説明

車両の空調装置

【課題】車載熱源用冷却水回路からヒーター用冷却水回路への冷却水の導入をより安定して行うことのできる車両両の空調装置を提供する。
【解決手段】燃料電池用冷却水回路1からヒーター用冷却水回路2へと燃料電池冷却水を導入するための導入口12と、ヒーター用冷却水回路2を通った燃料電池冷却水を燃料電池用冷却水回路1に導出するための導出口13とを、冷却水を一方の対象として熱交換が行われる熱交換部及び燃料電池用ウォーターポンプ3を間に挟むことなく連続して設けるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車載熱源を通過して冷却水を循環させる車載熱源用冷却水回路を備える車両の空調装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、燃料電池で発電を行うとともに、発電した電力で動作するモーターを駆動源として走行する燃料電池車の開発が進められている。そして従来、例えば特許文献1に見られるように、燃料電池の排熱を車室内の暖房に利用する車両の空調装置が提案されている。
【0003】
図4は、そうした従来の空調装置の設けられた燃料電池車の冷却系の構成を示している。同図に示すように、この燃料電池車には、燃料電池50と、冷却水を循環させるためのウォーターポンプ50aと、放熱により冷却水を冷却するラジエーター51とを通る燃料電池用冷却水回路52が設けられている。またこの車両の冷却系には、ラジエーター51の設けられたラジエーター水路53を迂回して冷却水を流すバイパス通路54に、冷却水の熱で温風を形成するヒーターコア55が設けられている。すなわち、この従来の空調装置では、ヒーターコア55に流す冷却水を、燃料電池用冷却水回路52のラジエーター51の上流から導入するとともに、ヒーターコア55を通過した後の冷却水を燃料電池用冷却水回路52のラジエーター51の下流に導出するように冷却水回路が形成されている。
【0004】
また、この車両の冷却系には、燃料電池50を通過した冷却水をラジエーター水路53とバイパス通路54とに分配する三方弁56が設けられている。更にこの冷却系には、バイパス通路54を流れる冷却水のうち、ヒーターコア55を通る冷却水の流量とヒーターコア55を迂回する冷却水の流量との流量比をコントロールする制御弁57が設けられてもいる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−315524号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
こうした従来の燃料電池車の冷却系では、燃料電池の廃熱が多いときには、ラジエーター水路53が開き、ラジエーター51に冷却水が流されるようになる。このときのヒーターコア55には、燃料電池用冷却水回路52のラジエーター51上流に設けられた導入口58を通じて導入された冷却水が流され、またヒーターコア55を通過した冷却水は、ラジエーター51の下流に設けられた導出口(三方弁56)を通じて燃料電池用冷却水回路52に戻されるようになる。すなわち、この空調装置の燃料電池用冷却水回路52では、ヒーターコア55の冷却水の導入口58と導出口(三方弁56)とが、ラジエーター51を挟むように設けられている。
【0007】
こうした構成の冷却系では、ラジエーター51通過時の流動抵抗により、燃料電池用冷却水回路52の導入口58部分と導出口(三方弁56)部分との間に大きい圧力差が生じるようになる。また燃料電池用冷却水回路52の冷却水の流量は、燃料電池50の発熱状況に応じて大幅に変更されるようになっている。燃料電池用冷却水回路52の導入口58部分と導出口(三方弁56)部分との間に大きい圧力差が存在すると、その圧力差によってヒーターコア55に冷却水が流入するようになる。こうした圧力差に基づく冷却水の流入量は、燃料電池用冷却水回路52の冷却水の流量に大きく依存する。したがって、導入口58、導出口(三方弁56)との間に圧力差が存在すると、燃料電池用冷却水回路52の冷却水の流量の変化に応じてヒーターコア55に流入する冷却水の流量が変動してしまうようになる。そしてその結果、車室内の暖房性能を安定して維持することができなくなってしまうようになる。
【0008】
なおこうした問題は、車載熱源を通過して冷却水を循環させる車載熱源用冷却水回路と、ヒーターコアを通過して冷却水を循環させるヒーター用冷却水回路とが独立に設けられ、車載熱源用冷却水回路からヒーター用冷却水回路への冷却水の導入を行う車両の空調装置に概ね共通したものとなっている。
【0009】
本発明は、こうした実情に鑑みてなされたものであり、その解決しようとする課題は、車載熱源用冷却水回路からヒーター用冷却水回路への冷却水の導入をより安定して行うことのできる車両両の空調装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するため、請求項1に記載の発明は、車載熱源を通過して冷却水を循環させる車載熱源用冷却水回路を備える車両に適用される空調装置において、下記の各構成を備えるようにしている。すなわち、請求項1に記載の車両の空調装置は、
・車載熱源用冷却水回路とは独立して設けられるとともに、冷却水の熱で温風を形成するヒーターコアを通過して冷却水を循環させるヒーター用冷却水回路。
・車載熱源用冷却水回路に設けられて、同車載熱源用冷却水回路からヒーター用冷却水回路へと冷却水を導入するための導入口。
・車載熱源用冷却水回路に設けられて、ヒーター用冷却水回路から車載熱源用冷却水回路へと冷却水を導出するための導出口。
・上記導入口及び導出口が、冷却水を一方の対象として熱交換が行われる熱交換部、ウォーターポンプを間に挟むことなく連続して設けられること。
を具備している。
【0011】
上記車両の空調装置は、車載熱源用冷却水回路からヒーター用冷却水回路に冷却水を取り込むための導入口と、ヒーター用冷却水回路から車載熱源用冷却水回路へと冷却水を戻すための導出口とを備えている。ここで熱交換部は、通常、熱の交換効率を高めるため、水路が幾重にも曲折して形成されており、その内部での冷却水の流動抵抗が大きく、その前後には圧力差が生じる。更に、ウォーターポンプの前後にも大きい圧力差が生じる。そのため、導入口と導出口との間に熱交換部、ウォーターポンプ及び分岐部が介在されると、導入口を通じて車載熱源用冷却水回路からヒーター用冷却水回路へと導入される冷却水の流量に無視し得ない変動を生じさせる程度に、導入口・導出口間の圧力差が大きくなる。
【0012】
その点、本発明の車両の空調装置では、車載熱源用冷却水回路からヒーター用冷却水回路に冷却水を取り込むための導入口と、ヒーター用冷却水回路から車載熱源用冷却水回路へと冷却水を戻すための導出口とが、熱交換部やウォーターポンプを間に挟むことなく連続して設けられている。そのため、導入口、導出口間の圧力差を小さくすることができ、その圧力差に起因した、車載熱源用冷却水回路からヒーター用冷却水回路への冷却水の導入量の変動が抑えられるようになる。したがって、請求項1の車両の空調装置では、車載熱源用冷却水回路からヒーター用冷却水回路への冷却水の導入をより安定して行うことができるようになる。
【0013】
ちなみに、ここでの車載熱源とは、車両の駆動系の構成要素であって、その作動に応じて発熱するものを指す。こうした車載熱源としては、エンジン車のエンジンや、電気自動車又はハイブリッド車の走行用モーターやインバーター、燃料電池車の燃料電池などが挙げられる。
【0014】
なお、車載熱源にて加熱された冷却水をヒーター用冷却水回路に送りたいのであれば、請求項2によるように、車載熱源の冷却水流れ方向における下流側に、導入口及び導出口を設けるようにすると良い。
【0015】
また導入口を通じた車載熱源用冷却水回路からヒーター用冷却水回路への冷却水の導入を、状況に応じて禁止、許容するようにしたければ、請求項3によるように、導入口を通じた車載熱源用冷却水回路からヒーター用冷却水回路への冷却水の導入を禁止、許容する切替弁を備えるようにすると良い。
【0016】
ちなみに、車載熱源の暖機には時間が掛り、また車両では、車載熱源による発電が間欠的に行われるため、車載熱源にて生成される熱だけでは、暖房に必要な熱を十分に賄えないことがある。そうした場合にも、請求項4によるように、ヒーター用冷却水回路のヒーターコアの冷却水流れ方向上流側に設けられて、通電に応じて冷却水を加熱する電気ヒーターを備えるようにすれば、車載熱源の廃熱が不十分なときにも好適に暖房を行うことが可能となる。また請求項5によるように、ヒーターコアの温風流れ方向下流側に設けられて、ヒーターコアを通過した空気を加熱する空気加熱ヒーターを備えるようにしても、車載熱源の廃熱が不十分なときにも好適に暖房を行うことができるようになる。
【0017】
なお本発明の車両の空調装置は、請求項6によるように、燃料電池を車載熱源として搭載する車両に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の第1実施形態に係る空調装置の適用される車両の冷却系の構成を模式的に示した略図。
【図2】本発明の第2実施形態に係る空調装置の適用される車両の冷却系の構成を模式的に示した略図。
【図3】同実施形態の暖房機構の構成を模式的に示した略図。
【図4】従来の空調装置の適用される車両の冷却系の構成を模式的に示した略図。
【図5】導入口、導出口の配置を変更した第1実施形態の空調装置の変形例についてその構成を模式的に示した略図。
【図6】導入口、導出口の配置を変更した第1実施形態の空調装置のもう一つの変形例についてその構成を模式的に示した略図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
(第1の実施の形態)
以下、本発明の車両の空調装置を具体化した第1の実施の形態を、図1を参照して詳細に説明する。なお本実施の形態は、車載熱源として燃料電池を備える燃料電池車に適用される空調装置として本発明を具体化したものとなっている。
【0020】
図1は、本実施の形態の空調装置の適用される車両の冷却系の構成を示している。同図に示すように、この車両の冷却系は大きくは、次の2つの冷却水回路を、すなわち燃料電池用冷却水回路1とヒーター用冷却水回路2とを備えている。
【0021】
燃料電池用冷却水回路1は、燃料電池を冷却するための冷却水(燃料電池冷却水)を同回路に循環させるための燃料電池用ウォーターポンプ3を備えている。冷却水を加圧して吐出する燃料電池用ウォーターポンプ3の下流には、燃料電池4が設置されている。また燃料電池用冷却水回路1は、燃料電池4の下流において、次の2つの冷却水路に、すなわちラジエーター水路5とバイパス水路6とに分岐された分岐部16が形成されている。ラジエーター水路5には、放熱により冷却水を冷却するラジエーター7が設置されている。そしてラジエーター水路5とバイパス水路6との合流部には、両水路を流れる冷却水の流量比を可変とする燃料電池用の流量調整弁8が設けられている。
【0022】
一方、ヒーター用冷却水回路2は、暖房用の温水を同回路に循環させるためのヒーター用ウォーターポンプ9を備えている。なお、ヒーター用冷却水回路2を循環される暖房用の温水は、燃料電池用冷却水回路1を循環される燃料電池冷却水と同じものとなっている。暖房用温水を加圧して吐出するヒーター用ウォーターポンプ9の下流には、電熱で冷却水を加熱する電気ヒーター10と、暖房用温水の熱で車室に送風される空気を温めるヒーターコア11とが設けられている。
【0023】
以上のように構成された燃料電池用冷却水回路1とヒーター用冷却水回路2とは、2つの接続水路12a,13aにより接続されている。そして接続水路12aを通じて燃料電池用冷却水回路1を流れる燃料電池冷却水がヒーター用冷却水回路2に導入され、接続水路13aを通じてヒーター用冷却水回路2を流れた暖房用温水が燃料電池用冷却水回路1へと導出されるようになっている。なお、燃料電池用冷却水回路1に設けられて、同燃料電池用冷却水回路1からヒーター用冷却水回路2へと冷却水を導入するための導入口12、すなわち燃料電池用冷却水回路1と接続水路12aとの接続部は、燃料電池4の下流に設けられている。また燃料電池用冷却水回路1に設けられて、ヒーター用冷却水回路2から燃料電池用冷却水回路1へと冷却水を導出するための導出口13、すなわち燃料電池用冷却水回路1と接続水路13aとの接続部は、上記導入口12の更に下流側に設けられている。ちなみに、導入口12と導出口13との間には、冷却水を一方の対象として熱交換が行われる熱交換部(ラジエーター7など)やウォーターポンプ3を間に挟むことなく連続して設けられている。
【0024】
一方、ヒーター用冷却水回路2においては、上記2つの接続水路12a,13aは、ヒーター用ウォーターポンプ9の上流側にてそれぞれ接続されている。そしてヒーター用冷却水回路2と接続水路12aとの接続部には、ヒーターコア11とヒーター用ウォーターポンプ9とを接続した状態と、接続水路12aとヒーター用ウォーターポンプ9とを接続した状態とを切り替える暖房用三方弁14が設けられている。
【0025】
この暖房用三方弁14がヒーターコア11とヒーター用ウォーターポンプ9とを接続した状態では、ヒーター用冷却水回路2は、燃料電池用冷却水回路1から切り離された状態となる。すなわち、このときのヒーター用冷却水回路2では、ヒーター用ウォーターポンプ9から、電気ヒーター10及びヒーターコア11を通り、再びヒーター用ウォーターポンプ9に戻る循環サイクルが形成されるようになる。
【0026】
一方、暖房用三方弁14が接続水路12aとヒーター用ウォーターポンプ9とを接続した状態では、ヒーター用ウォーターポンプ9には、導入口12及び接続水路12aを通じて、燃料電池4を通過した燃料電池冷却水が導入されるようになる。またその燃料電池冷却水は、電気ヒーター10及びヒーターコア11を通り、接続水路13aと導出口13とを通って再び燃料電池用冷却水回路1に戻るようになる。すなわち、このときには、ヒーター用冷却水回路2と燃料電池用冷却水回路1とを跨いだ、一つの大きな循環サイクルが形成されるようになる。
【0027】
なお上述したように、こうした本実施の形態の空調装置の燃料電池用冷却水回路1には、導入口12と導出口13とが、熱交換部やウォーターポンプ3、上記分岐部16を間に挟むことなく連続して設けられている。そのため、導入口12と導出口13との間には、圧力差が殆ど生じないようになる。圧力差がなければ、燃料電池用冷却水回路1からヒーター用冷却水回路2への冷却水の導入量は、ヒーター用ウォーターポンプ9の冷却水吸入量のみにより決定されるようになる。したがって、燃料電池用冷却水回路1からヒーター用冷却水回路2への燃料電池冷却水の導入を、そうした圧力差に起因した水量変動を殆ど被ることなく、安定して行うことができるようになる。
【0028】
なお、こうした本実施の形態では、暖房用三方弁14が、導入口12を通じた燃料電池用冷却水回路1からヒーター用冷却水回路2への冷却水の導入を禁止、許容する切替弁に相当する構成となっている。また本実施の形態では、燃料電池4が上記車載熱源に、燃料電池用冷却水回路1が上記車載熱源用冷却水回路に、それぞれ対応した構成となっている。
【0029】
以上の本実施の形態の車両の空調装置によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1)本実施の形態の車両の空調装置は、燃料電池4を通過して冷却水を循環させる燃料電池用冷却水回路1を備える車両に適用されるものとなっている。そして本実施の形態の空調装置は、次の各構成を備えている。すなわち、本実施の形態の車両の空調装置は、
・燃料電池用冷却水回路1とは独立して設けられるとともに、冷却水の熱で温風を形成するヒーターコア11を通過して冷却水を循環させるヒーター用冷却水回路2。
・燃料電池用冷却水回路1に設けられて、同燃料電池用冷却水回路1からヒーター用冷却水回路2へと冷却水を導入するための導入口12。
・燃料電池用冷却水回路1に設けられて、ヒーター用冷却水回路2から燃料電池用冷却水回路1へと冷却水を導出するための導出口13。
・上記導入口12及び導出口13が、冷却水を一方の対象として熱交換が行われる熱交換部及び燃料電池用ウォーターポンプ3を間に挟むことなく連続して設けられること。
を具備している。こうした本実施の形態では、顕著な圧力差を生み出す介在物が導入口12と導出口13と間に存在しないため、導入口12、導出口13間の圧力差を小さくすることができる。そのため、そうした圧力差に起因した、燃料電池用冷却水回路1からヒーター用冷却水回路2への冷却水の導入量の変動が抑えられるようになる。したがって、本実施の形態の車両の空調装置によれば、燃料電池用冷却水回路1からヒーター用冷却水回路2への冷却水の導入をより安定して行うことができるようになる。
【0030】
(2)本実施の形態の車両の空調装置は、燃料電池4の冷却水流れ方向における下流側に、導入口12及び導出口13を設けるようにしている。そのため、燃料電池4にて加熱された冷却水をヒーター用冷却水回路2に送ることができ、燃料電池4の廃熱を利用した暖房を効率的に行うことができるようになる。
【0031】
(3)本実施の形態の車両の空調装置は、導入口12を通じた燃料電池用冷却水回路1からヒーター用冷却水回路2への冷却水の導入を禁止、許容する暖房用三方弁14を備えるようにしている。そのため、導入口12を通じた燃料電池用冷却水回路1からヒーター用冷却水回路2への冷却水の導入を、状況に応じて禁止、許容することができるようになる。例えば燃料電池冷却水の温度が暖房用温水の温度よりも高ければ、ヒーター用冷却水回路2に燃料電池冷却水を導入し、逆に低ければ、ヒーター用冷却水回路2への燃料電池冷却水の導入を禁止するといった水路切替が可能となる。
【0032】
(4)本実施の形態の車両の空調装置は、ヒーター用冷却水回路2のヒーターコア11の冷却水流れ方向上流側に設けられて、通電に応じて冷却水を加熱する電気ヒーター10を備えるようにしている。燃料電池の暖機には時間が掛り、また車両では、燃料電池による発電が間欠的に行われるため、燃料電池の廃熱だけでは、暖房に必要な熱を十分に賄えないことがある。そうした場合にも、上記のような電気ヒーター10を設ければ、燃料電池4の廃熱が不十分なときにも好適に暖房を行うことが可能となる。
【0033】
(第2の実施の形態)
次に、本発明の車両の空調装置を具体化した第2の実施の形態を、図2及び図3を併せ参照して詳細に説明する。なお本実施の形態にあって、上記実施の形態と共通する構成については、同一の符号を付してその詳細な説明は省略する。
【0034】
図2は、本実施の形態の空調装置の適用される車両の冷却系の構成を示している。同図に示すように、この車両の冷却系は、ヒーター用冷却水回路2のヒーターコア11の上流に冷却水加熱用の電気ヒーター10が設けられていない点を除けば、第1の実施の形態におけるものと同じとなっている。そうした冷却水加熱用の電気ヒーター10の代りとして、本実施の形態では、その暖房機構の構成を図3に示すように、空気加熱ヒーター15を設けるようにしている。この空気加熱用の空気加熱ヒーター15は、ヒーターコア11の温風流れ方向下流側に設けられて、ヒーターコア11を通過した空気を加熱するものとなっている。なお空気加熱ヒーター15としては、ヒートポンプサイクルを利用したヒーターや、通電に応じて発熱する電気ヒーターなどを採用することができる。
【0035】
こうした本実施の形態の車両の空調装置でも、上記(1)〜(3)の効果を奏することができる。更に本実施の形態では、次の効果を奏することができる。
(5)本実施の形態では、ヒーターコア11の温風流れ方向下流側に設けられて、通電に応じて温風を加熱する空気加熱用の空気加熱ヒーター15を備えるようにしている。燃料電池の暖機には時間が掛り、また車両では、燃料電池4による発電が間欠的に行われるため、燃料電池4の廃熱だけでは、暖房に必要な熱を十分に賄えないことがある。そうした場合にも、上記のような空気加熱用の空気加熱ヒーター15を設けるようにすれば、燃料電池4の廃熱が不十分なときにも好適に暖房を行うことができるようになる。
【0036】
なお、上記各実施の形態は以下のように変更して実施することもできる。
・第1の実施の形態では、ヒーター用冷却水回路2のヒーターコア11の冷却水流れ方向上流側に、通電に応じて冷却水を加熱する電気ヒーター10を設けるようにしている。もっとも、ヒーターコア11に流入する冷却水を十分に加熱できるのであれば、そうした電気ヒーター10をヒーターコア11の冷却水流れ方向下流側に設けるようにしても良い。
【0037】
・第2の実施の形態では、ヒーターコア11の温風流れ方向下流側に、ヒーターコア11を通過した空気を加熱する空気加熱ヒーター15を設けるようにしていた。もっとも、車室内に送風される空気を十分に加熱できるのであれば、そうした空気加熱ヒーター15をヒーターコア11の温風流れ方向上流側に設けるようにしても良い。
【0038】
・第1の実施の形態では、ヒーターコア11に導入される冷却水を必要に応じて加熱する電気ヒーター10を設けるようにしているが、電気ヒーター10に代えて、ヒートポンプ等の他の加熱手段を設けるようにしても良い。
【0039】
・上記実施の形態での導入口12及び導出口13の配置は、ラジエーター7等の熱交換部やウォーターポンプ3が間に挟まれないようにしさえすれば、任意適宜に変更することができる。例えばウォーターポンプ3の上流側に、導入口12及び導出口13を連続して配置するようにしても良い。また導入口12及び導出口13が十分に近接して配置されるのであれば、図5や図6のような導入口12及び導出口13の配置も可能である。例えば図5の構成では、導入口12と導出口13との間においてバイパス水路6が分岐されている。また図6の構成では、導入口12と導出口13との間においてラジエーター水路5が分岐されている。ただし、いずれにおいても、導入口12と導出口13との間には、ラジエーター7のような熱交換部やウォーターポンプ3は介在されておらず、導入口12と導出口13との間に顕著な圧力差が生じないようになっている。このように顕著な圧力差を生み出す介在物が間に存在しないように導入口12と導出口13とを近接して配置しさえすれば、導入口12、導出口13間の圧力差を十分に小さくすることができる。そしてそうした圧力差に起因した冷却水の導入量の変動を抑え、燃料電池用冷却水回路1からヒーター用冷却水回路2への冷却水の導入をより安定して行うことができるようになる。
【0040】
・上記実施の形態では、冷却水加熱用の電気ヒーター10や空気加熱用の空気加熱ヒーター15を設け、燃料電池4の廃熱が少ないときの暖房能力の不足を電気エネルギーで補うようにしていた。もっとも、上記のような電気エネルギーによる暖房能力の補填を行わずとも、十分な暖房性能を確保できるのであれば、これらの電気ヒーター10、15は割愛するようにしても良い。
【0041】
・上記実施の形態では、暖房用三方弁14により、導入口12を通じた燃料電池用冷却水回路1からヒーター用冷却水回路2への燃料電池冷却水の導入を禁止、許容するようにしていた。こうした燃料電池冷却水の導入及びその禁止を、三方弁以外の切替弁、例えばサーモスタットなどにより行うようにしても良い。また燃料電池冷却水の導入の禁止、許容を切り替え可能であれば、そうした切替弁の設置位置も、ヒーター用冷却水回路2と接続水路12aとの接続部以外の位置、例えばヒーター用冷却水回路2と接続水路13aとの接続部、導入口12や導出口13の設置位置、接続水路12a、13aの途中などに変更しても良い。
【0042】
・単に燃料電池冷却水の導入及びその禁止の切り替えだけでなく、燃料電池冷却水の導入量をコントロールするような制御弁を、上記暖房用三方弁14の代りとして設けるようにしても良い。
【0043】
・導入口12を通じた燃料電池用冷却水回路1からヒーター用冷却水回路2への燃料電池冷却水の導入を明確に禁止、許容する必要が無いのであれば、上記のような切替弁や制御弁は割愛するようにしても良い。その場合にも、両ウォーターポンプ3、9の作動量の制御により、接続水路12a、13aの燃料電池用冷却水回路1側とヒーター用冷却水回路2側との圧力関係を変化させることで、導入口12を通じた燃料電池冷却水の導入状況をある程度にコントロールすることが可能である。
【0044】
・上記実施の形態では、燃料電池4の冷却水流れ方向における下流側に、導入口12及び導出口13を設けるようにしていたが、次の条件を満す限りにおいて、導入口12及び導出口13の設置位置を変更するようにしても良い。すなわち、冷却水を一方の対象として熱交換が行われるラジエーターやヒーターコアのような熱交換部、ウォーターポンプ及び上記分岐部16を間に挟むことなく導入口12と導出口13とが連続して設けられるのであれば、導入口12及び導出口13の設置位置は適宜に変更しても良い。例えば燃料電池用ウォーターポンプ3と燃料電池4との間の部分や燃料電池用の流量調整弁8と燃料電池用ウォーターポンプ3との間の部分に導入口12と導出口13とを設けることとしても、圧力差に起因した燃料電池冷却水の導入量の変動を抑えることは可能である。
【0045】
・上記実施形態では、車載熱源として燃料電池を備える燃料電池車に適用される空調装置として本発明を具体化した場合を説明したが、燃料電池以外の車載熱源を備える車両にも本発明の空調装置を適用することは可能である。例えば車載熱源としてエンジンを備えるエンジン車や車載熱源として走行用モーターやインバーターを備える電気自動車又はハイブリッド車などで用いられる空調装置にも、本発明の適用が可能である。すなわち、車両の駆動系の構成要素であって、その作動に応じて発熱する車載熱源を搭載する車両に採用される空調装置であれば、本発明の適用により、車載熱源用冷却水回路からヒーター用冷却水回路への冷却水導入の安定化を図ることが可能となる。
【符号の説明】
【0046】
1…燃料電池用冷却水回路(車載熱源用冷却水回路)、2…ヒーター用冷却水回路、3…燃料電池用ウォーターポンプ、4…燃料電池(車載熱源)、5…ラジエーター水路、6…バイパス水路、7…ラジエーター、8…燃料電池用の流量調整弁、9…ヒーター用ウォーターポンプ、10…電気ヒーター、12…導入口、13…導出口、12a,13a…接続水路、暖房用三方弁(切替弁)、15…空気加熱ヒーター、16…分岐部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車載熱源を通過して冷却水を循環させる車載熱源用冷却水回路を備える車両に適用される空調装置であって、
前記車載熱源用冷却水回路とは独立して設けられるとともに、冷却水の熱で温風を形成するヒーターコアを通過して冷却水を循環させるヒーター用冷却水回路と、
前記車載熱源用冷却水回路に設けられて、同冷却水回路から前記ヒーター用冷却水回路へと冷却水を導入するための導入口と、
前記車載熱源用冷却水回路に設けられて、前記ヒーター用冷却水回路から前記車載熱源用冷却水回路へと冷却水を導出するための導出口と、
前記導入口及び前記導出口が、冷却水を一方の対象として熱交換が行われる熱交換部やウォーターポンプを間に挟むことなく連続して設けられることと、
を備える車両の空調装置。
【請求項2】
前記導入口及び前記導出口は、前記車載熱源の冷却水流れ方向における下流側に設けられる
請求項1に記載の車両の空調装置。
【請求項3】
前記導入口を通じた前記車載熱源用冷却水回路から前記ヒーター用冷却水回路への冷却水の導入を禁止、許容する切替弁を備える
請求項1又は2に記載の車両の空調装置。
【請求項4】
前記ヒーター用冷却水回路の前記ヒーターコアの冷却水流れ方向上流側に設けられて、通電に応じて冷却水を加熱する電気ヒーターを備える
請求項1〜3のいずれか1項に記載の車両の空調装置。
【請求項5】
前記ヒーターコアの温風流れ方向下流側に設けられて、前記ヒーターコアを通過した空気を加熱する空気加熱ヒーターを備える
請求項1〜3のいずれか1項に記載の車両の空調装置。
【請求項6】
前記車載熱源は、燃料電池である
請求項1〜5のいずれか1項に記載の車両の空調装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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