説明

車両正対装置および車両正対方法

【課題】短時間で確実に車両を正対することが可能な車両正対装置および車両正対方法を提供する。
【解決手段】車両正対装置1に、正対位置に進入する乗用車7の車輪(右前輪8R、左前輪8L、右後輪9R、左後輪9L)をガイドするとともに、正対位置に到達した乗用車7の車輪の両側面を規制するガイド式正対装置2と、正対位置に到達した乗用車7の車輪を回転駆動するランナウト式正対装置4と、ガイド式正対装置2およびランナウト式正対装置4の動作を制御する制御装置6と、を具備し、制御装置6は、ランナウト式正対装置4による乗用車7の車輪の回転駆動が開始されてから車輪の回転速度が所定のランナウト速度となるまでの間にガイド式正対装置2による車輪の規制を解除する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両正対装置および車両正対方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両を所定の位置で所定の向き(姿勢)に配置する車両正対装置は公知となっており、車両のヘッドライトやバックガイドモニタ等の取り付け方向(光軸方向)や車両の車輪のアライメントが適正か否かを評価する用途等に広く用いられている。例えば、特許文献1に記載の如くである。
特許文献1に記載の車両正対装置は、対象となる車両をテーブルの上まで移動し、車両の車輪の側面を押して車両を左右方向に移動させることにより車両を正対するものである。
【0003】
しかし、特許文献1に記載の車両正対装置は、車両の車輪の側面を左右方向に押して車両を正対位置に移動させるため、正対位置に移動した車両の車輪の弾性変形や足回り(懸架装置等)のヒステリシスが残留する。
そのため、当該正対位置に配置された車両は実走行時の車両の状態を精度良く反映したものとはいえず、このような状態に基づく上記各種の評価の信頼性が低下するという問題がある。
【0004】
また、別の車両正対装置としては、車両の車輪を支持しつつ回転駆動することにより、車輪に残留した弾性変形や足回りに残留したヒステリシスを除去する、いわゆるランナウト式の正対装置も知られている。
【0005】
しかし、従来のランナウト式の正対装置は、当該ランナウト式の正対装置に進入してきた自動車の位置が所望の正対位置からずれる場合があり、このような場合には車輪に残留した弾性変形や足回りに残留したヒステリシスを除去しつつ車両を正対位置に移動させるのに要する時間が長くなり、作業性が良くない(生産性が低い)という問題がある。
また、ランナウト式の正対装置により車両の車輪を長時間回転駆動する場合、車輪からの横力(車輪が地面を側方に押す力)を完全に除去するためには車輪を支持する部材の左右方向のストロークを十分に大きくとっておく必要があり、正対装置、特に車輪の支持部分が大型化するという問題がある。
さらに、正対装置の車輪の支持部分の大型化は当該部分の重量増加を引き起こし、当該支持部分の重量に横力が負けてしまい、結果的に横力の除去が困難となるという問題がある。
【特許文献1】特開平6−331505号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は以上の如き状況に鑑み、短時間で確実に車両を正対することが可能な車両正対装置および車両正対方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0008】
即ち、請求項1においては、
正対位置に進入する車両の車輪をガイドするとともに、前記正対位置に到達した車両の車輪の両側面を規制するガイド式正対手段と、
前記正対位置に到達した車両の車輪を回転駆動するランナウト式正対手段と、
前記ガイド式正対手段および前記ランナウト式正対手段の動作を制御する制御手段と、
を具備し、
前記制御手段は、
前記ランナウト式正対手段による車両の車輪の回転駆動が開始されてから前記車輪の回転速度が所定のランナウト速度となるまでの間にガイド式正対手段による車輪の規制を解除するものである。
【0009】
請求項2においては、
前記ランナウト式正対手段は、
前記車両の車輪に当接して回転することにより前記車輪を回転駆動する回転手段と、
前記回転手段を前後方向および左右方向に移動可能かつ旋回可能に支持する支持手段と、
前記回転手段の前後方向の移動の拘束およびその解除を行う前後移動拘束手段と、
前記回転手段の左右方向の移動の拘束およびその解除を行う左右移動拘束手段と、
前記回転手段の旋回の拘束およびその解除を行う旋回拘束手段と、
を具備し、
前記制御手段は、
前記ランナウト式正対手段による車両の車輪の回転駆動を開始する前に、前記前後移動拘束手段による前記回転手段の前後方向の移動の拘束を解除し、前記ガイド式正対手段による車輪の規制を解除した後に、前記左右移動拘束手段による前記回転手段の左右方向の移動の拘束を解除するとともに前記旋回拘束手段による前記回転手段の旋回の拘束を解除するものである。
【0010】
請求項3においては、
車両の車輪をガイドしつつ前記車両を正対位置に進入させる車両進入工程と、
前記正対位置に到達した車両の車輪の両側面を規制する車輪規制工程と、
前記正対位置に到達した車両の車輪を回転駆動するランナウト工程と、
を具備する車両正対方法であって、
前記ランナウト工程は、
前記車両の車輪の回転駆動が開始されてから当該車輪の回転速度が所定のランナウト速度となるまでの間に前記車輪の規制を解除するものである。
【0011】
請求項4においては、
前記ランナウト工程は、
前記車両の車輪に当接して回転することにより前記車輪を回転駆動する回転手段と、
前記回転手段を前後方向および左右方向に移動可能かつ旋回可能に支持する支持手段と、
前記回転手段の前後方向の移動の拘束およびその解除を行う前後移動拘束手段と、
前記回転手段の左右方向の移動の拘束およびその解除を行う左右移動拘束手段と、
前記回転手段の旋回の拘束およびその解除を行う旋回拘束手段と、
を具備するランナウト式正対手段を用いて行われ、
前記ランナウト式正対手段による車両の車輪の回転駆動を開始する前に、前記前後移動拘束手段による前記回転手段の前後方向の移動の拘束を解除し、前記ガイド式正対手段による車輪の規制を解除した後に、前記左右移動拘束手段による前記回転手段の左右方向の移動の拘束を解除するとともに前記旋回拘束手段による前記回転手段の旋回の拘束を解除するものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
【0013】
請求項1においては、短時間で確実に車両を正対することが可能である。
【0014】
請求項2においては、短時間で確実に車両を正対することが可能である。
【0015】
請求項3においては、短時間で確実に車両を正対することが可能である。
【0016】
請求項4においては、短時間で確実に車両を正対することが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下では図1乃至図10を用いて本発明に係る車両正対装置の実施の一形態である車両正対装置1について説明する。
図1に示す如く、車両正対装置1は乗用車7を正対する装置であり、主としてガイド式正対装置2、ランナウト式正対装置4、制御装置6を具備する。
【0018】
図2乃至図4に示す如く、乗用車7は本発明に係る車両の実施の一形態であり、右前輪8R、左前輪8L、右後輪9R、左後輪9Lを具備する。
「車両」は乗用車の他、トラック、トレーラー、あるいは各種作業車両等、車輪を具備し、走行可能なものを広く含む。従って、本実施例の乗用車7に限定されるものではない。
「車両を正対する」とは、車両を所定の位置(正対位置)で所定の方向(姿勢)に配置することを指す。
なお、本実施例の車両正対装置1における正対位置は、図2において二点鎖線で表された右前輪8R、左前輪8L、右後輪9R、左後輪9Lの位置である。
【0019】
以下では、図1乃至図5を用いてガイド式正対装置2について説明する。
ガイド式正対装置2は本発明に係るガイド式正対手段の実施の一形態であり、正対位置に進入する乗用車7の右前輪8R、左前輪8L、右後輪9R、左後輪9Lをそれぞれガイドするとともに、正対位置に到達した乗用車7の右前輪8R、左前輪8L、右後輪9R、左後輪9Lの両側面をそれぞれ規制するものである。
【0020】
図1に示す如く、ガイド式正対装置2は主としてガイド式正対ユニット20R・20L・21R・21L、前輪通過検出センサ22a・22bを具備する。
【0021】
以下では、図5を用いてガイド式正対ユニット20Rの詳細構成について説明する。
なお、本実施例におけるガイド式正対ユニット20R・20L・21R・21Lは乗用車7の右前輪8R、左前輪8L、右後輪9R、左後輪9Lにそれぞれ対応するものであり、その基本的な構造は同じであるため、ガイド式正対ユニット20L・21R・21Lの説明を省略する。
【0022】
ガイド式正対ユニット20Rは正対位置に進入する乗用車7の右前輪8Rをガイドするとともに、正対位置に到達した乗用車7の右前輪8Rの両側面をそれぞれ規制するものである。
ガイド式正対ユニット20Rは主として、内側面ガイド部材23a、ボールネジ24a・24a、ベベルギア25a・25a、ベベルギア26a・26a、回転軸27a、ギア28a、ギア29a、モータ30aからなる「内側面ガイド機構」と、外側面ガイド部材23b、ボールネジ24b・24b、ベベルギア25b・25b、ベベルギア26b・26b、回転軸27b、ギア28b、ギア29b、モータ30bからなる「外側面ガイド機構」と、を具備する。
【0023】
以下、「内側面ガイド機構」について説明する。
内側面ガイド部材23aは乗用車7の進入方向(矢印Aの方向)に延びた棒状の部材である。内側面ガイド部材23aは正対位置に向かって進入する乗用車7の右前輪8Rの内側面に対向する位置に配置される。
右前輪8Rが内側面ガイド部材23aよりも内側に移動しようとしても、右前輪8Rの内側面が内側面ガイド部材23aに当接するため、それ以上内側に移動することはできない。すなわち、右前輪8Rは内側面ガイド部材23aよりも外側を移動するようにガイドされる。
ボールネジ24a・24aはその外周面にネジが形成され、内側面ガイド部材23aの前端部および後端部にそれぞれ螺合する。ボールネジ24a・24aは、その軸線方向が正対位置に進入する乗用車7の左右方向に略一致する向きに配置され、図示せぬ軸受により軸支される。
ベベルギア25a・25aはボールネジ24a・24aの一端にそれぞれ設けられるカサバ歯車である。ベベルギア26a・26aはベベルギア25a・25aにそれぞれ噛合するカサバ歯車である。
回転軸27aはその両端にベベルギア26a・26aが設けられ、その軸線方向が乗用車7の進入方向に略一致する向きに配置され、図示せぬ軸受により軸支される。
ギア28aは回転軸27aの中途部に設けられる平歯車である。ギア29aはギア28aに噛合する平歯車である。
モータ30aはサーボモータであり、その出力軸の回転量(回転角度)を制御可能である。モータ30aの出力軸にはギア29aが設けられる。
【0024】
モータ30aを回転駆動するとボールネジ24a・24aが回転し、ボールネジ24a・24aに螺合している内側面ガイド部材23aは正対位置に進入する乗用車7の左右方向に移動する。
【0025】
以下、「外側面ガイド機構」について説明する。
外側面ガイド部材23bは乗用車7の進入方向(矢印Aの方向)に延びた棒状の部材である。外側面ガイド部材23bは正対位置に向かって進入する乗用車7の右前輪8Rの外側面に対向する位置に配置される。
右前輪8Rが外側面ガイド部材23bよりも外側に移動しようとしても、右前輪8Rの外側面が外側面ガイド部材23bに当接するため、それ以上外側に移動することはできない。すなわち、右前輪8Rは外側面ガイド部材23bよりも内側を移動するようにガイドされる。
ボールネジ24b・24bはその外周面にネジが形成され、外側面ガイド部材23bの前端部および後端部にそれぞれ螺合する。ボールネジ24b・24bは、その軸線方向が正対位置に進入する乗用車7の左右方向に略一致する向きに配置され、図示せぬ軸受により軸支される。
ベベルギア25b・25bはボールネジ24b・24bの一端にそれぞれ設けられるカサバ歯車である。ベベルギア26b・26bはベベルギア25b・25bにそれぞれ噛合するカサバ歯車である。
回転軸27bはその両端にベベルギア26b・26bが設けられ、その軸線方向が乗用車7の進入方向に略一致する向きに配置され、図示せぬ軸受により軸支される。
ギア28bは回転軸27bの中途部に設けられる平歯車である。ギア29bはギア28bに噛合する平歯車である。
モータ30bはサーボモータであり、その出力軸の回転量(回転角度)を制御可能である。モータ30bの出力軸にはギア29bが設けられる。
【0026】
モータ30bを回転駆動するとボールネジ24b・24bが回転し、ボールネジ24b・24bに螺合している外側面ガイド部材23bは正対位置に進入する乗用車7の左右方向に移動する。
【0027】
モータ30aおよびモータ30bを適宜回転駆動することにより、内側面ガイド部材23aおよび外側面ガイド部材23bをそれぞれ正対位置に進入する乗用車7の右前輪8Rの内側面および外側面から所定の間隔を空けた位置に配置し、右前輪8Rをガイドすることができる。また、乗用車7が正対位置に到達した後、モータ30aおよびモータ30bを適宜回転駆動して内側面ガイド部材23aと外側面ガイド部材23bとの間隔を狭めることにより、右前輪8Rの両側面を規制することが可能である。
なお、「車輪の両側面を規制する」とは、車輪の回転を可能としつつ車輪の左右方向(側方)の移動を極力制限することを指す。
本実施例の場合は内側面ガイド部材23aと外側面ガイド部材23bとの間隔が右前輪8Rの幅よりも少しだけ大きい状態となるように内側面ガイド部材23aおよび外側面ガイド部材23bを保持する。
【0028】
図5に示す如く、ガイド式正対ユニット21R・21Lの内側面ガイド部材23a・外側面ガイド部材23bの後方に案内部材31a・31bが設けられる。
案内部材31a・31bは正対位置に進入する乗用車7の車輪(右前輪8R、左前輪8L、右後輪9R、左後輪9L)をガイド式正対ユニット21R・21Lの内側面ガイド部材23aおよび外側面ガイド部材23bの間に容易に案内するための部材であり、案内部材31a・31bの前端部はガイド式正対ユニット21R・21Lの内側面ガイド部材23a・外側面ガイド部材23bの後端部の近傍に配置され、案内部材31a・31bの後端部は後方に向かって(平面視ハの字型に)開いている。
【0029】
前輪通過検出センサ22a・22bは、車両正対装置1の後方から前方に向かって正対位置に乗用車7が進入するときに、右前輪8Rおよび左前輪8Lがガイド式正対ユニット20R・20Lとガイド式正対ユニット21R・21Lとの間を通過したことを検出するものである。
図2乃至図4に示す如く、前輪通過検出センサ22a・22bはガイド式正対ユニット20R・20Lとガイド式正対ユニット21R・21Lとの間となる位置に設けられる。
【0030】
本実施例の場合、前輪通過検出センサ22aは光学式センサの投光部であり、前輪通過検出センサ22bに向かって赤外レーザ光を照射(投光)する。前輪通過検出センサ22bは光学式センサの受光部であり、前輪通過検出センサ22bが照射した赤外レーザ光を検出(受光)する。前輪通過検出センサ22aが照射する赤外レーザ光の光路は正対位置に進入する乗用車7の右前輪8Rおよび左前輪8Lの通過経路を横切るように配置される。
なお、本実施例の前輪通過検出センサ22a・22bは光学式センサからなるが、接触式のスイッチや静電容量センサ等、車輪の通過を検出可能であれば他の構成としても良い。
【0031】
以下では、図1乃至図4、図6および図7を用いてランナウト式正対装置4について説明する。
ランナウト式正対装置4は本発明に係るランナウト式正対手段の実施の一形態であり、正対位置に到達した乗用車7の右前輪8R、左前輪8L、右後輪9R、左後輪9Lをそれぞれ回転駆動するものである。
【0032】
図1に示す如く、ランナウト式正対装置4は主としてランナウト式正対ユニット40R・40L・41R・41Lを具備する。
【0033】
以下では、図2、図3、図4、図6および図7を用いてランナウト式正対ユニット40Rの詳細構成について説明する。
なお、本実施例におけるランナウト式正対ユニット40R・40L・41R・41Lは乗用車7の右前輪8R、左前輪8L、右後輪9R、左後輪9Lにそれぞれ対応するものであり、その基本的な構造は同じであるため、ランナウト式正対ユニット40L・41R・41Lの説明を省略する。
【0034】
ランナウト式正対ユニット40Rは正対位置に到達した乗用車7の右前輪8Rを回転駆動するものである。
図2に示す如く、ランナウト式正対ユニット40Rは主としてローラ42a・42b、テーブル43、前後移動拘束部材44、左右移動拘束部材45、旋回拘束部材46を具備する。
【0035】
ローラ42a・42bは本発明に係る回転手段の実施の一形態であり、乗用車7の右前輪8Rに当接して回転することにより右前輪8Rを回転駆動するものである。
ローラ42a・42bは略円柱形状の部材であり、後述する第四支持部材43dに回転可能に軸支される。ローラ42a・42bの軸線方向は略平行であり、ローラ42aはローラ42bの略前方に配置される。
【0036】
ローラ42aは正対位置に到達した乗用車7の右前輪8Rの外周面(地面と接する面)の下前部に当接し、ローラ42bは正対位置に到達した乗用車7の右前輪8Rの外周面の下後部に当接する。すなわち、正対位置に到達した乗用車7の右前輪8Rは、ローラ42a・42bの隙間に形成された窪みにはまった状態となる。
ローラ42a・42bを図示せぬ駆動用モータにより回転駆動すると、ローラ42a・42bに当接している右前輪8Rが回転する。
【0037】
テーブル43は本発明に係る支持手段の実施の一形態であり、ローラ42a・42bを前後方向および左右方向に移動可能かつ旋回可能に支持するものである。
図2、図6および図7に示す如く、テーブル43は第一支持部材43a、第二支持部材43b、第三支持部材43c、第四支持部材43dを具備する。
第一支持部材43aはテーブル43の最下部を構成する部材であり、図示せぬアクチュエータ(油圧シリンダ等)により前後方向および左右方向に移動可能である。当該アクチュエータを作動させることにより、車両正対装置1に進入する車両の車種に応じてランナウト式正対ユニット40Rを正対位置にある乗用車7の右前輪8Rの下方となる位置に移動させることが可能である。
【0038】
第二支持部材43bは第一支持部材43aの上方に配置され、図示せぬリニアガイドにより第一支持部材43aに対して前後方向に摺動可能に係合する部材である。
【0039】
第三支持部材43cは第二支持部材43bの上方に配置され、図示せぬリニアガイドにより第二支持部材43bに対して左右方向に摺動可能に係合する部材である。
【0040】
第四支持部材43dは第三支持部材43cの上方に配置され、図示せぬ軸受を介して第三支持部材43cに対して旋回可能に軸支される部材である。
ここで「旋回」とは、略上下方向の軸線を中心として回転または回動することを指す。
第四支持部材43dの上部にはローラ42a・42bが回転可能に軸支される。
【0041】
図6および図7に示す如く、第二支持部材43bが第一支持部材43aに対して前後方向に摺動すると、第二支持部材43b、第三支持部材43c、第四支持部材43dおよびローラ42a・42bは、一体となって第一支持部材43aに対して前後方向に移動することとなる。
第三支持部材43cが第二支持部材43bに対して左右方向に摺動すると、第三支持部材43c、第四支持部材43dおよびローラ42a・42bは、一体となって第二支持部材43bに対して左右方向に移動することとなる。
第四支持部材43dが第三支持部材43cに対して旋回すると、第四支持部材43dおよびローラ42a・42bは、一体となって第三支持部材43cに対して旋回することとなる。
このように、テーブル43は、ローラ42a・42bを前後方向および左右方向に移動可能かつ旋回可能に支持することが可能である。
【0042】
図2に示す如く、前後移動拘束部材44は本発明に係る前後移動拘束手段の実施の一形態であり、ローラ42a・42bの前後方向の移動の拘束およびその解除を行うものである。
ここで、「回転部材の前後方向の移動の拘束」は、回転部材が前後方向に移動不能な状態を保持することを指し、「回転部材の前後方向の移動の拘束の解除」は回転部材が前後方向に移動可能な状態を保持することを指す。
図6に示す如く、前後移動拘束部材44がテーブル43の第一支持部材43aおよび第二支持部材43bに係合すると、第二支持部材43bが第一支持部材43aに対して前後方向に摺動不能となる。
図7に示す如く、前後移動拘束部材44がテーブル43の第一支持部材43aおよび第二支持部材43bに係合した状態を解除すると、第二支持部材43bが第一支持部材43aに対して前後方向に摺動可能となる。
【0043】
図2に示す如く、左右移動拘束部材45は本発明に係る左右移動拘束手段の実施の一形態であり、ローラ42a・42bの左右方向の移動の拘束およびその解除を行うものである。
ここで、「回転部材の左右方向の移動の拘束」は、回転部材が左右方向に移動不能な状態を保持することを指し、「回転部材の左右方向の移動の拘束の解除」は回転部材が左右方向に移動可能な状態を保持することを指す。
図6に示す如く、左右移動拘束部材45がテーブル43の第二支持部材43bおよび第三支持部材43cに係合すると、第三支持部材43cが第二支持部材43bに対して左右方向に摺動不能となる。
図7に示す如く、左右移動拘束部材45がテーブル43の第二支持部材43bおよび第三支持部材43cに係合した状態を解除すると、第三支持部材43cが第二支持部材43bに対して左右方向に摺動可能となる。
【0044】
図2に示す如く、旋回拘束部材46は本発明に係る旋回拘束手段の実施の一形態であり、ローラ42a・42bの旋回の拘束およびその解除を行うものである。
ここで、「回転部材の旋回の拘束」は、回転部材が旋回不能な状態を保持することを指し、「回転部材の旋回の拘束の解除」は回転部材が旋回可能な状態を保持することを指す。
図6に示す如く、旋回拘束部材46がテーブル43の第三支持部材43cおよび第四支持部材43dに係合すると、第四支持部材43dが第三支持部材43cに対して旋回不能となる。
図7に示す如く、旋回拘束部材46がテーブル43の第三支持部材43cおよび第四支持部材43dに係合した状態を解除すると、第四支持部材43dが第三支持部材43cに対して旋回可能となる。
【0045】
以下では図1を用いて制御装置6について説明する。
制御装置6は本発明に係る制御手段の実施の一形態であり、ガイド式正対装置2およびランナウト式正対装置4の動作を制御するものである。
制御装置6は主として制御部61、入力部62、表示部63を具備する。
【0046】
制御部61は、実体的には、ガイド式正対装置2の動作を制御するためのプログラム(ガイド式正対装置動作制御プログラム)、ランナウト式正対装置4の動作を制御するためのプログラム(ランナウト式正対装置動作制御プログラム)、ガイド式正対装置2の動作およびランナウト式正対装置4の動作を統合(同期)するためのプログラム(統合プログラム)等を格納する格納手段、これらのプログラム等を展開する展開手段、これらのプログラム等に従って所定の演算を行う演算手段、種々のデータ等を記憶する記憶手段等を具備する。
制御部61は、より具体的にはCPU、ROM、RAM、HDD等がバスで接続される構成であっても良く、あるいはワンチップのLSI等からなる構成であっても良い。
また、制御部61は専用品でも良いが、市販のパソコンやワークステーション等を用いて達成することも可能である。
【0047】
制御部61はガイド式正対装置2のガイド式正対ユニット20R・20L・21R・21Lのそれぞれについてのモータ30a・30b等に接続され、ガイド式正対装置2の動作に係る信号を送信することが可能である。
制御部61はガイド式正対装置2の前輪通過検出センサ22a・22bに接続され、前輪通過検出センサ22a・22bにより取得された右前輪8R・左前輪8Lの通過に係る情報を取得することが可能である。
制御部61はランナウト式正対装置4のランナウト式正対ユニット40R・40L・41R・41Lを車両の種類毎に異なる正対位置に応じて前後左右方向に移動するための油圧シリンダ等のアクチュエータ(不図示)、ランナウト式正対ユニット40R・40L・41R・41Lのそれぞれのローラ42a・42bを回転駆動するためのモータ(不図示)、ランナウト式正対ユニット40R・40L・41R・41Lのそれぞれの前後移動拘束部材44、左右移動拘束部材45、旋回拘束部材46の動作を行う油圧シリンダ等のアクチュエータ(不図示)等に接続され、ランナウト式正対装置4の動作に係る信号を送信することが可能である。
【0048】
入力部62は、作業者等が車両正対装置1の動作に係るデータ等(例えば、乗用車7の車種、乗用車7に固有の製造番号等)を制御部61に入力するものである。
入力部62は専用品でも良いが、市販のキーボードやタッチパネル等を用いて達成することも可能である。
【0049】
表示部63は、入力部62により入力されたデータや車両正対装置1の動作状態等を表示するものである。
表示部63は専用品でも良いが、市販のモニターや液晶ディスプレイ等を用いて達成することも可能である。
【0050】
以下では、図8乃至図10を用いて本発明に係る車両正対方法の実施の一形態について説明する。
図8に示す如く、本発明に係る車両正対方法の実施の一形態は車両正対装置1を用いて乗用車7を正対する方法であり、主として車両進入工程S100、車輪規制工程S200、ランナウト工程S300、等を具備する。
車両進入工程S100は本発明に係る車両進入工程の実施の一形態であり、乗用車7の車輪(右前輪8R、左前輪8L、右後輪9R、左後輪9L)をガイドしつつ乗用車7を正対位置に進入させる工程である。
図9に示す如く、車両進入工程S100は、主として車種設定工程S110、第一ガイド工程S120、第一進入工程S130、第二ガイド工程S140、第二進入工程S150を具備する。
【0051】
車種設定工程S110は車両正対装置1による正対の対象となる乗用車7の種類(車種)を設定する工程である。
車種設定工程S110において、作業者は入力部62を用いて乗用車7の車種を入力する。入力された乗用車7の車種は制御部61に記憶される。
なお、本実施例では作業者が車種を入力する構成としたが、車種に係る情報が記憶されたICタグ等を車両に取り付け、当該ICタグを読み取ることにより車種を設定する構成としても良い。
また、車種が一種類の場合には、車種設定工程S110を省略することも可能である。
【0052】
車種設定工程S110が終了したら、第一ガイド工程S120に移行する。
【0053】
第一ガイド工程S120は、車種設定工程S110において設定された車種に基づいて、ガイド式正対装置2の内側面ガイド部材23a・23a・23a・23aおよび外側面ガイド部材23b・23b・23b・23bを「第一のガイド位置」に移動させるとともに、ランナウト式正対装置4のランナウト式正対ユニット40R・40L・41R・41Lをそれぞれ初期位置に移動させる工程である。
【0054】
第一ガイド工程S120において、制御部61は、車種設定工程S110において設定された車種に係る情報、および記憶手段に予め記憶された車種毎のトレッド(左右の車輪間距離)に係る情報に基づいて、ガイド式正対ユニット20R・20L・21R・21Lのそれぞれについて、内側面ガイド部材23aおよび外側面ガイド部材23bの位置を「第一のガイド位置」に移動させる。
ここで、「第一のガイド位置」は、ガイド式正対ユニット20R・20L・21R・21Lのそれぞれの内側面ガイド部材23aについては、正対位置に後方から前方に向かってまっすぐ進入してきた乗用車7の前輪(右前輪8R、左前輪8L)の内側面に接触する位置から所定の隙間を開けた位置を指し、ガイド式正対ユニット20R・20L・21R・21Lのそれぞれの外側面ガイド部材23bについては、正対位置に後方から前方に向かってまっすぐ進入してきた乗用車7の前輪(右前輪8R、左前輪8L)の外側面に接触する位置から所定の隙間を開けた位置を指す。
【0055】
また、制御部61は、車種設定工程S110において設定された車種に係る情報、および記憶手段に予め記憶された車種毎のトレッド(左右の車輪間距離)およびホイールベース(前後の車輪間距離)に係る情報に基づいて、ランナウト式正対装置4のランナウト式正対ユニット40R・40L・41R・41Lをそれぞれ初期位置に移動させる。
【0056】
第一ガイド工程S120が終了したら、第一進入工程S130に移行する。
【0057】
第一進入工程S130は、右前輪8Rがガイド式正対ユニット21Rの内側面ガイド部材23aと外側面ガイド部材23bとの間、左前輪8Lがガイド式正対ユニット21Lの内側面ガイド部材23aと外側面ガイド部材23bとの間、をそれぞれ通過するように、乗用車7を車両正対装置1の後方から前方に向かって進入させる工程である。
【0058】
第一進入工程S130において、作業者は乗用車7に乗って乗用車7を運転し、右前輪8Rがガイド式正対ユニット21Rの内側面ガイド部材23aと外側面ガイド部材23bとの間、左前輪8Lがガイド式正対ユニット21Lの内側面ガイド部材23aと外側面ガイド部材23bとの間、を通過するように、乗用車7を車両正対装置1の後方から前方に向かって進入させていく。
乗用車7の前輪(右前輪8R、左前輪8L)がガイド式正対ユニット21R・21Lを通過し、さらに前輪通過検出センサ22a・22bの光軸を横切ると、前輪通過検出センサ22a・22bは乗用車7の前輪(右前輪8R、左前輪8L)が通過したことを検出する。
前輪通過検出センサ22a・22bが乗用車7の前輪(右前輪8R、左前輪8L)が通過したことを検出するとブザー(不図示)が鳴り、作業者は当該ブザーの音を聞いた時点で乗用車7を一時停止させる。
なお、この時点では乗用車7の後輪(右後輪9R、左後輪9L)はガイド式正対ユニット21R・21Lに到達していない。
【0059】
第一進入工程S130が終了したら、第二ガイド工程S140に移行する。
【0060】
第二ガイド工程S140は車種設定工程S110において設定された車種に基づいて、ガイド式正対装置2の内側面ガイド部材23a・23a・23a・23aおよび外側面ガイド部材23b・23b・23b・23bを「第二のガイド位置」に移動させる工程である。
第二ガイド工程S140において、制御部61は、車種設定工程S110において設定された車種、および記憶手段に予め記憶された車種毎のトレッド(左右の車輪間距離)に係る情報に基づいて、ガイド式正対ユニット21R・21Lのそれぞれについて、内側面ガイド部材23aおよび外側面ガイド部材23bの位置を「第二のガイド位置」に移動させる。
ここで、「第二のガイド位置」は、ガイド式正対ユニット21R・21Lのそれぞれの内側面ガイド部材23aについては、正対位置に後方から前方に向かってまっすぐ進入してきた乗用車7の後輪(右後輪9R、左後輪9L)の内側面に接触する位置から所定の隙間を開けた位置を指し、ガイド式正対ユニット21R・21Lのそれぞれの外側面ガイド部材23bについては、正対位置に後方から前方に向かってまっすぐ進入してきた乗用車7の後輪(右後輪9R、左後輪9L)の外側面に接触する位置から所定の隙間を開けた位置を指す。
【0061】
第二ガイド工程S140が終了したら、第二進入工程S150に移行する。
【0062】
第二進入工程S150は、右前輪8Rがガイド式正対ユニット20Rの内側面ガイド部材23aと外側面ガイド部材23bとの間、左前輪8Lがガイド式正対ユニット20Lの内側面ガイド部材23aと外側面ガイド部材23bとの間、右後輪9Rがガイド式正対ユニット21Rの内側面ガイド部材23aと外側面ガイド部材23bとの間、左後輪9Lがガイド式正対ユニット21Lの内側面ガイド部材23aと外側面ガイド部材23bとの間、をそれぞれ通過するように、乗用車7を車両正対装置1の後方から前方に向かって進入させる工程である。
第二進入工程S150において、作業者は乗用車7を運転し、右前輪8Rがガイド式正対ユニット20Rの内側面ガイド部材23aと外側面ガイド部材23bとの間、左前輪8Lがガイド式正対ユニット20Lの内側面ガイド部材23aと外側面ガイド部材23bとの間、右後輪9Rがガイド式正対ユニット21Rの内側面ガイド部材23aと外側面ガイド部材23bとの間、左後輪9Lがガイド式正対ユニット21Lの内側面ガイド部材23aと外側面ガイド部材23bとの間、をそれぞれ通過するように、乗用車7を車両正対装置1の後方から前方に向かって進入させていく。
乗用車7が正対位置に到達すると、右前輪8R、左前輪8L、右後輪9R、左後輪9Lは、それぞれランナウト式正対ユニット40R・40L・41R・41Lのローラ42a・42bの隙間に形成された窪みにはまった状態となる。この時点で作業者は乗用車7を停止させる。
【0063】
なお、乗用車7の前後の車輪自身の幅が同一かつ前輪のトレッドと後輪のトレッドが同一である場合には、第二ガイド工程S140および第二進入工程S150を省略することが可能である。
【0064】
第二進入工程S150が終了したら、車両進入工程S100が終了する。
車両進入工程S100が終了したら、車輪規制工程S200に移行する。
【0065】
車輪規制工程S200は本発明に係る車輪規制工程の実施の一形態であり、正対位置に到達した乗用車7の右前輪8R、左前輪8L、右後輪9R、左後輪9Lの両側面を規制する工程である。
車輪規制工程S200において、制御部61は、ガイド式正対ユニット20R・20L・21R・21Lのそれぞれについて内側面ガイド部材23aおよび外側面ガイド部材23bの間隔を狭める。その結果、右前輪8R、左前輪8L、右後輪9R、左後輪9Lは、内側面ガイド部材23aおよび外側面ガイド部材23bの間のスペースの略中心から外れた位置にあるときには、内側面ガイド部材23aまたは外側面ガイド部材23bにより側方に押されて移動することとなる。
【0066】
車輪規制工程S200が終了したら、ランナウト工程S300に移行する。
【0067】
ランナウト工程S300は本発明に係るランナウト工程の実施の一形態であり、正対位置に到達した乗用車7の右前輪8R、左前輪8L、右後輪9R、左後輪9Lを回転駆動する工程である。
【0068】
図8および図10に示す如く、ランナウト工程S300において、制御部61は以下の手順でガイド式正対装置2およびランナウト式正対装置4の動作の制御を行う。
【0069】
まず、制御部61はランナウト式正対ユニット40R・40L・41R・41Lのそれぞれについて、前後移動拘束部材44によるローラ42a・42bの前後方向の移動の拘束を解除する(時刻T1)。
その結果、ランナウト式正対ユニット40R・40L・41R・41Lのそれぞれについてのローラ42a・42bは、乗用車7の自重により、車輪(右前輪8R、左前輪8L、右後輪9R、左後輪9L)に残留する弾性変形および乗用車7の足回りに残留するヒステリシスの一部(特に、前後方向の成分)を除去する方向(前方または後方)に適宜移動する。
【0070】
次に、制御部61はランナウト式正対ユニット40R・40L・41R・41Lのそれぞれについてローラ42a・42bの回転駆動を開始し、ローラ42a・42bの回転速度を徐々に上昇させていく(時刻T2)。
この時点では車輪(右前輪8R、左前輪8L、右後輪9R、左後輪9L)はガイド式正対ユニット20R・20L・21R・21Lにより規制された状態であるため、ローラ42a・42bの回転駆動開始時のショックで車輪が左右方向に大きく振られる(移動させられる)ことを防止することが可能である。
【0071】
続いて、制御部61はガイド式正対ユニット20R・20L・21R・21Lのそれぞれについて内側面ガイド部材23aと外側面ガイド部材23bとの隙間の間隔を広げていき、車輪(右前輪8R、左前輪8L、右後輪9R、左後輪9L)の規制の解除を開始する(時刻T3)。
【0072】
続いて、制御部61はガイド式正対ユニット20R・20L・21R・21Lのそれぞれについて内側面ガイド部材23aと外側面ガイド部材23bとの隙間の間隔を広げていき、内側面ガイド部材23aと外側面ガイド部材23bとの隙間の間隔が所定の規制解除間隔(車輪の幅に対して十分広い間隔)に達した時点で車輪(右前輪8R、左前輪8L、右後輪9R、左後輪9L)の規制の解除を完了する(時刻T4)。
なお、この時点では、ローラ42a・42bの回転速度は上昇の過程であり、車輪(右前輪8R、左前輪8L、右後輪9R、左後輪9L)の回転速度は所定のランナウト速度に達していない。
【0073】
続いて、制御部61はランナウト式正対ユニット40R・40L・41R・41Lのそれぞれについて、左右移動拘束部材45によるローラ42a・42bの左右方向の移動の拘束を解除するとともに、旋回拘束部材46によるローラ42a・42bの旋回の拘束を解除する(時刻T5)。
【0074】
続いて、制御部61は車輪(右前輪8R、左前輪8L、右後輪9R、左後輪9L)の回転速度が所定のランナウト速度に到達した時点でローラ42a・42bの回転速度の上昇を止める(時刻T6)。
その後、ローラ42a・42bの回転速度を所定のランナウト時間だけ一定に保持し、続いてローラ42a・42bの回転速度を徐々に低下させ、最終的にはローラ42a・42bの回転駆動を停止する。
【0075】
ローラ42a・42bの回転速度を所定のランナウト時間だけ一定に保持した状態では、ローラ42a・42bの前後左右方向の移動および旋回は自由に行うことが可能であり、車輪(右前輪8R、左前輪8L、右後輪9R、左後輪9L)は回転駆動される。
そのため、乗用車7の自重および車輪(右前輪8R、左前輪8L、右後輪9R、左後輪9L)に残留した弾性変形や足回りに残留したヒステリシスが除去される。
また、回転駆動開始前および回転駆動開始後しばらくの間(時刻T2から時刻T3までの間)には、車輪(右前輪8R、左前輪8L、右後輪9R、左後輪9L)はガイド式正対ユニット20R・20L・21R・21Lにより規制されて正対位置に配置されている。
従って、車輪(右前輪8R、左前輪8L、右後輪9R、左後輪9L)に残留する弾性変形および乗用車7の足回りに残留するヒステリシスを効率良く除去した状態で所定の正対位置に車両を配置するのに要する時間を短縮することが可能である。
【0076】
なお、本実施例では車輪(右前輪8R、左前輪8L、右後輪9R、左後輪9L)の規制の解除が完了した後、かつ車輪(右前輪8R、左前輪8L、右後輪9R、左後輪9L)の回転速度が所定のランナウト速度に到達する前(時刻T4から時刻T6の間)に左右移動拘束部材45によるローラ42a・42bの左右方向の移動の拘束を解除するとともに、旋回拘束部材46によるローラ42a・42bの旋回の拘束を解除する構成としたが、本発明に係る車両正対装置および車両正対方法はこれに限定されず、車輪(右前輪8R、左前輪8L、右後輪9R、左後輪9L)の回転速度が所定のランナウト速度に到達した後(時刻T6以降)に左右移動拘束部材45によるローラ42a・42bの左右方向の移動の拘束を解除するとともに、旋回拘束部材46によるローラ42a・42bの旋回の拘束を解除する構成としても良い。
【0077】
また、本実施例では左右移動拘束部材45によるローラ42a・42bの左右方向の移動の拘束の解除と旋回拘束部材46によるローラ42a・42bの旋回の拘束の解除とを同時に行う構成としたが、本発明に係る車両正対装置および車両正対方法はこれに限定されず、左右移動拘束部材45によるローラ42a・42bの左右方向の移動の拘束の解除および旋回拘束部材46によるローラ42a・42bの旋回の拘束の解除のいずれか一方が先に行われ、他方が後に行われる構成としても良い。
【0078】
以上の如く、本発明に係る車両正対装置の実施の一形態である車両正対装置1は、
正対位置に進入する乗用車7の車輪(右前輪8R、左前輪8L、右後輪9R、左後輪9L)をガイドするとともに、正対位置に到達した乗用車7の車輪(右前輪8R、左前輪8L、右後輪9R、左後輪9L)の両側面を規制するガイド式正対装置2と、
正対位置に到達した乗用車7の車輪(右前輪8R、左前輪8L、右後輪9R、左後輪9L)を回転駆動するランナウト式正対装置4と、
ガイド式正対装置2およびランナウト式正対装置4の動作を制御する制御装置6と、
を具備し、
制御装置6は、
ランナウト式正対装置4による乗用車7の車輪(右前輪8R、左前輪8L、右後輪9R、左後輪9L)の回転駆動が開始されてから車輪(右前輪8R、左前輪8L、右後輪9R、左後輪9L)の回転速度が所定のランナウト速度となるまでの間にガイド式正対装置2による車輪(右前輪8R、左前輪8L、右後輪9R、左後輪9L)の規制を解除するものである。
このように構成することにより、短時間で確実に(短時間で車輪に残留する弾性変形および足回りに残留するヒステリシスを除去した状態として)乗用車7を正対することが可能である。
【0079】
また、車両正対装置1のランナウト式正対装置4(ランナウト式正対ユニット40R・40L・41R・41L)は、
乗用車7の車輪(右前輪8R、左前輪8L、右後輪9R、左後輪9L)に当接して回転することにより車輪(右前輪8R、左前輪8L、右後輪9R、左後輪9L)を回転駆動するローラ42a・42bと、
ローラ42a・42bを前後方向および左右方向に移動可能かつ旋回可能に支持するテーブル43と、
ローラ42a・42bの前後方向の移動の拘束およびその解除を行う前後移動拘束部材44と、
ローラ42a・42bの左右方向の移動の拘束およびその解除を行う左右移動拘束部材45と、
ローラ42a・42bの旋回の拘束およびその解除を行う旋回拘束部材46と、
を具備し、
制御装置6は、
ランナウト式正対装置4による乗用車7の車輪(右前輪8R、左前輪8L、右後輪9R、左後輪9L)の回転駆動を開始する前に、前後移動拘束部材44によるローラ42a・42bの前後方向の移動の拘束を解除し、
ガイド式正対装置2による車輪(右前輪8R、左前輪8L、右後輪9R、左後輪9L)の規制を解除した後に、左右移動拘束部材45によるローラ42a・42bの左右方向の移動の拘束を解除するとともに旋回拘束部材46によるローラ42a・42bの旋回の拘束を解除するものである。
このように構成することにより、短時間で確実に(短時間で車輪に残留する弾性変形および足回りに残留するヒステリシスを除去した状態として)乗用車7を正対することが可能である。
【0080】
また、本発明に係る車両正対方法の実施の一形態は、
乗用車7の車輪(右前輪8R、左前輪8L、右後輪9R、左後輪9L)をガイドしつつ乗用車7を正対位置に進入させる車両進入工程S100と、
正対位置に到達した乗用車7の車輪(右前輪8R、左前輪8L、右後輪9R、左後輪9L)の両側面を規制する車輪規制工程S200と、
正対位置に到達した乗用車7の車輪(右前輪8R、左前輪8L、右後輪9R、左後輪9L)を回転駆動するランナウト工程S300と、
を具備する車両正対方法であって、
ランナウト工程S300は、
乗用車7の車輪(右前輪8R、左前輪8L、右後輪9R、左後輪9L)の回転駆動が開始されてから車輪(右前輪8R、左前輪8L、右後輪9R、左後輪9L)の回転速度が所定のランナウト速度となるまでの間に車輪(右前輪8R、左前輪8L、右後輪9R、左後輪9L)の規制を解除するものである。
このように構成することにより、短時間で確実に(短時間で車輪に残留する弾性変形および足回りに残留するヒステリシスを除去した状態として)乗用車7を正対することが可能である。
【0081】
また、本発明に係る車両正対方法の実施の一形態のランナウト工程S300は、
乗用車7の車輪(右前輪8R、左前輪8L、右後輪9R、左後輪9L)に当接して回転することにより車輪(右前輪8R、左前輪8L、右後輪9R、左後輪9L)を回転駆動するローラ42a・42bと、
ローラ42a・42bを前後方向および左右方向に移動可能かつ旋回可能に支持するテーブル43と、
ローラ42a・42bの前後方向の移動の拘束およびその解除を行う前後移動拘束部材44と、
ローラ42a・42bの左右方向の移動の拘束およびその解除を行う左右移動拘束部材45と、
ローラ42a・42bの旋回の拘束およびその解除を行う旋回拘束部材46と、
を具備するランナウト式正対装置4を用いて行われ、
ランナウト式正対装置4による乗用車7の車輪(右前輪8R、左前輪8L、右後輪9R、左後輪9L)の回転駆動を開始する前に、前後移動拘束部材44によるローラ42a・42bの前後方向の移動の拘束を解除し、
ガイド式正対装置2による乗用車7の車輪(右前輪8R、左前輪8L、右後輪9R、左後輪9L)の規制を解除した後に、左右移動拘束部材45によるローラ42a・42bの左右方向の移動の拘束を解除するとともに旋回拘束部材46によるローラ42a・42bの旋回の拘束を解除するものである。
このように構成することにより、短時間で確実に(短時間で車輪に残留する弾性変形および足回りに残留するヒステリシスを除去した状態として)乗用車7を正対することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0082】
【図1】本発明に係る車両正対装置の実施の一形態のブロック図。
【図2】本発明に係る車両正対装置の実施の一形態の要部側面図。
【図3】本発明に係る車両正対装置の実施の一形態の要部平面図。
【図4】同じく本発明に係る車両正対装置の実施の一形態の要部平面図。
【図5】ガイド式正対装置の平面図。
【図6】ランナウト式正対装置の平面図。
【図7】ローラが前後左右方向に移動するとともに旋回した状態を示すランナウト式正対装置の平面図。
【図8】本発明に係る車両正対方法の実施の一形態のフロー図。
【図9】本発明に係る車両正対方法の実施の一形態の車両進入工程の詳細を示す図。
【図10】本発明に係る車両正対方法の実施の一形態におけるランナウト工程の制御を示す図。
【符号の説明】
【0083】
1 車両正対装置
2 ガイド式正対装置(ガイド式正対手段)
4 ランナウト式正対装置(ランナウト式正対手段)
6 制御装置(制御手段)
7 乗用車(車両)
8R 右前輪(車輪)
8L 左前輪(車輪)
9R 右後輪(車輪)
9L 左後輪(車輪)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
正対位置に進入する車両の車輪をガイドするとともに、前記正対位置に到達した車両の車輪の両側面を規制するガイド式正対手段と、
前記正対位置に到達した車両の車輪を回転駆動するランナウト式正対手段と、
前記ガイド式正対手段および前記ランナウト式正対手段の動作を制御する制御手段と、
を具備し、
前記制御手段は、
前記ランナウト式正対手段による車両の車輪の回転駆動が開始されてから前記車輪の回転速度が所定のランナウト速度となるまでの間にガイド式正対手段による車輪の規制を解除することを特徴とする車両正対装置。
【請求項2】
前記ランナウト式正対手段は、
前記車両の車輪に当接して回転することにより前記車輪を回転駆動する回転手段と、
前記回転手段を前後方向および左右方向に移動可能かつ旋回可能に支持する支持手段と、
前記回転手段の前後方向の移動の拘束およびその解除を行う前後移動拘束手段と、
前記回転手段の左右方向の移動の拘束およびその解除を行う左右移動拘束手段と、
前記回転手段の旋回の拘束およびその解除を行う旋回拘束手段と、
を具備し、
前記制御手段は、
前記ランナウト式正対手段による車両の車輪の回転駆動を開始する前に、前記前後移動拘束手段による前記回転手段の前後方向の移動の拘束を解除し、
前記ガイド式正対手段による車輪の規制を解除した後に、前記左右移動拘束手段による前記回転手段の左右方向の移動の拘束を解除するとともに前記旋回拘束手段による前記回転手段の旋回の拘束を解除することを特徴とする請求項1に記載の車両正対装置。
【請求項3】
車両の車輪をガイドしつつ前記車両を正対位置に進入させる車両進入工程と、
前記正対位置に到達した車両の車輪の両側面を規制する車輪規制工程と、
前記正対位置に到達した車両の車輪を回転駆動するランナウト工程と、
を具備する車両正対方法であって、
前記ランナウト工程は、
前記車両の車輪の回転駆動が開始されてから当該車輪の回転速度が所定のランナウト速度となるまでの間に前記車輪の規制を解除することを特徴とする車両正対方法。
【請求項4】
前記ランナウト工程は、
前記車両の車輪に当接して回転することにより前記車輪を回転駆動する回転手段と、
前記回転手段を前後方向および左右方向に移動可能かつ旋回可能に支持する支持手段と、
前記回転手段の前後方向の移動の拘束およびその解除を行う前後移動拘束手段と、
前記回転手段の左右方向の移動の拘束およびその解除を行う左右移動拘束手段と、
前記回転手段の旋回の拘束およびその解除を行う旋回拘束手段と、
を具備するランナウト式正対手段を用いて行われ、
前記ランナウト式正対手段による車両の車輪の回転駆動を開始する前に、前記前後移動拘束手段による前記回転手段の前後方向の移動の拘束を解除し、
前記ガイド式正対手段による車輪の規制を解除した後に、前記左右移動拘束手段による前記回転手段の左右方向の移動の拘束を解除するとともに前記旋回拘束手段による前記回転手段の旋回の拘束を解除することを特徴とする請求項3に記載の車両正対方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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