説明

車両搭載用ノイズ抑制フィルタ

【課題】車両搭載用ノイズ抑制フィルタの取り付け構造および接地構造を簡単にすることを目的とする。
【解決手段】車両搭載用機器に接続されるハーネス12と、貫通孔が設けられハーネス12が貫通する磁性体パイプ14と、貫通孔が設けられハーネス12が貫通する導電性パイプ16と、車両ボデーに設けられた接地導体板と導電性パイプ16とを導電接続する導電性プレート18と、導電性プレート18に沿って形成された支柱を有し、ハーネス12、磁性体パイプ14および導電性パイプ16を接地導体板上に支持する外装部材20とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両搭載用ノイズ抑制フィルタに関し、車両搭載用機器に接続される導体線に設けられるノイズ抑制フィルタに関する。
【背景技術】
【0002】
乗用車、トラック、バス等の車両には、ラジオ、テレビ、カーナビゲーションシステム、オーディオ機器等の車両搭載用機器が搭載される。車両搭載用機器には、信号の受け渡しや電源電力の供給を行うため、導体線を絶縁体で被覆したハーネスが接続される。
【0003】
車両搭載用機器に接続されるハーネスには、他の電気機器の動作に起因するノイズが生じることがある。例えば、ハイブリッド自動車、電気自動車等においては、車両駆動用モータへの供給電力を制御するスイッチング回路の動作に基づいて、ハーネスにノイズが生じることがある。また、車両に備えられるディジタル機器の動作に基づいて、ハーネスにノイズが生じることがある。車両搭載用機器に接続されるハーネスに生じるノイズは、車両搭載用機器の動作性能に影響を及ぼす。
【0004】
なお、特許文献1〜7には、導体線に生じたノイズを低減する技術が記載されている。特許文献1および2には、導体線の周りの磁性体を用いて導体線のノイズを低減する技術が記載されている。特許文献3〜6には、導体線の周りに磁性体が設けられると共に、導体線と接地導体との間にコンデンサが設けられたLCフィルタが記載されている。特許文献7には、筒形状の導体によって形成された貫通コンデンサ、および貫通コンデンサの内部に設けられたコイル状の細線によるLCフィルタが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実開平8−972号公報
【特許文献2】特開2000−331836号公報
【特許文献3】特開昭62−208705号公報
【特許文献4】実開平2−79618号公報
【特許文献5】特開平4−369910号公報
【特許文献6】特公平6−91406号公報
【特許文献7】特開平7−73935号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1〜7に記載されているようなフィルタを車両ボデーに固定する場合、固定用の部材を別途追加する必要が生じる場合がある。また、フィルタの構成によっては、接地のための配線が複雑になることがある。
【0007】
本発明は、車両搭載用ノイズ抑制フィルタの取り付け構造および接地構造を簡単にすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、車両搭載用機器に接続される導体線と、貫通孔が設けられ、前記導体線が貫通する磁性体部材と、貫通孔が設けられ、前記導体線が貫通する導電性部材と、車両ボデーの接地導体板と前記導電性部材とを導電接続する接地部材と、前記接地部材に沿って形成された支柱を有し、前記導体線、前記磁性体部材および前記導電性部材を前記接地導体板上に支持する支持部材と、を備えることを特徴とする。
【0009】
また、本発明に係る車両搭載用ノイズ抑制フィルタは、望ましくは、前記支持部材は、前記磁性体部材および前記導電性部材を収容する収容部を有し、前記支柱は、前記接地部材を覆うと共に、前記収容部を前記接地導体板上に支持する。
【0010】
また、本発明に係る車両搭載用ノイズ抑制フィルタは、望ましくは、前記支持部材は、前記支柱の前記接地導体板側の先端部に設けられ、前記支柱と共に楔形状をなすクリップ部と、前記支柱の延伸方向に対し垂直な板面を有し、前記クリップ部との間に前記接地導体板を挟む固定板と、を有する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、車両搭載用ノイズ抑制フィルタの取り付け構造および接地構造を簡単にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】外装部材が破線で示された車両搭載用ノイズ抑制フィルタの斜視図である。
【図2】ハーネスの中心軸を通るよう車載搭載用ノイズ抑制フィルタを切断した場合における断面図である。
【図3】ハーネスの延伸方向に対して垂直な断面図である。
【図4】車両搭載用ノイズ抑制フィルタの斜視図である。
【図5】車両搭載用ノイズ抑制フィルタの等価回路を示す図である。
【図6】ボルトおよびナットで接地導体板に固定された車両搭載用ノイズ抑制フィルタを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1に本発明の実施形態に係る車両搭載用ノイズ抑制フィルタ10の斜視図を示す。この図では外装部材20が破線で示されている。図2は、ハーネス12の中心軸を通るよう図1の上下方向に車両搭載用ノイズ抑制フィルタ10を切断した場合における断面図である。
【0014】
車両搭載用ノイズ抑制フィルタ10は、ハーネス12、ハーネス12が貫通する磁性体パイプ14、ハーネス12が貫通する導電性パイプ16、車両ボデーに設けられた接地導体板26に導電性パイプ16を導電接続する導電性プレート18、および、これらの構成部品を覆う外装部材20を備える。外装部材20は、これらの構成部品を接地導体板26上において支持する支持部材としての機能をも有する。
【0015】
ハーネス12は、導体線22と導体線22を被覆する絶縁体24とから構成される。導体線22には、複数の芯線を束ねたものを用いてもよい。また、導体線22を被覆する絶縁体24には、ゴム、プラスチック樹脂等の誘電体を用いることができる。ハーネス12の一端または両端は、ラジオ、テレビ、カーナビゲーションシステム、オーディオ機器等の車両搭載用機器に接続される。
【0016】
磁性体パイプ14は、フェライト等の軟磁性体に貫通孔が設けられた磁性体部材である。導電性パイプ16は、鉄、銅、アルミニウム等の導電体に貫通孔が設けられた導電性部材である。これらはパイプ形状、すなわち、筒形状に形成されているが、貫通孔を有する直方体、その他の立体形状で形成されていてもよい。磁性体パイプ14および導電性パイプ16は、互いに貫通孔の一端が対向するよう配置され、一方の貫通孔から他方の貫通孔にハーネス12が挿通可能となるよう配置されている。
【0017】
図2には、磁性体パイプ14の貫通孔の内壁とハーネス12の絶縁体24との間に隙間が設けられた構成が示されているが、磁性体パイプ14の貫通孔の内壁とハーネス12の絶縁体24とは密着していてもよい。また、図2には、導電性パイプ16の貫通孔の内壁とハーネス12の絶縁体24とが密着した構成が示されているが、導電性パイプ16の貫通孔の内壁とハーネス12の絶縁体24との間には隙間が設けられていてもよい。
【0018】
図3は図2についてのAB線断面図(ハーネスの延伸方向に対して垂直な断面図)である。導電性プレート18は、導電性パイプ16を接地導体板26に導電接続する帯状の接地部材である。導電性プレート18は上下方向に延伸し、上端は導電性パイプ16の側面に接合されている。導電性プレート18の下端からは、導電性プレート18の板面に対して垂直で互いに乖離する方向に2つの導電接触片28が突出する。各導電接触片28の下面は、接地導体板26の上面に導電接触する。接地導体板26は、車両ボデーとは別体とされ車両ボデーに取り付けられるものであってもよいし、車両ボデーの一部をなすものであってもよい。
【0019】
図4に外装部材20を実線で示した場合における車両搭載用ノイズ抑制フィルタ10の斜視図を示す。図2および図4に示すように、外装部材20は、磁性体パイプ14を収容する磁性体収容部30、導電性パイプ16を収容する導電体収容部32、導電性プレート18に沿って延伸する支柱34、支柱34の先端に設けられたクリップ部36、および、クリップ部36との間に接地導体板26を挟む固定板38を備える。
【0020】
磁性体収容部30、導電体収容部32、支柱34、クリップ部36、および固定板38は、ゴム、プラスチック等の樹脂によって形成されている。例えば、外装部材20の材料として熱可塑性の樹脂を用いる場合には、加熱によって軟化した樹脂によって磁性体パイプ14、導電性パイプ16、および導電性プレート18をモールドすることで外装部材20を形成してもよい。
【0021】
磁性体収容部30および導電体収容部32は、それぞれ、磁性体パイプ14および導電性パイプ16の外面に沿った円柱形状をなす。導電体収容部32の側面からは支柱34が下方に延伸する。支柱34は導電性プレート18を覆っている。このように、支柱34が導電性プレート18を覆う構造に代えて、支柱34の側面に導電性プレート18が固定された構造としてもよい。
【0022】
クリップ部36は、四角錐形状に形成され、支柱34と共に楔形状をなす。クリップ部36は、四角錐形状の他、一般的な多角錐形状、円錐形状等に形成されていてもよい。クリップ部36は、例えば、接地導体板26に設けられた取り付け孔40に支柱34を貫通させた後、支柱34の先端に形成される。あるいは、弾力性のある材料を用い、取り付け孔40を貫通することが可能な大きさにクリップ部36を形成し、そのようなクリップ部36を取り付け孔40に貫通させてもよい。クリップ部36は接地導体板26の下面側に位置し、支柱34の延伸方向に対し垂直な板面を有し接地導体板26の上面側に位置する固定板38との間に接地導体板26を挟む。これによって、支柱34は接地導体板26に固定され、磁性体収容部30および導電体収容部32は支柱34を介して接地導体板26上に支持される。また、クリップ部36および固定板38による圧着力によって、導電接触片28には接地導体板26に押さえ付けられる力が作用する。これによって、導電性プレート18は確実に接地導体板26に導電接触する。
【0023】
磁性体パイプ14は、ハーネス12に流れる電流に対する鎖交磁束を増大させる。すなわち、磁性体パイプ14およびハーネス12にはインダクタが形成される。また、導電性パイプ16は、ハーネス12の対地静電容量を増大させる。すなわち、導電性パイプ16およびハーネス12には、導体線22と接地導体板26との間に挿入されるキャパシタが形成される。したがって、車両搭載用ノイズ抑制フィルタ10の等価回路は、図5に示すように、インダクタ42およびキャパシタ44から構成されるLCフィルタ回路となる。インダクタ42は導体線22にシリーズ接続され、キャパシタ44は導体線22と接地導体板26との間にシャント接続されている。
【0024】
インダクタ42のインダクタンス値は、磁性体パイプ14の形状、大きさ、透磁率等を変化させることで調整される。キャパシタ44の静電容量は、導電性パイプ16の形状、大きさ、ハーネス12の絶縁体24の誘電率等を変化させることで調整される。
【0025】
このような構成によれば、ハーネス12の一端から入力されたノイズは、車両搭載用ノイズ抑制フィルタ10において抑制された上で他端から出力される。
【0026】
本実施形態に係る車両搭載用ノイズ抑制フィルタ10によれば、その構成部品が外装部材20にまとめて収容されると共に、車両ボデーの接地導体板26上に固定される。さらに、キャパシタを形成する導電性パイプ16は、支柱34に沿って延伸する導電性プレート18によって、車両搭載用ノイズ抑制フィルタ10の固定と共に接地導体板26に導電接続される。これによって、車両搭載用ノイズ抑制フィルタ10の取り付け構造および接地構造を単純化することができる。
【0027】
なお、車両搭載用ノイズ抑制フィルタ10は、図6のように固定板38を接地導体板26にボルト46およびナット48によって固定する構成としてもよい。この場合、接地導体板26には取り付け孔40が設けられていなくてもよい。また、支柱34の先端にはクリップ部36が設けられていなくてもよい。
【符号の説明】
【0028】
10 車両搭載用ノイズ抑制フィルタ、12 ハーネス、14 磁性体パイプ、16 導電性パイプ、18 導電性プレート、20 外装部材、22 導体線、24 絶縁体、26 接地導体板、28 導電接触片、30 磁性体収容部、32 導電体収容部、34 支柱、36 クリップ部、38 固定板、40 取り付け孔、42 インダクタ、44 キャパシタ、46 ボルト、48 ナット。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両搭載用機器に接続される導体線と、
貫通孔が設けられ、前記導体線が貫通する磁性体部材と、
貫通孔が設けられ、前記導体線が貫通する導電性部材と、
車両ボデーの接地導体板と前記導電性部材とを導電接続する接地部材と、
前記接地部材に沿って形成された支柱を有し、前記導体線、前記磁性体部材および前記導電性部材を前記接地導体板上に支持する支持部材と、
を備えることを特徴とする車両搭載用ノイズ抑制フィルタ。
【請求項2】
請求項1に記載の車両搭載用ノイズ抑制フィルタにおいて、
前記支持部材は、前記磁性体部材および前記導電性部材を収容する収容部を有し、
前記支柱は、前記接地部材を覆うと共に、前記収容部を前記接地導体板上に支持することを特徴とする車両搭載用ノイズ抑制フィルタ。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の車両搭載用ノイズ抑制フィルタにおいて、
前記支持部材は、
前記支柱の前記接地導体板側の先端部に設けられ、前記支柱と共に楔形状をなすクリップ部と、
前記支柱の延伸方向に対し垂直な板面を有し、前記クリップ部との間に前記接地導体板を挟む固定板と、
を有することを特徴とする車両搭載用ノイズ抑制フィルタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−95030(P2012−95030A)
【公開日】平成24年5月17日(2012.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−239623(P2010−239623)
【出願日】平成22年10月26日(2010.10.26)
【出願人】(308013436)小島プレス工業株式会社 (386)
【Fターム(参考)】