説明

車両の荷室構造

【課題】収納空間を広くすることができる車両の荷室構造を提供する。
【解決手段】荷室60のフロア面50から上方に離間して位置するラゲッジボード51を設け、荷室60の車両後方側Rrの側壁部分に車幅方向外側W2に凹む凹部58を形成して、少なくとも下側の凹部58部分を前記ラゲッジボード51よりも低所に配置し、ラゲッジボード51を車幅方向に沿う横軸芯P周りに折り畳み可能に構成し、下側の凹部58部分を車幅方向内側W1から覆うリッド2を前記荷室60の側壁に着脱自在に設けてある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は車両の荷室構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、特許文献1に開示されているように、荷室の内装部の側壁のうち車両後方側に位置する側壁部分に形成された凹部を開閉式のリッドで覆う構造があった。このリッドを設けることにより荷室に複数の収納空間を形成して荷物の大きさなどに応じた収納を可能にしている。
上記従来の構造ではリッドをヒンジ部を介して揺動開閉自在に前記側壁に支持させ、開放したリッドを荷室の壁面に重ね合わせて固定するように構成してあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−203314号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来の構造によれば、開放したリッドを荷室の壁面に重ね合わせて固定していたために、凹部の周りに開放状態のリッドを収納するスペースが必要となり、荷室の収納空間が狭くなっていた。
本発明の目的は、収納空間を広くすることができる車両の荷室構造を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の特徴は、
荷室のフロア面から上方に離間して位置するラゲッジボードを設け、
前記荷室の内装部の側壁のうち車両後方側の側壁部分に車幅方向外側に凹む凹部を形成して、少なくとも下側の凹部部分を前記ラゲッジボードよりも低所に配置し、
前記ラゲッジボードを車幅方向に沿う横軸芯周りに折り畳み可能に構成し、
前記下側の凹部部分を車幅方向内側から覆うリッドを前記内装部の側壁に着脱自在に設けてある点にある。(請求項1)
【0006】
この構成によれば、前記下側の凹部部分を車幅方向内側から覆うリッドを前記荷室の内装部の側壁に着脱自在に設けてあるから、側壁から取り外したリッドを収納するスペースが凹部の周りに不要であり、側壁から取り外したリッドを荷室の壁面に重ね合わせて固定しなくてもよくなって、荷室のスペースを広くすることができる。
また、ラゲッジボードを前記横軸芯周りに折り畳んだ状態と、折り畳むことなく車両前方側に沿わせた展開状態と、前記リッドを内装部の側壁から取り外した状態と、前記側壁に取り付けた状態とを任意に組み合わせて収納空間を形成することで、荷室の多彩なアレンジが可能になる。(請求項1)
【0007】
本発明において、
上側の凹部部分を前記ラゲッジボードよりも高所に配置して車幅方向内側に開口させてあると、前記リッドを内装部の側壁に取り付けたときに、凹部をサイドポケットとして用いることができ、凹部の上方側の開口から小物などを凹部内に出し入れすることができる。(請求項2)
【0008】
本発明において、
前記横軸芯を前記凹部の車両前方側の周縁部よりも車両前方側に配置してあると、ラゲッジボードの車両後方側の後半部を前記横軸芯周りに折り畳んでラゲッジボードの車両前方側の前半部に上方から重ね合わせたときに、前記凹部の全体を上方に露出させることができる。
その結果、例えばリッドを側壁から取り外して、凹部内の収納空間と、この収納空間の車幅方向内側の収納空間(折り畳み前のラゲッジボードの後半部の下方に位置していた収納空間)とを連続させて、ゴルフバッグなどの長尺物を収納する場合に、長尺物を周辺部品に衝突させることなく容易に収納することができる。(請求項3)
【0009】
本発明において、
前記側壁から取り外したリッドを収納する収納部を前記ラゲッジボードに設けてあると、リッドの紛失を防止することができる。(請求項4)
【0010】
本発明において、
前記ラゲッジボードの車両後方側の後半部の裏面に前記収納部を設け、
前記後半部を前記横軸芯周りに車両前方側に折り畳み、前記ラゲッジボードの車両前方側の前半部に上方から重ね合わせた状態で、前記収納部に前記リッドを収納するよう構成してあると、荷室の後方から荷物を出し入れ作業するユーザーが楽な姿勢で作業することができ、作業性を向上させることができる。(請求項5)
【0011】
本発明において、
前記収納部は、前記リッドを嵌合させて保持する嵌合凹部から成ると、収納状態のリッドが他物と衝突することを防止することができ、他物との衝突に起因するリッドの損傷や異音の発生を防止することができる。
また、ラゲッジボードを折り畳んだ状態で、リッドを嵌合凹部に嵌合させて保持させることでラゲッジボードの厚みが大きく取れて面剛性を高めることができる。これにより、載置面積は小さいが重量が大きい荷物等をラゲッジボードに載せる場合であっても、ラゲッジボードで安定して支持することができる。(請求項6)
【0012】
本発明において、
前記内装部側の係合部に係合可能な爪部を備えた係合体を前記リッドにスライド移動自在に設けて、前記爪部が前記内装部側の係合部に係合したロック状態と、前記爪部が前記係合部との係合を解除したロック解除状態とに切り換え自在に構成し、
前記ラゲッジボードの嵌合凹部に、前記爪部を係合させる収納用係合部を形成し、前記係合体が前記収納用係合部に向かってスライド移動して、前記爪部が収納用係合部に係合した収納ロック状態と、前記係合体が前記収納用係合部から離間する方向にスライド移動して、前記爪部が前記収納用係合部との係合を解除した収納ロック解除状態とに切り換え自在に構成してあると、次の作用を奏することができる。(請求項7)
【0013】
係合体を前記内装部側の係合部に向かってスライド移動させて、係合体の爪部を内装部側の係合部に係合させたロック状態にすることで、リッドの閉じ状態を確実に保持することができる。また、係合体を内装部側の係合部から離間する方向にスライド移動させ、係合体の爪部を内装部側の係合部から係合解除したロック解除状態にすると、前記側壁からリッドを取り外すことができる。
しかも、側壁から取り外したリッドをラゲッジボードの嵌合凹部に収納し、係合体を収納用係合部に向かってスライド移動させて、係合体の爪部を収納用係合部に係合した収納ロック状態にすることで、リッドをラゲッジボードの嵌合凹部で確実に保持することができる。その結果、走行中の振動で収納状態のリッドががたつく不具合や、リッドがラゲッジボードから外れる不具合を防止することができる。
また、リッドを側壁に取り付ける場合は、係合体を収納用係合部から離間する方向にスライド移動させて、係合体の爪部を収納用係合部から係合解除したロック解除状態にして嵌合凹部から取り外す。
上記のように、リッドをラゲッジボードの嵌合凹部に保持させる手段として、リッドの係合体を内装部の側壁の係合部に係合させるためのロック機構を利用しており、専用の機構を新たに設けてはないから、リッドの構造を簡素化することができる。
さらに、ラゲッジボードを折り畳んだ状態では、前記嵌合凹部が荷室中間部の上方を向いており、嵌合凹部に嵌合するようにリッドを載せて爪部を収納用係合部に係合させればよいので、楽な姿勢で係合操作することができて、操作性を向上させることができる。(請求項7)
【0014】
本発明において、
前記リッドの車両後方側の後半部に前記係合体を車両前後方向にスライド移動自在に設け、
前記リッドの車両前方側の端部に、車両前方側に突出して前記内装部側の第2の係合部に係合する第2の爪部を形成し、
前記ラゲッジボードの嵌合凹部に、前記第2の爪部を係合させる第2の収納用係合部を形成してあると、次の作用を奏することができる。(請求項8)
【0015】
リッドの車両前方側の端部に形成した第2の爪部を、ラゲッジボードの嵌合凹部に形成した第2の収納用係合部に係合させることで、嵌合凹部でリッドをより確実に保持することができる。(請求項8)
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、
収納空間を広くすることができる車両の荷室構造を提供することができた。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】車両の荷室構造の斜視図
【図2】リッドと係合体の斜視図
【図3】クォーターインナートリムとリッドを車幅方向内側から見た図
【図4】図3のB−B断面図
【図5】ラゲッジボードとリッドの斜視図
【図6】(a)はラゲッジボードの平面図、(b)は図6(a)のC−C断面図
【図7】(a)は図3のC−C断面図、(b)は荷室の使用状態を示す図
【図8】リッドを裏面側からを見た斜視図
【図9】係合体をリッドに組み付け途中の状態を示す斜視図
【図10】(a)は図3のD−D断面図(b)は図3のA−A断面図
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明を実施するための形態を図面に基づいて説明する。
図1に、自動車の後部座席70の車両後方側Rrに設けられた荷室構造を示してある。この図1に示すように、荷室60の左右両側壁にそれぞれクォーターインナートリム1(内装部に相当)が組み付けられ、荷室60の後側壁面部にテールエンドトリム32(内装部に相当)が組み付けられている。
【0019】
また、ラゲッジボード51の左右両端部がクォーターインナートリム1の段差部52に載置されて、ラゲッジボード51が荷室60のフロア面50から上方に離間して位置している。これにより、荷室60(荷室空間)を上下に仕切って、常時収納しておきたい荷物と、必要に応じて積み下ろししたい荷物との使い分けを可能にしている。
【0020】
ラゲッジボード51のフロア面50からの高さは、荷室60の後方の開口部53の下端縁となるテールエンドトリム32の上面(開口部53の開口周縁部53S)の高さと略同一(同一に設定してあってもよい)に設定し、荷物の積み込み、積み下ろし時に開口周縁部53Sが邪魔にならないようにして作業性を向上させてある。
【0021】
また、図6(a)に示すように、ラゲッジボード51を樹脂材により平面視で車幅方向に長い中空の直方体状に形成し、車両後方側Rrの端縁51Kを車両後方側Rrに凸の緩やかな円弧状に形成してある。そして、ラゲッジボード51の車両前後方向中央部に車幅方向に沿う薄肉ヒンジ部54を設けて、ラゲッジボード51を車幅方向に沿う横軸芯P(ヒンジ軸芯)周りに折り畳み可能に構成してある。
【0022】
つまり、ラゲッジボード51を車両前後方向に沿わせた展開状態(図6(a)参照)と、ラゲッジボード51の車両後方側Rrの後半部56を前記横軸芯P周りに車両前方側Frに折り畳み、ラゲッジボード51の車両前方側Frの前半部55に上方から重ね合わせた折り畳み状態(図5,図1参照)とに切り換え自在に構成してある。ラゲッジボード51の車両後方側Rrの端部には、ラゲッジボード51を折り畳む際に掴む取っ手57を下側開放の切り欠き状に形成してある。また、折り畳んだラゲッジボード51を持ち上げる際に掴む左右一対の取っ手73を前記前半部55の後端部に下側開放の切り欠き状に形成してある(図5,図6(a)参照)。
【0023】
図1,図7(a)に示すように、前記クォーターインナートリム1の側壁のうち、車両後方側Rrの側壁部分に車幅方向外側W2に凹む凹部58を形成して、凹部58の下半部58K(下側の凹部部分に相当)をラゲッジボード51よりも低所に配置し、凹部58の上半部58J(上側の凹部部分に相当)をラゲッジボード51よりも高所に配置して車幅方向内側W1に開口させてある。前記横軸芯Pは凹部58の車両前方側Frの周縁部58Aよりも車両前方側Frに位置している。
【0024】
また、凹部58の下半部58Kを車幅方向内側W1から覆うリッド2を前記荷室60のクォーターインナートリム1に着脱自在に設け、凹部58をサイドポケットとして小物などを収納できるようにするとともに、荷室60にゴルフバッグなどの長尺物を収納する際には、リッド2をクォーターインナートリム1から取り外し、荷室60の室内幅を拡大して前記長尺物を収納できるようにしてある。
つまり、前記凹部58はゴルフバッグなどの長尺物の端部を収納できる大きさに形成されており、車幅方向内側W1から見てほぼ四角形状に形成されるとともに、横断面において車幅方向内側W1に向かって広がる台形状に形成されている(図4参照)。
【0025】
以上のように、ラゲッジボード51により荷室60を上下に分割する上下分割機構を設け、さらに、リッド2により車幅方向の荷室スペースを変更調節可能にすることで、収納したい収納物の大きさや量に合わせて荷室スペースのアレンジを可能としている。
すなわち、図7(a)に示すように、ラゲッジボード51の上方の第1収納空間Aと、フロア面50とラゲッジボード51の間の第2収納空間Bと、凹部58内の第3収納空間Cと、第1収納空間Aに第2収納空間Bを加えた第4収納空間Dと、第4収納空間Dに第3収納空間Cを加えた第5収納空間Eとを収納空間としてそれぞれ使用することができる。
【0026】
前記ラゲッジボード51を折り畳むことなく展開して車両前後方向に沿わせ、かつ、リッド2をクォーターインナートリム1の側壁に取り付けた通常状態では、図7(a),図7(b)に示すように、第1収納空間Aと第2収納空間Bと第3収納空間Cとをそれぞれ使用することができる。また、ラゲッジボード51を折り畳み、かつ、リッド2をクォーターインナートリム1の側壁に取り付けた状態では、前記第3収納空間Cと第4収納空間Dとをそれぞれ使用することができる。そして、ラゲッジボード51を折り畳み、かつ、リッド2をクォーターインナートリム1の側壁から取り外した状態(リッド2をラゲッジボード51の後述の嵌合凹部61に収納した状態)では、前記第5収納空間Eを使用することができる。ラゲッジボード51の構造については後でさらに詳しく説明する。
【0027】
図2,図3,図4に示すように、クォーターインナートリム1の上下一対の前側係合孔29(内装部側の第2の係合部に相当)に各別に係合及び係合解除自在な上下一対の前側爪部31(第2の爪部に相当)を、リッド2の車両前方側Frの端部に車両前方側Frに向かって突設し、リッド2の車両後方側Rrの端部を、荷室60の後壁を覆うテールエンドトリム32に対してロック及びロック解除自在に構成してある。
【0028】
[リッド2のロック構造]
リッド2の車両後方側Rrのテールエンドトリム32とクォーターインナートリム1の側壁とに後側係合孔3(内装部側の係合部に相当)を設け、この後側係合孔3に車両前方側Frから係合可能な後側爪部11(爪部に相当)と後側爪部11の係合操作用のレバー4とを一体に備えた係合体5をリッド2に車両前後方向にスライド移動自在に設けて、後側爪部11が後側係合孔3に係合したロック状態と、後側爪部11が後側係合孔3との係合を解除したロック解除状態とに切り換え自在に構成してある。
【0029】
詳述すると、図2,図4,図8,図10(a),図10(b)に示すように、リッド2の車両後方側Rrの後半部に裏面側に凹む凹部33を形成し、凹部33の表裏両面を係合体5の装着部6に構成してある。装着部6の周部には、リッド2の裏面の外方側に立ち上がる四角形の環状リブ8を設け、装着部6以外のリッド2の裏面部分に格子状のリブ7を形成してある。また、リッド2の裏側からレバー4が挿通され、係合体5のスライド移動を許す長孔9を装着部6の中央部に車両前後方向に長く形成してある。
【0030】
そして、レバー4を前記長孔9に挿通させた第1状態(図9参照)で、係合体5をレバー4の挿通方向に沿う軸芯O周りに回転可能に構成し、前記第1状態から係合体5を軸芯O周りに90度回転させた第2状態で、レバー4が前記長孔9から抜け出し不能になり、かつ、係合体5が後側係合孔3に向かって往復スライド移動するよう構成してある。
【0031】
前記係合体5の本体部5Hは板状に形成されている。そして、レバー4を係合体5の本体部5Hのほぼ中央部に立設し、係合体5の前記装着部6への装着状態で、レバー4を係合体5のスライド移動方向と直交する車両上下方向に長く形成してある。
また、レバー4の長さを長孔9の幅よりも長く、レバー4の幅をリッド2の長孔9の幅よりも短く設定し、レバー4の長手方向を長孔9の長手方向に沿わせてレバー4を長孔9に挿通させるようにしてある。
さらに、レバー4の付け根をくびれ部10に構成し(図10(a)参照)、前記第1状態でくびれ部10を長孔9内に位置させて、係合体5を軸芯O周りに回転させるように構成してある。レバー4の頂面4Tは凹凸面に形成して、レバー操作しやすいようにしてある。
【0032】
前記係合体5の本体部5Hは長方形状に形成され、本体部5Hの車両前方側Frの一対のコーナー部5Cが円弧状に形成されている。レバー4のくびれ部10は車両前後方向で係合体5の本体部5Hと接続しており、レバー4の長手方向でくびれ部10の両側の係合体5の本体部5Hには、くびれ部10の両側のレバー4とほぼ同一の大きさの貫通孔13が形成されている。
【0033】
そして、係合体5の本体部5Hの車両後方側Rrの端部(係合部側の端部)のうち、車両前後方向(スライド移動方向)と直交する方向(車両上下方向)の両端部から前記後側爪部11を後側係合孔3側(車両後方側Rr)にそれぞれ舌片状に合計一対突出させてある。さらに、後側爪部11の突出端部を円弧状に形成し、リッド2の裏面とは反対側の後側爪部11の面に後側爪部11の長手方向に沿う複数の補強リブ11Lを形成して後側爪部11の強度を強くしてある(図9参照)。
【0034】
また、係合体5のスライド移動に伴って、前記一対の後側爪部11をスライド移動自在に各別に係合保持する一対の保持用爪部12をリッド2に設けてある。保持用爪部12は、係合体5の本体部5Hの車両後方側Rrの端部からレバー4の長孔9への挿通方向とは反対側(リッド2の裏側)に立ち上がる互いに対向した一対の係合爪15から成る。一対の係合爪15は長孔9と直交する方向(車両上下方向)で対向しており、一対の係合爪15の間隔は、後側爪部11の幅とほぼ同一に(又は少し広く)なるように設定してある。
前記後側爪部11は、前記第1状態から係合体5を軸芯O周りに90度回転させた状態で、レバー4の挿通方向に沿って保持用爪部12側に押し込まれ、保持用爪部12の一対の係合爪15を押し広げながら一対の係合爪15間に入り込んで前記一対の係合爪15に係合する。これにより前記第2状態になる。
【0035】
図2,図9,図10(b)に示すように、係合体5の本体部5Hの両後側爪部11間を車両後方側Rrに突出する突出端部16に構成してある。そして、前記リッド2に、係合体5のスライド移動方向一方側(車両後方側Rr)から前記突出端部16を受け止めるリブ状の第1ストッパ21と、係合体5のスライド移動方向他方側(車両前方側Fr)から係合体5の車両前方側Frの端部5A(図10(b)参照)を受け止めるリブ状の第2ストッパ22とを設けてある。これにより、レバー4が長孔9の長手方向の端縁に衝突する前にレバー4のスライド移動を停止させることができ、レバー4の付け根(くびれ部10)の損傷を防止して耐久性を向上させることができる。
【0036】
前記第1ストッパ21は一対の保持用爪部12の間に位置している。また、前記第2ストッパ22は、車両前方側Frの環状リブ部分で構成してある。車両前方側Frの環状リブ部分の車両前方側Frの面とリッド2の裏面との間、及び、車両前方側Frの環状リブ部分の車両後方側Rrの面とリッド2の裏面との間には一対の三角形状のリブ23をそれぞれ設けて、車両前方側Frの環状リブ部分の強度を強くしてある(図8参照)。
【0037】
図2に示すように、前記係合体5には格子状のリブ5Lが形成されている。
図4,図10(a),図10(b)に、係合体5をリッド2に組み付けた状態を示してある。レバー4は長孔9内をスライド移動自在であり、レバー操作する者がレバー4を掴み、車両後方側Rrにレバー4を押圧操作することで、係合体5がリッド2に対してスライド移動し、後側爪部11がリッド2の端部から突出して、後側爪部11がテールエンドトリム32の後側係合孔3に係合したロック状態になる。
【0038】
逆に、車両前方側Frにレバー4を押圧操作することで、係合体5がリッド2に対してスライド移動し、後側爪部11がリッド2側に引退して、後側爪部11がテールエンドトリム32の後側係合孔3との係合を解除したロック解除状態になる。これにより、図4に示すように、リッド2を前側係合孔29を中心として車幅方向内側W1に揺動させ、リッド2の車両前方側Frの端部の前側爪部31を、クォーターインナートリム1の前側係合孔29から係合解除して、リッド2をクォーターインナートリム1から取り外すことができる。
【0039】
上記のように、前記後側係合孔3に係合可能な後側爪部11を備えた係合体5をリッド2にスライド移動自在に設けて、後側爪部11が後側係合孔3に係合したロック状態と、後側爪部11が後側係合孔3との係合を解除したロック解除状態とに切り換え自在に構成したことで、リッド2の着脱時に後側爪部11と後側係合孔3との引っ掛かりをなくし、リッド2をクォーターインナートリム1の側壁に無理なく着脱することができる。
【0040】
[ラゲッジボード51の詳細構造]
図1,図5,図6(a),図6(b)に示すように、クォーターインナートリム1から取り外した左右一対のリッド2を各別に嵌合させて保持する収納部としての四角形状の左右一対の嵌合凹部61を、ラゲッジボード51の車両後方側Rrの後半部56の裏面56Uに設け、前記後半部56を前記横軸芯P周りに車両前方側Frに折り畳み、ラゲッジボード51の車両前方側Frの前半部55に上方から重ね合わせた状態で、嵌合凹部61にリッド2を収納するよう構成してある。
【0041】
前記嵌合凹部61は、リッド2の裏面側のリブ7を載置させる載置部62と、この載置部62よりも深い段差状に形成されてリッド2の車両前方側Frの前端部を受け入れる第1凹部63と、前記載置部62及び第1凹部63よりも深い段差状に形成されてリッド2の車両後方側Rrの前記装着部6を受け入れる第2凹部64とを備えている。第1凹部63と第2凹部64と載置部62は車幅方向に並んでおり、第1凹部63が車幅方向外側W2に、第2凹部64が車幅方向内側W1(車両の左右中央側)に位置している。
【0042】
図6(b)に示すように、ラゲッジボード51の嵌合凹部61に、前記後側爪部11を係合させる収納用係合部65を形成し、係合体5が収納用係合部65に向かってスライド移動して、後側爪部11が収納用係合部65に係合した収納ロック状態と、係合体5が収納用係合部65から離間する方向にスライド移動して、後側爪部11が収納用係合部65との係合を解除した収納ロック解除状態とに切り換え自在に構成してある。
すなわち、前記第2凹部64の車幅方向内側W1の周壁64Sの下端部(ラゲッジボード51の折り畳み状態での下端部)を周壁64Sの裏側(車幅方向内側W1)に、前記後側爪部11に対応した形状(縦断面コの字状、横断面舌片状)に凹ませて前記収納用係合部65を形成してある。
また、ラゲッジボード51の嵌合凹部61に、前記前側爪部31を係合させる第2の収納用係合部66を形成してある。
すなわち、前記第1凹部63の車幅方向外側W2の周壁63Sの下端部を周壁63Sの裏側(車幅方向外側W2)に、前記前側爪部31に対応した形状(縦断面コの字状、横断面舌片状)に凹ませて前記第2の収納用係合部66を形成してある。
【0043】
上記の構造により、クォーターインナートリム1の側壁から取り外したリッド2をラゲッジボード51の嵌合凹部61に収納し、前側爪部31を第2の収納用係合部66に係合させ、レバー4を掴んで係合体5を収納用係合部65に向かってスライド移動させ、係合体5の後側爪部11を収納用係合部65に係合した収納ロック状態にすることで、リッド2をラゲッジボード51の嵌合凹部61で確実に保持することができる。その結果、走行中の振動で収納状態のリッド2ががたつく不具合や、リッド2がラゲッジボード51から外れる不具合を防止することができる。
また、リッド2をクォーターインナートリム1の側壁に取り付ける場合は、係合体5を収納用係合部65から離間する方向にスライド移動させ、係合体5の後側爪部11を収納用係合部65から係合解除したロック解除状態にして嵌合凹部61から取り外す。
上記のように、リッド2をラゲッジボード51の嵌合凹部61に保持させる手段として、リッド2の係合体5を前記後側係合孔3に係合させるためのロック機構を利用しており、専用の機構を新たに設けてはないから、リッド2の構造を簡素化することができる。
図6(b)に示すように、ラゲッジボード51の嵌合凹部61にリッド2を収納した状態で、リッド2の表側の面が上方に、裏側の面が下方に位置し、リッド2の表側の面と、折り畳み状態のラゲッジボード51の後半部56の上方を向く裏面56Uとが上下方向(ラゲッジボード51の肉厚方向)でほぼ同一位置に位置している。レバー4の頂面4Tはリッド2の表側の面の下方に位置している(図10(a)参照)。これにより、折り畳み状態のラゲッジボード51に荷物を安定して載置することができる。
【符号の説明】
【0044】
1 内装部(クォーターインナートリム)
2 リッド
3 内装部側の係合部(後側係合孔)
5 係合体
11 爪部(後側爪部)
29 内装部側の第2の係合部(前側係合孔)
31 第2の爪部(前側爪部)
50 フロア面
51 ラゲッジボード
55 ラゲッジボードの車両前方側の前半部
56 ラゲッジボードの車両後方側の後半部
56U 裏面
58 凹部
58A 凹部の車両前方側の周縁部
58K 下側の凹部部分
60 荷室
61 嵌合凹部(収納部)
65 収納用係合部
66 第2の収納用係合部
Fr 車両前方側
P 横軸芯
Rr 車両後方側
W1 車幅方向内側
W2 車幅方向外側

【特許請求の範囲】
【請求項1】
荷室のフロア面から上方に離間して位置するラゲッジボードを設け、
前記荷室の内装部の側壁のうち車両後方側の側壁部分に車幅方向外側に凹む凹部を形成して、少なくとも下側の凹部部分を前記ラゲッジボードよりも低所に配置し、
前記ラゲッジボードを車幅方向に沿う横軸芯周りに折り畳み可能に構成し、
前記下側の凹部部分を車幅方向内側から覆うリッドを前記内装部の側壁に着脱自在に設けてある車両の荷室構造。
【請求項2】
上側の凹部部分を前記ラゲッジボードよりも高所に配置して車幅方向内側に開口させてある請求項1記載の車両の荷室構造。
【請求項3】
前記横軸芯を前記凹部の車両前方側の周縁部よりも車両前方側に配置してある請求項1又は2記載の車両の荷室構造。
【請求項4】
前記側壁から取り外したリッドを収納する収納部を前記ラゲッジボードに設けてある請求項1〜3のいずれか一つに記載の車両の荷室構造。
【請求項5】
前記ラゲッジボードの車両後方側の後半部の裏面に前記収納部を設け、
前記後半部を前記横軸芯周りに車両前方側に折り畳み、前記ラゲッジボードの車両前方側の前半部に上方から重ね合わせた状態で、前記収納部に前記リッドを収納するよう構成してある請求項4記載の車両の荷室構造。
【請求項6】
前記収納部は、前記リッドを嵌合させて保持する嵌合凹部から成る請求項4又は5に記載の車両の荷室構造。
【請求項7】
前記内装部側の係合部に係合可能な爪部を備えた係合体を前記リッドにスライド移動自在に設けて、前記爪部が前記内装部側の係合部に係合したロック状態と、前記爪部が前記係合部との係合を解除したロック解除状態とに切り換え自在に構成し、
前記ラゲッジボードの嵌合凹部に、前記爪部を係合させる収納用係合部を形成し、前記係合体が前記収納用係合部に向かってスライド移動して、前記爪部が収納用係合部に係合した収納ロック状態と、前記係合体が前記収納用係合部から離間する方向にスライド移動して、前記爪部が前記収納用係合部との係合を解除した収納ロック解除状態とに切り換え自在に構成してある請求項6記載の車両の荷室構造。
【請求項8】
前記リッドの車両後方側の後半部に前記係合体を車両前後方向にスライド移動自在に設け、
前記リッドの車両前方側の端部に、車両前方側に突出して前記内装部側の第2の係合部に係合する第2の爪部を形成し、
前記ラゲッジボードの嵌合凹部に、前記第2の爪部を係合させる第2の収納用係合部を形成してある請求項7記載の車両の荷室構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−228733(P2010−228733A)
【公開日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−81567(P2009−81567)
【出願日】平成21年3月30日(2009.3.30)
【出願人】(000002082)スズキ株式会社 (3,196)
【Fターム(参考)】