説明

車両の報知装置

【課題】カーナビゲーションシステムを搭載していない車両であっても方向指示器の出し忘れを予防することができる車両の報知装置を提供する。
【解決手段】車両の方向指示器の作動を検出する作動検出手段11と、車両の速度を検出する車速検出手段12と、車両のステアリングの操舵角を検出する操舵角検出手段13と、少なくとも速度検出手段12及び操舵角検出手段13の検出結果に基づいて車両の走行状態を判別すると共にその判別結果と作動検出手段11による検出結果とに基づいて方向指示器が車両の走行状態に応じて適切に作動しているか否かの判定を行う適切作動判定手段21と、適切作動判定手段21によって方向指示器が車両の走行状態に適切に作動していないと判定された場合に、運転者に対して方向指示器の適切な作動を促す報知を行う報知手段22と、を備える構成とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、運転者が方向指示器を作動させずに右左折を行った場合に、方向指示器を適切に作動させることを促す報知を行う車両の報知装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車等の車両の運転者は、右折或いは左折する等、進路を変えるときに合図しなければならないことが道路交通法に定められており、車両には、その合図の手段として、一般的に、ウインカー等の方向指示器が備えられている。そして、車両が右左折等する際には、運転者がウインカーを点灯(点滅)させて周囲の車両等に注意を喚起することで、衝突や追突といった事故の発生を予防している。
【0003】
しかしながら、運転者が方向指示器を適切に作動させない(出し忘れる)こともあり、それに起因して事故が発生してしまう虞がある。このような問題を防止するために、カーナビゲーションシステムを用いて方向指示器の出し忘れを予防するものがある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−204017号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、この装置は、カーナビゲーションシステムを利用するものであるため、全ての車両において採用することはできないという問題がある。カーナビゲーションを搭載する車両の数は、年々増加してはいるものの全ての車両に搭載されている訳ではなく、カーナビゲーションシステムを搭載しない車両であっても、当然、方向指示器の出し忘れに起因する事故が発生する虞はある。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、カーナビゲーションシステムを搭載していない車両であっても方向指示器の出し忘れを予防することができる車両の報知装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決する本発明は、車両の方向指示器の作動を検出する作動検出手段と、
車両の速度を検出する車速検出手段と、車両のステアリングの操舵角を検出する操舵角検出手段と、少なくとも前記速度検出手段及び前記操舵角検出手段の検出結果に基づいて車両の走行状態を判別すると共にその判別結果と前記作動検出手段による検出結果とに基づいて前記方向指示器が車両の走行状態に応じて適切に作動しているか否かの判定を行う適切作動判定手段と、前記適切作動判定手段によって前記方向指示器が車両の走行状態に適切に作動していないと判定された場合に、運転者に対して前記方向指示器の適切な作動を促す報知を行う報知手段と、を備えることを特徴とする車両の報知装置にある。
【0008】
ここで、前記適切作動判定手段は、前記操舵角検出手段によって検出された操舵角の最大値が予め設定された設定角度以上であるか否かを少なくとも判定し、その判定結果に基づいて車両の走行状態を判別することが好ましい。
【0009】
また前記適切作動判定手段は、前記操舵角検出手段によって検出されたステアリングの操舵角の最大値が前記設定角度以上であると判定した場合には、車両のステアリングが前回操作されてから次に操作されるまでの車両の走行距離が予め設定された設定距離以上であるか否かをさらに判定し、その判定結果に基づいて車両の走行状態を判別することが好ましい。
【0010】
また前記適切作動判定手段は、車両のステアリングが前回操作されてから次に操作されるまでの車両の走行距離が前記設定距離以上であると判定した場合には、その後の無操作時間が予め設定された設定時間を超えているか否かをさらに判定し、その判定結果に基づいて車両の走行状態を判別することが好ましい。
【0011】
また前記適切作動判定手段は、車両のステアリングが前回操作されてから次に操作されるまでの車両の走行距離が前記設定距離を超えていないと判定した場合には、車両のステアリングが前回操作された後の車速が、予め設定された設定速度を超えているか否かをさらに判定し、その判定結果に基づいて車両の走行状態を判別することが好ましい。
【0012】
また前記適切作動判定手段は、前記操舵角検出手段によって検出されたステアリングの操舵角の最大値が前記設定角度よりも小さいと判定した場合には、前記操舵角の最大値が車速に応じて設定される基準角度以上であるか否かをさらに判別し、その判定結果に基づいて車両の走行状態を判別することが好ましい。
【0013】
また前記適切作動判定手段は、ステアリングの操舵角の変化率が予め設定された基準変化率以上であるか否かをさらに判別し、その判定結果に基づいて車両の走行状態を判別することが好ましい。
【0014】
また車両の変速機におけるシフトレバーの位置を検出するシフトレバー位置検出手段をさらに具備し、前記適切作動判定手段は、前記シフトレバー位置検出手段によって前記シフトレバーの位置が前進位置であることが検出されている場合に、前記方向指示器が車両の走行状態に応じて適切に作動しているか否かの判定を開始することが好ましい。
【0015】
また車両のハザードランプの点灯状態を検出する点灯状態検出手段をさらに具備し、前記適切作動判定手段は、前記点灯状態検出手段によって前記ハザードランプの点灯が検出されていない場合に、前記方向指示器が車両の走行状態に応じて適切に作動しているか否かの判定を開始することが好ましい。
【発明の効果】
【0016】
以上のような本発明の車両の報知装置では、カーナビゲーションが備えられていない車両、つまり全ての車両に採用することができ、方向指示器の適切な作動を運転者に促すことができる。したがって、全ての車両において方向指示器の出し忘れを予防することができ、それに起因する事故の発生を抑制することができる。また、本発明の車両の報知装置は、既存の装備を利用して構成されているため、極めて安価に実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の一実施形態に係る車両の報知装置の構成を示すブロック図である。
【図2】車両の走行状態の分類の一例を示す図である。
【図3】本発明の一実施形態に係る車両の報知装置の動作を説明するフローチャートである。
【図4】本発明の一実施形態に係る車両の報知装置の動作を説明するフローチャートである。
【図5】本発明の一実施形態に係る車両の報知装置の動作を説明するフローチャートである。
【図6】ステアリングの操舵角の変化の一例を示す図である。
【図7】車速と基準角度との関係の一例を示すグラフである。
【図8】「車線変更」と「カーブ走行」とにおける操舵角の変化の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照して、本発明の一実施形態に係る車両の報知装置について詳細に説明する。
【0019】
図1は、本発明の一実施形態に係る車両の報知装置の構成を示すブロック図であり、図2は、車両の走行状態の分類の一例を示す図である。
【0020】
本発明に係る車両の報知装置は、車両が右左折或いは車線変更する際に、運転者が方向指示器であるウインカーを適切に作動させていたか否かの判定を行い、その判定結果に基づいて、必要に応じて運転者に対して所定の報知(注意喚起)を行うものである。
【0021】
図1に示すように、本実施形態に係る車両の報知装置10は、車両に搭載され、車両の方向指示器であるウインカーの作動を検出する作動検出手段であるウインカーSW11と、車速を検出する車速検出手段である車速センサ12と、ステアリングの操舵角(ステアリングの切増角)を検出する操舵角検出手段である舵角センサ13とを備える。さらに本実施形態に係る車両の報知装置10は、変速機を切り替えるためのシフトレバーの位置を検出するシフトレバー位置検出手段14と、ハザードランプの点灯を検出する点灯検出手段であるハザードSW15とが備えられている。
【0022】
さらに車両の報知装置10は、運転者が車両の運転状態に応じてウインカーを適切に作動させていたか否かの判定(以下、「適切作動判定」という)を行う適切作動判定手段21と、適切作動判定手段21の判定結果に基づいて、報知部30によって運転者に対する報知を行う報知手段22とを含む制御部20を備えている。
【0023】
適切作動判定手段21は、少なくとも車速センサ12及び舵角センサ13の検出結果に基づいて車両の走行状態を判別すると共に、ウインカーSW11によってウインカーの作動が検出されているか否か、つまりウインカーが作動しているか否かを判定し、これらの結果に基づいて、ウインカーが車両の走行状態に応じて適切に作動しているか否かを判定する。
【0024】
ここで本実施形態では、図2に示すように、車両の走行状態を、道路上における右左折(以下、「右左折(道)」と表記する)及び車線変更(以下、「車線変更(道)」と表記する)と、例えば、駐車場等の道路以外の場所(以下、「駐車場」という)における右左折(以下、「右左折(駐)」と表記する)及び車線変更(以下、「車線変更(駐)」と表記する)と、その他の走行状態(以下、単に「その他」と表記する)との5つの走行状態に分類している。
【0025】
そして適切作動判定手段21は、例えば、車速、ステアリングの操舵角、走行距離、シフトレバーの位置、操舵角の変化率等から、車両の走行状態が、図2に示す何れの分類に属するかを判別する。適切作動判定手段21は、車両の走行状態が「右左折(道)」又は「車線変更(道)」の何れかに属すると判別し且つウインカーが作動していない状態であると判定した場合に、運転者がウインカーを適切に作動させていない状態である(ウインカーの出し忘れである)とみなす。
【0026】
また本実施形態では、このような適切作動判定を行うにあたり、適切作動判定手段21は、適切作動判定の開始条件が満たされているか否か、つまり車両の走行状態が「右左折(道)」又は「車線変更(道)」に属することが想定される状況であるか否か、を判定している。開始条件としては「エンジンが始動していること」、「変速機を構成するシフトレバーの位置が前進位置にあること」、「走行状態にあること(停止していないこと)」、「ステアリングが操作されたこと」、「ハザードランプが点灯していないこと」等が挙げられる。本実施形態では、適切作動判定手段21は、これらの全ての開始条件が満たされている場合に適切作動判定を開始する。
【0027】
報知手段22は、この適切作動判定において運転者によるウインカーの出し忘れがあったと判定された場合に、運転者に対してウインカーの適切な作動を促す報知を行う。つまり報知手段22は、ウインカーの出し忘れがあったと判定された場合に、所定のタイミングで、報知部30から運転者に対する報知(注意喚起)を行う。
【0028】
本実施形態では、制御部20は、回数計測手段23を備えている。この回数計測手段23は、ウインカーの出し忘れ総回数N(以下、単に「出し忘れ総回数N」と表記する)をカウントすると共に、ウインカーが作動しているか否かにかかわらず車両が右左折又は車線変更した回数M(以下、「操舵回数M」と表記する)をカウントする。そして報知手段22は、操舵回数Mに対する出し忘れ総回数Nの割合N/Mが、予め設定された基準割合P以上である場合に運転者に対する報知を行っている。なお報知部30は、例えば、スピーカーやランプ等を有し、運転者に対して聴覚や視覚によって注意を喚起するように構成されている。
【0029】
以下、このような本実施形態の車両の報知装置の動作について説明する。図3〜図5は、本実施形態の車両の報知装置の動作を説明するフローチャートである。
【0030】
図3〜図5に示すように、まずはステップS1〜ステップS8で適切作動判定手段21が適切作動判定の開始条件が満たされているか否かを判定する。具体的には、ステップS1で車両の走行開始にあたりイグニッションキーがONになったか否か、つまりエンジンが始動されたか否かを判定する。エンジンが始動している場合には(ステップS1:Yes)、ステップS2でシフトレバー位置が前進位置にあるか否かを判定する。シフトレバー位置が前進位置にある場合には(ステップS2:Yes)、さらにステップS3で車速VがV>0であるか否か、つまり車両が走行状態にあるか否かを判定する。ここで車速Vが0よりも大きい場合(ステップS3:Yes)、つまり車両が前進走行状態にある場合には、車両の走行時間Trのカウントを開始する。
【0031】
車両の走行時間のカウントの手順としては、具体的には、まずステップS4で時間カウントフラグIがセットされているか(I=1)、セットされていないか(I=0)を判定する。この時間カウントフラグIは、ステップS5で車両の走行時間Trのカウントが開始された場合にセットされる。時間カウントフラグIは、例えば、車両の走行開始時にはセットされていないため(ステップS4:Yes)、ステップS5に進み走行時間Trのカウントを開始する。ステップS5では、走行時間Trをカウントするカウンタをリセットして車両走行時間Tr=0とし、走行時間Trのカウントを新たに開始する。その後、ステップS6で時間カウントフラグIがセットされてステップS7に進む。一方、例えば、車両が走行中であった場合には、ステップS4において時間カウントフラグIは既にセットされているため(ステップS4:No)、走行時間Trのカウントを新たに開始することなくステップS7に進む。
【0032】
ステップS7では、車両の走行中にステアリングが操作され、車両の進行方向に変化があった場合に、舵角センサ13の検出結果に基づいてその操舵角θが予め設定された第1の角度α1以上であるか否かを判定する(図6参照)。すなわちステップS7では車両の走行状態が「右左折」又は「車線変更」に属する可能性があるか否かを判定している。この第1の角度α1の大きさは特に限定されず、車種等に応じて適宜設定されればよい。操舵角θが第1の角度α1以上である場合には(ステップS7:Yes)、車両の走行状態が「右左折」又は「車線変更」に属する可能性があると判定してステップS8に進む。ステップS8では、ハザードランプが点灯しているか否かを判定し、ハザードランプが点灯していない場合に(ステップS8:Yes)、ステップS9に進み、それ以降のステップで適切作動判定手段21による「適切作動判定」が行われる。
【0033】
まずステップS9では、ステアリングの操舵方向と同一方向のウインカーが作動しているか否かを判定する。同一方向のウインカーが作動している場合(ステップS9:No)、ステップS10で方向指示器作動フラグFがセット(F=1)された後、ステップS11に進む。一方、同一方向のウインカーが作動していない場合(ステップS9:Yes)、方向指示器作動フラグFがセットされることなくステップS11に進む。なお「同一方向のウインカーが作動していない」状態とは、何れのウインカーも作動していない状態であるか、あるいはステアリングの操作方向とは逆方向のウインカーが作動している状態である。
【0034】
ステップS11では、ステアリングの操舵角θが第1の角度α1よりも小さいか否かを判定する。すなわち、ステアリングが中立状態に戻ったか否かを判定する。操舵角θが第1の角度α1以上でありステアリングがまだ中立状態に戻っていない場合には(ステップS11:No)、ステップS12でシフトレバー位置が前進位置であるか否かを判定する。ステップS12では、車両が右左折中又は車線変更中である可能性があるかどうかを判定している。シフトレバー位置が前進位置にない場合には(ステップS12:No)、車両が右左折中又は車線変更中の可能性がないため、適切作動判定を終了する。すなわちステップS32で方向指示器作動フラグFをリセットした後にステップS1に戻る。一方、ステップS12でシフトレバー位置が前進位置にある場合には(ステップS12:Yes)、車両が右左折中又は車線変更中の可能性があるためステップS11に戻り、適切作動判定を継続する。
【0035】
ステアリングが中立状態に戻っている場合には(ステップS11:Yes)、車両の右左折又は車線変更が終了したとしてステップS13で操舵終了時刻Teを計測する。つまりカウンタで計測している車両の走行時間Trを操舵終了時刻Teとして取得する。その後、ステップS14に進む。
【0036】
ステップS14では、上述のステアリング操作が、車両の右左折によるものか、或いは車両の車線変更等、右左折以外によるものかを判定している。具体的には、操舵角の最大値(最大操舵角)θmaxが、予め設定された設定角度である第2の角度α2以上か否かを判定する(図6参照)。第2の角度α2は、第1の角度α1よりも大きい値であればよく、車種等に応じて適宜設定されればよい。最大操舵角θmaxが第2の角度α2以上である場合には(ステップS14:Yes)、車両の走行状態が「右左折」に属すると判定して右左折回数Kをカウントし(ステップS15)、操舵終了時刻TeをK回目の右左折終了時刻T(K)として設定し(ステップS16)、その後ステップS17に進む。一方、最大操舵角θmaxが第2の角度α2よりも小さい場合(ステップS14:No)、つまり操舵角θが比較的小さい場合には、車両の走行状態が「右左折」には属さないと判定して、ステップS37に進む。
【0037】
ステップS17では、方向指示器作動フラグFがセットされていない(F=0)かどうかを判定する。方向指示器作動フラグFがセットされている場合には(ステップS17:No)、車両の右左折時にウインカーが適切に作動していることになるため、適切作動判定を終了して、ステップS31で操舵回数Mをカウントし、ステップS32で方向指示器作動フラグFをリセットした後、ステップS1に戻る。
【0038】
一方、ステップS17で方向指示器作動フラグFがセットされていない場合には(ステップS17:Yes)、ステップS18に進み適切作動判定を継続する。ステップS18では、車両が道路上を走行しているのか、或いは駐車場等の道路以外の場所を走行しているのかを判定する。ステップS18では、具体的には、(K−1)回目(前回)の右左折終了時刻T(K−1)からのK回目(今回)の右左折終了時刻T(K)までの期間における走行距離Dが、予め設定された設定距離x以上であるか否かを判定する。例えば、図6に示すように、前回の右左折終了時刻T2から今回の右左折終了時刻T3までの期間(T3−T1)における走行距離Dが、設定距離x以上であるか否かを判定する。例えば、駐車場等の道路以外の場所では、走行スペースが比較的狭く車両が直進し続けられる距離は限定される。このため、車両の走行距離Dが設定距離x以上であれば(図6(b))、車両は道路上を走行している可能性が高いと考えられる。
【0039】
なお走行距離Dは、例えば、下記式(1)から算出される。またこの判定が車両の走行開始から1回目である場合には、走行距離Dは、走行開始から1回目の操舵終了時刻までの期間における走行距離として求められる。
【0040】
【数1】

【0041】
走行距離Dが設定距離x以上である場合には(ステップS18:Yes)、ステップS19に進み、K回目の右左折終了後、予め設定された設定時間Taが経過したか否かを判定する。すなわちステップS19では、例えば、シフトレバーや、ステアリング等の操作が行われていない無操作時間が予め設定された設定時間を超えているか否かをさらに判定する。
【0042】
具体的には、K回目の右左折終了後、設定時間Taが経過していない場合には(ステップS19:No)、ステップS20でシフト位置が前進位置から後進位置に変更されたか否かを判定する。そして変更があった場合にはステップS34に進み、車両の走行状態が「右左折(駐)」に属すると判定する。またシフト位置の変更がない場合には(ステップS20:Yes)、ステップS21に進み、次のステアリング操作が行われたか否かを判定する。すなわちステアリングの操舵角θが再び第1の角度α1を越えたか否かを判定する。次のステアリング操作があった場合には(ステップS21:Yes)、ステップS22で次操舵フラグSをセット(S=1)した後、ステップS23に進み車両の走行状態が「右左折(道)」であると判別する。ステアリング操舵角θが第1の角度α1を超えていない場合には(ステップS21:No)、ステップS19に戻る。
【0043】
一方、ステップS19で設定時間Taが経過している場合、すなわち設定時間Ta内にシフト位置の変更や次のステアリング操作が行われなかった場合には(ステップS19:Yes)、車両の走行場所が、駐車場等の道路以外の場所ではないと判別する。すなわち、ステップS23に進み、車両の走行状態が「右左折(道)」に属すると判別する。
【0044】
ここで、ステップS23に進んだ場合には方向指示器作動フラグFはセットされていない。つまり、車両は道路上を右左折しているにも拘わらず、その際ウインカーが適切に出されていなかったことになる。このため、ステップS23に進んだ場合には、次いでウインカーの出し忘れであると判定すると共に(ステップS24)、出し忘れ総回数Nをカウントする(ステップS25)。さらに操舵回数Mをカウントし(ステップS26)、ステップS27で車線変更でのウインカーの出し忘れ回数H(以下、単に「出し忘れ回数H」と表記する)をリセットする。この出し忘れ回数Hについては、詳しく後述する。次いで、方向指示器作動フラグFをリセットする(ステップS28)。その後、次操舵フラグSがセットされていなければ(ステップS29:Yes)ステップS1に戻り、次操舵フラグSがセットされている場合には(ステップS29:No)次操舵フラグSをリセットしてステップS8に戻る。
【0045】
またステップS18で走行距離Dが設定距離xよりも短い場合には(ステップS18:No)、ステップS33に進み、(K−1)回目の右左折終了時刻から現在までに車速Vが予め設定された設定速度V1を超えていないかどうかを判定する。この設定速度Vは、駐車場等の道路以外の場所での走行を想定した速度に設定されている。したがって、車速Vが設定速度V1を超えていない場合には(ステップS33:Yes)、車両の走行状態が「右左折(駐)」に属すると判別する(ステップS34)。そして「出し忘れ総回数N」から「出し忘れ回数H」を減算すると共に(ステップS35)、「操舵回数M」から「出し忘れ回数H」を減算した後(ステップS36)、ステップS27に進む。なお「出し忘れ回数H」に関するステップについては、詳しく後述する。
【0046】
またステップS33で車速Vが設定速度V1を超えた場合には(ステップS33:No)、車両の走行場所が道路上である可能性があると判定してステップS19に進む。
【0047】
ステップS14の説明に戻り、ここで最大操舵角θmaxが第2の角度α2よりも小さい場合には(ステップS14:No)、車両の走行状態が「右左折」以外に属すると判定されてステップS37に進み、車両の走行状態が「車線変更」又は「その他」の何れに属するのかをさらに判定する。ステップS37では、ステアリングの操舵角θが基準角度α(V)以上であるか否かによって、車両の走行状態が「その他」に属するか否かを判定している。
【0048】
具体的には、ステアリングの操舵角θが基準角度α(V)よりも小さい場合には(ステップS37:No)、車両の走行状態は「その他」に属すると判定されてステップS48に進む。すなわち車両の走行状態は、例えば、カーブ走行或いは直線走行等のウインカーの作動が不要な走行状態であると判定して適切作動判定を終了し、ステップS48で方向指示器作動フラグFをリセットした後、ステップS1に戻る。一方、ステアリングの操舵角θが基準角度α(V)以上であれば、車両の走行状態が「その他」には属さない、つまり「車線変更」に属する可能性があると判定してステップS38に進む。なお操舵角θの基準角度α(V)は、図7に示すように、車速Vの増加に伴って徐々に小さな値に設定されるようになっている。
【0049】
ステップS38では、ステアリングの操舵角θの変化率|dθ/dt|が予め設定された基準変化率b以上であるか否かによってウインカーの作動が必要な走行状態であるか否かを判定している。例えば、図8に示すように、走行状態が「車線変更」に属する場合のステアリングの操舵角θの変化率|dθ/dt|の最大値は、走行状態がカーブ走行等の「その他」に属する場合に比べて大きくなる。したがって、操舵角θの変化率|dθ/dt|と基準変化率bとの大きさの関係から、車両の走行状態が「その他」に属するか否かを判定することができる。操舵角θの変化率|dθ/dt|が基準変化率bよりも小さい場合には(ステップS38:No)、車両の走行状態は「その他」に属すると判定し、適切作動判定を終了してステップS48に進む。操舵角θの変化率|dθ/dt|が基準変化率b以上である場合には(ステップS38:Yes)、車両の走行状態が「その他」に属さない、つまり「車線変更」に属する可能性があると判定してステップS39に進む。
【0050】
ステップS39では、前回の操舵終了時間Teから所定時間Tb以内に、次のステアリング操作が行われたか否かを判定する。すなわち、前回の操舵終了時間Teから所定時間Tb以内に、ステアリングの操舵角θが第1の角度α1を再び越えたか否かを判定する。次のステアリング操作が行われている場合には(ステップS39:Yes)、さらにそのステアリングの操舵方向(回転方向)が、前回のステアリングの操舵方向と逆方向であるか否かを判定する(ステップS40)。ここでステアリングの操舵方向が、前回とは逆方向である場合には、車両の走行状態を「車線変更」であると判別し(ステップS41)、ステップS42に進む。ステアリングの操舵方向が、前回と同一方向である場合には(ステップS40:No)、車両の走行状態は「車線変更」に属することはないと判別してステップS49で方向指示器作動フラグFをリセットし、ステップS8に戻り、次のステアリング操作に関して適切作動判定が実施される。
【0051】
ステップS42では、方向指示器作動フラグFがセットされていないかどうかを判定する。方向指示器作動フラグFがセットされている場合には(ステップS42:No)、車両の車線変更時にウインカーが適切に作動していることになるため、適切作動判定を終了してステップS46で操舵回数Mをカウントし、次のステアリング操作が終了した時点、つまりステアリングの操舵角θが第1の角度α1よりも小さくなった時点で(ステップS47:Yes)、方向指示器作動フラグFをリセットし(ステップS48)、ステップS1に戻る。なお、このように車両の走行状態が「車線変更」であると判定された場合には、ステップS39における「次のステアリング操作」に関しては、適切作動判定は実施されない。
【0052】
一方、ステップS42で方向指示器作動フラグFがセットされていない場合には(ステップS42:Yes)、ウインカーの出し忘れであると判定する(ステップS43)。すなわちステップS42で方向指示器作動フラグFがセットされていない場合、車両が車線変更をしたにも拘わらず、その際ウインカーが適切に作動していなかったことになるため、その状態をウインカーの出し忘れであると判定する。そして車線変更でのウインカーの出し忘れ回数Hをカウントし(ステップS44)、さらに出し忘れ総回数Nをカウントすると共に(ステップS45)、操舵回数Mをカウントする(ステップS46)。その後は、上述したように次のステアリング操作が終了した時点で(ステップS47:Yes)、方向指示器作動フラグFをリセットして(ステップS48)、ステップS1に戻る。
【0053】
なお、この出し忘れ回数Hは、車両の走行状態が「車線変更」に属し且つその際にウインカーが作動していない場合には必ずカウントされる。すなわち車両が道路上を走行しているか、駐車場等の道路以外の場所を走行しているかに拘わらず、出し忘れ回数Hはカウントされる。しかしながら、車両が道路以外の場所を走行しているのであれば、車両の走行状態が「車線変更」に属する場合でもウインカーを作動させる必要はない。
【0054】
このため、上述したようにステップS34で車両の走行状態が「右左折(駐)」に属すると判別された場合には、それまでに出し忘れ回数Hとしてカウントされた際の車両の走行場所も道路以外の場所であるとみなし、出し忘れ総回数Nから出し忘れ回数Hを減算すると共に(ステップS35)、操舵回数Mからも出し忘れ回数Hを減算している(ステップS36)。
【0055】
また出し忘れ回数Hは、ステップS15において前回「右左折」であると判定されてから次に「右左折」であると判定されるまでの積算回数であり、車両の走行状態が「右左折」であると判定された後には、出し忘れ回数Hは必ずリセットされる(ステップS27)。
【0056】
以上説明したように本実施形態では、車速やステアリングの操舵角等によって車両の走行状態を特定し、それに基づいてウインカーの出し忘れを判定しているため、カーナビゲーションシステムを備えていない車両であっても、既存の装備を用いてウインカーの出し忘れを比較的正確に判定することができる。
【0057】
そして、このような適切作動判定の結果、つまり出し忘れ総回数N及び操舵回数Mに基づいて、報知手段22が必要に応じて運転者への報知を実行する。具体的には、ステップS1でイグニッションキーがオフにされると(ステップS1:No)、ステップS50で走行時間のカウントを終了し、時間カウントフラグI、方向指示器作動フラグF等の全てのフラグをリセットする(ステップS51)。次いでステップS52で、報知手段22が、出し忘れ総回数Nが1以上であるか否か、すなわちウインカーの出し忘れがあったか否かを判定する。ウインカーの出し忘れがあった場合には(ステップS52:Yes)、操舵回数Mに対する出し忘れ総回数Nの割合N/Mを算出し、この割合N/Mが予め設定された基準割合Pよりも大きいか否かを判定する。そして、割合N/Mが基準割合Pよりも大きい場合には(ステップS53:Yes)、運転者に対して、例えば、スピーカー或いはメーター内のランプ等で構成される報知部30からウインカーの適切な作動を促す報知(注意喚起)を行う(ステップS54)。
【0058】
これにより運転者のウインカーの出し忘れを予防することができ、それに起因する事故の発生を抑制することができる。また、本発明の車両の報知装置は、既存の装備を利用して構成されており、極めて安価に実現することができ、カーナビゲーションシステムが搭載されていない車両にも適用することができる。
【0059】
なお運転者に対する報知の方法は、例えば、スピーカーからの音声指示や効果音、或いはメーター内のランプを点滅させること等、聴覚や視覚に対する方法が挙げられるが、特に限定されるものではない。報知の方法は、例えば、シートを振動させる、刺激の強い香りを発する等、触覚や嗅覚に対するものであってもよい。
【0060】
またこのような運転者への注意喚起は、例えば、車両のエンジンが停止された際等に行われるが、勿論、どのタイミングで行うようにしてもよい。
【0061】
また、本実施形態では、割合N/Mに基づいて注意喚起を行うようにしたが、勿論、出し忘れ総回数Nが所定回数を超えた場合に、注意喚起を行うようにしてもよい。さらに、出し忘れ総回数Nが0であった場合には、それを褒める報知を行うようにしてもよい。
【0062】
以上本発明の一実施形態について説明したが、勿論、本発明は、その主旨を逸脱しない範囲であれば、上述した実施形態に限定されるものではない。
【符号の説明】
【0063】
10 報知装置
11 ウインカーSW
12 車速センサ
13 舵角センサ
14 シフトレバー位置検出手段
15 ハザードSW
20 制御部
21 適切作動判定手段
22 報知手段
23 回数計測手段
30 報知部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の方向指示器の作動を検出する作動検出手段と、
車両の速度を検出する車速検出手段と、
車両のステアリングの操舵角を検出する操舵角検出手段と、
少なくとも前記速度検出手段及び前記操舵角検出手段の検出結果に基づいて車両の走行状態を判別すると共にその判別結果と前記作動検出手段による検出結果とに基づいて前記方向指示器が車両の走行状態に応じて適切に作動しているか否かの判定を行う適切作動判定手段と、
前記適切作動判定手段によって前記方向指示器が車両の走行状態に適切に作動していないと判定された場合に、運転者に対して前記方向指示器の適切な作動を促す報知を行う報知手段と、
を備えることを特徴とする車両の報知装置。
【請求項2】
前記適切作動判定手段は、前記操舵角検出手段によって検出された操舵角の最大値が予め設定された設定角度以上であるか否かを少なくとも判定し、その判定結果に基づいて車両の走行状態を判別することを特徴とする請求項1に記載の車両の報知装置。
【請求項3】
前記適切作動判定手段は、前記操舵角検出手段によって検出されたステアリングの操舵角の最大値が前記設定角度以上であると判定した場合には、車両のステアリングが前回操作されてから次に操作されるまでの車両の走行距離が予め設定された設定距離以上であるか否かをさらに判定し、その判定結果に基づいて車両の走行状態を判別することを特徴とする請求項2に記載の車両の報知装置。
【請求項4】
前記適切作動判定手段は、車両のステアリングが前回操作されてから次に操作されるまでの車両の走行距離が前記設定距離以上であると判定した場合には、その後の無操作時間が予め設定された設定時間を超えているか否かをさらに判定し、その判定結果に基づいて車両の走行状態を判別することを特徴とする請求項3に記載の車両の報知装置。
【請求項5】
前記適切作動判定手段は、車両のステアリングが前回操作されてから次に操作されるまでの車両の走行距離が前記設定距離を超えていないと判定した場合には、車両のステアリングが前回操作された後の車速が、予め設定された設定速度を超えているか否かをさらに判定し、その判定結果に基づいて車両の走行状態を判別することを特徴とする請求項3に記載の車両の報知装置。
【請求項6】
前記適切作動判定手段は、前記操舵角検出手段によって検出されたステアリングの操舵角の最大値が前記設定角度よりも小さいと判定した場合には、前記操舵角の最大値が車速に応じて設定される基準角度以上であるか否かをさらに判別し、その判定結果に基づいて車両の走行状態を判別することを特徴とする請求項3〜5の何れか一項に記載の車両の報知装置。
【請求項7】
前記適切作動判定手段は、ステアリングの操舵角の変化率が予め設定された基準変化率以上であるか否かをさらに判別し、その判定結果に基づいて車両の走行状態を判別することを特徴とする請求項6に記載の車両の報知装置。
【請求項8】
車両の変速機におけるシフトレバーの位置を検出するシフトレバー位置検出手段をさらに具備し、
前記適切作動判定手段は、前記シフトレバー位置検出手段によって前記シフトレバーの位置が前進位置であることが検出されている場合に、前記方向指示器が車両の走行状態に応じて適切に作動しているか否かの判定を開始することを特徴とする請求項1〜7の何れか一項に記載の車両の報知装置。
【請求項9】
車両のハザードランプの点灯状態を検出する点灯状態検出手段をさらに具備し、
前記適切作動判定手段は、前記点灯状態検出手段によって前記ハザードランプの点灯が検出されていない場合に、前記方向指示器が車両の走行状態に応じて適切に作動しているか否かの判定を開始することを特徴とする請求項1〜8の何れか一項に記載の車両の報知装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−134139(P2011−134139A)
【公開日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−293520(P2009−293520)
【出願日】平成21年12月24日(2009.12.24)
【出願人】(000006286)三菱自動車工業株式会社 (2,892)
【Fターム(参考)】