説明

車両フロア構造

【課題】チッピングによる傷付きや塗装剥がれ等の発生を抑制すると共に、フロアパネルの強度・剛性を確保することができる車両フロア構造を得る。
【解決手段】アンダーリインフォース20とリインフォース18の間に、車両幅方向に沿って車両上向きに凸となる補強用ビード30が車両前後に複数設けられている。補強用ビード30の後側壁30Cには車両上下方向中間部に屈曲部31Aが設けられており、屈曲部31Aより下方の下側傾斜部31Cの水平面に対する傾斜角度は、屈曲部31Aより上方の上側壁部31Bの水平面に対する傾斜角度よりも小さく形成されている。屈曲部31Aは、タイヤ50の接地点52と前側壁30Aの下端の角部30Dとを結ぶ直線56A、56B、56Cの延長線と、後側壁30Cとの交点より車両上方に形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両フロア構造に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、車両前後方向に延在されるサイドシルとエクステンションサイドメンバとの間に配置されたフロアパネルに、車両幅方向に沿って延在するビードを車両前後に複数個設けた車体のフロア構造が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−321657号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記先行技術による場合、ビードの車両後側壁がチッピングの方向、すなわちタイヤから跳ね上げられた小石等の衝突の方向に対して垂直に近くなり、フロアパネルの傷付きや塗装剥がれが発生しやすくなり、塗装剥がれにより錆が発生する可能性がある。
【0005】
これに対して、水平面に対するビードの車両後側壁の角度を小さく設定することで、チッピングの方向に対する車両後側壁の角度を垂直より小さくすることが考えられるが、フロアパネルの強度・剛性が低下する可能性がある。
【0006】
本発明は上記事実を考慮し、チッピングによる傷付きや塗装剥がれ等の発生を抑制する共に、フロアパネルの強度・剛性を確保することができる車両フロア構造を得ることが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1の発明に係る車両フロア構造は、車両幅方向及び車両前後方向に沿って延在されるフロアパネルと、前記フロアパネルに車両幅方向に沿って設けられ、車両上向きに凸となるように前側壁と後側壁とが形成された補強用ビードと、前記補強用ビードにおける前記後側壁の車両上下方向の中間部に設けられた屈曲部と、前記補強用ビードにおける前記後側壁の前記屈曲部より車両下側に設けられ、水平面に対する傾斜角度が前記屈曲部より車両上側となる上側壁部の水平面に対する傾斜角度より小さく形成された下側傾斜部と、を有するものである。
【0008】
請求項2の発明は、請求項1記載の車両フロア構造において、車両側面視において、前記前側壁の下端と前記フロアパネルのフロア面が形成する角部と、タイヤの接地点とを結ぶ直線を設定したとき、前記屈曲部は前記直線の延長線と前記後側壁との交点、又は前記交点より車両上方に形成されているものである。
【0009】
請求項3の発明は、請求項2に記載の車両フロア構造において、前記直線は、空車状態の前記前側壁の下端の前記角部と前記タイヤの接地点とを結ぶように設定されているものである。
【0010】
請求項4の発明は、請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載の車両フロア構造において、前記補強用ビードは、前記フロアパネルの車両前後方向に沿って設けられた2本の骨格部材の間に配置されており、前記補強用ビードの前記前側壁と前記後側壁との間の上面部は、車両背面視において、前記フロアパネルのフロア面に対して車両幅方向中央部の高さが車両幅方向両端部よりも高くなるように形成されているものである。
【0011】
請求項1記載の本発明によれば、フロアパネルに車両幅方向に沿って車両上向きに凸となるように補強用ビードが設けられており、補強用ビードにおける後側壁の車両上下方向の中間部に屈曲部が設けられると共に、屈曲部より車両下側の下側傾斜部の水平面に対する傾斜角度が、屈曲部より車両上側の上側壁部の水平面に対する傾斜角度より小さく形成されている。すなわち、チッピングを受け易い補強用ビードの後側壁の下側傾斜部の水平面に対する傾斜角度を緩やかに形成して、チッピングに対する下側傾斜部の衝突角度を小さくすることで、チッピングによる下側傾斜部の傷付きや塗装はがれの発生が抑制される。これと共に、チッピングを受けにくい補強用ビードの後側壁の上側壁部は、水平面に対する傾斜角度を大きくすることで、フロアパネルの強度・剛性を確保することができる。従って、傷付きや塗装はがれの発生を阻止する耐チッピング性能の向上とフロアパネルの強度・剛性の確保とを両立させることができる。
【0012】
請求項2記載の本発明によれば、車両側面視において、車両側面視において、前側壁の下端の角部とタイヤの接地点とを結ぶ直線を設定したとき、当該直線の延長線(すなわちチッピング軌跡)と後側壁との交点、又はこの交点より車両上方に屈曲部が形成されている。すなわち、チッピングを受け易いチッピング軌跡より下方の下側傾斜部の水平面に対する傾斜角度を緩やかにすることで、より効果的に耐チッピング性能の向上とフロアパネルの強度・剛性の確保とを両立させることができる。
【0013】
請求項3記載の本発明によれば、フロアパネルの高さが高くなる空車状態において、前側壁の下端の角部とタイヤの接地点とを結ぶように直線が設定され、直線の延長線(すなわちチッピング軌跡)と後側壁との交点、又はこの交点より車両上方に屈曲部が形成されている。これによって、少なくとも運転手が乗り込んだ車両走行状態では、フロアパネルの高さが空車状態よりも低くなるため、空車状態の条件で形成した屈曲部より下方の下側傾斜部が必ずチッピング軌跡より下方となる。このため、耐チッピング性能の向上とフロアパネルの強度・剛性の確保とをより確実に両立させることができる。
【0014】
請求項4記載の本発明によれば、フロアパネルの車両前後方向に沿って設けられた2本の骨格部材の間に補強用ビードが車両幅方向に沿って配置されており、強度・剛性の面で最も不利となる補強用ビードの車両幅方向中央部における上面部の高さを車両幅方向両端部の高さよりも高く形成している。これによって、フロアパネルの強度・剛性をより確実に向上させることができる。
【発明の効果】
【0015】
以上説明したように、請求項1記載の本発明に係る車両フロア構造は、チッピングによる傷付きや塗装剥がれ等の発生を抑制する(耐チッピング性を向上する)と共に、フロアパネルの強度・剛性を確保することができるという優れた効果を有する。
【0016】
請求項2記載の本発明に係る車両フロア構造は、耐チッピング性能の向上とフロアパネルの強度・剛性の確保とを効果的に両立させることができるという優れた効果を有する。
【0017】
請求項3記載の本発明に係る車両フロア構造は、屈曲部より下方の下側傾斜部を必ずチッピング軌跡より下方とすることで、耐チッピング性能の向上とフロアパネルの強度・剛性の確保とをより確実に両立させることができるという優れた効果を有する。
【0018】
請求項4記載の本発明に係る車両フロア構造は、フロアパネルの強度・剛性をより確実に向上させることができるという優れた効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】一実施形態に係る車両フロア構造の全体構成を示す平面図である。
【図2】図1中のA−A線に沿った車両フロア構造を示す断面図である。
【図3】(A)は、図1中のC−C線に沿った車両フロア構造を示す断面図であり、(B)は、図1中のB−B方向から見た車両フロア構造の補強用ビードを示す背面図である。
【図4】空車状態における補強用ビードの前側壁の下端の角部とタイヤの接地点とを結ぶ直線の延長線(チッピング軌跡)と、車両走行状態における補強用ビードの下側傾斜部との位置関係を説明する模式的な側面図である。
【図5】車両フロア構造に用いられる補強用ビードを示す斜視図である。
【図6】(A)は、比較例に係る車両フロア構造に用いられる補強用ビードを示す斜視図であり、(B)は、この補強用ビードを車両前後方向に沿った方向で示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図1〜図5を用いて、本発明に係る車両フロア構造の一実施形態について説明する。なお、これらの図において適宜示される矢印FRは車両前方側を示しており、矢印UPは車両上方側を示しており、矢印OUTは車両幅方向外側を示している。
【0021】
図1には、本実施形態の車両フロア構造10の平面図が示されており、図2には、図1中のA−A線に沿った車両フロア構造10の断面図が示されている。また、図3には、図1中のC−C線に沿った車両フロア構造10の断面図及び補強用ビードの背面図が示されている。これらの図に示されるように、本実施形態の車両フロア構造10が適用される車両下部12には、車両幅方向及び車両前後方向に沿って延在するフロアパネル14が配設されている。フロアパネル14の車両幅方向中央部には、フロアパネル14のフロア面14Aから車両上方に突出する断面略ハット状のフロアトンネル16が車両前後方向に沿って設けられている。フロアトンネル16はフロアパネル14と一体成形されている。
【0022】
フロアトンネル16の車両下方側には、車両前後方向に沿って延在する骨格部材としてのリインフォース18が配設されている。リインフォース18は、車両下方側が開放された断面略ハット状に形成されており、フロアトンネル16の壁面に沿って配置されている(図3(A)参照)。リインフォース18の車両幅方向両側には、左右一対のフランジ部18Aが形成されており、フランジ部18Aの上面とフロアパネル14のフロア面14Aの下面とが面接触状態で配置されてスポット溶接により接合されている。
【0023】
フロアパネル14の車両下方側には、リインフォース18より車両幅方向外側に車両前後方向に沿って延在する骨格部材としてのアンダーリインフォース20が配設されている。アンダーリインフォース20は、車両上方側が開放された断面略ハット状に形成されており、車両幅方向両側に左右一対のフランジ部20Aが形成されている(図3参照)。アンダーリインフォース20のフランジ部20Aの上面とフロアパネル14のフロア面14Aの下面とは面接触状態で配置されてスポット溶接により接合されている。なお、図1及び図3(A)では、車両幅方向中央部のフロアトンネル16の車両幅方向右側の車両フロア構造10が示されているが、車両フロア構造10はフロアトンネル16の車両幅方向両側で対称であるので、図示を省略している。
【0024】
フロアパネル14には、2本の骨格部材であるアンダーリインフォース20とリインフォース18の間に、車両上向きに凸となる補強用ビード30が車両幅方向に沿って設けられている。補強用ビード30は、車両前後にほぼ平行に複数(本実施形態では3個)設けられている。また、本実施形態では、補強用ビード30は車両前後にほぼ等間隔で配置されている。補強用ビード30の車両幅方向両端部は、アンダーリインフォース20とリインフォース18に近い位置まで延在されている。
【0025】
図2及び図5に示されるように、補強用ビード30は、車両前方側に配置されて車両後方へ向かって上り勾配となる前側壁30Aと、前側壁30Aの上端に形成されて補強用ビード30の頂部となる上面部30Bと、上面部30Bから車両後方へ向かって下り勾配となる後側壁30Cと、を備えている。補強用ビード30の後側壁30Cには、車両上下方向の中間部に形成された屈曲部31Aと、屈曲部31Aより車両上方に形成された上側壁部31Bと、屈曲部31Aより車両下方に形成された下側傾斜部31Cとが設けられている。下側傾斜部31Cは、水平面に対する傾斜角度が上側壁部31Bの水平面に対する傾斜角度よりも小さく形成されている。言い換えると、チッピングを受け易い下側傾斜部31Cの水平面に対する傾斜角度を上側壁部31Bの水平面に対する傾斜角度よりも緩やかにすることで、下側傾斜部31Cへのチッピングに対する衝突角度(小石等が直撃する角度)を小さくし、衝突角度が垂直に近づかないように構成している。また、チッピングを受けにくい上側壁部31Bの水平面に対する傾斜角度を下側傾斜部31Cの水平面に対する傾斜角度よりも大きくすることで、フロアパネル14の強度・剛性を確保するように構成している。
【0026】
図2及び図4に示されるように、補強用ビード30の屈曲部31Aは、車両側面視において、タイヤ50の接地点52(タイヤ50の中心点から接地面(路面)54に垂直方向に下ろした点)と、補強用ビード30の前側壁30Aの下端の角部30D(前側壁30Aとフロア面14Aが形成する角部30D)とを結ぶ直線56(図2中の直線56A、56B、56C)を設定したとき、直線56(図2中の直線56A、56B、56C)の延長線と後側壁30Cとの交点より車両上方に形成されている。すなわち、上記直線56(図2中の直線56A、56B、56C)の延長線はチッピング軌跡を示しており、補強用ビード30の屈曲部31Aを直線56(図2中の直線56A、56B、56C)の延長線と後側壁30Cとの交点より車両上方に形成することで、チッピングを受け易いチッピング軌跡より下方の下側傾斜部31Cの水平面に対する傾斜角度を緩やかにし、チッピングに対する衝突角度を小さくするように構成している。なお、補強用ビード30の屈曲部31Aは、上記直線56(図2中の直線56A、56B、56C)の延長線と後側壁30Cとの交点に形成してもよい。
【0027】
また本実施形態では、図4に示されるように、直線56は、空車状態のタイヤ50の接地点52と補強用ビード30の前側壁30Aの下端の角部30Dとを結ぶように設定している。接地面54に対してフロアパネル14の高さが高くなる空車状態において、上記直線56を設定し、屈曲部31Aを直線56の延長線と後側壁30Cとの交点より車両上方に形成することで、少なくとも運転者が乗り込んだ車両走行状態でフロアパネル14の高さが空車状態より低くなっても、下側傾斜部31Cが必ずチッピング軌跡より車両下方となるように構成している。
【0028】
図3(B)に示されるように、補強用ビード30の上面部30Bは、車両背面視(車両前後方向視)において、フロア面14Aに対して車両幅方向中央部の高さが車両幅方向両端部よりも高くなるように形成されている。強度・剛性の面で最も不利となるリインフォース18とアンダーリインフォース20との車両幅方向中央部付近(補強用ビード30の車両幅方向中央部付近)において、補強用ビード30の上面部30Bの高さを最も高くすることで、フロアパネル14の強度・剛性を向上させるようにしている。
【0029】
次に、本実施形態の作用並びに効果について説明する。
【0030】
フロアパネル14に形成された補強用ビード30の後側壁30Cは、屈曲部31Aより車両下側の下側傾斜部31Cの水平面に対する傾斜角度が、屈曲部31Aより車両上側の上側壁部31Bの水平面に対する傾斜角度よりも小さく形成されている。すなわち、チッピングを受け易い補強用ビード30の後側壁30Cの下側傾斜部31Cの水平面に対する傾斜角度を上側壁部31Bの水平面に対する傾斜角度よりも緩やかにして、チッピングに対する衝突角度(小石等が直撃する角度)を小さくすることで、チッピングによる下側傾斜部31Cの傷付きや塗装はがれの発生を抑制することができる。これと共に、チッピングを受けにくい後側壁30Cの上側壁部31Bは、水平面に対する傾斜角度を下側傾斜部31Cの水平面に対する傾斜角度より大きくすることで、フロアパネル14の強度・剛性を確保することができる。従って、フロアパネル14の強度・剛性の確保と耐チッピング性能の向上とを両立させることができる。
【0031】
また、図2及び図4に示されるように、車両側面視において、補強用ビード30の屈曲部31Aは、タイヤ50の接地点52と補強用ビード30の前側壁30Aの下端の角部30Dとを結ぶ直線56(図2中の直線56A、56B、56C)の延長線(チッピング軌跡)と、後側壁30Cとの交点より車両上方に形成されており、チッピングを受け易いチッピング軌跡より下方の下側傾斜部31Cの水平面に対する傾斜角度を上側壁部31Bの水平面に対する傾斜角度よりも緩やかにしている。これによって、下側傾斜部31Cのチッピングに対する衝突角度を小さくすることができ、チッピングによる下側傾斜部31Cの傷付きや塗装はがれの発生をより効果的に抑制することができる。
【0032】
また、図4に示されるように、直線56(図2中の直線56A、56B、56C)は、空車状態のタイヤ50の接地点52と補強用ビード30の前側壁30Aの下端の角部30Dとを結ぶように設定されており、接地面54に対するフロアパネル14の高さが高くなる空車状態において、屈曲部31Aを上記直線56の延長線と後側壁30Cとの交点より車両上方に形成している。これによって、少なくとも運転手が乗り込んだ車両走行状態では、屈曲部31Aより下方の下側傾斜部31Cをチッピング軌跡より下方とすることができる。すなわち、少なくとも運転手が乗り込んだ車両走行状態では、接地面54に対するフロアパネル14の高さが空車状態よりも低くなるため、空車状態の条件で形成した屈曲部31Aより下方の下側傾斜部31Cは、必ずチッピング軌跡より車両下方となる。
【0033】
さらに、図3(B)に示されるように、補強用ビード30の上面部30Bは、車両背面視(車両前後方向視)において、フロア面14Aに対して車両幅方向中央部の高さが車両幅方向両端部よりも高くなるように形成されており、強度・剛性の面で最も不利となるリインフォース18とアンダーリインフォース20との車両幅方向中央部付近(補強用ビード30の車両幅方向中央部付近)において、補強用ビード30の上面部30Bの高さが最も高くなる。これによって、フロアパネル14の強度・剛性をより効果的に向上させることができる。
【0034】
図6には、比較例に係る車両フロア構造100が示されている。図6に示されるように、車両フロア構造100では、フロアパネル102に車両幅方向に沿って車両上向きに凸となる補強用ビード104が設けられている。この補強用ビード104は、車両前方側に配置されて車両後方へ向かって上り勾配となる前側壁104Aと、前側壁104Aの上端に形成された頂部104Bと、頂部104Bから車両後方へ向かって下り勾配となる後側壁104Cと、を備えている。後側壁104Cの水平面に対する傾斜角度は、前側壁104Aの水平面に対する傾斜角度よりも小さく形成されている。なお、後側壁104Cの車両上下方向中間部には、本実施形態のような屈曲部31Aは設けられていない。
【0035】
この車両フロア構造100では、後側壁104Cの水平面に対する傾斜角度は、前側壁104Aの水平面に対する傾斜角度よりも小さく形成されており、後側壁を前側壁104Aと前後対称に形成した場合に比べてチッピングに対する衝突角度(小石等が直撃する角度)が小さくなる。このため、チッピングによる後側壁104Cの傷付きや塗装はがれの発生を抑制することはできるが、水平面に対する傾斜角度の大きい前側壁104Aが車両前後の片側しかなく、フロアパネル102の強度・剛性が不足する可能性がある。
【0036】
本実施形態の車両フロア構造10と比較例の車両フロア構造100の検証実験として、補強用ビードに図示しないプッシュプルゲージを当てて荷重を作用させ、残留変位を測定した。その結果、比較例の車両フロア構造100では、補強用ビード104に約50Nの荷重を作用させたときに約1mmの残留変位が発生したのに対し、本実施形態の車両フロア構造10では、補強用ビード30に約50Nの荷重を作用させても残留変位は0mmとなることが確認された。
【0037】
なお、本実施形態では、車両側面視において、補強用ビード30の屈曲部31Aは、タイヤ50の接地点52と補強用ビード30の前側壁30Aの角部30Dとを結ぶ直線56(図2中の直線56A、56B、56C)の延長線と、後側壁30Cとの交点より車両上方に形成されているが、補強用ビード30の屈曲部31Aを直線56(図2中の直線56A、56B、56C)の延長線と後側壁30Cとの交点に形成しても、同様の効果が得られる。
【0038】
なお、上記実施形態では、補強用ビード30の上面部30Bは、車両幅方向中央部が車両上方に突出するように略円弧状に形成されているが、これに限定されず、車両背面視(車両前後方向視)において、補強用ビードの車両幅方向中央部の高さが最大となるような形状であればよい。例えば、補強用ビードの車両幅方向中央部が略三角形状に車両上方に突出する形状でもよい。また、補強用ビード30の上面部30Bは、強度・剛性の面で最も不利となるリインフォース18とアンダーリインフォース20との車両幅方向中央部における高さが最大となるように形成することが好ましい。
【0039】
また、本実施形態では、補強用ビード30は、車両前後にほぼ等間隔で配置されているが、補強用ビード30の車両前後の間隔(車両前後の距離)を変えてもよい。また、補強用ビード30の本数や長さは変更可能である。
また、補強用ビード30の前側壁30A、上側壁部31B、下側傾斜部31Cの水平面に対する傾斜角度は本発明の要旨を逸脱しない範囲で変更可能である。
【0040】
また、本実施形態では、車両前後方向に延在するリインフォース18とアンダーリインフォース20との間に、フロアパネル14の車両幅方向に沿って補強用ビード30を設けたが、これに限定されず、車両前後方向に延在する他の2本の骨格部材の間(例えば、アンダーリインフォース20とその車両幅方向外側に車両前後方向に沿って延在するロッカとの間)にフロアパネルの車両幅方向に沿って補強用ビード30を設けてもよい。
また、フロアトンネル(自体)を骨格部材と見なし、フロアトンネルと他の骨格部材の間に補強用ビードを設けてもよい。
【符号の説明】
【0041】
10 車両フロア構造
12 車両下部
14 フロアパネル
14A フロア面
16 フロアトンネル
18 リインフォース(骨格部材)
20 アンダーリインフォース(骨格部材)
30 補強用ビード
30A 前側壁
30B 上面部
30C 後側壁
30D 角部
31A 屈曲部
31B 上側壁部
31C 下側傾斜部
50 タイヤ
52 接地点

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両幅方向及び車両前後方向に沿って延在されるフロアパネルと、
前記フロアパネルに車両幅方向に沿って設けられ、車両上向きに凸となるように前側壁と後側壁とが形成された補強用ビードと、
前記補強用ビードにおける前記後側壁の車両上下方向の中間部に設けられた屈曲部と、
前記補強用ビードにおける前記後側壁の前記屈曲部より車両下側に設けられ、水平面に対する傾斜角度が前記屈曲部より車両上側となる上側壁部の水平面に対する傾斜角度より小さく形成された下側傾斜部と、
を有する車両フロア構造。
【請求項2】
車両側面視において、前記前側壁の下端と前記フロアパネルのフロア面が形成する角部と、タイヤの接地点とを結ぶ直線を設定したとき、前記屈曲部は前記直線の延長線と前記後側壁との交点、又は前記交点より車両上方に形成されている請求項1に記載の車両フロア構造。
【請求項3】
前記直線は、空車状態の前記前側壁の下端の前記角部と前記タイヤの接地点とを結ぶように設定されている請求項2に記載の車両フロア構造。
【請求項4】
前記補強用ビードは、前記フロアパネルの車両前後方向に沿って設けられた2本の骨格部材の間に配置されており、
前記補強用ビードの前記前側壁と前記後側壁との間の上面部は、車両背面視において、前記フロアパネルのフロア面に対して車両幅方向中央部の高さが車両幅方向両端部よりも高くなるように形成されている請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載の車両フロア構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−81800(P2012−81800A)
【公開日】平成24年4月26日(2012.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−227574(P2010−227574)
【出願日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】