説明

車両ポジティブ点火内燃機関用排気システム

車両のポジティブ点火内燃機関12用排気システムにおいて、前記エンジンから排出された排気ガスの粒子性物質を濾過するためのフィルタ20を含み、前記フィルタは入口表面と出口表面を有する多孔性基材を含み、前記入口表面は第1平均細孔サイズを有する細孔を含む多孔性構造により前記出口表面と分離され、前記多孔性基材は多数の固体粒子を含む三元触媒ウォッシュコートでコーティングされ、前記ウォッシュコートでコーティングされた多孔性基材の前記多孔性構造は、第2平均細孔サイズを有し、前記第2平均細孔サイズは、前記第1平均細孔サイズよりも小さく、前記三元触媒ウォッシュコートは前記フィルタの上流に位置する分離基材モノリス18上に形成され、前記上流側基材モノリス上の前記三元触媒ウォッシュコートの質量は、前記三元触媒ウォッシュコートの質量全体の75%以下である排気システム10。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両ポジティブ点火内燃機関の排気ガス内の粒子性物質(PM)を処理するための排気システムに関し、特に理論空燃比で作動するが、リーン燃焼ポジティブ点火エンジンでも適切なPM処理用のフィルタを備える排気システムに関する。
【背景技術】
【0002】
ポジティブ(電気)点火エンジンは、スパーク点火を利用して炭化水素と空気混合物を燃焼させる。反面、圧縮点火エンジンは炭化水素を圧縮空気に噴射することによって、炭化水素を燃焼させる。ポジティブ点火エンジンは、ガソリン燃料、メタノール及び/又はエタノールを含む酸素化物で混合されたガソリン燃料、LPG又はCNGを利用できる。
【0003】
三元触媒(TWC)は、1つ以上の白金族金属、特に白金、パラジウム及びロジウムからなる群より選択されたことを一般的に含む。
【0004】
三元触媒は、(i)一酸化炭素の二酸化炭素への酸化、(ii)燃焼されない炭化水素の二酸化炭素及び水への酸化、及び(iii)窒素酸化物の窒素及び酸素への還元、という3つの反応を同時に触媒作用を実行するものである。三元触媒は、リーン排気ガスからNOを吸着するように設計されていない。反応(i)-(ii)はTWCが理論空燃比の近くで作動するエンジンから排出される排気ガスを収容するとき、最も効率的に発生する。本発明の技術分野でよく知られているように、ガソリン燃料がポジティブ点火(例えば、スパーク点火)内燃機関で燃焼される際に排出される一酸化炭素(CO)、燃焼されない炭化水素(HC)及び窒素酸化物(NO)の量は、燃焼シリンダ内での空燃比により大部分影響を受ける。化学量論的に安定した組成を有する排気ガスは、酸化ガス(NOとO)と還元ガス(HCとCO)の濃度が実質的に一致する。化学量論的に安定した排気ガスの組成を生産する空燃比は、一般的に14.7:1で与えられる。
【0005】
理論的には、化学量論的に安定した排気ガスの組成でO、NO、CO及びHCをCO、HO及びN(及び残留O)に完全に変換させることが可能でなければならず、これがTWCの役割である。従って、理想的にはエンジンがこのような方式で作動して燃焼混合物の空燃比が化学量論的に安定した排気ガスの組成を生産しなければならない。
【0006】
排気ガスの酸化ガスと還元ガス間の組成的なバランスを定義する方法として、式(1)のように定義され得る排気ガスのラムダ(λ)値が挙げられる。

実際のエンジン空燃比/理論エンジン空燃比 (1)

ここで、1のラムダ値は化学量論的に安定した排気ガスの組成を示し、1より大きいラムダ値は過度なO及びNOを示し、組成は「リーン(lean)」と表現され、1より小さなラムダ値は過度なHCとCOを示し、組成は「リッチ(rich)」と表現される。一般的に空燃比によってエンジンが「理論空燃比」、「リーン」又は「リッチ」に作動し、空燃比に伴う排気ガスの組成により化学量論的に作動するガソリンエンジン又はリーン燃焼ガソリンエンジンがある。
【0007】
TWCを利用したNOのNへの還元は、排気ガスの組成がリーンであるとき、効率が低下する。同様に、TWCは排気ガスの組成がリッチであるとき、COとHCを酸化させることができない。それにより、TWC内に入る排気ガスの組成をできるだけ化学量論な組成に維持させることが課題となっている。
【0008】
もちろん、エンジンが定常状態であるとき、空燃比を理論空燃比にすることは相対的に容易である。しかし、エンジンが車両を推進させるとき、要求される燃料の量はドライバによりエンジンに加えられる荷重の要求によって過渡的に(transiently)変わる。これは三元転換(3-way conversion)による化学量論的な排気ガスが発生するように空燃比を制御することを特に困難にさせる。実際に、空燃比は、排気ガス酸素(EGO)(又はラムダ)センサから排気ガスの組成に関する情報を受けるエンジン制御ユニットにより制御される:いわゆる閉ループフィードバックシステムという。このようなシステムの特徴は、空燃比が若干リッチな化学量論的(又は制御設定)地点と若干リーンな地点との間で振動することにあるが、これは空燃比の調節と関連した時間の遅延のためである。このような振動は、空燃比の振幅と反応周波数(Hz)により特徴付けられる。
【0009】
一般的なTWCで活性成分は、高表面積の酸化物に支持された白金とロジウムと組み合わせられたパラジウム、又はパラジウム単独(ロジウムなし)のうちの1つ又は2つ、及び酸素貯蔵成分を含む。
【0010】
排気ガスの組成が設定ポイントに対して若干リッチであるとき、反応していないCOとHCを消費するための、即ち反応を更に化学量論的にさせるための少量の酸素が必要である。反対に、排気ガスが若干リーンであるときは、過度な酸素が消費される必要がある。これは振動時に酸素を放出又は吸収する酸素貯蔵成分の開発により達成された。TWCで最も一般的に用いられる酸素貯蔵成分(OSC)はセリウム酸化物(CeO)又はCe/Zr混合酸化物のようなセリウムを含有する混合酸化物である。
【0011】
一般的に、周辺のPMは空気動力学径(空気動力学径は、測定粒子と空気中で同一の沈降速度を有する1g/cm密度である球形の直径として定義される)によって次のようなカテゴリーに分類される。
(i)PM-10-粒子:空気動力学径が10μm未満
(ii)微粒子:空気動力学径が2.5μm未満(PM-2.5)
(iii)超微粒子:空気動力学径が0.1μm(又は100nm)未満
(iv)ナノ粒子:空気動力学径が50nm未満
【0012】
1990年代半ば以降、微粒子と超微粒子が健康に及ぼし得る悪影響により、内燃機関から排出された粒子に対する粒子サイズの分類が大きく注目を集めている。周辺空気でPM-10粒子の濃度は、米国で法律的に規制される。PM-2.5に対する新しく、追加的な周辺空気の質標準が、人の死亡と2.5μm未満の微粒子の濃度間において強い相互関係にあるという研究結果が1997年に米国で紹介された。
【0013】
現在は関心がディーゼル及びガソリンエンジンから発生するナノ粒子に移りつつあるが、これはナノ粒子がより大きいサイズの粒子よりも人の肺に、更に深く侵入することが知られており、2.5〜10.0μm範囲の粒子に関する研究結果に対する推定から結果として、より大きい粒子よりも更に危険であると認識される。
【0014】
ディーゼル粒子の大きさの分布は、粒子核形成(nucleation)と密集化メカニズムに対応する明確に確立した双峰(bimodal)の特徴を有するが、対応する粒子の形態がそれぞれ原子核(nuclei)モードと蓄積モードを有する(図1参照)。図1から分かるように、原子核モードで、ディーゼルPMは非常に小さな質量を有する多数の小さな粒子からなる。殆ど全てのディーゼル粒子は1μmよりも遥かに小さな大きさを有するが、即ち1997にUS法律に含まれる微粒子、超微粒子及びナノ粒子の混合物を含む。
【0015】
原子核モードの粒子は、大半が揮発性凝縮物(炭化水素、硫酸、硝酸など)からなり、粉塵と炭素のような小さな固形物質を含む。蓄積モードの粒子は凝縮物と混合された固体(炭素、金属性粉塵など)と吸着された物質(中質炭化水素)、硫黄種(sulfur species)、窒素酸化物派生物(nitrogen oxide derivatives)など)を含むことが理解される。コース(coarse)モードの粒子は、ディーゼルの燃焼過程で発生するものでないことが判断され、エンジンシリンダウォール、排気システム又は粒子サンプリングシステムからの粒子物質の堆積と後の再飛散(re-entrainment)のようなメカニズムを通じて形成され得る。これらのモード間の関係が図1に示されている。
【0016】
核形成粒子の組成は、エンジンの作動条件、環境的な条件(特に、温度及び湿度)、希釈(dilution)及びサンプリングシステムの条件によって変わり得る。実験と理論は、原子核モードの形成と成長の大部分が低希釈比(low dilution ratio)の範囲で発生するということを示す。この範囲で、中質炭化水素と硫酸のような揮発性粒子前駆体のガスに対する粒子の変換は原子核モードでの同時発生的な核形成及び成長と蓄積モードでの存在粒子上への吸着に繋がる。実験室テスト(例えば、SAE980525及びSAE2001-01-0201参照)は、原子核モードの形成が空気希釈温度を減少させながら、強く増加するが、湿気が影響を及ぼすかに対する矛盾した証拠があることを示す。
【0017】
一般に、低温、低希釈比、高湿度及び長い滞留時間は、ナノ粒子の形成と成長に影響を与える。研究によれば、非常に高い含有量で唯一の固相率の証拠として、ナノ粒子は中質炭化水素と硫酸のような揮発性物質からなる。
【0018】
対照的に、正常状態(steady state)動作でガソリン粒子のエンジン-アウト大きさの分布は、約60〜80nmのピークを有する単峰(unimodal)の分布を示す(SAE1999-01-3530の図4参照)。ディーゼル大きさの分布と比較すると、ガソリンPMは大部分無視する程度の蓄積とコースモードを有する超微粒子である。
【0019】
ディーゼル粒子フィルタでディーゼル粒子の粒子捕集は、多孔性障ウォールを利用して気相から気体に伝達された粒子を分離する原理に基づく。ディーゼルフィルタは、深層床濾過(deep−bed filter)及び/又は表面型フィルタ(surface-type filter)で定義され得る。深層濾過において、濾過材の平均細孔(pore:気孔、孔隙、間隙)サイズは、捕集された粒子の平均直径よりも大きい。粒子は、拡散堆積(ブラウン運動)、慣性堆積(インパクション)、流動-ライン遮断(ブラウン運動又は慣性)を含む深層濾過メカニズムの組み合わせを経て濾過材上に堆積される。
【0020】
表面型フィルタでは、濾過材の細孔直径がPMの直径よりも小さいため、PMはふるい分け(sieving)により分離される。分離は、捕集されたディーゼルPM自体のビルドアップ(buil-up)により完了し、ビルドアップは一般的に「濾過ケーキ(filtration cake)」と呼ばれ、その過程は「ケーキ濾過」と呼ばれる。
【0021】
セラミックウォールフローモノリスのようなディーゼル粒子フィルタは、深層又は表面濾過の組み合わせを通じて作用するものと考えられているが、濾過ケーキは深層濾過容量が飽和し、粒子層が濾過表面を覆い始めるとき、高いスート(soot:煤)荷重で成長する。深層濾過は、ケーキ濾過に比べて若干低い濾過効率と低い圧力低下の特徴を有する。
【0022】
WO03/011437は、排気ガスからPMを捕獲するための手段と排気ガス内の二酸化炭素及び/又は水分によるPMの酸化を促進させる触媒を含む排気システムを備えるガソリンエンジンを開示しており、触媒は支持されたアルカリ金属を含む。PM捕獲手段は10〜100nm範囲の粒子のPMを捕獲するのに適切であり、触媒でコーティングされたコーディエライトのような適切な細孔サイズのセラミック物質で製造されたウォールフローフィルタ、触媒を支持する金属酸化物フォーム、ワイヤーメッシュ、ディーゼル用に設計されたディーゼルウォールフローフィルタ、電気泳動(electrophoretic)トラップ又はサーモフォレティック(thermophoretic)トラップ(GB-A-2350804)であり得る。
【0023】
WO2003/136232 A1は、多孔性セルウォール基礎物質からなるセルウォールを有するハニカムフィルタを含み、流入側にのみ又は流入及び流出側に表面層が備えられ、以下の(1)〜(5)の条件を満たすディーゼル粒子フィルタを開示している。(1)表面層の最大細孔径がセルウォール基礎物質の平均細孔径以下であり、表面層の細孔率はセルウォール基礎物質よりも大きい。(2)表面層に対して、最大細孔径は0.3〜20μmであり、細孔率は60〜95%である(水銀圧入法(mercury penetration method)を利用して測定)(3)表面層の厚さL1はセルウォール厚さL2の0.5〜30%である。(4)濾過面積当たりの表面層の質量は0.01〜6mg/cmである。(5)セルウォール基礎物質に対して、平均細孔直径は10〜60μmであり、細孔率は40〜65%である。SAE論文番号2009-01-0292参照。
【0024】
気相からガソリンPMを分離するために、本技術分野で提案される他の技術はボルテックスリカバリを含む。
【0025】
2014年9月1日から適用される欧州の排気ガス法律(ユーロ6)は、ディーゼル及びガソリン(ポジティブ点火)乗用車の何れもから排出される粒子の数を規制する。ガソリンEUライトデューティー自動車(light duty vehicle)の場合、許容限界は次の通りである。一酸化炭素は1000mg/km、窒素酸化物(NO)は60mg/km、全体炭化水素は100mg/km(このうち、非メタン炭化水素は68mg/km以下)、粒子性物質((PM)直接噴射エンジンの場合にのみ)は4.5mg/km。たとえ、当局はユーロ6に対するPM数の基準をまだ設定していなくても、1km当たりに6.0×1011に設定されることが一般的に考えられている。本明細書は、この数字が適切な時に採択されるという仮定に基づく。
【0026】
米国では、まだ類似する排気ガスの基準が定められていない。しかし、カリフォルニア大気資源委員会(CARB:California Air Resource Board)は、最近「予備論議論文‐基準汚染源に対するカリフォルニア低公害車両(LEV:Low-Emission Vehicle)法規の修正−LEVIII」(2010年2月8日発表)というタイトルの論文を発表したが、ここには2〜4mg PM/mile(1.25-2.50mg PM/km(現在は10mg PM/mile(6.25mg PM/km))の新しいPM基準が提案され、「スタッフは粒子フィルタを使用せず、ガソリン直接噴射エンジンに対して3mg PM/mile(1.88mg PM/km)の基準が満たされ得るという提案を多数の製造会社から受けた」と記載されている。また、この論文はPM質量と排気ガスの数は互いに関連するものと見られるので、「たとえ、義務的な数字基準がここで考慮されていなくても、約1012粒子/mile[6.2511粒子/km]の選択的なPM数の基準が考慮され得る(これはPM質量基準の代りに製造会社により選択され得る)」と記載している。しかし、PM基準もPM数の基準もCARBによりまだ設定されていないため、カリフォルニア自動車市場又は米国自動車市場で一般的に粒子の濾過が必要であるか否かが分かることはまだ早い。それにも拘わらず、ある製造会社は最終的にいかなる基準が設定されても、その基準を満足させるために選択されたいかなるポジティブ点火エンジンの設計選択に対しても、安全余裕を提供するためのフィルタを選択するはずである。
【0027】
新しいユーロ6排気ガスの基準は、ガソリン排気ガスの基準を満足させるために解決しなければならない様々な設計上の問題を提供する。特に、EUドライブサイクルで最大のオン(on)-サイクル背圧により測定されたのと同じ許容可能な背圧で何れもガソリン(ポジティブ点火)排気ガスのPM数を低減しながら、同時に窒素酸化物(NO)、一酸化炭素(CO)及び燃焼していない炭化水素(HC)の1つ以上のような非PM汚染物質に対する排気ガスの標準を満足させるためのフィルタ又はフィルタを含む排気システムを設計する方法である。
【0028】
ユーロ6PM数の基準を満足させる三元触媒粒子フィルタに対する最小粒子の減少は、等価の流動触媒に対して50%以上である。追加的に、三元触媒ウォールフローフィルタの等価の流動触媒に対する若干の背圧の増加が必然的であるが、経験的に大部分の乗用車でMVEG-Bドライブサイクルに対する最大の背圧(「フレッシュ」から3回のテストに対する平均)は、180mbar未満又は150mbar未満のような200mbar未満、好ましくは120mbar未満(例えば、100mbar未満)に制限されなければならない。
【0029】
前述したように、ポジティブ点火エンジンにより発生したPMは、非常に高い比率の超微粒子を有し、ディーゼル(圧縮点火)エンジンにより発生したものに比べて無視する程度の蓄積及びコースモードを有するが、これはポジティブ点火エンジン排気ガスからPMを除去して大気に排出されるのを防止しなければならないという課題を与える。特に、ポジティブ点火エンジンから発生する大部分のPMは、ディーゼルPMの大きさ分布に比べて相対的に小さいため、ポジティブ点火PM表面型ケーキ濾過を促進するフィルタを使用することは実質的に不可能であるが、これはフィルタ基材の相対的に小さな平均細孔サイズがシステムであまりにも高い背圧を発生させるおそれがあるためである。
【0030】
また、ポジティブ点火エンジンから発生したPMの表面型濾過を促進させて関連する排気ガスの標準を満たすために、ディーゼルPM捕獲用に設計された従来のウォールフローフィルタを使用することは一般的に不可能であるが、これはポジティブ点火排気ガス内に一般的に、より少ないPMが存在し、スートケーキが少なく形成され、ポジティブ点火排気ガスの温度が一般的に更に高いため、酸化によるPMの迅速な除去に繋がり、ケーキ濾過による増加したPMの除去を妨げるためである。従来のディーゼルウォールフローフィルタでポジティブ点火PMの深層濾過も難しいが、これはPMがフィルタ濾過材の細孔サイズよりも非常に小さいためである。従って、正常作動で、コーティングされていない従来のディーゼルウォールフローフィルタは、ポジティブ点火エンジンと用いられるとき、圧縮点火エンジンよりも更に低いフィルタ効率を有する。
【0031】
他の困難は、許容可能な背圧で非PM汚染物質に対する排気ガスの標準を満たすための触媒のように、ウォッシュコート含有量と共に濾過効率を組み合わさせることである。近年、商業的に利用可能な車両でディーゼルウォールフロー粒子フィルタは、平均約13μmの細孔サイズを有する。しかし、発明者は必要なガソリン(ポジティブ点火)排気ガス基準を達成するために、US2006/0133969に記載されたように、十分な触媒含有量でこのような形態のフィルタをウォッシュコートすることは許容され得ない背圧を招くおそれがあることを見つけた。
【0032】
フィルタ背圧を低減するために、基材の長さを減少させることが可能である。しかし、フィルタの長さが減少することによって背圧は、制限された水準下で増加する。本発明に係るフィルタのための適切なフィルタ長さは2〜12インチ、好ましくは3〜6インチである。断面は原形であり得、本発明者の開発事業では4.66及び5.66インチの直径を有するフィルタを用いた。しかし、断面はフィルタの設置のために必要な車両の空間に左右される。従って、いわゆる隣接結合位置(例えば、エンジン排気マニホールド50cm以内)に位置するフィルタに対して楕円形又は卵形の断面空間を有し得る。予想するには、背圧もウォッシュコート含有量及びスート含有量と共に増加する。
【0033】
ユーロ6排気ガスの基準を満足させるために、近年、TWCをフィルタと結合させるための多くの努力が続けられてきた。
【0034】
US2009/0193796は、炭化水素、一酸化炭素、窒素酸化物及び粒子を処理するために、ガソリン直接噴射エンジンの下流に位置する排気ガス処理システムを開示しているが、この排気ガス処理システムは、粒子トラップ上にコーティングされるか、その内部に形成された三元触媒(TWC)を備える触媒粒子トラップを含む。説明によれば、TWCコーティング粒子トラップは、第1TWC触媒の下流側に位置し得、第1TWC触媒は粒子トラップ上にコーティングされたTWCの機能により要求されるものよりも小さくなり得る。第1TWCと下流のTWCコーティング粒子トラップを何れも備える排気システムの具体的な例は記載されていない。
【0035】
WO2009/043390は、フィルタ成分と2層からなる触媒作用で活性であるコーティングを含む触媒作用で活性である粒子フィルタを開示する。第1層は流入排気ガスと接触し、第2層は流出排気ガスと接触する。2層とも酸化アルミニウムを含む。第1層はパラジウムを含み、第2層はロジウムに追加された酸素-貯蔵混合セリウム/ジルコニウム酸化物を含む。例えば、不特定の平均細孔サイズのウォールフローフィルタ基材は、約31g/lの含有量で第1層にコーティングされ、約30g/lの含有量で第2層にコーティングされる。即ち、ウォッシュコート含有量は、約1.00g in-3である。大部分の車両分野で、このようなコーティングフィルタだけでは必要な排気ガス基準を満足させることができないと判断される。明細書は、触媒作用で活性である粒子フィルタを含む主に理論空燃比の混合気で作動する燃焼機関の排気ガスの浄化用排気ガス制御システムを開示している。WO‘390には排気ガス制御システムが流動-貫通基材モノリス上に配置され、触媒作用で活性である粒子フィルタの上流側に位置する分離されたTWCと組み合わせられて使用され得るということに関するいかなる提案や暗示もない。
【0036】
GB2468210は、ポジティブ点火エンジンから排出された排気ガスから粒子性物質(PM)を濾過するためのフィルタを開示しており、このフィルタは入口表面と出口表面を有する多孔性基材を含み、前記入口表面は第1平均細孔サイズの細孔を有する多孔性構造により前記出口表面と分離され、前記多孔性基材は多数の固体粒子を含むウォッシュコートでコーティングされ、前記ウォッシュコートされた多孔性基材の前記多孔性構造は第2平均細孔サイズの細孔を有し、前記第2平均細孔サイズは前記第1平均細孔サイズよりも小さい。実施形態において、前記ウォッシュコートは触媒作用し、特定の実施形態における前記触媒はTWCである。
【0037】
ポジティブ点火内燃機関からの粒子性物質を濾過するためのフィルタに対する実質的な困難は、乗用車における空間が制限され得、フィルタが車両の下部に吊られているクーラ内に位置(いわゆる、「アンダフロア」位置)しなければならないこともあり得るということである。しばしば、フィルタをエンジンマニホールドに近接した(いわゆる「近接-結合」位置)高温の位置に位置させる空間が車両に十分ではなく、とにかく相対的に高いフィルタの熱質量は触媒がエンジンコールド-スタートに次いで、十分に速く「ライトオフ」されるのを防ぐ。これは、定められたドライブサイクルにかけて法律が車両排気ガスを評価することであるため、重要である。大部分のポジティブ点火エンジン車両の汚染性排気ガスは、コールド-スタートに次いで、最初の数秒内にテストサイクルで発生する。万が一、TWCがコールド-スタートに次いで、十分に速く活性されなければ、これは全体的にドライブサイクルにかけて関連した排気ガス標準の通過と失敗間の差を招くおそれがある。
【0038】
「ライト-オフ」は、触媒が好ましい転換活性で反応を促進させる温度として定義され得る。例えば、「CO T50」は特定の触媒が少なくても50%の効率で供給ガス内の一酸化炭素をCOのようなガスに変換させる温度である。同様に、「HC T80」はオクタン又はプロパンのような炭化水素が少なくても80%の効率で、例えば水蒸気やCOに変換させる温度である。
【0039】
従って、実際に現在販売されている車両ポジティブ点火エンジン用排気システムは、近接結合位置に位置する流動-貫通モノリス基材を含む相対的に低い熱質量TWCを備える。
【0040】
しかし、本発明の発明者らは、TWCで触媒作用するフィルタが車両のアンダフロアと商業的に利用可能な近接-結合された(流動-貫通)TWCの下流側に位置するとき、フィルタの温度はテストサイクル又は実際のドライブ条件で粒子性物質を燃焼させることは明確に不十分である。初期にはポジティブ点火PMが酸素でディーゼルPMよりも低い温度で燃焼されると提案された。しかし、本発明の発明者らは、ポジティブ点火エンジンからの粒子性物質を燃焼させるために、500℃を超えるフィルタ温度が必要であるということを見つけた。フィルタの温度を増加させたり、電気的に加熱されたフィルタの触媒のような他の手段を用いるために、シリンダ内の燃料噴射器のエンジン制御部を通るか、排気ガス内に直接炭化水素を排気ガス内に間欠的に追加で噴射することが可能である。しかし、このような方法は費用が多くかかり、技術的に複雑であり、窮極的に燃料消費を増加させるため、ドライバには不利益に作用する。
【0041】
これから、本発明の発明者らは驚いたことにも、フィルタ温度を増加させるために炭化水素を追加的に噴射させるのと同様の方式でフィルタ温度が法律で定められたドライブサイクルの少なくとも一部区間に粒子性物質を被動的に燃焼させたり、少なくとも活動的な介入周期を非常に低減させるのに十分な温度を維持する車両ポジティブ点火内燃機関用排気システムを設計することが可能であるということを見つけた。
【0042】
一側面によれば、本発明は、車両ポジティブ点火内燃機関用排気システムを提供するが、前記システムは、前記内燃機関から排出された排気ガスの粒子性物質を濾過するためのフィルタを含み、前記フィルタは入口表面と出口表面を有する多孔性基材を含み、前記入口表面は第1平均細孔サイズの細孔を有する多孔性構造により前記出口表面と分離され、前記多孔性基材は多数の固体粒子を含む三元触媒ウォッシュコートでコーティングされ、前記ウォッシュコートされた多孔性基材の前記多孔性構造は第2平均細孔サイズを含み、前記第2平均細孔サイズは前記第1平均細孔サイズよりも小さく、三元触媒ウォッシュコートが前記フィルタの上流側に分離された基材モノリス上に配置され、前記上流側基材モノリス上の三元触媒ウォッシュコートの質量は、前記システムで三元触媒ウォッシュコートの質量全体の75%以下である。
【0043】
本発明が行える3つの方法は、第一に、車両スパーク点火エンジン用排気システムで上流基材モノリスとして一般的に用いられるものよりも更に小さな体積の基材を使用するが、一般的に用いられるウォッシュコートの含有量、即ち、単層又は多層構造として全体約3gin-3よりも大きいウォッシュコート含有量の同一のTWCを使用することを含む。現在、用いられる上流側基材モノリスはエンジン排気量の60〜100%であり、従ってエンジン排気量の60%未満(例えば、55%未満、50%未満又は45%未満)の約3gin-3よりも大きいウォッシュコートの含有量でコーティングされた基材モノリスは、本発明で適用される触媒作用された上流側基材モノリスの説明に役立つ実施例である。前記上流側基材モノリスが2つの部分(上流側部分と下流側部分)を含むことが可能であるが、各部分は他のウォッシュコート含有量、貴金属含有量及び/又は体積を有する。後者の2つの部分の概念も本発明の範囲に属する。
【0044】
このような最初の配置において、前記上流側基材モノリスの軸方向の長さは、時々、この分野で「スライス」と呼ばれ、三元触媒フィルタ基材上に相対的に高いウォッシュコート含有量で組み合わせられた商業的に利用可能な近接-結合基材モノリスよりも短くなり得る。
【0045】
第二に、上流側基材モノリスは、車両スパーク点火エンジン用排気システムで一般的に用いられる上流側基材モノリスの大きさと同一であるか、類似し得る。即ち、エンジン排気量の60〜100%であるが、用いられたウォッシュコート含有量は一般的な上流側基材モノリスとして用いられるものよりも小さいため、単層又は多層構造で全体的に2.75gin-3未満、2.5gin-3未満又は2gin-3未満のような3gin-3未満である。
【0046】
第三に、前記上流側基材モノリスとして用いるためのTWCは、車両スパーク点火エンジン用排気システムで使用するための一般的なものよりも本質的に不十分な活性のウォッシュコートであり得、より低い白金族金属含有量を有するか、2以上の白金族金属が用いられる場合、1つ以上の白金族金属の重量比は1つ以上の他の白金族金属に比べて更に低く、又はその組み合わせは更に低い酸素貯蔵活性度(例えば、セリウムとジルコニウムに基づく混合酸化物の低い含有量)を有し得る。
【0047】
もちろん、前記3つの選択において2つ以上で若干の変更がなされることもあり得る。
【0048】
実施形態において、前記上流側基材モノリス上のTWCウォッシュコートの質量は、システムでTWCウォッシュコート質量全体の70%以下(例えば、65%以下、60%以下又は55%以下)である。
【0049】
本発明は、前記上流側TWCの効率性を若干低下させることによって、十分な汚染物質(CO、燃焼されていない炭化水素、NOなど)が三元触媒フィルタと接触するように抜け出せないという発見に基づく。三元触媒フィルタで残っている汚染物質に対する触媒作用による転換はフィルタ温度を増加させる発熱を発生させ、フィルタで粒子性物質を燃焼させるのに十分にフィルタ温度を上昇させる。前記の論議から近接-結合TWCは、コールドスタート後にできるだけ、迅速、かつ、効率的に汚染物質を処理するように設計されるため、このような配置は、本技術分野において企業標準とは反直感的であることが明白である。このような原理の効果は、コンピュータモデリング(実施形態8参照)により実証され得る。
【0050】
本発明は、前記上流側基材モノリスを十分な反応ガスを通過させて下流に位置する三元触媒フィルタが一般的に製造された近接-結合TWCに対して、400℃のフィルタ入口ガス温度に対して、例えば50℃を超えるように増加するように設計されるものと定義されたように、機能的に定義されることもでき、前記上流側基材モノリスのTWCは75%未満、70%未満、65%未満又は60%未満のように80%未満で汚染物質転換するように設計される。前記の他の定義が何れも先行技術をより一層明示的に区別するために主張された定義を補完できることが理解できるだろう。
【0051】
前記フィルタの上流に位置する前記分離された基材モノリスは、好ましくは流動-貫通基材モノリス(例えば、セラミック又は金属構造からなる)である。しかし、流動-貫通モノリス以外の基材モノリスが部分フィルタ(例えば、WO01/080978又はEP1057519参照)のように、好ましい金属フォーム基材などとして使用され得る。
【0052】
前記上流側基材モノリス上のTWCウォッシュコートの質量は、システムでTWCウォッシュコートの質量全体に比例することが理解され得るだろう。これはフィルタに追加された2つ以上の基材モノリスは、TWCウォッシュコートを含む装置を利用するように意図される。しかし、好適な実施形態において、上流側基材モノリス上のTWCウォッシュコートの質量は、フィルタのTWCウォッシュコートと上流側基材モノリスの質量全体に比例すると定義される。
【0053】
本発明のこのような側面で使用するためのポジティブ点火エンジンは、ガソリン燃料、メタノール及び/又はエタノールを含む酸素化物と混合されたガソリン燃料、LPG又はCNGを使用できる。
【0054】
初期に、本発明は、ポジティブ点火エンジン排気ガスの粒子数を30%(例えば、50%、80%、90%)以上、許容可能な背圧で低減できる。
【0055】
平均細孔サイズは、水銀細孔率の測定により決定され得る。
【0056】
本発明で使用するためのフィルタは、実質的に基材の細孔率に独立的であるという長所を提供できる。細孔率は、多孔性基材において空き空間の割合であって、排気システムの背圧と関連するが、一般的に、細孔率が低いほど背圧は高くなる。しかし、本発明で使用するためのフィルタの細孔率は、一般的に40%又は50%を超え、50〜65%又は55〜60%のような45〜75%の細孔率が有利に使用され得る。前記ウォッシュコーティングされた多孔性基材の平均細孔サイズは、濾過のために重要である。従って、平均細孔サイズが大きいため、質の悪いフィルタである相対的に高い細孔率の多孔性基材を有し得る。
【0057】
前記多孔性基材は、焼結金属のような金属、又は炭化ケイ素、コーディエライト、窒化アルミニウム、窒化ケイ素、チタン酸アルミニウム(aluminium titanate)、アルミナ、ムライト(mullite)(例えば、針状の(acicular)ムライト(例えば、WO01/16050参照))、ポルサイトなどのようなセラミック、Al/Fe、Al/Ni又はBC/Feのようなサーメット又はこれらのうち2つ以上の部分を含む複合材料であり得る。好適な実施形態において、前記フィルタは、多数の入口チャネルと多数の出口チャネルを有するセラミック多孔性フィルタを含むウォールフローフィルタであり、各入口チャネルと各出口チャネルは多孔性構造のセラミックウォールによる部分で定義され、入口チャネルのそれぞれは、多孔性構造のセラミックウォールにより出口チャネルと分離される。このようなフィルタの配置は、SAE810114にも開示されており、より詳細な説明のために、ここで参照され得る。これとは異なり、フィルタはフォーム又はEP1057519又はWO01/080978に開示されたのと同一の、いわゆる部分フィルタであり得る。
【0058】
ディーゼルに適用するためのウォールフローフィルタをコーティングする目的は、本発明のそれと一般的に異なる。ディーゼルでは、ウォッシュコートが触媒成分を、NOをNOに酸化させるための触媒のようなフィルタ基材に案内するために用いられるが、スートが蓄積されることによって背圧を避けなければならないという大きな問題がある。従って、好適な触媒活性度と許容可能な背圧との間でバランスが崩れる。対照的に、本発明で使用するための多孔性基材をウォッシュコーティングする主な目的は、好ましい濾過効率と触媒活性度を何れも達成するためである。
【0059】
一実施形態において、第1平均細孔サイズ(例えば、前記多孔性フィルタ基材の多孔性構造の表面細孔)は、8〜45μm(例えば、8〜25μm、10〜20μm又は10〜15μm)である。特定の実施形態において、第1平均細孔サイズは、18μmを超える(例えば、15〜45、20〜45μm、20〜30μm、25〜45μm)。
【0060】
実施形態において、フィルタは0.5g in-3超過又は0.80g in-3以上(例えば、0.80〜3.00gin-3)のように0.25g in-3を超えるウォッシュコート含有量を有し得る。好適な実施形態において、前記ウォッシュコートの含有量は、1.2g in-3以上、1.5g in-3超過、1.6g in-3超過又は2.00g in-3超過又は例えば1.6〜2.4g in-3のように1.00g in-3を超えることができる。フィルタ平均細孔サイズとウォッシュコート含有量の特定の組み合わせにおいて、前記フィルタは許容可能な背圧で粒子濾過と触媒活性度の好ましい水準を組み合わせる。
【0061】
第1の好適な実施形態において、前記フィルタは表面ウォッシュコートを含むが、ウォッシュコート層は多孔性構造の表面細孔を実質的に覆い、前記ウォッシュコーティングされた多孔性基材の細孔は、ウォッシュコート内の粒子間の空間(粒子間細孔)で部分的に定義される。即ち、実質的にウォッシュコートがないことは多孔性基材の多孔性構造に入らない。表面コーティングされた多孔性フィルタ基材を製造する方法は、ポリマー(例えば、ポリビニルアルコール(PVA))を前記多孔性構造内に案内する段階と、前記ポリマーを含む前記多孔性フィルタ基材にウォッシュコートを塗布する段階と、乾燥させる段階と、前記コーティングされた基材をか焼して前記ポリマーを燃焼させる段階とを含む。第1実施形態の概略的な構成が図2Aに示されている。
【0062】
多孔性フィルタ基材をコーティングする方法は当業者に知られており、WO99/47260に記載された方法(即ち、モノリシック支持体をコーティングする方法)を制限なしに含み、(a)支持体の上部に密閉手段を位置させる段階、(b)液体成分の予め決定された量を前記密閉手段内に注入する段階((a)の後(b)又は(b)の後(a))(c)圧力又は真空を加えて、前記液体成分を前記支持体の少なくとも一部分に引き込み、前記支持体内で前記全ての量を実質的に維持する段階とを含む。このような工程段階は、選択的な燃焼/か焼による前記第1コーティングの乾燥に次いで、前記モノリシック支持体の他の端部から繰り返され得る。
【0063】
このような第1実施形態において、前記多孔性ウォッシュコートの平均粒子間細孔サイズは、0.1〜1.0μmのような5.0nm〜5.0μmである。
【0064】
このような第1の表面コーティング実施形態において、固体ウォッシュコート粒子のD90は、前記多孔性フィルタ基材の平均細孔サイズよりも更に大きくなり得、15〜30μm又は12〜25μmのように10〜40μmの範囲であり得る。ここで用いられる「D90」は、粒子の90%が特定された範囲内の直径を有するウォッシュコート内で粒子サイズの分布を定義する。これとは異なり、各実施形態において、固体ウォッシュコート粒子の平均大きさは1〜20μmの範囲内にある。ウォッシュコート内で粒子サイズの範囲が広いほど、ウォッシュコートが多孔性基材の多孔性構造に入りやすくなり得る。従って、「実質的にウォッシュコートのないものは、多孔性基材の多孔性構造に入らない」ということは、それにより解釈されるべきである。
【0065】
第2実施形態によれば、ウォッシュコートは入口及び/又は出口表面上にコーティングされ得、多孔性基材の多孔性構造内にも形成され得る。入口及び/又は出口表面で細孔の開口周囲を表面コーティングすることは(それにより、例えばベアフィルタ基材の表面細孔サイズを狭窄させる)実質的に細孔の体積を制限せず、PMを含む気相の相互作用を上昇させ、相当な背圧上昇が発生しないようにするものと考えられる。即ち、多孔性構造の表面における細孔は細孔の開口を含み、ウォッシュコートは全ての細孔の開口を実質的に狭窄(狭小)させる。第2実施形態の概略的な構成が図2Bに示されている。
【0066】
第2実施形態に係るフィルタの製造方法は、粘性と表面濡れ特性の調節と多孔性基材のコーティングに繋がる適切な真空適用を含む当業者に知られているウォッシュコートの適切なフォーミュレーションを含むことができる(WO99/47260参照)。
【0067】
第1、第2実施形態において、前記ウォッシュコートの少なくとも一部が前記多孔性基材の入口及び/又は出口表面上にコーティングされ、前記ウォッシュコートは前記入口表面、出口表面又は両方にコーティングされ得る。追加的に、前記入口と出口表面のうち少なくとも1つは多数のウォッシュコート層を含むことができ、前記多数の層内の各ウォッシュコート層は互いに同一であるか、異なり得るが、例えば、第1層の平均細孔サイズは第2層の平均細孔サイズと異なり得る。実施形態において、出口表面をコーティングするためのウォッシュコートは入口表面のためのものと同一である必要はない。
【0068】
入口及び出口表面の何れもコーティングされた場合に、前記ウォッシュコートフォーミュレーションは同一であるか、異なり得る。前記入口及び出口表面の何れもウォッシュコーティングされた場合に、入口表面のウォッシュコートの平均細孔サイズは出口表面のウォッシュコートの平均細孔サイズと異なり得る。例えば、入口表面のウォッシュコートの平均細孔サイズは、出口表面のウォッシュコートの平均細孔サイズよりも小さくなり得る。後者の場合に、出口表面のウォッシュコートの平均細孔サイズは、前記多孔性基材の平均細孔サイズよりも大きくなり得る。
【0069】
入口表面に塗布されたウォッシュコートの平均細孔サイズが多孔性基材の平均細孔サイズよりも大きくなり得るため、入口表面のウォッシュコートの多孔性基材よりも更に小さな細孔を有するウォッシュコートを備えて燃焼粉塵又は破片が多孔性構造に入るのを防止又は低減できる。
【0070】
第3実施形態によれば、前記ウォッシュコートは実質的に前記多孔性基材の多孔性構造の内部に形成される(即ち、浸透する)。第3実施形態の概略的な構成は、図2Cに示されている。第3実施形態に係るフィルタを製造する方法は、粘性の調節、低い濡れ特性の選択と前記多孔性基材のウォッシュコーティングに繋がる適切な真空適用を含む当業者に知られているウォッシュコートの適切なフォーミュレーションを含むことができる(WO99/47260参照)。これとは異なり、前記多孔性基材は適切な塩溶液に含浸処理されることができ、その後、乾燥し、か焼される。
【0071】
第2及び第3実施形態において、前記ウォッシュコートの少なくとも一部が前記多孔性構造内に形成され、前記固体ウォッシュコート粒子の大きさ(例えば、平均大きさ)は前記多孔性フィルタ基材の平均細孔サイズよりも小さくなり得る(例えば、1〜18μm、1〜16μm、2〜15μm又は3〜12μmのように0.1〜20μmの範囲)。特定の実施形態において、前記気体ウォッシュコート粒子の前述した大きさは、平均大きさの代わりにD90である。
【0072】
更なる特定の実施形態において、前記ウォッシュコートの表面細孔率は、その内部にボイド(void)を含むことによって増加される。このような特徴を有する排気ガス触媒は、例えばWO2006/040842及びWO2007/116881に開示されている。
【0073】
ここで、ウォッシュコート層の「ボイド」に対して、空間が固体ウォッシュコート物質で定義された層内に存在することを意味する。ボイドは、全ての空き空間、微細細孔、トンネル-状態(シリンダ、多面柱)、スリットなどを含むことができ、コーティングされたフィルタ基材のか焼(calcinations)中に燃焼される物質(例えば、細断綿布(chopped cotton)又は分解又は燃焼によるガスの形成により生成された細孔を招く物質)を前記フィルタ基材上にコーティングするためのウォッシュコート組成物を含むことによって形成され得る。ボイドが存在する所で、ボイドは多孔性ウォッシュコートの平均粒子間の細孔サイズと異なる。
【0074】
前記ウォッシュコートの平均ボイド比は5〜80%であり得るが、前記ボイドの平均直径は10〜250μmのような0.2〜500μmであり得る。
【0075】
本発明のフィルタとして用いるためのウォッシュコートは、三元触媒ウォッシュコートであり、三元触媒ウォッシュコートは炭化水素トラップ、NO吸収剤、酸化触媒、選択的触媒還元(SCR)用触媒、リーンNO触媒及びこれらのうち2つ以上の組み合わせからなる群より選択された他の触媒ウォッシュコートと組み合わせられて使用され得る。例えば、好適な実施形態において、入口表面はTWCウォッシュコートでコーティングされ得、出口表面はSCRウォッシュコートでコーティングされ得る。この配置で、エンジンの間欠的なリッチ作動は、出口表面上に配置されたSCR触媒でNOを還元するのに用いるためのアンモニアをTWC上で元の位置で発生させることができる。同様に、酸化触媒は炭化水素トラップの機能性を含むことができる。
【0076】
NO吸収剤、酸化触媒、炭化水素トラップとリーンNO触媒のような触媒ウォッシュコートは、1つ以上の白金族金属、特に白金、パラジウムとロジウムからなる群より選択されたものを含むことができる。
【0077】
NO吸収剤触媒(NACs)は、例えば米国特許第5,473,887号から分かり、リーン排気ガス(ラムダ>1)からの窒素酸化物(NO)を吸着し、排気ガスの酸素濃度が減少したとき、NOを脱着するように設計される。このために、NACsは相対的に高いアルカリ土類及び/又はアルカリ金属の含有量(例えば、800g/ft-3の次元)を含む。反面、TWCsはNOを吸着するように設計されないが、触媒促進剤(例えば、バリウム及び/又はストロンチウム)のようなアルカリ土類及び/又はアルカリ金属を含むことができる。TWCで促進剤として使用するためのアルカリ土類及び/又はアルカリ金属の総量は一般的に300gft-3未満(例えば、250gft-3、150gft-3、100gft-3又は50gft-3)である。脱着したNOは、NACそれ自体又はNACの下流側に位置するロジウムのような触媒成分により促進された適切な還元剤(例えば、ガソリン燃料)により、Nに還元され得る。実際には、酸素濃度の制御がNACの計算された残存NO吸着容量によって間欠的に好ましい酸化還元(redox)組成物で調節され得る(例えば、正常エンジン作動条件より更にリッチに(しかし、継続して化学量論的にリーン又はラムダ=1である組成)、理論空燃比又はリッチ(ラムダ<1))。酸素濃度は燃料流れ調節、追加の炭化水素燃料を排気ストローク中にエンジンシリンダに噴射、又はエンジンマニホールドの下流側で排気ガスに炭化水素燃料を直接噴射するなどの多様な手段により調節され得る。
【0078】
一般的なNACフォーミュレーションは、相当な量(即ち、TWCでの促進剤のような促進剤として使用するために必要なものより実質的に多い)の白金のような触媒酸化成分、バリウムのようなNO-貯蔵成分及びロジウムのような還元触媒を含む。このようなフォーミュレーションのためのリーン排気ガスからのNO-貯蔵用に一般的に与えられる1つのメカニズムは、次の通りである。

NO+1/2O→NO2 (2)及び
BaO+NO+1/2O→Ba(NO (3)

反応式(2)において、酸化窒素は白金上の活性酸化サイトで酸素と反応してNOを形成する。反応式(3)は、無機硝酸塩形態の貯蔵物質によるNOの吸着と関連する。
【0079】
低い酸素濃度及び/又は上昇した温度で、硝酸塩化学種(nitrate species)は熱力学的に不安定であり、分解されて下記反応式(4)によってNO又はNOを発生させる。適切な還元剤により、このような窒素酸化物は次いで還元触媒にかけて定着した一酸化炭素、水素及び炭化水素によりNに還元され得る(反応式(5)参照)。

Ba(NO→BaO+2NO+3/2O又はBa(NO→BaO+2NO+1/2O (4);及び
NO+CO→1/2N+CO (5)

(他の反応式はNH+NO→N+yHO又は2NH+2O+CO→N+3HO+COに繋がるBa(NO+8H→BaO+2NH+5HOなどを含む。)
【0080】
前記(2)〜(5)の反応式で、前記反応性の良いバリウム化学種は、酸化物として与えられる。しかし、空気の存在下で、大部分のバリウムは炭酸塩又は可能な水酸化物の形態である。当業者は、酸化物以外のバリウム種に対して前記反応体系を適応させることができる。
【0081】
酸化触媒は一酸化炭素の二酸化炭素への酸化と燃焼されていない炭化水素の一酸化炭素及び水への酸化を促進させる。一般的な酸化触媒は、高表面積支持体上の白金及び/又はパラジウムを含む。
【0082】
炭化水素トラップは一般的に分子体を含み、例えば、白金又は白金とパラジウムの組み合わせのような白金族金属により触媒作用を受けることもできる。
【0083】
SCR触媒は、耐火酸化物又は分子体上に支持されるCu、Hf、La、Au、In、V、ランタン族元素及びFeのように8族遷移金属のうち少なくとも1つからなる群より選択され得る。適切な耐火酸化物は、Al、TiO、CeO、SiO、ZrOとこれらのうち2以上を含有する混合酸化物を含む。非ゼオライト触媒は、タングステン酸化物(例えば、V/WO/TiO)を含むことができる。
【0084】
炭化水素-SCR触媒、DeNO触媒又は非選択的な触媒性反応触媒とも呼ばれるリーンNO触媒は、Pt/Al、Cu‐Pt‐、Fe-、Co-又はIr‐置換ZSM-5、H-ZSM-5又はH-Yゼオライトのように陽性子が加えられたゼオライト、ペロブスカイト(perovskite)及びAg/Alを含む。炭化水素(HC)による選択的触媒性反応(SCR)で、HCはOよりはNOと反応して式(6)によって窒素、CO及び水を形成する。

{HC}+NO→N+CO+HO (6)
酸素との競争、非選択的な反応は、式(7)の通りである。
{HC}+O→CO+H (7)
従って、優れたHC-SCR触媒は、反応式(7)よりも反応式(6)に対して更に選択的である。
【0085】
特定の実施形態において、SCR、炭化水素トラップとリーンNO触媒ウォッシュコートは、ポジティブ点火PMを捕獲するためのアルミノケイ酸塩ゼオライト又はSAPOのような少なくとも1つの分子体を含む。前記少なくとも1つの分子体は例えば、細孔性(small)、中孔性(medium)又は大孔性(large)細孔分子体であり得る。ここで、「細孔性分子体」とは、分子体がCHAのように8の最大リング大きさを有することを意味し、「中孔性分子体」はZSM-5のように分子体が10の最大リング大きさを有することを意味し、「大孔性分子体」はベータのように12の最大リング大きさを有することを意味する。細孔性分子体は、根本的にSCR触媒で使用するのに有利である(例えば、WO2008/132452参照)。
【0086】
本発明で適用される特定の分子体は、AEI、ZSM-5、ZSM-20、ZSM-34を含むERI、モルデナイト(mordenite)、フェリエライト(ferrierite)、ベータを含むBEA、Y、CHA、Nu-3を含むLEV、MCM-22及びEU-1からなる群より選択される。
【0087】
実施形態において、分子体は金属化されていないか、周期律表のIB、IIB、IIIB、VB、VIB及びVIII族からなる群より選択された少なくとも1つの金属で金属化され得る。金属化される場合に、金属はCr、Co、Cu、Fe、Hf、La、Ce、In、V、Mn、Ni、Zn、Gaと貴金属Ag、Au、Pt、Pd及びRhからなる群より選択され得る。このような金属化された分子体は還元剤を利用するポジティブ点火排気ガスで窒素酸化物の還元を選択的に促進させるための過程で使用され得る。ここで、「金属化」は、Feイン-フレームワーク(in-framework)ベータとCuインフレームワークのような分子体フレームワーク内に結合された少なくとも1つの金属を含む分子体を備えることを意味する。前述したように、還元剤が炭化水素である場合、前記過程は場合によって「炭化水素選択的触媒性還元(HC-SCR)」、「リーンNO触媒作用」又は「DeNO触媒作用」と呼ばれ、このために、金属はCu、Pt、Mn、Fe、Co、Ni、Zn、Ag、Ce、Gaを含む。炭化水素還元剤は、レイトポストインジェクション又はアーリーポストインジェクション(いわゆる、「after injection」)のようなエンジン制御技術により排気ガスに案内され得る。
【0088】
前記還元剤は、窒素性還元剤である場合に(いわゆる、「NH-SCR」)、好ましい金属は、Ce、Fe及びCuからなる群より選択される。適切な窒素性還元剤は、アンモニアを含む。アンモニアは元の位置で例えば、フィルタの上流側に位置するNACのリッチ再生期間又はTWCをエンジンから出たリッチ排気ガスと接触させることによって発生し得る(反応式(4)と(5)の代案参照)。これとは異なり、窒素性還元剤又は、その前駆体が排気ガス内に直接注入され得る。適切な前駆体は、ぎ酸アンモニウム(ammonium formate)、尿素(urea)及びカルバミン酸アンモニウム(ammonium carbamate)を含む。前駆体のアンモニアと他の副産物への分解は、熱水(hydrothermal)又は触媒加水分解により行われることができる。
【0089】
実際の使用においてディーゼルウォールフローフィルタのセル密度は、本発明で使用するためのウォールフローフィルタと異なり得るが、一般的に平方インチ当たり300セル(cpsi)以下(例えば、100又は200cpsi)であるため、相対的に大きいディーゼルPM成分がディーゼル粒子フィルタの固体前方領域と衝突しないながら、フィルタの入口チャネルに入ることができ、それにより、くっ付いて開口チャネルへの接近を防ぐようになるが、本発明で使用するためのウォールフローフィルタは、350cpsi、400cpsi、600cpsi、900cpsi、1200cpsiのように300cpsi以上であり得る。
【0090】
より高いセル密度を使用することによって、フィルタがディーゼル粒子フィルタに比べて減少した断面(例えば、直径)を持つという長所を有するようになるが、これは車両に排気システムを位置させるための設計オプションを増加させるという有用な長所となる。
【0091】
他の側面によれば、本発明は、本発明に係る排気システムを含むポジティブ点火エンジンとこのようなポジティブ点火エンジンを備える車両を提供する。好適な実施形態において、前記ポジティブ点火エンジンは直接噴射ポジティブ点火エンジンである。
【0092】
更に他の側面によれば、本発明は深層濾過によりポジティブ点火エンジンから出た排気ガスの粒子性物質(PM)を捕獲し燃焼させる方法を提供するが、前記方法は、前記PMを含む排気ガスを排気システムに案内する段階、PMを含む排気ガスを排気システム内で基材モノリス上に形成された三元触媒ウォッシュコートと接触させる段階、PMを含む排気ガスを前記三元触媒基材モノリスの下流に位置する排気システム内のフィルタと接触させる段階を含み、前記フィルタは入口と出口表面を有する多孔性基材を含み、前記入口表面は第1平均細孔サイズの細孔を有する多孔性構造により前記出口表面と分離され、前記多孔性構造は多数の固体粒子を含む三元触媒ウォッシュコートでコーティングされ、前記ウォッシュコーティングされた多孔性基材の多孔性構造は、第2平均細孔サイズの細孔を含み、前記第2平均細孔サイズは前記第2平均細孔サイズよりも小さく、前記基材モノリス上の三元触媒ウォッシュコートの質量は、前記排気システム内での三元触媒ウォッシュコート質量全体の75%以下である。
【0093】
本発明を更に十分に理解するために、添付の図面を参照する。
【0094】
図1は、ディゼルエンジンの排気ガス内のPMの大きさ分布を示すグラフである。比較のために、SAE1999-01-3530でのガソリン大きさの分布が図4に示されている。
【0095】
図2A-Cは、本発明に係るウォッシュコーティングされた多孔性フィルタ基材の3つの実施形態の概略的な構成を示す。
【0096】
図3は、多孔性フィルタ基材、多孔性ウォッシュコート層及び多孔性表面ウォッシュコート層を備える多孔性フィルタ基材の細孔サイズの分布に対する水銀細孔率測定の概略的なグラフである。
【0097】
車両ガソリン排気ガス後処理システムで使用するためのウォールフローフィルタ基材細孔サイズに対するコーティングされたウォールフローフィルタの適切性を示すウォッシュコート含有量の表である。
【0098】
図5は、本発明に係る排気システムの概略的な図面である。
【0099】
図2A-Cは、表面細孔12を含む多孔性フィルタ基材10を通る断面を示す。図2Aは、第1実施形態を示すが、多孔性表面ウォッシュコート層14が固体ウォッシュコート粒子、粒子がその間で細孔を形成する空間(粒子間細孔)を備える、。ウォッシュコート層14は、多孔性構造の細孔12を実質的に覆い、粒子間細孔16の平均細孔サイズは多孔性フィルタ基材10の平均細孔サイズ12よりも小さいことが分かる。
【0100】
図2Bは、入口表面16と追加的に多孔性基材10の多孔性構造12内にコーティングされたウォッシュコートを含む第2実施形態を示す。ウォッシュコート層14は、表面細孔12の細孔の開口を減少させ、コーティングされた多孔性基材の平均細孔サイズ18が多孔性フィルタ基材10の平均細孔サイズ12よりも小さいことが分かる。
【0101】
図2Cは、第3実施形態を示すが、ウォッシュコート14が実質的に多孔性基材10の多孔性構造12の内部に形成される。
【0102】
図3は、多孔性フィルタ基材20、多孔性ウォッシュコート層22及び表面ウォッシュコート層24を含む多孔性ディーゼルフィルタ基材の細孔サイズに対する細孔数に関するグラフを示すものである。フィルタ基材は、約15μmの平均細孔サイズを有することが分かる。ウォッシュコート層は、粒子内部細孔22A(ナノミリメートル側に位置)とマイクロメートル側に向かっている粒子間細孔22Bからなる双峰(bimodal)の分布を有する。多孔性フィルタ基材を本発明に係るウォッシュコートでコーティングすることによって、ベア(bare)フィルタ基材の細孔分布が粒子間ウォッシュコート細孔サイズの方向へ移動(矢印参照)することが分かる。
【0103】
図5は、車両ポジティブ点火エンジン12とこのための排気システム14を含む本発明に係る装置10を示す。排気システム14は、触媒後処理成分、即ちエンジンの排気マニホールドに近接して位置する(いわゆる、近接結合位置)不活性金属性流動貫通基材18上にコーティングされたPd-Rh-基盤TWCを連結する配管16を含む。近接結合された触媒18の次には下流側に、いわゆるアンダフロア位置で車両の下に吊られている平均細孔サイズが20μmのセラミックウォール-流動フィルタ20上に1.6gin-3でコーティングされたPd-Rh-基盤TWCがある。
【0104】
使用上、本システムはキー-オン(key-on)に次いで、活性温度に速く到達できる所に位置する近接-結合TWC18の低温ライト-オフ(light-off)活性度から利点を得る。しかし、燃焼していない炭化水素、一酸化炭素及び窒素酸化物を関連するユーロV排気ガスの基準を満足させる程度まで転換させるよりは、TWC18は一酸化炭素と燃焼していない炭化水素のような十分な燃焼可能な排気ガス成分を通過するように構成し、ユーロピアンMVEG-Bドライブサイクルのようなドライブサイクル中に連続的に、又は少なくとも1回、三元触媒ウォール-流動フィルタ20で通過した燃焼可能成分の後、転換が十分な熱を発生させてフィルタにホールドされた粒子性物質を燃焼させる。このような実施形態において、TWC18は、下流のTWCコーティングされたウォール-流動フィルタ20で使用されたのと同様に、完全に形成されたTWCでコーティングされた最大大きさの近接-結合基材モノリス体積(エンジン排気量の100%)を使用するように構成されるが、一般的に近接-結合TWCで使用されるよりは低いウォッシュコート含有量(例えば、2.0gin-3)が使用される。
【0105】
図5は、他の平均細孔サイズを有する3つのウォールフローフィルタのTWCに対するウォッシュコート含有量に関する研究の予備結果を示す表を表すものである。結果として、許容可能な背圧の幅及び13μmの平均細孔サイズのウォールフローフィルタと相対的に低いウォッシュコート含有量(0.4gin-3)の組み合わせをはじめとし、0.8g in-3〜1.6及び2.4g in-3の含有量を有する20μmと13μmの細孔サイズの基材、38μmと20μm平均細孔サイズの基材がある。
【0106】
しかし、1.6g in-3以上のウォッシュコート含有量が独立型物品で許容可能なTWC活性度のために好ましいということを示す。本発明は、十分なTWC活性度と背圧の相当な増加なしにも達成されるPM濾過の組み合わせを許容する。低い平均細孔サイズのウォールフローフィルタ基材で増加したウォッシュコートの含有量は、増加した背圧に耐えられる所でのみ使用され得る。図4を参照すれば、背圧の増加が許容され得るある分野で、13μm平均細孔サイズのウォールフローフィルタ基材が1.6g in-3のウォッシュコート含有量と共に組み合わせにより使用され得るが、触媒活性度、濾過及び背圧間の好ましい均衡を達成するために、20μm以上の平均細孔サイズと1.6g in-3以上の含有量が使用されることが好ましい。本発明の長所は、一般的に車両でアンダフロア又は近接-結合位置に位置する流動-貫通モノリス基材を含む最新のTWCが十分な三元活性を提供する本発明に係るフィルタに取って代わることができ、気体HC、CO及びNO排気ガスに対する法律要件を満たし、例えばユーロ6の基準による粒子数の基準を満足させることができるということにある。
【0107】
本発明に係るフィルタは、全体の排気システム後処理装置を提供するように他の排気システム後処理成分(例えば、フィルタ上流の低い熱質量TWC)及び/又は特定の要件に他の下流側の触媒成分(例えば、NOトラップ又はSCR触媒を含む基材モノリス)と組み合わせられて使用され得る。従って、相対的に低温であるオン-ドライブ(on-drive)サイクル排気ガス温度を発生させる車両ポジティブ点火部分で、本発明に係るフィルタの上流に位置する低い熱質量TWCを使用しようとする。車両リーン-燃焼ポジティブ点火部分で、NOトラップを含む基材モノリスの上流又は下流に位置する本発明に係るフィルタの使用を考慮する。
【0108】
TWCの追加された新しい要件は、有効寿命のための診断機能(いわゆる、「オンボード診断法」又はOBD)を提供するために必要なものである。OBDにおける問題は、TWCの不十分な酸素貯蔵能力により発生するが、これはTWCsに対するOBD過程が残っている触媒機能を診断するために残った酸素貯蔵容量を使用するためである。しかし、US2009/0193796とWO2009/043390に開示された特定の実施形態のように、万が一、フィルタにウォッシュコートが不十分に含まれていれば、OBDの目的のための正確なOSC「デルタ」を提供するのにOCSが十分でないこともあり得る。
【0109】
本発明を更に十分に理解できるように、次の実施形態が説明だけのために提供される。実施形態で例として挙げたウォッシュコート含有量は、前述したWO99/47260に開示された方法を利用して、ウォッシュコートの半分を一側端部からコーティングし、残りの半分を反対側の端部からコーティングすることによって(即ち、全体のウォッシュコートがフィルタの入口又は出口チャネルにのみコーティングされるのではなく、フィルタの入口と出口チャネルの何れにもコーティングされる)、得られる。
【0110】
実施形態1
2つのTWCコーティング物質が2.4g/inのウォッシュコート含有量及び85g/ftの貴金属含有量(Pd:Rh16:1)で製造された。1つは小さな粒子サイズ(D90<5μm)に粉砕されてウォールフローフィルタの多孔性構造内に通過すること(「イン-ウォール(in-wall)」)が予想され、もう1つは粉砕が不十分であり(D90<17μm)ウォールフローフィルタウォールの表面に更に多く位置することが予想される。前記コーティング物質は、4.66×4.5インチに300cpsiで平均細孔サイズが20マイクロメートル(以下、「マイクロン」)である12/1000インチのウォール厚さを持つ(「300/12」)(62%細孔率)コーディエライトウォールフローフィルタ基材に塗布された。各フィルタは、オーブンで980℃で4時間熱水的に加熱され、1.4Lの直接噴射ガソリンエンジンを有するユーロ5乗用車で近接-結合位置に設置された。各フィルタは、3MVEG-Bサイクルの最低を通って評価され、基準触媒に対する排気ガス粒子数の減少を測定し、フィルタは同一のウォッシュコートと貴金属含有量で流動貫通基材モノリス上にコーティングされたTWCに交換され、背圧差はフィルタ(又は基準触媒)の上流と下流に装着されたセンサの間で決定された。
【0111】
欧州で、2000年以来(ユーロ3排気ガス基準)、排気ガスが新しいユーロピアンドライブサイクル(NEDC)にかけてテストされる。これは、排気ガスのサンプリングを始める前に以前のECE15ドライブサイクルの4回の繰り返しと40秒のウォーミングアップ区間を持たない1回のExtra Urban Driving Cycle(EUDC)からなる。このような改善されたコールドスタートテストは、「MVEG-B」ドライブサイクルとも呼ばれる。全ての排気ガスは、g/kmで表現される。
【0112】
ユーロ5/6履行法律(implementing legislation)は、かつての及び新しい方法を利用した結果の差を考慮してPM質量の排出制限を調節するUN/ECE粒子測定プログラム(PMP)によって開発された新しいPM質量排気ガス測定方法を紹介する。ユーロ5/6法律は、質量に基づく制限に追加で粒子数の排出制限(PMP方法)を紹介することもある。
【0113】
表1は、大きい粒子サイズの「on-wall」ウォッシュコートで製造されたフィルタが小さな粒子サイズの「in-wall」ウォッシュコートで製造されたフィルタよりも非常に向上した粒子数の低減効果を提供することを示す(最大の背圧において、小さいが、許容可能な増加)。
【表1】

【0114】
実施形態2
300cpsiのセル密度と12/1000インチ(約0.3mm)のウォール厚さを持つ5.66×3インチのコーディエライトウォールフローフィルタ基材が0.8g/inのウォッシュコートの含有量及び80g/ftのパラジウム含有量を有するTWCコーティング物質でコーティングされた。65%の細孔率で38マイクロンの平均細孔サイズ、62%の細孔率で20マイクロンの平均細孔サイズ及び52%の細孔率で15マイクロンの平均細孔サイズを有する3つの細孔構造が比較された。各フィルタはオーブンで980℃で4時間熱水的に加熱され、1.4Lの直接噴射ガソリンエンジンを有するユーロ4乗用車でアンダフロア位置に設置し、近接-結合位置(即ち、フィルタの上流側)に位置する流動貫通基材モノリス上にコーティングされる全体的に形成されたTWCを備える。各フィルタは3MVEG-Bサイクルの最低を通って評価され、基準システムに対する排気ガス粒子数の減少を測定し、アンダフロアフィルタは同一のウォッシュコートとパラジウムの含有量で流動貫通基材モノリス上にコーティングされたTWCに交換され、背圧差は近接-結合TWCの上流とフィルタ(又は基準触媒)の下流に装着されたセンサの間で決定された。表2に与えられた最大背圧の結果は、MVEG-Bサイクルを3回繰り返して得た背圧である。
【0115】
表2の結果は、38マイクロンのフィルタが最低の背圧を有するが、非常に低い水準の粒子数の除去(車両で不十分)を有することを示す。20マイクロンのフィルタは、背圧の適当な増加と粒子数低減の許容可能な水準を提供する。15マイクロンのフィルタは、粒子数を低減するのに最も効果的であるが、20マイクロンのフィルタの実施例よりも非常に高い背圧を有する。
【表2】

【0116】
実施形態3
20マイクロンの平均細孔サイズと62%の細孔率を有する4.66×4.5インチ、300/12コーディエライトウォールフローフィルタ基材が0.8、1.6及び2.4g/inのウォッシュコート含有量である各TWCコーティング物質でコーティングされた。各サンプルは、85g/ftの貴金属含有量(Pd:Rh16:1)を有する。各フィルタは、オーブンで980℃で4時間熱水的に加熱され、1.4Lの直接噴射ガソリンエンジンを有するユーロ4乗用車で近接-結合位置に設置された。各フィルタは3MVEG-Bサイクルの最低を通って評価され、基準触媒に対する排気ガス粒子数の減少を測定し、近接-結合フィルタは同一のウォッシュコートと貴金属含有量で流動貫通基材モノリス上にコーティングされたTWCに交換され、背圧差と気体HC、CO及びNO排気ガスに対する転換効率は、フィルタ(又は基準触媒)の上流と下流に装着されたセンサの間で決定された。非メタン炭化水素(NMHC)だけの転換率が表3に記載される(ユーロ6のためのNMHCは100mg/kmの全体炭化水素排出の制限内である68mg/kmである)。
【0117】
表3の結果は、0.8g/inのウォッシュコート含有量で製造されたフィルタは、非常に低い粒子数の除去率と最低のNMHC転換効率を有することを示す。このようなTWCの性能は、一般的な乗用車のためのユーロ6ガス排出の制限を満足させるのに十分ではない。ウォッシュコートの含有量を1.6及び2.4g/inに増加させれば、背圧が許容可能な範囲で増加しても、粒子数排出の低減率が増加する。TWC活性度(表3にNMHC性能で示される)もウォッシュコートの含有量が増加することによって非常に改善する。
【表3】

【0118】
*「エンジニアリングターゲット」は車両メーカーで頻繁に用いられ、制限された排出量を百分率で示すものである。これらの実施形態のために、80%のエンジニアリングターゲットを用いる。ユーロ6NMHCの基準が68mg/kmであるため、エンジニアリングターゲットは54mg/kmである。このような数字の計算された百分率は、MVEG-Bドライブサイクルにかけて達成されたNMHC結果の減少率に接近させるために用いられる。これは、許容可能なTWC活性度と関連する100%の上下の値を提供する。
【0119】
実施形態4
300cpsiのセル密度と約0.3mmのウォール厚さを持つ4.66×4.5インチ、300/12コーディエライトウォールフローフィルタ基材が1.6g/inのウォッシュコート含有量と85g/ftの貴金属含有量(Pd:Rh16:1)でTWCコーティング物質でコーティングされた。65%の細孔率として38マイクロンの平均細孔サイズ、62%の細孔率として20マイクロンの平均細孔サイズを有する2つの細孔構造が比較された。より小さな細孔サンプルは評価されていないが、これは実施形態2の結果から背圧がこのテストでユーロ4乗用車に対してあまりにも大きいことが予想されたためである。各フィルタは、オーブンで980℃で4時間熱水的に加熱され、1.4Lの直接噴射ガソリンエンジンを有するユーロ4乗用車で近接-結合位置に設置された。各フィルタは、3MVEG-Bサイクルの最低を通って評価され、基準触媒に対する排気ガス粒子数の減少を測定し、近接-結合フィルタは、同一のウォッシュコートと貴金属含有量で流動貫通基材モノリス上にコーティングされたTWCに交換され、背圧差と気体HC、CO及びNO排気ガスに対する転換効率は、フィルタ(又は基準触媒)の上流と下流に装着されたセンサの間で決定された。非メタン炭化水素(NMHC)だけの転換率が表4に記載される。
【0120】
表4の結果は、38マイクロンのフィルタが非常に低い水準の粒子数除去率を有し(車両に適用するのには不十分)、他の車両適用に許容され得る低い背圧を有することを示す。20マイクロンのフィルタは、適当な背圧の上昇と共に優れた水準の粒子数の低減を提供する。2つのサンプルとも1.6g/inのウォッシュコート含有量で優れたTWC活性度を有する。
【表4】

【0121】
実施形態5
300cpsiのセル密度と約0.3mmのウォール厚さを持つ4.66×4.5インチ、300/12コーディエライトウォールフローフィルタ基材が2.4g/inのウォッシュコート含有量と85g/ftの貴金属含有量(Pd:Rh16:1)でTWCコーティング物質でコーティングされた。65%の細孔率として38マイクロンの平均細孔サイズ、62%の細孔率として20マイクロンの平均細孔サイズを有する2つの細孔構造が比較された。より小さな細孔サンプルは評価されていないが、これは実施形態2の結果から背圧がこのテストでユーロ5乗用車に対してあまりにも大きいことが予想されたためである。各フィルタは、オーブンで980℃で4時間熱水的に加熱され、1.4Lの直接噴射ガソリンエンジンを有するユーロ5乗用車で近接-結合位置に設置された。各フィルタは3MVEG-Bサイクルの最低を通って評価され、基準触媒に対する排気ガス粒子数の減少を測定し、近接-結合フィルタは、同一のウォッシュコートと貴金属含有量で流動貫通基材モノリス上にコーティングされたTWCに交換され、背圧差と気体HC、CO及びNO排気ガスに対する転換効率は、フィルタ(又は基準触媒)の上流と下流に装着されたセンサの間で決定された。非メタン炭化水素(NMHC)だけの転換率が表5に記載される。
【0122】
表5の結果は、38マイクロンのフィルタが非常に低い水準の粒子数除去率(この車両で普通)を有し、20マイクロンのフィルタ実施例よりも低い背圧を持つことを示す。20マイクロンのフィルタは、適当な背圧の増加と共に優れた粒子数低減率を提供する。2つのサンプルとも2.4g/inのウォッシュコート含有量で優れたTWC活性度を持つ。2つのサンプルとも表4に記載された1.6g/inのサンプルに比べて大きい粒子数の低減と増加した背圧を示す。
【表5】

【0123】
実施形態6
13マイクロンの平均細孔サイズと48%の細孔率を有し、5/1000インチのセルウォール厚さを有し、18×60mm、360cpsi(360/5)のコーディエライトウォールフローフィルタ基材が0.4及び0.8g/inのウォッシュコート含有量のTWCコーティング物質でコーティングされた。各サンプルは、85g/ftの貴金属含有量(Pd:Rh16:1)を有する。更に高いウォッシュコート含有量は、評価されていないが、これはこのテストでユーロ4乗用車に対して結果背圧があまりにも大きいことが予想されたためである。フレッシュ(即ち、un-aged)フィルタが1.4Lの直接噴射ガソリンエンジンを備えるユーロ4乗用車で近接-結合位置に設置された。各フィルタは3MVEG-Bサイクルの最低を通って評価され、基準触媒に対する排気ガス粒子数の減少を測定し、近接-結合フィルタは、同一のウォッシュコートと貴金属含有量で流動貫通基材モノリス上にコーティングされたTWCに交換され、背圧差と気体HC、CO及びNO排気ガスに対する転換効率は、フィルタ(又は基準触媒)の上流と下流に装着されたセンサの間で決定された。非メタン炭化水素(NMHC)だけの転換率が表6に記載される。
【0124】
表6の結果は、0.8g/inのウォッシュコート含有量で製造された13マイクロンのフィルタが適当な水準の粒子数除去率(この車両で普通)を有するが、極めて高い背圧を有することを示す。ウォッシュコートの含有量を0.4g/inに減少させれば、背圧が更に許容可能になるが、粒子数低減率が減少する。このような低いウォッシュコートの水準は、ユーロ6排気ガスの基準を満足させるのに十分なTWC活性度を提供することが予想されない。
【表6】

【0125】
実施形態7
2.0Lの直接噴射ガソリンエンジンを備え、近接-結合位置で流動貫通基材モノリスにコーティングされた全体の形成TWCが装着されたユーロ5乗用車がMVEG-BとFTP(Federal Test Procedure)75ドライブサイクルにかけてテストされた。MVEG-Bドライブサイクルにかけて発生した粒子の数は、PMPの手順に従って測定された。FTP75ドライブサイクルにかけて発生した粒子性物質の質量は、次の標準プロトコルに測定された。0.8g/inのウォッシュコートの含有量と20g/ftの貴金属含有量(Pd:Rh3:1)のTWCコーティング物質でコーティングされた12マイクロンの平均細孔サイズと55%の細孔率を有する125×120mm、300/12のコーディエライトウォールフローフィルタがアンダフロア位置(即ち、流動貫通基材モノリスの下流側)に設置された。粒子質量と数の測定は繰り返された。
【0126】
図7の結果は、流動貫通TWCだけのシステムに比べて追加的なコーティングフィルタの装着がMVEG-Bサイクルにかけて〜99%まで粒子数を低減し、FTP75サイクルにかけて〜75%まで粒子質量を低減することを示す。いかなるCARB PM排気ガス基準が採択されるかによって、2.7mg PM/mileの数は基準を満足させないこともある。
【表7】

【0127】
実施形態8
本発明は、活動的な三元触媒とフィルタモデルを用いる。前記モデルは、キネティック(kinetic)反応係数、基材とウォッシュコート特性及び車両で触媒温度と後部排気管の排気ガスを予想するためにユーロピアンMVEG-B排気ガステストから実証的に測定されたエンジン-アウト排気ガス温度と排気ガス成分の濃度を用いる。この実験のために、ユーロ5の1.4Lの直接噴射ガソリン車両から出るエンジン-アウト排気と温度が入力データとして用いられ、アンダフロア三元触媒コーティングされたガソリンフィルタに次いで近接-結合流動貫通三元触媒を含むシステムをモデリングした(300cpsi、20マイクロンの平均細孔直径、64%の細孔率、原形断面、118.4mmの直径及び114.3mmの長さ、2.4gin-3のウォッシュコート含有量、85gft-3で16Pd:Rhを有するセラミックウォールフローフィルタ)。商業的に利用可能な1.25L(400cpsi、118.4mm直径の原形断面、114.3mm軸方向の長さ)近接-結合三元触媒(エンジン排気量の90%、60gft-3で19Pd:Rh、3.5gin-3ウォッシュコート含有量)が同一の白金族金属組成物と含有量及び基材セル密度と直径を有するが、長さが1.25L触媒の半分(57.15mm)である0.625L触媒(エンジン排気量の45%)と比較された(基本的に125L近接-結合三元触媒がその軸方向の長さに半分に切られる)。
【0128】
ユーロピアンドライブサイクル(EUDC、1000秒から前方に)のエクストラ-アーバン(extra-urban)間、半分体積のTWCが商業的に利用可能なTWC比率の5倍以上に炭化水素を通過させた(表8参照)。モデルは半分体積のTWCから通過した追加的な炭化水素が下流側フィルタで転換されるとき、より大きな発熱を発生させ、最大ベッド(bed)温度を515℃(商業的に利用可能な1.25L近接-結合TWC)から540℃まで上昇させる(表8参照)。本発明の発明者らは、この温度上昇が燃料カットのように酸素リッチ条件でフィルタに捕集されたスートの受動的な再生で有用な長所を提供するものと結論を下した。
【0129】
商業的に利用可能な近接-結合TWC(1.25L)は、排気システム内でTWCウォッシュコートの質量全体の59%を含むが、前記半分体積の近接-結合TWCのウォッシュコートの質量は、排気システムでTWCウォッシュコートの質量全体の42%を含む。このような2つのフィルタに対する報告された最大アンダフロア温度での傾向(表8参照)から、排気システムにおけるTWCウォッシュコート質量の全体に対して近接-結合TWCでのTWCウォッシュコートの質量を増加させることは、最大アンダフロアフィルタの温度を下げることが確認され得る。このようなデータは、上流側基材モノリスの三元触媒ウォッシュコートの質量が排気システムでの三元触媒ウォッシュコートの質量全体の75%より大きければ、最大アンダフロアフィルタ温度が商業的な1.25L TWCの場合よりも継続して更に低くなるということを強く暗示する。
【表8】

【0130】
疑問の余地を無くすために、ここで引用された全ての先行技術文献の全体内容は、ここに含まれて参照される。
【図面の簡単な説明】
【0131】
【図1】図1は、ディゼルエンジンの排気ガス内のPMの大きさ分布を示すグラフである。
【図2】図2は、そのA-Cにおいて、本発明に係るウォッシュコーティングされた多孔性フィルタ基材の3つの実施形態の概略的な構成を示す。
【図3】図3は、多孔性フィルタ基材の細孔サイズの分布に対する水銀細孔率測定の概略的なグラフである。
【図4】図4は、フィルタ基材の平均細孔サイズと三元触媒ウォッシュコートの含有量によって定義されたコーティングされたウォール-流動フィルタの接合性を示す表す。
【図5】図5は、本発明に係る排気システムの概略的な図面である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のポジティブ点火内燃機関用の排気システムであって、
前記内燃機関から排出された排気ガスの粒子性物質を濾過するためのフィルタを備えてなり、
前記フィルタが、入口表面と出口表面を有する多孔性基材を備えてなり、
前記入口表面が、第1平均細孔サイズを有する孔隙を含む多孔性構造により前記出口表面と分離されてなるものであり、
前記多孔性基材が、多数の固体粒子を含む三元触媒ウォッシュコートでコーティングされてなり、
前記ウォッシュコートでコーティングされた多孔性基材の前記多孔性構造が、第2平均細孔サイズを有してなるものであり、
前記第2平均細孔サイズが、前記第1平均細孔サイズよりも小さく、かつ、前記三元触媒ウォッシュコートが、前記フィルタの上流に位置する分離した基材モノリス上に形成され、
前記上流の基材モノリス上の前記三元触媒ウォッシュコートの質量が、前記三元触媒ウォッシュコートの質量全体の75%以下である、排気システム。
【請求項2】
前記上流の基材モノリス上の三元触媒(TWC)ウォッシュコートの質量が、前記システム内でTWCの質量全体の70%以下である、請求項1に記載の排気システム。
【請求項3】
前記フィルタの上流に位置する前記分離した基材モノリスが、流動-貫通基材モノリスである、請求項1又は2に記載の排気システム。
【請求項4】
前記多孔性基材の前記多孔性構造の第1平均細孔サイズが、8〜45μmである、請求項1〜3の何れか一項に記載の排気システム。
【請求項5】
前記フィルタのウォッシュコート含有量が、0.50g in-3よりも大きいものである、請求項1〜4の何れか一項に記載の排気システム。
【請求項6】
表面ウォッシュコートを備えてなり、
ウォッシュコート層が前記多孔性構造の表面細孔を実質的に覆ってなり、
前記ウォッシュコートでコーティングされた多孔性基材の細孔が、前記ウォッシュコートで粒子間の空間(粒子間の細孔)の一部で定義されてなるものである、請求項1〜5の何れか一項に記載の排気システム。
【請求項7】
前記多孔性ウォッシュコートの粒子間の平均細孔サイズが、5.0nm〜5.0μmである、請求項6に記載の排気システム。
【請求項8】
固体ウォッシュコート粒子の平均大きさが、前記第1平均細孔サイズよりも大きいものである、請求項1〜7の何れか一項に記載の排気システム。
【請求項9】
前記固体ウォッシュコート粒子の平均大きさが、1〜40μmである、請求項8に記載の排気システム。
【請求項10】
前記多孔性構造の表面での前記細孔が、細孔の開口を備えてなり、かつ、
前記ウォッシュコートが、前記表面細孔の開口の全てを実質的に狭窄させてなる、請求項1〜5の何れか一項に記載のウォッシュコートを含む排気システム。
【請求項11】
前記ウォッシュコートが、前記多孔性基材の前記多孔性構造内に実質的に位置する、請求項1〜5の何れか一項に記載の排気システム。
【請求項12】
固体ウォッシュコート粒子の平均大きさが、前記多孔性基材の平均細孔サイズよりも小さいものである、請求項10又は11に記載の排気システム。
【請求項13】
前記ウォッシュコートが、入口表面、出口表面又は両方にコーティングされてなる、請求項1〜12の何れか一項に記載の排気システム。
【請求項14】
前記多孔性基材が、セラミックウォールフローフィルタ、金属フィルタ又はセラミックフォームである、請求項1〜13の何れか一項に記載の排気システム。
【請求項15】
請求項1〜14の何れか一項による記載の排気システムを備えてなる、ポジティブ点火エンジン。
【請求項16】
化学量論的に作動してなる、請求項15に記載のポジティブ点火エンジン。
【請求項17】
ポジティブ点火エンジンから排出された排気ガスの粒子性物質(PM)を深層濾過により捕獲し燃焼させる方法であって、
PMを含む排気ガスを排気システムに導入し、
前記排気システム内において、前記PMを含む前記排気ガスを基材モノリス上に位置する三元触媒ウォッシュコートと接触させ、
前記三元触媒基材モノリスの下流の前記排気システム内において、前記PMを含む排気ガスをフィルタと接触させることを含んでなるものであり、
前記フィルタが、入口表面と出口表面を有する多孔性基材を備えてなり、
前記入口表面が、第1平均細孔サイズを有する孔隙を含む多孔性構造により前記出口表面と分離されてなるものであり、
前記多孔性基材が、多数の固体粒子を含む三元触媒ウォッシュコートでコーティングされてなり、
前記ウォッシュコートでコーティングされた多孔性基材の前記多孔性構造が、第2平均細孔サイズを有してなるものであり、
前記第2平均細孔サイズが、前記第1平均細孔サイズよりも小さいものであり、
前記基材モノリス上の前記三元触媒ウォッシュコートの質量が、前記排気システムにおける三元触媒ウォッシュコートの質量全体の75%以下である、排気システム。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図2C】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2013−515902(P2013−515902A)
【公表日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−545454(P2012−545454)
【出願日】平成22年12月23日(2010.12.23)
【国際出願番号】PCT/GB2010/052209
【国際公開番号】WO2011/077168
【国際公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【出願人】(590004718)ジョンソン、マッセイ、パブリック、リミテッド、カンパニー (152)
【氏名又は名称原語表記】JOHNSON MATTHEY PUBLIC LIMITED COMPANY
【Fターム(参考)】