説明

車両の空調装置

【課題】車両の熱源で生じた熱を効率よく車室の暖房に利用する。
【解決手段】電気自動車における車室の暖房を行う際には、その暖房にヒートポンプの高圧側熱交換器を通過する熱媒体の熱が利用される。更に、電気自動車の熱源である電気機器で生じた熱が、水循環回路を循環する冷却水により回収されて同回路のヒータコア6に伝達される。そして、ヒータコア6で加熱された空気を車室に送ることで同車室の暖房が行われる。上記ヒータコア6の上流に導入される空気(車室に送られる空気)は、排出用ダンパ15及び内外気切換ダンパ17の駆動制御により、外気導入モードでは外気とされる一方、内気循環モードでは車室内の空気とされる。そして、内気循環モードでの車室の暖房時においては、上記水循環回路に設けられたラジエータ5からの廃熱によって昇温した外気が、ヒートポンプの低圧側熱交換器12に流されてヒートポンプの熱媒体と熱交換される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の空調装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に示されるように、自動車等の車両には、その車両の熱源で温度の過上昇が生じないよう同熱源で生じた熱を外気に放出するラジエータ、及び、車室の暖房や冷房といった空調を行う空調装置が設けられている。この空調装置には、車両の熱源からの廃熱を利用して車室に送られる空気を加熱するヒータコアが設けられている。ただし、電気自動車やハイブリッド自動車など熱源の少ない車両では、その熱源からの熱を利用したヒータコアによる車室の暖房を行うことが困難になる。このため、特許文献2に示されるように、車両の空調装置に蒸気圧縮式のヒートポンプを設け、そのヒートポンプを用いて車室の暖房を行うことが提案されている。
【0003】
詳しくは、上記ヒートポンプは、熱媒体を圧縮して吐出するコンプレッサと、同コンプレッサにより圧縮されて昇温した熱媒体からの放熱を行う高圧側熱交換器と、同高圧側熱交換器での放熱後の熱媒体を膨張させる膨張弁と、同膨張弁にて膨張して温度低下した熱媒体への吸熱を行う低圧側熱交換器とを備えている。こうしたヒートポンプでは、コンプレッサ、高圧側熱交換器、膨張弁、及び低圧側熱交換器といった機器を熱媒体が順に通過し、それによって熱媒体の循環が行われる。そして、空調装置は、ヒートポンプの上記高圧側熱交換器を通過する高温の熱媒体の熱を利用して車室の暖房を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平6−24238公報(段落[0009])
【特許文献2】特開2008−290523公報(段落[0020]、[0027])
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述したように空調装置に蒸気圧縮式のヒートポンプを設けることで、電気自動車やハイブリッド自動車など熱源の少ない車両においても、上記ヒートポンプを用いて車室の暖房を行うことができるようにはなる。ただし、上記空調装置が設けられる車両においても、同車両の熱源で温度の過上昇が生じないよう、同熱源で生じた熱をラジエータにて廃熱として外気に放出することが行われる。このことから分かるように、車両の熱源で生じた熱を車室の暖房に有効活用しているとは言い難く、上記熱源で生じた熱を効率よく車室の暖房に利用する面で更なる改善の余地がある。
【0006】
本発明はこのような実情に鑑みてなされたものであって、その目的は、車両の熱源で生じた熱を効率よく車室の暖房に利用することができる車両の空調装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1記載の発明によれば、車室の暖房を行う際、その暖房にヒートポンプの高圧側熱交換器を通過する熱媒体の熱が利用される。更に、車室に送られる空気がヒータコアで加熱されることによっても同車室の暖房が行われる。このヒータコアの上流に導入される空気(車室に送られる空気)は、外気導入モードでは外気とされる一方、内気循環モードでは車室内の空気とされる。内気循環モードでの車室の暖房時、車両の熱源で生じた熱を外気に放出するラジエータからの廃熱によって昇温した外気は、ヒートポンプの低圧側熱交換器に流されて同ヒートポンプの熱媒体と熱交換される。ここで、ヒートポンプにおいては、上記昇温した外気と熱媒体との低圧側熱交換器での熱交換を通じて、その外気から熱媒体への吸熱が行われて同熱媒体の温度が上昇する。このように低圧側熱交換器を通過する熱媒体の温度が上昇すると、その熱媒体が圧縮されて昇温した状態となって高圧側熱交換器を通過する際の同熱媒体の温度も上昇するため、上記高圧側熱交換器を通過する熱媒体の熱を利用した車室の暖房が効果的に行われる。従って、内気循環モードでの車室の暖房時、車両の熱源で生じた熱がラジエータから廃熱として放出されるとしても、その廃熱をヒートポンプにより回収して車室の暖房に用いることができ、車両の熱源で生じた熱の暖房への利用効率を向上させることができる。
【0008】
請求項2記載の発明によれば、車両の熱源で生じた熱が水循環回路を循環する冷却水に伝達されて同冷却水が温度上昇する。このように温度上昇した冷却水が水循環回路のヒータコアを通過することで、同ヒータコアが冷却水からの熱を受けて温度上昇し、それによって車室に送られる空気をヒータコアで加熱することが可能になる。そして、ヒータコアで加熱された空気を車室に送ることで同車室の暖房が行われる。この場合、車両の熱源で生じた熱が水循環回路を循環する冷却水により回収されて車室の暖房に利用されることになる。ここで、内気循環モードでの車室の暖房時には、ヒータコアの上流に導入される空気が、外気に比べて温度の高い車室内の空気とされる。このため、比較的温度の高い上記空気をヒータコアで加熱して車室に送ることができ、それによって車室の暖房効率を向上することができる。
【0009】
請求項3記載の発明によれば、車室に送られる空気をヒータコアで加熱して車室の暖房を行う際、外気導入モードであれば上記ヒータコアの上流に流される空気が、車両の熱源で生じた熱を外気に放出するラジエータからの廃熱によって昇温した外気とされる。このように外気導入モードでの暖房時には、ラジエータからの廃熱で昇温した外気をヒータコアで加熱して車室に送ることができるため、車室に送られる空気が温度上昇しやすくなって車室を効果的に暖房することができる。また、そうした効果的な暖房をヒータコアでの空気の加熱のみで行う場合と比較して、同暖房にラジエータからの廃熱を利用している分だけ、その暖房を実現するための暖房負荷を軽減することができる。
【0010】
請求項4記載の発明によれば、ヒートポンプの高圧側熱交換器を通過する熱媒体の熱を利用して車室の暖房を行う際、外気導入モードであれば車室から出される空気がヒートポンプの低圧側熱交換器に流される。これにより、ヒートポンプの低圧側熱交換器にて熱媒体と車室から出された空気とが熱交換される。ここで、車室から出された空気は、外気と比較して温度が高くなる。この空気をヒートポンプの低圧側熱交換器に流すことにより、同空気の熱を回収して車室の暖房に用いることができる。
【0011】
なお、内気循環モードと外気導入モードとの切り換えは、請求項5記載の発明のように、ダンパを第1切換位置と第2切換位置との間で切り換えることで実現することが考えられる。ちなみに、このダンパが第1切換位置に切り換えられたときには、ラジエータからの熱の放出により昇温した外気がヒートポンプの低圧側熱交換器に流されるとともに、車室の空気がヒータコアの上流に導入される。一方、ダンパが第2切換位置に切り換えられたときには、ラジエータからの熱の放出により昇温した外気がヒータコアの上流に導入されるとともに、車室から出された空気がヒートポンプの低圧側熱交換器に流される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本実施形態の空調装置が適用される電気自動車の水循環回路を示す略図。
【図2】同電気自動車のヒートポンプを示す略図。
【図3】同電気自動車の車室に空調のための空気を送る構造を示す略図。
【図4】同電気自動車の車室に空調のための空気を送る構造を示す略図。
【図5】空調装置の電気的構成を示すブロック図。
【図6】排出用ダンパ及び内外気切換ダンパの制御手順を示すフローチャート。
【図7】内外気切換ダンパの他の例を示す略図。
【図8】内外気切換ダンパの他の例を示す略図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を電気自動車の空調装置に具体化した一実施形態について、図1〜図6を参照して説明する。
電気自動車には、図1に示される水循環回路1が設けられている。この水循環回路1では、電気自動車において熱源となるモータやインバータなどの電気機器2を冷却する冷却水が循環する。
【0014】
水循環回路1においては、ポンプ3から吐出された冷却水が上記電気機器2を通過した後、サーモスタット4に流れる。上記冷却水が電気機器2を通過する際には、その冷却水と電気機器2との間で熱交換が行われる。このため、電気機器2の温度が冷却水の温度よりも高いときには、同電気機器2の熱が冷却水によって奪われる。その結果、電気機器2の冷却が行われる一方、電気機器2の熱を受けた冷却水が温度上昇する。水循環回路1におけるサーモスタット4の下流は、経路1aと経路1bとに分岐している。これら経路1aと経路1bとは、上記ポンプ3の上流で合流しており、合流して一つになった状態でポンプ3に接続されている。従って、水循環回路1において、ポンプ3から吐出された冷却水は、電気機器2及びサーモスタット4を通過した後、ポンプ3に戻るようになる。
【0015】
なお、上記経路1aには、水循環回路1内の冷却水の熱を外気に放出するためのラジエータ5が設けられている。このラジエータ5を通過した冷却水は、同ラジエータ5での外気との熱交換を通じて温度低下する。また、上記経路1bには、水循環回路1内の冷却水と電気自動車の車室7に送られる空気との間で熱交換を行うヒータコア6が設けられている。このヒータコア6での上記熱交換を通じて温度上昇した空気を車室7に送ることで、電気自動車における車室7の暖房(加熱)が行われる。従って、水循環回路1のヒータコア6は、電気自動車の空調装置において、車室7の暖房を行うための機器として機能する。
【0016】
水循環回路1における上記サーモスタット4は、同回路1内における経路1bを通過する冷却水の循環を常に許容する一方、その冷却水の温度に基づいて経路1a(ラジエータ5)の冷却水の通過を禁止したり許容したりする。詳しくは、サーモスタット4は、経路1bに流れる上記冷却水の温度が予め定められた判定値未満であるときには経路1aの冷却水の通過を禁止する一方、その冷却水の温度が上記判定値以上であるときには経路1aの冷却水の通過禁止を解除して同冷却水の通過を許容する。従って、水循環回路1内の冷却水の温度が上記判定値以上になると、同冷却水が経路1aのラジエータ5を通過するようになり、その際にラジエータ5にて冷却水の熱が外気に放出される。これにより、水循環回路1内を循環する冷却水の温度が過度に上昇することは抑制される。
【0017】
ところで、電気自動車では、車室7の暖房に利用される熱源として電気機器2が存在するものの同熱源で生じる熱が少ないことから、電気機器2の廃熱を利用したヒータコア6による車室7の暖房を行ったとしても、そのときの暖房要求に対応できない可能性が高い。このため、電気自動車の空調装置は、車室7の暖房を行うための装置として、図2に示される蒸気圧縮式のヒートポンプ8も設けられている。
【0018】
ヒートポンプ8は、熱媒体を圧縮して吐出するコンプレッサ9と、同コンプレッサ9により圧縮されて昇温した熱媒体からの放熱を行う高圧側熱交換器10と、同高圧側熱交換器10での放熱後の熱媒体を膨張させる膨張弁11と、同膨張弁11にて膨張して温度低下した熱媒体への吸熱を行う低圧側熱交換器12とを備えている。同ヒートポンプ8では、熱媒体がコンプレッサ9、高圧側熱交換器10、膨張弁11、及び低圧側熱交換器12といった機器を順に通過し、それによって熱媒体の循環が行われる。そして、空調装置は、ヒートポンプ8の上記高圧側熱交換器10を通過する高温の熱媒体の熱を利用して車室7の暖房を行う。
【0019】
具体的には、車室7に送られる空気を上記高圧側熱交換器10で加熱することで車室7の暖房を行ったり、車室7内の座席等を上記高圧側熱交換器10で加熱することで車室7の暖房を行ったりすることが考えられる。なお、車室7に送られる空気を上記高圧側熱交換器10で加熱することで車室7の暖房を行う場合、ヒータコア6(図1)を通過する空気の流れの上流もしくは下流に上記高圧側熱交換器10を配置することが、その高圧側熱交換器10の搭載スペースを節約するうえで好ましい。
【0020】
次に、車室7に空調のための空気を送る構造について、図3及び図4を参照して詳しく説明する。
空調装置には、図3に示すように、上記ラジエータ5に外気を導入する第1ダクト13と、ラジエータ5を通過した外気を下流に流す第2ダクト14とが設けられている。上記ラジエータ5からはそこを通過する冷却水の熱が放出されるため、上記第1ダクト13からラジエータ5に導入された外気は、そのラジエータ5からの廃熱により昇温した状態で第2ダクト14に流れる。
【0021】
このようにラジエータ5からの廃熱により昇温した外気が流れ込む第2ダクト14は、通路14aと通路14bとの二つに分岐している。また、第2ダクト14には、通路14aと通路14bとのうちの一方を同ダクト14内を流れる外気の通路とすべく、図中の実線で示される導入位置と二点鎖線で示される排出位置との間で切り換え動作する排出用ダンパ15が設けられている。この排出用ダンパ15が導入位置(実線)に切り換えられると、第2ダクト14内を流れる外気の通路として通路14aが選択される。一方、排出用ダンパ15が導入位置(実線)に切り換えられると、第2ダクト14内を流れる外気の通路として通路14bが選択される。このように第2ダクト14内を流れる外気の通路として通路14bが選択されると、ヒータコア6を通過した外気が通路14bを介して車外に排出される。
【0022】
更に、第2ダクト14における通路14aの下流には、その通路14aを通過した後の外気を水循環回路1(図1)のヒータコア6の上流に導入したり、ヒートポンプ8(図1)の低圧側熱交換器12に流したりするための第3ダクト16が設けられている。第3ダクト16は、第2ダクト14の通路14aを通過した後の外気を上記ヒータコア6の上流に導入するための通路16aを備えている。この通路16aによってヒータコア6の上流に導入された外気は、同ヒータコア6を通過した後に車室7に送られる。また、第3ダクト16は、第2ダクト14の通路14aを通過した後の外気を上記低圧側熱交換器12に流すための通路16bも備えている。この通路16bによって低圧側熱交換器12に流れた外気は、同低圧側熱交換器12を通過した後に車外に放出される。第3ダクト16の通路16a及び通路16bはそれぞれ、第2ダクト14の通路14aと連通可能であり、且つ車室7とも連通可能となっている。
【0023】
空調装置において、第2ダクト14の通路14aと第3ダクト16との間には、第3ダクト16における通路16aと通路16bとのうちの一方を第2ダクト14の通路14aを通過した後の外気を流すための通路とすべく動作する内外気切換ダンパ17が設けられている。この内外気切換ダンパ17は、図中の実線で示される第1切換位置と二点鎖線で示される第2切換位置との間で切り換え動作する。そして、この内外気切換ダンパ17が第1切換位置(実線)に切り換えられると、通路16bが第2ダクト14の通路14aを通過した後の外気を流すための通路として選択される。このときには、通路16aが車室7と連通し、それによって車室7から出た空気が通路16aを流れる。通路16aに流れた上記空気は、ヒータコア6を通過した後、車室7に戻るようになる。一方、内外気切換ダンパ17が第2切換位置(二点鎖線)に切り換えられると、図4に示すように通路16aが第2ダクト14の通路14aを通過した後の外気を流すための通路として選択される。このときには、通路16bが車室7と連通し、それによって車室7から出た空気が通路16bを流れる。通路16bに流れた上記空気は、低圧側熱交換器12を通過した後に車外に放出されるようになる。
【0024】
なお、車室7の暖房時には、排出用ダンパ15が導入位置(図3の実線)に切り換えられるとともに、内外気切換ダンパ17が第1切換位置(実線)と第2切換位置(二点鎖線)とのうちのいずれかに切り換えられる。そして、車室7の暖房時、内外気切換ダンパ17が第1切換位置に切り換えられると、図3に示すようにヒータコア6の上流に導入する空気を車室7内の空気とする内気循環モードになる。この内気循環モードでは、車室7から出た空気がヒータコア6の上流に導入されるとともに、ラジエータ5からの廃熱により昇温した外気が低圧側熱交換器12に流される。また、車室7の暖房時、内外気切換ダンパ17が第2切換位置に切り換えられると、図4に示すようにヒータコア6の上流に導入する空気を外気とする外気導入モードになる。この外気導入モードでは、ラジエータ5からの廃熱により昇温した外気がヒータコア6の上流に導入されるとともに、車室7から出た空気が低圧側熱交換器12に流される。
【0025】
次に、空調装置の電気的構成について図5を参照して説明する。
空調装置には、同装置の各種機器を駆動制御するための電子制御装置21が設けられている。この電子制御装置21は、上記各種機器の駆動制御に係る演算処理を実行するCPU、その制御に必要なプログラムやデータの記憶されたROM、CPUの演算結果等が一時記憶されるRAM、外部との間で信号を入・出力するための入・出力ポート等を備えている。
【0026】
電子制御装置21の入力ポートには、以下に示すセンサ及びスイッチ等からの信号が入力される。
・車室7の空気の温度を検出する車室内温センサ22。
【0027】
・車室7での日射量を検出する日射量センサ23。
・内規循環モードと外気循環モードとを切り換えるべく電気自動車の乗員により操作される内外気切換スイッチ24。
【0028】
・車室7の温度を調整するために電気自動車の乗員により操作される室温設定スイッチ25。
電子制御装置21の出力ポートには、排出用ダンパ15の駆動回路、及び内外気切換ダンパ17の駆動回路等が接続されている。
【0029】
ここで、電子制御装置21による排出用ダンパ15及び内外気切換ダンパ17の駆動制御について、ダンパ制御ルーチンを示す図6のフローチャートを参照して説明する。このダンパ制御ルーチンは、電子制御装置21を通じて、例えば所定時間毎の時間割り込みにて周期的に実行される。
【0030】
同ルーチンにおいては、まず、室温設定スイッチ25からの信号に基づいて冬季であるか否かが判断される(S101)。ここで否定判定であって夏季である旨判断されると、排出用ダンパ15が排出位置に切り換えられることにより、ラジエータ5からの廃熱を回収して昇温した外気が車外に放出される(S106)。一方、S101で肯定判定がなされると、車室7の暖房要求があるか否かが判断される(S102)。なお、車室7の暖房要求の有無は、車室内温センサ22の検出信号から求められる車室内の空気の温度と、その空気の温度の目標値である目標車室内温度とに基づいて把握することが可能である。上記目標車室内温度は、乗員が室温設定スイッチ25により定めた車室7内の設定温度、車室7内の実際の温度、及び、車室7内への日射量などに基づいて求められる値である。
【0031】
S102の処理で暖房要求がある旨判断されると、乗員により操作される内外気切換スイッチ24からの信号に基づいて内気循環モードであるか否かが判断される(S103)。ここで肯定判定であれば、排出用ダンパ15が導入位置に切り換えられるとともに、内外気切換ダンパ17が第1切換位置に切り換えられることにより、ラジエータ5からの廃熱を回収して昇温した外気が低圧側熱交換器12に流される(S104)。一方、S103で否定判定がなされて外気導入モードである旨判断されると、排出用ダンパ15が導入位置に切り換えられるとともに、内外気切換ダンパ17が第2切換位置に切り換えられることにより、ラジエータ5からの廃熱を回収して昇温した外気がヒータコア6の上流に導入される(S105)。
【0032】
次に、空調装置において、上述したように排出用ダンパ15及び内外気切換ダンパ17を駆動制御することによる作用について説明する。
電気自動車における車室7の暖房を行う際には、その暖房に図2に示すヒートポンプ8の高圧側熱交換器10を通過する熱媒体の熱が利用される。すなわち、車室7に送られる空気が上記高圧側熱交換器10を通過する熱媒体の熱によって加熱される。そして、その加熱された空気を車室7に送ることによって車室7の暖房が行われる。また、電気自動車においては、 図1に示す電気機器2で生じた熱が水循環回路1を循環する冷却水に伝達され、それによって同冷却水が温度上昇する。このように温度上昇した冷却水が水循環回路1のヒータコア6を通過することで、同ヒータコア6が冷却水からの熱を受けて温度上昇し、それによって車室7に送られる空気をヒータコア6で加熱することが可能になる。そして、ヒータコア6で加熱された空気を車室7に送ることでも同車室7の暖房が行われる。この場合、電気自動車の熱源(電気機器2)で生じた熱が水循環回路1を循環する冷却水により回収されて車室7の暖房に利用されることになる。
【0033】
上記ヒータコア6の上流に導入される空気(車室に送られる空気)は、外気導入モードでは図3に示す排出用ダンパ15及び内外気切換ダンパ17の駆動制御を通じて外気とされる一方、内気循環モードでは排出用ダンパ15及び内外気切換ダンパ17の駆動制御を通じて車室7内の空気とされる。そして、内気循環モードでの車室の暖房時においては、電気機器2(図1)で生じた熱を外気に放出するラジエータ5からの廃熱によって昇温した外気が、低圧側熱交換器12に流されてヒートポンプ8の熱媒体と熱交換される。ここで、ヒートポンプ8(図2)においては、上記昇温した外気と熱媒体との低圧側熱交換器12での熱交換を通じて、その外気から熱媒体への吸熱が行われて同熱媒体の温度が上昇する。このように低圧側熱交換器12を通過する熱媒体の温度が上昇すると、その熱媒体がコンプレッサ9により圧縮されて昇温した状態となって高圧側熱交換器10を通過する際の同熱媒体の温度も上昇するため、上記高圧側熱交換器10を通過する熱媒体の熱を利用した車室7の暖房が効果的に行われる。
【0034】
また、内気循環モードでの車室7の暖房時には、ヒータコア6の上流に導入される空気が、図3に示す排出用ダンパ15及び内外気切換ダンパ17の駆動制御を通じて外気に比べて温度の高い車室7内の空気とされる。このため、比較的温度の高い上記空気をヒータコア6で加熱して車室7に送ることができ、それによって車室7の暖房効率を向上させることができる。
【0035】
一方、外気導入モードでの車室7の暖房時にヒータコア6で車室7に送られる空気を加熱する際、そのヒータコア6の上流に流される空気は、図4に示す排出用ダンパ15及び内外気切換ダンパ17の駆動制御を通じて電気自動車の電気機器2(図1)で生じた熱を外気に放出するラジエータ5からの廃熱によって昇温した外気とされる。このように外気導入モードでの暖房時には、ラジエータ5からの廃熱で昇温した外気をヒータコア6で加熱して車室7に送ることができるため、車室7に送られる空気が温度上昇しやすくなって車室7を効果的に暖房することができる。また、そうした効果的な暖房をヒータコア6での空気の加熱のみで行う場合と比較して、同暖房にラジエータ5からの廃熱を利用している分だけ、その暖房を実現するための暖房負荷を軽減することができる。
【0036】
更に、外気導入モードでの暖房時、ヒートポンプ8(図2)の高圧側熱交換器10を通過する熱媒体の熱を利用して車室7の暖房を行う際には、その車室7から出される空気が図4に示す排出用ダンパ15及び内外気切換ダンパ17の駆動制御を通じてヒートポンプ8の低圧側熱交換器12に流される。これにより、ヒートポンプ8の低圧側熱交換器12にて熱媒体と車室7から出された空気とが熱交換される。ここで、車室7から出された空気は、外気と比較して温度が高くなる。この空気をヒートポンプ8の低圧側熱交換器12に流すことで、同空気の熱を回収して車室7の暖房に用いることができる。
【0037】
以上詳述した本実施形態によれば、以下に示す効果が得られるようになる。
(1)内気循環モードでの車室7の暖房時、電気機器2を冷却する冷却水の熱を放出するラジエータ5からの廃熱によって昇温した外気をヒートポンプ8の低圧側熱交換器12に流すことにより、上記電気機器2で生じた熱を効率よく車室7の暖房に利用することができる。
【0038】
(2)また、内気循環モードでの車室7の暖房時には、ヒータコア6の上流に導入される空気が外気に比べて温度の高い車室7内の空気とされる。このため、その空気をヒータコア6で加熱した後に車室7に送ることにより、同車室7の暖房効率を向上させることができる。
【0039】
(3)外気導入モードでの車室7の暖房時、ヒータコア6で車室7に送られる空気を加熱する際、そのヒータコア6の上流に流される空気は、電気機器2で生じた熱を外気に放出するラジエータ5からの廃熱によって昇温した外気とされる。このため、車室7に送られる空気が温度上昇しやすくなって車室7を効果的に暖房することができる。
【0040】
(4)更に、外気導入モードでの暖房時、ヒートポンプ8の高圧側熱交換器10を通過する熱媒体の熱を利用して車室7の暖房を行う際には、その車室7から出される空気がヒートポンプ8の低圧側熱交換器12に流される。このように車室7から出された空気は外気と比較して温度が高くなるため、同空気をヒートポンプ8の低圧側熱交換器12に流すことで、同空気の熱を効果的に回収して車室7の暖房に用いることができる。
【0041】
[その他の実施形態]
なお、上記各実施形態は、例えば以下のように変更することもできる。
・内外気切換ダンパ17は、図7及び図8に示す構造のものを採用してもよい。この内外気切換ダンパ17も、図7の実線で示す第1切換位置と二点鎖線で示す第2切換位置との間で切り換え動作する。そして、内外気切換ダンパ17が第1切換位置(実線)に切り換えられると、車室7内の空気をヒータコア6の上流に導入する内気循環モードとなる。また、内外気切換ダンパ17が図8に示すように第2切換位置に切り換えられると、外気をヒータコア6の上流に導入する外気導入モードとなる。このときには、車室7から出た空気がヒートポンプ8の低圧側熱交換器12に流される。
【0042】
・ヒータコア6は、水循環回路1を循環する冷却水により電気自動車の熱源(電気機器2)からの熱を受けて車室7に送られる空気を加熱するものとしたが、本発明はこれに限定されない。例えば、ヒータコア6を水循環回路1と別に設け、ヒートポンプ8の高圧側熱交換器10からの熱を受けて車室7に送られる空気を加熱するものとしてもよい。
【0043】
・内燃機関とモータとの二種類の原動機を備えたハイブリッド自動車など、電気自動車以外の熱源の少ない車両に本発明を適用してもよい。なお、上記ハイブリッド自動車に本発明を適用した場合、内燃機関も同車両の熱源となるため、内燃機関からの熱を水循環回路を循環する冷却水によって回収して暖房に利用することが好ましい。
【符号の説明】
【0044】
1…水循環回路、1a,1b…経路、2…電気機器、3…ポンプ、4…サーモスタット、5…ラジエータ、6…ヒータコア、7…車室、8…ヒートポンプ、9…コンプレッサ、10…高圧側熱交換器、11…膨張弁、12…低圧側熱交換器、13…第1ダクト、14…第2ダクト、14a,14b…通路、15…排出用ダンパ、16…第3ダクト、16a,16b…通路、17…内外気切換ダンパ、21…電子制御装置、22…車室内温センサ、23…日射量センサ、24…内外気切換スイッチ、25…室温設定スイッチ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の熱源で生じた熱を外気に放出するラジエータ、及び、車室に送られる空気を加熱するヒータコアが設けられた車両に適用され、ヒートポンプの高圧側熱交換器を通過する熱媒体の熱を利用して前記車室の暖房を行う車両の空調装置において、
前記ヒータコアの上流に導入する空気を外気とする外気導入モード、及び前記空気を車室内の空気とする内気循環モードのうち、いずれかのモードで前記ヒータコアの上流への空気の導入を行い、
前記内気循環モードでの前記車室の暖房時、前記ラジエータからの熱の放出によって昇温した外気を前記ヒートポンプの低圧側熱交換器に流して同ヒートポンプの熱媒体と熱交換させる
ことを特徴とする車両の空調装置。
【請求項2】
前記ラジエータ及び前記ヒータコアは、車両の熱源を冷却するための冷却水が循環する水循環回路に設けられており、
内気循環モードでの前記車室の暖房時には、その車室の空気が前記ヒータコアの上流に導入されて同ヒータコアを通過する冷却水との間で熱交換される
請求項1記載の車両の空調装置。
【請求項3】
外気導入モードでの前記車室の暖房時、前記ラジエータからの熱の放出によって昇温した外気を前記ヒータコアの上流に導入する
請求項1記載の車両の空調装置。
【請求項4】
外気導入モードでの前記車室の暖房時には、その車室から出される空気を前記ヒートポンプの低圧側熱交換器に流して同ヒートポンプの熱媒体と熱交換させる
請求項1記載の車両の空調装置。
【請求項5】
請求項1記載の車両の空調装置において、
車室の暖房時、内気循環モードのときに第1切換位置に切り換えられる一方、外気導入モードのときには第2切換位置に切り換えられるダンパを備え、
前記ダンパは、前記第1切換位置に切り換えられたとき、前記ラジエータからの熱の放出により昇温した外気を前記ヒートポンプの低圧側熱交換器に流すとともに、前記車室の空気を前記ヒータコアの上流に導入する一方、前記第2切換位置に切り換えられたとき、前記ラジエータからの熱の放出により昇温した外気を前記ヒータコアの上流に導入するとともに、前記車室から出された空気を前記ヒートポンプの低圧側熱交換器に流す
ことを特徴とする車両の空調装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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