説明

車両減速ハンプ

【目的】ハンプを通過した車両の衝撃による轍掘れを防止する車両減速ハンプを提供する。
【構成】基部2と、該基部2から隆起し車両の走行速度の低減を促す隆起部3,4を有し、前記基部2と隆起部3,4を長尺状に形成し、該隆起部3,4におけるその短手方向の長さは、前記基部2におけるその短手方向の長さより短く設定し、前記隆起部3,4及び基部2をコンクリートで成形した車両減速ハンプ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両減速ハンプに関するもので、詳しくは、工場内やコミュニティゾーンにおける車両の走行速度を抑制するために道路上に設置される車両減速ハンプに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両の走行速度を抑制するために道路に設置される車両減速ハンプ(以下単にハンプともいう)として、樹脂やゴム等で成形されたハンプが知られている。
【0003】
この従来のハンプは、図12に示すように、上面形状が長楕円形で、その縦断面形状が、図13に示すように、半円の蒲鉾状に形成され、このハンプ101の長手方向が車両の走行方向Kと交差するようにアスファルト製の道路102上に、ボルト103等により固設して使用する。
【0004】
このように、道路102上に前記ハンプ101を設けることにより、車両の運転者がこのハンプ101の乗り上げによる衝撃等を回避するために減速したり、このハンプ101上を、減速せずに車両が通過すると車両に強い衝撃が加わるため、運転者に車両の走行速度を低減するよう促すことができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記従来のハンプ101は、アスファルト製の道路102上に固設される場合においては、矢印K方向に走行する車両のタイヤが、ハンプ101を乗り越えると、その乗り越えた後において、その道路102に車両の衝撃が加わり、ハンプ101の車両通過後の道路102に轍104が形成される。そのため、定期的にアスファルト(道路)102の補修をする必要がある。
【0006】
しかし、工場の入口付近にハンプ101が設置されている場合には、そのアスファルト102の補修の際には、工場内への車両の進入を一定時間停止する必要があるが、工場が24時間稼動している場合には、その時間を取ることができず、轍掘れの補修をすることが困難であるという問題がある。
【0007】
そこで、本発明は、前記轍掘れを防止する車両減速ハンプを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するために、請求項1記載の発明は、基部と、該基部から隆起し車両の走行速度の低減を促す隆起部を有し、
前記基部と隆起部を長尺状に形成し、該隆起部におけるその短手方向の長さは、前記基部におけるその短手方向の長さより短く設定し、
前記隆起部及び基部をコンクリートで成形したことを特徴とするものである。
【0009】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明において、前記隆起部の表層部に用いるコンクリートの色が、該隆起部における表層部以外に用いるコンクリートの色と異なることを特徴とするものである。
【0010】
請求項3記載の発明は、請求項1又は2記載の発明において、前記隆起部の長手方向と直交する方向に水抜き部を設けたことを特徴とするものである。
【0011】
請求項4記載の発明は、請求項1又は2又は3記載の発明において、前記隆起部と基部とを、一体に成形したことを特徴とするものである。
【0012】
請求項5記載の発明は、請求項1又は2又は3記載の発明において、前記隆起部と基部とを、別体に成形したことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明のハンプは、基部と該基部から隆起する隆起部を、アスファルトより硬いコンクリートで成形し、隆起部におけるその短手方向の長さを、基部におけるその短手方向の長さより短く設定したことにより、前記従来技術と比較して、隆起部を乗り越えた車両の衝撃により、基部に轍が形成されることを抑制することができ、ハンプの周囲の道路の修繕の回数を減らすことができる。
【0014】
また、隆起部をコンクリートで成形したことにより、従来の樹脂やゴムで成形されたハンプよりも耐用年数を長くすることが出来、ハンプの交換回数を減らすことができる。
【0015】
また、請求項2記載の発明によれば、隆起部の表層部に用いるコンクリートの色を、それ以外に用いるコンクリートの色と異なるものとしたことにより、隆起部の色の変化により、ハンプの交換時期を知るようにすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施例1における車両減速ハンプの斜視図。
【図2】図1の上面図。
【図3】図1の側面図。
【図4】図2のA−A線拡大断面図。
【図5】図2のB−B線拡大断面図。
【図6】図3における水抜き部の部分拡大断面図。
【図7】図1の車両減速ハンプを道路に設置した状態の側面図。
【図8】図1の車両減速ハンプの製造方法を示す工程図。
【図9】(a)は図8のC−C線断面図、(b)は図8のD−D線断面図、(c)は図8のE−E線断面図。
【図10】本発明の実施例2における車両減速ハンプの上面図。
【図11】図10の長手方向の縦断面図。
【図12】従来技術の車両減速ハンプの上面図。
【図13】図12の車両減速ハンプを道路に設置した状態の側面図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明を実施するための形態を図1乃至11に示す実施例に基づいて説明する。
【実施例1】
【0018】
図1乃至図9は本発明の実施例1の車両減速ハンプ(以下においてハンプともいう)1を示す。
【0019】
該ハンプ1は、図1〜7に示すように、基部2を有し、該基部2の上面には、該基部2から上方に隆起し、車両の走行速度の低減を促す複数の隆起部3,4が設けられ、前記基部2と隆起部3,4は、コンクリートにより一体に成形されている。該隆起部3,4は、2個の第1隆起部3,3と、2個の第2隆起部4,4からなる。
【0020】
前記基部2は、図1〜7に示すように、その上面形状が長方形状となる直方体状に形成されている。
【0021】
前記第1隆起部3は、図2,3に示すように、長尺状に形成され、その短手方向の縦断面形状は、図7に示すように、基部2側に中心を持つ半円状に形成されている。また、その長手方向の一端3aは、図2に示すように、上面が、第1隆起部3の内側で、かつ、長手方向の軸上に中心を持つ半円状に形成され、その長手方向側の側面が、図3に示すように、長手方向の外縁から上方に向うほど内側方向に湾曲する弧状に形成されている。また、その長手方向の他端3bは、図2,3,6に示すように、長手方向の軸に直交する平面状に形成されている。この他端の平面の下部(基部2側)には、図3,6に示すように、上方から下方に向うほど、隆起部3,4の内側方向に湾曲する切欠部5が短手方向全体に亘って形成されている。
【0022】
前記第2隆起部4は、図2〜5に示すように、長尺の蒲鉾状に形成され、その短手方向の縦断面形状は、図4に示すように、基部2側に中心を持つ半円状に形成されている。また、その長手方向の両端は、図2,3,6に示すように、長手方向の軸に直交する平面状に形成されている。この両端の平面の下部(基部2側)には、図3,6に示すように、上方から下方に向うほど内側方向に湾曲する切欠部6,6が短手方向全体に亘って形成されている。
【0023】
前記第1隆起部3と第2隆起部4の短手方向の長さを同一とし、その長さは、基部2の短手方向の長さより長く設定し、本実施例においては、第1隆起部3と第2隆起部4の短手方向の長さを300mmに、基部2の短手方向の長さを1000mmとした。また、第1隆起部3と第2隆起部4の高さは、車両の走行速度を低減させる効果等に応じて、任意に設定することができ、本実施例においては80mmとした。また、基部2の厚みも任意に設定することができ、本実施例においては150mmとした。
【0024】
前記2個の第1隆起部3が、図2に示すように、前記基部2の長手方向の両側部の上面に、その一端(円弧)3aが外側になるように載置され、2個の第2隆起部4が、前記基部2の上面の前記第1隆起部3,3の間に載置されている。また、前記2個の第1隆起部3,3と、2個の第2隆起部4,4は、その長手方向の軸が同一直線状に位置するように配置されている。
【0025】
前記第1隆起部3と第2隆起部4との間、及び、第2隆起部4と第2の隆起部4との間には、短手方向全体に亘って隙間7が形成され、該隙間7は前記切欠部5,6で形成される空間と連通している。この隙間7と、切欠部5,6により水抜き部8が形成されている。該水抜き部8は、その上方及び短手方向の両端が開口している。
【0026】
前記第1隆起部3と第2隆起部4は、図4に示すように、その表層部10を構成するコンクリートの色と、本体部11のコンクリートの色が異なるように形成されている。本実施例においては、表層部10に用いるコンクリートとして2色のカラーコンクリートを用いて、隣接する隆起部3(4)同士が異なる色となるように着色し、本体部11に用いるコンクリートとして通常の無着色のコンクリートを用いた。また、表層部10の厚さは、後述するハンプ1の交換時期等に応じて任意設定することができる。
【0027】
次に、本発明の実施例1のハンプ1の製造方法について説明する。
先ず、本発明の実施例1のハンプ1の製造に用いる外型12について説明する。
【0028】
この外型12は、図8(a)に示すように、隆起部3,4の外側面と、基部2の上面及び側面と同一形状に形成された内周面12aを有し、その上方が開口している。また、水抜き部8を形成する部分には、図8,9に示すように、3個の水抜き型13が、外型12に対して取外し可能に設けられている。前記水抜き型13の外面は、隙間7と切欠部5,6の外面と同じ形状に形成され、図9における下側部は、隙間7の外側縁よりも下側方向に延長されて形成され、その延長部13aは、外型12に設けられた溝12bに対して取外し可能に取付けられている。
【0029】
先ず、コンクリートの打設に先立って、図8(a),図9(a)に示すように、3個の水抜き型13を型12に取付ける。水抜き型13の表面には、離型剤が塗布されている。
【0030】
次に、図8(b),図9(b)に示すように、隆起部3(4)の表層部10となる部分にカラーコンクリート10a(10b)をコテ等により所定の部分に所定の厚さとなるように塗る。このとき、2色のカラーコンクリート10a,10bを使用し、図9(b)に示すように、隣接する隆起部3(4)同士で異なる色となるように2色のカラーコンクリート10a,10bを塗り分ける。
【0031】
次に、図8(c),図9(c)に示すように、前記カラーコンクリート10a,10bが硬化する前に、上方からコンクリート11aを打設する。
【0032】
次に、コンクリート10a,10b,11aを養生固化させた後に、外型12から、水抜き型13とともにコンクリート部材を脱型する。
【0033】
次に、コンクリート部材から水抜き型13を取外して、本発明の実施例1のハンプ1を得る。
【0034】
このハンプ1は、図7に示すように、その長尺方向が車両の走行方向Kと交差し、かつ、基部2の上面2aが路面15aと同一となるように、道路15等に埋設して使用する。
【0035】
以上のようであるため、本実施例1ハンプ1は、次のような作用、効果を発揮することができる。
【0036】
基部2を、コンクリートで成形したことにより、アスファルトよりも硬く、隆起部3,4を乗り越えた車両の衝撃により、基部2が抉られることにより轍が形成されることを、前記従来技術のハンプ101を使用したものよりも抑制でき、ハンプ1の交換回数を減少することができる。
【0037】
また、隆起部3,4を、コンクリートで成形したことにより、前記従来技術のゴムや樹脂で整形したハンプよりも耐用年数が長くなり、ハンプ1を交換・修繕する回数を減少することができる。
【0038】
また、従来のハンプ101においては、視認しただけではハンプ1の磨耗度が分らず、ハンプ101の使用期間やハンプ101が破損した場合にハンプ101を交換していたが、本発明のハンプ1は、隆起部3,4の表層部10と本体部11とで用いるコンクリートの色を異なるものとしたことにより、隆起部3,4が車両の走行による磨耗で、本体部11が外部から視認できるときは、表層部10の厚み分隆起部が磨耗していることとなり、ハンプ1の交換時期の目安とすることができる。
【0039】
また、傾斜のある路面等にハンプ1を設置した際に、水抜き部8を設けたことにより、斜面の上方側から下方側へと水抜き部8を通じて雨水等を排出することが出来、路面より隆起した隆起部3,4により、その隆起部3,4の斜面の上流側に雨水が溜ることを防止できる。
【0040】
なお、前記実施例1においては、隆起部3,4の数を計4個としたが、任意の数とすることができる。
【0041】
また、前記実施例1においては、隆起部3,4の表層部10に用いるカラーコンクリートの色数を2色としたが、1色や3色等の任意の色数に設定することができる。
【実施例2】
【0042】
前記実施例1においては、外型12に表層部10を塗った後に、隆起部3,4の本体部11と基部2の部分のコンクリートを打設してハンプ1を形成したが、外型12に本体部11と基部2の部分のコンクリートを打設し、養生した後に脱型し、その後に表層部10となる部分にカラーコンクリートをコテ等により塗り、その後に水抜き型13を取外してハンプ1を形成しても良い。
【0043】
その他の構成、構造は前記実施例1と同様であるので、その説明を省略する。
本実施例2においても、前記実施例1と同様の作用、効果を奏する。
【実施例3】
【0044】
図10、11は本発明の実施例3を示す。
前記実施例1,2においては、基部2と、隆起部3,4を、一体に成形したが、基部2と第1隆起部3,3と第2隆起部4,4とを別体に形成した後に、グラウトやボルト等により一体化するようにしてもよい。
【0045】
図10、11に示すように、隆起部3,4の長手方向の両端部に、上下に貫通する貫通穴16,16を形成し、該貫通穴16に相当する基部2の位置に、上方に開口する有底穴17を形成する。
【0046】
基部2の上部に、貫通穴16と有底穴17とが連通するように、隆起部3,4を載置し、穴16,17内に丸鋼18を挿入した後に、グラウト材を注入して、基部2と隆起部3,4を連結し、一体化する。
【0047】
なお、基部2と隆起部3,4との連結手段は、丸鋼18とグラウト材以外にも、ボルトとナット等の任意の連結手段を用いて行ってもよい。
【0048】
その他の構成、構造は前記実施例1,2と同様であるので、その説明を省略する。
本実施例3においても、前記実施例1,2と同様の作用、効果を奏する。
【0049】
更に、隣接する隆起部3,4又は4,4相互が分割され、かつ、基板2とも分割されているため、隆起部3(4)の一部が損傷した場合、その損傷した隆起部3(4)のみを取り換えることができ、ハンプ1の補修が容易で、安価に行える。
【実施例4】
【0050】
前記実施例1乃至3においては、隣接する隆起部3と4(又は4と4)間に隙間7を設けたが、隙間7を設けなくても良い。
【0051】
その他の構成、構造は前記実施例1乃至3と同様であるので、その説明を省略する。
本実施例4においても、前記実施例1乃至3と同様の作用、効果を奏する。
【実施例5】
【0052】
前記実施例1乃至4においては、表層部10には、カラーコンクリートを用いたが、カラーモルタルを用いても良い。
【0053】
その他の構成、構造は前記実施例1乃至4と同様であるので、その説明を省略する。
本実施例5においても、前記実施例1乃至4と同様の作用、効果を奏する。
【符号の説明】
【0054】
1ハンプ
2 基部
3,4 隆起部
8 水抜き部
10 表層部
11 表層部以外(本体部)



【特許請求の範囲】
【請求項1】
基部と、該基部から隆起し車両の走行速度の低減を促す隆起部を有し、
前記基部と隆起部を長尺状に形成し、該隆起部におけるその短手方向の長さは、前記基部におけるその短手方向の長さより短く設定し、
前記隆起部及び基部をコンクリートで成形したことを特徴とする車両減速ハンプ。
【請求項2】
前記隆起部の表層部に用いるコンクリートの色が、該隆起部における表層部以外に用いるコンクリートの色と異なることを特徴とする請求項1記載の車両減速ハンプ。
【請求項3】
前記隆起部の長手方向と直交する方向に水抜き部を設けたことを特徴とする請求項1又は2記載の車両減速ハンプ。
【請求項4】
前記隆起部と基部とを、一体に成形したことを特徴とする請求項1又は2又は3記載の車両減速ハンプ。
【請求項5】
前記隆起部と基部とを、別体に成形したことを特徴とする請求項1又は2又は3記載の車両減速ハンプ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2012−57330(P2012−57330A)
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−199980(P2010−199980)
【出願日】平成22年9月7日(2010.9.7)
【出願人】(000241474)トヨタT&S建設株式会社 (52)
【Fターム(参考)】