車両前照灯制御装置
【課題】車載カメラで撮影した画像に基づいて、光源の位置を検出し、検出した位置に自車両の前照灯の照射方向を向ける技術において、検出した光源に照射方向を向けるか否かの判定を改良することで、照射方向の制御の信頼性を高める。
【解決手段】車両の周囲を撮影し、撮影した画像に基づいて光源を検出し、検出した光源の位置情報を出力する画像センサから、光源の位置情報を取得し(ステップ110)、車両の舵角またはヨーレートの検出値に応じて決まる車両の進行方向範囲内に光源があるか否かを、取得した光源の位置情報に基づいて判定し(ステップ120)、判定結果が肯定的であることに基づいて、光源の方向に前照灯の照射方向を追従させる制御を行い(ステップ140)、判定結果が否定的であることに基づいて、光源の位置と無関係に前照灯を制御する(ステップ150、155)。
【解決手段】車両の周囲を撮影し、撮影した画像に基づいて光源を検出し、検出した光源の位置情報を出力する画像センサから、光源の位置情報を取得し(ステップ110)、車両の舵角またはヨーレートの検出値に応じて決まる車両の進行方向範囲内に光源があるか否かを、取得した光源の位置情報に基づいて判定し(ステップ120)、判定結果が肯定的であることに基づいて、光源の方向に前照灯の照射方向を追従させる制御を行い(ステップ140)、判定結果が否定的であることに基づいて、光源の位置と無関係に前照灯を制御する(ステップ150、155)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両前照灯制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、車載カメラで撮影した画像に基づいて、光源の位置を検出し、検出した位置に自車両の前照灯の照射方向を向けるよう制御する技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】2006―21631号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記のような従来技術においては、必ずしも車両にとって危険ではない光源に自車両の前照灯の照射方向を向けてしまう場合があり、その結果、本来前照灯で照らすべき位置(例えば、道路脇の歩行者がいる位置)を照らすことができなくなる可能性がある。
【0005】
本発明は上記点に鑑み、車載カメラで撮影した画像に基づいて、光源の位置を検出し、検出した位置に自車両の前照灯の照射方向を向ける技術において、検出した光源に照射方向を向けるか否かの判定を改良することで、照射方向の制御の信頼性を高めることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するための請求項1に記載の発明は、車両の周囲を撮影し、撮影した画像に基づいて光源を検出し、検出した光源の位置情報を出力する画像センサ(12)から、前記光源の位置情報を取得する取得手段(110)と、前記車両の所定の進行方向範囲内に前記光源があるか否かを、前記取得手段(110)によって取得された前記光源の位置情報に基づいて判定する判定手段(120)と、前記判定手段(120)の判定結果が肯定的であることに基づいて、前記光源の方向に前記前照灯の照射方向を追従させる制御を行い、前記判定手段(120)の判定結果が否定的であることに基づいて、前記光源の位置と無関係に前記前照灯を制御することを特徴とする制御手段(130〜160)と、を備えた車両前照灯制御装置。
【0007】
このように、光源が検出されても、車両の進行方向範囲内に当該光源がなければ、当該光源に追従する制御を行わないので、車両にとって必ずしも危険でない光源に対して照射方向を向けた結果、必要な位置が照射されないという事態になる可能性が低下し、照射方向の制御の信頼性が高まる。
【0008】
また、請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の車両前照灯制御装置において、前記判定手段は、前記進行方向範囲を、前記車両の舵角またはヨーレートに基づいて決定することを特徴とする。このようにすることで、車両の走行状況に基づいて、適切な車両の進行方向範囲を特定することができる。
【0009】
また、請求項3に記載の発明は、請求項1に記載の車両前照灯制御装置において、前記判定手段は、前記進行方向範囲を、前記車両が現在走行中の道路の形状情報に基づいて決定することを特徴とする。このようにすることで、車両が走行している道路の形状に基づいて、適切な車両の進行方向を特定することができる。
【0010】
また、請求項4に記載の発明は、請求項1ないし3のいずれか1つに記載の車両前照灯制御装置において、前記制御手段(130〜160)は、前記判定手段(120)の判定結果が否定的である場合、前記光源が他の車両のライトであるか否かを判定し、他の車両のライトであると判定すれば前記前照灯をロービームに制御し、他の車両のライトでないと判定すれば前記前照灯をハイビームに制御することを特徴とする。
【0011】
また、光源が、車両にとって必ずしも危険でないと判断され、その光源に積極的に追従しない場合でも、その光源が前照灯の照射範囲内に入る可能性がある。したがって、光源が他の車両のライトであるか否かに応じてロービームとハイビームを使い分ければ、車両をハイビームで照らしてしまう可能性が低下する。
【0012】
なお、上記および特許請求の範囲における括弧内の符号は、特許請求の範囲に記載された用語と後述の実施形態に記載される当該用語を例示する具体物等との対応関係を示すものである。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施形態に係る車両前照灯制御システム1の構成図である。
【図2】ヘッドランプの照射方向および照射範囲の制御形態を例示する図である。
【図3】ECUが実行する処理のフローチャートである。
【図4】舵角の検出値に応じて決まる車両10の進行方向範囲36を例示する図である。
【図5】ヨーレートの検出値に応じて決まる車両10の進行方向範囲40を例示する図である。
【図6】実施形態のヘッドランプ制御を示す図である。
【図7】比較例のヘッドランプ制御を示す図である。
【図8】実施形態のヘッドランプ制御を示す図である。
【図9】比較例のヘッドランプ制御を示す図である。
【図10】リンクの形状補間点等に応じて決まる車両10の進行方向範囲77を例示する図である。
【図11】検知した白線に応じて決まる車両10の進行方向範囲を例示する図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
(第1実施形態)
以下、本発明の第1実施形態について説明する。図1に、本実施形態に係る車両前照灯制御システム1の構成を示す。
【0015】
車両前照灯制御システム1は、車両に搭載され、車両の2つのヘッドランプ(前照灯)11を制御するためのシステムであり、画像センサ12、ヘッドランプ駆動部13、車車間通信部14、道路情報取得部15、ECU16等を有している。
【0016】
画像センサ12は、カメラ部および検出部を備えている。カメラ部は、車両から前方を繰り返し撮影し、撮影結果の画像を逐次検出部に出力する。検出部は、カメラ部から出力された画像に対して周知の検出処理を行うことで、画像中に写された光源(所定値以上の輝度、形、色などにより車両と認識できる物体)を検出し、検出した光源の位置座標(例えば、画像中の光源の左端、右端、下端のそれぞれの位置座標)を、光源の位置情報としてECU16に出力する。
【0017】
ヘッドランプ駆動部13は、ヘッドランプ11の点灯、消灯、照射方向、照射範囲等を制御するためのアクチュエータである。このヘッドランプ駆動部13は、ヘッドランプ11毎に、当該ヘッドランプ11の照射方向を車両の左右方向に変化させる(すなわち、スイブルさせる)ためのスイブルモータと、ヘッドランプ11照射方向を車両の上下方向に変化させるレベリングモータと、当該ヘッドランプ11の光を一部遮蔽するための開閉可能なシャッターとを有している。
【0018】
図2に、シャッターを用いたヘッドランプ11の照射方向および照射範囲の制御形態を例示する。図2(a)が、車両前照灯制御システム1を搭載する車両10のハイビーム時におけるヘッドランプ11の照射範囲55を示し、図2(b)が、対向車認識後の左右中間ハイビーム時におけるヘッドランプ11の照射範囲56を示し、図2(c)が、右ライトロービーム(左ライト中間ハイビーム)時におけるヘッドランプ11の照射範囲57を示す。
【0019】
図2(a)のハイビーム時には、左右のシャッターが開くことで、照射範囲が最も広くなる。図2(b)の中間ハイビーム時には、左右の中間ハイビームシャッターを閉じることで、ヘッドランプ11の光が一部遮蔽され、その分照射範囲が狭くなる。このように、ハイビームでも光を一部遮蔽して照射範囲を狭めることで、対向車19に光が当たらない。図2(c)のロービーム時には、右の中間ハイビームシャッターおよび右のロービームシャッターは閉じるため照射範囲は狭くなる。
【0020】
ヘッドランプ駆動部13は、上記のようなハイビーム、中間ハイビーム、ロービームの間で照射形態を切り替えると共に、スイブルモータを用いてヘッドランプ11の車両左右方向の照射方向を変化させることで、ヘッドランプ11の照射方向および照射範囲を制御する。
【0021】
車車間通信部14は、他の車両の通信装置と通信するための無線装置である。道路情報取得部15は、車両の現在位置、向き、舵角、ヨーレート等の車両情報を、車両に搭載された周知のセンサから取得すると共に、車両が現在走行している道路の形状の情報を取得し、取得した情報をECU16に出力するようになっている。
【0022】
道路の形状の情報に関しては、道路情報取得部15は、車両に搭載されたナビゲーション装置から取得するようになっていてもよい。この場合、道路情報取得部15は、ナビゲーション装置に道路の形状の情報を要求し、ナビゲーション装置は、この要求に応じて、車両の現在位置を周知の方法で特定し、特定した現在位置に基づいて、車両が現在走行しているリンクを特定し、特定したリンクの形状情報(ノードおよび形状補間点の位置情報)を地図データから読み出し、読み出した形状情報を、道路の形状の情報として道路情報取得部15に出力する。
【0023】
あるいは、道路情報取得部15は、道路の形状の情報を、周知の白線検知の方法を用いて取得してもよい。この方法では、道路情報取得部15は、画像センサ13のカメラ部が撮影した画像に対して周知の白線検知処理を行うことで、自車両が走行している道路の両端の白線の形状を取得し、取得した白線の形状に基づいて、車両の前方の道路の形状を特定する。
【0024】
ECU16は、マイクロコンピュータ等を備えた電子制御装置であり、あらかじめECU16に記録されたプログラムを実行することで、ヘッドランプ11の制御のための各種処理を実行する。
【0025】
以下、上記のような構成の車両前照灯制御システム1の作動について説明する。図3に、車両10の走行中にECU16が実行する処理のフローチャートを示す。図3の処理において、ECU16は、まずステップ105で、ADB(アダプティブドライビングビーム)動作可能か否かを判定する。ADB動作可能か否かについては、図示しない操作スイッチに対してユーザがADB動作オンの操作をした場合にADB動作可能となり、ADB動作オフの操作をした場合にADB動作不可となる。ADB動作不可の場合は、ステップ160に進み、ヘッドランプ駆動部13を制御して、ヘッドランプ11をロービームの状態にすると共に、車両左右方向に関するヘッドランプ11の照射方向を、車両の前方(車体の向いている方向)に固定する。または、AFS(アダプティブフロントライトシステム)機能が有効であればAFS動作を行う。なおADB動作可否に係らず、ドライバが所定のビーム切り替えスイッチの操作に応じて、ロービームをハイビームに切り替えたり、ハイビームをロービームに切り替えるようになっている。ステップ160の後、処理はステップ105に戻る。
【0026】
ステップ105でADB動作可能であると判定した場合、続いてステップ110に進み、画像センサ12の検出部から光源の位置情報が出力されているか否か、またはハイビーム切り替え可能情報などで、画像センサ12が光源を検出したか否かを判定する。光源を検出していないと判定した場合は、ステップ150に進み、ヘッドランプ駆動部12を制御して、ヘッドランプ11をハイビームに切り替える。
【0027】
また、光源を検出したと判定した場合は、ステップ120に進む。ステップ120では、画像センサ12の検出部から出力された位置情報を取得し、取得した位置情報に基づいて、車両10の進行方向範囲内に当該光源があるか否かを判定する。具体的には、車両10の進行方向範囲は、道路情報取得部15が取得した車両10の車速と舵角およびヨーレートのうちいずれか一方または両方の検出値に応じて特定する。
【0028】
車速と舵角の検出値から車両10の進行方向範囲を決める場合は、図4に示すように、車速と舵角から旋回半径を求め、旋回半径から車両10の進行方向35を特定し、特定した向き35を中央方向とする左右方向の所定の範囲(例えば、当該中央方向から左右に10°までの範囲36。ただし、角度設定の中心37は車両10の中心位置とする。)を、車両10の進行方向範囲とする。
【0029】
なお、車速と舵角から旋回半径を求める方法としては、
R=(1+A×V2)(L/δ(π/180°))
という式に車速Vおよび舵角δ(より具体的には操舵輪である前輪の舵角)を代入することで、旋回半径Rを算出する方法を採用する。ここで、Aは車両のスタビリティーファクタであり、Lは車両のホイールベースであり、いずれも車両毎にあらかじめ決められたパラメータである。また、旋回半径Rから車両10の進行方向35を特定する方法は、車両の前方に対する行方向35の角度をβとすると、
β=α/2={360°×V×t/(2πR)}/2
という式に車速V、旋回半径R、車両走行時間tを代入することで、角度βを求める方法を採用する。ここで、車両走行時間は、車両が所定距離(例えば30メートル、100メートル)を走行するためにかかる時間であり、所定距離を車速Vで除算した結果を採用する。
【0030】
また、ヨーレートから車両10の進行方向範囲を決める場合は、図5に示すように、右回転のヨーレートが大きくなるほど、現在の車両10の車体の向き38からの右回り角度θが大きくなるように、中央方向39を設定し、設定した中央方向39を中央とする左右方向の所定の範囲(例えば、当該中央方向39から左右に10°までの範囲40。ただし、角度設定の中心37は車両10の中心位置とする。)を、車両10の進行方向範囲とする。
【0031】
特定した進行方向範囲内に当該光源が入っているか否かは、画像センサ12から取得した当該光源の位置情報に基づいて判定する。具体的には、当該位置情報に含まれる位置座標(すなわち、当該光源の撮影画像中の位置座標)が、車両10から見てどの方向に該当するかを算出し、算出した方向が、当該進行方向範囲に含まれるか否かを判定する。
【0032】
なお、撮影画像中のどの位置座標が、車両から見たどの方向に該当するかは、あらかじめECU16の記憶媒体に記録された対応テーブルに基づいて決定する。画像センサ12のカメラ部の設置位置、向き等を決めておけば、この対応テーブルをあらかじめ算出してECU16の記憶媒体に記録しておくことができる。
【0033】
車両10の進行方向範囲内に当該光源があると判定した場合は、ステップ130に進み、照射位置の算出を行う。具体的には、取得した当該光源の位置座標および上記の対応テーブルを用いて、車両10から見た当該光源の方向を算出し、更に、当該光源がヘッドランプ11の照射範囲の左右方向の中央に位置するような、ヘッドランプ11の照射方向(車両10の光軸の左右方向の向き)を決定し、決定した照射方向を、照射位置とする。
【0034】
続いてステップ135は、算出した当該照射位置が、ADB作動範囲内であるか否かを判定する。ADB作動範囲内は、ヘッドランプ駆動部13の制御によってヘッドランプ11の光軸の方向が変化できる範囲であり、あらかじめヘッドランプ11、ヘッドランプ駆動部13の性能に合わせて、ADB作動範囲を示すADB作動範囲データがECU16の記憶媒体に記録されている。
【0035】
ECU16は、このADB作動範囲データに基づいて、照射位置がADB作動範囲に入っていないと判定すれば、ステップ160に進んで、既に説明した通りの作動を行う。また、照射位置がADB作動範囲に入っていると判定すれば、ステップ140に進む。
【0036】
ステップ140では、当該光源の方向にヘッドランプ11の照射方向を追従させる制御を行うことで、追従スイブルを実現する。つまり、ステップ130で算出した照射位置をヘッドランプ11において実現させるよう、ヘッドランプ駆動部13のスイブルモータを制御する。さらにこのステップ140では、ADB配光を実現する。すなわち、当該光源が他の車両のヘッドランプである可能性があるので、当該光源にヘッドランプ11の光が直接当たらないよう、当該光源の位置に応じて、ヘッドランプ11を中間ハイビームまたはロービームに切り替える。ステップ140の後、処理はステップ105に戻る。
【0037】
一方、ステップ120で、車両10の進行方向範囲内に当該光源がないと判定した場合は、ステップ145に進み、当該光源が他の車両のライトであるか否かを判定する。この判定は、例えば、以下のようにして行う。
【0038】
ECU16は、車車間通信部14を用いて、ポーリング信号を車両10の周囲に送信する。もし、当該光源が他車両のライトであり、当該他車両が車車間通信機器を有していれば、当該他車両の車車間通信機器がポーリング信号を受信し、これを受信したことに基づいて、当該他車両の現在位置座標(例えば、緯度、経度)を取得して、送信元の車車間通信部14に当該現在位置座標を送信する。そして車車間通信部14は、受信した他車両の現在位置座標をECU16に出力する。そしてECU16は、道路情報取得部15から取得した自車両の現在位置座標および向きと、道路情報取得部15から取得した他車両の位置座標とを比較することで、自車両10から見た当該他車両の方向を特定し、特定した他車両の方向と、ステップ130で特定した光源の方向(照射位置)とが所定の誤差範囲内で一致すれば、または、他車走行情報(例えば、先行車車間距離情報、車両接近情報等)を受信した場合は、当該光源が他の車両のライトであると判定し、一致しなければ、他の車両のライトでないと判定する。
【0039】
当該光源が他の車両のライトでないと判定した場合は、続いてステップ150に進み、ハイビームとなるようヘッドランプ駆動部13を制御すると共に、車両左右方向に関するヘッドランプ11の照射方向を、車両10の舵角および車速に応じて、車両10の進行方向にヘッドランプ11の照射方向が向くように、変化させる。この照射方向の制御は、検出した光源の位置とは無関係に行う。あるいは、車両左右方向に関するヘッドランプ11の照射方向を、車両の前方(車体の向いている方向)に固定する。ステップ150の後、処理はステップ105に戻る。
【0040】
当該光源が他の車両のライトであると判定した場合は、続いてステップ155に進み、ロービームとなるようヘッドランプ駆動部13を制御すると共に、車両左右方向に関するヘッドランプ11の照射方向を、車両10の舵角および車速に応じて、車両10の進行方向にヘッドランプ11の照射方向が向くように、変化させる。この照射方向の制御は、検出した光源の位置とは無関係に行う。あるいは、車両左右方向に関するヘッドランプ11の照射方向を、車両の前方(車体の向いている方向)に固定する。ステップ155の後、処理はステップ105に戻る。
【0041】
このように、画像センサ12から光源の位置情報を取得し(ステップ110)、自車両10の舵角またはヨーレートの検出値に応じて決まる自車両10の進行方向範囲内に当該光源があるか否かを、当該光源の位置情報に基づいて判定し(ステップ120)、当該判定結果が肯定的であることに基づいて、当該光源の方向にヘッドランプ11の照射方向を追従させる制御を行うが(ステップ130〜140)、当該判定結果が否定的である場合は、当該光源の位置と無関係にヘッドランプ11を制御する。
【0042】
このように、光源が検出されても、車両の舵角またはヨーレートの検出値に応じて決まる車両の進行方向範囲内に当該光源がなければ、当該光源に追従する制御を行わないので、車両にとって必ずしも危険でない光源に対して照射方向を向けた結果、必要な位置が照射されないという事態になる可能性が低下し、照射方向の制御の信頼性を高まる。
【0043】
例えば、図6に示すように、車両10が直進道路30を走行中に、道路30外の反射物32が光源として検出されても、舵角またはヨーレートの検出値に応じて決まる車両の進行方向範囲内にないと判定されれば、ヘッドランプ11の照射方向は反射物32に追従しないので、ヘッドランプ11の照射範囲21が通常通り直進方向となり、その結果、道路30脇に歩行者21がいる場合も、その歩行者を照らすことができる。
【0044】
一方、車両10が道路30を走行中に、直進する道路30外の反射物32が光源として検出された場合、図7に示すように、上記進行方向範囲内にない場合でも、無条件でその反射物32にヘッドランプ11の照射方向を追従させてしまうと、必要な位置が照射されず、歩行者31を見逃してしまう可能性が高くなる。
【0045】
また例えば、図8に示すように、蛇行している道路33を車両10が走行中に、道路33に沿って遠い前方に存在する車両34のライトが光源として検出されても、車両10の舵角またはヨーレートの検出値に応じて決まる車両10の進行方向範囲内に車両34がないと判定されれば、ヘッドランプ11の照射方向は車両34に追従しないので、ヘッドランプ11の照射範囲23が通常通り、ステアリングに従った方向となり、その結果、前方の道路を照らすことができる。
【0046】
一方、道路33を車両10が走行中に、道路33に沿って遠い前方に存在する車両34のライトが光源として検出された場合、図9(a)(b)に示すように、車両10の上記進行方向範囲内に車両34がない場合でも、無条件でその車両34にヘッドランプ11の照射方向を追従させてしまうと、必要な位置が照射されず、すぐ前方の道路の視認性が悪化する可能性が高くなる。
【0047】
このように、本実施形態では、光源が検出されても、車両の舵角またはヨーレートの検出値に応じて決まる車両の進行方向範囲内に当該光源がなければ、当該光源に追従する制御を行わないので、車両にとって必ずしも危険でない光源に対して照射方向を向けた結果、必要な位置が照射されないという事態になる可能性が低下し、照射方向の制御の信頼性を高まる。そして、車両の走行状況に基づいて、適切な車両の進行方向範囲を特定することができる。
【0048】
また、ステップ155のように、光源が、車両にとって必ずしも危険でないと判断され、その光源にヘッドランプ11の照射方向を積極的に追従させない場合でも、その光源が前照灯の照射範囲内に入る可能性がある。したがって、光源が他の車両のライトであるか否かに応じてロービームとハイビームを使い分ければ、車両をハイビームで照らしてしまう可能性が低下する。
【0049】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態について説明する。本実施形態が第2実施形態と異なるのは、図3のステップ120における処理内容である。以下、その処理内容について説明する。
【0050】
本実施形態においてECU16は、ステップ120で、画像センサ12の検出部から出力された位置情報を取得し、取得した位置情報に基づいて、車両10の進行方向範囲内に当該光源があるか否かを判定し、判定結果が肯定的である場合にはステップ130に進み、否定的である場合にはステップ135に進む点は、第1実施形態と同じである。
【0051】
ただし、車両10の進行方向範囲の算出方法が、第1実施形態とは異なる。第1実施形態では、道路情報取得部15が取得した車両10の舵角およびヨーレートのうちいずれか一方または両方の検出値に応じて、進行方向範囲を特定しているが、本実施形態では、道路情報取得部15がナビゲーション装置から取得した現在走行中のリンクの形状情報に基づいて決定するか、あるいは、道路情報取得部15が白線検知によって特定した現在走行中の道路の形状情報に基づいて決定する。
【0052】
ナビゲーション装置から取得した現在走行中のリンクの形状情報に基づいて進行方向範囲を決める場合は、図10に示すように、リンクの形状情報に含まれる形状補間点71、72、73の位置座標およびノード70、74の位置座標に基づいて、形状補間点71〜73およびノード70、74を順番に繋ぐ線を算出し、その線に沿って自車両10から前方に所定距離(例えば30メートル)進んだ点75を基準点とし、自車両10の中心37から当該基準点75までの方向76を中央方向として設定し、設定した中央方向76を中央とする左右方向の所定の範囲(例えば、当該中央方向76から左右に30°までの範囲77。ただし、角度設定の中心37は車両10の中心位置とする。)を、車両10の進行方向範囲とする。
【0053】
また、白線検知によって特定された現在走行中の道路の形状情報に基づいて決定する場合は、図11に示すように、白線検知によって撮影画像80中で特定された道路の左右端81、82の白線のうち、所定の位置、例えば、撮影画像80の上下方向中央の仮想中心線83と、白線81、82とが交わる点83、84を特定し、特定した点83に対応する方向から、特定した点84に対応する方向までの範囲(図11中の斜線範囲とする)を、車両10の進行方向範囲とする。
【0054】
このようになっていることで、本実施形態では、車両が走行している道路の形状に基づいて、適切な車両の進行方向を特定することができる。
【符号の説明】
【0055】
1 車両前照灯制御システム
11 ヘッドランプ
12 画像センサ
13 ヘッドランプ駆動部
14 車車間通信部
15 道路情報取得部
16 ECU
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両前照灯制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、車載カメラで撮影した画像に基づいて、光源の位置を検出し、検出した位置に自車両の前照灯の照射方向を向けるよう制御する技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】2006―21631号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記のような従来技術においては、必ずしも車両にとって危険ではない光源に自車両の前照灯の照射方向を向けてしまう場合があり、その結果、本来前照灯で照らすべき位置(例えば、道路脇の歩行者がいる位置)を照らすことができなくなる可能性がある。
【0005】
本発明は上記点に鑑み、車載カメラで撮影した画像に基づいて、光源の位置を検出し、検出した位置に自車両の前照灯の照射方向を向ける技術において、検出した光源に照射方向を向けるか否かの判定を改良することで、照射方向の制御の信頼性を高めることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するための請求項1に記載の発明は、車両の周囲を撮影し、撮影した画像に基づいて光源を検出し、検出した光源の位置情報を出力する画像センサ(12)から、前記光源の位置情報を取得する取得手段(110)と、前記車両の所定の進行方向範囲内に前記光源があるか否かを、前記取得手段(110)によって取得された前記光源の位置情報に基づいて判定する判定手段(120)と、前記判定手段(120)の判定結果が肯定的であることに基づいて、前記光源の方向に前記前照灯の照射方向を追従させる制御を行い、前記判定手段(120)の判定結果が否定的であることに基づいて、前記光源の位置と無関係に前記前照灯を制御することを特徴とする制御手段(130〜160)と、を備えた車両前照灯制御装置。
【0007】
このように、光源が検出されても、車両の進行方向範囲内に当該光源がなければ、当該光源に追従する制御を行わないので、車両にとって必ずしも危険でない光源に対して照射方向を向けた結果、必要な位置が照射されないという事態になる可能性が低下し、照射方向の制御の信頼性が高まる。
【0008】
また、請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の車両前照灯制御装置において、前記判定手段は、前記進行方向範囲を、前記車両の舵角またはヨーレートに基づいて決定することを特徴とする。このようにすることで、車両の走行状況に基づいて、適切な車両の進行方向範囲を特定することができる。
【0009】
また、請求項3に記載の発明は、請求項1に記載の車両前照灯制御装置において、前記判定手段は、前記進行方向範囲を、前記車両が現在走行中の道路の形状情報に基づいて決定することを特徴とする。このようにすることで、車両が走行している道路の形状に基づいて、適切な車両の進行方向を特定することができる。
【0010】
また、請求項4に記載の発明は、請求項1ないし3のいずれか1つに記載の車両前照灯制御装置において、前記制御手段(130〜160)は、前記判定手段(120)の判定結果が否定的である場合、前記光源が他の車両のライトであるか否かを判定し、他の車両のライトであると判定すれば前記前照灯をロービームに制御し、他の車両のライトでないと判定すれば前記前照灯をハイビームに制御することを特徴とする。
【0011】
また、光源が、車両にとって必ずしも危険でないと判断され、その光源に積極的に追従しない場合でも、その光源が前照灯の照射範囲内に入る可能性がある。したがって、光源が他の車両のライトであるか否かに応じてロービームとハイビームを使い分ければ、車両をハイビームで照らしてしまう可能性が低下する。
【0012】
なお、上記および特許請求の範囲における括弧内の符号は、特許請求の範囲に記載された用語と後述の実施形態に記載される当該用語を例示する具体物等との対応関係を示すものである。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施形態に係る車両前照灯制御システム1の構成図である。
【図2】ヘッドランプの照射方向および照射範囲の制御形態を例示する図である。
【図3】ECUが実行する処理のフローチャートである。
【図4】舵角の検出値に応じて決まる車両10の進行方向範囲36を例示する図である。
【図5】ヨーレートの検出値に応じて決まる車両10の進行方向範囲40を例示する図である。
【図6】実施形態のヘッドランプ制御を示す図である。
【図7】比較例のヘッドランプ制御を示す図である。
【図8】実施形態のヘッドランプ制御を示す図である。
【図9】比較例のヘッドランプ制御を示す図である。
【図10】リンクの形状補間点等に応じて決まる車両10の進行方向範囲77を例示する図である。
【図11】検知した白線に応じて決まる車両10の進行方向範囲を例示する図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
(第1実施形態)
以下、本発明の第1実施形態について説明する。図1に、本実施形態に係る車両前照灯制御システム1の構成を示す。
【0015】
車両前照灯制御システム1は、車両に搭載され、車両の2つのヘッドランプ(前照灯)11を制御するためのシステムであり、画像センサ12、ヘッドランプ駆動部13、車車間通信部14、道路情報取得部15、ECU16等を有している。
【0016】
画像センサ12は、カメラ部および検出部を備えている。カメラ部は、車両から前方を繰り返し撮影し、撮影結果の画像を逐次検出部に出力する。検出部は、カメラ部から出力された画像に対して周知の検出処理を行うことで、画像中に写された光源(所定値以上の輝度、形、色などにより車両と認識できる物体)を検出し、検出した光源の位置座標(例えば、画像中の光源の左端、右端、下端のそれぞれの位置座標)を、光源の位置情報としてECU16に出力する。
【0017】
ヘッドランプ駆動部13は、ヘッドランプ11の点灯、消灯、照射方向、照射範囲等を制御するためのアクチュエータである。このヘッドランプ駆動部13は、ヘッドランプ11毎に、当該ヘッドランプ11の照射方向を車両の左右方向に変化させる(すなわち、スイブルさせる)ためのスイブルモータと、ヘッドランプ11照射方向を車両の上下方向に変化させるレベリングモータと、当該ヘッドランプ11の光を一部遮蔽するための開閉可能なシャッターとを有している。
【0018】
図2に、シャッターを用いたヘッドランプ11の照射方向および照射範囲の制御形態を例示する。図2(a)が、車両前照灯制御システム1を搭載する車両10のハイビーム時におけるヘッドランプ11の照射範囲55を示し、図2(b)が、対向車認識後の左右中間ハイビーム時におけるヘッドランプ11の照射範囲56を示し、図2(c)が、右ライトロービーム(左ライト中間ハイビーム)時におけるヘッドランプ11の照射範囲57を示す。
【0019】
図2(a)のハイビーム時には、左右のシャッターが開くことで、照射範囲が最も広くなる。図2(b)の中間ハイビーム時には、左右の中間ハイビームシャッターを閉じることで、ヘッドランプ11の光が一部遮蔽され、その分照射範囲が狭くなる。このように、ハイビームでも光を一部遮蔽して照射範囲を狭めることで、対向車19に光が当たらない。図2(c)のロービーム時には、右の中間ハイビームシャッターおよび右のロービームシャッターは閉じるため照射範囲は狭くなる。
【0020】
ヘッドランプ駆動部13は、上記のようなハイビーム、中間ハイビーム、ロービームの間で照射形態を切り替えると共に、スイブルモータを用いてヘッドランプ11の車両左右方向の照射方向を変化させることで、ヘッドランプ11の照射方向および照射範囲を制御する。
【0021】
車車間通信部14は、他の車両の通信装置と通信するための無線装置である。道路情報取得部15は、車両の現在位置、向き、舵角、ヨーレート等の車両情報を、車両に搭載された周知のセンサから取得すると共に、車両が現在走行している道路の形状の情報を取得し、取得した情報をECU16に出力するようになっている。
【0022】
道路の形状の情報に関しては、道路情報取得部15は、車両に搭載されたナビゲーション装置から取得するようになっていてもよい。この場合、道路情報取得部15は、ナビゲーション装置に道路の形状の情報を要求し、ナビゲーション装置は、この要求に応じて、車両の現在位置を周知の方法で特定し、特定した現在位置に基づいて、車両が現在走行しているリンクを特定し、特定したリンクの形状情報(ノードおよび形状補間点の位置情報)を地図データから読み出し、読み出した形状情報を、道路の形状の情報として道路情報取得部15に出力する。
【0023】
あるいは、道路情報取得部15は、道路の形状の情報を、周知の白線検知の方法を用いて取得してもよい。この方法では、道路情報取得部15は、画像センサ13のカメラ部が撮影した画像に対して周知の白線検知処理を行うことで、自車両が走行している道路の両端の白線の形状を取得し、取得した白線の形状に基づいて、車両の前方の道路の形状を特定する。
【0024】
ECU16は、マイクロコンピュータ等を備えた電子制御装置であり、あらかじめECU16に記録されたプログラムを実行することで、ヘッドランプ11の制御のための各種処理を実行する。
【0025】
以下、上記のような構成の車両前照灯制御システム1の作動について説明する。図3に、車両10の走行中にECU16が実行する処理のフローチャートを示す。図3の処理において、ECU16は、まずステップ105で、ADB(アダプティブドライビングビーム)動作可能か否かを判定する。ADB動作可能か否かについては、図示しない操作スイッチに対してユーザがADB動作オンの操作をした場合にADB動作可能となり、ADB動作オフの操作をした場合にADB動作不可となる。ADB動作不可の場合は、ステップ160に進み、ヘッドランプ駆動部13を制御して、ヘッドランプ11をロービームの状態にすると共に、車両左右方向に関するヘッドランプ11の照射方向を、車両の前方(車体の向いている方向)に固定する。または、AFS(アダプティブフロントライトシステム)機能が有効であればAFS動作を行う。なおADB動作可否に係らず、ドライバが所定のビーム切り替えスイッチの操作に応じて、ロービームをハイビームに切り替えたり、ハイビームをロービームに切り替えるようになっている。ステップ160の後、処理はステップ105に戻る。
【0026】
ステップ105でADB動作可能であると判定した場合、続いてステップ110に進み、画像センサ12の検出部から光源の位置情報が出力されているか否か、またはハイビーム切り替え可能情報などで、画像センサ12が光源を検出したか否かを判定する。光源を検出していないと判定した場合は、ステップ150に進み、ヘッドランプ駆動部12を制御して、ヘッドランプ11をハイビームに切り替える。
【0027】
また、光源を検出したと判定した場合は、ステップ120に進む。ステップ120では、画像センサ12の検出部から出力された位置情報を取得し、取得した位置情報に基づいて、車両10の進行方向範囲内に当該光源があるか否かを判定する。具体的には、車両10の進行方向範囲は、道路情報取得部15が取得した車両10の車速と舵角およびヨーレートのうちいずれか一方または両方の検出値に応じて特定する。
【0028】
車速と舵角の検出値から車両10の進行方向範囲を決める場合は、図4に示すように、車速と舵角から旋回半径を求め、旋回半径から車両10の進行方向35を特定し、特定した向き35を中央方向とする左右方向の所定の範囲(例えば、当該中央方向から左右に10°までの範囲36。ただし、角度設定の中心37は車両10の中心位置とする。)を、車両10の進行方向範囲とする。
【0029】
なお、車速と舵角から旋回半径を求める方法としては、
R=(1+A×V2)(L/δ(π/180°))
という式に車速Vおよび舵角δ(より具体的には操舵輪である前輪の舵角)を代入することで、旋回半径Rを算出する方法を採用する。ここで、Aは車両のスタビリティーファクタであり、Lは車両のホイールベースであり、いずれも車両毎にあらかじめ決められたパラメータである。また、旋回半径Rから車両10の進行方向35を特定する方法は、車両の前方に対する行方向35の角度をβとすると、
β=α/2={360°×V×t/(2πR)}/2
という式に車速V、旋回半径R、車両走行時間tを代入することで、角度βを求める方法を採用する。ここで、車両走行時間は、車両が所定距離(例えば30メートル、100メートル)を走行するためにかかる時間であり、所定距離を車速Vで除算した結果を採用する。
【0030】
また、ヨーレートから車両10の進行方向範囲を決める場合は、図5に示すように、右回転のヨーレートが大きくなるほど、現在の車両10の車体の向き38からの右回り角度θが大きくなるように、中央方向39を設定し、設定した中央方向39を中央とする左右方向の所定の範囲(例えば、当該中央方向39から左右に10°までの範囲40。ただし、角度設定の中心37は車両10の中心位置とする。)を、車両10の進行方向範囲とする。
【0031】
特定した進行方向範囲内に当該光源が入っているか否かは、画像センサ12から取得した当該光源の位置情報に基づいて判定する。具体的には、当該位置情報に含まれる位置座標(すなわち、当該光源の撮影画像中の位置座標)が、車両10から見てどの方向に該当するかを算出し、算出した方向が、当該進行方向範囲に含まれるか否かを判定する。
【0032】
なお、撮影画像中のどの位置座標が、車両から見たどの方向に該当するかは、あらかじめECU16の記憶媒体に記録された対応テーブルに基づいて決定する。画像センサ12のカメラ部の設置位置、向き等を決めておけば、この対応テーブルをあらかじめ算出してECU16の記憶媒体に記録しておくことができる。
【0033】
車両10の進行方向範囲内に当該光源があると判定した場合は、ステップ130に進み、照射位置の算出を行う。具体的には、取得した当該光源の位置座標および上記の対応テーブルを用いて、車両10から見た当該光源の方向を算出し、更に、当該光源がヘッドランプ11の照射範囲の左右方向の中央に位置するような、ヘッドランプ11の照射方向(車両10の光軸の左右方向の向き)を決定し、決定した照射方向を、照射位置とする。
【0034】
続いてステップ135は、算出した当該照射位置が、ADB作動範囲内であるか否かを判定する。ADB作動範囲内は、ヘッドランプ駆動部13の制御によってヘッドランプ11の光軸の方向が変化できる範囲であり、あらかじめヘッドランプ11、ヘッドランプ駆動部13の性能に合わせて、ADB作動範囲を示すADB作動範囲データがECU16の記憶媒体に記録されている。
【0035】
ECU16は、このADB作動範囲データに基づいて、照射位置がADB作動範囲に入っていないと判定すれば、ステップ160に進んで、既に説明した通りの作動を行う。また、照射位置がADB作動範囲に入っていると判定すれば、ステップ140に進む。
【0036】
ステップ140では、当該光源の方向にヘッドランプ11の照射方向を追従させる制御を行うことで、追従スイブルを実現する。つまり、ステップ130で算出した照射位置をヘッドランプ11において実現させるよう、ヘッドランプ駆動部13のスイブルモータを制御する。さらにこのステップ140では、ADB配光を実現する。すなわち、当該光源が他の車両のヘッドランプである可能性があるので、当該光源にヘッドランプ11の光が直接当たらないよう、当該光源の位置に応じて、ヘッドランプ11を中間ハイビームまたはロービームに切り替える。ステップ140の後、処理はステップ105に戻る。
【0037】
一方、ステップ120で、車両10の進行方向範囲内に当該光源がないと判定した場合は、ステップ145に進み、当該光源が他の車両のライトであるか否かを判定する。この判定は、例えば、以下のようにして行う。
【0038】
ECU16は、車車間通信部14を用いて、ポーリング信号を車両10の周囲に送信する。もし、当該光源が他車両のライトであり、当該他車両が車車間通信機器を有していれば、当該他車両の車車間通信機器がポーリング信号を受信し、これを受信したことに基づいて、当該他車両の現在位置座標(例えば、緯度、経度)を取得して、送信元の車車間通信部14に当該現在位置座標を送信する。そして車車間通信部14は、受信した他車両の現在位置座標をECU16に出力する。そしてECU16は、道路情報取得部15から取得した自車両の現在位置座標および向きと、道路情報取得部15から取得した他車両の位置座標とを比較することで、自車両10から見た当該他車両の方向を特定し、特定した他車両の方向と、ステップ130で特定した光源の方向(照射位置)とが所定の誤差範囲内で一致すれば、または、他車走行情報(例えば、先行車車間距離情報、車両接近情報等)を受信した場合は、当該光源が他の車両のライトであると判定し、一致しなければ、他の車両のライトでないと判定する。
【0039】
当該光源が他の車両のライトでないと判定した場合は、続いてステップ150に進み、ハイビームとなるようヘッドランプ駆動部13を制御すると共に、車両左右方向に関するヘッドランプ11の照射方向を、車両10の舵角および車速に応じて、車両10の進行方向にヘッドランプ11の照射方向が向くように、変化させる。この照射方向の制御は、検出した光源の位置とは無関係に行う。あるいは、車両左右方向に関するヘッドランプ11の照射方向を、車両の前方(車体の向いている方向)に固定する。ステップ150の後、処理はステップ105に戻る。
【0040】
当該光源が他の車両のライトであると判定した場合は、続いてステップ155に進み、ロービームとなるようヘッドランプ駆動部13を制御すると共に、車両左右方向に関するヘッドランプ11の照射方向を、車両10の舵角および車速に応じて、車両10の進行方向にヘッドランプ11の照射方向が向くように、変化させる。この照射方向の制御は、検出した光源の位置とは無関係に行う。あるいは、車両左右方向に関するヘッドランプ11の照射方向を、車両の前方(車体の向いている方向)に固定する。ステップ155の後、処理はステップ105に戻る。
【0041】
このように、画像センサ12から光源の位置情報を取得し(ステップ110)、自車両10の舵角またはヨーレートの検出値に応じて決まる自車両10の進行方向範囲内に当該光源があるか否かを、当該光源の位置情報に基づいて判定し(ステップ120)、当該判定結果が肯定的であることに基づいて、当該光源の方向にヘッドランプ11の照射方向を追従させる制御を行うが(ステップ130〜140)、当該判定結果が否定的である場合は、当該光源の位置と無関係にヘッドランプ11を制御する。
【0042】
このように、光源が検出されても、車両の舵角またはヨーレートの検出値に応じて決まる車両の進行方向範囲内に当該光源がなければ、当該光源に追従する制御を行わないので、車両にとって必ずしも危険でない光源に対して照射方向を向けた結果、必要な位置が照射されないという事態になる可能性が低下し、照射方向の制御の信頼性を高まる。
【0043】
例えば、図6に示すように、車両10が直進道路30を走行中に、道路30外の反射物32が光源として検出されても、舵角またはヨーレートの検出値に応じて決まる車両の進行方向範囲内にないと判定されれば、ヘッドランプ11の照射方向は反射物32に追従しないので、ヘッドランプ11の照射範囲21が通常通り直進方向となり、その結果、道路30脇に歩行者21がいる場合も、その歩行者を照らすことができる。
【0044】
一方、車両10が道路30を走行中に、直進する道路30外の反射物32が光源として検出された場合、図7に示すように、上記進行方向範囲内にない場合でも、無条件でその反射物32にヘッドランプ11の照射方向を追従させてしまうと、必要な位置が照射されず、歩行者31を見逃してしまう可能性が高くなる。
【0045】
また例えば、図8に示すように、蛇行している道路33を車両10が走行中に、道路33に沿って遠い前方に存在する車両34のライトが光源として検出されても、車両10の舵角またはヨーレートの検出値に応じて決まる車両10の進行方向範囲内に車両34がないと判定されれば、ヘッドランプ11の照射方向は車両34に追従しないので、ヘッドランプ11の照射範囲23が通常通り、ステアリングに従った方向となり、その結果、前方の道路を照らすことができる。
【0046】
一方、道路33を車両10が走行中に、道路33に沿って遠い前方に存在する車両34のライトが光源として検出された場合、図9(a)(b)に示すように、車両10の上記進行方向範囲内に車両34がない場合でも、無条件でその車両34にヘッドランプ11の照射方向を追従させてしまうと、必要な位置が照射されず、すぐ前方の道路の視認性が悪化する可能性が高くなる。
【0047】
このように、本実施形態では、光源が検出されても、車両の舵角またはヨーレートの検出値に応じて決まる車両の進行方向範囲内に当該光源がなければ、当該光源に追従する制御を行わないので、車両にとって必ずしも危険でない光源に対して照射方向を向けた結果、必要な位置が照射されないという事態になる可能性が低下し、照射方向の制御の信頼性を高まる。そして、車両の走行状況に基づいて、適切な車両の進行方向範囲を特定することができる。
【0048】
また、ステップ155のように、光源が、車両にとって必ずしも危険でないと判断され、その光源にヘッドランプ11の照射方向を積極的に追従させない場合でも、その光源が前照灯の照射範囲内に入る可能性がある。したがって、光源が他の車両のライトであるか否かに応じてロービームとハイビームを使い分ければ、車両をハイビームで照らしてしまう可能性が低下する。
【0049】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態について説明する。本実施形態が第2実施形態と異なるのは、図3のステップ120における処理内容である。以下、その処理内容について説明する。
【0050】
本実施形態においてECU16は、ステップ120で、画像センサ12の検出部から出力された位置情報を取得し、取得した位置情報に基づいて、車両10の進行方向範囲内に当該光源があるか否かを判定し、判定結果が肯定的である場合にはステップ130に進み、否定的である場合にはステップ135に進む点は、第1実施形態と同じである。
【0051】
ただし、車両10の進行方向範囲の算出方法が、第1実施形態とは異なる。第1実施形態では、道路情報取得部15が取得した車両10の舵角およびヨーレートのうちいずれか一方または両方の検出値に応じて、進行方向範囲を特定しているが、本実施形態では、道路情報取得部15がナビゲーション装置から取得した現在走行中のリンクの形状情報に基づいて決定するか、あるいは、道路情報取得部15が白線検知によって特定した現在走行中の道路の形状情報に基づいて決定する。
【0052】
ナビゲーション装置から取得した現在走行中のリンクの形状情報に基づいて進行方向範囲を決める場合は、図10に示すように、リンクの形状情報に含まれる形状補間点71、72、73の位置座標およびノード70、74の位置座標に基づいて、形状補間点71〜73およびノード70、74を順番に繋ぐ線を算出し、その線に沿って自車両10から前方に所定距離(例えば30メートル)進んだ点75を基準点とし、自車両10の中心37から当該基準点75までの方向76を中央方向として設定し、設定した中央方向76を中央とする左右方向の所定の範囲(例えば、当該中央方向76から左右に30°までの範囲77。ただし、角度設定の中心37は車両10の中心位置とする。)を、車両10の進行方向範囲とする。
【0053】
また、白線検知によって特定された現在走行中の道路の形状情報に基づいて決定する場合は、図11に示すように、白線検知によって撮影画像80中で特定された道路の左右端81、82の白線のうち、所定の位置、例えば、撮影画像80の上下方向中央の仮想中心線83と、白線81、82とが交わる点83、84を特定し、特定した点83に対応する方向から、特定した点84に対応する方向までの範囲(図11中の斜線範囲とする)を、車両10の進行方向範囲とする。
【0054】
このようになっていることで、本実施形態では、車両が走行している道路の形状に基づいて、適切な車両の進行方向を特定することができる。
【符号の説明】
【0055】
1 車両前照灯制御システム
11 ヘッドランプ
12 画像センサ
13 ヘッドランプ駆動部
14 車車間通信部
15 道路情報取得部
16 ECU
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の周囲を撮影し、撮影した画像に基づいて光源を検出し、検出した光源の位置情報を出力する画像センサ(12)から、前記光源の位置情報を取得する取得手段(110)と、
前記車両の所定の進行方向範囲内に前記光源があるか否かを、前記取得手段(110)によって取得された前記光源の位置情報に基づいて判定する判定手段(120)と、
前記判定手段(120)の判定結果が肯定的であることに基づいて、前記光源の方向に前記前照灯の照射方向を追従させる制御を行い、前記判定手段(120)の判定結果が否定的であることに基づいて、前記光源の位置と無関係に前記前照灯を制御することを特徴とする制御手段(130〜160)と、を備えた車両前照灯制御装置。
【請求項2】
前記判定手段は、前記進行方向範囲を、前記車両の舵角またはヨーレートに基づいて決定することを特徴とする請求項1に記載の車両前照灯制御装置。
【請求項3】
前記判定手段は、前記進行方向範囲を、前記車両が現在走行中の道路の形状情報に基づいて決定することを特徴とする請求項1に記載の車両前照灯制御装置。
【請求項4】
前記制御手段(130〜160)は、前記判定手段(120)の判定結果が否定的である場合、前記光源が他の車両のライトであるか否かを判定し、他の車両のライトであると判定すれば前記前照灯をロービームに制御し、他の車両のライトでないと判定すれば前記前照灯をハイビームに制御することを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1つに記載の車両前照灯制御装置。
【請求項1】
車両の周囲を撮影し、撮影した画像に基づいて光源を検出し、検出した光源の位置情報を出力する画像センサ(12)から、前記光源の位置情報を取得する取得手段(110)と、
前記車両の所定の進行方向範囲内に前記光源があるか否かを、前記取得手段(110)によって取得された前記光源の位置情報に基づいて判定する判定手段(120)と、
前記判定手段(120)の判定結果が肯定的であることに基づいて、前記光源の方向に前記前照灯の照射方向を追従させる制御を行い、前記判定手段(120)の判定結果が否定的であることに基づいて、前記光源の位置と無関係に前記前照灯を制御することを特徴とする制御手段(130〜160)と、を備えた車両前照灯制御装置。
【請求項2】
前記判定手段は、前記進行方向範囲を、前記車両の舵角またはヨーレートに基づいて決定することを特徴とする請求項1に記載の車両前照灯制御装置。
【請求項3】
前記判定手段は、前記進行方向範囲を、前記車両が現在走行中の道路の形状情報に基づいて決定することを特徴とする請求項1に記載の車両前照灯制御装置。
【請求項4】
前記制御手段(130〜160)は、前記判定手段(120)の判定結果が否定的である場合、前記光源が他の車両のライトであるか否かを判定し、他の車両のライトであると判定すれば前記前照灯をロービームに制御し、他の車両のライトでないと判定すれば前記前照灯をハイビームに制御することを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1つに記載の車両前照灯制御装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2013−47058(P2013−47058A)
【公開日】平成25年3月7日(2013.3.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−186165(P2011−186165)
【出願日】平成23年8月29日(2011.8.29)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年3月7日(2013.3.7)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年8月29日(2011.8.29)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】
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