説明

車両の車体前部構造

【課題】カウルルーバーの長手方向の端部の上面側に係止、離脱可能に係止されるサイドモールを設けた場合において、カウルルーバーの端部の上面側からサイドモールを離脱させるための離脱作業が容易にできるようにし、かつ、このようにした場合でも、車体の外観上の見栄えが良好に維持されるようにする。
【解決手段】カウルルーバー10の長手方向の端部における上面板23の上面側に複数の係止具40,41により係止、離脱可能に係止されるサイドモール42を設ける。サイドモール42の前端縁部を、車体2の前後方向でカウルルーバー10の上面板23の前端縁部近傍に位置させ、サイドモール42の前端縁部の下面に工具56の先細先端部56aの差し込み用切り欠き57を形成する。各係止具40,41と切り欠き57とを車体2の前後方向に列設する。サイドモール42の前端縁部を、車体2の前後方向でフード17の後端縁部近傍に位置させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車体の幅方向に延びるカウルルーバーを設け、このカウルルーバーの長手方向の端部周りにおける車体の外観上の見栄えを向上させるため、上記カウルルーバーの端部に係止、離脱可能に係止されるサイドモールを設けた車両の車体前部構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
車両の車体前部には、一般に、車体の左右側部にわたるよう車体の幅方向に延びるカウルルーバーと、このカウルルーバーの前方かつ車体の左右側部の間に形成され上方に向かって開口する車体開口と、この車体開口をその上方から開閉可能に閉じるフードと、上記カウルルーバーの長手方向の端部における上面板の上面側に複数の係止具により係止、離脱可能に係止されるサイドモールとが設けられている。
【0003】
また、上記構成において、従来、下記特許文献1に示すように、カウルルーバーの長手方向の端部側にそれぞれ複数個の係止具により係止、離脱可能に係止されるサイドモールを設けたものがある。このサイドモールは、上記カウルルーバーの端部周りにおける車体の外観上の見栄えを向上させるためのものである。例えば、車体前部構造として、一般に、上記フードを車体に枢支させるフードヒンジが上記カウルルーバーの端部近傍に設けられる。そして、この場合、上記フードヒンジをその外方から覆うよう上記サイドモールが設けられて、上記したように車体の見栄えの向上が図られるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−127661号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記サイドモールを何らかの理由で新しいものに交換したり、上記フードヒンジの保守、点検をしたりする場合に、上記サイドモールを上記カウルルーバーの端部から離脱させたい場合がある。しかし、上記したようにサイドモールは車体の見栄えを向上させるためのものであって、通常、その外面は全体的に平滑に形成され、手掛け可能な部分は存在していない。このため、上記カウルルーバーの端部から上記サイドモールを離脱させる離脱作業をしようとしても、このサイドモールには手掛け部分が存在しない分、上記したサイドモールの離脱作業は煩雑になりがちである。
【0006】
そこで、上記サイドモールの離脱作業が容易にできるようにするため、上記カウルルーバーの端部の上面とサイドモールの外縁部との間に工具の先細先端部を差し込んで、上記サイドモールの前端部をこじることができる隙間を形成することが考えられる。しかし、単に、このようにすると、この隙間が車体の外方から容易に見えることとなって、車体の外観上の見栄えが阻害されるおそれがある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記のような事情に注目してなされたもので、本発明の目的は、カウルルーバーの長手方向の端部の上面側に係止、離脱可能に係止されるサイドモールを設けた場合において、上記カウルルーバーの端部の上面側からサイドモールを離脱させるための離脱作業が容易にできるようにし、かつ、このようにした場合でも、車体の外観上の見栄えが良好に維持されるようにすることである。
【0008】
請求項1の発明は、車体2の左右側部にわたるよう車体2の幅方向に延びるカウルルーバー10と、このカウルルーバー10の前方かつ車体2の左右側部の間に形成され上方に向かって開口する車体開口16と、この車体開口16をその上方から開閉可能に閉じるフード17と、上記カウルルーバー10の長手方向の端部における上面板23の上面側に複数の係止具40,41により係止、離脱可能に係止されるサイドモール42とを備えた車両の車体前部構造において、
上記サイドモール42の前端縁部を、車体2の前後方向で上記カウルルーバー10の上記上面板23の前端縁部近傍に位置させ、上記サイドモール42の前端縁部の下面に工具56の先細先端部56aの差し込み用切り欠き57を形成し、
上記各係止具40,41と切り欠き57とを車体2の前後方向に列設し、
上記サイドモール42の前端縁部を、車体2の前後方向で上記フード17の後端縁部近傍に位置させたことを特徴とする車両の車体前部構造である。
【0009】
なお、この項において、上記各用語に付記した符号や図面番号は、本発明の技術的範囲を後述の「実施例」の項や図面の内容に限定解釈するものではない。
【発明の効果】
【0010】
本発明による効果は、次の如くである。
【0011】
請求項1の発明は、車体の左右側部にわたるよう車体の幅方向に延びるカウルルーバーと、このカウルルーバーの前方かつ車体の左右側部の間に形成され上方に向かって開口する車体開口と、この車体開口をその上方から開閉可能に閉じるフードと、上記カウルルーバーの長手方向の端部における上面板の上面側に複数の係止具により係止、離脱可能に係止されるサイドモールとを備えた車両の車体前部構造において、
上記サイドモールの前端縁部を、車体の前後方向で上記カウルルーバーの上記上面板の前端縁部近傍に位置させ、上記サイドモールの前端縁部の下面に工具の先細先端部の差し込み用切り欠きを形成している。
【0012】
このため、上記カウルルーバーの上記上面板の上面側からサイドモールを離脱させる離脱作業をしようとする場合には、上記サイドモールの前方の作業空間を通して上記工具の先細先端部を上記切り欠きに差し込み、上記上面板の前端縁部に対する上記先細先端部の接点を支点として、上記サイドモールの前端部を上記工具に依りこじる。
【0013】
すると、上記上面板に対し上記サイドモールの前端部が上記工具に依る梃子の原理で容易に上昇するため、この上昇したサイドモールの前端部に手掛けするなどして更に上昇させれば、上記上面板の上面側への上記各係止具によるサイドモールの係止が容易に解除される。よって、上記カウルルーバーの上記上面板の上面側からサイドモールを離脱させるための離脱作業が容易にできる。
【0014】
更に、前記したように、各係止具と切り欠きとを車体の前後方向に列設している。
【0015】
このため、前記したサイドモールの離脱作業において、上記切り欠きに差し込んだ工具の先細先端部により上記サイドモールの前端部をこじた場合、上記各係止具のうち、その前側の係止具から、後側の係止具に向けて順次係止を解除させることができる。よって、上記各係止具による係止を同時に解除させることに比べて、この係止の解除が軽快かつ容易にでき、この結果、上記上面板の上面側からのサイドモールの離脱作業は軽快、かつ、より容易にできる。
【0016】
また、前記したように、サイドモールの前端縁部を、車体の前後方向で上記フードの後端縁部近傍に位置させている。
【0017】
このため、上記フードが車体開口を閉じている車両の通常状態では、上記サイドモールの前端縁部の下面に形成された上記切り欠きは、上記フードの後端縁部によって車体の外部から容易に見えることが防止される。よって、上記切り欠きを形成したことによりサイドモールの離脱作業が容易にできるものでありながら、車体の外観上の見栄えが良好に維持される。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】図4のI−I線矢視断面図ある。
【図2】車体前部の平面図である。
【図3】図2のIII−III線矢視断面図である。
【図4】図2の部分拡大詳細図である。
【図5】図4のV−V線矢視断面図である。
【図6】図4のVI−VI線矢視断面図である。
【図7】カウルルーバーとサイドモールとの斜視図である。
【図8】部分斜視拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の車両の車体前部構造に関し、カウルルーバーの長手方向の端部の上面側に係止、離脱可能に係止されるサイドモールを設けた場合において、上記カウルルーバーの端部の上面側からサイドモールを離脱させるための離脱作業が容易にできるようにし、かつ、このようにした場合でも、車体の外観上の見栄えが良好に維持されるようにする、という目的を実現するため、本発明を実施するための形態は、次の如くである。
【0020】
即ち、車両の車体前部構造は、車体の左右側部にわたるよう車体の幅方向に延びるカウルルーバーと、このカウルルーバーの前方かつ車体の左右側部の間に形成され上方に向かって開口する車体開口と、この車体開口をその上方から開閉可能に閉じるフードと、上記カウルルーバーの長手方向の端部における上面板の上面側に複数の係止具により係止、離脱可能に係止されるサイドモールとを備える。
【0021】
上記サイドモールの前端縁部が、車体の前後方向で上記カウルルーバーの上記上面板の前端縁部近傍に位置させられ、上記サイドモールの前端縁部の下面に工具の先細先端部の差し込み用切り欠きが形成される。上記各係止具と切り欠きとが車体の前後方向に列設させられる。上記サイドモールの前端縁部が、車体の前後方向で上記フードの後端縁部近傍に位置させられる。
【実施例】
【0022】
本発明をより詳細に説明するために、その実施例を添付の図に従って説明する。
【0023】
図1において、符号1は、自動車で例示される車両であり、矢印Frは、この車両1の進行方向の前方を示している。また、下記する左右とは、上記前方に向かっての車両1の車体2の幅方向をいうものとする。
【0024】
上記車体2の後部側の内部が車室3とされる。上記車体2は、上記車体2の幅方向に延びてその各端部が不図示の左右フロントピラーの上下方向の中途部に両端支持されるフロントカウル4と、上記各フロントピラーの上下方向の中途部から前方に向かって突設され、車体2の左右側部を構成する左右エプロンメンバ5と、車体2の前端部側を構成し、不図示のサイドメンバ等を介し上記各フロントピラーやエプロンメンバ5に強固に結合されるラジエータサポート6とを備えている。上記各構成部品4〜6は板金製であって、それぞれ車体2の骨格部材を構成している。
【0025】
上記車体2は、車体2の左右側部にわたるよう車体2の幅方向に延び、上記フロントカウル4をその上方から覆う樹脂製のカウルルーバー10と、上記左右フロントピラーの各上部およびフロントカウル4で囲まれたフロントウィンド開口11を閉じるフロントウィンドパネル12と、上記各エプロンメンバ5をその外側方から覆ってこれら各エプロンメンバ5側に支持され、車体2の左右側部を構成する板金製の左右フロントフェンダパネル13と、上記ラジエータサポート6の前方近傍で車体2の幅方向に延びるフロントバンパ14とを備えている。上記フロントカウル4とウィンドパネル12との後方が上記車室3とされる。
【0026】
上記車体2は、上記フロントカウル4、左右エプロンメンバ5、およびラジエータサポート6で囲まれたエンジンルーム15と、上記カウルルーバー10の前端縁部、左右各フェンダパネル13の上端縁部、およびバンパ14の上端縁部で囲まれ、上記エンジンルーム15を上方に向かって開くよう車体2に形成された車体開口16と、この車体開口16をその上方から開閉可能に閉じるフード17と、この上記車体2の側部のエプロンメンバ5に締結具18により固着され、上記フード17の前端部側が上方、下方回動A,B可能となるようこのフード17の後端部を上記エプロンメンバ5に枢支する左右一対のフードヒンジ19と、上記車体開口16を閉じたフード17の前端部を上記車体開口16の前部開口縁部である上記ラジエータサポート6の上端部に解除可能にロックするフードロック装置20とを備えている。
【0027】
上記カウルルーバー10は、上記フロントカウル4とウィンドパネル12の前端縁部の各上面で支持されると共に、左右一対のクリップ21,21により上記フロントカウル4に固着されている。
【0028】
上記カウルルーバー10は、車体2の幅方向に延びると共に、上記ウィンドパネル12の前端縁部とフード17の後端縁部との間の空間を閉じるようわずかに後上がりでほぼ水平に延びる上面板23と、この上面板23の前端縁部から下方に向かって一体的に延出する縦向き板24とを備えている。
【0029】
上記ウィンドパネル12とフード17との間の上記空間は車体2の幅方向の全体にわたり形成され、上記空間の車体2の幅方向の全体にわたり、上記上面板23と縦向き板24とが設けられている。そして、上記縦向き板24の長手方向の各端部の下端部が上記各クリップ21によりフロントカウル4に固着されている。上記カウルルーバー10の長手方向の各端部において、上記カウルルーバー10の上面板23の前端縁部とフード17の後端縁部とは車体2の前後方向で互いに近傍に位置させられている。
【0030】
上記カウルルーバー10は、上記縦向き板24の長手方向の中途部から前方に向かって一体的に延出する底部板25と、この底部板25の延出端縁部から上方に向かって一体的に延出する前部板26と、上記縦向き板24、底部板25、および前部板26で囲まれた樋部27の左右各端部を閉じるよう上記縦向き板24、底部板25、および前部板26に一体的に形成される側部板28とを備えている。上記カウルルーバー10の前部板26の上端縁部にはシール29が取り付けられており、このシール29は、上記カウルルーバー10の前部板26とフード17の後端縁部の下面との間をシールする。
【0031】
上記カウルルーバー10の左側部には車室3側から空調装置31が連結され、かつ、カウルルーバー10の左側部における上記上面板23には通気孔32が形成される。そして、車体2の外部の空気が上記通気孔32を通して上記フロントカウル4の内部空間に導入可能とされる。このフロントカウル4内の空気は、その後、上記空調装置31を通して車室3に供給される。上記樋部27の車体2の幅方向における端部の底部には排水孔33が形成される。そして、上記ウィンドパネル12やフード17の上面における雨水等の水は上記樋部27に集水される。この水は、その後、上記排水孔33とフロントカウル4内とを通し車体2の外部に排水される。
【0032】
上記カウルルーバー10の長手方向の各端部において、このカウルルーバー10の縦向き板24の上端縁部に一体的に形成され、上記カウルルーバー10の上面板23の前端縁部から前方に少し離れた近傍位置に、この上面板23の前端縁部に沿って延びるリブ36が設けられている。上記上面板23の前端縁部とリブ36とにより、車体2の幅方向に延び、かつ、上記樋部27に向かって下傾する排水溝37が形成されている。
【0033】
上記カウルルーバー10の上記上面板23の上面側に前後複数(2個)の係止具40,41により係止、離脱可能に係止される樹脂製のサイドモール42が設けられている。このサイドモール42の車体2の幅方向の外側部は、前記フードヒンジ19をその上方から覆って、上記カウルルーバー10の端部近傍における車体2の外観上の見栄えを向上させている。このため、上記サイドモール42はヒンジカバーとも言われる。
【0034】
上記サイドモール42は、このサイドモール42を全体的に構成して上記上面板23の上面に沿って車体2の前後方向に延びるモール本体43と、このモール本体43の前端縁部から下方に向かって屈曲する屈曲片44とを備えている。上記上面板23の上面側に係止された状態で、上記モール本体43の後端縁部は上記ウィンドパネル12の前端縁部の上面に圧接して支持され、上記屈曲片44の下端縁部は上記上面板23の前端縁部の上面に圧接して支持されている。
【0035】
上記各係止具40,41は、上記上面板23に形成される係止孔である係止部47と、上記モール本体43の下面に一体的に突設され、上記係止部47への嵌入で弾性的に撓むことによりこの係止部47の開口縁部に係止、解除可能に係止される係止突起である被係止部48とを備えている。また、上記サイドモール42は前記フェンダパネル13に対してもクリップ49により係止、離脱可能に係止されている。
【0036】
ここで、上記車体2の前部には左右一対のヘッドランプ52,52が設けられている。これら各ヘッドランプ52の照射光のほとんどは車体2の前方を照射するが、この照射光の一部が洩れて後方に向かい、上記エンジンルーム15、およびカウルルーバー10の上面板23の前端縁部とフード17の後端縁部との間を通り、かつ、ウィンドパネル12を透過して車室3に達するという不都合が生じることがある。そこで、前記リブ36を設けたのであり、このリブ36は、上記ヘッドランプ52の上記照射光の一部を遮光し、この照射光の一部が後方に向かい、かつ、車室3に達しようとすることを防止する。
【0037】
一方、前記排水溝37は、上記サイドモール42の上面を前下方に流下してきた水54を集水して、上記樋部27内に排水させる。
【0038】
特に、図1で示すように、上記サイドモール42の前端縁部は、車体2の前後方向で上記カウルルーバー10の上記上面板23の前端縁部近傍に位置させられている。そして、上記サイドモール42の前端縁部の下面、具体的には、上記屈曲片44の下端縁部には工具56であるドライバーの先細先端部56aの差し込み用切り欠き57が形成されている。この場合、上記各係止具40,41と切り欠き57とは車体2の前後方向に列設されている。また、上記サイドモール42の前端縁部は、車体2の前後方向で上記フード17の前端縁部近傍に位置させられている。
【0039】
上記構成によれば、サイドモール42の前端縁部を、車体2の前後方向で上記カウルルーバー10の上記上面板23の前端縁部近傍に位置させ、上記サイドモール42の前端縁部の下面に工具56の先細先端部56aの差し込み用切り欠き57を形成している。
【0040】
このため、上記カウルルーバー10の上記上面板23の上面側からサイドモール42を離脱させる離脱作業をしようとする場合には、まず、上記フードロック装置20によるロックを解除して、上記フード17を上方回動Aさせ(図1中一点鎖線)、上記サイドモール42の前方に広い作業空間を確保する。
【0041】
次に、上記サイドモール42の前方の作業空間を通して上記工具56の先細先端部56aを上記切り欠き57に差し込み、上記上面板23の前端縁部に対する上記先細先端部56aの接点を支点として、上記サイドモール42の前端部を上記工具56に依りこじる。
【0042】
すると、図1中一点鎖線で示すように、上記上面板23に対し上記サイドモール42の前端部が上記工具56に依る梃子の原理で容易に上昇するため、この上昇したサイドモール42の前端部に手掛けするなどして更に上昇させれば、このサイドモール42と共に上昇する上記各係止具40,41の被係止部48は上記係止部47から容易に離脱して、上記上面板23の上面側への上記各係止具40,41によるサイドモール42の係止が容易に解除される。よって、上記カウルルーバー10の上記上面板23の上面側からサイドモール42を離脱させるための離脱作業が容易にできる。
【0043】
ここで、前記したように、カウルルーバー10の上記上面板23の前端縁部とサイドモール42の前端縁部とは、車体2の前後方向で互いに近傍に位置しているため、上記サイドモール42の離脱作業において、上記切り欠き57に差し込んだ工具56の先細先端部56aによりサイドモール42の前端部をこじるだけでは、このサイドモール42の前端部を大きく上昇させることは容易でない。そこで、上記サイドモール42の前端部をある程度上昇させた後は、上記工具56の先細先端部56aを上記上面板23から前方に少し離れた近傍に位置する前記リブ36の上面に当接させ、このリブ36に対する上記先細先端部56aの接点を支点として、上記サイドモール42の前端部を上記工具56に依り更にこじる。すると、上記サイドモール42の前端部をより大きくかつ迅速に上昇させることができる。よって、上記した遮光用のリブ36の利用により、上記サイドモール42を上記上面板23の上面側から、より容易かつ迅速に離脱させることができる。
【0044】
上記の場合、リブ36は上記フード17の後端縁部の下方に位置し、このフード17の後端縁部によりその上方から覆われている。このため、上記リブ36が、このリブ36への上記工具56の先細先端部56aの当接により仮に傷付いたとしても、これが車体2の外観上容易に見えるということは防止されて、車体2の外観上の見栄えは良好に維持される。
【0045】
更に、前記したように、各係止具40,41と切り欠き57とを車体2の前後方向に列設している。
【0046】
このため、前記したサイドモール42の離脱作業において、上記切り欠き57に差し込んだ工具56の先細先端部56aにより上記サイドモール42の前端部をこじた場合、上記各係止具40,41のうち、その前側の係止具40から、後側の係止具41に向けて順次係止を解除させることができる。よって、上記各係止具40,41による係止を同時に解除させることに比べて、この係止の解除が軽快かつ容易にでき、この結果、上記上面板23の上面側からのサイドモール42の離脱作業は軽快、かつ、より容易にできる。
【0047】
また、前記したように、サイドモール42の前端縁部を、車体2の前後方向で上記フード17の後端縁部近傍に位置させている。
【0048】
このため、上記フード17が車体開口16を閉じている車両1の通常状態では、上記サイドモール42の前端縁部の下面に形成された上記切り欠き57は、上記フード17の後端縁部によって車体2の外部から容易に見えることが防止される。よって、上記切り欠き57を形成したことによりサイドモール42の離脱作業が容易にできるものでありながら、車体2の外観上の見栄えが良好に維持される。
【0049】
一方、上記上面板23の上面側に上記サイドモール42を組み付けようとして、このサイドモール42を上記上面板23の上面側に対し上記各係止具40,41により係止させる場合には、上記上面板23の上方から上記サイドモール42を下降させ、このサイドモール42と共に下降する上記各係止具40,41の被係止部48を上記係止部47に単に押し込めばよく、これにより、上記サイドモール42は上記上面板23の上面側に弾性的に自動的に係止される。
【0050】
なお、以上は図示の例によるが、上記リブ36と排水溝37とは設けなくてもよい。また、上記係止具40,41は3つ以上設けてもよく、クリップ49は無くてもよい。
【符号の説明】
【0051】
1 車両
2 車体
3 車室
4 フロントカウル
5 エプロンメンバ
10 カウルルーバー
11 ウィンド開口
12 ウィンドパネル
15 エンジンルーム
16 車体開口
17 フード
18 締結具
19 フードヒンジ
23 上面板
24 縦向き板
25 底部板
26 前部板
27 樋部
28 側部板
29 シール
33 排水孔
36 リブ
37 排水溝
40 係止具
41 係止具
42 サイドモール
43 モール本体
44 屈曲片
47 係止部
48 被係止部
52 ヘッドランプ
54 水
56 工具
56a 先細先端部
57 切り欠き
A 上方回動
B 下方回動

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体の左右側部にわたるよう車体の幅方向に延びるカウルルーバーと、このカウルルーバーの前方かつ上記車体の左右側部の間に形成され上方に向かって開口する車体開口と、この車体開口をその上方から開閉可能に閉じるフードと、上記カウルルーバーの長手方向の端部における上面板の上面側に複数の係止具により係止、離脱可能に係止されるサイドモールとを備えた車両の車体前部構造において、
上記サイドモールの前端縁部を、車体の前後方向で上記カウルルーバーの上記上面板の前端縁部近傍に位置させ、上記サイドモールの前端縁部の下面に工具の先細先端部の差し込み用切り欠きを形成し、
上記各係止具と切り欠きとを車体の前後方向に列設し、
上記サイドモールの前端縁部を、車体の前後方向で上記フードの後端縁部近傍に位置させたことを特徴とする車両の車体前部構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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