説明

車両ドア

【課題】互いに別部材である操作ハンドルと操作力伝達機構を車両ドアに取り付けたときに、操作ハンドルと伝達レバーを確実に連係させることが可能な車両ドアを提供する。
【解決手段】車両ドア13のドアパネル15に貫通孔17を形成し、ハンドルユニット60を、その押圧部69を貫通孔17を通して車両ドアの内部空間25に位置させた状態でドアパネルの外側に位置させ、操作力伝達機構40を、その伝達レバー45を上記押圧部69と対向させた状態で内部空間25に配設し、ハンドルユニット、ドアパネル、及び、操作力伝達機構を共通の位置決め手段42a、Bを用いてドアパネルに位置決めした上で、ドアパネルに固定手段B、Nを用いて固定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両本体の開口部に対して開閉可能で、該開口部に突設したストライカと係脱するロック機構と、該ロック機構を操作するための操作ハンドルと、を備える車両ドアに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1の車両の後面には、その下端部にストライカを突設した開口部が形成してあり、該開口部の上縁部にはバックドアの上端部が回転可能に支持してある。
このバックドアは、バックドアの後面を構成するアウタパネルと、アウタパネルの直前に位置するインナパネルと、インナパネルの直前に位置してバックドアの車内側面を構成するドアトリムと、を互いに接合して構成した中空構造であり、その下端部には、バックドアによって開口部を閉じたときにストライカをロック可能なロック機構が設けてある。
また、アウタパネルとインナパネルの間に形成されたバックドアの内部空間には、取付ブラケットに伝達レバーを回転可能に支持した操作力伝達機構が配設してあり、その取付ブラケットをインナパネルに固定してある。伝達レバーは、付勢手段によってロック許容位置側に回転付勢されており、該付勢手段の回転付勢力に抗してロック解除位置まで回転させることが可能である。そして、伝達レバーと上記ロック機構はケーブルを介して互いに連係しており、伝達レバーがロック許容位置に位置するときロック機構はストライカをロックするロック状態となり、伝達レバーがロック解除位置まで回転するとロック機構はストライカを解放するアンロック状態となる。さらに、アウタパネルの後面には、ロック位置とアンロック位置との間を回転可能な操作ハンドルが取り付けてある。この操作ハンドルの前端部は、アウタパネルに形成した貫通孔を通ってアウタパネルとインナパネルの間の内部空間に位置しており、該内部空間において上記伝達レバーと連係している。
操作ハンドルは付勢手段の付勢力によってロック位置側に回転付勢されているため、外力が掛からないとき操作ハンドルはロック位置に位置する。そして、操作ハンドルがロック位置に位置するとき、伝達レバーはロック許容位置に位置するので上記ロック機構はロック状態となる。一方、上記付勢手段の付勢力に抗して操作ハンドルをアンロック位置まで回転させると、操作ハンドルの前端部が伝達レバーに接触して伝達レバーをロック解除位置まで回転させるので、ロック機構はアンロック状態となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3693797号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のバックドアは、操作ハンドルに与えた操作力(回転力)を操作ハンドルから操作力伝達機構(伝達レバー)に伝達することによりロック機構をロック状態からアンロック状態に切り替える構造なので、操作ハンドルから伝達レバーに操作力を確実に伝達する必要がある。
しかし、操作力伝達機構の取付ブラケットはインナパネルに取り付けてある一方で、操作ハンドルはアウタパネルに取り付けてあるので、操作ハンドルと取付ブラケットの一方の取付位置がわずかでもずれると、操作ハンドルと伝達レバーの相対位置が設計位置からずれてしまい、操作ハンドルを回転させたときに操作ハンドルと伝達レバーがうまく連係しなくなるおそれがある。
【0005】
本発明は、互いに別部材である操作ハンドルと操作力伝達機構を車両ドアに取り付けたときに、操作ハンドルと伝達レバーを確実に連係させることが可能な車両ドアを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の車両ドアは、車両本体の開口部に対して開閉可能で、初期位置と動力伝達位置とに回転可能な伝達レバーを有する操作力伝達機構と、ハンドル操作を行ったときに上記伝達レバーを上記初期位置から上記動力伝達位置に押圧する押圧部を有するハンドルユニットと、を具備する車両ドアにおいて、上記車両ドアのドアパネルに貫通孔を形成し、上記ハンドルユニットを、上記押圧部を上記貫通孔を通して上記車両ドアの内部空間に位置させた状態で該ドアパネルの外側に位置させ、上記操作力伝達機構を、上記伝達レバーを上記押圧部と対向させた状態で上記内部空間に配設し、上記ハンドルユニット及び操作力伝達機構を、共通の位置決め手段を用いて上記ドアパネルに位置決めしたことを特徴としている。
【0007】
上記位置決め手段を用いて上記ハンドルユニット及び操作力伝達機構を上記ドアパネルに固定してもよい。
【0008】
上記車両ドアがアウタパネルとインナパネルを有し、上記アウタパネルとインナパネルの一方が上記ドアパネルであり、該ドアパネルにおける他方のパネルとの対向面側に上記操作力伝達機構を位置させ、かつ、該対向面とは反対側に上記ハンドルユニットを位置させてもよい。なお、ドアパネルは、当該ドアパネルを補強するために添設される補強板(リンフォース)を含んでいてもよい。
【0009】
上記操作力伝達機構が、上記伝達レバーと、該伝達レバーを回転可能に支持する取付ブラケットと、を有し、該取付ブラケットが、上記ドアパネルに形成した仮保持部に対して仮止め可能な仮止め部と、一つの固定部材によって上記ドアパネルに固定される一つの被固定部と、を有してもよい。
また、上記操作力伝達機構が、上記伝達レバーと、該伝達レバーを回転可能に支持する取付ブラケットと、を有し、上記ドアパネルが、互いに嵌合可能な回転規制片と凹部又は孔からなる被嵌合部との一方を有し、上記取付ブラケットが、上記回転規制片と上記被嵌合部の他方と、一つの固定部材によって上記ドアパネルに固定される一つの被固定部と、を有する構成であってもよい。
このように構成すれば、仮保持部と仮止め部、又は、回り止め用凹部と回転規制片を利用して取付ブラケットをドアパネルに対して仮止めした状態で固定部材を利用して取付ブラケットをドアパネルに固定でき、しかも一つの固定部材を利用することにより、取付ブラケットのドアパネルに対する固定部材回りの回転を規制できるので、取付ブラケットのドアパネルに対する取付作業が簡単になる。
【発明の効果】
【0010】
本発明では、ハンドルユニットと、伝達レバーを有する操作力伝達機構とを、車両ドアの共通のドアパネルと一緒に共通の固定手段を用いて固定するので、ドアパネルに固定したときの操作ハンドルと伝達レバーの相対位置が設計位置からずれるおそれは小さく、操作ハンドルと伝達レバーを確実に連係させることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の一実施形態の車両の側面図である。
【図2】バックドアの縦断側面図である。
【図3】ハンドルユニット、アウタパネル、補強板、及び、操作力伝達機構を互いに分離した状態で示す前方から見た分解斜視図である。
【図4】ハンドルユニットの縦断側面図である。
【図5】インナパネル側から見たときの操作力伝達機構、補強板、アウタパネル、及び、ハンドルユニットの正面図である。
【図6】ロック状態にあるロック機構のロックケース内部の状態を示す平面図である。
【図7】同じくアンロック状態のときの図6と同様の平面図である。
【図8】変形例の図3と同様の分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の一実施形態について添付図面を参照しながら説明する。なお、以下の説明中の前後方向は、図1に記載した矢印の方向(車両の長手方向)を基準としている。
図1は本発明を適用した車両10を示している。
車両10の本体の後端部には開口部11が形成してあり、開口部11の下端部にはストライカ12が上向きに突設してある。さらに開口部11の上縁部には、バックドア13の上端部が左右方向(車幅方向)の軸周りに回転可能として支持してある。
図2に示すように、バックドア13は複数のパネル材を前後方向(バックドア13の厚み方向)に重ねて互いに接合した中空構造である。即ち、バックドア13の後面は金属製のアウタパネル15によって構成してあり、アウタパネル15の前面には金属製の(アウタパネルの一部を構成する)補強板20(アウタリンフォース)の上部が接触させてある。さらに補強板20の直前には金属製のインナパネル24が位置しており、インナパネル24の一部がアウタパネル15の前面に接触させてある。そして、アウタパネル15と補強板20の接触部、及び、アウタパネル15とインナパネル24の接触部は互いに溶接により固定してあり、インナパネル24の前面には合成樹脂によって成形したドアトリム27がボルト等(図示略)により固定してある。そして、アウタパネル15とドアトリム27の間には図2に示す内部空間25が形成してある。図2に示すようにアウタパネル15の後面には取付用凹部16が前向きに凹設してあり、取付用凹部16の底面には貫通孔17と左右一対の遊嵌孔18とが形成してある。また補強板20における貫通孔17及び遊嵌孔18とそれぞれ対向する位置には貫通孔21と遊嵌孔22がそれぞれ形成してある。さらに貫通孔21の直下には切り起こしにより回転規制片(仮保持部)23が突設してあり、補強板20の下端部にはねじ挿入孔20aが形成してある。
【0013】
内部空間25の下端部には、ロックケース31(及び、その内部機構)とロック制御ユニット37とを有するロック機構30が設けてある。
下面がバックドア13の下端面において露出する金属製のロックケース31は、図6、図7に示すように、その上面全体が開口すると共に下面にはストライカ進入溝32が形成してあり、その内部空間にはフック33とポール34がそれぞれロックケース31の底面に突設した回転軸35と回転軸36周りに回転可能に支持してある。ストライカ保持溝33a、第1係合部33b、及び、第2係合部33cを有するフック33は図6に示すストライカ保持位置と図7に示すストライカ解放位置との間を回転可能であり、さらに捻りコイルばねS1の回転付勢力によってストライカ解放位置側に回転付勢されている。一方、被押圧突起34a、及び、ロック保持用突部34bを有するポール34は図6に示す係合位置と図7に示す非係合位置との間を回転可能であり、さらに捻りコイルばねS2の回転付勢力によって係合位置側に回転付勢されている。さらに、ロックケース31の真上に位置するロック制御ユニット37は揺動可能なロック解除レバー38と、ロック解除レバー38を動作させるための連動機構(図示略)と、を備えており、ロック解除レバー38の下端部はロックケース31の上面開口部を通ってロックケース31の内部に位置している。ロック解除レバー38は図6に示す非押圧位置と、図7に示す押圧位置との間を図6、図7の矢印A方向に揺動可能であり、ロック制御ユニット37の内部に設けた上記連動機構の働きにより常時は(後述する操作ケーブル50から力を受けないときは)非押圧位置に位置する。ロック解除レバー38が非押圧位置に位置するとき、図6に示すようにロック解除レバー38の下端部はポール34の被押圧突起34aから離間するので、捻りコイルばねS2の回転付勢力によってポール34は係合位置に位置する。一方、上記連動機構が動作することによりロック解除レバー38が押圧位置まで揺動すると、ロック解除レバー38の下端部が被押圧突起34aを押圧し、ポール34を捻りコイルばねS2の回転付勢力に抗して非係合位置まで回転させる(図7参照)。
【0014】
内部空間25の内部にはロック機構30の上方に位置する操作力伝達機構40が設けてある。
操作力伝達機構40は、共に金属板を曲折加工した部材である取付ブラケット41と、取付ブラケット41に突設した回転支持軸46に回転可能に支持した伝達レバー45と、を具備している。取付ブラケット41の上縁部に上向きに突設した左右一対の突片にはそれぞれ、遊嵌孔18、22より小径である丸孔(位置決め手段)42aと、丸孔42aの径より長手寸法(左右寸法)が長い長孔42bとが形成してあり、さらに取付ブラケット41の下端部にはねじ挿入孔(被固定部)43が形成してある。また、取付ブラケット41の上縁部の中央部(丸孔42aと長孔42bを形成した左右の上記突片の間)には回転規制片23と同幅(左右寸法)である回り止め用凹部(仮止め部)(被嵌合部)44が下向きに凹設してある。取付ブラケット41は後述する固定要領によって補強板20のインナパネル24側の面に固定される。伝達レバー45の一方の端部には被押圧片47が突設してあり、伝達レバー45の他方の端部にはケーブル支持片48が形成してある。伝達レバー45は図4、図5に実線で示すロック許容位置(初期位置)と図4、図5に仮想線で示すロック解除位置(動力伝達位置)との間を回転可能であり、図示を省略したばね手段の付勢力によってロック許容位置に向けて回転付勢されている。図示するようにケーブル支持片48にはワイヤ51の両端を除く部分をアウタチューブ52で被覆した操作ケーブル50のワイヤ51の上端が接続しており、ワイヤ51の下端はロック制御ユニット37の上記連動機構に接続している。以上説明した取付ブラケット41(回転支持軸46)、及び、伝達レバー45が操作力伝達機構40の構成要素である。
このように操作力伝達機構40(伝達レバー45)とロック機構30は操作ケーブル50を介して連係しているので、伝達レバー45がロック許容位置に位置するとき、ワイヤ51の下端からロック機構30の上記連動機構に外力(操作力)は及ばず、該連動機構の働きによりロック解除レバー38は非押圧位置に位置する。一方、伝達レバー45がロック解除位置に回転すると、この回転力が上方に牽引されたワイヤ51の下端を介して上記連動機構に伝わり、連動機構がロック解除レバー38を押圧位置まで回転させる。
【0015】
アウタパネル15の取付用凹部16には、操作力伝達機構40とは別体であるハンドルユニット60が取り付けてある。
ハンドルユニット60は共に硬質合成樹脂からなる成形物である支持ケース61と操作ハンドル65とを具備している。支持ケース61は、その前面及び左右両側面が閉塞される一方で、後面及び下面が開放した部材であり、前壁の略中央部には貫通孔62が形成してあり、前壁の後面における貫通孔62の直下にはストッパ63が突設してある。さらに左右の側壁の対向面間には左右方向に延びる断面円形の回転支持軸64が設けてある。また支持ケース61の前壁には前方に向かって延びる(バックドア13の厚み方向と略同方向に延びる)左右一対のボルト(位置決め手段及び固定手段)Bがインサート成形によって一体的に固定してある。ボルトBの断面径は丸孔42aの径と略同径(僅かに小さい)であり、かつ遊嵌孔18、22より一回り小さい。
操作ハンドル65は、下面に指入れ用の指入れ用凹部66が凹設された把持部67と、把持部67の前面から前方に突出する(バックドア13の厚み方向と略同方向に延びる)押圧用突部(押圧部)69と、を有している。把持部67は支持ケース61の内部(左右の側壁の間)に位置しており、把持部67の上部を左右方向に貫通する貫通支持孔68が回転支持軸64に回転可能に嵌合している。操作ハンドル65は支持ケース61に対して図2、図4の実線で示すロック位置(操作ハンドル65の前面がストッパ63に接触する位置)と、図2、図4の仮想線で示すアンロック位置との間を回転可能であり、支持ケース61と操作ハンドル65の間に設け捻りコイルばねS3(図2参照)の回転付勢力によってロック位置側に回転付勢されている。押圧用突部69は貫通孔62を通って支持ケース61の前壁の前方に突出している。
【0016】
操作力伝達機構40(取付ブラケット41)とハンドルユニット60は以下の手順によってバックドア13に対して一体的に固定する。
操作力伝達機構40とハンドルユニット60を固定する際には、バックドア13にドアトリム27を付ける前に、操作力伝達機構40の取付ブラケット41を前方から補強板20の上端部及びアウタパネル15に近づける。そして、取付ブラケット41の回り止め用凹部44を下方から回転規制片23に嵌合して回り止め用凹部44の下面を回転規制片23の下面に接触させると共に、丸孔42aと長孔42bを補強板20の左右の遊嵌孔22にそれぞれ対向させ、インナパネル24の作業用孔24a(図2参照)を通して取付ブラケット41の下端部を補強板20の下端部に接触させ、取付ブラケット41のねじ挿入孔43を補強板20の下端部に形成したねじ挿入孔20aと対向させる。そして、止めねじ(固定部材)70を前方からねじ挿入孔43及びねじ挿入孔20aに挿入し、かつ補強板20の後面にねじ挿入孔20aの直後に位置させて固定したウェルドナット20bに螺合する。このようにして取付ブラケット41の下端部と補強板20の下端部を接触状態で互いに固定すると、取付ブラケット41の回り止め用凹部44と補強板20の回転規制片23によって取付ブラケット41の上端部(回り止め用凹部44)のねじ挿入孔43(止めねじ70)回りの回転(左右方向移動)が規制されるので取付ブラケット41は補強板20に対して固定される。このように回転規制片23と回り止め用凹部44を利用して取付ブラケット41の上端部を補強板20に仮止めしながら止めねじ70を利用して取付ブラケット41を補強板20に固定でき、しかも、一つの止めねじ70をウェルドナット20bに螺合するだけで取付ブラケット41を補強板20に対して取り付けることが出来るので、取付ブラケット41の補強板20に対する固定作業は簡単である。
さらにアウタパネル15の後方から取付用凹部16にハンドルユニット60を接近させ、支持ケース61の前面を取付用凹部16の底面に接触させると共に、右側のボルトBを右側の遊嵌孔18、遊嵌孔22、及び、丸孔42aに挿入し、その先端部を丸孔42aの前方に突出させる。一方、左側のボルトBは左側の遊嵌孔18、遊嵌孔22、及び、長孔42bに挿入し、その先端部を長孔42bの前方に突出させる。すると、ハンドルユニット60と取付ブラケット41(及び補強板20、アウタパネル15)が互いに位置決めされると共に、押圧用突部69の前端部がアウタパネル15の貫通孔17、及び、補強板20の貫通孔21を貫通して、操作力伝達機構40の伝達レバー45の被押圧片47の直上に位置する(図2、図4参照)。そして、左右一対のナット(固定手段)Nを前方から左右のボルトBの先端部に螺合して、ボルトBとナットNによって取付ブラケット41の上端部(丸孔42aと長孔42bを形成した左右の突片)、補強板20、アウタパネル15、及び支持ケース61の互いに隣り合うもの同士を接触状態で固定する。
【0017】
次に以上構成のバックドア13の動作について説明する。
図1の仮想線で示すようにバックドア13が開放状態にあるとき、ロック機構30は図7に示すアンロック状態となる。即ち、ストライカ12はロックケース31の外部に位置し、フック33は捻りコイルばねS1の回転付勢力によりストライカ解放位置に位置し、ポール34は捻りコイルばねS2により係合位置側に回転付勢されているので、ポール34における第2係合部33cとの対向面(周面)が第2係合部33cに係合する(図示略)。
この状態からバックドア13を全閉位置まで閉じると、ストライカ12がロックケース31のストライカ進入溝32に進入しながらフック33のストライカ保持溝33aに係合するので、ストライカ12から力を受けたフック33は捻りコイルばねS1の回転付勢力に抗して図7の時計方向に回転する。すると図6に示すようにフック33が図6に示すストライカ保持位置まで回転し、フック33の第1係合部33bとポール34のロック保持用突部34bが互いに係合しフック33がストライカ保持位置に保持されるので、ストライカ12はストライカ進入溝32から脱出できなくなる。
この状態からバックドア13を開放するには、乗客や運転手が手の指を指入れ用凹部66に挿入しながら把持部67を手で把持し、捻りコイルばねS3の付勢力に抗して操作ハンドル65をアンロック位置まで回転させる(ハンドル操作する)。すると図2、図4の仮想線で示すように、操作ハンドル65の押圧用突部69が伝達レバー45の被押圧片47を下方に押圧するので、図4、図5の仮想線で示すようにロック許容位置に位置していた伝達レバー45が上記ばね手段の付勢力に抗してロック解除位置まで回転する。すると、伝達レバー45のケーブル支持片48が上方に移動しケーブル支持片48によって上端が支持されている操作ケーブル50のワイヤ51が上方に引かれるので、ワイヤ51の下端と連係しているロック機構30の上記連動機構が動作し、その結果、図6に示す非押圧位置に位置していたロック解除レバー38が図7に示す押圧位置まで揺動する。すると、ロック解除レバー38の下端部がポール34の被押圧突起34aを押圧するので、係合位置に位置していたポール34が非係合位置まで回転しロック保持用突部34bが第1係合部33bとの係合を解除するので、フック33は捻りコイルばねS1の回転付勢力によってストライカ解放位置まで回転する。従って、フック33のストライカ保持溝33aがストライカ12をストライカ進入溝32の外側に排出しながらストライカ12を解放するので、バックドア13は全開位置まで回転可能となる。
【0018】
以上説明したように本実施形態では、操作力伝達機構40(取付ブラケット41)とハンドルユニット60をボルトBとナットNを利用した共締めにより共通の部材であるアウタパネル15(遊嵌孔18)と補強板20(遊嵌孔22)に固定しているので、操作力伝達機構40とハンドルユニット60をアウタパネル15及び補強板20に固定したときの操作ハンドル65の押圧用突部69と操作力伝達機構40の伝達レバー45の相対位置が設計位置からずれるおそれは小さく、押圧用突部69と被押圧片47は確実に連係する。そのため、操作ハンドル65をアンロック位置まで回転操作したときに押圧用突部69から被押圧片47に操作ハンドル65の回転力が確実に伝わるので、操作ハンドル65の回転操作によってロック機構30をロック状態とアンロック状態に確実に切り替えることが可能である。
【0019】
以上本実施形態を利用して本発明を説明したが、本発明は様々な変形を施しながら実施可能である。
例えば図8に示す態様で実施することも可能である。この変形例の支持ケース61の前壁には、前方に向かって延びる左右一対の位置決めピンPが、一対のボルトBの間に位置する態様で一体的に突設してある。位置決めピンPの長手寸法及び外径はボルトBと略同一である。また、アウタパネル15には、一対の遊嵌孔18の外側に位置し、かつ遊嵌孔18と同じ形状である左右一対の遊嵌孔18aが穿設してあり、補強板20には、一対の遊嵌孔22の外側に位置し、かつ遊嵌孔22と同じ形状である左右一対の遊嵌孔22aが穿設してある。
本変形例においても操作力伝達機構40とハンドルユニット60をバックドア13に対して取付ける際は、まず上記実施形態と同様の手順により取付ブラケット41を補強板20に対して固定する。次いで、アウタパネル15の後方から取付用凹部16にハンドルユニット60を接近させ、右側の位置決めピンPを右側の遊嵌孔18、遊嵌孔22、及び、丸孔(位置決め手段)42aに挿入すると共に当該位置決めピンPの先端部を丸孔42aの前方に突出させ、かつ、左側の位置決めピンPを左側の遊嵌孔18、遊嵌孔22、及び、長孔42bに挿入すると共に当該位置決めピンPの先端部を長孔42bの前方に突出させる。するとハンドルユニット60、アウタパネル15、補強板20(及び取付ブラケット41)が互いに位置決めされると共に、丸孔42aが形成された右側の突片の右側に右側のボルトBが位置し、かつ、長孔42bが形成された左側の突片の左側に左側のボルトBが位置する。従って、左右一対のナット(固定手段)Nを前方から左右のボルトBの先端部に螺合すれば、ボルトBとナットNによって、補強板20、アウタパネル15、及び支持ケース61の互いに隣り合うもの同士が互いに接触状態で固定される。
この変形例によっても上記実施形態と同様の作用効果が得られる。
【0020】
また、本発明を車両本体の側面開口部を開閉するスライドドアやサイドドア(回転式のドア)に適用してもよい。また、適用するドアの車外側面(アウタパネル15)ではなく、車内側面(インナパネル24)にハンドルユニット60を設けても良い。この場合は、インナパネル24の車内側(室内側)の面にハンドルユニット60を位置させると共にインナパネル24の車外側(アウタパネル15との対向面側)の面に操作力伝達機構40を位置させて、ハンドルユニット60と操作力伝達機構40をインナパネル24を挟んだ状態で位置決め及び固定し、ドアトリム27にハンドルユニット60を車内側に露出させるための孔を設ける。
また、アウタパネル15の一部をなす補強板20の車外側にハンドルユニット60を位置させると共に補強板20の車内側に操作力伝達機構40を位置させて、ハンドルユニット60と操作力伝達機構40を補強板20を挟んだ状態で位置決め及び固定し、アウタパネル15にハンドルユニット60を車外側に露出させるための孔を設けてもよい。さらに、インナパネル24の後面にインナパネル24の一部を構成する補強板(図示略)を固定し、該補強板の車内側にハンドルユニット60を位置させると共に該補強板の車外側に操作力伝達機構40を位置させて、ハンドルユニット60と操作力伝達機構40を該補強板を挟んだ状態で位置決め及び固定し、インナパネル24及びドアとリム27にハンドルユニット60を車内側に露出させるための孔を設けてもよい。
さらに、ハンドルユニットの具体的な構造は上記のハンドルユニット60には限定されない。
また、固定手段はボルトBとナットN以外のもの、例えば、バックドア13の厚みと略同方向に延び、かつ遊嵌孔18、22、丸孔42a、長孔42bに弾性変形しながら嵌合するクリップや、金属製とした支持ケース61、アウタパネル15、補強板20、及び取付ブラケット41を互いに固定するスポット溶接であってもよい。
また、位置決め手段は、ボルトB、位置決めピンP、丸孔42a以外のものであってもよい。例えば、ボルトBや位置決めピンPの代わりに、ハンドルユニット60とは別体でかつハンドルユニット60、アウタパネル15、補強板20(及び取付ブラケット41)を貫通する位置決めピンを採用したり、丸孔42aの代わりに切欠きを利用してもよい。
さらにアウタパネル15の両面に支持ケース61と取付ブラケット41を接触させて、上記固定手段によりこれらを互いに固定してもよい。
またドアパネル側に回り止め用凹部44を形成し、取付ブラケット41側に回転規制片23を形成してもよい。さらに、回り止め用凹部44の代わりの被嵌合部として孔を採用してもよい。
【符号の説明】
【0021】
10 車両
11 開口部
12 ストライカ
13 バックドア(車両ドア)
15 アウタパネル(ドアパネル)
16 取付用凹部
17 貫通孔
18 18a 遊嵌孔
20 補強板(ドアパネル)
20a ねじ挿入孔
20b ウェルドナット
21 貫通孔
22 22a 遊嵌孔
23 回転規制片(仮保持部)
24 インナパネル(ドアパネル)
24a 作業用孔
25 内部空間
27 ドアトリム
30 ロック機構
31 ロックケース
32 ストライカ進入溝
33 フック
33a ストライカ保持溝
33b 第1係合部
33c 第2係合部
34 ポール
34a 被押圧突起
34b ロック保持用突部
35 36 回転軸
37 ロック制御ユニット
38 ロック解除レバー
40 操作力伝達機構
41 取付ブラケット
42a 丸孔(位置決め手段)
42b 長孔
43 ねじ挿入孔(被固定部)
44 回り止め用凹部(仮止め部)(被嵌合部)
45 伝達レバー
46 回転支持軸
47 被押圧片
48 ケーブル支持片
50 操作ケーブル
51 ワイヤ
52 アウタチューブ
60 ハンドルユニット
61 支持ケース
62 貫通孔
63 ストッパ
64 回転支持軸
65 操作ハンドル
66 指入れ用凹部
67 把持部
68 貫通支持孔
69 押圧用突部(押圧部)
70 止めねじ(固定部材)
B ボルト(固定手段)(位置決め手段)
N ナット(固定手段)
P 位置決めピン(位置決め手段)
S1 S2 S3 捻りコイルばね

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両本体の開口部に対して開閉可能で、
初期位置と動力伝達位置とに回転可能な伝達レバーを有する操作力伝達機構と、
ハンドル操作を行ったときに上記伝達レバーを上記初期位置から上記動力伝達位置に押圧する押圧部を有するハンドルユニットと、
を具備する車両ドアにおいて、
上記車両ドアのドアパネルに貫通孔を形成し、
上記ハンドルユニットを、上記押圧部を上記貫通孔を通して上記車両ドアの内部空間に位置させた状態で該ドアパネルの外側に位置させ、
上記操作力伝達機構を、上記伝達レバーを上記押圧部と対向させた状態で上記内部空間に配設し、
上記ハンドルユニット及び操作力伝達機構を、共通の位置決め手段を用いて上記ドアパネルに位置決めしたことを特徴とする車両ドア。
【請求項2】
請求項1記載の車両ドアにおいて、
上記位置決め手段を用いて上記ハンドルユニット及び操作力伝達機構を上記ドアパネルに固定した車両ドア。
【請求項3】
請求項1又は2記載の車両ドアにおいて、
上記車両ドアがアウタパネルとインナパネルを有し、
上記アウタパネルとインナパネルの一方が上記ドアパネルであり、
該ドアパネルにおける他方のパネルとの対向面に上記操作力伝達機構を固定し、かつ、同ドアパネルにおける該対向面とは反対側の面に上記ハンドルユニットを固定した車両ドア。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項記載の車両ドアにおいて、
上記操作力伝達機構が、上記伝達レバーと、該伝達レバーを回転可能に支持する取付ブラケットと、を有し、
該取付ブラケットが、上記ドアパネルに形成した仮保持部に対して仮止め可能な仮止め部と、一つの固定部材によって上記ドアパネルに固定される一つの被固定部と、を有する車両ドア。
【請求項5】
請求項1から3のいずれか1項記載の車両ドアにおいて、
上記操作力伝達機構が、上記伝達レバーと、該伝達レバーを回転可能に支持する取付ブラケットと、を有し、
上記ドアパネルが、互いに嵌合可能な回転規制片と凹部又は孔からなる被嵌合部との一方を有し、
上記取付ブラケットが、上記回転規制片と上記被嵌合部の他方と、一つの固定部材によって上記ドアパネルに固定される一つの被固定部と、を有する車両ドア。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−245961(P2011−245961A)
【公開日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−120442(P2010−120442)
【出願日】平成22年5月26日(2010.5.26)
【出願人】(590001164)シロキ工業株式会社 (610)
【出願人】(000002082)スズキ株式会社 (3,196)
【Fターム(参考)】