速検出部と、傾き量取得部と、閾値記憶部と、継続上限時間記憶部と、傾き量判定部と、傾き時間計数部と、継続時間判定部と、警報出力部とを備える。
【0008】
車速検出部は、車両の車速を検出する。傾き量取得部は、車両の車幅方向における傾き量を取得する。閾値記憶部には、傾き量の閾値が予め記憶される。継続上限時間記憶部には、傾き継続時間の上限値が車速に対応して予め記憶される。傾き量判定部は、傾き量の閾値を閾値記憶部から取得し、傾き量取得部が取得した傾き量が閾値を超えたか否かを判定する。傾き時間計数部は、傾き量が閾値を超えたと傾き量判定部が継続して判定しているとき、その継続時間を計数する。継続時間判定部は、車速検出部が検出した車速に対応する傾き継続時間の上限値を継続上限時間記憶部から取得し、傾き時間計数部による計数値が上限値に達したか否かを判定する。警報出力部は、計数値が上限値に達したと継続時間判定部が判定したとき、車両の運転者に対して警報を発する。
【0009】
また、本発明に係るロール警報方法は、車両の車速を検出する車速検出ステップと、車両の車幅方向における傾き量を取得する傾き量取得ステップと、この傾き量取得ステップにて取得した傾き量が、予め設定された傾き量の閾値を超えたか否かを判定する傾き量判定ステップと、この傾き量判定ステップにて傾き量が閾値を超えたと継続して判定されているとき、その継続時間を計数する傾き時間計数ステップと、この傾き時間計数ステップにて計数された継続時間の計数値が、検出された車速に対応して予め設定された上限値に達したか否かを判定する継続時間判定ステップと、この継続時間判定ステップにて計数値が上限値に達したと判定されたとき、車両の運転者に対して警報を発する警報出力ステップと、を備える。
【0010】
上記構成及び方法では、傾き継続時間の上限値が車速に対応して設定されているので、傾き量が閾値を超えたまま同じ時間継続した場合であっても、警報が必要な車速で車両が走行している場合にのみ警報が発せられる。従って、車両が横転する可能性があることを運転者に報知する警報を、車両の走行状態に応じた最適時に発することができる。
【0011】
また、傾き継続時間の上限値が車速に対応して予め設定されているので、係る上限値と
傾き量が閾値を超えた状態での継続時間との比較という比較的簡単な処理によって、警報を発するか否かの判定を行うことができる。
【0012】
上記ロール警報装置において、傾き量取得部は、車両の左右それぞれの高さを検出する左右のハイトセンサと、左右のハイトセンサの検出値に基づき、水平位置を基準とした左右の乖離量の和を前記傾き量として算出する傾き量算出部と、を有してもよい。
【0013】
上記構成では、傾き量を汎用性の高いハイトセンサの検出値から算出するので、特別な部品を必要とせずに傾き量を取得することができる。
【0014】
また、上記ロール警報装置において、継続上限時間記憶部には、低車速域と該低車速域よりも高速側の高車速域とを含む複数の車速域と、各車速域に対応する傾き継続時間の上限値と、が記憶され、低車速域に対応する上限値は、高車速域に対応する上限値よりも大きく設定されてもよい。この場合、継続時間判定部は、車速検出部が検出した車速が属する車速域に対応する上限値を継続上限時間記憶部から読み出す。
【0015】
例えば、一般道での走行時には、路面の凹凸やうねり等の路面状況に起因して車高が一時的に変化し、車幅方向の傾き量が短時間内に増減する場合がある。このため、傾き量が一時的に増減した場合と実際にロールが発生した場合とを区別するため、傾き量が閾値を超えた後に直ぐに警報を発せず、傾き量の一時的な増減が終了するのに必要な時間が経過するまで継続して傾き量が閾値を超えていることを条件として、警報を発することが好ましい。これに対し、高速走行では、低速時のような路面状況に起因した車高変化が少ない。また、急激なレーンチェンジが行われると、比較的短時間でロールが進行する可能性が高い。このため、傾き量が閾値を超えた後から警報を発するまでの時間を、低速時よりも短く設定することが好ましい。
【0016】
この点に関し、上記構成では、傾き量が閾値を超えている継続時間に関し、車速が高車速域に属する場合には低車速域に属する場合よりも短い継続時間で警報が発せられる。換言すると、高車速の方が低車速よりも早期に警報が発せられる。従って、車両が横転する可能性があることを運転者に報知する警報を、より最適時に発することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係るロール警報装置及びロール警報方法によれば、簡単な処理によって車両の走行状態に応じた最適時に警報を発することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。
【0019】
図1は本発明に係るロール警報装置を車両に搭載した一実施形態を模式的に示す平面図、図2は図1の車軸周辺を模式的に示す側面図、図3は図1のロール警報装置の電気的構成を示すブロック構成図、図4は車速とロール警報設定値との関係を示すマップ、図5はロール警報発生処理を示すフローチャートである。
【0020】
図1に示すように、本実施形態の車両としてのトラック1の車室内には、運転者が着座する運転席4が設けられ、運転席4の前方には、インパネ(インストルメント・パネル)5が配置されている。インパネ5には、速度計や回転計などの計器類に加えて、後述する警報器23が設けられている。トラック1の車室内には、トランスミッション6及びECU(エレクトロニック・コントロール・ユニット)7が搭載されている。
【0021】
トラック1は、エアサスペンションを備える。エアサスペンションとは、トラック1のシャーシスプリングとしてエアスプリング12を用いたものである。
【0022】
すなわち、図1及び図2に示すように、トラック1は、左右の後前輪(タイヤ)9と、後前輪9と一体的に回転する後前軸10と、左右の後後輪(タイヤ)11と、後後輪11と一体的に回転する後後軸(図示外)とを備える。後前軸10及び後後軸の左右両側は、それぞれ2つのエアスプリング12を介して左右のサイドメンバ(車体フレーム)13に支持されている。
【0023】
具体的に後前輪9側について説明すると、サイドメンバ13の下方にアンダーメンバ14が配置され、アンダーメンバ14の前後方向略中央の上面にハウジング15が固定されている。ハウジング15は、後前軸10を回転自在に支持する。エアスプリング12は、アンダーメンバ14の前部及び後部の上面とサイドメンバ13の下面との間にそれぞれ配置され、各エアスプリング12の上部及び下部は、サイドメンバ13及びアンダーメンバ14にそれぞれ連結されている。なお、後後軸側については、後前軸10側と同様の構造であるため、その説明を省略する。
【0024】
エアスプリング12へ空気が供給されると、サイドメンバ13とアンダーメンバ14との距離が増大し、車高が上昇する。反対に、エアスプリング12から空気が排出されると、サイドメンバ13とアンダーメンバ14との距離が減少し、車高が下降する。
【0025】
また、後前軸10と左右のサイドメンバ13との間には、サイドメンバ13に対する後前軸10の左右の高さ位置、すなわち左右の車高を独立して検出する左ハイトセンサ16及び右ハイトセンサ17がそれぞれ設けられている。左右のハイトセンサ16,17が検出した車高測定値は、それぞれECU7へ出力される。
【0026】
ECU7は、車高自動調整装置として機能する。すなわち、ECU7は、基準車高値が予め記憶された基準車高記憶部18を有し、車両走行中において、左右のハイトセンサ16,17から入力された車高測定値と基準車高記憶部18から読み出した基準車高値とを逐次比較し、両者が一致するようにエアスプリング12に対する給排気を制御する。この基準車高値とは、所望のサスペンションストロークを確保するために最適となる車高であり、左右の区別なく設定されている。車高が基準車高値に維持されることにより、積載荷重の大小にかかわらず、乗り心地が向上し、且つ荷台の振動が有効に低減される。
【0027】
また、ECU7は、ロール判定装置としても機能する。すなわち、ECU7は、基準車高記憶部18に加えて、ロール警報設定値記憶部(閾値記憶部)19と傾き量算出部20と傾き量判定部21と継続上限時間記憶部24と継続時間判定部25とタイマ(傾き時間計数部)26とを有する。
【0028】
傾き量算出部20は、トラック1の左右それぞれの高さを検出する左右のハイトセンサ16,17からそれぞれ入力された左右の車高測定値(HL,HR)に基づき、水平位置を基準とした左右の乖離量の和(RLdiff)をトラック1の傾き量として算出し、この左右の乖離量の和を傾き量判定部21へ出力する。ここで、水平位置での左右の車高は、共に基準車高値として基準車高記憶部18に記憶されているため、傾き量算出部20は、基準車高記憶部18から基準車高値を読み出し、左右の車高測定値(HL,HR)と基準車高値との差(HLdiff,HRdiff)をそれぞれ算出し、各算出値の絶対値の和(|HLdiff|+|HRdiff|)を左右の乖離量の和(RLdiff)として算出する。
【0029】
トランスミッション6には、車速を検出する車速センサ(車速検出部)22が設けられ、車速センサ22が検出した車速はECU7へ出力される。
【0030】
ロール警報設定値記憶部19には、ロール警報設定値(閾値)が予め記憶されている。
【0031】
傾き量判定部21は、ロール警報設定値(閾値)をロール警報設定値記憶部19から読み出し、読み出したロール警報設定値と傾き量算出部20が算出した傾き量とを比較し、傾き量がロール警報設定値を超えたか否かを判定する。
【0032】
タイマ26は、傾き量がロール警報設定値を超えたと傾き量判定部21が継続して判定しているとき、その継続時間を計数する。具体的には、傾き量判定部21は、傾き量がロール警報設定値を超えたと判定した場合は傾き量超過信号を、傾き量がロール警報設定値以下であると判定した場合は傾き量未超過信号を、それぞれ継続時間判定部25へ出力する。傾き量超過信号を受けた継続時間判定部25は、タイマ26による時間の計数が既に開始されているか否かを判定し、未だ時間の計数が開始されていない場合には、タイマ26をスタートさせる。一方、既にタイマ26がスタートしている場合には、タイマ26が計数した時間(計数値)を取得する。さらに、傾き量未超過信号を受けた場合、継続時間判定部25は、タイマ26をリセット(時間の計数を停止し、その計数値をクリア)する。
【0033】
また、継続時間判定部25は、車速センサ22が検出した車速に対応して予め設定された傾き継続時間の上限値を継続上限時間記憶部24から取得し、タイマ26による計数値が上限値に達したか否かを判定する。
【0034】
インパネ5には、警報器(警報出力部)23が設けられている。継続時間判定部25は、タイマ26による計数値が上限値に達したと判定したとき、警報器23へ作動指示信号を出力する。継続時間判定部25から作動指示信号を受けた警報器23は、車両が横転する可能性があることを運転者に報知するための警報を発する。警報を発する態様としては、ブザーによる音声出力やランプや液晶画面による表示出力やそれらの組み合わせ等が可能であり、その態様は特に限定されるものではない。
【0035】
ここで、継続上限時間記憶部24には、複数の車速域と各車速域に対応する傾き継続時間の上限値とが設定されたマップ(又はテーブル)が予め記憶されている。具体的には、図4に示すように、複数の車速域としては、低速側の低車速域(70km/h未満)と、高速側の高車速域(70km/h以上)とが設定され、各車速域に対応する上限値としては、低車速域では1.0(sec)が、高車速域では0.5(sec)がそれぞれ設定されている。すなわち、低車速域の方が高車速域よりも上限値が大きく(長く)、例えば、低車速域の上限値は高車速域の上限値の2倍程度である。
【0036】
このように、車速に応じて傾き継続時間の上限値を変えているのは以下の理由による。
【0037】
例えば、一般道での走行時には、路面の凹凸やうねり等の路面状況に起因して車高が一時的に変化し、車幅方向の傾き量が短時間内に増減する場合がある。このため、傾き量が一時的に増減した場合と実際にロールが発生した場合とを区別するため、傾き量が閾値を超えた後に直ぐに警報を発せず、傾き量の一時的な増減が終了するのに必要な時間が経過するまで継続して傾き量が閾値を超えていることを条件として、警報を発することが好ましい。これに対し、高速走行では、低速時のような路面状況に起因した車高変化が少ない。また、急激なレーンチェンジが行われると、比較的短時間でロールが進行する可能性が高い。このため、傾き量が閾値を超えた後から警報を発するまでの時間を、低速時よりも短く設定することが好ましい。このため、車速が高車速域に属する場合には、低車速域に属する場合よりも短い継続時間で警報を発するように、低車速域に属する場合よりも傾き継続時間の上限値を小さく(短く)設定する。
【0038】
なお、本実施形態では、車高自動調節機能を有するエアサスペンション車の場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、車高自動調節機能を有さないエアサスペンション車やリーフスプリングを利用したサスペンション車に対しても適用可能である。この場合、車両の発進時に取得した左右の車高測定値(初期車高値)を水平位置での左右の車高としてメモリに一時的に記憶させておき、車両走行中に初期車高値と左右の車高測定値(HL,HR)との差をそれぞれ算出し、各算出値の絶対値の和を左右の乖離量の和として算出すればよい。
【0039】
また、本実施形態では、左右のハイトセンサ16,17が検出する左右の車高測定値(HL,HR)に基づき、水平位置を基準とした左右の乖離量の和(RLdiff)をトラック1の傾き量として算出したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば車幅方向の傾き角度を傾き量として検出する等、車両の左右の傾きに応じて増減するあらゆる検出値又はこれに基づく算出値を、傾き量として使用することができる。
【0040】
次に、ECU7が実行する処理について、図5のフローチャートに基づいて説明する。なお、ステップS1〜S7は傾き量算出部20が実行する処理であり、ステップS8及びステップS10〜S15は継続時間判定部25が実行する処理であり、ステップS9は傾き量判定部21が実行する処理である。
【0041】
本処理は、トラック1の走行中に所定時間毎に開始され、ステップS1では、次式(1)のHRに右ハイトセンサ17からの車高測定値を代入する。
【0042】
ステップS2では、次式(1)のHRnormに、車高水平時の右車高として基準車高記憶部18から読み出した基準車高値を代入する。
【0043】
ステップS3では、次式(1)に従って、右側における現在の車高と水平車高との差をHRdiffとして算出する。
【0044】
HRdiff=HRnorm−HR・・・(1)
ステップS4では、次式(2)のHLに左ハイトセンサ16からの車高測定値を代入する。
【0045】
ステップS5では、次式(2)のHLnormに、車高水平時の左車高として基準車高記憶部18から読み出した基準車高値を代入する。なお、基準車高値が左右で等しく設定されている場合、HLnormと上記ステップS2のHRnormとは等しい値となる。
【0046】
ステップS6では、次式(2)に従って、左側における現在の車高と水平車高との差をHLdiffとして算出する。
【0047】
HLdiff=HLnorm−HL・・・(2)
ステップS7では、次式(3)に従って、左右の車高差(水平位置を基準とした左右の乖離量の和)をRLdiffとして算出する。
【0048】
RLdiff=|HLdiff|+|HRdiff|・・・(3)
ステップS8では、車速センサ22が検出した現在の車速での傾き継続時間の上限値を、継続上限時間記憶部24のマップから取得し、Roll keep timeへ代入する。
【0049】
ステップS9では、ロール警報設定値記憶部19からロール警報設定値(Roll)を読み出し、テップS7で算出したRLdiffと比較し、RLdiffがRollよりも大きい場合にはステップS10へ進み、RLdiffがRoll以下の場合にはステップS15へ進む。
【0050】
ステップS10では、タイマ26が時間の計数を開始しているか否か(時間の計数を実行しているか否か)を判定し、計数を実行している場合にはステップS11へ進み、未だ計数を開始していない場合にはステップS13へ進む。
【0051】
ステップS11では、Roll<RLdiffの状態がRoll keep time間維持し続けたか、すなわち、タイマ26による時間の計数値が上限値(Roll keep time)に達したか否かを判定し、上限値に達している場合にはステップS12へ進み、達していない場合にはステップS14へ進む。
【0052】
ステップS12では、タイマ26による時間の計数値が上限値に達しているため、警報器23へ作動指示信号を出力する。
【0053】
ステップS15では、RLdiffがRoll以下であるため、タイマ26をリセットした後、ステップS14へ進む。
【0054】
ステップS13では、RLdiffがRollを超えた直後であるため、タイマ26による時間の計数を開始した後、ステップS14へ進む。
【0055】
ステップS14では、傾き量(RLdiff)がロール警報設定値(Roll)以下、RLdiffがRollを超えた直後、或いはタイマ26による時間の計数値が上限値に達していないため、警報器23へ作動指示信号を出力しない。
【0056】
このように、本実施形態によれば、傾き継続時間の上限値が車速に対応して設定されているので、傾き量がロール警報設定値を超えたまま同じ時間だけ継続した場合であっても、警報が必要な車速で車両が走行している場合にのみ警報が発せられる。
【0057】
具体的には、一般道での走行時を含む低車速域では、傾き継続時間の上限値が大きく(長く)設定されているため、路面の凹凸やうねり等の路面状況に起因して車高が一時的に変化した場合に警報が不必要に発せられてしまうことが抑制される。これに対し、高車速域では、傾き継続時間の上限値が小さく(短く)設定されているため、高速走行時の急激なレーンチェンジによって比較的短時間でロールが進行した場合に、警報が早期から発せられる。
【0058】
従って、車両が横転する可能性があることを運転者に報知する警報を、最適時に発することができる。
【0059】
また、傾き継続時間の上限値が車速に対応して予め設定されているので、車速に応じて読み出した上限値とタイマ26による計数値との比較という比較的簡単な処理によって、警報を発するか否かの判定を行うことができる。
【0060】
さらに、傾き量を汎用性の高いハイトセンサ16,17の検出値から算出するので、特別な部品を必要とせずに傾き量を取得することができる。
【産業上の利用可能性】
【0061】
本発明は、様々な車両のロール警報装置及びロール警報方法に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】本発明に係るロール警報装置を車両に搭載した一実施形態を模式的に示す平面図である。
【図2】図1の車軸周辺を模式的に示す側面図である。
【図3】図1のロール警報装置の電気的構成を示すブロック構成図である。
【図4】車速とロール警報設定値との関係を示すマップである。
【図5】ロール警報発生処理を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0063】
1:トラック(車両)
4:運転席
5:インパネ(インストルメント・パネル)
6:トランスミッション
7:ECU(エレクトロニック・コントロール・ユニット)
9:後前輪(タイヤ)
10:後前軸(車軸)
11:後後輪(タイヤ)
12:エアスプリング
13:サイドメンバ(車体フレーム)
16:左ハイトセンサ(傾き量取得部)
17:右ハイトセンサ(傾き量取得部)
18:基準車高記憶部
19:ロール警報設定値記憶部(閾値記憶部)
20:傾き量算出部(傾き量取得部)
21:傾き量判定部
22:車速センサ(車速検出部)
23:警報器(警報出力部)
24:継続上限時間記憶部
25:継続時間判定部
26:タイマ(傾き時間計数部)


【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の車速を検出する車速検出部と、
前記車両の車幅方向における傾き量を取得する傾き量取得部と、
傾き量の閾値が予め記憶された閾値記憶部と、
傾き継続時間の上限値が前記車速に対応して予め記憶された継続上限時間記憶部と、
前記傾き量の閾値を前記閾値記憶部から取得し、前記傾き量取得部が取得した傾き量が前記閾値を超えたか否かを判定する傾き量判定部と、
前記傾き量が前記閾値を超えたと前記傾き量判定部が継続して判定しているとき、その継続時間を計数する傾き時間計数部と、
前記車速検出部が検出した車速に対応する傾き継続時間の上限値を前記継続上限時間記憶部から取得し、前記傾き時間計数部による計数値が前記上限値に達したか否かを判定する継続時間判定部と、
前記計数値が前記上限値に達したと前記継続時間判定部が判定したとき、前記車両の運転者に対して警報を発する警報出力部と、
を備えたことを特徴とする車両のロール警報装置。
【請求項2】
請求項1に記載の車両のロール警報装置であって、
前記傾き量取得部は、前記車両の左右それぞれの高さを検出する左右のハイトセンサと、該左右のハイトセンサの検出値に基づき、水平位置を基準とした左右の乖離量の和を前記傾き量として算出する傾き量算出部と、を有する
ことを特徴とする車両のロール警報装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の車両のロール警報装置であって、
前記継続上限時間記憶部には、低車速域と該低車速域よりも高速側の高車速域とを含む複数の車速域と、各車速域に対応する傾き継続時間の上限値と、が記憶され、
前記低車速域に対応する上限値は、前記高車速域に対応する上限値よりも大きく設定され、
前記継続時間判定部は、前記車速検出部が検出した車速が属する車速域に対応する上限値を前記継続上限時間記憶部から読み出す
ことを特徴とする車両のロール警報装置。
【請求項4】
車両の車速を検出する車速検出ステップと、
前記車両の車幅方向における傾き量を取得する傾き量取得ステップと、
予め設定された傾き量の閾値を、前記取得した傾き量が超えたか否かを判定する傾き量判定ステップと、
前記傾き量が前記閾値を超えたと継続して判定されているとき、その継続時間を計数する傾き時間計数ステップと、
前記継続時間の計数値が、前記検出された車速に対応して予め設定された上限値に達したか否かを判定する継続時間判定ステップと、
前記計数値が前記上限値に達したと判定されたとき、前記車両の運転者に対して警報を発する警報出力ステップと、
を備えたことを特徴とする車両のロール警報方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−45365(P2007−45365A)
【公開日】平成19年2月22日(2007.2.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−233602(P2005−233602)
【出願日】平成17年8月11日(2005.8.11)
【出願人】(000000170)いすゞ自動車株式会社 (1,721)
【Fターム(参考)】