説明

車両内装用熱膨張性基材の製造方法及びそれを用いた車両内装用基材の製造方法

【課題】軽量であり、且つ十分な吸音性及び高い剛性等を有する車両用内装材製造のための車両内装用熱膨張性基材の製造方法、及び車両内装用基材の製造方法を提供する。
【解決手段】無機繊維、熱可塑性樹脂繊維又は熱可塑性樹脂粉末及び熱膨張性マイクロカプセルを含有するウェブ11をニードリングして繊維マット1を作製し、その後、繊維マット1を、熱可塑性樹脂繊維が溶融し、且つ熱膨張性マイクロカプセルの熱膨張開始温度より低い温度範囲で加熱し、熱プレスし、次いで、冷却し、車両内装用熱膨張性基材を製造する。また、この基材2を、熱膨張性マイクロカプセルの熱膨張開始温度を越える温度範囲で加熱して熱膨張させ、車両内装用基材を製造する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両内装用熱膨張性基材の製造方法及びそれを用いた車両内装用基材の製造方法に関する。更に詳しくは、本発明は、軽量であり、且つ十分な吸音性及び高い剛性等を併せて有する車両用内装材を製造することができる車両内装用熱膨張性基材の製造方法、及びこの車両内装用熱膨張性基材を用いた車両内装用基材の製造方法に関する。
本発明の車両内装用熱膨張性基材及び車両内装用基材の各々の製造方法では、水等の媒体は用いず、全工程が乾式であるため、各々の基材を、簡易な装置により、簡便な操作で、効率よく製造することができる。
【背景技術】
【0002】
従来、車両用内装材の基材として、無機繊維と樹脂繊維とを混合して堆積させ、これにニードリングを施してマットとし、その後、樹脂繊維が溶融する温度でマットを加熱し、次いで、熱プレスし、その後、冷却プレスして成形した車両内装用基材が用いられている。この基材は熱寸法安定性に優れ、加熱による寸法変化率は小さいが、高い剛性を有する車両用内装材とするためには、目付を高くする必要があり、昨今の車両軽量化の要求には十分に応えられないのが実情である。
【0003】
上記の問題を解決するため、無機繊維と樹脂繊維及び/又は樹脂粉末とを混合し、堆積させてなるマットに、熱膨張性マイクロカプセルを配合した車両内装用基材が提案されている。この基材は、二次成形時に熱膨張性マイクロカプセルが膨張するため、容易に軽量化することができ、且つ二次形成品は十分な厚さを有し、剛性も高い。このような基材は、例えば、ガラス繊維を主体とし、ニードリングされた繊維フェルト状物中に、熱可塑性樹脂バインダーと発泡性微球体とを分散、発泡させて形成することができる(例えば、特許文献1参照。)。また、強化繊維、加熱膨張性粉末等を、特定の水性媒体中に分散させて調製した泡液を抄造してウェブとし、このウェブを加熱、加圧し、冷却してスタンパブルシートとし、その後、このスタンパブルシートを加熱し、加熱膨張性粉末を膨張させてから成形し、冷却して、膨張成形品を製造する方法が知られている(例えば、特許文献2参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平2−45135号公報
【特許文献2】特開2006−342437号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1に記載の基材の形成方法では、熱可塑性樹脂バインダーは樹脂エマルジョンの形態で用いられており、発泡性微球体も樹脂エマルジョンに混合されるのが好ましいとされており、湿式であるため、装置が複雑になり、操作が煩雑になるという問題がある。また、特許文献2に記載の製造方法では、抄造によりウェブを作製しているが、このような製造方法では、複雑な構造の装置が必要であり、操作、工程も煩雑である。更に、界面活性剤が配合され、強化繊維、加熱膨張性粉末等を分散させて調製した高価な泡液を用いるため、コストの面でも好ましくない。
【0006】
本発明は、上記の従来の問題を解決するものであり、軽量であり、且つ十分な吸音性及び高い剛性等を併せて有する車両用内装材を製造することができ、水等の媒体を用いず、全工程が乾式である車両内装用熱膨張性基材の製造方法を提供することを目的とする。また、この車両内装用熱膨張性基材を所定温度で加熱するという簡易な操作、工程で熱膨張させる車両内装用基材の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は以下のとおりである。
1.無機繊維、熱可塑性樹脂繊維及び熱膨張性マイクロカプセルを含有するウェブをニードリングして繊維マットを作製し、その後、該繊維マットを、該熱可塑性樹脂繊維が溶融し、且つ該熱膨張性マイクロカプセルの熱膨張開始温度より低い温度範囲で加熱し、熱プレスし、次いで、冷却することを特徴とする車両内装用熱膨張性基材の製造方法。
2.前記無機繊維及び前記熱可塑性樹脂繊維を含有する第1ウェブを形成し、該第1ウェブ上に前記熱膨張性マイクロカプセルを撒布し、その後、該第1ウェブの該熱膨張性マイクロカプセルが撒布された面に、前記無機繊維及び前記熱可塑性樹脂繊維を含有する第2ウェブを積層して前記ウェブを作製する前記1.に記載の車両内装用熱膨張性基材の製造方法。
3.前記熱プレスが、前記熱可塑性樹脂繊維が溶融する温度を5〜50℃越え、且つ前記熱膨張性マイクロカプセルの前記熱膨張開始温度から該熱膨張開始温度を50℃下回る温度までの温度範囲でなされる前記1.又は2.に記載の車両内装用基材の製造方法。
4.前記熱可塑性樹脂繊維がポリオレフィン樹脂繊維である前記1.乃至3.のうちのいずれか1項に記載の車両内装用熱膨張性基材の製造方法。
5.前記無機繊維と、前記熱可塑性樹脂繊維と、前記熱膨張性マイクロカプセルとの合計を100質量%とした場合に、該無機繊維は20〜80質量%、熱可塑性樹脂繊維は20〜80質量%、熱膨張性マイクロカプセルは5〜20質量%である前記1.乃至4.のうちのいずれか1項に記載の車両内装用熱膨張性基材の製造方法。
6.無機繊維、熱可塑性樹脂粉末及び熱膨張性マイクロカプセルを含有するウェブをニードリングして繊維マットを作製し、その後、該繊維マットを、該熱可塑性樹脂繊維が溶融し、且つ該熱膨張性マイクロカプセルの熱膨張開始温度より低い温度範囲で加熱し、熱プレスし、次いで、冷却することを特徴とする車両内装用熱膨張性基材の製造方法。
7.前記無機繊維を含有する第1ウェブを形成し、該第1ウェブ上に前記熱可塑性樹脂粉末及び前記熱膨張性マイクロカプセルを撒布し、その後、該第1ウェブの該熱可塑性樹脂粉末及び該熱膨張性マイクロカプセルが撒布された面に、前記無機繊維を含有する第2ウェブを積層して前記ウェブを作製する請求項6に記載の車両内装用熱膨張性基材の製造方法。
8.前記熱プレスが、前記熱可塑性樹脂粉末が溶融する温度を5〜50℃越え、且つ前記熱膨張性マイクロカプセルの前記熱膨張開始温度から該熱膨張開始温度を50℃下回る温度までの温度範囲でなされる前記6.又は7.に記載の車両内装用基材の製造方法。
9.前記熱可塑性樹脂粉末がポリオレフィン樹脂粉末である前記6.乃至8.のうちのいずれか1項に記載の車両内装用熱膨張性基材の製造方法。
10.前記無機繊維と、前記熱可塑性樹脂粉末と、前記熱膨張性マイクロカプセルとの合計を100質量%とした場合に、該無機繊維は20〜80質量%、熱可塑性樹脂粉末は20〜80質量%、熱膨張性マイクロカプセルは5〜20質量%である前記6.乃至9.のうちのいずれか1項に記載の車両内装用熱膨張性基材の製造方法。
11.前記熱膨張性マイクロカプセルは静電気除去された後、撒布される前記1.乃至10.のうちのいずれか1項に記載の車両内装用熱膨張性基材の製造方法。
12.前記無機繊維がガラス繊維である前記1.乃至11.のうちのいずれか1項に記載の車両内装用熱膨張性基材の製造方法。
13.前記1.乃至12.のうちのいずれか1項に記載の方法により製造された車両内装用熱膨張性基材を、前記熱膨張性マイクロカプセルの前記熱膨張開始温度を越える温度範囲で加熱して熱膨張させることを特徴とする車両内装用基材の製造方法。
14.前記加熱が、前記熱膨張性マイクロカプセルの前記熱膨張開始温度を5〜50℃越える温度範囲でなされる前記13.に記載の車両内装用基材の製造方法。
【発明の効果】
【0008】
無機繊維、熱可塑性樹脂繊維及び熱膨張性マイクロカプセルを用いて乾式で繊維マットを作製する本発明の車両内装用熱膨張性基材の製造方法、並びに無機繊維、熱可塑性樹脂粉末及び熱膨張性マイクロカプセルを用いて乾式で繊維マットを作製する他の本発明の車両内装用熱膨張性基材の製造方法によれば、水等の媒体を用いず、全工程が乾式である作製方法により得られた繊維マットを、加熱し、熱プレスし、冷却するという簡易な操作、工程で、軽量であり、且つ十分な吸音性及び高い剛性等を併せて有する車両用内装材を製造することができる車両内装用熱膨張性基材を、容易、且つ安価に製造することができる。
また、無機繊維及び熱可塑性樹脂繊維を含有する第1ウェブを形成し、第1ウェブ上に熱膨張性マイクロカプセルを撒布し、その後、第1ウェブの熱膨張性マイクロカプセルが撒布された面に、無機繊維及び熱可塑性樹脂繊維を含有する第2ウェブを積層してウェブを作製する場合、及び無機繊維を含有する第1ウェブを形成し、第1ウェブ上に熱可塑性樹脂粉末及び熱膨張性マイクロカプセルを撒布し、その後、第1ウェブの熱可塑性樹脂粉末及び熱膨張性マイクロカプセルが撒布された面に、無機繊維を含有する第2ウェブを積層してウェブを作製する場合は、第1ウェブと第2ウェブとの間に撒布された熱膨張性マイクロカプセル、又は熱可塑性樹脂粉末及び熱膨張性マイクロカプセルが、ニードリングによって繊維マットの全体に均一に分散され、より均質な車両用内装材を製造することができる車両内装用熱膨張性基材を、容易に製造することができる。
更に、熱プレスが、熱可塑性樹脂繊維又は粉末が溶融する温度を5〜50℃越え、且つ熱膨張性マイクロカプセルの熱膨張開始温度から該熱膨張開始温度を50℃下回る温度までの温度範囲でなされる場合は、無機繊維の一部が熱可塑性樹脂により結着されて強化され、その後の取り扱い等が容易な車両内装用熱膨張性基材を製造することができる。
また、熱可塑性樹脂繊維がポリオレフィン樹脂繊維である場合、及び熱可塑性樹脂粉末がポリオレフィン樹脂粉末である場合は、比較的低温で溶融し、無機繊維間を容易に結着させることができ、繊維マットを内部から容易に強化することができる車両内装用熱膨張性基材を容易に製造することができる。
更に、無機繊維と、熱可塑性樹脂繊維と、熱膨張性マイクロカプセルとの合計を100質量%としたときに、無機繊維は20〜80質量%、熱可塑性樹脂繊維は20〜80質量%、熱膨張性マイクロカプセルは5〜20質量%である場合、及び無機繊維と、熱可塑性樹脂粉末と、熱膨張性マイクロカプセルとの合計を100質量%としたときに、無機繊維は20〜80質量%、熱可塑性樹脂粉末は20〜80質量%、熱膨張性マイクロカプセルは5〜20質量%である場合は、強度の大きい車両内装用熱膨張性基材を容易に製造することができ、且つこの基材を用いることにより、賦形性に優れ、強度が大きく、適度に熱膨張した車両用内装材を製造することができる。
また、熱膨張性マイクロカプセルが静電気除去された後、撒布される場合は、熱膨張性マイクロカプセルが凝集することなく、第1ウェブ上に均一に撒布されるため、より均質な車両用内装材を製造することができる車両内装用熱膨張性基材を、より容易に製造することができる。
更に、無機繊維がガラス繊維である場合は、十分な断熱性及び吸音性等が発現される車両用内装材を製造することができる車両内装用熱膨張性基材を、容易、且つ安価に製造することができ、且つガラス繊維は入手も容易であり、安価であって、コストの面でも有利である。
【0009】
本発明の車両内装用基材の製造方法によれば、本発明の方法により製造された車両内装用熱膨張性基材、又は他の本発明の方法により製造された車両内装用熱膨張性基材を、熱膨張性マイクロカプセルの熱膨張開始温度を越える温度範囲で加熱するという簡易な操作、工程により、軽量であり、且つ十分な吸音性及び高い剛性等を併せて有する車両用内装材を製造することができる車両内装用基材を容易に製造することができる。
また、加熱が、熱膨張性マイクロカプセルの熱膨張開始温度を5〜50℃越える温度範囲でなされる場合は、適度に熱膨張し、且つ十分に軽量な車両内装用基材を容易に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】熱可塑性樹脂繊維を用いて繊維マットを作製するときの装置、工程の模式的な説明図である。
【図2】熱可塑性樹脂粉末を用いて繊維マットを作製するときの装置、工程の模式的な説明図である。
【図3】ウェブ形成装置に供給する混合繊維又は無機繊維の解繊に用いる装置、工程の模式的な説明図である。
【図4】車両内装用熱膨張性基材を製造するための装置、工程の模式的な説明図である。
【図5】車両内装用基材を製造するための装置、工程の模式的な説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図1〜5を参照しながら本発明を詳しく説明する。
[1]車両内装用熱膨張性基材
本発明の車両内装用熱膨張性基材の製造方法は、無機繊維、熱可塑性樹脂繊維及び熱膨張性マイクロカプセルを含有するウェブをニードリングして繊維マットを作製し、その後、繊維マットを、熱可塑性樹脂繊維が溶融し、且つ熱膨張性マイクロカプセルの熱膨張開始温度より低い温度範囲で加熱し、熱プレスし、次いで、冷却することを特徴とする。
【0012】
また、他の本発明の車両内装用熱膨張性基材の製造方法は、無機繊維、熱可塑性樹脂粉末及び熱膨張性マイクロカプセルを含有するウェブをニードリングして繊維マットを作製し、その後、繊維マットを、熱可塑性樹脂繊維が溶融し、且つ熱膨張性マイクロカプセルの熱膨張開始温度より低い温度範囲で加熱し、熱プレスし、次いで、冷却することを特徴とする。
【0013】
(1)熱可塑性樹脂繊維を用いて車両内装用熱膨張性基材を製造する場合の繊維マットの作製方法
無機繊維と、熱可塑性樹脂繊維と、熱膨張性マイクロカプセルとを用いて車両内装用熱膨張性基材を製造する場合、繊維マットを作製する装置及び工程は特に限定されず、例えば、以下のような装置及び工程により作製することができる(図1参照)。
2台のウェブ形成装置54、55を併置し、一方のウェブ形成装置54のリザーブボックス541に、解繊された無機繊維と熱可塑性樹脂繊維との混合繊維を供給し、スパイクラチス542により更に解繊させながら搬送し、その後、フィードローラ543により搬送し、次いで、シリンダーブロア544によりスクリューコンベア545上に供給し、次いで、所定位置からフロントコンベア547上に堆積させて第1ウェブ111を形成する。
【0014】
次いで、フロントコンベア547上に形成され、搬送される第1ウェブ111上に、カプセル撒布機56より所定量の熱膨張性マイクロカプセルを撒布し、その後、フロントコンベア557により搬送される第1ウェブ111の熱膨張性マイクロカプセルが撒布された面に、同じ構造の他方のウェブ形成装置55から、同様にして解繊された混合繊維を供給し、堆積させて第2ウェブ112を形成する。このようにして、第1ウェブ111、第2ウェブ112及び両ウェブの積層界面に撒布された熱膨張性マイクロカプセルを有するウェブ11を作製する。次いで、このウェブ11にニードリング装置58によりニードリングを施し、所定の目付及び厚さの繊維マット1を作製し、その後、マット巻取ロール59により巻き取り、保管する。
【0015】
(2)熱可塑性樹脂粉末を用いて車両内装用熱膨張性基材を製造する場合の繊維マットの作製方法
無機繊維と、熱可塑性樹脂粉末と、熱膨張性マイクロカプセルとを用いて車両内装用熱膨張性基材を製造する場合、繊維マットを作製する装置及び工程は特に限定されず、例えば、以下のような装置及び工程により作製することができる(図2参照)。
2台のウェブ形成装置54、55を併置し、一方のウェブ形成装置54のリザーブボックス541に、解繊された無機繊維を供給し、スパイクラチス542により更に解繊させながら搬送し、その後、フィードローラ543により搬送し、次いで、シリンダーブロア544によりスクリューコンベア545上に供給し、その後、所定位置からフロントコンベア547上に堆積させて第1ウェブ111を形成する。
【0016】
次いで、フロントコンベア547上に形成され、搬送される第1ウェブ111上に、カプセル撒布機56より所定量の熱膨張性マイクロカプセルを撒布し、且つ樹脂粉末撒布機57より所定量の熱可塑性樹脂粉末を撒布し、その後、フロントコンベア557により搬送される第1ウェブ111の熱膨張性マイクロカプセル及び熱可塑性樹脂粉末が撒布された面に、同じ構造の第2ウェブ形成装置55から、同様にして解繊された無機繊維を供給し、堆積させて第2ウェブ112を形成する。このようにして、第1ウェブ111、第2ウェブ112及び両ウェブの積層界面に撒布された熱膨張性マイクロカプセル及び熱可塑性樹脂粉末を有するウェブ11を作製する。次いで、このウェブ11にニードリング装置58によりニードリングを施し、所定の目付及び厚さの繊維マット1を作製し、その後、マット巻取ロール59により巻き取り、保管する。
【0017】
前記(1)、(2)の繊維マットの作製方法において、第1ウェブ上に撒布される熱膨張性マイクロカプセルは静電気除去されていることが好ましい。熱膨張性マイクロカプセルは微小球であり、外殻は熱可塑性樹脂により構成されているため、そのまま撒布すると帯電し、凝集してしまうため、静電気を除去した後、撒布することが好ましい。静電気除去の方法は特に限定されず、例えば、熱膨張性マイクロカプセルをホッパー等の容器に収容し、容器下部の撒布用開口部の直上に静電気除去バーを配設したカプセル撒布装置等を用いることができる。
【0018】
また、前記(1)、(2)の方法により作製される繊維マットの厚さは特に限定されないが、軽量であり、且つ十分な剛性等を併せて有する車両用内装材を作製するためには、2〜15mm、特に2〜10mmであることが好ましい。更に、繊維マットの目付も特に限定されないが、軽量であり、且つ十分な剛性等を併せて有する車両用内装材を製造するためには、200〜1000g/m、特に200〜800g/mであることが好ましい。また、繊維マットは、厚さが3〜8mm、且つ目付が200〜600g/m、特に厚さが3〜6mm、且つ目付が200〜400g/mであることがより好ましい。
【0019】
更に、ウェブ形成装置に供給される、混合繊維又は無機繊維を予め解繊しておくための装置、工程も特に限定されず、例えば、以下のような装置及び工程により解繊することができる(図3参照、この図3において矢印は繊維の流れを表す。)。
第1解繊装置51のリザーブボックス511に混合繊維又は無機繊維を供給し、チューブラチス512により解繊させながら搬送し、スパイクラチス513に供給して更に解繊させながら搬送し、その後、フィードローラ514により搬送し、次いで、解繊された混合繊維又は無機繊維をシリンダーブロア515及びファン516により空送し、切替ダンパ517により送路を切り替え、併置された2台の第2解繊装置52、53に供給する。
【0020】
その後、2台の第2解繊装置52、53の各々のリザーブボックス521、531に、予め解繊された混合繊維又は無機繊維を供給し、スパイクラチス522、532により更に解繊しながら搬送し、次いで、フィードローラ523、533により搬送し、その後、シリンダーブロア524、534及びファン525、535により空送し、2台のウェブ形成装置54、55のそれぞれのリザーブボックス541、551に供給する。このように、第1解繊装置51及び2台の第2解繊装置52、53により、混合繊維又は無機繊維を十分に解繊させ、これを2台のウェブ形成装置54、55の各々に供給することが好ましいが、十分に解繊させることができれば第2解繊装置52、53のみであってもよい。特に、熱可塑性樹脂繊維は用いず、無機繊維のみを用いる場合、即ち、熱可塑性樹脂粉末を用いるときは、第2解繊装置52、53のみであってもよい。
【0021】
(3)車両内装用熱膨張性基材の製造
前記(1)、(2)で作製した繊維マット1は、通常、加熱炉内を通過させて加熱させる。この場合、加熱炉の温度は熱可塑性樹脂繊維又は粉末が溶融する温度より高く設定され、加熱炉において熱可塑性樹脂繊維又は粉末が溶融し、これにより、無機繊維の一部を熱可塑性樹脂により結着させることができる。
【0022】
加熱手段は特に限定されず、熱風による加熱、赤外線ヒータ、遠赤外線ヒータ等のヒータによる加熱、高周波加熱等が挙げられる。また、この加熱は、熱風によりなされることが好ましく、繊維マット1を熱風炉62内を通過させることにより、熱可塑性樹脂繊維又は粉末をより容易に溶融させることができる。
【0023】
前記「加熱」の温度は、熱膨張性マイクロカプセルの熱膨張開始温度より低い温度範囲でなされ、加熱温度は、熱膨張開始温度より5〜50℃、特に5〜30℃低い温度範囲であることが好ましい。更に、加熱温度は熱可塑性樹脂繊維又は粉末が溶融する温度を超える温度範囲でなされ、溶融した熱可塑性樹脂繊維又は粉末により無機繊維の一部が結着され、繊維マットを内部から強化することができ、その後の熱成形時等における車両内装用熱膨張性基材の取り扱いが容易になる。この場合、加熱温度は、熱可塑性樹脂繊維又は粉末が溶融する温度を5〜20℃、特に8〜17℃超える範囲であることが好ましい。また、加熱時間は特に限定されず、加熱温度にもよるが、1〜10分、特に2〜7分とすることができる。
【0024】
更に、熱風炉62等の加熱炉を通過させた後、繊維マットを、熱プレス機63により、熱可塑性樹脂繊維又は粉末は溶融し、熱膨張性マイクロカプセルは熱膨張しない温度範囲で熱プレスし、次いで、冷却プレス機64により冷却して、車両内装用熱膨張性基材2を製造する。前記「熱プレス」は、通常、圧縮成形機によりなされ、この熱プレスは、熱可塑性樹脂繊維又は粉末が溶融する温度より5〜50℃、特に5〜30℃、更に5〜20℃高く、且つ熱膨張性マイクロカプセルの熱膨張開始温度から熱膨張開始温度を50℃下回る温度までの温度範囲、特に熱膨張開始温度から熱膨張開始温度を30℃下回る温度までの温度範囲、更に熱膨張開始温度から熱膨張開始温度を20℃下回る温度までの温度範囲でなされることが好ましい。
【0025】
また、上記「冷却」は、所定厚さを有し、且つ内部まで均質な車両内装用熱膨張性基材とするため、通常、圧縮成形機等による冷却プレスによりなされる。この冷却プレス時、成形板は室温(例えば20〜35℃)のままでもよく、内部に水等の冷媒を流通させ、より急速に冷却させてもよい。このようにして製造された車両内装用熱膨張性基材2は、裁断機65により、車両用内装材の種類等によって設定される所定寸法に裁断され、保管される(図4参照)。更に、裁断された車両内装用熱膨張性基材2は、計量装置66により計量され、その後、基材載置台67上に積み重ねられ、必要に応じて、所定枚数が梱包されて保管され、車両内装用基材を製造する工程に供給される。
【0026】
車両内装用熱膨張性基材の厚さ及び目付は特に限定されないが、この基材を用いて作製される車両用内装材の種類等により設定することが好ましい。また、軽量であり、且つ十分な剛性等を併せて有する車両用内装材を作製するためには、厚さは0.5〜8mm、特に1〜6mmであることが好ましい。また、目付は300〜1200g/m、特に300〜1000g/mであることが好ましい。更に、車両内装用熱膨張性基材は、厚さが1〜4mm、且つ目付が300〜700g/m、特に厚さが1〜3mm、且つ目付が300〜500g/mであることがより好ましい。
【0027】
本発明の車両内装用熱膨張性基材の製造方法は、(1)無機繊維と熱可塑性樹脂繊維との混合、解繊工程、(2)第1ウェブの形成工程、(3)第1ウェブ上への熱膨張性マイクロカプセル撒布工程、(4)第1ウェブに第2ウェブを積層するウェブ形成工程、(5)ニードリングによる繊維マット作製工程、(6)加熱工程、(7)熱プレス工程、及び(8)冷却工程、を備える。また、他の本発明の車両内装用熱膨張性基材の製造方法は、(1)無機繊維の解繊工程、(2)第1ウェブの形成工程、(3)第1ウェブ上への熱可塑性樹脂粉末及び熱膨張性マイクロカプセル撒布工程、(4)第1ウェブに第2ウェブを積層するウェブ形成工程、(5)ニードリングによる繊維マット作製工程、(6)加熱工程、(7)熱プレス工程、及び(8)冷却工程、を備える。これらの製造方法においては、通常、全工程が連続しており、これにより、均質な車両用内装材用熱膨張性基材を、効率よく製造することができる。
【0028】
(4)無機繊維、熱可塑性樹脂繊維又は粉末及び熱膨張性マイクロカプセル
(a)無機繊維
前記「無機繊維」は、車両内装用熱膨張性基材の基体をなすものであり、優れた難燃性及び断熱性等を有する。無機繊維は特に限定されず、各種の無機繊維を用いることができる。この無機繊維としては、ガラス繊維、カーボン繊維及びバサルト繊維等が挙げられる。これらの無機繊維は1種のみ用いてもよく、2種以上を併用してもよい。これらの無機繊維のうちでは入手し易く、且つ安価なガラス繊維が好ましい。ガラス繊維を用いる場合、無機繊維の全量を100質量%とした場合に、ガラス繊維は80質量%以上、特に90質量%以上であることが好ましく、無機繊維の全量がガラス繊維であってもよい。
【0029】
(b)熱可塑性樹脂繊維
前記「熱可塑性樹脂繊維」は特に限定されず、各種の熱可塑性樹脂を用いてなる繊維を使用することができる。この熱可塑性樹脂としては、ポリプロピレン、ポリエチレン、エチレン/プロピレン共重合体等のポリオレフィン樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル樹脂、ポリスチレン、アクリロニトリル/スチレン共重合樹脂、アクリロニトリル/スチレン/ブタジエン共重合樹脂等のポリスチレン樹脂、ポリメチルメタクリレート等のアクリル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアセタール樹脂などが挙げられる。熱可塑性樹脂は、紡糸することができれば2種以上を併用してもよいが、1種のみ用いられることが多い。
【0030】
熱可塑性樹脂繊維としては、ポリオレフィン樹脂繊維及びポリエステル樹脂繊維が好ましく、ポリオレフィン樹脂繊維がより好ましい。
ポリオレフィン樹脂繊維を構成するポリオレフィン樹脂は、未変性のポリオレフィン樹脂であってもよく、変性されたポリオレフィン樹脂であってもよい。未変性のポリオレフィン樹脂である場合、プロピレン単独重合体、エチレン/プロピレンランダム共重合体、エチレン/プロピレンブロック共重合体等のプロピレン系重合体が好ましい。この共重合体としては、プロピレンと、エチレン及び/又は1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、4−メチル−ペンテン−1等の炭素数4〜20のα−オレフィンとの共重合体が好ましい。プロピレン系重合体としては、プロピレン単独重合体がより好ましい。また、変性されたポリオレフィン樹脂である場合、例えば、カルボン酸又は酸無水物を用いて酸変性された変性ポリオレフィン樹脂等を用いることができる。更に、未変性樹脂と変性樹脂とを併用することもできる。
【0031】
また、熱可塑性樹脂繊維の平均繊維長及び平均繊維径は特に限定されないが、平均繊維長は200mm以下(通常、20mm以上)であることが好ましい。平均繊維長が200mm以下の熱可塑性樹脂繊維を用いることにより、この熱可塑性樹脂繊維と、無機繊維及び熱膨張性マイクロカプセルとを含有する均質なウェブを容易に形成することができる。更に、平均繊維径は50μm以下(通常、10μm以上)であることが好ましい。
【0032】
また、熱可塑性樹脂繊維は、熱可塑性樹脂のみを用いてなる繊維でもよいが、酸化防止剤、可塑剤、帯電防止剤、難燃剤、抗菌剤、防黴剤及び着色剤等の各種の添加剤が配合された熱可塑性樹脂を用いてなる繊維がより好ましい。
【0033】
(c)熱可塑性樹脂粉末
前記「熱可塑性樹脂粉末」としては、各種の合成樹脂粉末が挙げられるが、ポリオレフィン樹脂粉末が好ましい。このポリオレフィン樹脂粉末としては、(1)高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、(2)線状低密度ポリエチレン、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体等のエチレンと他の単量体との共重合体、及び(3)ポリプロピレンなどの各種のポリオレフィン樹脂の粉末が挙げられ、ポリプロピレン粉末及び高密度ポリエチレン粉末が好ましい。熱可塑性樹脂粉末は1種のみ用いてもよく、2種以上を併用してもよいが、1種のみ用いられることが多い。
【0034】
熱可塑性樹脂粉末の平均粒径も特に限定されないが、10〜200μm、特に20〜150μm、更に30〜100μmであることが好ましい。熱可塑性樹脂粉末の平均粒径が10〜200μmであれば、無機繊維間を十分に結着させることができ、繊維マットを内部から十分に強化することができる。熱可塑性樹脂粉末の平均粒径は、例えば、顕微鏡観察、光透過粒径測定法等の方法により測定することができる。
【0035】
(d)熱膨張性マイクロカプセル
上記「熱膨張性マイクロカプセル」は、通常、ブタン、イソブタン等の揮発性炭化水素を内包し、その外殻は、塩化ビニリデン−アクリルニトリル共重合体、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリアクリルニトリル等により構成されている。本発明においては、含有される熱膨張性マイクロカプセルは特に限定されず、内包される炭化水素の種類及び外殻の材質ともに、例えば、上記の各種の炭化水素及び外殻のうちのいずれであってもよく、他の炭化水素及び他の重合体からなる外殻であってもよい。
【0036】
熱膨張性マイクロカプセルは、通常、直径が10〜100μm、特に20〜80μmの略球形であり、熱膨張開始温度を超える温度範囲に加熱することにより4〜30倍に体膨張する。体膨張後の直径は、体膨張前の直径及び膨張倍率によるが、例えば、40〜600μm、特に60〜400μmになる。本発明においては、特に、体膨張前の直径が10〜100μm、特に20〜80μmであって、8〜27倍、特に18〜27倍に体膨張し、体膨張後の直径が、例えば、40〜300μm、特に80〜240μmである熱膨張性マイクロカプセルが好ましい。このような熱膨張性マイクロカプセルであれば、軽量であり、且つ十分な吸音性及び高い剛性等を併せて有する車両用内装材を容易に製造することができる車両内装用熱膨張性基材とすることができる。
【0037】
無機繊維、熱可塑性樹脂繊維又は粉末、及び熱膨張性マイクロカプセルの各々の含有割合は特に限定されないが、無機繊維と、熱可塑性樹脂繊維又は粉末と、熱膨張性マイクロカプセルとの合計を100質量%とした場合に、無機繊維が20〜80質量%、特に35〜65質量%、熱可塑性樹脂繊維又は粉末が20〜80質量%、特に35〜65質量%、熱膨張性マイクロカプセルが5〜20質量%、特に8〜15質量%であることが好ましい。これにより、十分な剛性及び難燃性等を併せて有する車両用内装材を製造することができる車両内装用熱膨張性基材とすることができる。
【0038】
また、熱可塑性樹脂繊維又は粉末及び熱膨張性マイクロカプセルのそれぞれの含有割合も特に限定されないが、熱可塑性樹脂繊維又は粉末と、熱膨張性マイクロカプセルとの合計を100質量%とした場合に、熱可塑性樹脂繊維又は粉末が70〜90質量%、熱膨張性マイクロカプセルが10〜30質量%であることが好ましく、熱可塑性樹脂繊維又は粉末が75〜85質量%、熱膨張性マイクロカプセルが15〜25質量%であることがより好ましい。これにより、軽量であり、且つ十分な剛性等を併せて有する車両用内装材を製造することができる車両内装用熱膨張性基材とすることができる。
【0039】
更に、無機繊維及び熱可塑性樹脂繊維又は粉末の各々の含有割合も特に限定されないが、無機繊維と、熱可塑性樹脂繊維又は粉末との合計を100質量%とした場合に、無機繊維が30〜70質量%、熱可塑性樹脂繊維又は粉末が30〜70質量%であることが好ましく、無機繊維が40〜60質量%、熱可塑性樹脂繊維又は粉末が40〜60質量%であることがより好ましい。これにより、十分な剛性及び難燃性等を併せて有する車両用内装材を製造することができる車両内装用熱膨張性基材とすることができる。
【0040】
(e)その他の成分
繊維マットには、無機繊維、熱可塑性樹脂繊維又は粉末及び熱膨張性マイクロカプセルを除く他の成分を含有させることもできる。例えば、樹脂系接着性繊維又は粉末を含有させることができる。この樹脂系接着性繊維又は粉末は、熱膨張性マイクロカプセルが熱膨張し、車両内装用熱膨張性基材が熱膨張したときに、無機繊維と、熱膨張したマイクロカプセルとを接合することができればよく、特に限定されない。樹脂系接着性繊維又は粉末としては、(1)エチレン−メチルメタクリレート共重合体、エチレン−エチルアクリレート共重合体、エチレン−アクリル酸共重合体等のアクリル系樹脂、(2)ウレタン系樹脂、(3)酢酸ビニル系樹脂等の繊維又は粉末が挙げられる。また、これらの樹脂系接着性繊維又は粉末のうちでは、アクリル系樹脂繊維又は粉末が好ましく、エチレン−メチルメタクリレート共重合体繊維又は粉末及びエチレン−エチルアクリレート共重合体繊維又は粉末がより好ましい。
【0041】
樹脂系接着性繊維の平均繊維長及び平均繊維径は、前記の熱可塑性樹脂繊維の平均繊維長及び平均繊維径と同様であればよい。また、樹脂系接着性粉末の平均粒径は特に限定されないが、0.05〜0.7μm、特に0.05〜0.4μm、更に0.05〜0.2μmであることが好ましい。樹脂系接着性繊維の平均繊維長及び平均繊維径が所定範囲内であれば、又は樹脂系接着剤粉末の平均粒径が0.05〜0.7μmであれば、樹脂系接着性繊維及び樹脂系接着性粉末が分散性に優れ、この粉末が繊維マットにより均一に含浸されるため、より均質な車両内装用熱膨張性基材とすることができる。
【0042】
樹脂系接着性繊維又は粉末を含有させる場合、その含有量は特に限定されないが、熱可塑性樹脂繊維又は粉末、熱膨張性マイクロカプセル及び樹脂系接着性繊維又は粉末の合計を100質量%とした場合に、熱可塑性樹脂繊維又は粉末が65〜85質量%、熱膨張性マイクロカプセルが5〜18質量%、樹脂系接着性繊維又は粉末が6〜22質量%であることが好ましく、特に熱可塑性樹脂繊維又は粉末が70〜80質量%、熱膨張性マイクロカプセルが8〜15質量%、樹脂系接着性繊維又は粉末が10〜18質量%であることがより好ましい。これにより、軽量であり、且つ十分な剛性等を併せて有する車両用内装材を製造することができる車両内装用熱膨張性基材とすることができる。
【0043】
また、他の成分として、熱可塑性樹脂繊維、熱可塑性樹脂粉末、樹脂系接着性繊維及び樹脂系接着性粉末のうちの少なくとも1種に、難燃剤を含有させることが好ましい。この難燃剤は特に限定されず、尿素及びメラミンシアヌレート等の窒素含有化合物、ポリリン酸等のリン酸化合物、塩素化パラフィン及びデカブロモビフェニルエーテル等の有機ハロゲン化合物、水酸化アルミニウム及び水酸化マグネシウム等の水和金属酸化物などが挙げられる。これらの難燃剤のうちでは、難燃時に有害ガスが発生せず、水和金属化合物ほどに樹脂に多量に配合する必要がない窒素含有化合物及びリン酸化合物が好ましい。この難燃剤としては、窒素含有化合物であるメラミンシアヌレート及びリン酸化合物であるポリリン酸がより好ましい。更に、ポリリン酸メラミン及びポリリン酸グアニジン等のポリリン酸窒素含有化合物が特に好ましい。これらの難燃剤は1種のみ用いてもよく、2種以上を併用することもできる。
【0044】
難燃剤の含有量は特に限定されず、難燃剤の種類によって適量を含有させることが好ましい。この難燃剤は、例えば、窒素含有化合物、リン酸化合物等では少量で十分な難燃性が発現されるが、水和金属酸化物ではより大量に含有させる必要がある。難燃剤の含有量が過少であると、十分な難燃性を有する車両用内装材とすることができず、過多であると、難燃剤がブリードアウトすることがある。そのため、熱可塑性樹脂繊維等のうちの少なくとも2種以上に難燃剤を含有させることが好ましい。これにより、十分な難燃性を有し、且つ難燃剤がブリードアウトすることのない繊維マットとすることができ、無機繊維が本来有する優れた難燃性の低下を十分に抑えることができる。
【0045】
[2]車両内装用基材
本発明の車両内装用基材の製造方法は、本発明の方法及び他の本発明の方法により製造された車両内装用熱膨張性基材を、熱膨張性マイクロカプセルの熱膨張開始温度を越える温度範囲で加熱して熱膨張させることを特徴とする。
【0046】
車両内装用基材の製造に用いられる装置及び工程は特に限定されず、例えば、以下のような装置及び工程により製造することができる(図5参照)。
所定寸法に裁断された車両内装用熱膨張性基材2を、ベルトコンベア71上に載置し、その後、熱膨張性マイクロカプセルの熱膨張開始温度を越える温度範囲に調温された熱膨張室72に収容し、熱膨張性マイクロカプセルを熱膨張させて車両内装用基材3を製造する。
【0047】
上記「加熱」は、通常、所定温度に調温された加熱室72、所定温度に調温された圧縮成形機等による熱プレスなどによりなされ、この加熱は、熱膨張性マイクロカプセルの熱膨張開始温度より5〜50℃、特に8〜35℃、更に12〜25℃高い温度範囲でなされることが好ましい。これにより、熱膨張性マイクロカプセルが十分に熱膨張し、軽量であり、且つ優れた剛性等を併せて有する車両用内装材を製造することができる車両内装用基材3を容易に製造することができる。
【0048】
車両内装用基材の厚さ及び目付は特に限定されないが、この基材を用いて作製される車両用内装材の種類等により設定することが好ましい。また、軽量であり、且つ十分な剛性等を併せて有する車両用内装材を作製するためには、厚さは3〜18mm、特に3〜15mmであることが好ましい。また、目付は300〜1200g/m、特に300〜1000g/mであることが好ましい。更に、車両内装用基材は、厚さが5〜12mm、且つ目付が300〜700g/m、特に厚さが6〜10mm、且つ目付が300〜500g/mであることがより好ましい。
【0049】
また、上記のようにして製造された車両内装用基材3は、通常、圧縮成形可能な温度に保持されているうちに、圧縮成形機73のプレート間に収容し、所定形状の車両用内装材4に成形される。この圧縮成形は冷間プレスによりなされるが、圧縮成形機73のプレートは雰囲気温度であってもよく、必要に応じてプレート内部に通水する等の方法により強制冷却してもよい。また、図5の装置では、車両内装用熱膨張性基材2の熱膨張室72への移送、及び車両内装用基材3の圧縮成形機73への移送は、ベルトコンベア71により連続的になされており、車両用内装材4は、このような装置によって製造することが好ましい。特に、車両内装用基材3と車両用内装材4とは、図5のように、一体となった装置により連続的に製造することが好ましい。
【実施例】
【0050】
以下、実施例により本発明を具体的に説明する。
実施例1(熱可塑性樹脂繊維を用いた車両内装用熱膨張性基材の製造)
(1)繊維マットの作製
ロービング状に捲回されていたガラス繊維を所定長さに切断してなるガラス繊維50質量%と、ポリプロピレン樹脂繊維50質量%とを(これらの合計を100質量%とする。)、第1解繊装置51のホッパー511に供給し、解繊して、切替ダンパ517から2台の第2解繊装置52、53の各々のリザーブボックス521、531に供給し、再び解繊して、第1ウェブ形成装置54及び第2ウェブ形成装置55のそれぞれのリザーブボックス541、551に供給し、更に解繊した(図3参照)。
【0051】
その後、第1ウェブ形成装置54において更に解繊された混合繊維を、シリンダーブロア544によりスクリューコンベア545上に供給し、搬送し、端部のゲージローラ546部からフロントコンベア547上に供給し、堆積させて、第1ウェブ111を形成した。次いで、この第1ウェブ111上に、カプセル撒布機56から熱膨張性マイクロカプセルを撒布し(撒布量は、繊維マットに含有されるガラス繊維、ポリプロピレン樹脂繊維及び熱膨張性マイクロカプセルの合計を100質量%とした場合に、熱膨張性マイクロカプセルが10質量%となるようにした。)、フロントコンベア557により搬送し、その後、第1ウェブ111の熱膨張性マイクロカプセルが撒布された面に、第2ウェブ形成装置55において更に解繊された混合繊維を、シリンダーブロア554により供給し、堆積させて、第2ウェブ112を形成し、第1ウェブ111、第2ウェブ112及びこれらの界面に撒布された熱膨張性マイクロカプセルを有するウェブ11を作製した。次いで、ニードリング装置58によりウェブ11をニードリング処理して繊維マット1を作製し、所定幅にカッティングし、マット巻取ロール59に巻き取った(図1参照)。この繊維マット1の目付は350g/mであり、厚さは5mmであった。
【0052】
(2)車両内装用熱膨張性基材
前記(1)で作製した繊維マット1を、170℃[ポリプロピレン樹脂繊維が溶融する温度(160℃)より10℃高い。]に調温された熱風炉62内を3分間かけて搬送して、ポリプロピレン樹脂繊維を溶融させた。その後、熱板の温度が170℃(熱膨張性マイクロカプセルの熱膨張開始温度より10℃低い。)に設定された熱プレス機63により、圧力15MPaで3秒間、加熱し、加圧した。次いで、冷却板間のクリアランスが2mmであり、この冷却板の内部に水が流通されて温度が20℃に設定された冷却プレス機64により冷却し、厚さ1.8mmの車両内装用熱膨張性基材2を製造した。その後、裁断機65により所定長さに裁断し、計量機により重量を測定し、基材載置台67に載置した(図4参照)。
【0053】
実施例2(熱可塑性樹脂粉末を用いた車両内装用熱膨張性基材の製造)
実施例1で用いたガラス繊維を(これらの合計を100質量%とする。)、第1解繊装置51のホッパー511に供給し、解繊して、切替ダンパ517から2台の第2解繊装置52、53の各々のリザーブボックス521、531に供給し、再び解繊して(図3参照)、第1ウェブ形成装置54及び第2ウェブ形成装置55のそれぞれのリザーブボックス541、551に供給し、更に解繊した。その後、実施例1と同様にして第1ウェブ111を形成した。次いで、この第1ウェブ111上に、カプセル撒布機56から熱膨張性マイクロカプセルを撒布した。また、樹脂粉末撒布機57からポリプロピレン樹脂粉末を撒布した(ガラス繊維とポリプロピレン樹脂粉末との質量割合は、実施例1におけるガラス繊維とポリプロピレン樹脂繊維との質量割合と同じであり、全量における熱膨張性マイクロカプセルの質量割合も実施例1の場合と同じである。)。
【0054】
その後、熱膨張性マイクロカプセル及び熱可塑性樹脂粉末が撒布された第1ウェブ111を、フロントコンベア557により搬送し、次いで、第1ウェブ111の熱膨張性マイクロカプセル及びポリプロピレン樹脂粉末が撒布された面に、実施例1と同様にして第2ウェブ112を形成し、第1ウェブ111、第2ウェブ112及びこれらの界面に撒布された熱膨張性マイクロカプセル及びポリプロピレン樹脂粉末を有するウェブ11を作製した。その後、実施例1と同様にしてニードリング処理して繊維マット1を作製し、所定幅にカッティングし、マット巻取ロール59に巻き取った(図2参照)。この繊維マット1の目付は350g/mであり、厚さは5mmであった。次いで、実施例1の前記(2)と同様にして厚さ1.8mmの車両内装用熱膨張性基材2を製造し、裁断機65により所定長さに裁断し、計量機により重量を測定し、基材載置台67に載置した(図4参照)。
【0055】
実施例3(車両内装用基材の製造)
実施例1で製造され、所定長さに裁断された車両内装用熱膨張性基材2を、230℃に調温された加熱炉72内に90秒間静置し、表面温度が195℃(熱膨張性マイクロカプセルの熱膨張開始温度より17℃高い。)になるように車両内装用熱膨張性基材2を昇温させ、熱膨張性マイクロカプセルを熱膨張させ、車両内装用基材3を製造した。その後、冷却板間のクリアランスが8mmであり、この冷却板の内部に水が流通されて温度が18℃に設定された冷却プレス機73により冷却し、厚さ8mmの車両内装用基材4を製造した。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明は、軽量であり、且つ十分な吸音性及び高い剛性等を併せて有する車両用内装材を製造するための車両内装用熱膨張性基材、及びこの車両内装用熱膨張性基材を用いた車両内装用基材の技術分野において利用することができ、特に、車両の天井材、ドアトリム、トランクルーム等の内張、ワゴン車等の荷室等の製品分野において有用である。
【符号の説明】
【0057】
1;繊維マット、11;ウェブ、111;第1ウェブ、112;第2ウェブ、2;車両内装用熱膨張性基材、3;車両内装用基材、4;車両用内装材、51;第1解繊装置、511、521、531、541;リザーブボックス、512;チューブラチス、513、522、532、542;スパイクラチス、514、523、533、543;フィードローラ、515、524、534、544、554;シリンダーブロア、516、525;ファン、517;切替ダンパ、52、53;第2解繊装置、54;第1ウェブ形成装置、55;第2ウェブ形成装置、535、545;スクリューコンベア、536、546;ゲージローラ、56;カプセル撒布機、57;樹脂粉末撒布機、58;ニードリング装置、59;マット巻取ロール、61;巻取機、62;熱風炉、621;段差ロール、63;熱プレス機、64;冷却プレス機、65;裁断機、66;計量機、67;基材載置台、71;ベルトコンベア、72;加熱炉、721;遠赤外線ヒータ、73;圧縮成形機。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
無機繊維、熱可塑性樹脂繊維及び熱膨張性マイクロカプセルを含有するウェブをニードリングして繊維マットを作製し、その後、該繊維マットを、該熱可塑性樹脂繊維が溶融し、且つ該熱膨張性マイクロカプセルの熱膨張開始温度より低い温度範囲で加熱し、熱プレスし、次いで、冷却することを特徴とする車両内装用熱膨張性基材の製造方法。
【請求項2】
前記無機繊維及び前記熱可塑性樹脂繊維を含有する第1ウェブを形成し、該第1ウェブ上に前記熱膨張性マイクロカプセルを撒布し、その後、該第1ウェブの該熱膨張性カプセルが撒布された面に、前記無機繊維及び前記熱可塑性樹脂繊維を含有する第2ウェブを積層して前記ウェブを作製する請求項1に記載の車両内装用熱膨張性基材の製造方法。
【請求項3】
前記熱プレスが、前記熱可塑性樹脂繊維が溶融する温度を5〜50℃越え、且つ前記熱膨張性マイクロカプセルの前記熱膨張開始温度から該熱膨張開始温度を50℃下回る温度までの温度範囲でなされる請求項1又は2に記載の車両内装用基材の製造方法。
【請求項4】
前記熱可塑性樹脂繊維がポリオレフィン樹脂繊維である請求項1乃至3のうちのいずれか1項に記載の車両内装用熱膨張性基材の製造方法。
【請求項5】
前記無機繊維と、前記熱可塑性樹脂繊維と、前記熱膨張性マイクロカプセルとの合計を100質量%とした場合に、該無機繊維は20〜80質量%、熱可塑性樹脂繊維は20〜80質量%、熱膨張性マイクロカプセルは5〜20質量%である請求項1乃至4のうちのいずれか1項に記載の車両内装用熱膨張性基材の製造方法。
【請求項6】
無機繊維、熱可塑性樹脂粉末及び熱膨張性マイクロカプセルを含有するウェブをニードリングして繊維マットを作製し、その後、該繊維マットを、該熱可塑性樹脂繊維が溶融し、且つ該熱膨張性マイクロカプセルの熱膨張開始温度より低い温度範囲で加熱し、熱プレスし、次いで、冷却することを特徴とする車両内装用熱膨張性基材の製造方法。
【請求項7】
前記無機繊維を含有する第1ウェブを形成し、該第1ウェブ上に前記熱可塑性樹脂粉末及び前記熱膨張性マイクロカプセルを撒布し、その後、該第1ウェブの該熱可塑性樹脂粉末及び該熱膨張性マイクロカプセルが撒布された面に、前記無機繊維を含有する第2ウェブを積層して前記ウェブを作製する請求項6に記載の車両内装用熱膨張性基材の製造方法。
【請求項8】
前記熱プレスが、前記熱可塑性樹脂粉末が溶融する温度を5〜50℃越え、且つ前記熱膨張性マイクロカプセルの前記熱膨張開始温度から該熱膨張開始温度を50℃下回る温度までの温度範囲でなされる請求項6又は7に記載の車両内装用基材の製造方法。
【請求項9】
前記熱可塑性樹脂粉末がポリオレフィン樹脂粉末である請求項6乃至8のうちのいずれか1項に記載の車両内装用熱膨張性基材の製造方法。
【請求項10】
前記無機繊維と、前記熱可塑性樹脂粉末と、前記熱膨張性マイクロカプセルとの合計を100質量%とした場合に、該無機繊維は20〜80質量%、熱可塑性樹脂粉末は20〜80質量%、熱膨張性マイクロカプセルは5〜20質量%である請求項6乃至9のうちのいずれか1項に記載の車両内装用熱膨張性基材の製造方法。
【請求項11】
前記熱膨張性マイクロカプセルは静電気除去された後、撒布される請求項1乃至10のうちのいずれか1項に記載の車両内装用熱膨張性基材の製造方法。
【請求項12】
前記無機繊維がガラス繊維である請求項1乃至11のうちのいずれか1項に記載の車両内装用熱膨張性基材の製造方法。
【請求項13】
請求項1乃至12のうちのいずれか1項に記載の方法により製造された車両内装用熱膨張性基材を、前記熱膨張性マイクロカプセルの前記熱膨張開始温度を越える温度範囲で加熱して熱膨張させることを特徴とする車両内装用基材の製造方法。
【請求項14】
前記加熱が、前記熱膨張性マイクロカプセルの前記熱膨張開始温度を5〜50℃越える温度範囲でなされる請求項13に記載の車両内装用基材の製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2011−37072(P2011−37072A)
【公開日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−184838(P2009−184838)
【出願日】平成21年8月7日(2009.8.7)
【特許番号】特許第4590483号(P4590483)
【特許公報発行日】平成22年12月1日(2010.12.1)
【出願人】(000211857)中川産業株式会社 (20)
【Fターム(参考)】