説明

車両底部構造

【課題】 コストや車両重量をほぼ維持しつつチッピング等の対策を講じることができ、耐久性を好適に確保することが可能な車両底部構造を提供する。
【解決手段】 本発明の代表的な構成は、車両底部に燃料タンク110を備える車両底部構造100において、燃料タンク110前方のフロアパネル112下面の左右両側にて車両前後方向に延びる2つのフロアサイドメンバ118、120と、燃料タンク110の前方にてフロアサイドメンバ118、120の後端に取り付けられ下方へ突出する部分を有するキャップ部材122、124とをさらに備えることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両底部に燃料タンクを備える車両底部構造に関する。
【背景技術】
【0002】
車両底部に燃料タンクを備える自動車等では、跳ね上げられた石などが車両に衝突するチッピング等の対策が講じられている。例えば特許文献1には、燃料タンク下面がフロアパネル最下面の高さより低位置に位置する場合に、燃料タンク下面よりも低位置へと延びる燃料タンクガード部を燃料タンク前方に設けることで、燃料タンクの保護を図る技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−15769号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載されているように、燃料タンク下面が周辺よりも下方に突出してしまっている場合には、燃料タンク下面がむき出しの状態になるため、チッピング等の対策を講じなければ耐久性を確保し得ない可能性が高い。しかしながら、特許文献1に記載の技術のように、単に車両幅方向に延びる燃料タンクガード部を設けるのでは、部品点数・製造工程数が増えるためコストが増加し、車両重量が増加してしまう。
【0005】
本発明はこのような課題に鑑みてなされたものであり、コストや車両重量をほぼ維持しつつチッピング等の対策を講じることができ、耐久性を好適に確保することが可能な車両底部構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために本発明者らは鋭意検討し、燃料タンク前方のフロアパネル下面に接続されるフロアサイドメンバに着目した。そして、燃料タンクの容量の拡大、レイアウト変更等により燃料タンクの下面が周辺よりも下方に突出してしまう場合には、チッピング等の対策としてフロアサイドメンバを下方に突出させればよいのではないかと思量した。
【0007】
しかし、フロアサイドメンバ全体を下方に突出させる場合、特許文献1に記載の燃料タンクガード部を設けるほどではないものの、やはりコストや車両重量の増加が不可避となる。そこでさらに検討を重ね、チッピング等の対策としてフロアサイドメンバの後端に取り付けられるキャップ部材を下方へ突出させる構成を見出し、本発明を完成するに到った。
【0008】
すなわち、本発明の代表的な構成は、車両底部に燃料タンクを備える車両底部構造において、燃料タンク前方のフロアパネル下面の左右両側にて車両前後方向に延びる2つのフロアサイドメンバと、燃料タンクの前方にてフロアサイドメンバの後端に取り付けられ下方へ突出する部分を有するキャップ部材とをさらに備えることを特徴とする。また、キャップ部材の下方へ突出する部分は、燃料タンク下面よりも下方へ突出しているとよい。
【0009】
かかる構成によれば、チッピング等の対策として、フロアサイドメンバ全体ではなくその後端に取り付けられるキャップ部材が下方へ突出する。キャップ部材のみを下方へ突出させることでコストや車両重量をほぼ維持したままチッピング等の対策を講じることができ、耐久性を好適に確保できる。
【0010】
燃料タンクは、フロアパネル後方にて略上方へと延びる縦壁部を介し上方へ陥没する空間に設置されていて、キャップ部材の後端は、車両前後方向において縦壁部とほぼ同じ位置にあるとよい。かかる構成によれば、キャップ部材の後端と燃料タンクとの干渉を防止して、燃料タンクの容量を好適に確保できる。
【0011】
キャップ部材の下端に直接固定されるフロアアンダーカバーをさらに備えるとよい。かかる構成では、キャップ部材が下方へ突出しているため、従来フロアアンダーカバーの固定に使用していたブラケットを用いずともフロアアンダーカバーを直接固定することができる。したがって、部品点数・製造工程数を減らすことができ、コストや車両重量を低減する効果を奏する。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、コストや車両重量をほぼ維持しつつチッピング等の対策を講じることができ、耐久性を好適に確保することが可能な車両底部構造を提供可能である。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本実施形態にかかる車両底部構造を示す図である。
【図2】図1のA−A断面図である。
【図3】比較例にかかる車両底部構造の図2に対応する断面図である。
【図4】図2にフロアアンダーカバーを取り付けた状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。かかる実施形態に示す寸法、材料、その他具体的な数値などは、発明の理解を容易とするための例示に過ぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。なお、本明細書および図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。
【0015】
(実施形態)
図1は、本実施形態にかかる車両底部構造100を示す図である。図2は、図1のA−A断面図である。なお、図中の矢印Fwdは車両前方を示すものとする。
【0016】
図1に示す車両底部構造100は、車両底部に燃料タンク110を備える自動車にチッピング等の対策として適用される構造である。チッピングとは、跳ね上げられた石などが車両に衝突する現象のことであり、車両の耐久性に影響を与える。
【0017】
以下に、車両底部構造100の構成について説明する。図1、図2に示すように、車両底部構造100では、燃料タンク110が、車両前部の床面を形成するフロアパネル112の後方にて略上方へと延びる縦壁部126を介し上方へ陥没する空間に設置される。かかる縦壁部126は、車両後部の床面を形成するリヤフロアパネル114および車両幅方向に延びるクロスメンバ116の一部である。
【0018】
燃料タンク110前方のフロアパネル112下面には、2つのフロアサイドメンバ118、120が左右両側にそれぞれ接続される。フロアサイドメンバ118、120は、車両前後方向に延びるハット形の鋼材である。
【0019】
燃料タンク110前方のフロアサイドメンバ118、120の後端には、それぞれ、キャップ部材122、124の前部122a、124aが連結される。キャップ部材122、124の前部122a、124aは、フロアサイドメンバ118、120の後端に重なり溶接されるため、その後端とほぼ同じ形状をなす。一方、この前部122a、124aの後側は下方へ突出する形状をなす。以下この部分を「突出部122b、124b」と称する。
【0020】
キャップ部材122、124の後端は車両前後方向において縦壁部126とほぼ同じ位置まで延び、クロスメンバ116に接続される。キャップ部材122、124の後端が縦壁部126とほぼ同じ位置にとどまることで、燃料タンク110との干渉を防いでその容量を好適に確保できる。
【0021】
図3は、比較例にかかる車両底部構造200の図2に対応する断面図である。以下、図3の比較例と対比しつつ、図2の本実施形態の効果について説明する。なお、以下では便宜上、車両左側のフロアサイドメンバ118、キャップ部材122、222を挙げて説明するが、車両右側についても同様の説明が適用される。
【0022】
図3に示すように、比較例にかかる車両底部構造200はキャップ部材222の点で、本実施形態にかかる車両底部構造100と異なる。図3のキャップ部材222は、燃料タンク110前方にてフロアサイドメンバ118の後端に接続し、その高さのまま後方へと延びクロスメンバ116に接続される。すなわち、図2の本実施形態にかかる車両底部構造100のキャップ部材122のような突出部122bを有さない。
【0023】
図2、図3に示すように、燃料タンク110は、その容量の拡大、レイアウト変更等により下面がフロアサイドメンバ118よりも下方に突出してしまう場合がある。理解を容易にするため、図中、フロアサイドメンバ118の高さを基準線T1で図示する。
【0024】
図3に示す比較例では、燃料タンク110の下面がフロアサイドメンバ118よりも下方に突出する場合、キャップ部材222よりも下方に突出してしまうため、遮るものがなく燃料タンク110下面がむき出しの状態になる。そのため、飛来する石や障害物等によるチッピングから燃料タンク110を保護することができない。かかる石や障害物の軌道の一例を「軌道R2」として図示する。
【0025】
これに対し、図2に示す本実施形態では、キャップ部材122が突出部122bを有する。燃料タンク110の下面がフロアサイドメンバ118より下方に突出する場合であっても、突出部122bに石や障害物がぶつかることによって、それらの軌道は軌道R1となる(軌道R1は軌道R2と途中まで同じ軌道)。そのため、飛来する石や障害物等によるチッピングから燃料タンク110を保護することができる。なお、図2に示すように、キャップ部材122の突出部122bは、少なくとも燃料タンク110下面よりも下方へ突出しているとよい。図中、突出部122bの高さを基準線T2で図示する。
【0026】
図1に示すように、突出部122bは、とりわけ、跳ね上げられた石などが斜めに進入して燃料タンク110に衝突するのを抑制する効果を奏する。突出部122bの長さL1を長くするほど、燃料タンク110への衝突を抑制する効果は高まる。
【0027】
本実施形態の車両底部構造100は、キャップ部材122のみを下方へ突出させる構成のためコストや車両重量をほぼ維持したまま、チッピング等の対策としての一定の効果を奏することが可能となる。したがって、必要な耐久性を好適に確保することができる。さらに、この車両底部構造100によればフロアサイドメンバ118の共通化を図ることができる。チッピング等の対策はキャップ部材122で行えばよいため、フロアサイドメンバ118の断面縮小や軽量化も可能となる。
【0028】
(応用例)
図4は、図2にフロアアンダーカバー130を取り付けた状態を示す図である。図4に示すように、車種によっては車両底部を覆うフロアアンダーカバー130の設定がある場合がある。かかるフロアアンダーカバー130を備え付けることで、チッピング等の対策をさらに拡充することができる。
【0029】
従来、フロアアンダーカバー130は、ブラケットを介在させなければ固定することができなかった。これに対して、本実施形態の車両底部構造100ではキャップ部材122が下方へ突出する突出部122bを有し、突出部122bの下端が従来よりも低い位置にきている。そのため、ブラケットを介在させずとも直接キャップ部材122の突出部122bにフロアアンダーカバー130を固定することができる。なお、キャップ部材122は、パーキングケーブルや燃料配管の固定にも利用することができる。
【0030】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明はかかる例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【産業上の利用可能性】
【0031】
本発明は、車両底部に燃料タンクを備える車両底部構造に利用することができる。
【符号の説明】
【0032】
100、200…車両底部構造、110…燃料タンク、112…フロアパネル、114…リヤフロアパネル、116…クロスメンバ、118、120…フロアサイドメンバ、122、124、222…キャップ部材、122a、124a…前部、122b、124b…突出部、126…縦壁部、130…フロアアンダーカバー、T1、T2…基準線、L1…突出部の長さ、R1、R2…軌道

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両底部に燃料タンクを備える車両底部構造において、
前記燃料タンク前方のフロアパネル下面の左右両側にて車両前後方向に延びる2つのフロアサイドメンバと、
前記燃料タンクの前方にて前記フロアサイドメンバの後端に取り付けられ下方へ突出する部分を有するキャップ部材とをさらに備えることを特徴とする車両底部構造。
【請求項2】
前記キャップ部材の前記下方へ突出する部分は、前記燃料タンク下面よりも下方へ突出していることを特徴とする請求項1に記載の車両底部構造。
【請求項3】
前記燃料タンクは、前記フロアパネル後方にて略上方へと延びる縦壁部を介し上方へ陥没する空間に設置されていて、
前記キャップ部材の後端は、車両前後方向において前記縦壁部とほぼ同じ位置にあることを特徴とする請求項1または2に記載の車両底部構造。
【請求項4】
前記キャップ部材の下端に直接固定されるフロアアンダーカバーをさらに備えることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の車両底部構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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