説明

車両消毒用マット及び消毒方法

【課題】
車両消毒用マットにおいて、車両の車体への腐食、劣化等の悪影響を及ぼさず車両の消毒の実行性を上げ、病原性のウイルス、細菌、菌類の発生時に十分な量を保管、備蓄することを容易にし、車両の大きさの差異に影響されずタイヤの接地面を消毒することができ、車両が通行しても破損しない十分な強度と耐久性を兼ね備え、消毒液の追加頻度を下げるため十分な消毒剤を含浸させられる車両消毒用マットを提供することを目的とする。
【解決手段】
目付が2500〜3400g/mの三次元網目構造のシートを具備すること、前記三次元網目構造のシートの飽和含水量が8〜12L/mであること、前記三次元網目構造のシートの素材がポリエチレン及びポリプロピレンであること、前記三次元網目構造のシートがニードルパンチ製法により製造された不織布であることなどの車両消毒用マット、また前記車両消毒用マットを複数枚道路に敷くことにより解決した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、病原性のウイルス、細菌、菌類が発生した又は発生した可能性があるとき、その地域からの他の地域への拡散を防止するため、自動車、原動機付自転車、軽車両などの車両に装着されるタイヤの接地面を消毒及び殺菌するために使用する消毒マットに関する。
【背景技術】
【0002】
ヒトや動物に病気を引き起こす原因となる口蹄疫ウイルス、インフルエンザウイルス、鳥インフルエンザウイルス、O−157ウイルス、ノロウイルス、ロタウイルスなどのウイルス、黄色ブドウ球菌、緑膿菌、病原性大腸菌などの細菌、カビ毒を発生する菌類などは、空気中に飛散しているのみならず地面にも堆積する。ひとたび、それら病原性のウイルス、細菌、菌類の発生又はその可能性があると、自動車、原動機付自転車、軽車両などの車両が、その発生した又は発生した可能性がある地域を通行する際に、それら車両に装着されるタイヤの接地面に付着し、他の地域まで拡散又は蔓延し、ヒトや動物に感染し発病するリスクが大きくなる。
【0003】
このため、それらが発生した又はその可能性がある地域では、自治体等が、車両ドライバーに対して、管内の消毒ポイントでの消毒を徹底するように呼びかけている。その消毒ポイントでは、車両全体に消毒剤を噴霧する方法、道路を掘削して窪地をつくりその中に消毒剤を満たして車両を通行させて車両のタイヤを消毒する方法、絨毯などに消毒剤を塗布しその上に車両を通行させ車両のタイヤの道路との接地面を消毒する方法などが採られている。
【0004】
このような車両消毒装置として、特許文献1では、消毒液供給装置から供給される消毒剤が流れる配管とその配管に消毒剤を車両全体に対して噴射等させる噴射ノズルなどを有する車両消毒装置が公開されている。
【0005】
また、特許文献2では、不織布などのマット本体にアルカリ性化合物の水溶液を供給した後に乾燥させるアルカリ性化合物含浸工程を経て製造される足踏み用の殺菌マットが公開されている。
【0006】
また、特許文献3では、マット本体とマット本体を収納した台座からなり、マット本体がスポンジ構造体で構成されており、マット本体に消毒液、洗浄液、アルカリ液、酸性液、消臭液、防カビ液などの薬液を含浸した足踏み用の薬液マットが公開されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2007−89951号公報
【特許文献2】特開平8−168463号公報
【特許文献3】特開平11−128054号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述の特許文献1に記載の発明では、通行する車両の全体に消毒剤を塗布することができるが、自治体等が行っている消毒ポイントでの消毒が法律上規定されている義務ではないために、消毒剤による車体表面の腐食や劣化又は塗料の退色などの悪影響を恐れて、その消毒ポイントで消毒を受けないドライバーがおり、病原性のウイルス、細菌、菌類の拡散又は蔓延を防止する実行性について問題があった。また、それらの病原性のウイルス、細菌、菌類の発生は、事前に予期することが難しく、発覚したときにはどれくらいの範囲、地域で拡がっているか分からないことがあるため、消毒する装置又は器具を複数台保有しておく必要がある。しかし、特許文献1に記載の発明を複数台保有するにはその大きさのため保管する場所が制限され十分な台数を常時備蓄しておけない問題もあった。
【0009】
また、車体への種々の悪影響を防ぐために、道路を掘削し窪地をつくりその中に消毒剤を満たして車両を通行させて車両のタイヤを消毒する方法も採られているが、病原性のウイルス、細菌、菌類の発生のたびに道路工事が必要であり、迅速な対応が求められるそれらの拡散又は蔓延対策としては時間が掛かり過ぎ、また工事費用が嵩むという問題があった。また、同じ車両でも軽自動車と大型トラックでは、車体の大きさに差があり、ともに不都合なく消毒することが難しい問題があった。すなわち、一方で車体の大きい大型トラックのタイヤの接地面を消毒するために道路の窪地に十分な消毒剤を満たすと、消毒液が車体の小さい軽自動車の車体又はディスクブレーキに付着し腐食又は劣化等の悪影響を及ぼす恐れがある。他方で車体の小さい軽自動車の車体等に腐食等の悪影響を及ぼさない程度に道路の窪地に消毒液を蓄えると、大型トラックのタイヤの接地面1周すべてを十分に消毒できない恐れや、消毒液が揮発又は消費により不足しがちになり頻繁に消毒剤を補充する必要性があることから作業者の労力負担が増え作業者の薬傷の危険性が増える等の問題があった。
【0010】
また、絨毯などに薬剤を塗布しその上に車両を通行させ車両のタイヤの道路との接地面を消毒する方法では、消毒剤が絨毯の内部に十分に浸透しないために消毒剤の消費が早く、またその絨毯などの表面に液溜まりが生じやすく車両の通行速度が速いと車両がスリップする恐れがあり、そのような理由から多くの消毒剤を撒くことができずに乾燥しやすくなり、車両のタイヤの接地面を十分に消毒することができないという問題があった。また、一方車両の通行速度を制限し、車両のスリップを防ぐために消毒液を大量に撒いたとしても、絨毯等では十分に浸透しないためにその表面から流れ落ち周囲への環境汚染の可能性もありやはり使用するときにおいて問題があった。
【0011】
また、特許文献2に記載の発明では、段落0002〜0006の記載からその消毒の対象とするものは人であるが、人よりも桁違いに重い車両が通行するときに消毒マットの劣化又は破損することなく使用することができるか、また耐久性については問題ないかについて何らの記載がなく、車両に対する使用可能性について大いに問題があった。
【0012】
また、特許文献3に記載の発明でも、特許文献2と同様に人が使用することを前提としているが、車両に対して実際に使用しうる強度や耐久性を有しているかは何ら記載されておらず車両に対する使用可能性いついて問題があった。
【0013】
そこで、本発明では、前述した課題に対し、車両の車体への腐食、劣化等の悪影響を及ぼさず車両への消毒の実行性を上げ、病原性のウイルス、細菌、菌類の発生時にすぐに使用できるよう十分な量を保管、備蓄することを容易にし、車両の大きさの差異に影響されずタイヤの接地面を消毒することができ、車両が通行しても破損等しない十分な強度と耐久性を兼ね備え、消毒液の追加頻度を下げるため十分な消毒剤を含浸させることができる車両消毒用マットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
すなわち本発明に係る車両消毒用マットは、目付が2500〜3400g/mの三次元網目構造のシートを具備することを特徴とする車両消毒用マットである。
【0015】
このようなものであれば、以下の作用効果を奏する。
【0016】
すわなち、目付が2500〜3400g/mの三次元網目構造のシートを具備しているため、車両消毒用マットに消毒剤を含浸することにより、その上を通過するだけで車両のタイヤの接地面の消毒が可能であり、車両の車体への腐食、劣化等の悪影響を及ぼさず車両への消毒の実行性を上げることができる。
【0017】
そして、目付が2500〜3400g/mの三次元網目構造のシートを使用しているため、ロール状に巻いたり、折り畳むなどして嵩張らずに保管することが可能となり十分な数量を備蓄することができる。
【0018】
そして、目付が2500〜3400g/mの三次元網目構造のシートを使用しているため、車両の大きさ又は車両のタイヤの大きさに関係なくタイヤの接地面を確実に消毒することができる。
【0019】
そして、目付が2500〜3400g/mの三次元網目構造のシートを使用しているため、車両がその上を通行しても十分な強度及び耐久性を有している。
【0020】
なお、車両消毒用マットに十分な消毒液を含浸させるために、前記三次元網目構造のシートの飽和含水量が8〜12L/mであることが望ましい。
【0021】
車両消毒用マットが屋外での使用が多いために耐候性、耐光性に優れ、使用時には消毒剤を含むため耐薬品性に優れるように、前記三次元網目構造のシートの素材がポリエチレン及びポリプロピレンであることが望ましい。
【0022】
一般的な不織布よりはるかに重い目付であって、強度をより出すために、前記三次元網目構造のシートがニードルパンチ製法により製造された不織布であることが望ましい。
【0023】
車両消毒用マットに含浸させた消毒剤が車両のタイヤの接地面と接触する面以外で漏洩しないようにするために、前記三次元網目構造のシートの少なくとも一つの面に疎水性フィルムを具備することが望ましい。
【0024】
車両消毒用マットに含浸させた消毒剤が車両のタイヤの接地面と接触する面以外で漏洩しないようにするために、前記三次元網目構造のシートの少なくとも一つの面の網目を熱溶融又は高分子材料により封じた構造を具備することが望ましい。
【0025】
どのような大きさの車両に対しても、そのタイヤの接地面を確実に消毒するようにするため、車両消毒用マットの長手方向を車両進行方向に合うように複数枚道路に敷き、車両消毒用マットに消毒剤を含浸させることによりタイヤを四輪以上有する自動車のタイヤの接地面を消毒する方法により消毒することが望ましい。
【0026】
なお、車両消毒用マットに十分な消毒液を含浸させるために、前記三次元網目構造のシートの厚みが6〜20mmであることが望ましい。
【発明の効果】
【0027】
以上説明したように本発明に係る車両消毒用マットによれば、車両消毒用マットに消毒剤を含浸することにより、大型自動車、中型自動車、普通自動車、大型特殊自動車、小型特殊自動車、大型自動二輪車、自動二輪車、原動機付き自転車、軽車両などの車両の車体に消毒剤を噴射することはなくその上を通過するだけであり、車両の車体への腐食、劣化等の悪影響を及ぼさず車両への消毒の実行性を上げることができる。
【0028】
そして、車両消毒用マットに目付が2500〜3400g/mの三次元網目構造のシートを使用しているため、ロール状に巻いたり、折り畳むなどして嵩張らずに保管することが可能となり十分な数量を備蓄することができる。
【0029】
そして、車両消毒用マットに目付が2500〜3400g/mの三次元網目構造のシートを使用しているため車両の大きさまたは車両のタイヤの大きさに関係なくタイヤの接地面を確実に消毒することができる。
【0030】
そして、目付が2500〜3400g/mの三次元網目構造のシートを使用しているため、車両がその上を通行しても十分な強度及び耐久性を有している。
【0031】
そして、前記三次元網目構造のシートの飽和含水量が8〜12L/mであるため、車両消毒用マットに十分な消毒液を含浸させることができる。
【0032】
そして、前記三次元網目構造のシートの素材がポリエチレン及びポリプロピレンであるため、本発明の車両消毒用マットの耐候性、耐光性及び耐薬品性に優れる。
【0033】
そして、前記三次元網目構造のシートがニードルパンチ製法により製造されたために、一般的な不織布よりはるかに重い目付であって、強度をより出すことができる。
【0034】
そして、前記三次元網目構造のシートの少なくとも一つの面に疎水性フィルムを具備するため、車両消毒用マットに含浸させた消毒剤が車両のタイヤの接地面と接触する側面以外で漏洩しないようにすることができる。
【0035】
そして、前記三次元網目構造のシートの少なくとも一つの面の網目を熱溶融又は高分子材料により封じた構造を具備するため、車両消毒用マットに含浸させた消毒剤が車両のタイヤの接地面と接触する側面以外で漏洩しないようにすることができる。
【0036】
そして、車両消毒用マットを車両消毒用マットの長手方向を車両進行方向に合うように複数枚道路に敷き、車両消毒用マットに消毒剤を含浸させることによりタイヤを四輪以上有する自動車のタイヤの接地面を消毒する方法を用いるため、どのような大きさの車両に対しても、そのタイヤの接地面を確実に消毒することができる。
【0037】
そして、前記三次元網目構造のシートの厚みが6〜20mmであるため、車両消毒用マットに十分な消毒液を含浸させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明の一実施例に係る車両消毒用マットを示す斜視図。
【図2】本発明の一実施例に係る疎水性フィルムを具備する車両消毒用マットを示す斜視図。
【図3】本発明の一実施例に係る車両のタイヤの接地面を消毒する方法示す斜視図。
【図4】各種車両での使用時における車両消毒用マットに対するタイヤの接地面の位置を示す平面図。
【発明を実施するための形態】
【0039】
以下、本発明に係る車両消毒用マットに関する実施形態について詳しく説明する。
【0040】
本発明の三次元網目構造のシートは、好ましくは不織布、布、繊維スポンジ、合成樹脂スポンジ、編み物、織物など内部に空隙を有するシートであり、より好ましくは不織布である。
【0041】
また、前記三次元網目構造のシートの目付は、好ましくは2500〜3400g/m、さらに好ましくは2800〜3200g/mである。複数の車両の通行にも破損、摩耗することなく一定期間継続的に使用するため、また適度に柔軟性を保ち凹凸のある路面にフィットするため、保管時にはロール状に巻いたり折り曲げたりできるためには、この範囲の目付の三次元網目構造のシートが好ましい。目付が小さ過ぎると、重量の重い車両が通行すると破損、摩耗などにより耐久性に劣り、目付が大き過ぎると消毒剤を吸収、保持する能力が低い。なお、目付とは、織物や編み物の単位面積当たりの重さであり、ここでは1m当たりの重さをg(グラム)で示している。
【0042】
また、前記三次元網目構造のシートの飽和含水量は、好ましくは8〜12L/mであり、さらに好ましくは9〜11L/mである。飽和含水量が小さ過ぎると、含有できる消毒液が少ないので頻繁に消毒液を補給する機会が増えるため作業が煩雑になり作業者の薬傷の危険性が高くなり、一方飽和含水量が大き過ぎると、三次元網目構造のシートの内部の空間が大きくなるため強度が弱くなり頻繁に往来する車両の重さに耐えられることができず破損、摩耗など耐久性に乏しくなる。
【0043】
また、本発明の車両消毒用マットは、使用した後に焼却廃棄する際の利便性から、可燃性素材の前記三次元網目構造のシートが用いられる。素材としては、前記焼却廃棄時にダイオキシンなどの人体又は環境に有毒な物質を発生させないために好ましくはアラミド繊維、セルロース繊維、ナイロン繊維、ビニロン繊維、ポリエステル繊維、ポリオレフィン繊維、レーヨン繊維などの合成繊維などが用いられる。また、耐擦傷性、耐候性、耐光性、耐薬品性などの諸物性及び経済性の観点から、さらに好ましくは、ポリプロピレン樹脂、ポリエチレン樹脂である。
【0044】
また、前記三次元網目構造のシートとして好ましい不織布の製造方法として、一般にサーマルボンド法、ケミカルボンド法、ニードルパンチ法、スパンレース法、ステッチボンド法、スチームジェット法などが知られているが、厚さの設計が容易であるサーマルボンド法、ニードルパンチ法が好ましい。
【0045】
また、前記前記三次元網目構造のシートの縦幅と横幅の寸法は、必要に応じて任意の寸法とすることができるが、縦幅が好ましくは3.2〜7.0m、さらに好ましくは3.5〜6.0mであり、また横幅が好ましく0.5〜1.5m、さらに好ましくは0.8〜1.3mである。縦幅が短いと大型車のタイヤの接地面を一様に消毒することができない。例えば、大型貨物自動車のタイヤ外径は、おおよそ1mあり、タイヤの接地面1周すべてを消毒するためには円周である少なくとも3.2m以上必要である。また、縦幅が長いと消毒効果が出ているにもかかわらずさらにタイヤの接地面を消毒液に接触させることになり消毒液の無駄となり、また未使用時の保管スペースを徒に必要とするので、消毒を確実に行うためにタイヤの接地面を2周消毒液に接触する長さが好ましい。さらに、横幅が狭いとタイヤの接地面を一様に消毒することは困難であり、車輪の片方に2個のタイヤを装着することもある大型車が通行することもあるため0.5m以上が好ましく、一方幅が広すぎるとほとんど通過しない中央部に含浸させた消毒剤が無駄になることもあり、また自転車専用に使用する場合にも同様に消毒剤が無駄となり、さらに不必要に重くなることから使用時の運搬に支障を来すことになるので、一般国道の横幅がおおよそ2.7〜3.3mであることから当該消毒マットを二枚並べてもこの範囲に収まるような横幅とすることが好ましい。
【0046】
また、前記三次元網目構造のシートの厚みは、好ましくは6〜20mm、さらに好ましくは10〜15mmである。前記三次元網目構造のシートの厚みが薄すぎると消毒液を十分に含浸することができない。一方で、前記三次元網目構造のシートが厚過ぎると製造時間が長くなり生産性に劣る。
【0047】
また、本発明の車両消毒用マットの使用時に当該マットの識別性を高めるため、又は汚れを目立たなくするために、前記三次元網目構造のシートの製造時に顔料を添加したり着色された繊維を用いたりするなどして、任意の色彩に着色することや模様を付することができる。
【0048】
また、本発明の車両消毒用マットは必要に応じて2枚以上重ねて使用することもできる。車両消毒用マットに消毒液を追加する頻度を少なくしたい等の諸事情に対応することができる。
【0049】
本発明に使用される疎水性フィルムは、車両消毒用マットに消毒液を供給して使用する際に、前記三次元網目構造のシートの少なくとも一面を覆い消毒液の漏れを防ぐために使用される水分を透過しにくいフィルムである。このように前記疎水性フィルムを用いることにより、本発明の車両消毒用マット使用時に車両のタイヤの接地面に接する面と反対側の面及び側面に消毒液が押し出されにくくなり、消毒液の追加頻度を低減することができる。
【0050】
疎水性フィルムに用いられる素材は、PET樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリエチレン樹脂などの合成樹脂が用いられる。車両用足踏み消毒マットの保存管理又は運搬を簡便にするために、前記疎水性フィルムの厚さは、50〜300μmが好ましい。
【0051】
疎水性フィルムは、前記三次元網目構造のシートと、熱による疎水性フィルムの融着により、接着剤により、少なくとも底面と側面を覆うように固定することにより又はゴムを当該フィルムの淵に任意の方法で固定することにより、一体となる構造として使用することが好ましい。
【0052】
また、前記三次元網目構造のシートに含浸させた消毒液を外部に漏洩させないようするために、車両のタイヤの接地面と接触する面以外の面、すなわち側面と底面の表面を、加熱して溶融することにより網目構造を封じ消毒剤を透過させなくする加工、ポリエチレン、ポリウレタン、シリコン、ゴム、テフロン(登録商標)などの高分子材料を塗布又は吹き付けることにより網目構造を封じ消毒剤を透過させなくする加工を行うことも好ましい。
【0053】
車両のタイヤの接地面を消毒するために本発明の車両用消毒用マットに含浸させる消毒剤は、塩基性又は酸性などの消毒性に優れる水溶液のいずれのものでもよく、塩基性水溶液であればpHが9〜12が好ましく、酸性水溶液であればpHが1〜3が好ましい。
【0054】
塩基性水溶液を作成するための塩基性化合物としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウムなどの水酸化物、炭酸ナトリウム、炭酸カリウムなどの炭酸塩、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウムなどの炭酸水素塩などが単体で又はそれらを組み合わせて水で希釈することにより使用することができる。また、市販されているそれらの水溶液又はその水溶液を希釈して使用することができる。
【0055】
また、酸性水溶液を作成するための酸性化合物としては、塩酸、硫酸、硝酸などの強酸、酢酸、ギ酸、クエン酸などの弱酸などが単体又はそれらを組み合わせて、液状物は原液又は水で希釈して、気体又は固形物は水に溶解させて使用することにより使用することができる。また、市販されているそれらの水溶液又はその水溶液を希釈して使用することができる。
【0056】
また、任意の成分として、必要に応じて界面活性剤を消毒剤に添加することができる。車両のタイヤの接地面に付着した油汚れによる消毒効果の減少を防止するために用いられる油分とも水分とも溶解しうる化合物であり、例えば、カチオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤、両性界面活性剤、非イオン系界面活性剤が挙げられる。
【0057】
上記の種類の界面活性剤のうち、好ましくはアルキルメチルアンモニウム塩、ジアルキルジメチルアンモニウム塩、アルキルベンジルジメチルアンモニウム塩などのカチオン系界面活性剤、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、脂肪酸ソルビタンエステル、脂肪酸グリセリンエステル、脂肪酸ポリグリセリンエステル、アルキルグリセリルエーテルなどの非イオン系界面活性剤が用いられる。
【0058】
また、前記界面活性剤の使用する量は、0.01〜6g/m、さらに好ましくは0.1〜3g/mである。前記界面活性剤は1種類のみ、又は2種類以上組み合わせて用いることができる。
【0059】
本発明の車両消毒用マットの長手方向を車両が進行する方向に合うように、少なくとも2枚を並列にして道路に敷き、車両消毒用マットに消毒剤を含浸させることで、四輪の自動車やそれ以上の車輪を有する大型車両のタイヤの接地面を確実に消毒することができる。また、車両消毒用マットが正方形の形状ならば縦横の設置方向を問わないことは言うまでもない。なお、車両消毒用マットに消毒剤を含浸させたのちに道路に敷いても良い。これにより、タイヤが通過することのない中央部分を省略することができるため、不必要に消毒液を使用せず、持ち運びも軽くなるため一人で運搬できるようになり、また保管、備蓄も嵩張らないために好ましい。
【実施例1】
【0060】
以下、本発明の一実施例について具体的に説明する。なお、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0061】
ポリプロピレン及びポリエチレンから成る短繊維及び長繊維をカード機に通過させてウェブを形成し、このウェブにニードルで加工を行うことにより短繊維及び長繊維を絡合させた後に熱圧縮させて製造された目付3000g/mの不織布(株式会社ユウホウ製、型番:P3113)を用い各種試験を行った。
【0062】
<飽和含水量試験>
上記の目付3000g/mの不織布を、100mm角の正方形に裁断して、乾燥重量(g)を測定し、約200mlの蒸留水を入れた直径15cmの大型シャーレの中に、約5分間浸漬させ蒸留水を十分吸収させた。その後、含水した不織布を取り出し、その重量(g)を測定した。そして、上記の裁断された不織布の含水重量(g)から乾燥重量(g)を差し引き、1m当たりの重量に換算した値を飽和含水量(L/m)とした。その結果を表1に示す。このことから、消毒液の補充頻度が少なくて済むことがわかる。
【0063】
<耐薬品性試験>
耐薬品性試験を、JIS L1030「繊維製品の混用率試験方法」を準用して行った。すわなち、各薬液を50~100mlに調整して、ガラス製又は耐薬品性容器に入れ、これに目付3000g/mの不織布の小片を浸した。その後、十分に薬液と接触させた後、前記小片の溶解の有無を目視にて確認した。なお、用いた薬液としては、強酸として濃硫酸、濃硝酸、35%塩酸を、強塩基として5%水酸化ナトリウム水溶液(煮沸条件下で浸漬)を、弱酸として5%クエン酸水溶液(煮沸条件下で浸漬)を、弱塩基として8%炭酸ナトリウム水溶液(煮沸条件下で浸漬)を、アルコールとしてエタノール(煮沸条件下で浸漬)を用いた。その結果、いずれの薬液にも溶解せず、消毒マットとして使用しうるものである。
【0064】
<表面強度試験>
表面強度試験を、JIS L1913「一般短繊維不織布試験方法」摩耗強さ(テーバ形法)の外観変化の判定に準じて行った。すわなち、不織布用の摩耗輪CS−17を用い、1750kgfの荷重を掛け、回転回数1000回転処理、2000回転処理及び4000回転処理後の目付3000/mの不織布の表面の変化を観察した。その結果を表2に示す。このことから、処理回数を増やしても4級と高い級数で維持されており、外観上の変化が特になく、実使用上十分な耐久性を有することがわかる。
【0065】
<保管性試験>
保管性試験では、目付3000/mの不織布を100mm角に裁断し、その一つの面同士がぴったりと密着するように二つに折りにして、約1時間静置したときの折り目を目視にて観察した。その折り曲げる前と外観に変化がないものを良好(○評価)、割れ、ひび割れ、裂けなど外観に変化があるものを不良(×評価)とする基準で観察したところ、前記100mm角の試料では、○評価であった。このことから、本発明の車両消毒用マットは、緊急時に使用するために省スペースで保管、備蓄できるものであることがわかる。
【0066】
<引張強さ試験>
引張強さ試験を、JIS L1913「一般短繊維不織布試験方法」の引張強さ及び伸び率に準じて行った。すわなち、目付3000/mの不織布を幅25mm、長さ200mmに裁断した試料を、精密万能材料試験機(株式会社島津製作所製、型番:AG−50kNISD)を用いて、つかみ間隔100mm、引張速度100mm/minで縦方向(長さ方向)、横方向(幅方向)の引張特性を測定した。その結果を表3に示す。このことから、車両に対しても使用しうる強度を有することがわかる。
【0067】
<蒸発性試験>
目付3000/mの不織布を幅550mm、長さ800mmに裁断し、袋状の疎水性フィルムで裁断した不織布の底面、側面、そして上面の一部を覆ったものを試料とし、乾燥重量(kg)を測定した。そして、幅550mm、長さ800mmに裁断した前記不織布の飽和含水量に該当する4.50kg(4.50L)の水道水を全面に均一になるように加えた。含水させた当該試料の初期含水量(kg)を測定し、疎水性フィルムで完全に覆われていない面を上面として、当該試料を直射日光が当たる屋外のアスファルト上に放置して染み込ませた水分を自然蒸発させて、1時間ごとの重量変化を測定した(試験日:平成22年9月13日、場所:高知県吾川郡、外気温:31〜34℃)。その結果を表4に示す。このことから、炎天下交通量の多い場所でも1日数回程度しか消毒液を補充する必要がなく、実用に耐えうることがわかる。
【0068】
〔比較例1〕
比較として、表面がポリプロピレン100%、裏面がフェルトポリプロピレン100%である目付1100g/mの市販カーペット(タフトカーペット)を用いて、上述した飽和含水量試験、耐薬品性試験、表面強度試験を行った。その結果を、それぞれ表1、表2に示す。このことから、十分な消毒剤を含浸させることができず、また耐久性にも劣ることがわかる。
【0069】
〔比較例2〕
比較として、表面がポリプロピレン100%、裏面が滑り止め樹脂加工している目付605g/mの市販ニードルパンチカーペット(パンチ1帖用)を用いて、上述した飽和含水量試験、耐薬品性試験、表面強度試験を行った。その結果を、それぞれ表1、表2に示す。このことから、十分な消毒剤を含浸させることができず、また耐久性にも劣ることがわかる。
【0070】
〔比較例3〕
比較として、ポリプロピレン及びポリエチレンの短繊維及び長繊維を原材料して製造された目付3500g/mの不織布を用いて、上述した保管性試験を行った。その結果、割れが生じ×評価であった。このことから、省スペースで保管、備蓄しづらいものであることがわかる。
【0071】
【表1】

【0072】
【表2】

【0073】
【表3】

【0074】
【表4】

【符号の説明】
【0075】
1・・・車両消毒用マット
2・・・疎水性フィルム
3・・・車両
4・・・各種車両のタイヤの仮想位置
A・・・大型貨物自動車タイヤ幅:2065mm
B・・・普通自動車平均タイヤ幅:1555mm
C・・・軽自動車タイヤ幅:1300mm

【特許請求の範囲】
【請求項1】
目付が2500〜3400g/mの三次元網目構造のシートを具備することを特徴する車両消毒用マット。
【請求項2】
前記三次元網目構造のシートの飽和含水量が8〜12L/mであることを特徴とする請求項1に記載の車両消毒用マット。
【請求項3】
前記三次元網目構造のシートの素材がポリエチレン及びポリプロピレンであることを特徴とする請求項1又は2に記載の車両消毒用マット。
【請求項4】
前記三次元網目構造のシートがニードルパンチ製法により製造された不織布であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の車両消毒用マット。
【請求項5】
前記三次元網目構造のシートの少なくとも一つの面に疎水性フィルムが具備することを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の車両消毒用マット。
【請求項6】
前記三次元網目構造のシートの少なくとも一つの面の網目を熱溶融又は高分子材料により封じた構造を具備することを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の車両消毒用マット。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれかに記載の車両消毒用マットを複数枚道路に敷くことにより自動車のタイヤの接地面を消毒する方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−71772(P2012−71772A)
【公開日】平成24年4月12日(2012.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−219524(P2010−219524)
【出願日】平成22年9月29日(2010.9.29)
【出願人】(502281161)株式会社環境機器 (8)
【Fターム(参考)】