説明

車両の外装部品及びその取付方法

【課題】 一体成形で構成しながら低強度部の強度を確保できる外装部品とその取付方法を提供すること。
【解決手段】 フロントバンパ30の正面意匠部301から左右の側面に回り込む側面意匠部303で、その前壁31に重なるように取り付けられるコーナ部11(高強度部)と、該左右のコーナ部11に連続し、前記フロントバンパ30の下壁33に上面が当接して締め付けられるセンタ部13(低強度部)と、該センタ部13と前記両コーナ部11に、切断予定部27を介して接続される補強部20とを合成樹脂により一体成形したフロントスポイラ10(外装部品)をフロントバンパ30に固定した後に、切断予定部27を切断して補強部20を除去する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の外装部品及びその取付方法に関し、特に、一対の高強度部と両高強度部を相互に連結する低強度部を備える車両の外装部品及びその取付方法に関する。
【背景技術】
【0002】
車両のデザイン上あるいは走行性能上、外装部品としてフロントバンパやリヤバンパにエアスポイラを、あるいは車両側面のサイドフレームにマッドガードを取り付けることが広く行われている。
フロントバンパに取り付けられるエアスポイラの例として図7に示すように、フロントバンパの側面に重なって左右に回り込み、大きな断面で強度が大きい高強度部911と、この左右の高強度部911を連結し、フロントバンパの下面に当接する断面の小さな低強度部913とからなる合成樹脂製のエアスポイラ910がある。
【0003】
また、車体の左右両側のサイドフレームに取り付けられるマッドガードの例として、図8に示すように、フロントホイルハウス後端からリヤホイルハウス前端の間に取り付けられ、両端で断面が最も大きく前後方向の略中央部で断面が最も小さくなるように、二つの三角形の高強度部811と、この三角形の頂点を突き合わせた低強度部813とからなる合成樹脂製のマッドガード810がある。
【0004】
このように断面の大きな高強度部と極端に断面の小さな低強度部とを備えた外装部品全体が一体成形されている場合、外装部品を車体に取り付ける際には、この外装部品を一人の作業者で持ち上げると低強度部で変形したり破損したりする恐れがあるため、二人の作業者で高強度部を支えながら車体に沿わせて締め付ける必要があり、作業性が悪いという問題が生じる。
そこで従来、この二人作業を無くすために、図9に示すように、エアスポイラを低強度部913の略中央部で分割して、一方の高強度部911と低強度部の半分とを一体に成形した略左右対称の2部品で構成し、これらを別々に車体に取り付け、取り付けたときに左右の低強度部913の端部が接合されるようにしていた。
【0005】
外装部品を分割して複数の部品で構成するものとして、特開平10−138960号公報(以下、「特許文献1」という。)および特開平9−295592号公報(以下、「特許文献2」という。)がある。
【特許文献1】特開平10−138960号公報
【特許文献2】特開平9−295592号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが、上記のように分割して2部品で構成したものでは、図10に示すように、その接合部に接合線(見切り線)が生じ、見栄えが悪いという問題がある。
【0007】
そこで、本発明は、かかる課題を解決すべく、見栄えが良く、かつ、取付作業性の良い外装部品とその取付方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に係る発明は、合成樹脂により一体成形され、一対の高強度部と、両高強度部を相互に連結する低強度部を備える車両の外装部品であって、両高強度部を相互に連結し、前記高強度部を車体に固定した後に除去される補強部を一体成形した車両の外装部品である。
本発明によれば、両高強度部と低強度部が一体成形されているため、分割した場合のような接合線が現れず見栄えが良い。また、両高強度部が低強度部と補強部によって連結されているため、両高強度部材間の位置関係を変位させる力が加わったときに、この力が低強度部と補強部に分散され、低強度部が変形するのが防止される。したがって、車体に取り付ける際に低強度部の変形を考慮して作業する必要がなくなるため、作業性が良い。また、車体に固定した後には、補強部を除去することにより所期のデザイン形状とすることができる。
【0009】
また、請求項2に係る発明は、請求項1に記載の車両の外装部品であって、前記補強部が切断容易な切断予定部を介して前記高強度部に接続されており、該切断予定部を切断することにより前記補強部を除去できる車両の外装部品である。
本発明によれば、高強度部と補強部とを切断容易な切断予定部を介して接続しているため、車体に固定後、切断予定部を容易に切断することができ、切断することにより補強部を容易に除去することができる。
【0010】
また、請求項3に係る発明は、請求項1又は2に記載の車両の外装部品であって、前記補強部が前記低強度部に接続されている車両の外装部品である。
本発明によれば、補強部が低強度部にも接続されているため、低強度部および補強部に伝わった力を相互に効率よく分散させることができる。
【0011】
また、請求項4に係る発明は、請求項3に記載の車両の外装部品であって、前記補強部が切断容易な切断予定部を介して前記低強度部に接続されており、該切断予定部、及び前記補強部と前記高強度部との間の切断予定部を切断することにより前記補強部を除去できるように構成した車両の外装部品である。
本発明によれば、外装部品を車体に固定後、切断予定部を容易に切断することができ、切断することにより補強部を容易に除去することができる。
【0012】
また、請求項5に係る発明は、請求項1から4のいずれか1項に記載の車両の外装部品の取付方法であって、前記高強度部を車体に固定した後に、前記補強部を除去する車両の外装部品の取付方法である。
本発明によれば、外装部品を車体に取り付ける際は、補強部により低強度部が変形するのが防止されているため作業性がよく、外装部品を取り付けた後は、補強部を除去することにより所期のデザイン形状にすることができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、車両の外装部品の取付作業性を良くし、かつ見栄えを良くすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
次に、本発明に係る車両の外装部品及びその取付方法の一の実施の形態について図面を参照して説明する。本実施の形態は、本発明をフロントバンパに取り付けられるフロントスポイラに適用したものである。
ここで、図1は、フロントバンパとフロントスポイラを示した斜視図であり、図2は、フロントスポイラの高強度部の断面図、図3は低強度部の断面図である。
【実施例】
【0015】
フロントバンパ30は、車両正面の正面意匠部301と、該正面意匠部301の左右に連結して側面に回り込む側面意匠部303とからなり、これら正面意匠部301と側面意匠部303は縦方向に立ち上がる前壁31と、該前壁31の下部で後方に傾斜した傾斜面311を介して連結する下壁33とから断面が略L字状となるように形成されている。 フロントスポイラ10は、図1に示すように、フロントバンパ30の側面意匠部303で、その前壁31に重なるように取り付けられるコーナ部11、11と、該左右のコーナ部11、11に連続し、前記フロントバンパ30の下壁33に上面が当接して締め付けられるセンタ部13と、該センタ部13と前記両コーナ部11、11に、切断予定部27を介して接続される補強部20とからなり、合成樹脂材を射出成形して一体成形される。
なお、前記コーナ部11、11が請求項の「高強度部」に相当し、センタ部13が「低強度部」に相当する。
【0016】
コーナ部11は、図2に示すように、フロントバンパ30の側面意匠部303の前壁31に重なって外方に膨らんで上方に立ち上がる意匠壁111と、該意匠壁111の下端から連続する下壁113とから断面が略L字状となるように形成され、該下壁113はフロントバンパ30の下壁33よりも下方に位置し、後述するセンタ部13の下壁135(図3参照)と略同じ高さ位置で、該下壁135と連続するように成形されている。したがって、コーナ部11はセンタ部13に比較して断面が大きく、重量も大きく、強度も大きい高強度部である。
コーナ部11は、その内側でフロントバンパ30に対向する面に、意匠壁111とにより四角形を形成するようにステー部材115が一体成形され、意匠壁111の対面でフロントバンパ30の傾斜面311にクリップナット60とボルト70により締め付けられる。
【0017】
センタ部13は、図3に示すように、上壁131と前壁133と下壁135とを有する略コ字状断面形状に成形されており、上壁131がフロントバンパ30の下壁33にクリップナット60及び取付ボルト70により所要箇所で締め付けられる。
前壁133は、フロントバンパ30の傾斜面311よりも前方に突出し、上壁131と前壁133との交点より前壁133と下壁135との交点が前方へ張り出して、前記フロントバンパ30の傾斜面311とによりV字を形成している。
下壁135は、前壁133の下部から連続して、前記コ字状断面の開口部が拡がるように後方に、上壁131の長さの半分程度の位置まで延在している。
したがって、センタ部13はコーナ部11に比較して断面積が小さく、強度も小さい低強度部である。
【0018】
補強部20は、図1に示すように、センタ部13の左右全幅と、該センタ部13と連続するコーナ部11の一部とに平面視で重なり、図4の斜視図に示すように、下壁113、135の後端よりわずか後方で垂下する補強壁21と、該補強壁21の下端で後方に折れ曲がるフランジ23とからなる。
補強壁21の後面には、上端が後述する切断予定部27の縦切断予定部271を介して上壁131の下面に接続されるリブ25が、補強壁21と直角にフランジ23と同じ幅だけ後方に突出する形で複数設けられている。
また、リブ25に隣接する位置には、上壁131と下壁135との断面形状を保持するための接続片29が、該上壁131の下面と下壁135の上面とを接続して上部が斜め後方に傾斜するように設けられ、その後上部が縦切断予定部271と連続している。
【0019】
切断予定部27は、上述したリブ25の上部で、上壁131の下面との間に板厚の薄い部分を設けて形成した縦切断予定部271と、リブ25を設けた補強壁21の上部を所要幅にわたって上方に延在させた延在部211に、下壁135、113の下面を後方に延長して交差接続する薄板に形成した横切断予定部273とから形成されている。
【0020】
なお、図2に示すように、コーナ部11における補強部20の接続部においては、縦切断予定部271の上端が前述したステー部材115の下面に接続され、接続片29がステー部材115の下壁で代用されている。
また、切断予定部27が形成されていない一般部では、図5に示すように、補強壁21の上部は下壁113、135とは離間している。
【0021】
次に、以上のように構成された車両の外装部品(フロントスポイラ)の取付方法について説明する。まず、センタ部13の上壁131及びステー部材115に設けた複数の取付孔1311に予めクリップナット60を係合させておくとともに、コーナ部11の側壁内側に両面テープ(図略)を貼り付けておく。
【0022】
そして、フロントスポイラ10をフロントバンパ30の前下方から斜め上後方に向かって持ち込み、センタ部13の上壁131をフロントバンパ30の下壁33の下面にあてがいながら前記両面テープでコーナ部11をフロントバンパ30の側面に張り付ける。
このとき、フロントスポイラ10は補強部20で補強されているので、曲がったり捻れたりすることが少なく、一人の作業者で作業できる。
その後、取付ボルト70をフロントバンパ30の内側から取付孔331に差し込み、クリップナット60に螺合させて締め付け、フロントスポイラ10をフロントバンパ30に固定する。
【0023】
フロントスポイラ10がフロントバンパ30に確実に固定されたことを確認して、図6に示すように、ニッパ等の工具Tで薄肉の縦切断予定部271と横切断予定部273とを切断してフロントスポイラ10から補強部20を除去し、特に横切断予定部273の下壁135の先端から残った薄肉部をグラインダ等で削り取る。
フロントスポイラ10は一体成形されているので、従来分割していたために生じていた見切り線は生じない。
除去した補強部20は、合成樹脂のリサイクルに回して再度利用可能とする。
【0024】
なお、本発明は前記実施の形態のものに限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で様々な変更が可能である。
例えば、本実施の形態のフロントスポイラ10では、補強部20とセンタ部13とは6カ所の前記切断予定部27で、コーナ部11とは各1カ所の前記切断予定部27で接続され、補強されたもので示したが、これに限られず、補強部の両端のみをコーナ部に切断予定部で接続したものであってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の一の実施の形態に係る車両の外装部品であるフロントスポイラの全体斜視図である。
【図2】図1のII−II線に沿う断面図である。
【図3】図1のIII−III線に沿う断面図である。
【図4】本発明の一の実施の形態に係る車両の外装部品に設けられた切断予定部の斜視図である。
【図5】図1のV−V線に沿う断面図である。
【図6】本発明の一の実施の形態に係る車両の外装部品の、切断位置を示す図2に対応する断面図である。
【図7】従来の一体型の車両の外装部品の例を示すフロントスポイラの斜視図である。
【図8】従来の車両の外装部品の他の例を示すサイドマッドガードの斜視図である。
【図9】従来の2分割した車両の外装部品の例を示すフロントスポイラの斜視図である。
【図10】図9に示す従来の車両の外装部品の接合部の平面断面図である。
【符号の説明】
【0026】
10 フロントスポイラ
11 コーナ部
13 センタ部13
113、135 下壁
20 補強部
21 補強壁
25 リブ
27 切断予定部
271 縦切断予定部
273 横切断予定部
30 フロントバンパ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
合成樹脂により一体成形され、一対の高強度部と、両高強度部を相互に連結する低強度部を備える車両の外装部品であって、
両高強度部を相互に連結し、前記高強度部を車体に固定した後に除去される補強部を一体成形した車両の外装部品。
【請求項2】
請求項1に記載の車両の外装部品であって、
前記補強部が切断容易な切断予定部を介して前記高強度部に接続されており、該切断予定部を切断することにより前記補強部を除去できる車両の外装部品。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の車両の外装部品であって、
前記補強部が前記低強度部に接続されている車両の外装部品。
【請求項4】
請求項3に記載の車両の外装部品であって、
前記補強部が切断容易な切断予定部を介して前記低強度部に接続されており、該切断予定部、及び前記補強部と前記高強度部との間の切断予定部を切断することにより前記補強部を除去できる車両の外装部品。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1項に記載の車両の外装部品の取り付け方法であって、
前記高強度部を車体に固定した後に、前記補強部を除去する車両の外装部品の取付方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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