説明

車両検知装置、および、車両検知方法

【課題】背景を車両と誤検出する可能性を減少させる。
【解決手段】車両や背景から放射された遠赤外線の強度に応じて発生された起電力に対応する入力電圧とリファレンス電圧との差の電圧が増幅され、増幅された電圧に応じた入力レベル値と閾値とに基づいて車両の有無が判別され(S113,120,130,141)、増幅された電圧に応じた入力レベル値に基づいて、車両が無いと判別された入力レベル値を示す背景レベルが算出され(S150)、増幅された電圧に基づいて、その電圧の範囲が差動アンプの出力電圧範囲となり、背景レベルに応じた電圧の範囲が出力電圧範囲の中程の範囲となるように、リファレンス電圧が変化される(S163)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両検知装置、および、車両検知方法に関し、特に、道路上の車両の交通量を検出するのに適した車両検知装置、および、車両検知方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、焦電型赤外線センサやサーモパイルセンサを用いて、赤外線で車両を検出する赤外線式の車両検知器が用いられている。
【0003】
焦電型赤外線センサは、焦電効果によって温度変化を検出する微分出力型のパッシブセンサである。焦電型赤外線センサを用いて赤外線の絶対量を検出するためにはチョッパを設ける必要がある。このため、構造が複雑となりコストが上昇してしまう問題点があった。
【0004】
これに対して、サーモパイルセンサは、熱起電力効果によって絶対温度を検出する積分出力型のパッシブセンサである。このため、赤外線の量に応じた起電力がサーモパイルセンサから出力され、その起電力の大きさによって温度を測定することができる。
【0005】
特許文献1には、自ら発した赤外線でなく、検知対象が発する赤外線をパッシブに感知するサーモパイルセンサなどのパッシブセンサを用いた車両検知システムが開示されている。この車両検知システムによれば、車両を誤認することが少なく、高い精度で車両検知を行なうことができる。また、従来の超音波検知器のようなアクティブセンサに比較して非常に消費電力が少なく、太陽電池などでも十分に作動させることができる(たとえば、特許文献1の第0093段落参照)。
【特許文献1】特開2003−317186号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
サーモパイルセンサの出力は、サーモパイルセンサ自身の温度Aと、視野内の平均温度Bとの差に依存する。このため、温度Aと温度Bとの差が小さい場合であっても、車両を検出するための必要な分解能を得るために、サーモパイルセンサの出力を増幅するオペアンプの増幅率を大きくすることが考えられる。
【0007】
しかし、増幅率を大きくした場合に、たとえば、サーモパイルセンサ本体が日影にあり、サーモパイルセンサの検出領域が日なたにある場合など、温度Aと温度Bとの差が大きい場合に、サーモパイルセンサの出力を増幅するオペアンプの出力が飽和してしまい、オペアンプによって増幅された信号において車両と背景との区別が付かなくなるので、車両と背景とを誤検出してしまうといった問題があった。
【0008】
この発明は上述の問題点を解決するためになされたもので、この発明の目的の1つは、温度変化に対応しつつ増幅率を大きくして車両と背景とを誤検出する可能性を減少させることが可能な車両検知装置、および、車両検知方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した課題を解決するために、この発明のある局面に従えば、車両検知装置は、検知部と、増幅部と、記憶部と、判別部と、背景レベル算出部と、リファレンス電圧変化部とを備える。
【0010】
検知部は、検知対象から放射された赤外線の強度に応じた起電力を発生する。増幅部は、検知部によって発生された起電力に対応する入力電圧とリファレンス電圧との差の電圧を増幅する。記憶部は、車両の有無を判別するための基準となる閾値を記憶する。
【0011】
判別部は、増幅部から出力された電圧に応じたレベル値と記憶部に記憶された閾値とに基づいて車両の有無を判別する。
【0012】
背景レベル算出部は、増幅部から出力された電圧に応じたレベル値に基づいて、判別部によって車両が無いと判別されたレベル値を示す背景レベルを算出する。
【0013】
リファレンス電圧変化部は、増幅部から出力された電圧に基づいて、増幅部から出力された電圧の範囲が予め定められた第1の範囲となり、背景レベルに応じた電圧の範囲が第1の範囲の内側の予め定められた第2の範囲となるように、リファレンス電圧を変化させる。
【0014】
この発明によれば、車両検知装置によって、検知対象から放射された赤外線の強度に応じた起電力が発生され、発生された起電力に対応する入力電圧とリファレンス電圧との差の電圧が増幅され、増幅された電圧に応じたレベル値と、記憶された車両の有無を判別するための基準となる閾値とに基づいて車両の有無が判別される。
【0015】
また、車両検知装置によって、増幅された電圧に応じたレベル値に基づいて、車両が無いと判別されたレベル値を示す背景レベルが算出され、増幅された電圧に基づいて、増幅された電圧の範囲が予め定められた第1の範囲となり、背景レベルに応じた電圧の範囲が第1の範囲の内側の予め定められた第2の範囲となるように、リファレンス電圧が変化される。
【0016】
このため、気象条件の変化などによって、車両と背景との温度差が大きく変化しても、増幅された電圧の範囲が第1の範囲とされる。また、このような場合であっても、背景からの赤外線に対応する増幅された電圧の範囲は第2の範囲とされる。したがって、車両および背景それぞれからの赤外線に対応するレベル値の差がより明確となる。その結果、温度変化に対応しつつ増幅率を大きくして車両と背景とを誤検出する可能性を減少させることが可能な車両検知装置を提供することができる。
【0017】
好ましくは、リファレンス電圧変化部は、リファレンス電圧の変化を鈍らせて変化させる。
【0018】
この発明によれば、車両検知装置によって、気象条件の変化などによってリファレンス電圧を急激に変化させる場合であっても、リファレンス電圧が鈍らされて変化される。このため、背景レベルがゆっくりと変化される。その結果、車両と背景とを誤検出する可能性をさらに減少させることができる。
【0019】
好ましくは、リファレンス電圧変化部は、車両検知装置の起動時には、リファレンス電圧の変化に高速に追従する高速追従状態で、リファレンス電圧を変化させ、起動時と異なる非起動時には、リファレンス電圧の変化に低速に追従する低速追従状態で、リファレンス電圧を変化させる。
【0020】
この発明によれば、車両検知装置によって、車両検知装置の起動時にはリファレンス電圧の変化に高速に追従するようにリファレンス電圧が変化され、非起動時にはリファレンス電圧の変化に低速に追従するようにリファレンス電圧が変化される。このため、起動時には高速に起動させることができる。また、非起動時には、気象条件の急激な変化などによって入力電圧が急激に変化しても、リファレンス電圧がゆっくりと変化され、増幅される電圧の変化を緩やかにすることができるので、車両と背景とを誤検出する可能性を減少させることができる。
【0021】
好ましくは、リファレンス電圧変化部は、時定数を切替可能なコンデンサ抵抗積分回路と、コンデンサ抵抗積分回路の時定数を切替える切替部とを含み、切替部は、起動時には、高速追従状態となるように時定数を切替え、非起動時には、低速追従状態となるように時定数を切替える。
【0022】
この発明によれば、車両検知装置によって、コンデンサ抵抗積分回路の時定数が切替えられることによって、起動時には、高速追従状態に切替えられ、非起動時には、低速追従状態に切替えられる。このため、複雑な回路を用いなくても、車両と背景とを誤検出する可能性を減少させることができる。その結果、車両検知装置を製造するコストの上昇を抑えることができる。
【0023】
好ましくは、コンデンサ抵抗積分回路の抵抗は、電界効果トランジスタと抵抗器とが並列に接続されることによって構成される。また、切替部は、電界効果トランジスタのゲート電圧を所定電圧以下とすることによって、高速追従状態となるように時定数を切替え、ゲート電圧を所定電圧以上とすることによって、低速追従状態となるように時定数切替える。
【0024】
この発明によれば、スイッチ回路および複数のコンデンサ抵抗積分回路を設けなくても、コンデンサ抵抗積分回路を高速追従状態または低速追従状態に切替えることができる。このため、スイッチ回路および複数のコンデンサ抵抗積分回路を設けるためのコストを抑えることができる。
【0025】
好ましくは、背景レベル算出部によって算出された背景レベルが適正か否かを判定する背景レベル適正判定部をさらに備え、リファレンス電圧変化部は、背景レベル適正判定部によって背景レベルが適正でないと判定されたときに、背景レベルが適正となるように、リファレンス電圧を変化させる。
【0026】
この発明によれば、車両検知装置によって、算出された背景レベルが適正か否かが判定され、適正でないと判定されたときに、背景レベルが適正となるように、リファレンス電圧が変化される。このため、気象条件が変化しても背景レベルが適正となるようにされるので、車両と背景とを誤検出する可能性を減少させることができる。
【0027】
好ましくは、検知部は、サーモパイルセンサである。
この発明の他の局面に従えば、車両検知方法は、検知対象から放射された赤外線の強度に応じた起電力を発生する検出部と、前記検知部によって発生された起電力に対応する入力電圧とリファレンス電圧との差の電圧を増幅する増幅部と、所定のデータを記憶する記憶部とを備える車両検知装置で実行される方法である。
【0028】
また、車両検知方法は、車両の有無を判別するための基準となる閾値を記憶部に記憶させるステップと、増幅部から出力された電圧に応じたレベル値と記憶部に記憶された閾値とに基づいて車両の有無を判別するステップと、増幅部から出力された電圧に応じたレベル値に基づいて、車両が無いと判別されたレベル値を示す背景レベルを算出するステップと、増幅部から出力された電圧に基づいて、増幅部から出力された電圧の範囲が予め定められた第1の範囲となり、背景レベルに応じた電圧の範囲が第1の範囲の内側の予め定められた第2の範囲となるように、リファレンス電圧を変化させるステップとを含む。
【0029】
この発明によれば、気象条件の変化などによって、車両と背景との温度差が大きく変化しても、増幅された電圧の範囲が第1の範囲とされる。また、このような場合であっても、背景からの赤外線に対応する増幅された電圧の範囲は第2の範囲とされる。したがって、車両および背景それぞれからの赤外線に対応するレベル値の差がより明確となる。その結果、温度変化に対応しつつ増幅率を大きくして車両と背景とを誤検出する可能性を減少させることが可能な車両検知方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
以下、この発明の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中の同一または相当部分については、同一符号を付してその説明は繰返さない。
【0031】
図1は、この発明の実施の形態における車両検知装置1の見取図である。
図1を参照して、車両検知装置1は、道路を走行する車両を1台ごとに検知する装置である。車両検知装置1は、車道の各車線の上部に、各車線に対して1台ずつ、車両に接触しないように設置される。
【0032】
車両検知装置1は、車両および車両の背景である道路からそれぞれ放射される遠赤外線を検知する。超音波式の車両検知器は、道路の直上に設置して検知方向を道路面の法線方向に向ける必要がある。本実施の形態における車両検知装置1は、図1で示すように、各車線の斜め上方に設置して検知方向を各車線に向かう方向に向ければよい。
【0033】
太陽電池パネル4は、車両検知装置1に電力を供給する。超音波式の車両検知器などの車両検知器は、アクティブセンサを用いて車両を検知する。一方、本実施の形態における車両検知装置1は、後述するようにパッシブセンサであるサーモパイルで車両を検知する。パッシブセンサはアクティブセンサと比較して外部から供給する電力が少なくてもよい。このため、車両検知装置1は、太陽電池パネル4からの電力で十分に車両を検知することができる。
【0034】
無線通信ユニット5は、車両検知装置1で検知された単位時間当りの車両の台数などの検知結果を示すデータを近くの信号制御機や交通管制センタに無線で送信する。なお、車両検知装置1は、有線で検知結果を示すデータを送信するようにしてもよい。
【0035】
図2は、この発明の実施の形態における車両検知装置1の外観図である。図3は、この発明の実施の形態における車両検知装置1の断面の概略図である。
【0036】
図2および図3を参照して、車両検知装置1は、筐体の内部に、赤外線透過レンズ2およびサーモパイル素子11を搭載した回路基板3を備える。車両検知装置1の筐体の道路に向けられる面には、車両や背景からの遠赤外線が赤外線透過レンズ2に入射するように、穴が設けられる。
【0037】
また、赤外線透過レンズ2およびサーモパイル素子11は、車両や背景から放射された遠赤外線が、車両検知装置1に設けられた穴を通過して、赤外線透過レンズ2に入射し、サーモパイル素子11で焦点を結ぶように設けられる。
【0038】
図4は、この発明の実施の形態における車両検知装置1の構成の概略を示すブロック図である。
【0039】
図4を参照して、車両検知装置1は、前述したサーモパイル素子11などを含む検出部10と、プログラムを実行するCPU20(Central Processing Unit)と、実行されるプログラム、プログラム実行中のデータ、および、プログラム実行結果のデータを記憶するメモリ21とを含む。
【0040】
検出部10、CPU20、および、メモリ21は、図3で前述した回路基板3上に構成される。
【0041】
また、無線通信ユニット5は、無線通信部22を含む。アンテナ30は、無線通信部22と接続される。
【0042】
検出部10は、車両や背景から放射されて入射された遠赤外線の強度に応じた情報をCPU20に出力する。なお、CPU20に出力される情報は、図5で後述するように、検出部10に入射された遠赤外線の強度に応じた電圧である。
【0043】
CPU20は、検出部10からの情報に基づいて、車両が検知されたか背景が検知されたかを判別する。また、CPU20は、判別結果をメモリ21に記憶させる。そして、CPU20は、判別結果を集計して、単位時間当りの車両の台数などの検知結果を示すデータをメモリ21に記憶させる。さらに、CPU20は、所定期間ごとに、メモリ21から検知結果を示すデータを読出し、無線通信ユニット5に出力する。
【0044】
無線通信部22は、車両検知装置1から検知結果を示すデータを受けて、その検知結果を示すデータを、アンテナ30を介して信号制御機や交通管制センタに無線で送信する。
【0045】
図5は、この発明の実施の形態における車両検知装置1の回路の概略を示す回路図である。
【0046】
図5を参照して、検出部10は、サーモパイル素子11と、オペアンプ12と、差動アンプ13と、D/A(Digital/Analog)コンバータ15と、FET(Field-Effect Transistor、電界効果トランジスタ)16と、抵抗器17と、コンデンサ18とを含む。
【0047】
サーモパイル素子11は、車両や背景などの検知対象から放射されて入射された遠赤外線の強度に応じた起電力を発生し、発生した起電力をオペアンプ12に供給する。
【0048】
オペアンプ12は、サーモパイル素子11から供給された起電力の電圧を増幅する。サーモバイル素子11の起電力はミリボルトオーダと低い電圧である。このため、本実施の形態においては、オペアンプ12として、1000倍程度の増幅率のオペアンプを用いる。
【0049】
差動アンプ13は、オペアンプ12から+入力端子に入力されるサーモパイル素子11の起電力に対応する電圧と−入力端子に入力されるリファレンス電圧との差を増幅する。そして、差動アンプ13は、増幅された電圧を出力端子からCPU20に出力する。なお、リファレンス電圧は、後述するように、CPU20によって変化される。
【0050】
CPU20は、差動アンプ13からアナログ入力ポートAN1に入力されたアナログの電圧値をデジタルの入力レベル値に変換する。そして、CPU20は、入力レベル値とメモリ21に蓄積された過去の背景レベル値とから所定の演算をすることによって、車両の有無を判別する。
【0051】
また、CPU20は、リファレンス電圧を差動アンプ13に入力させるために5ビットのリファレンス信号を出力ポートP1〜P5から出力させる。なお、リファレンス信号のビット数は、5ビット以上のビット数としてもよい。気象条件の変化などによってサーモパイル素子11に入力される遠赤外線の強度が変化したことによって入力レベル値が変化した場合、図6で後述するように、CPU20は、リファレンス信号を変更する。
【0052】
さらに、CPU20は、車両検知装置1の起動時にはCPU20の駆動電圧の信号を出力ポートP6から出力させ、車両検知装置1の起動時以外の車両検知装置1の稼働時にはグランドの電位の信号を出力ポートP6から出力させる。
【0053】
D/Aコンバータ15は、CPU20の出力ポートP1〜P5からのリファレンス信号をアナログ信号の電圧に変換する。D/Aコンバータ15から出力された電圧は、FET16および抵抗器17が並列に接続されて形成される抵抗とコンデンサ18とから構成されるCR(CapacitorResistor、コンデンサ抵抗)積分回路を介して、リファレンス電圧として差動アンプ13に入力される。
【0054】
D/Aコンバータ15から出力された電圧が変化した場合、その変化がCR積分回路で鈍らされて差動アンプ13に入力される。
【0055】
FET16は、CPU20からCPU20の駆動電圧の信号を受けることによってゲートソース間電圧がFET16のゲートしきい値電圧よりも大きくなると、スイッチオフの状態、つまり、高インピーダンスの状態となる。また、FET16は、CPU20からグランドの電位の信号を受けることによってゲートソース間電圧がFET16のゲートしきい値電圧よりも小さくなると、スイッチオンの状態、つまり、低インピーダンスの状態となる。なお、本実施の形態におけるFET16は、ゲートしきい値電圧がCPU20の駆動電圧とグランドの電位との間の電圧となるように選定される。
【0056】
FET16が高インピーダンスの状態となった場合、前述したCR積分回路の抵抗値が高い状態となる。このため、CR積分回路の時定数が高くなるので、D/Aコンバータ15から出力された電圧は、ゆっくりと変化して差動アンプ13に入力されることとなる。このときのCR積分回路の状態を低速追従状態という。たとえば、抵抗器17の抵抗値を10MΩ、コンデンサ18の静電容量値を67μFとする。FET16が高インピーダンス状態であれば、FET16はオフ状態であるため、漏れ電流が1μA程度で、ドレイン−ソース間の抵抗値が10MΩ相当となる。この場合、CR積分回路の抵抗値は5.0MΩとなるので、時定数は335秒となる。
【0057】
FET16が低インピーダンスの状態となった場合、前述したCR積分回路の抵抗値が低い状態となる。このため、CR積分回路の時定数が低くなるので、D/Aコンバータ15から出力された電圧は、FET16が高インピーダンスの状態であるときよりも、早く変化して差動アンプ13に入力されることとなる。このときのCR積分回路の状態を高速追従状態という。たとえば、抵抗器17の抵抗値およびコンデンサ18の静電容量値を前述した値とし、FET16の低インピーダンス状態でのドレイン−ソース間の抵抗値を1Ωとすると、CR積分回路の抵抗値は約1.00Ωとなるので、時定数は67μ秒と非常に短くなる。
【0058】
なお、CR積分回路から差動アンプ13までの間にボルテージフォロアを設けるようにしてもよい。CR積分回路の時定数は、差動アンプの入力インピーダンスの影響を受ける。もし、差動アンプの入力インピーダンスが10MΩに対し十分大きくない場合は、CR積分回路と差動アンプ13との間に入力インピーダンスの大きなボルテージフォロアを入れることで、CR積分回路の時定数を期待される値に近づけることができる。
【0059】
図6は、この発明の実施の形態における車両検知装置1で実行される車両検知処理の流れを示すフローチャートである。
【0060】
図6を参照して、まず、ステップS111において、CPU20は、車両検知装置1の起動時の初期設定を行なう。初期設定は、出力ポート1〜6のそれぞれに対応するレジスタに初期値を代入する設定、および、その他のレジスタやタイマを初期化する設定を含む。本実施の形態においては、出力ポート1〜5で示されるリファレンス信号の初期値はリファレンス電圧が1(V)となる値とし、出力ポート6で示されるFET16のゲートに供給される信号の初期値はグランドの電位、つまり、0とされ、FET16はオン状態(低インピーダンス状態)とされる。
【0061】
次に、ステップS112において、CPU20は、背景レベルおよび閾値の初期学習を行なう。背景レベルの初期学習は、車両がいないときに一定時間(たとえば、1秒程度)行なわれる。背景レベルは、たとえば、背景レベルの初期学習期間中の入力レベル値の平均値とされる。閾値の初期学習は、背景レベルの初期学習後一定時間(たとえば、10秒程度)行なわれる。CPU20は、得られた背景レベルおよび閾値をメモリ21に記憶させる。初期学習が終了した後に、出力ポート6で示されるFET16のゲートに供給される信号の電位が、CPU20の駆動電圧の電位とされる。
【0062】
閾値の学習は、次のように行なわれる。まず、背景レベルが求められる。そして、入力レベルの背景差分が求められ、背景差分が240ms相当分足し合わされる。次に、その足し合わされた積分値において、240ms前の値との差が微分値として求められる。そして、積分値と微分値×計数が足されて、判定値とされる。
【0063】
この判定値から閾値が求められる。車両感知無しと判断された場合、閾値の目標値が判定値×3程度とされ、予め定められた平滑係数が用いられて指数平滑が用いられて追従される。また、車両感知有りと判断された場合、閾値の目標値が判定値×0.75程度とされ、予め定められた平滑係数が用いられて指数平滑が用いられて追従される。さらに、ヒステリシスを持たせるため、上記閾値×0.8が閾値Lとして算出され、これを下回った場合に、車両感知がオンからオフにされる。
【0064】
その後、CPU20は、車両の有無の判定を始める。まず、ステップS113において、CPU20は、アナログ入力ポートAN1から入力されてデジタル値に変換された入力レベル値を取得する。
【0065】
次に、ステップS120において、CPU20は、ステップS113で取得された入力レベル値に基づいて、比較値を演算する。比較値は、入力レベル値と背景レベルとの差に基づいて演算した値である。
【0066】
比較値は、実際の環境に応じて変化させることが好ましい。たとえば、今回の入力レベル値と前回の背景レベルとの差分(以下、「背景差分」という)を求め、この背景差分の一定時間における積算値を比較値とする。
【0067】
このように比較値を演算することにより、車両の誤認や認識できない場合などを低減する。なお、入力レベル値と背景レベルとの差をそのまま、比較値として用いてもよい。
【0068】
続いて、ステップS130において、CPU20は、ステップS113で取得された入力レベル値に基づいて、閾値を演算する。閾値は、所定の設定値に前述した背景差分の平均値に基づいた補正値を加算した値である。
【0069】
また、前回車両ありと判別した場合と前回車両なしと判別した場合とで、閾値を変えるようにしてもよい。たとえば、前回の車両判別結果に基づいて補正値に掛ける係数を変化させ、さらに、前回車両ありと判別した場合は、演算した閾値にヒステリシス係数を掛けるようにする。
【0070】
このように閾値を演算することにより、一旦、車両ありとの判定が得られると、車両ありとの判定を継続し易い。また、渋滞中などで車両停止中は、車両ありとの判定を継続し易く、停止していた車両が走行を始めると車両無しとの判定を行い易い状態にすることができる。
【0071】
そして、ステップS141において、CPU20は、ステップS120で演算した比較値がステップS130で演算した閾値以上であるか否かを判断する。
【0072】
比較値が閾値以上であると判断した場合(ステップS120でYESの場合)、ステップS142において、CPU20は、車両の有無の判別結果を車両有りと判別する。この場合、CPU20は、ステップS143において、車両有りとの判別結果をメモリ21に記憶させ、ステップS144において、記憶させた判別結果に対応させて、入力レベル値をメモリ21に保存する。その後、実行する処理をステップS113に戻す。
【0073】
一方、比較値が閾値未満であると判断した場合(ステップS120でNOの場合)、ステップS145において、CPU20は、車両の有無の判別結果を車両無しと判別する。この場合、CPU20は、ステップS146において、車両無しの判別結果をメモリ21に記憶させ、ステップS147において、記憶させた判別結果に対応させて、入力レベル値をメモリ21に保存する。
【0074】
ステップS147でメモリ21に記憶された入力レベル値は、車両無しと判別された入力レベル値、つまり、背景の入力レベル値である。そこで、背景レベルを環境に応じて変化させるために、ステップS147の後、ステップS150において、CPU20は、ステップS113で取得した入力レベル値に基づいて、背景レベルを演算する。背景レベルは、車両無しと判別された入力レベル値の所定期間の代表値である。
【0075】
たとえば、背景レベルは、加重平均法の1つである指数平滑法によって演算されるようにしてもよいし、車両無しの判定が得られた所定期間の入力レベル値の平均値として演算されるようにしてもよい。
【0076】
次に、ステップS161において、CPU20は、ステップS150で演算した背景レベルが適正値であるか否かを判断する。ここで、背景レベルが適正値であるか否かは、背景レベルが、電圧値1.0〜2.3Vに対応する入力レベル値の範囲以内であるか否かで判断する。
【0077】
背景レベルが適正値であると判断した場合(ステップS161でYESの場合)、CPU20は、実行する処理をステップS113に戻す。
【0078】
一方、背景レベルが適正値でないと判断した場合(ステップS161でNOの場合)、ステップS162において、CPU20は、ステップS163で前回リファレンス信号が変更されたときにカウントが開始された監視タイマのカウント値が所定値以上となったか否かを判断する。所定値は、たとえば、前述したCR積分回路の時定数の5倍とする。
【0079】
監視タイマのカウント値が所定値未満であると判断した場合(ステップS162でNOの場合)、CPU20は、実行する処理をステップS113に戻す。
【0080】
一方、監視タイマのカウント値が所定値以上であると判断した場合(ステップS162でYESの場合)、CPU20は、ステップS163において、リファレンス電圧を差動アンプ13に入力させるためのリファレンス信号を変更するように出力ポートP1〜P5に対応するレジスタの値を書替え、ステップS164において、監視タイマをリセットし、監視タイマによるカウントを開始させる。
【0081】
たとえば、背景レベルが適正値よりも低い場合には、リファレンス電圧を下げるようにリファレンス信号を変更する。また、背景レベルが適正値よりも高い場合には、リファレンス電圧を上げるようにリファレンス信号を変更する。D/Aコンバータ15のダイナミックレンジの中央付近に背景レベルの値が来るようにリファレンス信号を制御する。
【0082】
また、このときに、リファレンス電圧を変更することによって、所定期間の入力レベル値の平均値に対応する差動アンプ13の出力電圧が、差動アンプ13の出力電圧範囲である0〜3.3Vを超えないように、リファレンス信号を変更する。
【0083】
図7は、この発明の実施の形態における車両検知装置1の差動アンプ13の入出力電圧の変化の概略を示すグラフである。図7(A)は、差動アンプ13の+入力端子に入力される電圧の変化を示すグラフである。図7(B)は、リファレンス電圧が1(V)の場合の差動アンプ13から出力される電圧の変化を示すグラフである。図7(C)は、リファレンス電圧が適正である場合の差動アンプ13から出力される電圧の変化を示すグラフである。図7(D)は、リファレンス電圧を変化させるときにリファレンス電圧の変化が早い場合の差動アンプ13から出力される電圧の変化を示すグラフである。図7(E)は、リファレンス電圧を変化させるときにリファレンス電圧の変化を鈍らせた場合の差動アンプ13から出力される電圧の変化を示すグラフである。
【0084】
図7(A)を参照して、時刻t1までに差動アンプ13に入力される電圧は、b(V)である。この電圧b(V)は、背景からサーモパイル素子11に入射されている遠赤外線の強度に対応する電圧である。
【0085】
また、時刻t1からt2までに差動アンプ13に入力される電圧は、b+a(V)である。この電圧b+a(V)は、車両からサーモパイル素子11に入射されている遠赤外線の強度に対応する電圧である。
【0086】
同様に、時刻t2からt4まで、および、時刻t5以降に差動アンプ13に入力される電圧は、b(V)であり、時刻t4からt5までに差動アンプ13に入力される電圧は、b+a(V)である。
【0087】
車両および背景からサーモパイル素子11に入射された遠赤外線の強度に応じた起電力は、前述したようにオペアンプ12によって増幅される。しかし、増幅された後であっても、車両および背景からの遠赤外線の強度に対応する電圧の差は、微小な値であるa(V)である。
【0088】
図7(B)を参照して、リファレンス電圧が1.0(V)の状態で差動アンプ13によって図7(A)で示した入力電圧を増幅した場合、差動アンプ13から出力される電圧は、出力電圧範囲の上限値である3.3(V)に張付いた状態となる。
【0089】
図7(C)を参照して、本実施の形態においては、図6のステップS163で説明したように、適正なリファレンス電圧e(V)を差動アンプ13に入力するようにする。このため、差動アンプ13の増幅率をGとすると、差動アンプ13によって、背景からの遠赤外線の強度に対応する差動アンプ13への入力電圧b(V)は、G(b−e)=c(V)に増幅され、車両からの遠赤外線の強度に対応する差動アンプ13への入力電圧b+a(V)は、(b+a−e)×G=c+Ga(V)に増幅される。
【0090】
このように、車両および背景からの遠赤外線の強度に対応する微小な電圧の差a(V)は、差動アンプ13によってGa(V)に増幅されて、CPU20に入力される。このため、CPU20は、図6のステップS141で車両を判別するときに誤判別が少なくなる。
【0091】
ここで、図6のステップS163では、リファレンス電圧を変化させるように制御する。具体的には、1.0≦c≦2.3となるように、リファレンス電圧e(V)を変化させる。Gを用いてeを表わすと、e=b−c/Gとなる。
【0092】
たとえば、c>2.3の場合、cを1.0≦c≦2.3の範囲のうちc=2.3となるようにするために、リファレンス電圧e=b−2.3/Gとする。
【0093】
1.0≦c≦2.3の場合は、上述した条件を満たすので、リファレンス電圧e(V)は変化させない。
【0094】
c<1.0の場合、cを1.0≦c≦2.3の範囲のうちc=1.0となるようにするために、リファレンス電圧e=b−1/Gとする。
【0095】
このような場合は、図5で説明した回路図において差動アンプの増幅率GをCPU20から制御可能とすることによって、1.0≦c≦2.3の条件を満たすように制御することができる。
【0096】
図7に戻って、図7(D)を参照して、時刻t3でリファレンス電圧を変化させた場合、CR積分回路が前述した高速追従状態であれば、差動アンプ13から出力される電圧が急激に変化する。このため、時刻t3からt4までの間で、CPU20が車両有りと誤判別することとなる。
【0097】
本実施の形態においては、図6のステップS112の初期学習の間は、CR積分回路を高速追従状態とし、初期学習が終了した後に、CR積分回路を低速追従状態とする。
【0098】
図7(E)を参照して、CR積分回路が低速追従状態であれば、時刻t3でリファレンス電圧を変化させた場合であっても、差動アンプ13から出力される電圧の変化が緩やかとなる。このため、前述した比較値、閾値、および、背景レベルが、それぞれ、徐々に変化されるので、ステップS141でCPU20が誤判別しにくくすることができる。
【0099】
本実施の形態においては、前述したように時定数が335秒であるので、時定数と同じ時間である335秒が経過したときの電圧は最終値の63%になり、時定数の2.2倍の時間である737秒が経過したときの電圧は最終値の90%となる。このように車両1台が通過することによる電圧の変化の時間と比較して、非常に長い時間を掛けて、リファレンス電圧が変化するので、リファレンス電圧による差動アンプ13の出力電圧の変化を車両の通過による差動アンプ13の出力電圧の変化と誤検出しにくくなる。
【0100】
以上説明したように、本実施の形態における車両検知装置1によれば、図5で説明したように、サーモパイル素子11によって、車両や背景から放射された遠赤外線の強度に応じた起電力が発生される。また、図5で説明したように、差動アンプ13によって、サーモパイル素子11により発生された起電力に対応する入力電圧とリファレンス電圧との差の電圧が増幅される。
【0101】
また、図6のステップS113からステップS141までで説明したように、CPU20によって、差動アンプ13から出力された電圧に応じた入力レベル値と閾値とに基づいて車両の有無が判別される。
【0102】
また、図6のステップS150で説明したように、CPU20によって、差動アンプ13から出力された電圧に応じた入力レベル値に基づいて、車両が無いと判別された入力レベル値を示す背景レベルが算出される。また、図6のステップS163で説明したように、CPU20によって、差動アンプ13から出力された電圧に基づいて、増幅された電圧の範囲が差動アンプ13の出力電圧範囲である0〜3.3Vの範囲となり、背景レベルに応じた電圧の範囲が差動アンプ13の出力電圧範囲の中程の範囲である1.0〜2.3Vの範囲となるように、リファレンス電圧が変化される。
【0103】
このように、気象条件の変化などによって、車両と背景との温度差が大きく変化しても、差動アンプ13から出力された電圧の範囲が差動アンプ13の出力電圧範囲とされる。また、このような場合であっても、背景からの遠赤外線に対応する増幅された電圧の範囲が差動アンプ13の出力電圧範囲の中程の範囲とされる。したがって、車両および背景それぞれからの遠赤外線に対応する入力レベル値の差がより明確となる。その結果、温度変化に対応しつつ増幅率を大きくして車両と背景とを誤検出する可能性を減少させることができる。
【0104】
また、車両検知装置1によれば、図5で説明したように、CR積分回路によって、リファレンス電圧の変化を鈍らせて変化させる。
【0105】
このように、車両検知装置1によって、気象条件の変化などによってリファレンス電圧を急激に変化させる場合であっても、リファレンス電圧が鈍らされて変化される。このため、背景レベルがゆっくりと変化される。その結果、車両と背景とを誤検出する可能性をさらに減少させることができる。
【0106】
また、車両検知装置1によれば、図5で説明したように、車両検知装置1の起動時には、リファレンス電圧の変化に高速に追従する高速追従状態で、リファレンス電圧が変化され、起動時と異なる非起動時には、リファレンス電圧の変化に低速に追従する低速追従状態で、リファレンス電圧が変化される。
【0107】
このように、車両検知装置1によって、車両検知装置1の起動時にはリファレンス電圧の変化に高速に追従するようにリファレンス電圧が変化され、非起動時にはリファレンス電圧の変化に低速に追従するようにリファレンス電圧が変化される。このため、起動時には高速に起動させることができる。また、非起動時には、気象条件の急激な変化などによって入力電圧が急激に変化しても、リファレンス電圧がゆっくりと変化され、差動アンプ13から出力される電圧の変化を緩やかにすることができるので、車両と背景とを誤検出する可能性を減少させることができる。
【0108】
また、車両検知装置1は、時定数を切替可能なCR積分回路と、CR積分回路の時定数を切替えるFET16とを含み、FET16は、起動時には、高速追従状態となるように時定数を切替え、非起動時には、低速追従状態となるように時定数を切替える。
【0109】
このように、車両検知装置1によって、CR積分回路の時定数が切替えられることによって、起動時には、高速追従状態に切替えられ、非起動時には、低速追従状態に切替えられる。このため、複雑な回路を用いなくても、車両と背景とを誤検出する可能性を減少させることができる。その結果、車両検知装置1を製造するコストの上昇を抑えることができる。
【0110】
また、車両検知装置1によれば、図5で説明したように、CR積分回路の抵抗は、FET16と抵抗器17とが並列に接続されることによって構成される。また、FET16は、FET16のゲート電圧がFET16のゲートしきい値電圧以下とされることによって、高速追従状態となるようにCR積分回路の時定数を切替え、ゲート電圧をゲートしきい値電圧以上とすることによって、低速追従状態となるようにCR積分回路の時定数を切替える。
【0111】
このように、スイッチ回路および複数のCR積分回路を設けなくても、CR積分回路を高速追従状態または低速追従状態に切替えることができる。このため、スイッチ回路および複数のCR積分回路を設けるためのコストを抑えることができる。
【0112】
また、図6のステップS150、ステップS161およびステップS163で説明したように、車両検知装置1によって、算出された背景レベルが適正か否かが判定され、適正でないと判定されたときに、背景レベルが適正となるように、リファレンス電圧が変化される。
【0113】
このように、車両検知装置1によって算出された背景レベルが適正か否かが判定され、適正でないと判定されたときに、背景レベルが適正となるように、リファレンス電圧が変化される。このため、気象条件が変化しても背景レベルが適正となるようにされるので、車両と背景とを誤検出する可能性を減少させることができる。
【0114】
図8は、この発明における車両検知装置1Aの機能の概略を示す機能ブロック図である。
【0115】
図8を参照して、車両検知装置1Aは、検知部10Aと、増幅部10Bと、記憶部21Aと、判別部20Aと、背景レベル算出部20Bと、リファレンス電圧変化部20Cとを備える。
【0116】
検知部10Aは、検知対象から放射された赤外線の強度に応じた起電力を発生する。増幅部10Bは、検知部10Aによって発生された起電力に対応する入力電圧とリファレンス電圧との差の電圧を増幅する。記憶部21Aは、車両の有無を判別するための基準となる閾値を記憶する。
【0117】
判別部20Aは、増幅部10Bから出力された電圧に応じた入力レベル値と記憶部21Aに記憶された閾値とに基づいて車両の有無を判別する。背景レベル算出部20Bは、増幅部10Bから出力された電圧に応じた入力レベル値に基づいて、判別部20Aによって車両が無いと判別された入力レベル値を示す背景レベルを算出する。
【0118】
リファレンス電圧変化部20Cは、増幅部10Bから出力された電圧に基づいて、増幅部10Bから出力された電圧の範囲が予め定められた第1の範囲となり、背景レベルに応じた電圧の範囲が第1の範囲の内側の予め定められた第2の範囲となるように、リファレンス電圧を変化させる。
【0119】
本実施の形態で説明した車両検知装置1に限定されず、図8で説明した車両検知装置1Aの機能を備えた装置であれば、他の装置であっても本発明の技術的範囲に属する。
【0120】
なお、本実施の形態においては、車両検知装置1として発明を説明した。しかし、これに限定されず、車両検知装置1のCPU20によって図6で説明した車両検知処理を実行する車両検知方法または車両検知プログラムとして発明を捉えることができる。
【0121】
また、本実施の形態においては、背景レベルが適正値でない場合に、リファレンス電圧を変化させるようにした。しかし、これに限定されず、入力レベル値が適正でない場合に、リファレンス電圧を変化させるようにしてもよい。また、図7(c)で説明したように、背景レベルが適正値でない場合に、差動アンプ13の増幅率を変更可能なような構成としてもよい。さらに、入力レベル値が適正でない場合に、差動アンプ13の増幅率を変更可能なような構成としてもよい。
【0122】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した説明ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【図面の簡単な説明】
【0123】
【図1】この発明の実施の形態における車両検知装置の見取図である。
【図2】この発明の実施の形態における車両検知装置の外観図である。
【図3】この発明の実施の形態における車両検知装置の断面の概略図である。
【図4】この発明の実施の形態における車両検知装置の構成の概略を示すブロック図である。
【図5】この発明の実施の形態における車両検知装置の回路の概略を示す回路図である。
【図6】この発明の実施の形態における車両検知装置で実行される車両検知処理の流れを示すフローチャートである。
【図7】この発明の実施の形態における車両検知装置の差動アンプの入出力電圧の変化の概略を示すグラフである。
【図8】この発明における車両検知装置の機能の概略を示す機能ブロック図である。
【符号の説明】
【0124】
1,1A 車両検知装置、2 赤外線透過レンズ、3 回路基板、4 太陽電池パネル、5 無線通信ユニット、10 検出部、10A 検知部、10B 増幅部、11 サーモパイル素子、12 オペアンプ、13 差動アンプ、15 D/Aコンバータ、16 FET、17 抵抗器、18 コンデンサ、20 CPU、20A 判別部、20B 背景レベル算出部、20C リファレンス電圧変化部、21 メモリ、21A 記憶部、22 無線通信部、30 アンテナ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
検知対象から放射された赤外線の強度に応じた起電力を発生する検知手段と、
前記検知手段によって発生された起電力に対応する入力電圧とリファレンス電圧との差の電圧を増幅する増幅手段と、
車両の有無を判別するための基準となる閾値を記憶する記憶手段と、
前記増幅手段によって増幅された電圧に応じたレベル値と前記記憶手段に記憶された前記閾値とに基づいて車両の有無を判別する判別手段と、
前記増幅手段によって増幅された電圧に応じたレベル値に基づいて、前記判別手段によって車両が無いと判別された前記レベル値を示す背景レベルを算出する背景レベル算出手段と、
前記増幅手段によって増幅された電圧に基づいて、前記増幅手段によって増幅された電圧の範囲が予め定められた第1の範囲となり、前記背景レベルに応じた電圧の範囲が前記第1の範囲の内側の予め定められた第2の範囲となるように、前記リファレンス電圧を変化させるリファレンス電圧変化手段とを備える、車両検知装置。
【請求項2】
前記リファレンス電圧変化手段は、前記リファレンス電圧の変化を鈍らせて変化させる、請求項1に記載の車両検知装置。
【請求項3】
前記リファレンス電圧変化手段は、前記車両検知装置の起動時には、前記リファレンス電圧の変化に高速に追従する高速追従状態で、前記リファレンス電圧を変化させ、前記起動時と異なる非起動時には、前記リファレンス電圧の変化に低速に追従する低速追従状態で、前記リファレンス電圧を変化させる、請求項1または請求項2に記載の車両検知装置。
【請求項4】
前記リファレンス電圧変化手段は、時定数を切替可能なコンデンサ抵抗積分回路と、前記コンデンサ抵抗積分回路の時定数を切替える切替手段とを含み、
前記切替手段は、前記起動時には、前記高速追従状態となるように前記時定数を切替え、前記非起動時には、前記低速追従状態となるように前記時定数を切替える、請求項3に記載の車両検知装置。
【請求項5】
前記コンデンサ抵抗積分回路の抵抗は、電界効果トランジスタと抵抗器とが並列に接続されることによって構成され、
前記切替手段は、前記電界効果トランジスタのゲート電圧を所定電圧以下とすることによって、前記高速追従状態となるように前記時定数を切替え、前記ゲート電圧を所定電圧以上とすることによって、前記低速追従状態となるように前記時定数を切替える、請求項4に記載の車両検知装置。
【請求項6】
前記背景レベル算出手段によって算出された背景レベルが適正か否かを判定する背景レベル適正判定手段をさらに備え、
前記リファレンス電圧変化手段は、前記背景レベル適正判定手段によって前記背景レベルが適正でないと判定されたときに、前記背景レベルが適正となるように、前記リファレンス電圧を変化させる、請求項1から請求項5までのいずれかに記載の車両検知装置。
【請求項7】
前記検知手段は、サーモパイルセンサである、請求項1から請求項6までのいずれかに記載の車両検知装置。
【請求項8】
検知対象から放射された赤外線の強度に応じた起電力を発生する検出部と、前記検知部によって発生された起電力に対応する入力電圧とリファレンス電圧との差の電圧を増幅する増幅部と、所定のデータを記憶する記憶部とを備える車両検知装置で実行される車両検知方法であって、
車両の有無を判別するための基準となる閾値を前記記憶部に記憶させるステップと、
前記増幅部によって増幅された電圧に応じたレベル値と前記記憶手段に記憶された前記閾値とに基づいて車両の有無を判別するステップと、
前記増幅部によって増幅された電圧に応じたレベル値に基づいて、前記車両が無いと判別された前記レベル値を示す背景レベルを算出するステップと、
前記増幅部によって増幅された電圧に基づいて、前記増幅部によって増幅された電圧の範囲が予め定められた第1の範囲となり、前記背景レベルに応じた電圧の範囲が前記第1の範囲の内側の予め定められた第2の範囲となるように、前記リファレンス電圧を変化させるステップとを含む、車両検知方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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