説明

車両後方視認装置

【課題】本発明は、ドライバがルームミラーの向きを変更した場合に、その変更に応じて映像表示装置に表示する映像を変更し、ミラーの死角となる領域で、かつ、見落としやすい領域を効果的にドライバに映像表示することのできる車両後方視認装置を提供する。
【解決手段】自車両後方の撮像映像を取得する映像取得手段11と、ルームミラーの角度情報を取得するミラー角度取得手段12と、ミラー角度取得手段12が取得した角度情報に応じて、映像取得手段が取得した映像を変換する映像変換手段13と、ルームミラーに配置された表示手段15に映像変換手段13が生成した変換映像を出力する映像出力手段14とを備え、映像変換手段13は、映像取得手段11が取得した映像から、ルームミラーの角度設定に応じてドライバの死角となる領域の死角映像に変換することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車載リアカメラによって車両後方をモニタリングし、駐車時や出庫時に運転席から死角となる領域の映像を提示してドライバを支援する車両後方視認装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来技術として、車両の後方を撮影する撮影装置と、車室内にて車両の後方を確認するために、前席の前方の上部のルームミラーの取付け位置に配置された映像表示装置とを備えるとともに、撮影装置によって撮影された映像を、運転席側より見たルームミラーの反射映像と同様な疑似画像に変換する画像変換手段と、疑似画像を映像表示装置に表示する表示制御手段とを備えた車両後方視認装置がある(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
上記の従来技術では、画像変換手段によってドライバが通常のルームミラーを見ているように、視点のずれの少ない又は全くない画像で車両後方を確認することができるので、違和感が少ないという効果がある。また、撮影装置は、例えば車体の後部等の視界が良い場所に取り付けることができるので、従来のルームミラーの様に、後席やピラーなどによって視界が妨げられることがないという利点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−100180号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、一般的に車に取り付けられるルームミラーは前方の視界を妨げないようにその大きさが制限されるため、上記のようにルームミラー内に配置される映像表示装置では十分な表示サイズを確保することができない。そのため、車両後方の広い死角領域を表示したとしても解像度が不足してドライバが状況を正しく認識することが困難であるという問題があった。
【0006】
本発明は、従来のこのような問題を解決するためになされたもので、ドライバがルームミラーの向きを変更した場合に、表示装置の解像度が低くてもドライバが車両後方の状況を認識しやすい車両後方視認装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の車両後方視認装置は、自車両後方の撮像映像を取得する映像取得手段と、ルームミラーの角度情報を取得するミラー角度取得手段と、前記ミラー角度取得手段が取得した角度情報に応じて、前記映像取得手段が取得した映像を変換する映像変換手段と、前記ルームミラーに配置された映像表示装置に前記映像変換手段が生成した変換映像を出力する映像出力手段とを備え、前記映像変換手段は、前記映像取得手段が取得した映像から、前記ルームミラーの角度設定に応じてドライバの死角となる領域の死角映像に変換することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明の車両後方視認装置によれば、ドライバがルームミラーの向きを変更した場合に、表示装置の解像度が低くてもドライバが車両後方の状況を認識しやすい車両後方視認装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の車両後方視認装置の構成を示すブロック図
【図2】同図1の要部であるミラー角度取得手段が取得する角度情報をイメージで説明する図
【図3】ルームミラーがピッチ方向に動かされた場合に生じる死角領域についてイメージで説明する図
【図4】ルームミラーがピッチ方向に動かされた場合に同図1の要部である映像変換手段が行う撮像映像の変換処理についてイメージで説明する図
【図5】同図4の場合よりもルームミラーの回転角度が大きい場合に映像変換手段が行う撮像映像の変換処理についてイメージで説明する図
【図6】ルームミラーがヨー方向に動かされた場合に生じる死角領域についてイメージで説明する図
【図7】ルームミラーがヨー方向に動かされた場合に同図1の要部である映像変換手段が行う撮像映像の変換処理についてイメージで説明する図
【図8】ルームミラーが初期位置にあるときのルームミラーの視野の境界をイメージで説明する図
【図9】同図8のルームミラーとドライバの周辺の拡大図
【図10】ルームミラーがヨー方向に動かされたときのルームミラーの視野の境界をイメージで説明する図
【図11】図10のルームミラーの視野の境界の算出方法を説明する図
【図12】ルームミラーが初期位置にあるときの映像の切り出し領域をイメージで説明する図
【図13】ルームミラーがヨー方向に動かされたときの映像の切り出し領域をイメージで説明する図
【図14】撮像映像からの切り出し領域をイメージで説明する図
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の車両後方視認装置について、図面を用いて説明する。
【0011】
図1は、本発明の車両後方視認装置の構成を示すブロック図である。
【0012】
図1に示すように、車両後方視認装置は、撮像手段10と、映像取得手段11と、ミラー角度取得手段12と、映像変換手段13と、映像出力手段14と、表示手段15とを備える。
【0013】
撮像手段10は、車体後端部に設置されたリアカメラで構成され、自車両後方を撮像する。
【0014】
映像取得手段11は、CPUとメモリで構成され、撮像手段10に接続される。映像取得手段11は、撮像手段10が撮像した自車両の後方映像を取得して、内部で処理できる形式にしてデータを保持する。
【0015】
ミラー角度取得手段12は、角度センサで構成され、車室内のルームミラーの少なくとも2軸方向(ピッチ方向、ヨー方向)の角度情報を取得する。この角度情報について図2を用いて説明する。図2は、ミラー角度取得手段12が取得する角度情報をイメージで説明する図である。図2に示すように、ルームミラー20は、取り付け軸部分20Aと筐体部分20Bとから構成されている。ピッチ方向の回転21によって、筐体部分20Bを通るX軸周りの角度が示される。なお、図2の回転21は、矢印方向(ルームミラー20を下向きに動かす方向)が正方向に設定されている。ヨー方向の回転22によって、取り付
け軸部分20Aを通るZ軸周りの角度が示される。なお、図2の回転22は、矢印方向(ルームミラー20を左向きに動かす方向)が正方向に設定されている。ミラー角度取得手段12は、ルームミラー20のピッチ方向の回転角度とヨー方向の回転角度に関する情報を取得する。
【0016】
映像変換手段13は、映像取得手段11およびミラー角度取得手段12と接続する。映像変換手段13は、CPUで構成され、ミラー角度取得手段12から取得したルームミラーの角度情報に応じて、映像取得手段11から取得した自車両後方の撮像映像を変換処理する。具体的には、映像変換手段13は、自車両後方の領域のうちルームミラーに映らずに死角となる領域にフォーカスした映像を作成する。映像出力手段14は、バッファメモリで構成され、映像変換手段13と接続する。映像出力手段14は、映像変換手段13が変換処理した映像を表示手段15に出力する。表示手段15は、ルームミラーのミラー面に設けられたディスプレイで構成され、映像出力手段14から取得した映像を表示する。
【0017】
次に、以上のように構成された車両後方視認装置の映像変換手段13による映像処理について詳細に説明する。
【0018】
まず、ドライバによってルームミラーがピッチ方向に動かされた場合に、映像変換手段13がどのような変換を行うかについて説明する。
【0019】
図3は、ルームミラーがピッチ方向に動かされた場合に生じる死角領域についてイメージで説明する図である。なお、以下で説明する「自車両近傍」、「自車両遠方」は、いずれも自車両「外部」についての自車両近傍、自車両遠方を意味する。
【0020】
図3に示すように、ルームミラー30の表示面は、鏡で構成されて反射により周囲の像を写すミラー領域31と、映像出力手段14によって出力された映像を表示する映像表示領域32とから構成される。ルームミラー30がピッチ正方向(ルームミラー30が下向き)に動かされた場合、ミラー領域31内に映る自車両後方の外部の像は、ルームミラー30が動かされる前に比べて自車両近傍の領域を映したものとなる。そのため、ドライバは、ルームミラー30を動かす前に比べて、自車両近傍についてミラー領域31を介して視認することができるが、自車両遠方については死角領域が発生して視認することが難しくなる。例えば、ルームミラー30が動かされる前には、ミラー領域31Aにおいて点線領域33A内の物体を全て視認することができる。しかし、ルームミラー30がピッチ正方向に動かされた場合、ミラー領域31Bにおいて点線領域33B内の物体は一部欠損しており、この物体を全て視認することができない。同様に、ルームミラー30がピッチ負方向に動かされた場合、自車両遠方についてミラー領域31を介して視認することができるが、自車両近傍については死角領域が発生して視認することが難しくなる。
【0021】
そこで、次に、ルームミラー30がピッチ方向に動かされた場合に、映像変換手段13が映像表示領域32に映す映像を作成する処理について説明する。図4は、ルームミラーがピッチ方向に動かされた場合に映像変換手段が行う撮像映像の変換処理についてイメージで説明する図である。
【0022】
図4に示すように、ルームミラー30がピッチ正方向(ルームミラー30が下向き)に動かされた場合に、映像変換手段13は、映像取得手段11から取得した映像32Aから自車両遠方の領域34Aの映像を切り出す。映像変換手段13は、この切り出された領域34Aの映像を拡大した映像35Aを映像出力手段14に出力する。そして、映像表示領域32には、映像出力手段14から出力された映像35Aが表示される。これによりドライバは自車両近傍についてはミラー領域31によって確認し、死角領域が発生する自車両遠方については映像表示領域32によって確認することができる。
【0023】
一方、図4に示すように、ルームミラー30がピッチ負方向(ルームミラー30が上向き)に動かされた場合に、映像変換手段13は、映像取得手段11から取得した映像32Bから自車両近傍の領域34Bの映像を切り出す。映像変換手段13は、この切り出された領域34Bの映像を拡大した映像35Bを映像出力手段14に出力する。そして、映像表示領域32には、映像出力手段14から出力された映像35Bが表示される。これによりドライバは自車両遠方についてはミラー領域31によって確認し、死角領域が発生する自車両近傍については映像表示領域32によって確認することができる。
【0024】
また、映像変換手段13は、映像取得手段11から取得した映像から切り出す映像の範囲をルームミラー30のピッチ角度に応じて変更する。映像変換手段13は、ルームミラー30の正方向の角度が大きくなるほど(ルームミラー30が下向きに動かされるほど)、映像取得手段11から取得した映像のうち、より遠方の領域に相当する映像を切り出す。
【0025】
このようなルームミラー30の回転角度に応じた切り出しについて、図5を用いて説明する。図5は、図4の場合よりもルームミラーの回転角度が大きい場合に映像変換手段が行う撮像映像の変換処理についてイメージで説明する図である。
【0026】
図5に示すように、ルームミラー30が図4に示される場合よりもピッチ正方向(ルームミラー30が下向き)に動かされた場合に、映像変換手段13は、映像取得手段11から取得した映像32Cから図4に示される自車両遠方の領域34Aよりもさらに遠方の領域34Cの映像を切り出す。映像変換手段13は、この切り出された領域34Cの映像を拡大した映像35Cを映像出力手段14に出力する。そして、映像表示領域32には、映像出力手段14から出力された映像35Cが表示される。これによりドライバは自車両近傍についてはミラー領域31によって確認し、死角領域が発生する自車両遠方については映像表示領域32によって図4に示される場合よりも拡大された状態で確認することができる。
【0027】
同様に、図5に示すように、ルームミラー30が図4に示される場合よりもピッチ負方向(ルームミラー30が上向き)に映像変換手段13は、映像取得手段11から取得した映像32Dから図4に示される自車両近傍の領域34Bよりもさらに近傍の領域34Dの映像を切り出す。映像変換手段13は、この切り出された領域34Dの映像を拡大した映像35Dを映像出力手段14に出力する。そして、映像表示領域32には、映像出力手段14から出力された映像35Dが表示される。これによりドライバは自車両遠方についてはミラー領域31によって確認し、死角領域が発生する自車両近傍については映像表示領域32によって図4に示される場合よりも拡大された状態で確認することができる。
【0028】
次に、ドライバによってルームミラーがヨー方向に動かされた場合に、映像変換手段13がどのような変換を行うかについて説明する。図6は、ルームミラーがヨー方向に動かされた場合に生じる死角領域についてイメージで説明する図である。
【0029】
図6に示すように、ルームミラー30がヨー正方向(ルームミラー30が右向き)に動かされた場合、ミラー領域31内に映る自車両後方の外部の像は、ルームミラー30が動かされる前に比べて自車両右後方の領域を映したものとなる。そのため、ドライバは、ルームミラー30を動かす前に比べて、自車両右後方についてはミラー領域31を介して視認することができるが、自車両左後方については死角領域が発生して視認することが難しくなる。例えば、ルームミラー30が動かされる前には、ミラー領域31Cにおいて点線領域33C内の物体を視認することができる。しかし、ルームミラー30がヨー正方向に動かされた場合、ミラー領域31Dにおいて点線領域33D内の物体の左方が一部欠損し
ており、この物体の左右端部を全て視認することができない。同様に、ルームミラー30がヨー負方向に動かされた場合、自車両左方向についてミラー領域31を介して視認することができるが、自車両右方向については死角領域が発生して視認することが難しくなる。
【0030】
そこで、次に、ルームミラー30がヨー方向に動かされた場合に、映像変換手段13が映像表示領域32に映す映像を作成する処理について説明する。図7は、ルームミラーがヨー方向に動かされた場合に映像変換手段が行う撮像映像の変換処理についてイメージで説明する図である。
【0031】
図7に示すように、ルームミラー30がヨー正方向(ルームミラー30が右向き)に動かされた場合に、映像変換手段13は、映像取得手段11から取得した映像32Eから自車両左後方の領域34Eの映像を切り出す。映像変換手段13は、この切り出された領域34Eの映像を拡大した映像35Eを映像出力手段14に出力する。そして、映像表示領域32には、映像出力手段14から出力された映像35Eが表示される。これによりドライバは自車両右後方についてはミラー領域31によって確認し、死角領域が発生する自車両左後方については映像表示領域32によって確認することができる。
【0032】
一方、図7に示すように、ルームミラー30がヨー負方向(ルームミラー30が左向き)に動かされた場合に、映像変換手段13は、映像取得手段11から取得した映像32Fから自車両右後方の領域34Fの映像を切り出す。映像変換手段13は、この切り出された領域34Fの映像を拡大した映像35Fを映像出力手段14に出力する。そして、映像表示領域32には、映像出力手段14から出力された映像35Fが表示される。これによりドライバは自車両左後方についてはミラー領域31によって確認し、死角領域が発生する自車両右後方については映像表示領域32によって確認することができる。
【0033】
なお、映像変換手段13は、ピッチ角のときと同様に、ヨー方向の回転角度が正方向に大きくなるにつれて、映像34Eよりさらに領域を自車両左後方の部分に限定して切り出し、この切り出した映像を拡大して映像出力手段14に出力する。同様に、映像変換手段13は、ヨー方向の回転角度が負方向に大きくなるにつれて、映像34Fよりさらに領域を自車両右後方の部分に限定して切り出し、この切り出した映像を拡大して映像出力手段14に出力する。
【0034】
このような本発明の車両後方視認装置によれば、ドライバがルームミラー30の向きを変更した場合に、ミラー角度取得手段12がその角度情報を検出する。そして、映像変換手段13が、ミラー角度取得手段12が検出した角度情報に基づいて、映像取得手段11が取得した撮像映像をドライバにとって必要な情報となるように処理・変換する。具体的には、映像変換手段13は、映像取得手段11が取得した撮像映像から、ルームミラー30の向きの変更によってミラー領域31に映る領域外の死角となる領域の映像を切り出して映像表示領域32に拡大表示する。したがって、解像度の低いルームミラー30内の映像表示領域32であっても、ルームミラー30の位置によらずドライバにとって常に自車両後方の死角領域の情報を提示することができる。
【0035】
また、死角領域が大きくなるにつれて、全ての死角領域を含んだ映像が解像度の低いルームミラー30内の映像表示領域32に映されると、ドライバは視認し難くなる。そこで、ミラー角度取得手段12が取得した角度情報に応じて、映像変換手段13は変換映像の拡大率を変更する。これによって、ミラー角度取得手段12が取得した角度情報の絶対値が大きくなるに伴い死角領域の範囲が大きくなっても、映像変換手段13は死角領域のうち特に主要な部分と解される領域に絞って拡大するのでドライバにとって見やすい映像に変換することができる。
【0036】
なお、本実施形態では説明を簡単にするため、車両後方視認装置の構成には、撮像手段10であるリアカメラ、ミラー角度取得手段12である角度センサ、表示手段15であるディスプレイを含めたが、これらを構成に含めなくてもよい。すなわち、1つのECU(Electric Control Unit)内に映像取得手段11、映像変換手段13、映像出力手段14を設けて、このECUを車両後方視認装置としてもよい。この場合、このECUが、外部のミラー角度取得手段12から取得したルームミラーの角度情報に基づいて、外部の撮像手段10から取得した自車両後方の撮像映像を変換処理し、この変換処理した映像を外部の表示手段15に出力する。
【0037】
なお、本実施形態では、ミラー角度取得手段12は角度センサで構成されたが、より具体的な別な構成であってもよい。例えば、ミラー角度取得手段12は、加速度センサと、ジャイロセンサで構成されてもよい。ミラー角度取得手段12は、傾斜センサやカーナビゲーションシステムにおける自車位置測位において一般的な公知の技術により、加速度センサを用いて鉛直方向の重力加速度を測定してピッチ方向の回転角度を算出し、ジャイロセンサを用いて検出したヨー方向の旋回角速度成分を積分して回転角度を算出することができる。
【0038】
また、ミラー角度取得手段12は、図2に示されるルームミラー20の取り付け軸部分20Aと、筐体部分20Bと、取り付け軸部分20Aに設けた図示しない歯車等の機構構造で構成されてもよい。この場合、ミラー角度取得手段12は、この機構構造による変位情報からピッチ方向、ヨー方向それぞれの回転角度を算出する。
【0039】
いずれにせよ、ミラー角度取得手段12は、ルームミラーに接続されてこのルームミラーのピッチ方向、ヨー方向の2軸の回転角度に関するセンサ出力や変位信号を取得して、映像変換手段13に角度情報を出力できればよい。
【0040】
次に、映像変換手段13が切り出す領域の算出手法について詳細に説明する。
【0041】
図8は、ルームミラーが初期位置にあるときのルームミラーの視野の境界をイメージで説明する図である。図9は、図8のルームミラーとドライバの周辺の拡大図である。図10は、ルームミラーがヨー方向に動かされたときのルームミラーの視野の境界をイメージで説明する図である。図11は、図10のルームミラーの視野の境界の算出方法を説明する図である。
【0042】
図8〜図11では、ルームミラーの回転軸の位置が原点を意味する。また、車幅方向の左から右へ向かう方向がX軸、車長方向の後ろから前へ向かう方向がY軸に設定されている。
【0043】
図8に示すように、車両111に搭載されたルームミラー113aの鏡面がY軸負方向に正対しているとき、ルームミラー113aが初期位置にあると設定されている。ルームミラー113aの中心、すなわちXY平面の回動軸がXY平面の原点に設定されている。ルームミラー113aは2Mxのミラー幅を有する。ルームミラー113aのドライバ側端点AのXY座標は(Mx、0)で示される。ドライバの着座位置D(Dx、Dy)は固定値として設定されている。自車両111は、ルームミラー113aから車体後端までの車長W1を有する。自車両111は、車体後方に撮像手段10を備える。このとき、ルームミラー113aの視野範囲116aの境界F1は、車体後端上に位置する。
【0044】
図8、図9に示すように、ルームミラー113aのドライバ側端点Aとドライバの着座位置DとによるY軸周りの角度θは、この境界F1のY軸周りの角度と等しい。境界F1
のXY座標は(Fx1、Fy1)で示される。このときFx1=Mx−Wtanθ、Fy1=−W1で示される。ここで、tanθ=(Dx−Mx)/|Dy|で示される。これにより、Fx1=Mx−W(Dx−Mx)/|Dy|で示される。映像変換手段13は、このFx1の算出結果を用いて、映像取得手段11から取得した映像を切り出す。例えば、映像変換手段13は、自車両後方のうちルームミラー113aの視野範囲116a外の映像を切り出す。具体的には、映像変換手段13は、算出したFx1を通って伸びる視野範囲116aの境界線からX軸正方向(図8では右方向)の領域の映像を切り出す。
【0045】
なお、切り出す領域には、視野範囲116a内であって、境界F1を通る視野範囲116aの境界線に沿った部分を多少含んでもよい。これによって、境界F1を通る視野範囲116aの境界線沿いの領域で表示映像中の死角を無くすことができる。この点は、以下の説明でも同様なので詳細な説明を省略する。
【0046】
図10に示すように、図8の初期位置からヨー角方向に角度αだけルームミラー113bが回動された状態が示されている。ルームミラー113bが所定角度回転されると、途中で映像の切り出し領域が切り替わる。すなわち、映像変換手段13は、ルームミラー113bが所定角度回転されるまでは映像の右側の領域から所定領域を切り出し、所定角度回転すると映像の左側の領域から所定領域を切り出す。図10では、ルームミラー113bがすでにこの所定角度以上回転している。このとき、図8、図9と同様に、ルームミラー113bの視野範囲116bの境界F2は、車体後端上に位置する。境界F2のXY座標は(Fx2、Fy2)で示される。
【0047】
図11を用いて、図10の境界F2の算出について説明する。図11では、ルームミラー113bが角度α回動された場合が示されている。そして、ルームミラー113bの助手席側の点BからY軸正方向に下ろした垂線とX軸との交点Cが示されている。この交点CのXY座標は(−Mxcosα,−Mxsinα)で示される。境界F2のFx2=−Mxcosα−W2tanφ、Fy2=−W1=−W2−Mxsinαで示される。また、図11に示されるように、点B周りの角度の関係は、α+γ+φ=π/2−αで示される。換言すると、φ=π/2−2α−γで示される。このときtanφ=1/tan(2α+γ)で示される。また、点BとドライバDとの関係から、tanγ=(−Mxsinα−Dy)/(Dx+Mxcosα)で示される。cosαとtanγが求められるので、Fx2の座標が求められる。
【0048】
映像変換手段13は、このFx2の算出結果を用いて、映像取得手段11から取得した映像を切り出す。例えば、映像変換手段13は、自車両後方のうちルームミラー113bの視野範囲116b外の映像を切り出す。具体的には、映像変換手段13は、算出したFx2を通って伸びる視野範囲116bの境界線からX軸負方向(図11では左方向)の領域の映像を切り出す。このように、ルームミラー113bの角度設定に応じてドライバの死角となる領域である視野範囲116bの死角映像が切り出される。
【0049】
なお、図8〜図11ではルームミラーをヨー方向に回動させる場合について説明したが、ピッチ方向に回動させる場合についても同様に算出されるため、詳細な説明を省略する。
【0050】
次に、映像変換手段13による映像の切り出し方法について、詳細に説明する。図12は、ルームミラーが初期位置にあるときの映像の切り出し領域をイメージで説明する図である。図13は、ルームミラーがヨー方向に動かされたときの映像の切り出し領域をイメージで説明する図である。図14は、撮像映像からの切り出し領域をイメージで説明する図である。
【0051】
図12に示すように、ルームミラー113aが初期位置にあるとき、カメラ視野117のうち表示境界118a、120aで挟まれた映像切り出し領域121aが切り出される。表示境界118aは、車体側面から距離L1だけX軸方向に離れている。表示境界120aは、ルームミラー境界114aから所定のマージン119aだけ、ルームミラー境界114aと115aとで挟まれた視野範囲116a内に位置するよう設定されている。映像切り出し領域121aには、映像中心点123aと映像中心線122aが設定されている。映像中心点123aからX軸方向に伸ばした線分が表示境界118a、120aと交わる交点の距離はそれぞれd1で表される。
【0052】
図13に示すように、ルームミラー113bが所定角度αだけ回動した状態にあるとき、カメラ視野117のうち表示境界118b、120bで挟まれた映像切り出し領域121bが切り出される。表示境界118bは、車体側面から距離L2だけX軸負方向に離れている。図12では映像切り出し領域121aは視野範囲116aの右側(X軸正方向側)に示されている。一方、図13では映像切り出し領域121bは視野範囲116bの左側(X軸負方向側)に示されている。映像切り出し領域121bには、映像中心点123bと映像中心線122bが設定されている。映像中心点123bからX軸方向に伸ばした線分が表示境界118b、120bと交わる交点の距離はそれぞれd2で表される。
【0053】
図14に示すように、表示映像には、ミラー境界131が示されている。表示境界132、映像中心点133は、実際には表示されないが、切り出し領域の決定の際に用いられる。図14に示すように、映像中心点133の位置は、映像中心点133から表示境界132までの距離と、映像中心点133からミラー境界131までの距離とが等しくなる位置に設定される。映像切り出し領域134〜136は、点線枠で示される。この点線枠は、映像中心点133が切り出し中心となるように構成されている。また、この点線枠の大きさは、映像中心点133と表示境界132との距離に応じて定められる。すなわち、点線枠の横方向の長さは、映像中心点133と表示境界132とを結ぶ画面横軸に平行な線分の距離の2倍で表される。映像変換手段13は、点線枠のアスペクト比を所定の固定値に設定している。したがって、映像変換手段13は、点線枠の横方向の長さを算出し、この算出値に基づいて点線枠の大きさを決定する。
【0054】
映像中心点133と、映像切り出し領域134〜136とから示されるように、自車両に近い領域ほど切り出される領域は大きくなっている。この切り出される領域の大きさは、例えば自車両からの距離に反比例となるように設定されてもよい。一方、映像切り出し領域134〜136内の映像は、元の映像サイズになるように拡大される。したがって、映像切り出し領域134〜136の領域の大きさが小さいほど拡大率は大きくなる。
【0055】
以上のように、本発明の車両後方視認装置によれば、ドライバがルームミラー113aの向きを変更した場合に、ルームミラー113bの回動角度に応じて、新たにドライバの死角となった領域を含む視野範囲116b外の映像が切り出されるとともに、その切り出し領域の映像が拡大表示される。このため、ルームミラー上に画面サイズが小さく解像度が低い表示装置が設けられても、ドライバが車両後方の状況を死角無しに容易に認識することができる。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明の車両後方視認装置は、ドライバがルームミラーの向きを変更した場合に、解像度の低いルームミラーに自車両後方の映像をドライバに提示することのできる車両後方視認装置として有用である。
【符号の説明】
【0057】
10 撮像手段
11 映像取得手段
12 ミラー角度取得手段
13 映像変換手段
14 映像出力手段
15 表示手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自車両後方の撮像映像を取得する映像取得手段と、
ルームミラーの角度情報を取得するミラー角度取得手段と、
前記ミラー角度取得手段が取得した角度情報に応じて、前記映像取得手段が取得した映像を変換する映像変換手段と、
前記ルームミラーに配置された表示手段に前記映像変換手段が生成した変換映像を出力する映像出力手段とを備え、
前記映像変換手段は、前記映像取得手段が取得した映像から、前記ルームミラーの角度設定に応じてドライバの死角となる領域の死角映像に変換することを特徴とする車両後方視認装置。
【請求項2】
自車両後方を撮像し前記映像取得手段に撮像映像を出力する撮像手段と、
前記映像出力手段が出力した変換映像を表示する表示手段とをさらに備えた請求項1に記載の車両後方視認装置。
【請求項3】
前記映像変換手段は、前記ミラー角度取得手段が取得した角度情報に応じて変換映像の拡大率を変更することを特徴とする請求項1に記載の車両後方視認装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2012−195634(P2012−195634A)
【公開日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−56126(P2011−56126)
【出願日】平成23年3月15日(2011.3.15)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】