説明

車両の方位指示装置

【課題】車両内の方位変動要因により、方位算出処理部から出力される方位信号が頻繁に切り換わり、方位表示装置の表示がちらつき(ハンチング)、見る者に不信感を与えることになるという課題があった。
【解決手段】方位算出処理部にヒステリシス特性を持たせ、車両側の方位変動要因によって、前記ヒステリシス特性を変更することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、車両に搭載した地磁気センサの出力に基づいて磁気方位を算出し、得られた磁気方位に基づいて方位を表示する車両の方位指示装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来から地磁気センサを用いて方位を算出することが行われている。図5は従来の車両の方位指示装置の構成図であり、101は地磁気センサであり、図6に示す如く地磁気方位を検出して直交するX,Yの2軸方向の電気信号
Vx=KHsinθVy=KHcosθに変換して出力する。なお、上記式中Kは定数,Hは地磁気の強さ、θは地磁気の方位の基準に対して、車両の移動方位を表す角度である。この電気信号Vx、Vyに基づいて方位算出処理部102は方位を算出し、この方位算出処理部から得られた方位θを方位表示部103で表示する。
【0003】そして、上記の式から判る如く、地磁気センサ101を回転させる場合の電気信号Vx、Vyによる軌跡は次式で表される如く円となる。
Vx2 +Vy2 =(KH)2
【0004】図6は上記の式で表される円の円周を方位判定基準線104〜107で8等分して表したもので、この方位判定基準線104〜107ではさまれた弧108〜115は方位を表している。従って、各弧108〜115に対応して設けられた表示素子L1〜L8を点灯させることにより、車両の進行方向の表示がなされる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】従来の車両の方位指示装置は以上のように構成されているので、車両の移動方向が方位判定の境界、例えば図6における方位判定基準線104〜107の近傍にある場合、車両に設けられた各種電気機器(車両内の方位変動要因)の動作、例えばブレーキを動作させたときに該ブレーキに対する給電路に流れる電流により該給電路の周囲に生じる磁界の影響を受けるときにおいては、方位算出処理部102から出力される方位信号が頻繁に切り換わり、表示素子の表示がちらつき(ハンチング)が生じ、見る者に不信感を与えることになるという課題があった。
【0006】そこで、方位算出処理部102にヒステリシス特性(図6に示す斜線示領域)を持たせ、方位表示が頻繁に変化しないようにしたものもあるが、このヒステリシス特性は固定であるため、車両内の方位変動要因によって、方位表示が変化するという課題があった。
【0007】この発明は上記のような従来の課題を解消するためになされたもので、車両内の方位変動要因に影響されることなく、方位表示を安定に行うことができる車両の方位指示装置を得ることを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】この発明に係る車両の方位指示装置は、地磁気の方向を検出する地磁気センサと、この地磁気センサの出力に基づいて磁気方位を算出する方位算出処理部とを備え、この方位算出処理部にヒステリシス特性を持たせ、車速が停車を含む一定値以下になると、前記ヒステリシス特性を変更するものである。
【0009】この発明に係る車両の方位指示装置は、地磁気の方向を検出する地磁気センサと、この地磁気センサの出力に基づいて磁気方位を算出する方位算出処理部とを備え、この方位算出処理部にヒステリシス特性を持たせ、車速の時間微分に応じてヒステリシス特性を変化させるものである。
【0010】この発明に係る車両の方位指示装置は、車速の時間微分が一定値以上の時は、ヒステリシス特性を小さくするものである。
【0011】この発明に係る車両の方位指示装置は、車速の時間微分が一定値以下の時は、ヒステリシス特性を大きくするものである。
【0012】この発明に係る車両の方位指示装置は、地磁気の方向を検出する地磁気センサと、この地磁気センサの出力に基づいて磁気方位を算出する方位算出処理部とを備え、この方位算出処理部にヒステリシス特性を持たせ、このヒステリシス特性を車両側の方位変動要因によって変えるものである。
【0013】この発明に係る車両の方位指示装置は、ブレーキ動作を方位変動要因とする。
【0014】
【発明の実施の形態】以下、この発明の実施の一形態を説明する。
実施の形態1.図1はこの発明の車両の方位指示装置の構成を示すブロック図であり、図1において、1は地磁気センサであり、地磁気方位を検出して直交するX,Yの2軸方向の電気信号Vx、Vy(前記した式1)に変換して出力する。2はこの電気信号Vx、Vyに基づいて方位を算出する方位算出処理部であり、例えばマイクロコンピュータで構成されている。3は方位算出処理部2から得られた方位θを表示する方位表示部である。
【0015】4は車速を検出する車輪速センサ、5はブレーキ、6はエアコン、7はライト、8はワイパー、9はパワーウィンドウ、10はドアミラー等の車両に搭載された電気機器であり、これ等の電気機器が車両内の方位変動要因となる。
【0016】次に動作について説明する。
1.車速に基づく表示変更a.方位表示固定図2に示すように、方位算出処理部2が方位表示を開始すると、地磁気センサ1からの出力を入力し(ステップST1)、次いで車速を入力し(ステップST2)、車速が一定値以下かを判定し(ステップST3)、YESであれば、方位表示部3の方位表示を固定する(ステップST4)。これによって、停車時および車速が一定値以下の低速走行時には、車両内の方位変動要因であるエアコン6、ライト7、ワイパー8、パワーウィンドウ9、ドアミラー10等を作動させた場合に流れる電流により生じる磁界により、地磁気センサ1に作用する磁界が変動しても方位表示は変動せず、見る者に不信感を与えることはない。
【0017】b.ヒステリシスを変化図3に示すように、方位算出処理部2が方位表示を開始すると、地磁気センサ1からの出力を入力し(ステップST11)、次いで車速を入力し(ステップST12)、車速が一定値以下かを判定し(ステップST13)、YESであれば、ヒステリシスを大きくする(ステップST14)。これによって、停車時および車速が一定値以下の低速走行時には、車両内の方位変動要因であるエアコン6、ライト7、ワイパー8等を作動させた場合に流れる電流により生じる磁界により、地磁気センサ1に作用する磁界が変動しても方位表示は変動せず、見る者に不信感を与えることはない。
【0018】2.方位変動要因に基づく表示変更図4に示すように、方位算出処理部2が方位表示を開始すると、地磁気センサ1からの出力を入力し(ステップST21)、ブレーキ5が操作されたかを判断し(ステップST22)、YESであれば、ヒステリシスを大きくする(ステップST23)。これによって、ブレーキ操作によって生じる磁界により、地磁気センサ1に作用する磁界が変動しても方位表示は変動せず、見る者に不信感を与えることはない。
【0019】なお、この場合、ブレーキ操作の代わりに、エアコン6、ライト7、ワイパー8、パワーウィンドウ9、ドアミラー10等の他の車両内の方位変動要因の1つ又は複数を作動させた場合もヒステリシスを大きくするもので、同様の効果が得られる。
【0020】以上のように、この実施の形態1によれば、停車時および車速が一定値以下の低速走行時における、車両内の方位変動要因に基づく方位表示部のちらつき表示を防止する。
【0021】
【発明の効果】以上のように、この発明によれば、地磁気センサの出力に基づいて磁気方位を算出する方位算出処理部にヒステリシス特性を持たせ、車速が停車を含む一定値以下になると、前記ヒステリシス特性を変更するように構成したので、車両内の方位変動要因に基づく方位表示部のちらつき表示を確実に防止することができるとともに、走行時における応答性の低下を確実に防止することができるという効果がある。
【0022】この発明によれば、地磁気センサの出力に基づいて磁気方位を算出する方位算出処理部にヒステリシス特性を持たせ、車速の時間微分に応じてヒステリシス特性を変化させるように構成したので、車両内の方位変動要因に基づく方位表示部のちらつき表示を確実に防止することができるとともに、走行時における応答性の低下を確実に防止することができるという効果がある。
【0023】この発明によれば、車速の時間微分が一定値以上の時は、ヒステリシス特性を小さくするように構成したので、走行時における方位表示の応答性の低下を確実に防止することができるという効果がある。
【0024】この発明によれば、車速の時間微分が一定値以下の時は、ヒステリシス特性を大きくするように構成したので、停車時における方位表示のちらつきを確実に防止することができるという効果がある。
【0025】この発明によれば、地磁気センサの出力に基づいて磁気方位を算出する方位算出処理部にヒステリシス特性を持たせ、このヒステリシス特性を車両側の方位変動要因によって変えるように構成したので、方位表示のちらつきおよび方位表示の応答性の低下を確実に防止することができるという効果がある。
【0026】この発明によれば、ブレーキ動作を方位変動要因としたので、ブレーキに対する給電路に流れる電流により生じる磁界の影響を受けて、表示素子の表示がちらつき(ハンチング)が生じ、見る者に不信感を与えることを防止することができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の車両の方位指示装置の構成を示すブロック図である。
【図2】この発明の実施の形態1による車速に基づいて方位表示変更を行う動作を説明するフローチャートである。
【図3】この発明の実施の形態1による車速に基づいてシステリシスの変更を行う動作を説明するフローチャートである。
【図4】この発明の実施の形態1によるブレーキ操作時でシステリシスの変更を行う動作を説明するフローチャートである。
【図5】従来の車両の方位指示装置の構成を示すブロック図である。
【図6】その装置の動作概念を説明する説明図である。
【符号の説明】
1 地磁気センサ、2,102 方位算出処理部、3,103 方位表示部、4 車輪速センサ、5 ブレーキ、6 エアコン、7 ライト、8 ワイパー、9 パワーウィンドウ、10 ドアミラー、101 地磁気センサ、104〜107 方位判定基準線、108〜115 弧、L1〜L8 表示素子。

【特許請求の範囲】
【請求項1】 地磁気の方向を検出する地磁気センサと、この地磁気センサの出力に基づいて磁気方位を算出する方位算出処理部と、この方位算出処理部から得られた方位を表示する方位表示部とを有する車両の方位指示装置において、前記方位算出処理部にヒステリシス特性を持たせ、車速が停車を含む一定値以下になると、前記ヒステリシス特性を変更することを特徴とする車両の方位指示装置。
【請求項2】 地磁気の方向を検出する地磁気センサと、この地磁気センサの出力に基づいて磁気方位を算出する方位算出処理部と、この方位算出処理部から得られた方位を表示する方位表示部とを有する車両の方位指示装置において、前記方位算出処理部にヒステリシス特性を持たせ、車速の時間微分に応じてヒステリシス特性を変化させることを特徴とする車両の方位指示装置。
【請求項3】 車速の時間微分が一定値以上の時は、ヒステリシス特性を小さくすることを特徴とする請求項2記載の車両の方位指示装置。
【請求項4】 車速の時間微分が一定値以下の時は、ヒステリシス特性を大きくすることを特徴とする請求項2記載の車両の方位指示装置。
【請求項5】 地磁気の方向を検出する地磁気センサと、この地磁気センサの出力に基づいて磁気方位を算出する方位算出処理部と、この方位算出処理部から得られた方位を表示する方位表示部とを有する車両の方位指示装置において、前記方位算出処理部にヒステリシス特性を持たせ、このヒステリシス特性を車両内の方位変動要因によって変えることを特徴とする車両の方位指示装置。
【請求項6】 方位変動要因は、ブレーキ動作であることを特徴とする請求項5記載の車両の方位指示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2001−330439(P2001−330439A)
【公開日】平成13年11月30日(2001.11.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2000−148808(P2000−148808)
【出願日】平成12年5月19日(2000.5.19)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】