説明

車両内装部材

【課題】操作部材の非操作時にはスライド部材のスライド移動を適切に規制すると共に、スライド操作機構の簡素化および操作性の向上を図る。
【解決手段】ロックレバー80は、スライド部材に回転支軸43で支持され、係合位置と退避位置との間で回転変位する。操作レバー60は、回転支軸43と平行な支持シャフト42でスライド部材に支持され、非操作位置と操作位置との間で回転変位する。操作レバー60は、ロックレバー80に設けた第1壁部91および第2壁部92に当接する係合ピン70を備える。操作レバー60の操作位置への操作時には、係合ピン70が第1壁部91に当接し、該操作レバー60の回転変位に連動してロックレバー80が退避位置へ回転変位する。操作レバー60の非操作位置において、ロックレバー80の単独の回転変位は、係合ピン70と第2壁部92との当接により不能とされる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ベース部材と、前記ベース部材に対してスライド移動可能に配設されたスライド部材とを備え、車両乗員室に設置される車両内装部材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車には、乗員室における前部座席間(運転席と助手席との間)のフロアに、身の回りの物品を出入れ可能に収納し得る車両内装部材としてのコンソールボックスを設置したものがある。このコンソールボックスのボックス本体は、内部に物品の収納部を画成すると共に、上面に開口した前記収納部の開口部を開閉可能な蓋部材を備えている。
【0003】
前記コンソールボックスは、前部座席の側方に設置されているので、前記蓋部材の上部にアームレストを備えた形態がある。ここで自動車では、フロントシートが車体の前後方向へスライド調整し得るように設置されている。このため、アームレストを、フロントシートの移動方向に沿ってボックス本体に対してスライド移動可能に配設して、アームレストの位置を使用者の好みに合わせて調節できるようにしたコンソールボックスが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−179230号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記特許文献1に開示のスライド式アームレストは、アームレストに設けた操作レバーの操作部を上方へ引き上げると該操作レバーが回転変位し、この操作レバーの後端部から後方へ延出した第1連結アームが下方へ移動することで、該第1連結アームに連結された第2連結アームが回転変位する。そして、第2連結アームの回転変位によりロック機構が変位して、固定基台部に対するスライド板のスライド移動が許容されるよう構成されている。
【0006】
しかし、操作レバーに一体的に形成された第1連結アームと第2連結アームとは、ピンによる単純なヒンジにより連結されている。このため、第1連結アームおよび第2連結アームを回転変位可能とするために、連結部は互いに遊びを大きく取っている。従って、ロック機構に外力が作用したり、走行時に車体の上下振動等による慣性力が作用すると、操作レバーの非操作時に第2連結アームの回転変位が規制されない構造となっている。すなわち、操作レバーを操作しなくても、第2連結アームが回転変位してロック機構が作動するようになり、固定基台部に対してスライド板がスライド移動してアームレストが不用意にスライドするおそれがある。また、第2連結アームとロック機構とが別部材に構成されており、操作レバーを含むスライド操作機構を構成する部品点数が多く構造が複雑になっている。
【0007】
そこで本発明では、操作部材の非操作時にはスライド部材のスライド移動を適切に規制すると共に、スライド操作機構の簡素化および操作性の向上を図った車両内装部材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決し、所期の目的を達成するため、本発明の請求項1に記載の発明は、
ベース部材と、前記ベース部材に対してスライド移動可能に配設されたスライド部材とを備えた車両内装部材において、
前記スライド部材に第1回転軸で支持され、前記第1回転軸から離間して設けたロック係合部が前記ベース部材に設けられた被係合部に係合して該スライド部材の移動を規制する係合位置と、該被係合部から該ロック係合部が外れてスライド部材の移動を許容する退避位置との間で回転変位するロック部材と、
前記第1回転軸と平行な第2回転軸により、前記スライド部材に対して非操作位置と操作片部の操作による操作位置との間で回転変位可能に支持されると共に非操作位置に向け付勢され、操作片部と前記第2回転軸を挟んで反対側に位置する操作連結部の回転軌跡が、前記第1回転軸から離間して前記ロック部材に設けたロック連結部の回転軌跡と交差するよう設置された操作部材とを備え、
前記操作連結部は、前記操作部材の非操作位置から操作位置に向けた回転変位により、前記第1回転軸に近づく方向へ変位して円弧状の軌跡で移動する連結突部を有し、
前記ロック連結部は、
前記操作部材の操作位置への操作に伴う前記連結突部の移動軌跡と交差するよう延在し、前記操作部材の非操作位置から操作位置への回転変位において当接した該連結突部の前記第1回転軸側への移動を許容して、操作部材の操作に連動してロック部材を係合位置から退避位置へ回転変位させる第1壁部と、
前記操作部材の非操作位置において前記連結突部の第1回転軸側に延在し、該操作部材の非操作位置において当接した該連結突部の該第1回転軸側への移動を規制して、前記ロック部材の係合位置から退避位置への回転変位を不能とする第2壁部とを有することを特徴とする。
【0009】
従って、請求項1に係る発明によれば、操作部材を非操作位置から操作位置へ回転変位させる際には、ロック部材のロック連結部に設けた第1壁部が、操作部材の操作連結部に設けた連結突部の第1回転軸側への移動を許容する。これにより、操作部材の非操作位置から操作位置への回転変位に伴い、第1壁部に当接した連結突部が円弧状の軌跡に沿って移動するので、該操作部材の操作に連動してロック部材を係合位置から退避位置へ回転変位させ得る。一方、操作部材の非操作位置においては、ロック連結部に設けた第2壁部が、操作連結部に設けた連結突部の第1回転軸側への移動を規制する。これにより、ロック部材単独の係合位置から退避位置への回転変位は不能となり、ロック部材のロック係合部と本体部材の被係合部との係合状態が保持される。従ってロック部材に、外力が作用したり、走行時に車体の上下振動等による慣性力が作用しても、操作部材の非操作時には該ロック部材の回転変位が規制され、ベース部材に対してスライド部材が不用意にスライドすることがない。また、操作部材とロック部材によりスライド操作機構が構成されるので、従来より部品点数が少なく、構造の簡素化が図られる。
【0010】
請求項2に記載の発明は、
ベース部材と、前記ベース部材に対してスライド移動可能に配設されたスライド部材とを備えた車両内装部材において、
前記スライド部材に第1回転軸で支持され、前記第1回転軸から離間して設けたロック係合部が前記ベース部材に設けられた被係合部に係合して該スライド部材の移動を規制する係合位置と、該被係合部から該ロック係合部が外れてスライド部材の移動を許容する退避位置との間で回転変位するロック部材と、
前記第1回転軸と平行な第2回転軸により、前記スライド部材に対して非操作位置と操作片部の操作による操作位置との間で回転変位可能に支持されると共に非操作位置に向け付勢され、操作片部と前記第2回転軸を挟んで反対側に位置する操作連結部の回転軌跡が、前記第1回転軸から離間して前記ロック部材に設けたロック連結部の回転軌跡と交差するよう設置された操作部材とを備え、
前記ロック連結部は、前記ロック部材の係合位置から退避位置に向けた回転変位により、前記第2回転軸に近づく方向へ変位して円弧状の軌跡で移動する連結突部を有し、
前記操作連結部は、
前記ロック部材の係合位置から退避位置への回転変位に伴う前記連結突部の移動軌跡と交差するよう延在し、前記操作部材の非操作位置から操作位置への回転変位において当接した該連結突部の前記第2回転軸側への移動を許容して、操作部材の操作に連動してロック部材を係合位置から退避位置へ回転変位させる第1壁部と、
前記操作部材の非操作位置において前記連結突部の第2回転軸側に延在し、該操作部材の非操作位置において当接した該連結突部の第2回転軸側への移動を規制して、前記ロック部材の係合位置から退避位置への回転変位を不能とする第2壁部とを有することを特徴とする。
【0011】
従って、請求項2に係る発明によれば、操作部材を非操作位置から操作位置へ回転変位させる際には、操作部材の操作連結部に設けた第1壁部が、ロック部材のロック連結部に設けた連結突部の第2回転軸側への移動を許容する。これにより、操作部材の非操作位置から操作位置への回転変位に伴い、第1壁部に当接した連結突部が円弧状の軌跡に沿って移動するので、該操作部材の操作に連動してロック部材を係合位置から退避位置へ回転変位させ得る。一方、操作部材の非操作位置においては、操作連結部に設けた第2壁部が、ロック連結部に設けた連結突部の第1回転軸側への移動を規制する。これにより、ロック部材単独の係合位置から退避位置への回転変位は不能となり、ロック部材のロック係合部と本体部材の被係合部との係合状態が保持される。従ってロック部材に、外力が作用したり、走行時に車体の上下振動等による慣性力が作用しても、操作部材の非操作時には該ロック部材の回転変位が規制され、ベース部材に対してスライド部材が不用意にスライドすることがない。また、操作部材とロック部材によりスライド操作機構が構成されるので、従来より部品点数が少なく、構造の簡素化が図られる。
【0012】
請求項3に記載の発明は、
前記第1壁部は、前記操作部材の非操作位置および前記ロック部材の係合位置において、前記連結突部から離間した位置に延在形成されたことを要旨とする。
従って、請求項3に係る発明によれば、操作部材を非操作位置から操作位置に向けて回転変位させる際に、回転変位初期は連結突部が第1壁部に当接しないのでロック部材が回転変位せず、回転変位途中に連結突部が第1壁部に当接した後にロック部材が回転変位する。これにより、操作部材が外力や車体の上下振動等により僅かに回転変位してもロック部材の回転変位が防止され、ベース部材に対してスライド部材が不用意にスライド移動することを防止し得る。
【0013】
請求項4に記載の発明は、
前記ロック部材のロック連結部に設けられ、前記操作部材の操作位置から非操作位置への回転変位に伴う前記連結突部の移動軌跡と交差するよう延在して、該操作部材の操作位置から非操作位置への回転変位により該連結突部に当接する第3壁部を備えることを要旨とする。
従って、請求項4に係る発明によれば、非操作位置に向け付勢されている操作部材が操作位置から非操作位置へ復帰する際に、操作部材の連結突部がロック部材の第3壁部に当接するので、ロック部材を係合位置へ復帰させ得ると共に、当該操作部材が勢いよく非操作位置へ復帰することが防止され、また異音の発生等を軽減し得る。
【0014】
請求項5に記載の発明は、
前記操作部材の操作連結部に設けられ、前記ロック部材の退避位置から係合位置への回転変位に伴う前記連結突部の移動軌跡と交差するよう延在して、該操作部材の操作位置から非操作位置への回転変位により該連結突部に当接する第3壁部を備えることを要旨とする。
従って、請求項5に係る発明によれば、非操作位置に向け付勢されている操作部材が操作位置から非操作位置へ復帰する際に、操作部材の第3壁部がロック部材の連結突部に当接するので、ロック部材を係合位置へ復帰させ得ると共に、当該操作部材が勢いよく非操作位置へ復帰することが防止され、また異音の発生等を軽減し得る。
【0015】
請求項6に記載の発明は、
前記ロック部材は、前記ロック係合部側が前記ロック連結部側より重く形成されたことを要旨とする。
従って、請求項6に係る発明によれば、ロック部材が係合位置の方向へ回転変位するようになり、係合位置に保持され易くなる。
【0016】
請求項7に記載の発明は、
前記ベース部材は、上方へ開口する収納部が画成されると共に、前記収納部を開閉可能な蓋部材を備え、前記スライド部材は、前記蓋部材にスライド可能に配設されたことを要旨とする。
従って、請求項7に係る発明によれば、スライド部材を蓋部材に対してスライド可能に配設したもとで、該スライド部材と蓋部材とを回転させることでベース部材に画成した収納部を開放し得る。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係る車両内装部材によれば、操作部材の非操作時にはスライド部材のスライド移動を適切に規制して該スライド部材が不用意にスライドすることを防止し得ると共に、スライド部材をスライド移動させるスライド操作機構の簡素化および操作性の向上が図られる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】(a)は、本発明の実施例に係る車両内装部材としてのコンソールボックスを、スライド部材を通常位置に停止させた状態で示す斜視図であり、(b)は、スライド部材を延出位置へスライド移動させた状態を示す斜視図である。
【図2】コンソールボックスの本体部材を構成する蓋部材に配設した操作レバーおよびロックレバーを、一部省略して示す部分斜視図である。
【図3】蓋部材に配設されるスライドレール体、操作レバーおよびロックレバー等を示す分解斜視図である。
【図4】図2のIV−IV線断面図である。
【図5】(a)は、操作レバーの操作途中状態を示す説明断面図であり、(b)は、操作レバーを操作位置まで回転操作することでロックレバーが退避位置へ回転変位することを示す説明断面図である。
【図6】実施例の第1連結部および第2連結部との連結形態を概略的に示した説明図であって、ロックレバーに設けた第2連結部の第2壁部によりロックレバーの単独回転が規制されることを示す説明図である。
【図7】操作レバーを回転操作することで、ロックレバーが回転変位することを示す説明図である。
【図8】操作レバーの操作を解除することで、該操作レバーが非操作位置へ回転変位すると共にロックレバーが係合位置へ回転変位する状態を示す説明図である。
【図9】(a)は、第1実施例の第2連結部の別例を示す説明図であり、(b)は、操作レバーを操作位置まで回転操作することでロックレバーが退避位置へ回転変位することを示す説明断面図である。
【図10】(a)は、第1実施例の第2連結部の更に別例を示す説明図であり、(b)は、操作レバーを操作位置まで回転操作することでロックレバーが退避位置へ回転変位することを示す説明断面図である。
【図11】別実施例の第1連結部および第2連結部との連結形態を概略的に示した説明図であって、操作レバーに設けた第2連結部の第2壁部によりロックレバーの単独回転が規制されることを示す説明図である。
【図12】操作レバーを回転操作することで、ロックレバーが回転変位することを示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
次に、本発明に係る車両内装部材につき、好適な実施例を挙げて、添付図面を参照しながら以下説明する。なお実施例では、車両内装部材として、自動車の乗員室における前部座席間(運転席と助手席との間)のフロアに設置されるコンソールボックスを例示する。なお、コンソールボックスにおいて前後とは、車両に設置した際の車両の前後方向を基準として指称し、左右とは、車両の前進方向を基準とする左右方向を指称する。すなわち図1および図2では、図中左下側が車両の前側で、図中右上側が車両の後側である。
【実施例】
【0020】
実施例のコンソールボックスCBは、図1に示すように、上方に開口する収納部13を画成した本体部材(ベース部材)10の上部に、アームレスト部として機能するスライド部材50を備えている。この本体部材10は、前記収納部13を開閉する蓋部材20を上部に備えており、前記スライド部材50は、該蓋部材20の上面に前後方向へのスライド移動が可能に配設されている。従ってスライド部材50は、蓋部材20の倒伏状態(収納部13の閉成状態)において、蓋部材20に整合して該蓋部材20を全面的に被覆する「通常位置」(図1(a))と、この通常位置から前方へスライド移動して、前部が蓋部材20から延出した「延出位置」(図1(b))とにスライド移動する。またスライド部材50は、蓋部材20の回転変位に伴って本体部材10に対して回転し、蓋部材20の起立状態において収納部13を開放する「開放位置」(図示省略)に変位し得る。なお、実施例のスライド部材50は、後述するように、通常位置と延出位置との間の2箇所においても停止保持可能となっており、通常位置および延出位置を含めて合計4箇所で停止保持し得る。
【0021】
本体部材10は、図1および図2に示すように、前部座席間のフロアに設置することを前提として、前後方向に長い箱体状に構成されており、図示省略した前端部が、乗員室前部に配設されたインストルメントパネルに連結される。そして本体部材10は、前後方向の略中間部を境とした前部本体11および後部本体12からなり、前部本体11にはシフトレバー、容器ホルダ、コインボックス、灰皿等が配設されている。また後部本体12は、前部本体11より上方へ突出した状態に形成され、上面に開口した前記収納部13が内部に画成されている。また、後部本体12の内部後方には、前記蓋部材20を回転可能に支持する支持フレーム(図示せず)が配設されている。また、後部本体12の上面前縁には、後述する操作レバー(操作部材)60の操作時に手指との干渉を回避する凹部14が形成されている。
【0022】
本体部材10を構成する蓋部材20は、図2および図3に示すように、後部本体12の上面輪郭形状よりも一回り小さいサイズに形成された合成樹脂製のトレー状部材である。この蓋部材20の後部は、後部本体12の内部後方に配設した支持フレームの左右方向に延在する回転軸15に枢支されており、本体部材10に倒伏して収納部13を覆蓋する閉成状態(図1(a))と、後部を回転中心として前部を後上方へ略垂直まで跳ね上げた開放状態(図示せず)とに姿勢変位可能となっている。そして、蓋部材20の前端下部には、後部本体12の上面前側に設けた係止受部に係脱可能に係合する開閉レバー25が配設されており、開閉レバー25の非操作状態で蓋部材20の前部が本体部材10に係止され、開閉レバー25の操作時に係止が解除されて蓋部材20の開閉操作が許容される。
【0023】
蓋部材20は、図1(b)および図2に示すように、後端から前方へ約1/3までの部分が、スライド部材50が延出位置へ移動した際に露出するようになり、これより前側部分は、スライド部材50で常に被覆されている。従って蓋部材20は、後端から前方へ約1/3までの部分を境として、その前側部分を、スライド操作に係る各構成部材を配設する機構設置部21とすると共に、後側部分を、上方へ突出したカバー部22としている。機構設置部21は、その前側部分が平坦状に形成されると共に後側部分(カバー部22に隣接した部分)には、後述する係合ブロック部100が形成されている。また、カバー部22の機構設置部21に臨む前壁には開口部23が形成され、スライドレール体30が前後に挿通されるようになっている。なお、蓋部材20の前端部には、上方および前後に開口した前端凹部24が形成されており、後述する操作レバー60が臨むようになっている。
【0024】
スライドレール体30は、図2〜図4に示すように、蓋部材20の機構設置部21に敷設固定されて、該蓋部材20を構成するレール部材31と、このレール部材31に対して前後方向へのスライド移動が可能に配設されて、スライド部材50を構成するアッパー移動部材32とを備えている。レール部材31は、スチール等の板材をプレス成形した金属製またはABS等の樹脂原料からインジェクション成形された合成樹脂製の成形部材であり、機構設置部21の前側部分に固定されるレール取付部33と、このレール取付部33に一体的に成形されて、該レール取付部33の後端左右両側から後方へ平行に延設されたガイドレール34,34とを備えており、レール取付部33が蓋部材20にビス等で固定されている。すなわち各ガイドレール34,34は、前記係合ブロック部100を挟んだ左右において前後方向へ延在している。
【0025】
またアッパー移動部材32は、スチール等の板材からプレス成形された金属製またはABS等の樹脂原料からインジェクション成形された合成樹脂製の成形部材であり、レール部材31より僅か幅狭に形成されている。このアッパー移動部材32は、レール部材31の前記レール取付部33に対して上方から対向するベース板部36と、ベース板部36の左右両側に一体的に形成されて、後方へ平行に延設されたスライド支持部37,37と、前記ベース板部36の後方において両スライド支持部37,37の間に山形に設けられたカバー部38とを備えている。そして、ベース板部36の上部からカバー部38の下部に亘る領域が、後述する操作レバー(操作部材)60およびロックレバー(ロック部材)80が配設される設置部39とされている。
【0026】
アッパー移動部材32の前部は前方へ開口しており、設置部39の前部(アッパー移動部材32の前部)における左右には、左右方向で対向して立設された支持壁部40,40が形成されている。これら支持壁部40,40には、図3に示すように、支持孔41,41が左右方向において同一軸線上に形成されており、操作レバー60を回転可能に枢支する支持シャフト(第2回転軸)42が挿通支持されるようになっている。また、設置部39の前後略中間部(ベース板部36の後端)における左右、すなわち左右のスライド支持部37,37の左右方向で対向した壁部には、回転支軸(第1回転軸)43,43が左右方向において同一軸線状に突設されており、ロックレバー80を回転可能に枢支するようになっている。すなわち、支持シャフト42の軸方向および回転支軸43,43は、左右方向において軸心が平行となっている。
【0027】
前述のように構成されたスライドレール体30は、レール部材31のガイドレール34,34に、図示省略した複数のボールまたはローラが回転可能に配設されており、これにより該レール部材31に対してアッパー移動部材32がスムーズにスライド移動し得る。このようなスライドレール体30は、図2に示すように、蓋部材20の開口部23に対して後部側を挿通させたもとで、機構設置部21にレール部材31を固定すると、各ガイドレール34,34の間に前記係合ブロック部100が整合して、前記カバー部38が該係合ブロック部100を上方から覆うようになる。
【0028】
スライド部材50は、図1、図2および図4に示すように、蓋部材20を全体的に被覆する大きさに形成された合成樹脂製の成形部材であり、前記スライドレール体30のアッパー移動部材32に対してビス等により上方から固定され、該アッパー移動部材32と一体化する。そして、スライド部材50の上面には、必要に応じて、ウレタンウォームやスポンジ等の弾性体が配設されると共に、この弾性体の外面には、必要に応じて、合成樹脂製、編布、織布、不織布または本革等からなる表皮材が配設される。従ってスライド部材50は、スライドレール体30のアッパー移動部材32のスライド移動により本体部材10に対して前後方向へのスライド移動が可能となり、腕を載せるためのアームレスト部として機能する。なお、スライド部材50の前端部には、前後および下方に開口して操作レバー60が整合する開口凹部51が形成されている。
【0029】
実施例のコンソールボックスCBは、図2〜図4に示すように、スライド部材50の構成部材として該スライド部材50に固定された前記アッパー移動部材32に、スライド操作機構として、操作部材としての操作レバー60と、該操作レバー60の後方に位置するロック部材としてのロックレバー80とが、前後方向に互いに連結された状態で回転可能に配設される。そして、操作レバー60の非操作時には、蓋部材20に設けた前記係合ブロック部100にロックレバー80が係合することで、スライド部材50のスライド移動が規制される。また、操作レバー60を回転操作することで、ロックレバー80が係合位置から退避位置へ回転変位し、該ロックレバー80と係合ブロック部100との係合が解除されて、スライド部材50のスライド移動が許容されるよう構成されている。
【0030】
操作レバー60は、図2〜図4に示すように、本体枠部61の前側に設けた操作ノブ部(操作片部)62と、本体枠部61から後方へ平行に延出したアーム部(操作連結部)63,63とを備えている。また、本体枠部61の左右両側には、夫々側外方へ突出したボス部64,64が形成されており、各々のボス部64,64には、左右方向において同一軸線状に軸通孔65,65が形成されている。これら軸通孔65,65には、前記支持シャフト42が貫通される。すなわち操作レバー60は、図2および図4に示すように、各軸通孔65,65に挿通支持した支持シャフト42の両端を、前記アッパー移動部材32に形成した支持孔41,41へ挿通させることで、該アッパー移動部材32に対して回転可能に配設される。そして、操作ノブ部62を蓋部材20の前端凹部24に臨ませると共に、各アーム部63,63を後方に延出させ、操作ノブ部62が前方斜め下方を指向すると共に各アーム部63,63が後方斜め上方を指向する非操作位置(図4)と、操作ノブ部62が前方斜め上方を指向すると共に各アーム部63,63が後方斜め下方を指向する操作位置(図5(b))との間で回転変位が可能となっている。
【0031】
前記各アーム部63,63の後端部には、夫々の対向する内面に、係合ピン(連結突部)70,70が突設されている。これら係合ピン70,70は、ロックレバー80に設けた後述の係合溝部90,90に夫々嵌合するようになっており、これら係合ピン70,70と係合溝部90,90とが嵌合することで、操作レバー60とロックレバー80との連結が図られる。これら係合ピン70,70は、操作レバー60が非操作位置と操作位置との間で回転変位することで、図6および図7に示すように、支持シャフト42を中心とした円弧状の軌道に沿って移動するようになる。
【0032】
前記支持シャフト42には、図2および図3に示すように、捻りバネ(付勢手段)66が配設されている。この捻りバネ66の一方の脚部は、スライド部材50に固定された前記アッパー移動部材32の突部44(図3)に掛止され、他方の脚部は、操作レバー60の操作ノブ部62の後面に掛止されている。従って操作レバー60は、スライド部材50と操作レバー60との間に配設された捻りバネ66により、常に操作位置から非操作位置側へ付勢されており、非操作時には非操作位置に保持される。
【0033】
ロックレバー80は、図2および図3に示すように、本体ブロック部81の前側に設けた連結レバー部(ロック連結部)82と、本体ブロック部81から後方へ延出した係合レバー部(ロック係合部)83とを備えている。そして、本体ブロック部81の左右両側には、夫々側外方へ突出したボス部84,84が形成されており、各々のボス部84,84には、左右方向において同一軸線状に軸通孔85,85が形成されている。これら軸通孔85,85は、前記回転支軸43,43に嵌合するようになっている。また、連結レバー部82の左右側面における前端近傍には、側方へ開口する係合溝部90,90が形成されており、前記操作レバー60の各係合ピン70,70が、各々の係合溝部90,90に対して側方から嵌合するようになっている。また、係合レバー部83の左右側面における後端近傍には、左右外方へ突出すると共に下方へ延在した係合爪部(係合突部)86,86が形成されている。
【0034】
このように構成されたロックレバー80は、図2および図4に示すように、各回転支軸43,43が対応の軸通孔85,85に嵌合することで、アッパー移動部材32に回転可能に配設される。そして連結レバー部82は、操作レバー60の各アーム部63,63間に臨み、操作レバー60のアーム部63の回転軌跡と該連結レバー部82の回転軌跡とが重なるようになり、前述したように、各係合ピン70,70が各係合溝部90,90に嵌合する。また係合レバー部83は、アッパー移動部材32の前記カバー部38の下方に位置する前記係合ブロック部100へ延出するようになる。そして、各回転支軸43,43に枢支されたロックレバー80は、連結レバー部82が前方斜め上方を指向すると共に係合レバー部83が水平後方を指向する係合位置(図4)と、連結レバー部82が水平前方を指向すると共に係合レバー部83が後方斜め上方を指向する退避位置(図5(b))との間で回転変位可能となっている。
【0035】
係合ブロック部100は、図3および図4に示すように、左右に対向して前後方向へ延在するリブ壁101,101の対向する内側に、夫々3個の突段部102が前後方向へ直列に配列されている。また、両リブ壁101,101の前端部内側には、前ストッパ部103,103が形成されていると共に、両リブ壁101,101の後端部内側には、後ストッパ部104,104が形成されている。そして、両リブ壁101,101には、各突段部102の前端と後端との間に、上方へ開口する合計4個ずつの係合凹部(被係合部)105(105A,105B,105C,105D)を、前後方向へ所要間隔毎に備えている。従って、左右の各係合凹部105には、ロックレバー80に設けた前記係合爪部86,86が、ロックレバー80の回転変位に基いて上方から係脱可能に係合するようになる。すなわち、ロックレバー80が係合位置に回転変位した際には、各係合爪部86,86が各係合凹部105,105に上方から突入係合するようになり(図4)、ロックレバー80が係合位置から退避位置へ回転変位するに伴い、各係合爪部86,86が各係合凹部105,105に対して上方へ退避し、各係合爪部86,86と各係合凹部105,105との係合が解除される(図5(b))。そして、ロックレバー80の各係合爪部86,86が最後部の各係合凹部105A,105Aに係合した際には、スライド部材50が前記通常位置に停止保持され、各係合爪部86,86が最前部の各係合凹部105D,105Dに係合した際には、スライド部材50が前記延出位置に停止保持されるようになっている。
【0036】
実施例のスライド操作機構では、前記操作レバー60の係合ピン70およびロックレバー80の係合溝部90の連結態様を次のように設定してある。これにより、操作レバー60が非操作位置にある場合には、ロックレバー80は係合位置にある。また、操作レバー60を非操作位置から操作位置まで回転変位させると、ロックレバー80が係合位置から退避位置まで連動して回転変位するようになり、これによりスライド部材50のスライド移動を許容する。更に、操作レバー60が非操作位置にある場合では、係合ピン70と係合溝部90との当接により、ロックレバー80の退避位置への単独での回転変位を規制する構成となっている。
【0037】
先ず、図6および図7に概略的に示すように、操作レバー60のアーム部63に突設された前記係合ピン70は、該操作レバー60の非操作位置において、図6のポイントP1に位置している。そして、操作レバー60の非操作位置から操作位置への回転変位に伴い、ポイントP2→ポイントP3→ポイントP4を通過しながらロックレバー80の回転中心である回転支軸43に近接する側へ円弧状の軌跡で移動する。すなわち係合ピン70は、ポイントP1から回転支軸43に近づく方向へ動き出し、支持シャフト42と回転支軸43との各軸中心を結んだ直線上に位置するポイントP3までは該回転支軸43に徐々に近づくように円弧状に移動し、ポイントP3からポイントP4までは該回転支軸43から徐々に離間するよう円弧状に移動する。
【0038】
このもとで係合溝部90は、図6および図7に示すように、操作レバー60の非操作位置から操作位置への回転変位方向において、前記係合ピン70の移動方向の前側に位置する第1壁部91を備えている。この第1壁部91は、係合ピン70の移動軌跡Lに交差すると共に、この交差位置からロックレバー80の回転中心である回転支軸43の方向へ延在するように形成されている。また、第1壁部91に沿った部位には、係合ピン70の外径より幅広な空間部95が、回転支軸43の方向へ画成されている。従って、操作レバー60を非操作位置から操作位置へ回転変位させる際に、該操作レバー60の回転変位に伴って円弧状の軌道で移動する係合ピン70が、第1壁部91に当接しながら該第1壁部91の回転支軸43側へ移動するに従い、ロックレバー80が係合位置から退避位置へ(操作レバー60の回転方向と逆方向へ)従動的に回転変位するようになる。換言すると、第1壁部91は、当接した係合ピン70を案内することで、操作レバー60の回転変位に連動してロックレバー80の回転変位を可能とする。なお係合ピン70は、ポイントP2からポイントP3へ移動する間は、第1壁部91に沿って回転支軸43に近づく方向へ摺動し、ポイントP3からポイントP4へ移動する間は、第1壁部91に沿って回転支軸43から離間する方向へ摺動する。
【0039】
実施例の係合溝部90では、図6に示すように、前記第1壁部91が、操作レバー60の非操作位置およびロックレバー80の係合位置において、係合ピン70から所要距離離間した位置に形成されている。すなわち、操作レバー60を非操作位置から操作位置に向けて回転変位させる過程において、係合ピン70がポイントP2に移動した時点で、該係合ピン70が第1壁部91に当接するよう構成されている。従ってロックレバー80は、非操作位置からの操作レバー60の回転変位初期では係合位置に保持されており、操作レバー60の回転変位途中(図5(a)の状態)から回転変位を開始する。これにより、操作レバー60が外力の作用(車体の上下振動等)により僅かに回転しても、ロックレバー80が不用意に回転しないよう考慮されている。
【0040】
そして係合溝部90は、図6および図7に示すように、操作レバー60の非操作位置において係合ピン70の回転支軸43側に延在する第2壁部92を備えている。すなわち第2壁部92は、少なくともロックレバー80の係合位置から退避位置への回転変位方向において係合ピン70の後側となる位置(係合ピン70の上側)から、前記支持シャフト42と該支持ピン70とを結ぶ線(図6において1点鎖線で図示)の延長線上まで、該係合ピン70の外周面に沿って延在するよう形成されている。従って、操作レバー60の非操作位置において、ロックレバー80が係合位置から退避位置へ単独で回転変位しようとした場合に、第2壁部92が係合ピン70に対して回転支軸43側から当接するので、該係合ピン70が該回転支軸43側へ変位しつつポイントP1から移動軌跡Lに沿って移動することを規制し得る。これにより、操作レバー60が非操作位置に停止している状態において、ロックレバー80に対して係合位置から退避位置へ回転変位する方向に外力が作用しても、第2壁部92が係合ピン70に当接して該ロックレバー80の回転変位を規制し、係合爪部86と係合凹部105との係合状態が保持される。
【0041】
更に係合溝部90は、図8に示すように、操作レバー60の操作位置から非操作位置に向けた回転変位方向において、該係合ピン70の移動方向前側に位置する(操作レバー60の非操作位置から操作位置に向けた回転変位方向においては、該係合ピン70の移動方向後側に位置する)第3壁部93を備えている。この第3壁部93は、係合ピン70の移動軌跡Lに交差すると共に、ロックレバー80の回転中心である回転支軸43から離間する方向へ延在するように形成されている。これにより、操作レバー60が非操作位置から操作位置へ回転変位する際に、該操作レバー60の回転変位に伴って円弧状に移動する係合ピン70が第3壁部93に当接する。従って、前記捻りバネ66の付勢力が操作レバー60とロックレバー80の両方に作用し、操作レバー60の操作位置から非操作位置への回転変位に伴ってロックレバー80を退避位置から係合位置へ回転変位させ得る。
【0042】
第3壁部93は直線に形成されており、操作レバー60が操作位置から非操作位置へ回転変位する間は、常に係合ピン70が第3壁部93に当接するようになっている。これにより、捻りバネ66の付勢力が常にロックレバー80にも作用するようになり、操作レバー60は、ロックレバー80と連動しながらゆっくり非操作位置へ回転変位するよう考慮されている。なお第3壁部93は、直線に限定されず、曲線であってもよい。
【0043】
そして、第1壁部91と第3壁部93との間、すなわち係合溝部90における支持シャフト42側には、第4壁部94が設けられている。この第4壁部94は、係合ピン70の移動軌跡Lに沿って延在しており、操作レバー60が非操作位置から操作位置に向けて回転変位する際に、ポイントP1からポイントP2まで移動する係合ピン70と該第4壁部94とは干渉しないようになっている。
【0044】
以上のように構成された実施例のコンソールボックスCBにおけるスライド部材50の作用について説明する。
【0045】
先ず、スライド部材50の通常位置においては、操作レバー60を操作しない状態においては、捻りバネ66の付勢力により該操作レバー60は非操作位置に保持され(図4)、これによりロックレバー80は係合位置に保持される。従って、ロックレバー80の係合爪部86,86が、係合ブロック部100における最後部の係合凹部105A,105Aに夫々係合している。これによりスライド部材50は、前方へのスライド移動が規制されて通常位置に保持される。そして、この状態では、操作レバー60の係合ピン70にロックレバー80に設けた係合溝部90の第2壁部92が当接することで、ロックレバー80が単独で退避位置へ回転変位することが規制される。従って、スライド部材50に外力が作用したり、走行中に車体が上下振動しても、ロックレバー80が回転変位することがなく、各係合爪部86と各係合凹部105Aとの係合状態が維持されて、スライド部材50が不用意にスライド移動することが防止される。
【0046】
そして、操作レバー60を操作して、非操作位置から操作位置へ回転変位させると、係合ピン70が係合溝部90の第1壁部91に当接しながら回転支軸43側へ移動することで、該操作レバー60の回転変位に伴ってロックレバー80が係合位置から退避位置へ回転変位する。なお、操作レバー60の回転変位初期には、係合ピン70が第1壁部91に当接せず、図5(a)に示した状態まで操作レバー60が回転変位することで係合ピン70が第1壁部91に当接する。すなわち実施例では、操作レバー60の操作ノブ部62が略水平状態となった際に係合ピン70が第1壁部91に当接し、以降は、操作レバー60の回転変位に連動してロックレバー80が回転変位するようになる。
【0047】
ロックレバー80が退避位置まで回転変位すると、ロックレバー80の係合爪部86と係合ブロック部100の係合凹部105,105との係合が解除され、スライド部材50の前方へのスライド移動が許容される。そして、スライド部材50を延出位置までの間の適宜位置へ移動させたもとで、操作レバー60の操作を解除すると、該操作レバー60が非操作位置に向けて回転変位することによりロックレバー80も係合位置に向けて回転変位し、係合爪部86,86が何れかの係合凹部105,105に突入して係合される。なお、操作レバー60がロックレバー80と連動して回転変位するので、ロックレバー80を係合位置へ適切に回転変位させ得ると共に、操作レバー60が勢いよく非操作位置まで回転変位することが防止され、操作レバー60と別部材との衝突による異音が発生を軽減し得る。
【0048】
操作レバー60の非操作位置から操作位置への回転変位開始と同時にロックレバー80を回転変位させる場合は、図9(a)に示すように、第1壁部91を、操作レバー60の非操作位置およびロックレバー80の係合位置において、係合ピン70が位置する部位から形成すればよい。第1壁部91をこのように形成すれば、図9(b)に示すように、操作レバー60が非操作位置から操作位置に向けて回転変位を開始すると同時に係合ピン70が第1壁部91に当接するので、ロックレバー80が係合位置から退避位置に向けて回転変位を開始するようになる。なお、この形態の係合溝部90では、前記した第4壁部94がない。
【0049】
また、操作位置から非操作位置へ回転変位する途中で、捻りバネ66の付勢力により操作レバー60が勢いよく回転変位しても問題ない場合は、図10(a)に示すように、第3壁部93を、第1壁部91および第4壁部94と略平行に延在するように形成してもよい。このような第3壁部93の場合には、図10(b)に示すように、係合ピン70がポイントP4→ポイントP2の間では、操作レバー60とロックレバー80とが連動して回転変位し、係合ピン70がポイントP2を通過すると、捻りバネ66の付勢力が操作レバー60に集中的に作用するようになり、該操作レバー60は勢いよく非操作位置へ回転変位するようになる。
【0050】
(別実施例)
図11は、係合ピンおよび係合溝部の別実施例の概略構成図を示した図面である。この別実施例では、前記操作レバー60およびロックレバー80の基本構成は前記実施例と同一としたもとで、ロックレバー80の連結レバー部82に係合ピン(連結突部)110を突設すると共に、操作レバー60のアーム部63に係合溝部120を設けた構成である。ロックレバー80の連結レバー部82に突設された係合ピン110は、該ロックレバー80の係合位置において、図11のポイントP1に位置している。そして、ロックレバー80の係合位置から退避位置への回転変位に伴い、ポイントP2→ポイントP3を通過しながら操作レバー60の回転中心である支持シャフト42に近接する側へ円弧状の軌跡で移動する。すなわち係合ピン110は、ポイントP1から支持シャフト42に近づく方向へ動き出し、支持シャフト42と回転支軸43の各軸中心とを結んだ直線上に位置するポイントP2までは該支持シャフト42に徐々に近づくように円弧状に移動し、ポイントP2からポイントP3までは該支持シャフト42から徐々に離間するよう円弧状に移動する。
【0051】
このもとで係合溝部120は、図12に示すように、操作レバー60の非操作位置から操作位置に向けた回転変位方向において、前記係合ピン110の移動方向の後側に位置する第1壁部121を備えている。この第1壁部121は、係合ピン110の移動軌跡Lに交差すると共に、この交差位置から操作レバー60の回転中心である支持シャフト42の方向へ延在するように形成されている。また、第1壁部121に沿った部位には、係合ピン70の外径より幅広な空間部125が、支持シャフト42の方向へ画成されている。従って、操作レバー60を非操作位置から操作位置へ回転変位させる際に、該操作レバー60の回転変位に伴って移動する第1壁部121が係合ピン110に当接すると(係合ピン110が相対移動して第1壁部121に当接すると)、該係合ピン110が第1壁部121に押されるに従い、ロックレバー80が係合位置から退避位置へ従動的に回転変位するようになる。従って第1壁部121は、当接した係合ピン110を案内することで、操作レバー60の回転変位に連動してロックレバー80の回転変位を可能とする。なお係合ピン110は、ポイントP1からポイントP2へ移動する間は、第1壁部121に当接しながら該第1壁部121に沿って支持シャフト42側へ摺動し、ポイントP2からポイントP3へ移動する間は、第1壁部121に沿って支持シャフト42から離間する側へ移動する。
【0052】
別実施例の係合溝部120では、図12に示すように、前記第1壁部121が、操作レバー60の非操作位置およびロックレバー80の係合位置において、係合ピン110から所要距離離間した位置に形成されている。すなわち、操作レバー60を非操作位置から操作位置に向けて回転変位させる過程において、第1壁部121がポイントP1に移動した時点で、該第1壁部121が係合ピン110に当接するよう構成されている。従ってロックレバー80は、非操作位置の操作レバー60を回転変位初期では係合位置に保持され、操作レバー60の回転変位途中(図5(a)の状態)から回転変位を開始する。これにより、操作レバー60が外力により僅かに回転しても、ロックレバー80が不用意に回転しない。
【0053】
そして係合溝部120は、図11および図12に示すように、操作レバー60の非操作位置において、係合ピン110の支持シャフト42側に延在する第2壁部122を備えている。すなわち第2壁部122は、少なくともロックレバー80の係合位置から退避位置への回転変位方向において係合ピン110の前側となる位置(係合ピン110の下側)から、前記支持シャフト42と該係合ピン110とを結ぶ線(図11において1点鎖線で図示)の線上まで、該係合ピン110の外周面に沿って延在するよう形成されている。従って、操作レバー60の非操作位置において、ロックレバー80が係合位置から退避位置へ単独で回転変位しようとした場合に、第2壁部122が係合ピン110に対して支持シャフト42側から当接するので、該係合ピン110が該支持シャフト42側へ変位しつつポイントP1から移動軌跡Lに沿って移動することを規制する。これにより、操作レバー60が非操作位置に停止している状態において、ロックレバー80に対して係合位置から退避位置へ回転変位する方向に外力が作用しても、係合ピン110が第2壁部122に当接して該ロックレバー80の回転変位を規制し、係合爪部86と係合凹部105との係合状態が保持される。
【0054】
更に係合溝部120は、図12に示すように、ロックレバー80の退避位置から係合作位置に向けた回転変位方向において、該係合ピン110の移動方向後側に位置する第3壁部123を備えている。この第3壁部123は、係合ピン110の移動軌跡Lに交差すると共に、操作レバー60の回転中心である支持シャフト42から離間する方向へ延在するように形成されている。これにより、操作レバー60が非操作位置から操作位置へ回転変位する際に、該操作レバー60の回転変位に伴って係合ピン110に第3壁部123が当接する。従って、前記捻りバネ66の付勢力が操作レバー60とロックレバー80の両方に作用し、操作レバー60の操作位置から非操作位置への回転変位に伴ってロックレバー80を退避位置から係合位置へ回転変位させ得る。
【0055】
第3壁部123は直線に形成されており、操作レバー60が操作位置から非操作位置へ回転変位する間は、常に係合ピン110に第3壁部123が当接するようになっている。これにより、捻りバネ66の付勢力が常にロックレバー80にも作用するようになり、操作レバー60は、ロックレバー80と連動しながらゆっくり非操作位置へ回転変位する。なお第3壁部123は、直線に限定されず、曲線であってもよい。
【0056】
第1壁部121と第3壁部123との間(係合溝部120における支持シャフト42と反対側)には、第4壁部124が設けられており、操作レバー60が非操作位置から操作位置に向けて回転変位する際に、ポイントP1にある係合ピン70と該第4壁部124は干渉しないようになっている。
【0057】
なお、別実施例の係合溝部120においても、前記実施例の係合溝部90と同様に、第1壁部121を、操作レバー60の非操作位置およびロックレバー80の係合位置において、係合ピン110が位置する部位から形成することで、操作レバー60の非操作位置から操作位置に向けた回転変位開始と同時に、ロックレバー80を係合位置から退避位置に向けて回転変位させることが可能である。また、第3壁部123を、第1壁部121および第4壁部124と平行となるように形成することも可能である。
【0058】
(変更例)
コンソールボックスは、前記実施例に示した以外の形態であってもよい。
(1)実施例では、第1回転軸である支持シャフト42および第2回転軸である回転支軸43,43を、前後方向に離間させると共に左右方向へ平行に延在するようにして、操作レバー60およびロックレバー80が垂直方向において回転変位する形態を例示したが、支持シャフト42および回転支軸43,43を垂直方向へ平行に延在するようにして、操作レバー60およびロックレバー80が水平方向において回転変位する形態としてもよい。また、支持シャフト42および回転支軸43,43を所要角度の傾斜状で平行に延在させるようにしてもよい。
(2)実施例では、第1壁部91、第2壁部92、第3壁部93を連設した係合溝部90を例示したが、これら各壁部91,92,93は夫々が分離した単独の壁部として、非溝形態として構成してもよい。係合溝部120に関しても、第1〜第3の各壁部121,122,123を夫々が分離した単独の壁部として構成してもよい。
(3)実施例のロックレバー80は、本体ブロック部81(回転支軸43)を挟んで一方に連結レバー部82を備えると共に他方にロックアーム部63備えた形態であるが、本体ブロック部81に対して連結レバー部82および係合レバー部83が同一方向に位置した形態であってもよい。
(4)実施例では、本体部材10に収納部13および蓋部材20を備えたコンソールボックスを例示したが、蓋部材20を有さない本体部材10の場合には、該後部本体12の上面に前記レール部材31を固定して、スライド部材50を本体部材10へ直接配設するようにしてもよい。
(5)実施例では、前部座席間のフロアに設置されるコンソールボックスを例示したが、本願が対象とする車両内装部材はこれに限定されず、前部座席の背もたれ側部に配設されるアームレストや、後部座席の背もたれ前部に配設されるシートバック等も対象とされる。
【符号の説明】
【0059】
10 本体部材(ベース部材),13 収納部,20 蓋部材
42 支持シャフト(第2回転軸),43 回転支軸(第1回転軸),50 スライド部材
60 操作レバー(操作部材),62 操作ノブ部(操作片部)
63 操作連結部(アーム部),70 係止ピン(連結突部)
80 ロックレバー(ロック部材),82 連結レバー部(ロック連結部)
83 係合レバー部(ロック係合部),91 第1壁部,92 第2壁部,93 第3壁部
95 空間部,105 係合凹部(被係合部),110 係合ピン(連結突部)
121 第1壁部,122 第2壁部,123 第3壁部,125 空間部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベース部材と、前記ベース部材に対してスライド移動可能に配設されたスライド部材とを備えた車両内装部材において、
前記スライド部材に第1回転軸で支持され、前記第1回転軸から離間して設けたロック係合部が前記ベース部材に設けられた被係合部に係合して該スライド部材の移動を規制する係合位置と、該被係合部から該ロック係合部が外れてスライド部材の移動を許容する退避位置との間で回転変位するロック部材と、
前記第1回転軸と平行な第2回転軸により、前記スライド部材に対して非操作位置と操作片部の操作による操作位置との間で回転変位可能に支持されると共に非操作位置に向け付勢され、操作片部と前記第2回転軸を挟んで反対側に位置する操作連結部の回転軌跡が、前記第1回転軸から離間して前記ロック部材に設けたロック連結部の回転軌跡と交差するよう設置された操作部材とを備え、
前記操作連結部は、前記操作部材の非操作位置から操作位置に向けた回転変位により、前記第1回転軸に近づく方向へ変位して円弧状の軌跡で移動する連結突部を有し、
前記ロック連結部は、
前記操作部材の操作位置への操作に伴う前記連結突部の移動軌跡と交差するよう延在し、前記操作部材の非操作位置から操作位置への回転変位において当接した該連結突部の前記第1回転軸側への移動を許容して、操作部材の操作に連動してロック部材を係合位置から退避位置へ回転変位させる第1壁部と、
前記操作部材の非操作位置において前記連結突部の第1回転軸側に延在し、該操作部材の非操作位置において当接した該連結突部の該第1回転軸側への移動を規制して、前記ロック部材の係合位置から退避位置への回転変位を不能とする第2壁部とを有する
ことを特徴とする車両内装部材。
【請求項2】
ベース部材と、前記ベース部材に対してスライド移動可能に配設されたスライド部材とを備えた車両内装部材において、
前記スライド部材に第1回転軸で支持され、前記第1回転軸から離間して設けたロック係合部が前記ベース部材に設けられた被係合部に係合して該スライド部材の移動を規制する係合位置と、該被係合部から該ロック係合部が外れてスライド部材の移動を許容する退避位置との間で回転変位するロック部材と、
前記第1回転軸と平行な第2回転軸により、前記スライド部材に対して非操作位置と操作片部の操作による操作位置との間で回転変位可能に支持されると共に非操作位置に向け付勢され、操作片部と前記第2回転軸を挟んで反対側に位置する操作連結部の回転軌跡が、前記第1回転軸から離間して前記ロック部材に設けたロック連結部の回転軌跡と交差するよう設置された操作部材とを備え、
前記ロック連結部は、前記ロック部材の係合位置から退避位置に向けた回転変位により、前記第2回転軸に近づく方向へ変位して円弧状の軌跡で移動する連結突部を有し、
前記操作連結部は、
前記ロック部材の係合位置から退避位置への回転変位に伴う前記連結突部の移動軌跡と交差するよう延在し、前記操作部材の非操作位置から操作位置への回転変位において当接した該連結突部の前記第2回転軸側への移動を許容して、操作部材の操作に連動してロック部材を係合位置から退避位置へ回転変位させる第1壁部と、
前記操作部材の非操作位置において前記連結突部の第2回転軸側に延在し、該操作部材の非操作位置において当接した該連結突部の第2回転軸側への移動を規制して、前記ロック部材の係合位置から退避位置への回転変位を不能とする第2壁部とを有する
ことを特徴とする車両内装部材。
【請求項3】
前記第1壁部は、前記操作部材の非操作位置および前記ロック部材の係合位置において、前記連結突部から離間した位置に延在形成された請求項1または2記載の車両内装部材。
【請求項4】
前記ロック部材のロック連結部に設けられ、前記操作部材の操作位置から非操作位置への回転変位に伴う前記連結突部の移動軌跡と交差するよう延在して、該操作部材の操作位置から非操作位置への回転変位により該連結突部に当接する第3壁部を備える請求項1記載の車両内装部材。
【請求項5】
前記操作部材の操作連結部に設けられ、前記ロック部材の退避位置から係合位置への回転変位に伴う前記連結突部の移動軌跡と交差するよう延在して、該操作部材の操作位置から非操作位置への回転変位により該連結突部に当接する第3壁部を備える請求項2記載の車両内装部材。
【請求項6】
前記ロック部材は、前記ロック係合部側が前記ロック連結部側より重く形成された請求項1〜5の何れか一項に記載の車両内装部材。
【請求項7】
前記ベース部材は、上方へ開口する収納部が画成されると共に、前記収納部を開閉可能な蓋部材を備え、
前記スライド部材は、前記蓋部材にスライド可能に配設された請求項1〜6の何れか一項に記載の車両内装部材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2010−215131(P2010−215131A)
【公開日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−65196(P2009−65196)
【出願日】平成21年3月17日(2009.3.17)
【出願人】(000119232)株式会社イノアックコーポレーション (1,145)
【Fターム(参考)】