説明

車両用の情報提供装置

【課題】未だ停止していないが、将来停止して発進待ち車列を形成することが予測される車列予備車両の挙動に応じて情報を提供する。
【解決手段】第1路側装置2000からその下流側に存在する停止地点Dまでの距離と、第1路側装置2000により検知された車両の前方を走行する他車両の他車両情報とを含む第1情報を取得する第1情報取得機能と、記第2路側装置3000から停止地点を先頭に形成された発進待ち車列の車列長を含む第2情報を取得する第2情報取得機能と、第1情報と第2情報に基づいて予測される、将来において発進待ち車列を形成する車列予備車両の存在に応じて、車両が注意すべき注意対象を特定する注意対象特定機能と、特定された注意対象に関する情報を生成し、出力させる出力制御機能を実行させる制御装置10を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の運転を支援するための情報を提供する車両用の情報提供装置に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の装置に関し、交差点に進入するプローブ車両の時々刻々の位置、速度、時間などのデータを取得し、取得されたデータに基づき、交差点に進入する感知車両が交差点に到着する行列末尾位置、行列末尾に到達する時刻、行列内での停止時間、交差点に到着するまでの行列内走行時間、赤信号による再停止位置、移動中の行列末尾に到達するまでの走行距離の少なくとも1つを算出する車両挙動の予測システムが知られている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−257196号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の技術によれば、既に形成された車列の末尾位置に対する対象車両の挙動を統計的に予測できるが、未だ車両が停止しておらず、将来、車列を形成すると予測される車列の予備車両が存在する場合は、車列の末尾位置が定まらないため、注意すべき対象を正確に予測することができず、適切な情報を提供できないという問題があった。
【0005】
本願発明が解決しようとする課題は、交差点等において、未だ停止しておらず、将来、車列を形成する車列の予備車両が存在する場合であっても、注意すべき対象を正確に予測し、適切な情報を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、路側装置から取得された情報に基づいて予測された、将来において発進待ち車列を形成する車列予備車両の存在に応じて、車両の運転者が注意するべき対象を特定し、特定された注意対象に関する情報を出力することにより、上記課題を解決する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、未だ停止しておらず発進待ち車列を形成していないが、将来、車列を形成する可能性のある車列予備車両の挙動を考慮するので、車両が注意すべき注意対象を正確に特定することができ、車両の運転者に適切な情報を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】情報提供システム100を含む車載装置1000と、道路上の所定の位置に設置された第1路側装置2000と、第2路側装置3000とを含むシステムの全体概要を示す図である。
【図2】第1路側装置2000と、第2路側装置3000と、情報提供システム100を含む車載装置1000とを含むシステムのブロック構成図である。
【図3】第1路側装置2000から第1情報を取得する処理と、第2路側装置3000から第2情報を取得する処理を説明するための図である。
【図4】本実施形態の情報提供処理の制御手順を説明するためのフローチャート図である。
【図5】本実施形態の情報提供処理の制御手順に含まれる、自車両と車列予備車両との接近可能性の判断処理を説明するためのフローチャート図である。
【図6】発進待ち車列が存在し、車列予備車両が存在する場合において、注意対象を特定する手法の一例を説明するための図である。同図は、車列予備車両Bから車列末尾Cendまでの距離が長い場合の処理例を示す。
【図7】発進待ち車列が存在し、車列予備車両が存在する場合において、注意対象を特定する手法の他の例を説明するための図である。同図は、車列予備車両Bから車列末尾Cendまでの距離が短い場合の処理例を示す。
【図8】発進待ち車列が存在せず、車列予備車両が存在する場合において、注意対象を特定する手法の一例を説明するための図である。同図は、車列予備車両Bから車列末尾Cendまでの距離が長い場合の処理例を示す。
【図9】発進待ち車列が存在せず、車列予備車両が存在する場合において、注意対象を特定する手法の他の例を説明するための図である。同図は、車列予備車両Bから車列末尾Cendまでの距離が短い場合の処理例を示す。
【図10】発進待ち車列が存在せず、かつ車列予備車両が存在しない場合において、注意対象を特定する手法の一例を説明するための図である。同図は、車列予備車両Bから車列末尾Cendまでの距離が長い場合の処理例を示す。
【図11】発進待ち車列が存在するが、車列予備車両が存在しない場合において、注意対象を特定する手法の一例を説明するための図である。同図は、車列予備車両Bから車列末尾Cendまでの距離が短い場合の処理例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本実施形態の情報提供システム100を図面に基づいて説明する。
【0010】
図1は情報提供システム100を含む車載装置1000と、道路上の所定の位置に設置された第1路側装置2000と、第2路側装置3000とを含むシステムの全体概要の一例を示す図であり、図2は第1路側装置2000と、第2路側装置3000と、情報提供システム100を含む車載装置1000とを含むシステムのブロック構成図である。
【0011】
図1に示すように、第1路側装置2000は停止地点の上流側の道路の所定の位置に設置され、通信可能領域を通過する車両A,B,Cとそれぞれ情報の授受を行う。また、第2路側装置3000は、信号機4000が設けられた交差点の停止線上の停止地点Dの近傍に設けられ、停止地点Dで停止し、停止地点Dを先頭に形成された発進待ち車列Cの車列長Lsを監視する。また、車両Aと車列Cとの間であって、車両Aの直前を走行する車両Bは、未だ車列Cの末尾に到達していないが、将来において発進待ち車列Cを形成することが予測される車列予備車両として特定される車両である。
【0012】
これら第1路側装置2000と第2路側装置3000と信号機4000は、車両に搭載された車載装置1000(情報提供システム100)との双方向通信により情報の授受が可能な路上インフラ装置である。これらの第1路側装置2000、第2路側装置3000、信号機4000及び車載装置1000は、いわゆるITS(Intelligent Transport Systems:高度道路交通システム)その他の高度情報通信ネットワークの一部を構成する。
【0013】
以下、情報提供システム100を含む車載装置1000について説明しつつ、路側装置などの周辺装置についても併せて説明する。
【0014】
図2に示すように、車載装置1000は、情報提供システム100と、車両コントローラ200と、車載センサ300と、出力装置400と、走行支援装置500とを備える。情報提供システム100と各装置200〜500は、CAN(Controller Area Network)その他の車載LANによって接続され、相互に情報の授受を行う。
【0015】
また、同図に示すように、本実施形態の情報提供システム100は、制御装置10と、車両側通信装置20とを備える。
【0016】
本実施形態の制御装置10は、情報提供処理を実行するためのプログラムが格納されたROM(Read Only Memory)12と、このROM12に格納されたプログラムを実行することで、制御装置10として機能する動作回路としてのCPU(Central Processing Unit)11と、アクセス可能な記憶装置として機能するRAM(Random Access Memory)13と、を備える。なお、動作回路としては、CPU(Central Processing Unit)11に代えて又はこれとともに、MPU(Micro Processing Unit)、DSP(Digital Signal Processor)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field Programmable Gate Array)などを用いることができる。
【0017】
具体的に、本実施形態の制御装置10は、第1情報を取得する機能と、第2情報を取得する機能と、第1情報と第2情報に基づいて予測される、将来において発進待ち車列を形成する車列予備車両の存在に応じて、注意対象を特定する注意対象特定機能と、特定された注意対象に関する情報を生成し、出力させる出力制御機能とを備える。制御装置10は、これらの機能を実現するためのソフトウェアと、上述したハードウェアの協働により各機能を実行する。
【0018】
以下、上述した情報提供システム100の制御装置10が実現する機能についてそれぞれ説明する。
【0019】
まず、制御装置10の第1情報の取得機能について説明する。制御装置10は、車両側通信装置20を介して、第1路側装置2000から各種情報を取得する。この車両側通信装置20は、道路に設置された第1路側装置2000(及び第2路側装置3000)と情報の送受信を行う機能を備える。特に限定されないが、車両側通信装置20は、DSRC(Dedicated Short Range Communication)、UWB(Ultra Wide Band)、MCA(Multi Channel Access System)無線システム、Bluetooth(登録商標)、IEEE802.11系その他の無線LAN規格等に従う無線通信機能などを備える。
【0020】
ここで、第1路側装置2000について説明する。図2に示すように、本実施形態の第1路側装置2000は、通信装置2010と、判定ユニット2020と、データベース2030と、移動体センサ2040と、信号管理情報センサ2050とを備える。
【0021】
通信装置2010は、光ビーコン2011、無線通信機能2012などの双方向通信機能を備える。光ビーコン2011は、所定の通信可能領域に存在する(検知対象となる)車両との双方向通信により、その通信可能領域における車両の存在を検出する。また、無線通信機能2012は、DSRC(Dedicated Short Range Communication)、UWB(Ultra Wide Band)、MCA(Multi Channel Access System)無線システム、Bluetooth(登録商標)、IEEE802.11系その他の無線LAN規格等に従う無線通信を行うための機能を備える。
【0022】
移動体センサ2040は、光ビーコン2011と車両との双方向通信により、通信可能領域に車両が存在することを検知するとともに、通信可能領域に存在する車両の車速情報を取得する。
【0023】
図3は、車載装置1000が第1路側装置2000から第1情報を取得する処理を説明するための図である。図3に示すように、本実施形態の第1路側装置2000の光ビーコン2011の投受光器は、道路の幅員Wの中央位置の真上の所定の高さ(例えば路面から5.5mの高さ)に設置される。光ビーコン2011は、所定の通信可能領域に向けて近赤外線を照射する(ダウンリンク)。光ビーコン2011が発する近赤外線は指向性が高いため、所定の通信可能領域を設定することができる。
【0024】
車両が第1路側装置2000の所定の通信可能領域内に進入すると、制御装置10は第1路側装置2000から送信された信号に対して、応答信号(アップリンク)を送出する。第1路側装置2000が車載の情報提供システム100から応答信号(アップリンク)を受信できれば、車両が第1路側装置2000の所定の通信可能領域内に進入したことが判る。また、車両が所定の通信可能領域内に進入したタイミングと、第1路側装置2000の設置位置が分かるので、車両の走行位置と通過タイミングを特定することができる。
【0025】
第1路側装置2000は、予め記憶する通信可能領域に対応する第1路側装置2000の設置位置と、この第1路側装置2000の設置位置から交差点等の停止地点までの距離と、車載装置1000から応答信号を受信したタイミング(車両が所定の通信可能領域内に進入したタイミング)と、車載装置1000へ送出する。これにより、車載装置1000の制御装置10は、通過タイミングが特定された基準位置と、この基準位置から停止地点Dまでの距離を取得する。なお、第1路側装置2000の設置位置と第1路側装置の通信可能領域Sの位置は、所定の対応関係を有する。
【0026】
また、第1路側装置2000は、通信可能領域を通過する車両の車速をそれぞれ取得し、各車両の車速と通過タイミングと対応づけて後続の車両の車載装置1000へ送出する。これにより、車載装置1000の制御装置10は、先行他車両が通信可能領域を通過したタイミングとその車両の車速を含む他車両の他車両情報を取得する。他車両情報には、他車両の識別子、他車両の車両長lpなどを含ませてもよい。
【0027】
図3に示すように、車両が第1路側装置2000の光ビーコン2011の通信可能領域Sに進入すると、車載装置1000の制御装置10は、第1路側装置2000の設置位置からその下流側に存在する停止地点までの距離Lと、第1路側装置2000により検知された車両の前方を走行する他車両の他車両情報とを含む第1情報を取得する。この他車両情報には、自車両の前方を走行する他車両が通信可能領域Sに進入したタイミングと、その他車両の車速が含まれる。また、他車両情報は、自車両が通信可能領域Sに進入する前の所定時間以内に通信可能領域Sに進入した他車両の情報、又は自車両が通信可能領域Sに進入する前に通信可能領域Sに進入した所定台数の他車両の情報を含む。
【0028】
また、第1路側装置2000の信号管理情報センサ2050は、信号機4000(図1参照)が提示する信号の内容(提示色など)に関する情報を取得し、通信可能領域を通過する車両の車載装置100へ送出する。
【0029】
なお、第1路側装置2000と車載装置1000との情報授受は、判定ユニット2020が制御する。つまり、判定ユニット2020は、各種情報の演算を実行する演算装置として機能する。判定ユニット2020は、移動体センサ2040が検出した自車両の通過タイミング、通過位置、停止地点までの距離とともに、及び先行他車両の有無、先行他車両の通過タイミング、先行他車両の車速を対応づけて車載装置1000側へ送出させる。さらに、判定ユニット2020は、信号管理情報センサ2050が取得した信号機4000の提示信号の内容(提示色など)を車載装置1000側へ送出させる。加えて、判定ユニット2020は、通信装置2010を介して取得した第2路側装置3000の移動体センサ3020が検出した車列長を、車載装置1000側へ送出させる。
【0030】
また、データベース2030は、判定ユニット2020の処理に用いられる情報を管理する。管理される情報には、道路情報2031、第1路側装置2000の設置位置(光ビーコン2011の設置位置、又は通信可能領域を特定する位置に対応する位置)、光ビーコン信号の授受が可能な通信可能領域を特定する位置情報を含む通信可能領域情報2033、及び移動体情報2034を含む。
【0031】
この道路情報2031は、予め定義された地点(ノード)の位置その他の地点の属性に関する情報、例えば、地点が停止線上の停止地点である、地点が光ビーコン2011の真下の地点(通信可能領域を特定する位置)であるといった地点の属性を含む。また、道路情報2031は、地点の位置(例えば緯度及び経度)を含む。さらに、道路情報2031は、地点(ノード)間の距離情報を含み、たとえば、道路情報2031は、第1路側装置2000の設置位置(光ビーコン2011の設置位置)から停止線(停止地点)までの距離を含む。
【0032】
次に、制御装置10の第2情報の取得機能について説明する。制御装置10は、車両側通信装置20を介して、第2路側装置3000から各種情報を取得する。
【0033】
ここで、第2路側装置3000について説明する。図2に示すように、第2路側装置3000は、通信装置3010と、判定ユニット3020、移動体センサ3040とを備える。第2路側装置3000の通信装置3010は、第1路側装置2000の通信装置2010と同様の機能を備え、第1路側装置2000及び情報提供システム100と相互に情報を授受する。また、移動体センサ3040は、カメラ3041を備え、交差点などの停止地点を先頭に形成される車列の長さLsを検出する。カメラ3041は、交差点などの停止地点の上空に車線ごとに設けられ、停止地点から上流側へ延びる発進待ち車列をそれぞれ撮像する。カメラ3041により撮像された撮像画像に基づいて、停止地点を先頭に形成された発進待ち車列の車列長Lsを車線ごとに検出する。具体的に、移動体センサ3040は、カメラ3041の撮像画像に基づいて、移動速度が略ゼロである車列末尾の車両Cの位置を抽出し、その先頭から末尾までの長さを車列長Ls−1として検出する。また、移動体センサ3040は、カメラ3041の撮像画像から連続する車列の先頭(つまり停止地点D)と車列末尾Cendの間に存在する各車両の境界を抽出し、その車両の台数(3)をカウントし、その車両の台数(3)に予め設定した車両単位長(例えば8m)を乗じて移動体の車列長Ls−2を検出する。本実施形態では、異なる手法により検出された車列長Ls−1とLs−2との差が所定値未満であるとき、その値を地点から延びる車列の長さLs(例えば24m)として検出する。
【0034】
また、第2路側装置3000の判定ユニット3020は、各種情報の演算を実行する演算装置として機能する。判定ユニット3020は、移動体センサ3040により検出された停止地点を先頭として形成された車列長Lsを、第1路側装置2000へ送出する。車両の車載装置1000は、第1路側装置2000を経由して、第2路側装置3000により検出された停止地点を先頭に形成された発進待ち車列の車列長Lsを含む第2情報を取得する。なお、停止地点に発進待ちの車両が無い場合は、車列長Lsの値は0(ゼロ)と検出される。
【0035】
続いて、制御装置10の注意対象特定機能について説明する。制御装置10は、第1情報と第2情報に基づいて予測される、将来において、停止地点を先頭に連なる発進待ち車列を形成する車列予備車両の存在に応じて、車両が注意すべき注意対象を特定する。
【0036】
まず、制御装置10は、未だ停止していないが、将来において発進待ち車列を形成する先行他車両のうち、自車両の直前を走行する車両を、車列予備車両として特定する。本実施形態の制御装置10は、第1路側装置2000から取得した、先行他車両が通信可能領域Sを通過するタイミングと、通過時の車速と、通信可能領域Sから停止線上の停止地点Dまでの距離Lと、第2路側装置3000から取得した発進待ち車列長Lsとに基づいて、車列予備車両を特定する。制御装置10は、自車両が通信可能領域Sに進入したタイミングにおいて、通信可能領域Sと発進待ち車列の最後尾Cendとの間に位置する先行他車両のうち、通信可能領域Sに進入したタイミングが最も遅い車両を、自車両の直前を走行すると判断し、車列予備車両として特定する。
【0037】
具体的には、制御装置10は、第1路側装置2000から取得した他車両情報のうち、通信可能領域Sに進入したタイミングが最も遅い、つまり自車両の直前を走行する先行他車両の他車両情報を選択する。そして、制御装置10は、通信可能領域Sから停止地点までの距離Lから車列長Lsを差し引いた距離(L−Ls)と、先行他車両が通信可能領域Sを通過してから自車両が通信可能領域Sを通過するまでの時間に先行他車両の車速を乗じて得た、他車両の移動距離Lmとを比較する。制御装置10は、他車両の移動距離Lmが距離(L−Ls)よりも所定値以上短い場合は、その先行他車両を、未だ発進待ち車列の末尾に到達していない車列予備車両として特定する。
【0038】
そして、制御装置10は、この車列予備車両の存在に応じて車両が注意すべき注意対象を特定する。
【0039】
ところで、第2路側装置3000は、既に停止した車両(車速ゼロ)により形成された発進待ち車列の長さを検出する。
【0040】
しかし、発進待ち車列の末尾に未だ到達しておらず、移動中の車列予備車両の存在によって、発進待ち車列の車列長及び車列末尾の位置、すなわち自車両が停止するべき位置は変化するため、運転者が注意をするべき対象が異なる。
【0041】
すなわち、発進待ち車列の末尾に未だ到達しておらず、移動中の車列予備車両の位置によって、発進待ち車列の車列長及び車列末尾の位置、すなわち自車両が停止するべき位置は変化し、運転者が注意をすべき対象は異なる。さらに、自車両が車列の末尾に到達する前にその他車両が車列の末尾に到達して停止する場合は、自車両は他車両の後ろで停止して車列を形成するため、自車両が注意するべき対象は車列の末尾の停止車両となる。一方、自車両が車列の末尾に到達する前に他車両に追いつく場合は、自車両が注意するべき対象は車列の末尾に到達していない移動中の車列予備車両である。もっとも、自車両から車列末尾までの距離が長い場合、自車両と車列予備車両との距離が長い場合などにおいては、自車両が注意するべき対象は車列の最後尾の車両又は信号前の停止地点となる。
【0042】
このように、車列予備車両の位置によって自車両が注意するべき車両は変化することに対応するため、本実施形態の制御装置10は、将来において発進待ち車列を形成する車列予備車両の存在又は位置に応じて、自車両が注意するべき注意対象を特定する。
【0043】
これにより、刻々に変化する車列予備車両の存在や車列予備車両の位置に応じて、適切な注意対象に関する情報を提供することができる。
【0044】
具体的に、本実施形態の制御装置10は、第1情報と第2情報に基づいて予測される、将来において発進待ち車列を形成する車列予備車両と、自車両と、停止地点又は停止地点を先頭に形成された発進待ち車列の最後尾との位置関係に基づいて、停止地点、停止地点において形成された発進待ち車列の最後尾車両又は車列予備車両のいずれか一以上を自車両の注意対象として特定する。
【0045】
たとえば、本実施形態の制御装置10は、自車両と車列予備車両の距離が所定値未満となる場合は、車列予備車両を自車両の注意対象として特定し、停止地点又は車列の最後尾地点と車列予備車両との距離が所定値未満となる場合は、車列の存在又は車列の最後尾の停止車両を注意対象として特定する。
【0046】
具体的に、本実施形態の制御装置10は、第1情報と第2情報に基づいて、車列予備車両が停止地点又は停止地点において形成された車列の末尾に到達するまでの予備車両到達時間を求めるとともに、自車両が停止地点又は停止地点において形成された車列の末尾に到達するまでの自車到達時間を求め、予備車両到達時間が自車到達時間以上であるとき、車列予備車両を自車両の注意対象として特定する。
【0047】
つまり、本実施形態の制御装置10は、自車両が停止地点又は停止地点において形成された車列の末尾に到達するまでに、車列予備車両に追いつき又は追い越してしまうことが予測される場合は、車列予備車両を自車両の注意対象として特定する。
【0048】
また、特に限定されないが、本実施形態の制御装置10は、第1路側装置2000の設置位置から停止地点又は停止地点において形成された車列の末尾までの距離を、第1情報に含まれる車列予備車両の車速で除して予備車両到達時間を求める。さらに、制御装置10は、第1路側装置2000から停止地点又は停止地点において形成された車列の末尾までの距離を、車両から取得される自車両の車速で除して自車到達時間を求める。ちなみに、制御装置10は、自車両の車速を、車載センサ300の車速センサ301から直接に取得し、又は車両コントローラ200を介して取得する。そして、制御装置10は、予備車両到達時間が自車到達時間以上であるとき、車列予備車両を車両の注意対象として特定する。
【0049】
本処理において、本実施形態の制御装置10は、第1情報と第2情報に基づいて算出された、車列予備車両から停止地点又は停止地点において形成された車列の末尾までの距離が所定値以上である場合、すなわち、車列予備車両が停止すべき地点から離れた位置を走行する場合は、予備車両到達時間と自車到達時間との比較に基づいて、自車両の注意対象を特定する。
【0050】
つまり、この場合において、制御装置10は、第1情報と第2情報に基づいて、車列予備車両が停止地点又は停止地点において形成された車列の末尾に到達するまでの予備車両到達時間を求めるとともに、車両が停止地点又は停止地点において形成された車列の末尾に到達するまでの自車到達時間を求め、予備車両到達時間が自車到達時間以上であるとき、車列予備車両を車両の注意対象として特定する。
【0051】
車列予備車両が停止すべき地点から離れた位置を走行する場合は、車列予備車両が車列最後尾に到達するまでに時間がかかると予測されるため、自車両は車列予備群が車列末尾に到着する前に、車列予備車両に追いつく可能性が高いと予測できる。このため本実施形態の制御装置10は、停止すべき地点から離れた位置を走行する車列予備車両と自車両との位置関係に注目して、その位置関係に応じて車列予備車両を車両の注意対象として特定する。これにより、状況に応じた適切な注意対象を迅速に特定することができ、適切なタイミングで注意対象に関する情報を出力することができる。
【0052】
さらに、本処理において、本実施形態の制御装置10は、第1情報と第2情報に基づいて算出された、車列予備車両から停止地点又は停止地点において形成された車列の末尾までの距離が所定値未満である場合、すなわち、車列予備車両が停止すべき地点に近い位置を走行する場合は、自車両から停止地点までの距離と自車両が停止するまでに要する停止必要距離との比較に基づいて、自車両の注意対象を特定する。
【0053】
つまり、この場合において、制御装置10は、第1情報と第2情報に基づいて、車両が停止地点に到達するまでの第1距離を求め、第1距離が車両の車速を含む自車両情報に基づいて求められた車両が停止するまでに要する停止必要距離Ln未満であるとき、停止地点を車両の注意対象として特定する。同様に、制御装置10は、第1情報と第2情報に基づいて、車両が停止地点において形成された車列の最後尾に連なる車列予備車両に到達するまでの第1距離を求め、第1距離が車両の車速を含む自車両情報に基づいて求められた車両が停止するまでに要する停止必要距離Ln未満であるとき、発進待ち車列の最後尾車両を自車両の注意対象として特定する。
【0054】
特に限定されないが、制御装置10は、停止必要距離Lnを次式(1)により算出する。
【0055】
Ln=Vnow ×(Tp+Td)+(Vnow)2 / 2D ・・・(1)
ただし、“Vnow”は現在の車速、“Tp”は予め定義された制御装置の処理時間、“Td”は予め定義された運転者反応時間、“D”は予め設定された減速度である。
【0056】
このように、車列予備車両が停止すべき地点に近い位置を走行する場合は、車列予備車両が車列最後尾に到達するまでに時間がかからないと予測されるため、自車両が車列予備車両に追いつく前に車列に組み込まれる(車列の最後尾に停止する)可能性が高いと予測できる。このため本実施形態の制御装置10は、車列予備車両が車列に組み込まれることを見越して、自車両から停止地点又は車列の末尾までの距離と、自車両が適切な減速度で停止するまでに要する停止必要距離Lnとの大小関係に注目して、その大小関係に応じて停止位置又は車列の最後尾を自車両の注意対象として特定する。これにより、状況に応じた適切な注意対象を迅速に特定することができ、適切なタイミングで注意対象に関する情報を出力することができる。
【0057】
次に、制御装置10の出力制御機能について説明する。制御装置10は、特定された注意対象に関する情報を生成し、出力装置400に出力させる。制御装置10は、生成した情報を、スピーカ401を介してテキスト音声出力させるための出力制御命令、又は生成した情報を、ディスプレイ402を介して画像出力させるための出力制御指令を生成し、出力装置400へ向けて送出する。出力装置400は、予め、注意対象に対応づけた出力用の音声出力処理又は画像出力処理に用いられる情報を記憶する。
【0058】
具体的に、制御装置10は、停止地点が注意対象である場合は、停止地点の属性(交差点、信号、横断歩道、合流地点、踏切、一時停止地点など)と、その停止地点の位置を知らせるとともに、注意を喚起させる言葉を含む情報を生成する。例えば、制御装置10は、停止地点に関し、「この先30mの地点に、信号があります。減速しましょう。」、又は「この先50mの地点に横断歩道があります。歩行者に注意しましょう。」といった情報を生成し、出力装置400に音声出力又は画像出力させる。また、制御装置10は、車列の最後尾の車両に関し、「この先40mの地点に、一時停止車両が存在します。前方に注意しましょう。」、又は「この先60mの地点に、通過待機車両が停止しています。減速しましょう。」といった情報を生成し、出力装置400に音声出力又は画像出力させる。また、制御装置10は、車列予備車両に関し、「前方車両に接近しています。速度を落としましょう。」又は「前方車両に接近しています。その先には交差点があるので、減速してください」といった情報を生成し、出力装置400に音声出力又は画像出力させる。
【0059】
さらに、制御装置10は、情報の出力に先立ち、運転者の減速意思の有無を判断し、運転者に減速の意思が無い場合に限り情報を出力させる。具体的に、制御装置10は、予め定義された所定の観察時間以内に、車両の減速情報、シフトダウン情報、ブレーキ操作情報、アクセル操作情報その他の減速を目的とする減速操作に係る車両情報がいずれも取得されなかった場合は、特定された注意対象に関する情報を出力させる。
【0060】
制御装置10は、自車両の車載装置1000から車速情報、ブレーキの操作情報、アクセルの操作情報、シフトポジション情報を取得する。ここで、車速情報は所定のタイミングにおける車両の車速を含む。また、ブレーキの操作情報は、所定のタイミングにおいてブレーキが踏まれた旨の情報(ブレーキオン)、又は所定のタイミングにおいてブレーキ制御が解除された旨の情報(ブレーキオフ)を含む。アクセルの操作情報は、所定のタイミングにおいてアクセルが踏まれた旨の情報(アクセルオン)、所定のタイミングにおいてアクセル制御が解除された旨の情報(アクセルオフ)、所定のタイミングにおいてアクセルが踏みこまれる(踏み込み量が大きくなる)制御又はアクセルの踏み込みが緩む(踏み込み量が小さくなる)制御を含む。また、シフトポジション情報は、所定のタイミングにシフトダウン操作がされた旨の情報、所定のタイミングにシフトアップ操作がされた旨の情報を含む。これらの情報は、各車載センサ300により検出される。具体的に、車速情報は車速センサ301により検出され、ブレーキの操作情報はブレーキセンサ302により検出され、アクセルの操作情報はアクセルセンサ303により検出され、シフトポジション情報はシフトポジションセンサ304により検出される。制御装置10は、これらの情報を、車載センサ300から直接、又は車両コントローラ200を介して取得する。
【0061】
制御装置10は、情報出力に際して、車両の減速情報、シフトダウン情報、ブレーキ操作情報、アクセル操作情報その他の減速を目的とする減速操作に係る車両情報が検出された場合は、注意対象に関する情報の出力を中止する。他方、制御装置10は、情報出力に際して、運転者が減速を意図する操作に係る検出情報が取得されなかった場合は、注意対象に関する情報の出力を実行する。減速操作を行ったにもかかわらず注意の情報が出力されると、運転者は煩わしいと感じる可能性が高い。本実施形態では、運転者が減速のための操作を行ったときは、注意喚起は不要と判断し、注意対象に関する情報の出力を中止するので、状況に適した情報を提供することができる。
【0062】
また、制御装置10は、特定された注意対象に関する情報を、走行支援装置500に出力してもよい。走行支援装置500は、特定された注意対象及びその位置に応じて、自動減速などの走行支援を実行することができる。
【0063】
次に、図4〜図11に基づいて、本実施形態の情報提供処理を具体的に説明する。図4は、本実施形態の情報提供処理の制御手順を説明するためのフローチャート図である。
【0064】
図4に示すように、ステップS100において、制御装置10は、本情報提供処理を、自車両が通信可能領域に進入後、100msecごとに、繰り返し実行する。
【0065】
まず、ステップS101において、制御装置10は、第1路側装置2000から第1情報を取得する。第1情報は、第1路側装置2000からその下流側に存在する停止地点までの距離と、第1路側装置2000により検知された車両の前方を走行する他車両の他車両情報とを含む。本実施形態において、制御装置10は、第1路側装置2000の通信可能領域Sから停止地点までの距離Lと、先行他車両が通信可能領域Sに進入したときのタイミング及び車速を含む他車両情報とを、第1路側装置2000から取得する。
【0066】
ステップS101と並行して、ステップS102において、制御装置10は、第2路側装置3000から第2情報を取得する。第2情報は、停止地点を先頭に形成された発進待ち車列の車列長を含む。本実施形態において、制御装置10は、カメラ3041の撮像画像から抽出された、停止線を先頭に連なる発進待ち車列の車列長Lsを第2路側装置3000から取得する。
【0067】
続くステップS103において、制御装置10は、第1路側装置2000を介して取得された、停止地点に設置された信号機4000の提示内容(停止に対応する赤信号、注意に対応する黄信号)を取得する。そして、制御装置10は、この信号機4000が赤信号又は黄信号を提示する場合は、ステップS104へ進む。つまり、制御装置10は、停止地点において、車両が停止しなければならない状況において本情報提供処理を実行する。なお、制御装置10は停止地点における交通指令に応じて本情報提供処理を実行させる。例えば、制御装置10は、停止地点が踏切手前に設定される地点である場合は、踏切の通行が遮断される場合において本情報提供処理を実行させる。また、制御装置10は、停止地点が常に一時停止が要求される地点である場合は、常に本情報提供処理を実行させる。
【0068】
ステップS104において、制御装置10は、停止地点を先頭とする発進待ち車列があるか否かを判断する。発進待ち車列がある場合はステップS110に進み、発進待ち車列が無い(車列長がゼロ)場合は、ステップS105へ進む。
【0069】
まず、第1に、発進待ち車列がある場合の処理を説明する。ステップS110において、制御装置10は、車列予備車両が存在するか否かを判断する。制御装置10は、上述した手法により、自車両が第1路側装置2000の通信可能領域Sを通過するタイミングにおいて、通信可能領域Sと発進待ち車列の最後尾との間を走行する先行他車両が存在するか否かを判断する。また、先行他車両が複数存在する場合は、最も遅いタイミングで通信可能領域Sを通過した先行他車両が車列予備車両として特定される。ステップS110において車列予備車両が存在する場合はステップS111へ進み、車列予備車両が存在しない場合はステップS121へ進む。
【0070】
ステップS111において、制御装置10は、自車両と車列予備車両との位置関係に基づいて、自車両と車列予備車両との接近可能性を判断する。
【0071】
図5は、本実施形態の情報提供処理の制御手順に含まれる、自車両と車列予備車両との接近可能性の判断処理を説明するためのフローチャート図である。また、図6及び図7は、発進待ち車列が存在し(S104でYes)、車列予備車両が存在する場合(S110でYes)において、注意対象を特定する手法例を説明するための図である。図6は、車列予備車両Bから車列末尾Cendまでの距離が長い場合の処理例を示す図であり、図7は、車列予備車両Bから車列末尾Cendまでの距離が短い場合の処理例を示す図である。
【0072】
まず、図5〜図7に基づいて、自車両と車列予備車両との接近可能性の判断処理を説明する。
【0073】
図5のステップS1001において、制御装置10は、第1情報と第2情報に基づいて、車列予備車両Bから停止線上の停止地点D又は車列の末尾位置Cendまでの距離Kを算出する。
【0074】
続く、ステップS1002において、距離Kが所定値未満であるか否かを判断する。距離Kが所定値未満である場合、すなわち、車列予備車両Bから車列末尾Cendまでの距離が所定値以上の場合(長い場合)はステップS1003へ進み、車列予備車両Bから車列末尾Cendまでの距離が所定値未満(短い)場合はステップS1006へ進む。なお、図6、7に示すように、車列予備車両Bから信号待ち車列の末端Cendまでの距離は、第1路側装置2000の通信可能領域から停止地点Dまでの距離Lから、車列長Lsと自車両Aと車列予備車両Bの距離を差し引いて求めることができる。自車両Aと車列予備車両Bの距離は、第1路側装置2000の通信可能領域を通過したときの時間差と相対速度に基づいて算出することができる。
【0075】
なお、この距離Kの比較の基準となる所定値は、その道路における通常の速度で走行した場合に後続の自車両Aが先行する他車両Bに追いつく可能性を判断するために設定される閾値である。この所定値は、第1路側装置2000から停止地点Dまでの距離、停止地点Dを含む道路の平均速度、停止地点Dの混雑度に応じて実験的に設定される。
【0076】
図6は、ステップS1003以降の処理例を示す図であり、図7はステップS1006以降の処理例を示す図である。
【0077】
ステップS1003において、制御装置10は、車列予備車両Bが停止地点D又は停止地点において形成された車列の末尾に到達するまでの予備車両到達時間Twと、車両が停止地点D又は停止地点において形成された車列の末尾Cendに到達するまでの自車到達時間Taを算出し、これらを比較する。
【0078】
図6に基づいて、具体的な処理例を説明する。図6に示す例では、発進待ち車列Cが存在するとともに、車列予備車両Bが存在する。また、自車両Aと車列予備車両Bが比較的接近し、車列予備車両Bから信号待ち車列の末端Cendまでの距離が比較的長い状態における処理例である。
【0079】
本例では、次式群(1−1),(1−2)により予備車両到達時間Twと自車到達時間Taを算出する。
【0080】
制御装置10は、自車両Aから信号待ち車列末尾Cendまでの自車到達時間Taを、Ta = (L―Ls)/Vnow…(1−1)により算出する。
【0081】
また、制御装置10は、車列予備車両Bから信号待ち車列末尾Cendまでの予備車両到達時間Twを、Tw=(L―Lp―Ls)/Vp…(1−2)により算出する。
【0082】
ただし、L:第1路側装置2000から停止線上の停止地点Dまでの距離,Ls:発進待ち行列長Ls,Vnow:自車両Aの現在速度,Vp:車列予備車両Bの現在速度,Lp:第1路側装置2000から車列予備車両Bまでの距離とする。
【0083】
さらに、制御装置10は、Ta−Tw≦0…(1−3)に基づき、自車両Aが信号待ち車列末尾Cendに到着するまでの自車到達時間Ta内に、自車両Aが車列予備車両Bに所定距離未満に接近する可能性があるか否かを判定する。
【0084】
図6に示す例において、自車両Aが信号待ち車列末尾Cendに到達するまでの自車到達時間「Ta=(L―Ls)/Vnow」は、以下のように求められる。
【0085】
Ta=140(m)/50(Km/h)=10.08秒≒10秒
他方、車列予備車両Bが信号待ち車列末尾Cendに到達するまでに要する予備車両到達時間「Tw=(L―Lp―Ls)/Vp」は、以下のように求められる。
【0086】
Tw=(180−40−40)/20(Km/h)=17.99秒≒18秒
以上のとおり、車列予備車両Bの予備車両到達時間Twは自車両Aの自車到達時間Taよりも長くなるため、自車両Aが停止地点Dに到達する前に、自車両Aと車列予備車両Bは所定距離未満の距離に接近してしまう。
【0087】
ステップS1004において、制御装置10が、予備車両到達時間Tw≧自車到達時間Taであると判断した場合は、ステップS1005へ進み、制御装置10は、自車両Aと車列予備車両Bとが接近する可能性が高いと判断し、さらに図4のステップS112へ進む。
【0088】
そして、図4のステップS112において、制御装置10は、ステップS111の判断後の所定の観察時間内に車両の減速情報、シフトダウン情報、ブレーキ操作情報、アクセル操作情報その他の減速を目的とする減速操作に係る車両情報が取得されなかった場合は、運転者の減速意思が無いと判断し、ステップS113へ進む。他方、ステップS111の判断後の所定の観察時間内に上記減速意思を示す車両情報が取得された場合は、運転者は減速しようとしていると判断し、注意を喚起する情報の出力を中止する。
【0089】
なお、ステップS1004において、制御装置10は、予備車両到達時間Tw≧自車到達時間Taでないと判断した場合は、自車両Aと車列予備車両Bとが接近する可能性が低いと判断し、車列予備車両Bは注意対象から外し、ステップS1006へ進む。
【0090】
続く、図4のステップS113において、制御装置10は、車両の運転者が注意するべき注意対象を、信号と自車両Aの直前を走行し、未だ発進待ち車列を形成していない車列予備車両Bであると特定する。
【0091】
次に、ステップS118において、制御装置10は、信号と車列予備車両Bに対する注意を喚起するための情報を生成し、これを出力装置400に出力させる。本処理例によれば、所定の状況下において、自車両Aと車列予備車両Bと停止地点D又は発進待ち車列の末尾Cendとの位置関係に応じて、適切なタイミングで適切な内容の情報を提供することができる。
【0092】
次に、ステップS1002に戻り、距離Kが所定値未満である場合の処理を、図7を参照しつつ説明する。距離Kが所定値未満である場合、ステップS1006へ進む。ステップS1006において、制御装置10は、自車両Aが接近する前に車列予備車両Bは車列末尾に到達し、車列を形成する可能性が高いと判断する。
【0093】
さらに、制御装置10は、ステップS1007において、自車両Aが停止地点D又は停止地点において形成された車列の最後尾Cendに連なる車列予備車両に到達するまでの第1距離L´を求めるとともに、自車両Aの車速を含む自車両情報に基づいて求められた車両が停止するまでに要する停止必要距離Lnを算出し、第1距離L´と停止必要距離Lnを比較する。
【0094】
図7に示す例は、発進待ち車列Cが存在するとともに、車列予備車両Bが存在する場合の例である。また、自車両Aと車列予備車両Bが比較的離隔し、車列予備車両Bから信号待ち車列の末端Cendまでの距離が比較的短い状態における処理例である。
【0095】
本例では、次式群(2−1),(2−2)により第1距離L´と停止必要距離Lnを算出する。
【0096】
制御装置10は、自車両から停止すべき地点までの残り距離である第1距離L´を、L´= L − lp − Lt−Ls…(2−1)により算出する。
【0097】
ただし、L:第1路側装置2000から停止地点Cまでの距離,lp:車列予備車両Bの車両長,Lt:第1路側装置2000の通信可能領域に進入してからt秒後の走行距離(≒Vnow ×t),Ls:発進待ち行列長とする。なお、Vnowは、車両コントローラ200から取得できる。
【0098】
また、制御装置10は、停止必要距離Lnを、Ln=Vnow ×(Tp+Td)+(Vnow)2 / 2D…(2−2)により算出する。
【0099】
ただし、“Vnow”は現在の車速、“Tp”は予め定義された制御装置の処理時間、“Td”は予め定義された運転者反応時間、“D”は予め設定された減速度とする。
【0100】
さらに、制御装置10は、Ln−L´≧0…(2−3)に基づき、自車両Aが信号待ち車列末尾Cend(将来、車列を形成する車列予備車両Bが車列の最後尾車両となる場合も含む)に到着するまで、予め設定された適切な減速度で車両が停止できるか否かを判定する。
【0101】
図7に示す例において、停止必要距離Lnは、Ln=116.1398≒116mと求めることができる。
【0102】
他方、自車両から停止すべき地点までの残り距離である第1距離L´を経時的に観察すると、以下のようになる。
【0103】
まず、自車両Aが第1路側装置2000の通信可能領域に進入してから1秒後の第1距離(L’1)は、L’1=L―lp―Lt―Ls=180−6−13.9−40=120.1mとなる。同様に、自車両Aが第1路側装置2000の通信可能領域に進入してから2秒後の第1距離(L’2)は、L’2=L―lp―Lt―Ls=180−6−27.8−40=106.2mとなる。
【0104】
つまり、自車両Aが第1路側装置2000の通信可能領域に進入してから1秒後においては、自車両の停止必要距離Lnよりも第1距離L´1が長いが、2秒後においては、自車両の停止必要距離Lnよりも第1距離L´2の方が短いため、自車両Aは停止すべき車列の末尾に到達するまでに、所定の減速度で減速し、停止することができない。
【0105】
ステップS1008において、制御装置10は、停止必要距離Ln≧第1距離L´であると判断した場合は、自車両Aは所定の減速度で停止できない可能性が高いと判断し、図4のステップS114へ進む。他方、制御装置10は、停止必要距離Ln≧第1距離L´でないと判断した場合は、自車両Aは所定の減速度で停止できる可能性が高いと判断し、観察を継続する。
【0106】
そして、図4のステップS114において、制御装置10は、ステップS111の判断後の所定の観察時間内に車両の減速情報、シフトダウン情報、ブレーキ操作情報、アクセル操作情報その他の減速を目的とする減速操作に係る車両情報が取得されなかった場合は、運転者の減速意思が無いと判断し、ステップS115へ進む。他方、ステップS111の判断後の所定の観察時間内に上記減速意思を示す車両情報が取得された場合は、運転者は減速しようとしていると判断し、注意を喚起する情報の出力を中止する。
【0107】
そして、ステップS115において、制御装置10は、車両の運転者が注意するべき注意対象を、停止地点Dに係る信号と、停止すべき発進待ち車列の最後尾車両であると特定する。この発進待ち車列の最後尾車両の位置は、先のタイミングでは車列を構成していなかった車列予備車両Bの車列長が考慮された正確な位置である。
【0108】
続くステップS118において、制御装置10は、信号と発進待ち車列の最後尾車両に対する注意を喚起するための情報を生成し、これを出力装置400に出力させる。本処理例によれば、所定の状況下において、自車両Aと車列予備車両Bと停止地点D又は発進待ち車列の末尾Cendとの位置関係に応じて、適切なタイミングで適切な内容の情報を提供することができる。
【0109】
第2に、発進待ち車列は形成されていないが、車列予備車両が存在する場合の処理を説明する。
【0110】
図4のステップS104に戻り、発進待ち車列は無いが、車列予備車両がある場合(ステップS105でYes)における、ステップS106〜S109の処理を説明する。
【0111】
ステップS105において、制御装置10は、車列予備車両があると判断された場合はステップS112へ進む。ステップS112における自車両と車列予備車両とが接近する可能性があるか否かの判断は、先に説明した図5のフローに従って行われる。
【0112】
図8は、車列予備車両Bから停止地点Dまでの距離が長い場合の処理例を示し、図9は車列予備車両Bから停止地点Dまでの距離が短い場合の処理例を示す。つまり、図8は、図5のステップS1003以降の処理例を説明するための図であり、図9は図5のステップS1006以降の処理例を説明するための図である。
【0113】
図8に示す例では、発進待ち車列は存在しないが、車列予備車両Bが存在する。また、自車両Aと車列予備車両Bが比較的接近し、車列予備車両Bから停止地点Dまでの距離が比較的長い状態における処理例である。
【0114】
本例では、次式群(3−1),(3−2)により予備車両到達時間Twと自車到達時間Taを算出する。
【0115】
制御装置10は、自車両Aから停止地点Dまでの自車到達時間Taを、Ta=L/Vnow…(3−1)により算出する。
【0116】
また、制御装置10は、車列予備車両Bから停止地点Dまでの予備車両到達時間Twを、Tw=(L―Lp)/Vp…(3−2)により算出する。
【0117】
ただし、L:第1路側装置2000から停止線上の停止地点Dまでの距離,Vnow:自車両Aの現在速度,Lp:第1路側装置2000から車列予備車両Bまでの距離,Vp:車列予備車両Bの現在速度とする。
【0118】
さらに、制御装置10は、Ta−Tw≦0…(3−3)に基づき、自車両Aが停止地点Dに到着するまでの自車到達時間Ta内に、自車両Aが車列予備車両Bに所定距離未満に接近する可能性があるか否かを判定する。
【0119】
図9に示す例において、自車両Aが停止地点Dに到達するまでの自車到達時間「Ta=L/Vnow」は、以下のように求められる。
【0120】
Ta=180(m)/50(Km/h)=12.96秒≒13秒
他方、車列予備車両Bが停止地点Dに到着するまでに要する予備車両到達時間「Tw=(L―Lp)/Vp」は、以下のように求められる。
【0121】
Tw=(180−40)/20(Km/h)=32.39秒≒32秒
以上のとおり、車列予備車両Bの予備車両到達時間Twは自車両Aの自車到達時間Taよりも長くなるため、自車両Aが停止地点Dに到達する前に、自車両Aと車列予備車両Bは所定距離未満の距離に接近してしまう。
【0122】
ステップS1004において、制御装置10が、予備車両到達時間Tw≧自車到達時間Taであると判断した場合は、ステップS1005へ進み、制御装置10は、自車両Aと車列予備車両Bとが接近する可能性が高いと判断し、さらに図4のステップS112へ進む。ステップS112以降の処理は、先に説明した処理と共通する。
【0123】
次に、ステップS1002に戻り、距離Kが所定値未満である場合の処理を説明する。距離Kが所定値未満である場合、ステップS1006へ進む。ステップS1006において、制御装置10は、自車両Aが接近する前に車列予備車両Bは停止地点Dに到達し、車列を形成する可能性が高いと判断する。
【0124】
さらに、制御装置10は、ステップS1007において、自車両Aが停止地点Dに到達するまでの第1距離L´を求めるとともに、自車両Aの車速を含む自車両情報に基づいて求められた車両が停止するまでに要する停止必要距離Lnを算出し、第1距離L´と停止必要距離Lnを比較する。
【0125】
図9に基づいて、具体的な処理例を説明する。図9に示す例は、発進待ち車列Cが存在しないが、車列予備車両Bが存在する場合の例である。また、自車両Aと車列予備車両Bが比較的離隔し、車列予備車両Bから停止地点Ddまでの距離が比較的短い状態における処理例である。
【0126】
本例では、次式群(4−1),(4−2)により第1距離L´と停止必要距離Lnを算出する。
【0127】
制御装置10は、自車両から停止すべき地点までの残り距離である第1距離L´を、L’ = L − lp ― Lt…(4−1)により算出する。
【0128】
ただし、L:第1路側装置2000から停止地点Cまでの距離,lp:車列予備車両Bの車両長,Lt:第1路側装置2000からt秒後の走行距離(≒Vnow ×t)とする。
【0129】
また、制御装置10は、停止必要距離Lnを、上述した式2−2と共通の式Ln=Vnow ×(Tp+Td)+(Vnow)2 / 2D…(4−2)により算出する。
【0130】
さらに、制御装置10は、Ln−L´≧0…(4−3)に基づき、自車両Aが停止地点Dに到着するまで、予め設定された適切な減速度で車両が停止できるか否かを判定する。
【0131】
図9に示す例において、停止必要距離Lnは、Ln=116.1398≒116mである。
【0132】
他方、自車両から停止地点Dまでの残り距離である第1距離L´を経時的に観察すると、以下のようになる。
【0133】
まず、自車両Aが第1路側装置2000の通信可能領域に進入してから1秒後の第1距離(L’1)は、L’1=L―lp―Lt=180−6−13.9=160.1mとなる。同様に、自車両Aが第1路側装置2000の通信可能領域に進入してから2秒後の第2距離(L’2)は、L’2=L―lp―Lt=180−6−27.8=146.2mとなる。また、自車両Aが第1路側装置2000の通信可能領域に進入してから3秒後の第3距離(L’3)は、L’3=L―lp―Lt=180−6−41.7=132.3mとなる。また、自車両Aが第1路側装置2000の通信可能領域に進入してから4秒後の第4距離(L’4)は、L’4=L―lp―Lt=180−6−55.6=118.4mとなる。また、自車両Aが第1路側装置2000の通信可能領域に進入してから5秒後の第5距離(L’5)は、L’5=L−lp―Lt=180−6−69.4=104.6mとなる。
【0134】
つまり、自車両Aが第1路側装置2000の通信可能領域に進入してから5秒後においては、自車両の停止必要距離Lnよりも第1距離L´5の方が短いため、制御装置10は、自車両Aは停止地点Dに到達するまでに、所定の減速度で減速し、停止することができないと判断する。
【0135】
ステップS1008において、制御装置10は、停止必要距離Ln≧第1距離L´であると判断した場合は、自車両Aは所定の減速度で停止できない可能性が高いと判断し、図4のステップS114へ進む。他方、制御装置10は、停止必要距離Ln≧第1距離L´でないと判断した場合は、自車両Aは所定の減速度で停止できる可能性が高いと判断し、観察を継続する。ステップS114以降の処理は、先に説明した処理と共通する。
【0136】
第3に、発進待ち車列が存在せず、車列予備車両も存在しない場合の処理を説明する。
【0137】
図4のステップS104に戻り、発進待ち車列が無く、車列予備車両も無い場合(ステップS105でNo)における、ステップS106以降の処理を説明する。図10は、発進待ち車列が無く、車列予備車両も無い場合の処理例を説明するための図である。
【0138】
本例では、次式群(5−1),(5−2)により自車両Aが停止地点Dに到達するまでの残り距離である距離Lrを求めるとともに、自車両Aの車速を含む自車両情報に基づいて求められた車両が停止するまでに要する停止必要距離Lnを算出し、距離Lrと停止必要距離Lnを比較する。
【0139】
自車両Aが停止するのに必要な距離(Ln)は、式5−1により算出できる。 Ln = Vnow ×(Tp+Td)+Vnow2 /(2D)・・・(5−1)
ただし、Vnow:自車両Aの現在速度,Tp:車載装置の処理時間(=0.3s),Td:運転者反応時間(=0.3s),D:減速度(=0.3G)である。
【0140】
また、自車両Aが停止地点Dに到達するまでの残り距離Lrは、式5−2により算出できる。
【0141】
Lr = L − Lt…(5−2)
ただし、L:第1路側装置2000から停止地点Dまでの距離,Lt:第1路側装置2000からt秒後の走行距離(≒Vnow ×t)である。
【0142】
図10に示す例において、停止必要距離Lnは、Ln=116.1398≒116mである。
【0143】
他方、自車両から停止地点Dまでの残り距離である距離Lrを経時的に観察すると、以下のようになる。
【0144】
まず、自車両Aが第1路側装置2000の通信可能領域に進入してから1秒後の距離(Lr1)は、Lr1=L―Lt=180−13.9=166.1mとなる。同様に、自車両Aが第1路側装置2000の通信可能領域に進入してから2秒後の距離(Lr2)は、Lr2=L―Lt=180−27.8=152.2mとなる。また、自車両Aが第1路側装置2000の通信可能領域に進入してから3秒後の距離(Lr3)は、Lr3=L―Lt=180−41.7=138.3mとなる。また、自車両Aが第1路側装置2000の通信可能領域に進入してから4秒後の距離(Lr4)は、Lr4=L―Lt=180−55.6=124.4mとなる。また、自車両Aが第1路側装置2000の通信可能領域に進入してから5秒後の距離(Lr5)は、L5=L−Lt=180−69.4=110.6mとなる。
【0145】
つまり、自車両Aが第1路側装置2000の通信可能領域に進入してから5秒後においては、自車両の停止必要距離Lnよりも距離Lr5の方が短いため、制御装置10は、自車両Aは停止地点Dに到達するまでに、所定の減速度で減速し、停止することができないと判断する。
【0146】
ステップS106において、制御装置10は、停止必要距離Ln≧距離Lrであると判断した場合は、自車両Aは所定の減速度で停止できない可能性が高いと判断し、図4のステップS107へ進む。他方、制御装置10は、停止必要距離Ln≧距離Lrでないと判断した場合は、自車両Aは所定の減速度で停止できる可能性が高いと判断し、ステップS101へ戻り、観察を継続する。
【0147】
そして、ステップS107において、制御装置10は、ステップS106の判断後の所定の観察時間内に車両の減速情報、シフトダウン情報、ブレーキ操作情報、アクセル操作情報その他の減速を目的とする減速操作に係る車両情報が取得されなかった場合は、運転者の減速意思が無いと判断し、ステップS108へ進む。他方、ステップS106の判断後の所定の観察時間内に上記減速意思を示す車両情報が取得された場合は、運転者は減速しようとしていると判断し、注意を喚起する情報の出力を中止する。
【0148】
そして、ステップS108において、制御装置10は、車両の運転者が注意するべき注意対象を、信号と特定する。
【0149】
続くステップS118において、制御装置10は、信号に対する注意を喚起するための情報を生成し、これを出力装置400に出力させる。
【0150】
制御装置10は、停止必要距離Ln≧距離Lrであると判断したタイミングで注意対象に関する情報を出力するので、適切なタイミングで運転者に注意を促すことができる。
【0151】
最後に、発進待ち車列は存在するが、車列予備車両が存在しない場合の処理を説明する。
【0152】
図4のステップS104に戻り、発進待ち車列はあるが、車列予備車両が無い場合(ステップS110でNo)における、ステップS121以降の処理を説明する。図11は、発進待ち車列はあるが、車列予備車両が無い場合の処理例を説明するための図である。
【0153】
本例では、次式群(6−1),(6−2)により自車両Aが停止地点Dに到達するまでの残り距離である距離Lr´を求めるとともに、自車両Aの車速を含む自車両情報に基づいて求められた車両が停止するまでに要する停止必要距離Lnを算出し、距離Lr´と停止必要距離Lnを比較する。
【0154】
自車両Aが停止するのに必要な距離(Ln)は、式5−1により算出できる。 Ln = Vnow ×(Tp+Td)+Vnow2 /(2D)・・・(6−1)
ただし、Vnow:自車両Aの現在速度,Tp:車載装置の処理時間(=0.3s),Td:運転者反応時間(=0.3s),D:減速度(=0.3G)である。
【0155】
また、自車両Aが停止地点Dに到達するまでの残り距離Lr´は、式6−2により算出できる。
【0156】
Lr´ = L ―Ls− Lt…(6−2)
ただし、L:第1路側装置2000から停止地点Dまでの距離,Lt:第1路側装置2000からt秒後の走行距離(≒Vnow ×t),Ls:発進待ち行列長,Lt:第1路側装置2000からt秒後の走行距離(≒Vnow ×t)である。
【0157】
図11に示す例において、停止必要距離Lnは、Ln=116.1398≒116mである。
【0158】
他方、自車両から停止地点Dまでの残り距離である距離Lr´を経時的に観察すると、以下のようになる。
【0159】
まず、自車両Aが第1路側装置2000の通信可能領域に進入してから1秒後の距離(Lr´1)は、Lr1´=L―Ls―Lt=180−40−13.9=126.1mとなる。同様に、自車両Aが第1路側装置2000の通信可能領域に進入してから2秒後の距離(Lr´2)は、Lr2´=L―Ls―Lt=180−40−27.8=112.2mとなる。
【0160】
つまり、自車両Aが第1路側装置2000の通信可能領域に進入してから2秒後においては、自車両の停止必要距離Lnよりも距離Lr´2の方が短いため、制御装置10は、自車両Aは停止地点Dに到達するまでに、所定の減速度で減速し、停止することができないと判断する。
【0161】
ステップS121において、制御装置10は、停止必要距離Ln≧距離Lr´であると判断した場合は、自車両Aは所定の減速度で停止できない可能性が高いと判断し、図4のステップS122へ進む。他方、制御装置10は、停止必要距離Ln≧距離Lr´でないと判断した場合は、自車両Aは所定の減速度で停止できる可能性が高いと判断し、ステップS101へ戻り、観察を継続する。
【0162】
そして、ステップS122において、制御装置10は、ステップS121の判断後の所定の観察時間内に車両の減速情報、シフトダウン情報、ブレーキ操作情報、アクセル操作情報その他の減速を目的とする減速操作に係る車両情報が取得されなかった場合は、運転者の減速意思が無いと判断し、ステップS123へ進む。他方、ステップS121の判断後の所定の観察時間内に上記減速意思を示す車両情報が取得された場合は、運転者は減速しようとしていると判断し、注意を喚起する情報の出力を中止する。
【0163】
そして、ステップS123において、制御装置10は、車両の運転者が注意するべき注意対象を、信号と発進待ち車列の最後尾の車両と特定する。
【0164】
続くステップS118において、制御装置10は、信号に対する注意を喚起するための情報を生成し、これを出力装置400に出力させる。
【0165】
制御装置10は、停止必要距離Ln≧距離Lr´であると判断したタイミングで注意対象に関する情報を出力するので、適切なタイミングで運転者に注意を促すことができる。
【0166】
本実施形態は、以上のように構成され、動作するので以下の効果を奏する。
【0167】
本実施形態の情報提供システム100によれば、交差点等において、未だ停止しておらず、将来、車列を形成する車列の予備車両が存在する場合であっても、注意すべき対象を予測し、適切な情報を提供することができる。
【0168】
すなわち、本発明の実施の形態は、道路に設置された路側装置から取得された情報に基づいて予測された、将来において発進待ち車列を形成する車列予備車両の存在に応じて、車両の運転者が注意するべき対象を特定し、特定された注意対象に関する情報を出力するので、車両が注意すべき注意対象を正確に特定することができ、車両の運転者に適切な情報を提供することができる。つまり、刻々に変化する車列予備車両の存在に応じて、適切な注意対象に関する情報を提供することができる。
【0169】
ちなみに、カメラの撮像画像に基づいて、発進待ち車列の車列長及び発進待ち車列の末尾の位置を計測することが行われているが、刻々に変化する発進待ち車列の車列長及び発進待ち車列の末尾の位置を正確に計測するためには、精度の高い画像を取得しなければならない。道路の各計測場所に精度の高いカメラを設置する場合は、そのコストが問題となる。本実施形態の情報提供システム100によれば、既存の設備によって、刻々に変化する車列予備車両の存在に応じて、適切な注意対象に関する情報を提供することができる。
【0170】
また、本実施形態の情報提供システム100によれば、第1情報と第2情報に基づいて予測される、将来において発進待ち車列を形成する先行他車両のうち自車両の直前を走行する車列予備車両と、自車両と、停止地点又は停止地点を先頭に形成された発進待ち車列の最後尾との位置関係に基づいて、停止地点、停止地点において形成された発進待ち車列の最後尾車両、又は車列予備車両のいずれか一以上を車両の注意対象として特定するので、刻々に変化する車列予備車両の位置に応じて、適切な注意対象に関する情報を提供することができる。
【0171】
また、本実施形態の情報提供システム100によれば、第1情報と第2情報に基づいて、車列予備車両が停止地点又は停止地点において形成された車列の末尾に到達するまでの予備車両到達時間を求めるとともに、自車両が停止地点又は停止地点において形成された車列の末尾に到達するまでの自車到達時間を求め、予備車両到達時間が自車到達時間以上であるとき、車列予備車両を自車両の注意対象として特定するので、自車両が停止地点又は停止地点において形成された車列の末尾に到達するまでに、車列予備車両に追いつき又は追い越してしまうことが予測される場合は、車列予備車両を自車両の注意対象として特定するため、刻々に変化する車列予備車両の位置に応じて、適切な注意対象に関する情報を提供することができる。
【0172】
また、本実施形態の情報提供システム100によれば、第1路側装置の設置位置から停止地点又は停止地点において形成された車列の末尾までの距離を、第1情報に含まれる車列予備車両の車速で除して予備車両到達時間を求めるとともに、第1路側装置から停止地点又は停止地点において形成された車列の末尾までの距離を、車両から取得される自車両の車速で除して自車到達時間を求めるため、他車両の実際の挙動及び自車両の実際の挙動に応じて、刻々に変化する車列予備車両の位置に応じた適切な注意対象に関する情報を提供することができる。
【0173】
また、本実施形態の情報提供システム100によれば、第1情報と第2情報に基づいて算出された、車列予備車両から停止地点又は停止地点において形成された車列の末尾までの距離が所定値以上である場合は、車列予備車両が停止地点又は車列の末尾に到達するまでの予備車両到達時間と、自車両が停止地点又は車列の末尾に到達するまでの自車到達時間を求め、予備車両到達時間が自車到達時間以上であるとき、車列予備車両を車両の注意対象として特定するため、他車両の実際の挙動及び自車両の実際の挙動に応じた適切な注意対象に関する情報を提供することができる。
【0174】
すなわち、車列予備車両が停止すべき地点から離れた位置を走行する場合は、車列予備車両が車列最後尾に到達するまでに時間がかかると予測されるため、自車両が車列予備車両に追いつく可能性が高いと予測できる。このため本実施形態の制御装置10は、停止すべき地点から離れた位置を走行する車列予備車両と自車両との位置関係に着目して、その位置関係に応じて車列予備車両を車両の注意対象として特定する。これにより、状況に応じた適切な注意対象を迅速に特定することができ、適切なタイミングで注意対象に関する情報を出力することができる。
【0175】
また、本実施形態の情報提供システム100によれば、第1情報と第2情報に基づいて算出された、車列予備車両から停止地点又は停止地点において形成された車列の末尾までの距離が所定値未満である場合は、車両が停止地点又は車列の最後尾に連なる車列予備車両に到達するまでの第1距離を求め、この第1距離が自車両の停止に要する停止必要距離未満であるとき、停止地点又は発進待ち車列の最後尾車両を車両の注意対象として特定するため、他車両の実際の挙動及び自車両の実際の挙動に応じた適切な注意対象に関する情報を提供することができる。
【0176】
すなわち、車列予備車両が停止すべき地点に近い位置を走行する場合は、車列予備車両が車列最後尾に到達するまでに時間がかからないと予測されるため、自車両が車列予備車両に追いつく前に車列に組み込まれる(車列の最後尾に停止する)可能性が高いと予測できる。このため、本実施形態の制御装置10は、車列予備車両が車列に組み込まれることを見越して、自車両から停止地点又は車列の末尾までの距離と、自車両が適切な減速度で停止するまでに要する停止必要距離Lnとの大小関係に注目して、その大小関係に応じて停止位置又は車列の最後尾を自車両の注意対象として特定する。これにより、状況に応じた適切な注意対象を迅速に特定することができ、適切なタイミングで注意対象に関する情報を出力することができる。
【0177】
また、本実施形態の情報提供システム100は、停止必要距離LnをLn=Vnow ×(Tp+Td)+(Vnow)2 / 2Dにより算出するので、自車両の車速、制御装置の処理時間、運転者の反応時間を考慮して、適切な減速度で減速できるか否かを判断することができる。
【0178】
さらに、所定の観察時間以内に、車両の減速情報、シフトダウン情報、ブレーキ操作情報、アクセル操作情報その他の減速を目的とする減速操作に係る車両情報が取得されなかった場合は、特定された注意対象に関する情報を出力させるため、運転者の減速意思を確認してから情報を出力させることができる。これにより、運転者に、提示される情報を煩わしいと感じさせないようにすることができ、情報に対する運転者の信頼度を高めることができる。
【0179】
このように、本実施形態の情報提供システム100によれば、刻々と変化する自車両の挙動及び他車両の挙動に応じて情報を提示することが可能となるため、状況に応じた適切な注意対象を、適切なタイミングで注意対象に関する情報を出力することができる。提供する情報に対する運転者の信頼度を向上させることができる。
【0180】
なお、以上説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするために記載されたものであって、本発明を限定するために記載されたものではない。したがって、上記の実施形態に開示された各要素は、本発明の技術的範囲に属する全ての設計変更や均等物をも含む趣旨である。
【0181】
すなわち、本明細書では、本発明に係る情報提供装置の一態様として情報提供システム100と、車両コントローラ200と、車載センサ300と、出力装置400と、走行支援装置500を含む車載装置1000を例にして説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0182】
また、本明細書では、第1情報取得手段と、第2情報取得手段と、注意対象特定手段と、出力制御手段とを備える情報提供装置の一態様として、第1情報取得機能と、第2情報取得機能と、注意対象特定機能と、出力制御機能とを実行する制御装置10を備える情報提供システム100を説明するが、これに限定されるものではない。
【0183】
また、本明細書では、第1路側装置の一態様として、通信装置201と、判定ユニット2020と、データベース2030と、移動体センサ2040と、信号管理情報センタ2050とを備える第1路側装置2000を説明するが、これに限定されるものではない。
【0184】
さらに、本明細書では、第2路側装置の一態様として、通信装置3010と、判定ユニット3020と、移動体センサ3040とを備える第2路側装置3000を説明するが、これに限定されるものではない。
【符号の説明】
【0185】
1000…車載装置
100…情報提供システム
10…制御装置
11…CPU
12…ROM
13…RAM
20…車両側通信装置
200…車両コントローラ
300…車載センサ
301…車速センサ
302…ブレーキセンサ
303…アクセルセンサ
304…シフトポジションセンサ
400…出力装置
401…スピーカ
402…ディスプレイ
500…走行支援装置
2000…第1路側装置
2010…通信装置
2011…光ビーコン
2012…無線通信機能
2020…判定ユニット
2030…データベース
2031…道路情報
2032…設置位置
2033…通信可能領域情報
2040…移動体センサ
2041…カメラ
2050…信号管理情報センサ
3000…第2路側装置
3010…通信装置
3012…無線通信機能
3020…判定ユニット
3040…移動体センサ
3041…カメラ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載され、道路に設置された第1路側装置及び第2路側装置と情報の送受信を行う機能を備えた情報提供装置であって、
前記第1路側装置から、当該第1路側装置とその下流側に存在する停止地点までの距離と、前記第1路側装置により検知された前記車両の前方を走行する他車両の他車両情報とを含む第1情報を取得する第1情報取得手段と、
前記第2路側装置から、前記停止地点を先頭に形成された発進待ち車列の車列長を含む第2情報を取得する第2情報取得手段と、
前記第1情報と前記第2情報に基づいて予測される、将来において前記発進待ち車列を形成する車列予備車両の存在に応じて、前記車両が注意すべき注意対象を特定する注意対象特定手段と、
前記特定された注意対象に関する情報を生成し、出力させる出力制御手段と、を有する情報提供装置。
【請求項2】
請求項1に記載の情報提供装置において、
前記注意対象特定手段は、前記第1情報と前記第2情報に基づいて予測される、将来において前記発進待ち車列を形成する車列予備車両と、前記車両と、前記停止地点又は停止地点を先頭に形成された発進待ち車列の最後尾との位置関係に基づいて、前記停止地点、前記停止地点において形成された発進待ち車列の最後尾車両、又は前記車列予備車両のいずれか一以上を前記車両の注意対象として特定する情報提供装置。
【請求項3】
請求項2に記載の情報提供装置において、
前記注意対象特定手段は、前記第1情報と前記第2情報に基づいて、前記車列予備車両が前記停止地点又は前記停止地点において形成された車列の末尾に到達するまでの予備車両到達時間を求めるとともに、前記車両が前記停止地点又は前記停止地点において形成された車列の末尾に到達するまでの自車到達時間を求め、前記予備車両到達時間が前記自車到達時間以上であるとき、前記車列予備車両を前記車両の注意対象として特定する情報提供装置。
【請求項4】
請求項3に記載の情報提供装置において、
前記注意対象特定手段は、前記第1路側装置の設置位置から前記停止地点又は前記停止地点において形成された車列の末尾までの距離を、前記第1情報に含まれる前記車列予備車両の車速で除して前記予備車両到達時間を求めるとともに、前記第1路側装置の設置位置から前記停止地点又は前記停止地点において形成された車列の末尾までの距離を、前記車両から取得される自車両の車速で除して前記自車到達時間を求める情報提供装置。
【請求項5】
請求項2に記載の情報提供装置において、
前記注意対象特定手段は、前記第1情報と前記第2情報に基づいて算出された、前記車列予備車両から前記停止地点又は前記停止地点において形成された車列の末尾までの距離が所定値以上である場合は、
前記第1情報と前記第2情報に基づいて、前記車列予備車両が前記停止地点又は前記停止地点において形成された車列の末尾に到達するまでの予備車両到達時間を求めるとともに、前記車両が前記停止地点又は前記停止地点において形成された車列の末尾に到達するまでの自車到達時間を求め、前記予備車両到達時間が前記自車到達時間以上であるとき、前記車列予備車両を前記車両の注意対象として特定する情報提供装置。
【請求項6】
請求項2又は5に記載の情報提供装置において、
前記注意対象特定手段は、前記第1情報と前記第2情報に基づいて算出された、前記車列予備車両から前記停止地点又は前記停止地点において形成された車列の末尾までの距離が所定値未満である場合は、
前記第1情報と前記第2情報に基づいて、前記車両が前記停止地点又は前記停止地点において形成された車列の最後尾に連なる前記車列予備車両に到達するまでの第1距離を求め、前記第1距離が前記車両の車速を含む自車両情報に基づいて求められた前記車両が停止するまでに要する停止必要距離未満であるとき、前記停止地点又は前記発進待ち車列の最後尾車両を前記車両の注意対象として特定する情報提供装置。
【請求項7】
請求項6に記載の情報提供装置において、
前記注意対象特定手段は、前記停止必要距離Lnを次式(1)により算出する情報提供装置。
Ln=Vnow ×(Tp+Td)+(Vnow)2 / 2D ・・・(1)
ただし、“Vnow”は現在の車速、“Tp”は予め定義された制御装置の処理時間、“Td”は予め定義された運転者反応時間、“D”は予め設定された減速度である。
【請求項8】
請求項1〜7の何れか一項に記載の情報提供装置において、
前記出力制御手段は、所定の観察時間以内に、前記車両の減速情報、シフトダウン情報、ブレーキ操作情報、アクセル操作情報その他の減速を目的とする減速操作に係る車両情報が取得されなかった場合は、前記特定された注意対象に関する情報を出力させる情報提供装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate