説明

車両前照灯

【課題】 本発明は、簡単な構成により、灯具の奥行き寸法が低減されると共に、LED光源の指向特性性能が有効に利用され得、さらにオーバーヘッドサイン用配光が形成され得るようにした車両前照灯を提供することを目的とする。
【解決手段】 LED光源11と、このLED光源からの光を光照射方向前方に向かって反射するように、第一の焦点位置F1が光源の発光部付近に位置し、且つ第二の焦点位置が光照射方向前側に位置する光照射方向前方に向かって凹状の楕円系反射面12と、上記反射面の前方にて、ほぼ水平な光軸上にて、その光源側の焦点位置が上記反射面の第二の焦点位置付近に位置する凸状の投影レンズ13と、を含む車両前照灯10において、上記反射面の長軸が後方に向かって下方に傾斜して配置され、上記LED光源の基板の表面が後方に向かって下方に傾斜して配置されるように、車両前照灯10を構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば自動車の前部に設けられた前照灯または補助前照灯として使用されるLEDを光源とするプロジェクタタイプの車両前照灯に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、このような車両前照灯は、図5に示すように、構成されている。
即ち、図5において、車両前照灯1は、LED光源2と、リフレクタ3と、投影レンズ4と、遮光部材5と、から構成されている。
【0003】
上記LED光源2は、平坦な基板2aと、この基板2aの上面(または上面及び下面に実装されたLED2bと、から構成されている。
上記LED光源2は、その基板2aが、光軸Oに沿って前方に向かってほぼ水平に配置され、外部から給電されるようになっている。
【0004】
上記リフレクタ3は、その内面が第一の焦点F1がLED光源2の発光中心付近に位置するように、そして長軸が前方に向かってほぼ水平に延びるように配置された楕円系反射面から構成されており、この内面が反射面として形成されている。
ここで、楕円系反射面は、回転楕円面,楕円柱だけでなく、楕円面を基本とした自由曲面を含むものである。
【0005】
上記投影レンズ4は、凸レンズ、好ましくは非球面レンズから構成されており、その光源側(後側)の焦点が、上記リフレクタ3の第二の焦点位置F2付近に配置されており、LED光源2またはリフレクタ3から前方に向かって進む光を集光し、前方に向かって照射するようになっている。
【0006】
上記遮光部材5は、前方に向かって照射される光に対して所定のすれ違いビーム用の配光パターンを付与するためのものであり、上記リフレクタ3の第二の焦点位置F2付近に配置されている。また、上記配光パターンにカットオフラインを形成するために、その上縁5aが所定形状に形成されている。
【0007】
このような構成の車両前照灯1によれば、LED光源2が給電され、発光することにより、LED光源2から出射した光は、直接に、または上記リフレクタ3で反射して、このリフレクタ3の第二焦点付近に向かって前方に進み、投影レンズ4により集束されながら、前方に向かって照射される。
その際、前方に向かって照射される光は、その一部が遮光部材5により遮断され、この遮光部材5の上縁5aによりカットオフラインを形成されて、すれ違いビームとして前方に向かって照射されることになる。
【0008】
これにより、図6に示すように、上記遮光部材5の上縁5aが投影レンズ4により投影されることになる。このため、配光パターンに関して、中心から右側で水平線よりやや下方にて水平に、そして中心から左側にてほぼ水平線に沿って水平に延びるカットオフラインCが形成され、このカットオフラインCの下側のみに対して、すれ違いビームに適した光が照射されるようになっている。
【0009】
このようにして、このような車両前照灯1においては、すれ違いビームの際には、上記遮光部材5によりカットオフラインCが形成されることにより、図6に示すように、すれ違いビーム用の配光パターンAが形成されるようになっている。
上記遮光部材5の上縁5aを光照射方向前方に向かって照射することにより、カットオフラインCの上側にはまったく光が照射されないので、対向車に眩惑光を与えるようなことがない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、このような構成の車両前照灯1においては、リフレクタ3の第一の焦点と第二の焦点を結ぶ直線が、投影レンズ4の光軸とほぼ一致している。 このため、リフレクタ3及び投影レンズ4の組合せによる光学系において、そのリフレクタ3の後端から投影レンズ4の前端までの光学ユニットの所謂奥行き寸法は、リフレクタの焦点間距離とリフレクタの焦点距離そして投影レンズ4の焦点距離の和となり、一義的に決まってしまう。
従って、光学系の基本焦点距離が決まると、必然的に車両前照灯の灯具の奥行き寸法も決まることになり、最近の車両デザインにおける灯具奥行き低減の要求に対応することができず、車両前照灯の薄型化が困難になってしまう。
【0011】
また、LED光源の各LEDは、それぞれ所謂ランバシアン発光分布を有しており、最も輝度の高い中心軸付近の光が、リフレクタ3で反射して、投影レンズ4の中心付近ではなく、投影レンズ4の上下端付近に入射することになり、場合によっては投影レンズ4の周縁からはみだしてしまう。
例えば、LED光源2の基板2aの上面に実装されたLED2bの光源像は、図7にて符号L1で示すように、投影レンズ4の下側領域にて、投影レンズ4の周縁からはみだすように形成されることになる。
従って、LED光源2のLED2bから出射した光の一部、特に輝度の高い部分が、投影レンズ4の周縁でケラれ、前方に照射されなくなってしまう。このため、LED光源2からの光の利用効率が低下し、配光パターンの輝度が低下してしまい、集光性が低下して、配光パターンの中心付近の輝度も低下して、遠方視認性が不足することもあった。
【0012】
さらに、上記遮光部材5により明瞭なカットオフラインCが形成されることから、道路上に設置された道路標識等の所謂オーバーヘッドサインのための配光パターンは形成されない。
このため、前述した車両前照灯1においては、このようなオーバーヘッドサイン用配光に対応するために、遮光部材5に、投影レンズ4の焦点位置(F2)から外れた位置に、オーバーヘッドサイン用配光のための窓部を設けることが考えられる。
【0013】
これにより、LED光源2から出射した光の一部が、リフレクタ3の下側領域3aで反射して、遮光部材5の窓部を通過することにより、投影レンズ4を介して、前方の水平線よりやや上側に向かって照射され、オーバーヘッドサイン用配光を形成することができる。
この場合、窓部が投影レンズ4の焦点から外れているので、オーバーヘッドサイン用配光がややぼやけた状態で投影されることになり、この配光の周囲の明暗境界線が気になるようなことはない。
また、すれ違いビーム用配光パターンを形成しないリフレクタ3の下側領域3aで反射した光を利用しているため、すれ違いビーム用配光パターンが暗くなってしまうようなことはない。
【0014】
しかしながら、オーバーヘッドサイン用配光を形成するための窓部が、遮光部材5の上縁5aの下側に形成されると、この窓部と遮光部材5の上縁5aとの間には、構造上の点から、一定の寸法が必要である。
従って、すれ違いビーム用配光パターンの上端に接するように、オーバーヘッドサイン用配光パターンを設定することは不可能であった。
【0015】
また、すれ違いビーム用の配光を形成するためのリフレクタ3で反射した光を、遮光部材5の窓部を通過させ、この窓部の形状を投影レンズ4によりオーバーヘッドサイン領域に投影するようになっている。
従って、投影レンズ4により集光される光によりオーバーヘッドサイン用配光が形成され、必ずしもオーバーヘッドサイン用配光として最適な配光特性にはならなかった。
【0016】
本発明は、以上の点から、簡単な構成により、灯具の奥行き寸法が低減され、LED光源の指向特性性能が有効に利用され得、さらにオーバーヘッドサイン用配光が形成され得るようにした車両前照灯を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記目的は、本発明によれば、基板上にほぼ垂直に実装された少なくとも一つのLEDから成るLED光源と、このLED光源からの光を光照射方向前方に向かって反射するように、第一の焦点位置が光源の発光部付近に位置し、且つ第二の焦点位置が光照射方向前側に位置するように配置された光照射方向前方に向かって凹状の楕円系反射面と、上記反射面の前方にて、ほぼ水平な光軸上にて、その光源側の焦点位置が上記反射面の第二の焦点位置付近に位置するように配置された凸状の投影レンズと、を含んでいる、車両前照灯において、上記反射面の第一の焦点位置が第二の焦点位置より後方下側に位置するように、その長軸が後方に向かって下方に傾斜して配置されており、上記LED光源の基板の表面が、後方に向かって下方に傾斜して配置されていることを特徴とする、車両前照灯により、達成される。
【0018】
本発明による車両前照灯は、好ましくは、上記反射面の第一の焦点及び第二の焦点の間の距離が、上記投影レンズの焦点距離より短く選定されている。
【0019】
本発明による車両前照灯は、好ましくは、上記LED光源の発光中心から基板に垂直に延びる垂線が、上記投影レンズの光軸の延長線と、上記反射面上で交差する。
【0020】
本発明による車両前照灯は、好ましくは、さらに、上記LED光源から離れた位置に配置された放熱部材を備えており、この放熱部材が、上記LED光源の基板と熱伝導部材を介して熱的に接続されている。
【0021】
本発明による車両前照灯は、好ましくは、さらに、上記反射面の第二の焦点位置付近に配置され、上縁がカットオフラインを画成するように形成された遮光部材を備えている。
【0022】
本発明による車両前照灯は、好ましくは、上記遮光部材が、上記LED光源からの直接光を光照射方向前方の上側に向かって透過させるオーバーヘッドサイン用配光のための窓部を有している。
【発明の効果】
【0023】
上記構成によれば、LED光源から反射面に入射した光が、この反射面で反射して、その第二の焦点位置に向かって集束し、さらに投影レンズにより集束されて、光照射方向前方に向かって照射される。
これにより、LED光源の光源像が投影レンズにより光照射方向前方に向かって投影されることになり、所定の配光パターンが形成されることになる。
【0024】
ここで、上記反射面の二つの焦点間を結ぶ中心軸(長軸)が、後方に向かって下方に傾斜している。これにより、車両前照灯の光学ユニットそして灯具の前後方向の奥行き寸法が短く形成され、車両前照灯が薄型に構成され得ることになる。
これにより、最近の車両デザインにおける灯具奥行き低減に対応することが可能になる。
【0025】
また、上記LED光源の基板も後方に向かって下方に傾斜していることから、上記LED光源の基板上に垂直に実装された個々のLEDからの光のうち、所謂ランバシアン発光分布の最も輝度の高い基板に垂直な方向の光が、反射面で反射して投影レンズの中心付近に入射することになる。このため、投影レンズの周縁でケラれることがなく、LED光源からの光の利用効率が向上し、より明るい配光パターンが得られることになる。
【0026】
上記反射面の第一の焦点及び第二の焦点の間の距離が、上記投影レンズの焦点距離より短く選定されている場合には、車両前照灯の光学ユニットそして灯具の奥行き寸法がより短く形成され、車両前照灯がより一層薄型に構成され得ることになる。
【0027】
上記LED光源の発光中心から基板に垂直に延びる垂線が、上記投影レンズの光軸の延長線と、上記反射面上で交差する場合には、上記LED光源のLEDの最も発光輝度の高い基板垂直方向に出射した光が、反射面上にて上記投影レンズの光軸の延長線上に入射して、上記投影レンズの光軸に沿って光照射方向前方に向かって反射する。
従って、上記LED光源からの光のうち、最も輝度の高い部分が、投影レンズの中心付近に入射することになるので、投影レンズの周縁によるケラれが大幅に低減され、中心付近にてより高い輝度を備えた理想的な配光パターンが得られることになる。
【0028】
さらに、上記LED光源から離れた位置に配置された放熱部材を備えており、この放熱部材が、上記LED光源の基板と熱伝導部材を介して熱的に接続されている場合には、上記LED光源の基板が傾斜して配置されていることから、基板の放熱のための放熱部材の配置場所の確保が困難になるが、上記LED光源から離れた位置であれば、放熱部材を容易に配置することが可能になる。また、LEDで発生した熱が基板から熱伝導部材を介して放熱部材に伝達され、放熱部材から外部に放熱されることにより、上記LED光源の放熱が確実に行なわれ得ることになる。
【0029】
さらに、上記反射面の第二の焦点位置付近に配置され、上縁がカットオフラインを画成するように形成された遮光部材を備えている場合には、反射面で反射した光の一部が、上記遮光部材により遮断されて、その上縁によりカットオフラインを形成されることにより、すれ違いビーム用の配光パターンが形成されることになる。
【0030】
上記遮光部材が、上記LED光源からの直接光を光照射方向前方の上側に向かって透過させるオーバーヘッドサイン用配光のための窓部を有している場合には、上記LED光源から出射した光の一部が、この窓部に直接に入射し、さらに投影レンズを介して光照射方向前方の上側に向かって、即ち光照射方向前方の水平線より僅かに上方のオーバーヘッドサイン用配光領域に照射される。
これにより、オーバーヘッドサイン用配光が形成されるので、例えば自動車の進行方向に関して水平線よりやや上側に位置する道路標識等に照射されることにより、これらの道路標識等が明るく照明され、これらの道路標識等が確実に視認され得ることになる。
【0031】
この場合、オーバーヘッドサイン用配光を形成するための上記窓部には、従来すれ違いビーム時に投影レンズには入射せず、すれ違いビーム用配光パターンの形成には寄与しなかった光が入射する。このため、すれ違いビーム用配光パターンを形成する光束が低減することはなく、光利用効率が向上することになる。
また、オーバーヘッドサイン用配光は、反射面で反射せず、直接に上記窓部を介して投影レンズに入射する。このため、反射面の形状によるすれ違いビームとは異なる配光特性が付与されることになり、最適なオーバーヘッドサイン用配光が得られ、オーバーヘッドサインの視認性が向上する。
さらに、オーバーヘッドサイン用配光は、上記遮光部材の窓部により形成される。このため、従来の車両前照灯と比較して、追加の部品が不要であることから、簡単な構成により、低コストで構成され得ることになる。
【0032】
このようにして、本発明によれば、簡単な構成により、灯具の奥行き寸法が低減され、LED光源の指向特性性能が有効に利用され得、さらにオーバーヘッドサイン用配光が形成され得るようにした車両前照灯が提供され得ることになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
以下、この発明の好適な実施形態を図1から図4を参照しながら、詳細に説明する。
尚、以下に述べる実施形態は、本発明の好適な具体例であるから、技術的に好ましい種々の限定が付されているが、本発明の範囲は、以下の説明において特に本発明を限定する旨の記載がない限り、これらの態様に限られるものではない。
【0034】
[実施例1]
図1は、本発明による車両前照灯の第一の実施形態の構成を示している。
図1において、車両前照灯10は、自動車のヘッドランプとして構成されており、LED光源11と、上記LED光源11からの光を光照射方向前方に向かって反射するリフレクタ12と、LED光源11またはリフレクタ12から前方に向かって進む光を集束する投影レンズ13と、上記LED光源11から投影レンズ13への光路中に配置された遮光部材14と、から構成されている。
【0035】
上記LED光源11は、一般に自動車の前照灯または補助前照灯に使用されるLED光源であって、外部から給電されるようになっている。
ここで、上記LED光源11は、平坦な基板11a上に、少なくとも一つのLED11bが実装されており、各LED11bは、その中心軸が基板11aに対してほぼ垂直に配置されている。
【0036】
上記リフレクタ12は、その内面が、上記LED光源11からの光を前方に向かって反射するように前方に向かって凹状に形成されており、その第一の焦点位置F1がLED光源11の発光中心付近に位置するように配置された楕円系反射面として構成されている。
ここで、楕円系反射面は、回転楕円面,楕円柱だけでなく、楕円面を基本とした自由曲面を含むものである。
上記リフレクタ12は、ほぼ全体がすれ違いビーム用配光パターンを与えるように形成されている。
【0037】
上記投影レンズ13は、例えば非球面の凸レンズから成り、その光源側の焦点位置が上記リフレクタ12の第二の焦点位置F2付近に位置するように、光照射方向前方に向かってほぼ水平な光軸O上に配置されている。
【0038】
上記遮光部材14は、遮光性材料から構成されており、上記リフレクタ12の第二の焦点位置F2付近即ち投影レンズ13の光源側の焦点位置付近に配置されている。
これにより、遮光部材14の上縁14aが投影レンズ13により光照射方向前方に投影されることにより、すれ違いビーム用の配光パターンにおけるカットオフラインが形成されるようになっている。
【0039】
以上の構成は、図5に示した従来の車両前照灯1とほぼ同じ構成であるが、本発明実施形態による車両前照灯10は、以下の点で異なる構成になっている。
即ち、上記リフレクタ12は、図1に示すように、その第一の焦点F1及び第二の焦点F2を通る中心軸(長軸)が、後方に向かって下方に傾斜している。
さらに、上記リフレクタ12は、その第一の焦点F1及び第二の焦点F2の間の焦点間距離d1aが、上記投影レンズ13の焦点距離d2より短く選定されている。
また、上記LED光源11は、その基板11aの表面が、上記リフレクタ12の中心軸に沿って、同様に後方に向かって下方に傾斜して延びるように、配置されている。
【0040】
図示の場合、上記LED光源11及びリフレクタ12の傾斜角度は、例えば45度であって、リフレクタ12の第二焦点F2から後端までの距離(d1)が約20mm必要である。
これに対して、上述した傾斜配置によって、水平方向の距離d1’は、傾斜角度θに対する余弦(d1’=d1×cosθ)で計算されるので、約14.1mmとなり、約30%の奥行き短縮効果が得られることになる。
【0041】
さらに、図示の場合、上記LED光源11のLED11bから基板11aに対して垂直に延びる垂線が、上記投影レンズ13の光軸Oと、上記リフレクタ12の内面付近Pで交差するようになっている。
【0042】
本発明実施形態による車両前照灯10は、以上のように構成されており、LED光源11が外部から給電されて発光することにより、LED光源11のLED11bから光が出射する。
LED光源11から出射した光L1は、上記リフレクタ12により反射し、その第二の焦点位置F2付近に向かって集束し、さらに投影レンズ13を介して集束しながら、光照射方向前方に向かって照射される。
その際、上記遮光部材14の上縁14aによりカットオフを形成されることにより、図6に示すように、すれ違いビーム用の配光パターンB1が形成されることになる。
【0043】
この場合、上記投影レンズ13の光軸Oに対して、上記LED光源11及びリフレクタ12が後方に向かって下方に傾斜して配置されていることにより、同じ光学特性を有する光学系であっても、傾斜している分だけ、光軸Oの方向に関して短縮されることになる。
さらに、上記第2焦点F2からリフレクタ12の後端までの距離d1が、投影レンズ13の焦点距離よりも短く選定されていることにより、車両前照灯10全体が、前後方向に関してより薄型化され得ることになる。
【0044】
また、上記LED光源11のLED11bのランバシアン発光分布の最大輝度を与える中心軸方向の光が、上記リフレクタ12で反射して、光軸Oに沿って上記投影レンズ13に入射する。
これにより、上記LED光源11からの光L2は、図2に示すように、上記投影レンズ13の中心付近に入射することになる。このため、上記LED光源11からの光のうち、最も輝度の高い部分の上記投影レンズ13の周縁によるケラれが大幅に低減され、中心付近にてより高い輝度を備えた理想的な配光パターンが得られることになる。
従って、配光パターンにおける中心付近でより高い輝度が得られ、遠方視認性が向上することになる。
【0045】
[実施例2]
図3は、本発明による車両前照灯の第二の実施形態の構成を示している。
図3において、車両前照灯20は、図1に示した車両前照灯10とほぼ同様の構成であるので、同じ構成要素には同じ符号を付して、その説明を省略する。
上記車両前照灯20は、図1の車両前照灯10とは、上記LED光源11の基板11aの裏側に、ヒートパイプ21が熱的に接続されている点で異なる構成になっている。
【0046】
このヒートパイプ21は、上記LED光源11から離れた位置に配置された放熱部材22に対して熱的に接続されている。
これにより、上記LED光源11のLED11bの駆動により発生する熱が、基板11aからヒートパイプ21を介して放熱部材22に伝達され、この放熱部材22から外部に放熱されるようになっている。
【0047】
このような構成の車両前照灯20によれば、図1に示した車両前照灯10と同様に作用し、上記LED光源11からヒートパイプ21を介して放熱部材22により確実に放熱されることになる。このため、上記LED光源11の各LED11bが効率良く放熱され得、温度上昇によって発光効率が低下してしまうようなことがない。
さらに、上記LED光源11の後方に向かって下方に傾斜した配置によって、基板11aの放熱のための放熱部材の配置場所が確保できなくても、離れた位置に配置した放熱部材22により確実に放熱が行なわれ得ることになる。
【0048】
[実施例3]
図4は、本発明による車両前照灯の第三の実施形態の構成を示している。
図4において、車両前照灯30は、図1に示した車両前照灯10とほぼ同様の構成であるので、同じ構成要素には同じ符号を付して、その説明を省略する。
上記車両前照灯30は、図1の車両前照灯10とは、上記遮光部材14の上縁14aからやや下方に、窓部14bを備えている点で異なる構成になっている。 尚、この実施形態においては、上記LED光源11は、図1の車両前照灯10におけるLED光源11より大きな傾斜角度で、後方に向かって下方に傾斜している。
【0049】
この窓部14bは、上記LED光源11のLED11bからの直接光を透過させるようになっている。
この窓部14bは、透過光が投影レンズ13を介して光照射方向前方の上側のオーバーヘッドサイン領域に向かって照射されるように、その大きさ及び位置が選定されている。
【0050】
このような構成の車両前照灯30によれば、図1に示した車両前照灯10と同様に作用すると共に、上記遮光部材14に設けられた窓部14bを介して、オーバーヘッドサイン用配光が、例えば自動車の進行方向に関して水平線よりやや上側に位置する道路標識等に照射される。このため、これらの道路標識等が明るく照明され、これらの道路標識等が確実に視認され得ることになる。
この場合、上記オーバーヘッドサイン用配光は、従来すれ違いビーム用配光パターンの形成には寄与しない上記LED光源11からの直接光を利用することになる。これにより、すれ違いビームの配光パターンB1を形成する光束が、この窓部14bの設置によって低減することがない。
【0051】
また、上記窓部14bの輪郭が、オーバーヘッドサイン用配光パターンB2の周縁の形状を決定することになる。このため、この窓部14bの大きさ及び形状を適宜に選定することによって、リフレクタ12の反射特性に依存することなく、オーバーヘッドサイン用配光パターンB2の大きさ及び形状が調整され得ることになる。
従って、オーバーヘッドサイン用配光が所定の配光規格を満たすように形成され得ることになる。
【産業上の利用可能性】
【0052】
上述した実施形態においては、遮光部材14を備えることにより、すれ違いビーム用の配光パターンが形成されるようになっているが、これに限らず、遮光部材14を省略することにより、走行ビーム用の配光パターンが形成されるようにしてもよいことは明らかである。
【0053】
また、上述した第二の実施形態においては、上記LED光源11の基板11aにヒートパイプ21が設けられているが、これに限らず、離れた位置に配置された放熱部材22に対して熱を伝導させることができれば、他の熱伝導部材を備えるようにしてもよい。
【0054】
さらに、上述した実施形態においては、車両前照灯10がヘッドランプである場合について説明したが、これに限らず、他の種類の車両前照灯、例えばベンディングランプや、フォグランプ等の補助前照灯として構成することも可能である。
【0055】
このようにして、本発明によれば、簡単な構成により、灯具の奥行き寸法が低減され、LED光源の指向特性性能が有効に利用され得、さらにオーバーヘッドサイン用配光が形成され得るようにした、極めて優れた車両前照灯が提供され得ることになる。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】本発明による車両前照灯の第一の実施形態の構成を示す概略側面図である。
【図2】図1の車両前照灯における投影レンズへの入射光を示す概略正面図である。
【図3】本発明による車両前照灯の第二の実施形態の構成を示す概略側面図である。
【図4】本発明による車両前照灯の第三の実施形態の構成を示す概略側面図である。
【図5】従来の車両前照灯の一例の構成を示す概略側面図である。
【図6】図5の車両前照灯によるすれ違いビーム用の配光パターンを示すグラフである。
【図7】図5の車両前照灯における投影レンズへの入射光を示す概略正面図である。
【符号の説明】
【0057】
10 車両前照灯
11 LED光源
12 リフレクタ
13 投影レンズ
14 遮光部材
14a 上縁
14b 窓部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上にほぼ垂直に実装された少なくとも一つのLEDから成るLED光源と、
このLED光源からの光を光照射方向前方に向かって反射するように、第一の焦点位置が光源の発光部付近に位置し、且つ第二の焦点位置が光照射方向前側に位置するように配置された光照射方向前方に向かって凹状の楕円系反射面と、
上記反射面の前方にて、ほぼ水平な光軸上にて、その光源側の焦点位置が上記反射面の第二の焦点位置付近に位置するように配置された凸状の投影レンズと、を含んでいる、車両前照灯において、
上記反射面の第一の焦点位置が第二の焦点位置より後方下側に位置するように、その長軸が後方に向かって下方に傾斜して配置されており、
上記LED光源の基板の表面が、後方に向かって下方に傾斜して配置されている、
ことを特徴とする、車両前照灯。
【請求項2】
上記反射面の第一の焦点及び第二の焦点の間の距離が、上記投影レンズの焦点距離より短く選定されていることを特徴とする、請求項1に記載の車両前照灯。
【請求項3】
上記LED光源の発光中心から基板に垂直に延びる垂線が、上記投影レンズの光軸の延長線と、上記反射面上で交差することを特徴とする、請求項1または2に記載の車両前照灯。
【請求項4】
さらに、上記LED光源から離れた位置に配置された放熱部材を備えており、 この放熱部材が、上記LED光源の基板と熱伝導部材を介して熱的に接続されていることを特徴とする、請求項1から3の何れかに記載の車両前照灯。
【請求項5】
さらに、上記反射面の第二の焦点位置付近に配置され、上縁がカットオフラインを画成するように形成された遮光部材を備えていることを特徴とする、請求項1から4の何れかに記載の車両前照灯。
【請求項6】
上記遮光部材が、上記LED光源からの直接光を光照射方向前方の上側に向かって透過させるオーバーヘッドサイン用配光のための窓部を有していることを特徴とする、請求項1から5の何れかに記載の車両前照灯。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−288113(P2008−288113A)
【公開日】平成20年11月27日(2008.11.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−133583(P2007−133583)
【出願日】平成19年5月21日(2007.5.21)
【出願人】(000002303)スタンレー電気株式会社 (2,684)
【Fターム(参考)】