説明

車両の複数の構成要素を調温するための装置および車両システム

【課題】 車両の複数の構成要素を調温するためのコンパクトな集中型の装置と、前記装置を有する車両システムとを提案する。
【解決手段】 車両の複数の構成要素(101、102)を調温するための装置(110)が、閉じられた冷媒回路を形成するために互いに接続された第1の熱交換器(121)と第2の熱交換器(122)とを有する。前記装置(110)はさらに、前記第1および前記第2の熱交換器(121、122)を車両の第1の構成要素(101)と第2の構成要素(102)とに接続するための第1の多方弁(131)、第2の多方弁(132)、第3の多方弁(133)および第4の多方弁(134)を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の複数の構成要素を調温するための装置とこの調温するための装置を有する車両システムとに関する。
【背景技術】
【0002】
車両、例えばハイブリッド車両や電気車両では、現在の高性能電池を使用する場合、電池の効率、動作信頼性および安全性を保証するために、動作中に電池の温度がある一定の範囲内にあるように配慮する必要がある。一方では、電池セルの効率は、適切な動作温度を下回った場合に非常に大きく低下し、セルは大きな電力損失を生じる。また一方では、セル内のプロセスが適切な動作範囲を超えて進行し、このようなプロセスが回復不能な損傷を引き起こす。これらの理由により、電池の調温、すなわち冷却あるいは加熱が必要とされる。さらに、当該の周囲条件に応じて、車室の空調、すなわち車両室内の暖房および冷房が必要であることが多い。また、その他の構成要素、例えば電子構成要素も調温を必要とする。相異なる構成要素を調温するためには、大抵の場合、熱伝達流体、例えば冷媒、冷却材、空気等が用いられる。ハイブリッド車両および電気車両ならびにオフハイウェイ分野においても、温度管理が重要な役割を果たす。多様な車両構成要素に関して、加熱および冷却が提供されねばならない。これらの調温すべき多くの構成要素とそれらの相互作用とによって、ならびに、周囲条件、動作条件および境界条件に応じて様々な構成要素に関して加熱と冷却とを同時に実施する必要性によって、複雑な調温要件が生じる。全ての調温要件を満たすために複数の冷却回路および加熱回路が用いられることが多く、これらの回路は互いに独立して動作できるか、あるいはまた、互いに相互的に作用し合うことができる。調温すべき様々な構成要素およびそれらの相互作用による温度管理の複雑さは、適切で有用な調温システムを設計するための裏付けのある幅広い知識を要求する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の課題は、車両の複数の構成要素を調温するためのコンパクトな集中型の装置と、前記装置を有する車両システムとを提案することである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
この課題は、それぞれ独立形式の請求項に記載の、車両の複数の構成要素を調温するための装置及び車両システムによって解決される。
【発明を実施するための形態】
【0005】
本発明の根底にある認識は、特に、調温すべき構成要素に例えば必要に応じてかつ互いに独立して1つまたは2つの熱交換器によって冷却材を供給できるように、調温するための装置を構成しておくことができるということである。この場合、前記装置は、特に冷却材の流れの有利な案内および誘導によって車両における調温要件を満たせるように構成されている。
【0006】
有利には、本発明の実施例では、例えば、車両において調温するための中央調温ユニットあるいは中央調温装置が、自立的に、冷却媒体を介して車両内の相異なる構成要素を調温する働きを担うことができる。本発明によって、例えばハイブリッド車両および電気車両ならびに非自動車用途あるいはオフハイウェイ用途における構成要素について、必要に応じて、自立した自己制御式の加熱および冷却を行うことが可能となる。従って、前記装置は、車両内の複雑に構成された様々な調温要件を実現することが可能な簡単な方法を提供する。本発明の実施例では、前記装置は、低コストで省スペースであり、エネルギー効率が良く、容易に閉ループ制御可能にあるいは開ループ制御可能に構成されている。本発明の更なる利点は、冷媒回路が極めてコンパクトであり、冷媒を僅かしか含まず、乗客スペースの外部に配置できることである。これにより、車両を通る長い冷媒ラインが必要ではなくなる。従って、特に安全性に関わる冷媒の場合、例えば事故における乗客スペース内への流出は重大事象とみなすことができるが、例えば事故の場合に有毒な冷媒が乗客スペース内へ流入する危険性を回避することができる。本発明の実施例に従った前記装置の場合、低コストの冷却媒体を備えた冷却材ラインのみが各構成要素へ延設される。従って、冷凍回路は可能な限りコンパクトに構成されており、個別構成要素の冷却あるいは加熱が、個々の構成要素に例えばホースあるいはラインを通じて案内された冷却材を介して行われる。これにより、ただ僅かな量の冷媒を使用するだけでよい。それに応じて、前記装置の設置および配置は自由に選択することが可能である。
【0007】
本発明は、車両の複数の構成要素を調温するための装置を提案し、前記装置は、以下の特徴、すなわち、
冷却材入口、冷却材出口、冷媒入口および冷媒出口を備えた第1の熱交換器、ならびに、冷却材入口、冷却材出口、冷媒入口および冷媒出口を備えた第2の熱交換器であって、前記第1の熱交換器の前記冷媒出口が前記第2の熱交換器の前記冷媒入口に接続されており、前記第2の熱交換器の前記冷媒出口が前記第1の熱交換器の前記冷媒入口に接続されていて、これにより、閉じられた冷媒回路を形成することができる第1および第2の熱交換器、
前記第1の熱交換器の前記冷却材出口に接続された入口接続部と、車両の第1の構成要素に接続可能な少なくとも1つの第1の出口接続部および車両の第2の構成要素に接続可能な少なくとも1つの第2の出口接続部とを備えた冷却材用第1の多方弁、
前記第2の熱交換器の前記冷却材出口に接続された入口接続部と、車両の前記第1の構成要素に接続可能な少なくとも1つの第1の出口接続部および車両の前記第2の構成要素に接続可能な少なくとも1つの第2の出口接続部とを備えた冷却材用第2の多方弁、
車両の前記第1の構成要素に接続可能な入口接続部と、前記第1の熱交換器の前記冷却材入口に接続された第1の出口接続部と、前記第2の熱交換器の前記冷却材入口に接続された第2の出口接続部とを備えた冷却材用第3の多方弁、および、
車両の前記第2の構成要素に接続可能な入口接続部と、前記第1の熱交換器の前記冷却材入口に接続された第1の出口接続部と、前記第2の熱交換器の前記冷却材入口に接続された第2の出口接続部とを備えた冷却材用第4の多方弁、
を有する。
【0008】
選択的に、さらに別の多方弁を使用することも可能である。
【0009】
車両は、人、荷物または商品を輸送するための車両、例えば乗用車、バス、貨物自動車、フォークリフト等であることが可能であり、特に電気駆動またはハイブリッド駆動を備えた車両であり、前記車両は、道路用またはレール用の車両であってもよい。前記多方弁は、適切な方法、例えば磁気、電気、液圧等によって操作可能であり、かつ、適切な方法で制御可能であり得る。前記多方弁、特に前記第1の多方弁と前記第2の多方弁は、少なくとも2方弁であってもよい。前記装置は流体ラインを有することができ、これらの流体ラインを介して、流体が流れることを可能にするために前記装置の諸ユニット、例えば熱交換器や多方弁が互いに接続されている。車両の調温すべき構成要素も、流体ラインを介して、前記装置の対応ユニットに流体移動可能に接続しておくことができる。車両の前記構成要素は、例えば車両の電気化学エネルギー蓄積部あるいは電池、キャビンあるいは車両室内、車両の積荷スペースまたは乗客スペース、エンジンまたはパワーエレクトロニクス装置等であり得る。前記構成要素も、冷却材用の流体接続部を有することが可能である。
【0010】
前記多方弁はそれぞれ、冷却材を前記入口接続部から前記出口接続部の1つへ、または、可変の質量流量比において両出口接続部へ流せるように構成しておくことができる。また、前記多方弁は、第1の切り替え状態あるいは弁状態において前記入口接続部から前記第1の出口接続部へ流体を流せるように構成しておくことができる。また、前記多方弁は、第2の切り替え状態あるいは弁状態において前記入口接続部から前記第2の出口接続部へ流体を流せるように構成しておくことが可能である。最後に、前記多方弁は、第3の切り替え状態あるいは弁状態の範囲において前記入口接続部から前記第1の出口接続部および前記第2の出口接続部へ流体を流せるように構成しておくことができ、この場合、前記流体の流れは、前記第1の出口接続部と前記第2の出口接続部との間において、可変比で分岐させることが可能である。このような実施形態は、前記構成要素の調温を特に柔軟に、独立してかつ必要に応じて行えるという利点を供する。また、前記多方弁の機能は、複数の遮断弁によって模擬することも可能である。
【0011】
さらに、電子制御機構を設けておくことができ、この制御機構は、制御情報を受信するための入力インタフェースと前記多方弁とに電気的に接続されており、前記多方弁を前記制御情報に基づいて制御するように構成されている。それとともに、前記制御機構は、前記制御情報に依存せずに前記多方弁を制御して、特定の切り替え状態あるいは弁状態に調整されるように構成しておくことが可能である。このような実施形態は、前記装置が、当該の構成要素の冷却あるいは加熱の働きを前記弁に組み込まれた制御部を介して自立的に担うことができるという利点を供する。これにより、調温機能は、前記制御情報に従って自立的に完全に前記装置によって実施される。
【0012】
一実施形態では、前記第1の熱交換器は凝縮器であってもよい。前記第2の熱交換器はチラー(冷媒と冷却材との間の熱交換器)であってもよい。この場合、前記凝縮器あるいは液化器は、前記装置の高圧側または高温側に配置しておくことができる。前記チラーは、前記装置の低圧側または低温側に配置しておくことができる。前記熱交換器の各々は、冷媒と冷却材との間で熱交換を行えるように構成されている。このような実施形態は、この方法で、前記構成要素を加熱および/または冷却することによりこの種の熱交換器によって前記構成要素の調温を効率的に実現できるという利点を供する。
【0013】
一実施形態では、前記第1の多方弁が、車両の第3の構成要素に接続可能な第3の出口接続部を有することができる。また、前記第2の多方弁も、車両の前記第3の構成要素に接続可能な第3の出口接続部を有することができる。この場合、前記装置は、車両の前記第3の構成要素に接続可能な入口接続部と、前記第1の熱交換器の前記冷却材入口に接続された第1の出口接続部と、前記第2の熱交換器の前記冷却材入口に接続された第2の出口接続部とを備えた冷却材用第5の多方弁を有することが可能である。同様にして、また、車両のさらに別の構成要素を前記装置に接続しておくこともできる。この場合、前記第1の多方弁はさらに別の出口接続部を有し、前記第2の多方弁もさらに別の出口接続部を有し、かつ、冷却材用のさらに別の多方弁が、車両の前記さらに別の構成要素に接続可能な入口接続部と、前記第1の熱交換器の前記冷却材入口に接続された第1の出口接続部と、前記第2の熱交換器の前記冷却材入口に接続された第2の出口接続部とを備えている。このような実施形態は、調温すべき少なくとも1つのさらに別の構成要素を、複雑さを伴わずに前記装置に接続することができるという利点を供する。これによって、前記装置により調温可能な幾つかの個数の構成要素を、1つまたは複数のさらに別の構成要素分、容易に拡張することが可能である。
【0014】
この場合、前記第3の構成要素は低温冷却器であってもよい。このような実施形態は、前記第1の構成要素および前記第2の構成要素を効率的に同時にかつ必要に応じて調温できるという利点を供する。さらに、他の要素に冷却材の全質量流量の負荷を与えないことが望ましい場合、前記低温冷却器に冷却材を流通させることも可能である。
【0015】
さらに、第1の冷却材ポンプを設けておくことができ、この冷却材ポンプは、前記第1の熱交換器の前記冷却材出口と前記第1の多方弁の前記入口接続部との間に接続されている。また、第2の冷却材ポンプを設けておくことができ、この冷却材ポンプは、前記第2の熱交換器の前記冷却材出口と前記第2の多方弁の前記入口接続部との間に接続されている。これらの冷却材ポンプは、電子制御機構に電気的に接続しておくことができ、この制御機構によって制御可能である。このような実施形態は、冷却材の流速を前記ポンプによって精密にかつ必要に応じて制御できるという利点を供する。
【0016】
さらに、圧縮機を設けておくことができ、この圧縮機は、前記第2の熱交換器の前記冷媒出口と前記第1の熱交換器の前記冷媒入口との間に接続されている。前記圧縮機は、前記電子制御機構に電気的に接続しておくことができ、この制御機構によって制御可能である。これにより、前記圧縮機は前記冷媒回路内に組み込まれている。このような実施形態は、前記装置が、前記圧縮機と前記弁とに組み込まれた制御部によって当該の構成要素を冷却あるいは加熱する働きを自立的に担うことができるという利点を供する。前記圧縮機を介して、前記冷媒回路を必要に応じて制御することが可能である。これにより、調温機能を前記装置によって完全に実施することができる。
【0017】
さらに、絞り要素を設けておくことができ、この絞り要素は、前記第1の熱交換器の前記冷媒出口と前記第2の熱交換器の前記冷媒入口との間に接続されている。これにより、前記絞り要素は前記冷媒回路内に組み込まれている。このような実施形態は、前記冷媒回路を効率的に動作させることができるという利点を供する。
【0018】
本発明は、さらに以下の特徴、すなわち、
調温すべき第1の構成要素と調温すべき第2の構成要素、および、
上述の実施形態に従った、複数の構成要素を調温するための装置であって、前記第1の多方弁の前記第1の出口接続部、前記第2の多方弁の前記第1の出口接続部および前記第3の多方弁の前記入口接続部が、前記第1の構成要素に接続されており、前記第1の多方弁の前記第2の出口接続部、前記第2の多方弁の前記第2の出口接続部および前記第4の多方弁の前記入口接続部が、前記第2の構成要素に接続されている装置、
を備えた車両システムを提案する。
【0019】
このような車両システムでは、前記諸構成要素を調温するために上記装置を有利に利用あるいは使用することが可能である。
【0020】
本発明の有利な実施例について、以下において、添付した図面を参照しながらさらに詳述する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の一実施例に係る車両システムを示す模式図である。
【実施例】
【0022】
本発明の好ましい実施例についての下記説明では、様々な図面に示された、類似の働きをする要素に対して同一または類似の符号が用いられており、これらの要素について繰り返し説明されることはない。
【0023】
図1は、本発明の一実施例に係る車両システム100を示す模式図である。前記車両システム100は、本実施例では車両のキャビンを空調するための空調機構であり得る第1の構成要素101、本実施例では車両の電池であり得る第2の構成要素102、本実施例では低温冷却器であり得る第3の構成要素103、調温するための装置110、本実施例では凝縮器あるいは液化器であり得る第1の熱交換器121、本実施例ではチラー(冷媒/冷却材間の熱交換器)であり得る第2の熱交換器122、第1の多方弁131、第2の多方弁132、第3の多方弁133、第4の多方弁134、第5の多方弁135、第1の冷却材ポンプ141、第2の冷却材ポンプ142、絞り要素150および圧縮機160を有する。
【0024】
前記装置110は、前記構成要素101、102、103を調温するように構成されている。前記装置110は、前記第1の熱交換器121、前記第2の熱交換器122、前記第1の多方弁131、前記第2の多方弁132、前記第3の多方弁133、前記第4の多方弁134、前記第5の多方弁135、前記第1の冷却材ポンプ141、前記第2の冷却材ポンプ142、前記絞り要素150および前記圧縮機160、ならびに、図1において符号が明示的には付されていない流体ラインを有し、これらの流体ラインは、前記装置110の前記諸要素を流体移動可能に接続する。
【0025】
前記第1の熱交換器121は、凝縮器あるいは液化器であり得る。前記第1の熱交換器121は、冷却材入口、冷却材出口、冷媒入口および冷媒出口を有する。前記第1の熱交換器121の前記冷媒出口は、冷媒用流体ラインを介して前記第2の熱交換器122の冷媒入口に接続されている。前記第1の熱交換器121の前記冷却材入口は、冷却材用流体ラインを介して前記第3の多方弁133、前記第4の多方弁134および前記第5の多方弁135のそれぞれの第1の出口接続部に接続しておくことができる。前記第1の熱交換器121の前記冷却材出口は、冷却材用流体ラインを介して前記第1の多方弁131の入口接続部に接続しておくことができ、その際、前記第1の流体ポンプ141がこれらの間に接続されている。
【0026】
前記第2の熱交換器122はチラーであり得る。前記第2の熱交換器122は、冷却材入口、冷却材出口、冷媒入口および冷媒出口を有する。前記第2の熱交換器122の前記冷媒出口は、冷媒用流体ラインを介して前記第1の熱交換器121の前記冷媒入口に接続されている。前記第2の熱交換器122の前記冷却材入口は、冷却材用流体ラインを介して前記第3の多方弁133、前記第4の多方弁134および前記第5の多方弁135のそれぞれの第2の出口接続部に接続しておくことができる。前記第2の熱交換器122の前記冷却材出口は、冷却材用流体ラインを介して前記第2の多方弁132の入口接続部に接続しておくことができ、その際、前記第2の流体ポンプ142がこれらの間に接続されている。
【0027】
従って、前記第1の熱交換器121、前記第2の熱交換器122および前記冷媒用流体ラインによって、閉じられた冷媒回路が形成されている。前記絞り要素150は、前記第1の熱交換器121の前記冷媒出口と前記第2の熱交換器122の前記冷媒入口との間に接続されて前記冷媒回路に組み込まれている。前記圧縮機160は、前記第2の熱交換器122の前記冷媒出口と前記第1の熱交換器121の前記冷媒入口との間に接続されて前記冷媒回路に組み込まれている。
【0028】
前記冷却材用第1の多方弁131は、冷却材用流体ラインを介して前記第1の熱交換器121の前記冷却材出口に接続された入口接続部、冷却材用流体ラインを介して車両の前記第1の構成要素101に接続された第1の出口接続部、冷却材用流体ラインを介して車両の第2の構成要素102に接続された第2の出口接続部、および、冷却材用ラインを介して車両の前記第3の構成要素103に接続された第3の出口接続部を有する。
【0029】
前記冷却材用第2の多方弁132は、冷却材用流体ラインを介して前記第2の熱交換器122の前記冷却材出口に接続された入口接続部、冷却材用流体ラインを介して車両の前記第1の構成要素101に接続された第1の出口接続部、冷却材用流体ラインを介して車両の前記第2の構成要素102に接続された第2の出口接続部、および、冷却材用ラインを介して車両の前記第3の構成要素103に接続された第3の出口接続部を有する。
【0030】
前記冷却材用第3の多方弁133は、冷却材用流体ラインを介して車両の前記第1の構成要素101に接続された入口接続部、冷却材用流体ラインを介して前記第1の熱交換器121の前記冷却材入口に接続された第1の出口接続部、および、冷却材用流体ラインを介して前記第2の熱交換器122の前記冷却材入口に接続された第2の出口接続部を有する。
【0031】
前記冷却材用第4の多方弁134は、冷却材用流体ラインを介して車両の前記第2の構成要素102に接続された入口接続部、冷却材用流体ラインを介して前記第1の熱交換器121の前記冷却材入口に接続された第1の出口接続部、および、冷却材用流体ラインを介して前記第2の熱交換器122の前記冷却材入口に接続された第2の出口接続部を有する。
【0032】
前記冷却材用第5の多方弁135は、冷却材用流体ラインを介して車両の前記第3の構成要素103に接続された入口接続部、冷却材用流体ラインを介して前記第1の熱交換器121の前記冷却材入口に接続された第1の出口接続部、および、冷却材用流体ラインを介して前記第2の熱交換器122の前記冷却材入口に接続された第2の出口接続部を有する。
【0033】
前記多方弁131、132、133、134および135は、それぞれ、冷却材を前記それぞれの入口接続部から前記出口接続部の1つへ、または、可変の質量流量比において複数の出口接続部へ流せるように構成されている。
【0034】
前記第1の冷却材ポンプ141は、前記第1の熱交換器121の前記冷却材出口と前記第1の多方弁131の前記入口接続部との間に接続されている。前記第2の冷却材ポンプ142は、前記第2の熱交換器122の前記冷却材出口と前記第2の多方弁132の前記入口接続部との間に接続されている。
【0035】
前記第1の構成要素101は、車両のキャビンあるいは室内を空調するための空調機構であり得る。前記第1の構成要素101は、前記第1の多方弁131の前記第1の出口接続部、前記第2の多方弁132の前記第1の出口接続部および前記第3の多方弁133の前記入口接続部に接続しておくことができる。
【0036】
前記第2の構成要素102は、車両の電池あるいはエネルギー蓄積部であり得る。例えば、これは、電気車両または電気ハイブリッド車両を駆動するための電池であってもよい。前記第2の構成要素102は、前記第1の多方弁131の前記第2の出口接続部、前記第2の多方弁132の前記第2の出口接続部および前記第4の多方弁134の前記入口接続部に接続しておくことができる。
【0037】
前記第3の構成要素103は低温冷却器であり得る。前記第3の構成要素103は、前記第1の多方弁131の前記第3の出口接続部、前記第2の多方弁132の前記第3の出口接続部および前記第5の多方弁134の前記入口接続部に接続しておくことができる。
【0038】
図1には示されていないが、前記装置110は電子制御機構を有することができ、この電子制御機構は、制御情報を受信するための入力インタフェース、前記多方弁131、132、133、134および135、前記圧縮機160、ならびに、必要であれば前記ポンプ141および142に電気的に接続されており、前記多方弁131、132、133、134および135、前記圧縮機160、ならびに、必要であれば前記ポンプ141および142を前記制御情報に基いて制御するように構成されている。
【0039】
別の表現をすると、前記装置110は冷凍回路を含み、この冷凍回路は、高圧側あるいは高温側に熱交換器121を有し、かつ、低圧側あるいは低温側に冷媒と冷却材との間の熱交換器122を有する。両熱交換器121、122は、それぞれ冷却材用の流入部と流出部とを有する。さらに、前記装置110は、冷却材の流れを分岐および結合させるための多方弁を含む。高温側でも低温側でも、前記冷却材の流れをそれぞれ少なくとも3つの異なる流路へ分岐させることができ、この場合、2経路間における中間的状態あるいは複数の経路の同時的な流通も考えられる。帰還路には、調温すべき各構成要素について、それぞれ2つの流路あるいは2つの流路への分岐部を備えた多方弁が配置されている。
【0040】
前記弁のインテリジェントな切り替えによって、前記様々な構成要素に関する冷却と加熱との全組み合わせあるいは調温モードの全組み合わせを実現することが可能であり、これについては、以下においてさらに詳述する。図1に示された実施例では、例として2つの調温すべき構成要素101、102が示されており、これらの構成要素は、電池102あるいはキャビン101である。前記低温冷却器103は、前記電池102と前記キャビン101とが同じモード(冷却あるいは加熱)で調温されねばならない場合に有用である。さらに、他の構成要素101、102に全質量流量の負荷を与えないようにするために、冷却材を前記低温冷却器103に流通させることも可能である。前記装置110は、当該の構成要素101、102の加熱および冷却に関する制御情報が伝えられるインタフェースを有する。前記装置110に付随する電子ユニットあるいは電子制御機構が、この制御情報を処理し、それに応じて、前記圧縮機160、前記多方弁131、132、133、134および135、ならびに、必要であれば前記ポンプ141および142を制御する。代替的な一実施例の場合、冷却/加熱に関する前記制御情報は、調温の複数の段階、例えば最大レベル、中レベル、低レベルの冷却あるいは加熱等を表す。前記第1の冷却材ポンプ141は、高温側において流体の流れ方向に前記第1の熱交換器121の直後に配置されており、一方、前記第2の冷却材ポンプ142は、低温側において流体の流れ方向に前記第2の熱交換器122の直後に配置されている。前記両冷却材ポンプ141、142は、高温の冷却材および低温の冷却材を循環させるために用いられる。
【0041】
第1の調温モードでは、前記電池102の冷却および前記キャビン101の冷却を行うことができ、この場合、前記電池102には前記チラー122によって冷却材が供給され、前記キャビン101にも前記チラー122によって冷却材が供給され、前記低温冷却器103には前記凝縮器121によって冷却材が供給される。第2の調温モードでは、前記電池102の冷却および前記キャビン101の加熱を行うことができ、この場合、前記電池102には前記チラー122によって冷却材が供給され、前記キャビン101には前記凝縮器121によって冷却材が供給され、前記低温冷却器103には任意選択的に前記凝縮器121によって冷却材が供給される。第3の調温モードでは、前記電池102の冷却を、前記キャビン101の調温を伴うことなく行うことができ、この場合、前記電池102には前記冷凍機械122によって冷却材が供給され、前記キャビン101には冷却材が供給されず、前記低温冷却器103には前記凝縮器121によって冷却材が供給される。第4の調温モードでは、前記電池102の加熱および前記キャビン101の冷却を行うことができ、この場合、前記電池102には前記凝縮器121によって冷却材が供給され、前記キャビン101には前記チラー122によって冷却材が供給され、前記低温冷却器103には任意選択的に前記冷凍機械122によって冷却材が供給される。第5の調温モードでは、前記電池102の加熱および前記キャビン101の加熱を行うことができ、この場合、前記電池102には前記凝縮器121によって冷却材が供給され、前記キャビン101にも前記凝縮器121によって冷却材が供給され、前記低温冷却器103には前記チラー122によって冷却材が供給される。第6の調温モードでは、前記電池102の加熱を、前記キャビン101の調温を伴うことなく行うことができ、この場合、前記電池102には前記凝縮器121によって冷却材が供給され、前記キャビン101には冷却材が供給されず、前記低温冷却器103には前記チラー122によって冷却材が供給される。第7の調温モードでは、前記電池102の調温を伴うことなく前記キャビン101の冷却を行うことができ、この場合、前記電池102には冷却材が供給されず、前記キャビン101には前記冷凍機械122によって冷却材が供給され、前記低温冷却器103には前記凝縮器121によって冷却材が供給される。第8の調温モードでは、前記電池102の調温を伴うことなく前記キャビン101の加熱を行うことができ、この場合、前記電池102には冷却材が供給されず、前記キャビン101には前記凝縮器121によって冷却材が供給され、前記低温冷却器103には前記チラー122によって冷却材が供給される。第9の調温モードでは、前記電池102の調温も前記キャビン101の調温も行われ得ず、この場合、前記電池102にも前記キャビン101にもさらに前記低温冷却器103にも冷却材は供給されない。
【0042】
本発明の代替的な実施例によって、前記車両システム100において前記装置110のヒートポンプの運転が可能となる。
【0043】
前述の諸実施例は、単に例示のために選択されているにすぎず、互いに組み合わせることも可能である。
【符号の説明】
【0044】
100 車両システム
101 第1の構成要素(キャビン)
102 第2の構成要素(電池)
103 第3の構成要素(低温冷却器)
110 調温するための装置
121 第1の熱交換器(凝縮器)
122 第2の熱交換器(冷凍機械)
131 第1の多方弁
132 第2の多方弁
133 第3の多方弁
134 第4の多方弁
135 第5の多方弁
141 第1の冷却材ポンプ
142 第2の冷却材ポンプ
150 絞り要素
160 圧縮機

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の複数の構成要素(101、102)を調温するための装置(110)であって、以下の特徴、すなわち、
冷却材入口、冷却材出口、冷媒入口および冷媒出口を備えた第1の熱交換器(121)、ならびに、冷却材入口、冷却材出口、冷媒入口および冷媒出口を備えた第2の熱交換(122)器であって、前記第1の熱交換器(121)の前記冷媒出口が前記第2の熱交換器(122)の前記冷媒入口に接続されており、前記第2の熱交換器(122)の前記冷媒出口が前記第1の熱交換器(121)の前記冷媒入口に接続されていて、これにより、閉じられた冷媒回路を形成することができる第1および第2の熱交換器、
前記第1の熱交換器(121)の前記冷却材出口に接続された入口接続部と、車両の第1の構成要素(101)に接続可能な少なくとも1つの第1の出口接続部および車両の第2の構成要素(102)に接続可能な少なくとも1つの第2の出口接続部とを備えた冷却材用第1の多方弁(131)、
前記第2の熱交換器(122)の前記冷却材出口に接続された入口接続部と、車両の前記第1の構成要素(101)に接続可能な少なくとも1つの第1の出口接続部および車両の前記第2の構成要素(102)に接続可能な少なくとも1つの第2の出口接続部とを備えた冷却材用第2の多方弁(132)、
車両の前記第1の構成要素(101)に接続された入口接続部と、前記第1の熱交換器(121)の前記冷却材入口に接続可能な第1の出口接続部と、前記第2の熱交換器(122)の前記冷却材入口に接続された第2の出口接続部とを備えた冷却材用第3の多方弁(133)、および、
車両の前記第2の構成要素(102)に接続可能な入口接続部と、前記第1の熱交換器(121)の前記冷却材入口に接続された第1の出口接続部と、前記第2の熱交換器(122)の前記冷却材入口に接続された第2の出口接続部とを備えた冷却材用第4の多方弁(134)、
を有する装置(110)。
【請求項2】
前記多方弁(131、132、133、134)が、それぞれ、冷却材を前記入口接続部から前記出口接続部の1つへ、または、可変の質量流量比において複数の出口接続部へ流せるように構成されている、請求項1に記載の装置(110)。
【請求項3】
電子制御機構を備え、この制御機構が、制御情報を受信するための入力インタフェースと前記多方弁(131、132、133、134)とに電気的に接続されており、前記多方弁(131、132、133、134)を前記制御情報に基づいて制御するように構成されている、請求項1または2に記載の装置(110)。
【請求項4】
前記第1の熱交換器(121)が凝縮器(冷媒/冷却材間の熱交換器)であり、前記第2の熱交換器(122)がチラー(冷媒/冷却材間の熱交換器)である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の装置(110)。
【請求項5】
前記第1の多方弁(131)が、車両の第3の構成要素(103)に接続可能な第3の出口接続部を有し、かつ、前記第2の多方弁(132)が、車両の前記第3の構成要素(103)に接続可能な第3の出口接続部を有しており、前記装置(110)が、車両の前記第3の構成要素(103)に接続可能な入口接続部と、前記第1の熱交換器(121)の前記冷却材入口に接続された第1の出口接続部と、前記第2の熱交換器(122)の前記冷却材入口に接続された第2の出口接続部とを備えた冷却材用第5の多方弁(135)を有する、請求項1〜4のいずれか1項に記載の装置(110)。
【請求項6】
前記第3の構成要素(103)が低温冷却器である、請求項5に記載の装置(110)。
【請求項7】
前記第1の熱交換器(121)の前記冷却材出口と前記第1の多方弁(131)の前記入口接続部との間に接続されている第1の冷却材ポンプ(141)と、前記第2の熱交換器(122)の前記冷却材出口と前記第2の多方弁(132)の前記入口接続部との間に接続されている第2の冷却材ポンプ(142)とを備えた、請求項1〜6のいずれか1項に記載の装置(110)。
【請求項8】
圧縮機(160)を備え、この圧縮機が、前記第2の熱交換器(122)の前記冷媒出口と前記第1の熱交換器(121)の前記冷媒入口との間に接続されている、請求項1〜7のいずれか1項に記載の装置(110)。
【請求項9】
絞り要素(150)を備え、この絞り要素が、前記第1の熱交換器(121)の前記冷媒出口と前記第2の熱交換器(122)の前記冷媒入口との間に接続されている、請求項1〜8のいずれか1項に記載の装置(110)。
【請求項10】
車両システム(100)であって、以下の特徴、すなわち、
調温すべき第1の構成要素(101)と調温すべき第2の構成要素(102)、および、
請求項1〜9のいずれか1項に記載の装置(110)であって、前記第1の多方弁(131)の前記第1の出口接続部、前記第2の多方弁(132)の前記第1の出口接続部および前記第3の多方弁(133)の前記入口接続部が、前記第1の構成要素(101)に接続されており、前記第1の多方弁(131)の前記第2の出口接続部、前記第2の多方弁(132)の前記第2の出口接続部および前記第4の多方弁(134)の前記入口接続部が、前記第2の構成要素(102)に接続されている装置、
を備えた車両システム。

【図1】
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【公開番号】特開2013−60190(P2013−60190A)
【公開日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−199289(P2012−199289)
【出願日】平成24年9月11日(2012.9.11)
【出願人】(594042033)ベール ゲーエムベーハー ウント コー カーゲー (222)
【Fターム(参考)】