説明

車両用の操作ノブ

【課題】簡単な構造で、かつ操作ノブ自体によって車両衝突時の衝撃吸収機能を実現することができる車両用の操作ノブを提供すること。
【解決手段】車両の操作ノブ1は、操作部3に車両衝突時の所定値以上の荷重が加わったときには、弾性変形爪23Aの弾性変形により係止穴部321に対する突起231Aの係止状態が外れ、ベース部2に対する操作部3の取付状態が外れることにより、操作部3がベース部2に対して所定量押し込まれた位置で停止して、インストルメントパネルに対する操作部3の突出量を減少させた衝突状態に変化する。操作ノブ1は、弾性変形爪23Aを弾性変形させながら操作部3をベース部2から引き出すことによって、通常状態に復帰させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両のインストルメントパネルにおいて手動操作可能に設けた操作ノブに関する。
【背景技術】
【0002】
車両のインストルメントパネルには、温調用のコントローラ(ヒータコントローラ)、オーディオのコントローラ等が設けてあり、これらの操作ノブは、車両の後方に向けて所定量突出している。そして、車両衝突時に、乗員が操作ノブに衝突したときには(現行は約38daNの荷重が加わったときには)、乗員を保護するために、操作ノブの突出量を所定の突出量(現行は9.5mm)以下に変化させる必要があることが規格により定められている。
【0003】
例えば、特許文献1の衝撃吸収装置を有する車両のモードスイッチ組立体においては、車両の室内センターフェーシアパネルから突設させたノブを、弾性部材を介してスイッチのシャフトに取り付けている。そして、車両衝突時に、ノブに一定以上の衝撃又は定荷重が加えられたときには、その衝撃によって、ノブが弾性部材及び周辺の弾性支持部を弾性変形させながらシャフトに沿って移動し、乗員に加えられる衝撃を緩和している。また、ノブに加わる衝撃が除去されたときには、弾性部材及び弾性支持部の弾性変形が復帰することにより、容易に元の状態に戻ることができる。
【0004】
また、例えば、特許文献2の車両用コントロールパネルにおいては、コントロールユニットを操作する操作ノブの裏面側に配置した絵表示板を、パネル本体の裏面側から取り付け、絵表示板とパネル本体との間の接合箇所を、所定強度以上の外力を受けた場合に接合状態を解くスピードナットで取り付けている。そして、操作ノブに衝撃力が加わったときには、コントロールユニットの固定部分が破壊され、スピードナットが突起から外れて、操作ノブをパネル本体の裏面側に向けて引っ込めることができる。これにより、車室内から衝突力を受けた後の車両用コントロールパネルの表面に、割れたパネルのエッジが残ることを防ぎ、操作ノブが突起物として残るのを防いでいる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−11744号公報
【特許文献2】特開2004−216983号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1においては、ノブ及びノブを支持する部位に設けた弾性支持部をゴム材等から構成する必要があり、その成形が複雑になる。また、特許文献1においては、ノブだけでなく、その周辺の弾性支持部をも利用して、車両衝突時にノブの突出量を減少させる構造を採用している。また、特許文献2においても、コントロールユニットの固定部分の破壊を利用して、車両衝突時にノブの突出量を減少させる構造を採用している。そのため、ノブ(操作ノブ)の突出量をより簡単な構造で減少させるためには十分ではない。
【0007】
本発明は、かかる従来の問題点に鑑みてなされたもので、簡単な構造で、かつ操作ノブ自体によって車両衝突時の衝撃吸収機能を実現することができる車両用の操作ノブを提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、車両のインストルメントパネルにおいて、機能部品のコントローラにおける入力部を手動操作可能にする操作ノブであって、
該操作ノブは、上記入力部に取り付けたベース部と、該ベース部に取り付けた操作部とからなり、
上記ベース部と上記操作部とのいずれか一方における一方側取付部には、突起を先端部分に設けて弾性変形可能に構成した弾性変形爪が形成してあり、上記ベース部と上記操作部との他方における他方側取付部には、上記突起が係止される凹部又は穴部が形成してあり、
通常状態においては、上記突起が上記凹部又は穴部に係止されて、上記操作部が上記ベース部に取り付けられており、
上記操作部に車両衝突時の所定値以上の荷重が加わったときには、上記弾性変形爪の弾性変形により上記凹部又は穴部に対する上記突起の係止状態が外れ、上記ベース部に対する上記操作部の取付状態が外れることにより、上記操作部が上記ベース部に対して所定量押し込まれた位置で停止して、上記インストルメントパネルに対する上記操作部の突出量を減少させた衝突状態に変化するよう構成したことを特徴とする車両用の操作ノブにある(請求項1)。
【発明の効果】
【0009】
本発明の車両用の操作ノブは、ベース部と操作部との2部品から構成し、簡単な構造で、かつ操作ノブ自体によって車両衝突時の衝撃吸収機能を実現することができるものである。
本発明の操作ノブにおいては、ベース部と操作部とのいずれか一方における一方側取付部に弾性変形爪を形成し、ベース部と操作部との他方における他方側取付部に凹部又は穴部を形成している。そして、通常状態においては、突起が凹部又は穴部に係止されて、操作部がベース部に取り付けられている。これにより、車両の乗員は、操作部を手動操作することによって、ベース部を介して機能部品のコントローラにおける入力部を操作することができる。
【0010】
一方、車両衝突時に、乗員等によって操作部に所定値以上の荷重(衝撃荷重)が加わったときには、弾性変形爪の弾性変形により凹部又は穴部に対する突起の係止状態が外れ、ベース部に対する操作部の取付状態が外れる。これにより、操作ノブが衝突状態に変化し、操作部がベース部に対して所定量押し込まれた位置で停止して、インストルメントパネルに対する操作部の突出量を減少させることができる。
そのため、車両衝突時において、操作部(操作ノブ)の突出量を減少させることができる構造(衝撃吸収機能)を、ベース部と操作部との2部品を用いた簡単な構造により、容易に実現することができる。そして、操作ノブに衝突した乗員を保護することができる。
【0011】
それ故、本発明の車両用の操作ノブによれば、簡単な構造で、かつ操作ノブ自体によって車両衝突時の衝撃吸収機能を実現することができる。
また、本発明においては、操作部の突出量を減少させる際に、操作ノブ又はその周辺の部品を破壊することがない。これにより、車両衝突時に操作部の突出量が減少した後において、弾性変形爪を弾性変形させながら操作部をベース部から引き出すことによって、操作ノブを元の通常状態に容易に復帰させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】実施例における、ベース部と操作部とに分解した状態の操作ノブを示す斜視図。
【図2】実施例における、操作ノブを配設したインストルメントパネルの周辺を示す斜視図。
【図3】実施例における、操作ノブの通常状態において、抜け防止弾性変形爪の形成位置における断面であって、図1におけるA−A線矢視に相当する断面図。
【図4】実施例における、操作ノブの通常状態において、押込み規制弾性変形爪の形成位置における断面であって、図1におけるB−B線矢視に相当する断面図。
【図5】実施例における、操作ノブの衝突状態において、抜け防止弾性変形爪の形成位置における断面であって、図1におけるA−A線矢視に相当する断面図。
【図6】実施例における、操作ノブの衝突状態において、押込み規制弾性変形爪の形成位置における断面であって、図1におけるB−B線矢視に相当する断面図。
【図7】実施例における、ベース部に操作部が取り付けられた状態を示す図で、図3におけるC−C線矢視に相当する断面図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
上述した本発明の車両用の操作ノブにおける好ましい実施の形態につき説明する。
本発明において、上記車両用の操作ノブは、上記弾性変形爪を弾性変形させながら上記操作部を上記ベース部から引き出すことによって、上記通常状態に復帰させることができるよう構成することが好ましい(請求項2)。
この場合には、車両衝突時の衝撃荷重が加わって操作部の突出量が減少した後に、部品交換をすることなく元の通常状態に容易に復帰させることができ、操作ノブを繰り返し使用することができる。
【0014】
また、上記操作ノブは、上記入力部を手動で回動操作するためのダイヤル式操作ノブとすることができる(請求項3)。
この場合には、例えば、空調機器、オーディオ、カーナビゲーション等に設けたダイヤル式操作ノブについて、上述した優れた作用効果を奏する操作ノブを実現することができる。
【0015】
また、上記機能部品は空調機器であり、該空調機器用のコントローラは、複数個が並んで一体化してあり、上記操作ノブは、上記一体化した空調機器用のコントローラにおける各入力部の手動操作が可能であることが好ましい(請求項4)。
本発明の操作ノブによれば、コントローラ側の部品を破壊することなく、上記操作部の突出量を減少させることができるため、空調機器用のコントローラを一体化することができる。これにより、空調機器用のコントローラがインストルメントパネルにおいて占めるスペースを容易に縮小することができ、空調機器用のコントローラの取付部分のコストダウンを図ることができる。
【0016】
また、上記一方側取付部に設けた上記弾性変形爪は、上記通常状態において上記突起を上記他方側取付部に設けた上記凹部又は穴部に嵌め込んだ抜け防止弾性変形爪と、上記通常状態において上記突起を上記他方側取付部の端面に当接させた押込み規制弾性変形爪とからなり、上記通常状態においては、上記操作部を引き出そうとすると上記抜け防止弾性変形爪における上記突起が上記凹部又は穴部に係止され、上記操作部を所定値未満の荷重で押し込もうとすると上記押込み規制弾性変形爪における上記突起が上記他方側取付部の端面に係止されるよう構成してあり、上記衝突状態においては、上記抜け防止弾性変形爪における上記突起の係止状態、及び上記押込み規制弾性変形爪における上記突起の係止状態が解除されて、上記操作部が上記ベース部に対して所定量押し込まれた位置で停止するよう構成してあることが好ましい(請求項5)。
この場合には、ベース部における一方側取付部と操作部における他方側取付部との取付構造が適切であり、ベース部と操作部との2部品を用いた上記優れた作用効果を奏する操作ノブを容易に実現することができる。
【実施例】
【0017】
以下に、本発明の車両用の操作ノブにかかる実施例につき、図面を参照して説明する。
本例の車両用の操作ノブ1は、図1〜図4に示すごとく、車両のインストルメントパネル5において、機能部品のコントローラ4における入力部41を手動操作可能にするものである。
操作ノブ1は、コントローラ4における入力部41に取り付けたベース部2と、ベース部2に取り付けた操作部3とからなる。ベース部2における一方側取付部22には、突起231A、231Bを先端部分に設けて弾性変形可能に構成した弾性変形爪23A、23Bが形成してある。操作部3における他方側取付部32には、突起231Aが係止される係止穴部321が形成してある。
【0018】
操作ノブ1は、図3、図4に示すごとく、通常状態Aにおいては、突起231Aが係止穴部321に係止されて、操作部3がベース部2に取り付けられている。また、操作ノブ1は、図5、図6に示すごとく、操作部3に車両衝突時の所定値以上の荷重が加わったときには、弾性変形爪23Aの弾性変形により係止穴部321に対する突起231Aの係止状態が外れ、ベース部2に対する操作部3の取付状態が外れることにより、操作部3がベース部2に対して所定量押し込まれた位置で停止して、インストルメントパネル5に対する操作部3の突出量aを減少させた衝突状態Bに変化するよう構成してある。さらに、操作ノブ1は、弾性変形爪23A、23Bを弾性変形させながら操作部3をベース部2から引き出すことによって、通常状態Aに復帰させることができるよう構成してある。
【0019】
以下に、本例の車両用の操作ノブ1につき、図1〜図7を参照して詳説する。
図2に示すごとく、本例の車両用の操作ノブ1は、コントローラ4における入力部41を手動で回動操作するためのダイヤル式操作ノブである。本例の機能部品は空調機器であり、本例のコントローラ4は、空調機器用の温度調整コントローラ(送風空気の温度の調整を行うもの)、ブロアコントローラ(送風量の調整を行うもの)、モードコントローラ(フェイス、デフロスタ、足元等への送風の切換を行うもの)であり、これら3つのコントローラ4は、横に並ぶ状態で一体化してある。同図において、温度調整コントローラ、ブロアコントローラ、モードコントローラの各入力部41に取り付けた操作ノブ1を、それぞれ1A、1B、1Cで示す。
【0020】
図3に示すごとく、コントローラ4の入力部41は、回動操作可能な軸部として設けてあり、軸部には中空穴411が形成してある。
ベース部2は、その一方側取付部22に対して、コントローラ4の入力部(軸部)41における中空穴411に嵌め込む嵌入部21を連結して形成してなる。嵌入部21は、入力部41に対する回り止めを行うために、四角断面形状に形成してある。また、嵌入部21には突起を設けた弾性変形爪211が形成してあり、この弾性変形爪211の突起は、入力部41に設けた穴部412に嵌まり込んで係止されている。
【0021】
本例の操作ノブ1においては、ベース部2の一方側取付部22に設けた弾性変形爪23A、23Bは、図3に示すごとく、通常状態Aにおいて突起231Aを操作部3の他方側取付部32に設けた係止穴部321に嵌め込んだ抜け防止弾性変形爪23Aと、図4に示すごとく、通常状態Aにおいて突起231Bを操作部3の他方側取付部32の端面(本例では切欠部322の底面)に当接させた押込み規制弾性変形爪23Bとからなる。
【0022】
図1に示すごとく、抜け防止弾性変形爪23Aは、一方側取付部22の周方向(ベース部2と操作部3とが取り付けられる軸方向の回り)において互いに対向する箇所(本例では2箇所)に形成してある。また、押込み規制弾性変形爪23Bは、一方側取付部22の周方向において抜け防止弾性変形爪23Aの形成箇所を除く互いに対向する箇所(本例では2箇所)に形成してある。なお、図3において、軸方向を矢印Lで示す。
各弾性変形爪23A、23Bは、筒形状に形成した一方側取付部22に対し、周方向に所定間隔を空けて一対に設けたスリット230によって、片持ち状態(基端部が一方側取付部22に連結された状態)で形成してある。そして、突起231A、231Bは、各弾性変形爪23A、23Bの先端部において、径方向外方に突出して設けてある。
【0023】
操作部3は、カップ形状に形成した本体部31の正面板部の裏面側から、他方側取付部32を突出形成してなる。
操作部3の他方側取付部32においては、抜け防止弾性変形爪23Aに対応する位置に、抜け防止弾性変形爪23Aの突起231Aが嵌まり込む係止穴部321が形成してあり、押込み規制弾性変形爪23Bに対応する位置に、押込み規制弾性変形爪23Bの突起231Bが当接する切欠部322が形成してある。
図3に示すごとく、他方側取付部32における係止穴部321に対する軸方向の基端側には、抜け防止弾性変形爪23Aの突起231Aが退避するための退避穴部323が形成してある。また、図4に示すごとく、他方側取付部32における切欠部322に対する軸方向の基端側には、押込み規制弾性変形爪23Bの突起231Bが退避するための退避穴部323が形成してある。
【0024】
図5、図6に示すごとく、本例の操作ノブ1においては、操作部3をベース部2に対して所定量押し込んだとき、ベース部2の一方側取付部22の先端部が操作部3の本体部31における裏面に当接して、操作部3の押込み量を規制するよう構成されている。
図4に示すごとく、操作部3の本体部31における筒状先端部には、インストルメントパネル5におけるクラスタパネル51の開口部の縁部に設けた折返し部511に係止されて操作部3の抜け防止を行うための被掛止部311が形成してある。
【0025】
操作ノブ1は、通常状態Aにおいては、図3に示すごとく、操作部3を引き出そうとすると抜け防止弾性変形爪23Aにおける突起231Aが係止穴部321に係止され、図4に示すごとく、操作部3を所定値未満の荷重で押し込もうとすると押込み規制弾性変形爪23Bにおける突起231Bが他方側取付部32の切欠部322の端面(底面)に係止されるよう構成してある。
また、操作ノブ1は、衝突状態Bにおいては、図5、図6に示すごとく、抜け防止弾性変形爪23Aにおける突起231Aの係止状態、及び押込み規制弾性変形爪23Bにおける突起231Bの係止状態が解除されて、操作部3がベース部2に対して所定量押し込まれた位置で停止するよう構成してある。
【0026】
図7は、ベース部2に操作部3が取り付けられた状態を、軸方向に直交する断面で示す図である。操作部3の一方側取付部22内には、各弾性変形爪23A、23Bを形成していない周方向部位同士を連結する補強リブ(本例ではクロス型の補強リブ)24が設けてある。
【0027】
次に、本例の車両用の操作ノブ1の動作及び作用効果につき説明する。
本例の操作ノブ1は、通常状態Aにおいては、図3、図4に示すごとく、係止穴部321に対する抜け防止弾性変形爪23Aにおける突起231Aの係止、及び切欠部322の端面(底面)に対する押込み規制弾性変形爪23Bにおける突起231Bの係止によって、操作部3がベース部2に対して安定して取り付けられている。これにより、車両の乗員は、操作部3を手動操作することによって、ベース部2を介して空調機器のコントローラ4における入力部41を安定して操作することができる。
【0028】
一方、車両衝突時に、乗員等によって操作部3に所定値以上の荷重(衝撃荷重)が加わったときには、図5に示すごとく、抜け防止弾性変形爪23Aが弾性変形し、その突起231Aが係止穴部321から外れた後、退避穴部323に入る。また、このときには、図6に示すごとく、押込み規制弾性変形爪23Bが弾性変形し、その突起231Bが切欠部322の端面(底面)から外れた後、退避穴部323に入る。そして、ベース部2の一方側取付部22の先端部が操作部3の本体部31における裏面に当接して、操作部3の押込み量が所定量に規制される。
これにより、操作ノブ1が衝突状態Bに変化し、操作部3がベース部2に対して所定量押し込まれた位置で停止して、インストルメントパネル5のクラスタパネル51に対する操作部3の突出量aを減少させることができる。なお、衝突状態Aにおいて、インストルメントパネル5のクラスタパネル51に対する操作部3の突出量aは、9.5mm以内になる。
【0029】
そのため、操作部3(操作ノブ1)の突出量aを減少させることができる構造を、ベース部2と操作部3との2部品を用いた簡単な構造により、容易に実現することができる。そして、操作ノブ1に衝突した乗員を保護することができる。
また、本例においては、操作部3の突出量aを減少させる際に、操作ノブ1又はその周辺の部品を破壊することがない。これにより、車両衝突後に操作ノブ1を元の通常状態Aに容易に復帰させて、操作ノブ1を繰り返し使用することができる。
【0030】
操作部3がベース部2に対して押し込まれた後に、操作ノブ1を元の通常状態Aに復帰させるときには、乗員、作業者等は、ベース部2に対して操作部3を引き出すことができる。このとき、抜け防止弾性変形爪23Aが弾性変形し、その突起231Aが退避穴部323から外れた後、係止穴部321に再び係止される。また、このときには、押込み規制弾性変形爪23Bが弾性変形し、その突起231Bが退避穴部323から外れた後、切欠部322の端面(底面)に再び当接する。
こうして、車両衝突時に操作部3の突出量aが減少した後において、各弾性変形爪23A、23Bを弾性変形させながら操作部3をベース部2から引き出すことによって、操作ノブ1を元の通常状態Aに容易に復帰させることができる。これにより、ベース部2に対して操作部3が取り付けられた状態が再び形成され、同じ操作ノブ1を再び使用することが可能になる。
【0031】
それ故、本例の車両用の操作ノブ1によれば、簡単な構造で、かつ操作ノブ1自体によって車両衝突時の衝撃吸収機能を実現することができ、部品交換をすることなく容易に元の通常状態に復帰させることができる。
【0032】
また、本例の操作ノブ1によれば、コントローラ4側の部品を破壊することなく、上記操作部3の突出量aを減少させることができるため、空調機器用のコントローラ4を一体化することができる。これにより、空調機器用のコントローラ4がインストルメントパネル5において占めるスペースを容易に縮小することができ、空調機器用のコントローラ4の取付部分のコストダウンを図ることができる。
【0033】
本例においては、上記のごとく、ベース部2を、ベース部2と操作部3とのいずれか一方とし、操作部3を、ベース部2と操作部3との他方として、ベース部2における一方側取付部22に弾性変形爪23A、23Bを設け、操作部3における他方側取付部32に、係止穴部321、切欠部322等を設けた。これに対し、操作部3を、ベース部2と操作部3とのいずれか一方とし、ベース部2を、ベース部2と操作部3との他方として、操作部3における一方側取付部に弾性変形爪を設け、ベース部2における他方側取付部に、係止穴部、切欠部等を設けることもできる。
【符号の説明】
【0034】
1 操作ノブ
2 ベース部
21 嵌入部
22 一方側取付部
23A 抜け防止弾性変形爪
23B 押込み規制弾性変形爪
231A、231B 突起
3 操作部
31 本体部
32 他方側取付部
321 係止穴部
322 切欠部
4 コントローラ
41 入力部
5 インストルメントパネル
51 クラスタパネル
A 通常状態
B 衝突状態

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のインストルメントパネルにおいて、機能部品のコントローラにおける入力部を手動操作可能にする操作ノブであって、
該操作ノブは、上記入力部に取り付けたベース部と、該ベース部に取り付けた操作部とからなり、
上記ベース部と上記操作部とのいずれか一方における一方側取付部には、突起を先端部分に設けて弾性変形可能に構成した弾性変形爪が形成してあり、上記ベース部と上記操作部との他方における他方側取付部には、上記突起が係止される凹部又は穴部が形成してあり、
通常状態においては、上記突起が上記凹部又は穴部に係止されて、上記操作部が上記ベース部に取り付けられており、
上記操作部に車両衝突時の所定値以上の荷重が加わったときには、上記弾性変形爪の弾性変形により上記凹部又は穴部に対する上記突起の係止状態が外れ、上記ベース部に対する上記操作部の取付状態が外れることにより、上記操作部が上記ベース部に対して所定量押し込まれた位置で停止して、上記インストルメントパネルに対する上記操作部の突出量を減少させた衝突状態に変化するよう構成したことを特徴とする車両用の操作ノブ。
【請求項2】
請求項1において、上記弾性変形爪を弾性変形させながら上記操作部を上記ベース部から引き出すことによって、上記通常状態に復帰させることができるよう構成したことを特徴とする車両用の操作ノブ。
【請求項3】
請求項1又は2において、上記入力部を手動で回動操作するためのダイヤル式操作ノブであることを特徴とする車両用の操作ノブ。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項において、上記機能部品は空調機器であり、該空調機器用のコントローラは、複数個が並んで一体化してあり、
上記操作ノブは、上記一体化した空調機器用のコントローラにおける各入力部の手動操作が可能であることを特徴とする車両用の操作ノブ。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項において、上記一方側取付部に設けた上記弾性変形爪は、上記通常状態において上記突起を上記他方側取付部に設けた上記凹部又は穴部に嵌め込んだ抜け防止弾性変形爪と、上記通常状態において上記突起を上記他方側取付部の端面に当接させた押込み規制弾性変形爪とからなり、
上記通常状態においては、上記操作部を引き出そうとすると上記抜け防止弾性変形爪における上記突起が上記凹部又は穴部に係止され、上記操作部を所定値未満の荷重で押し込もうとすると上記押込み規制弾性変形爪における上記突起が上記他方側取付部の端面に係止されるよう構成してあり、
上記衝突状態においては、上記抜け防止弾性変形爪における上記突起の係止状態、及び上記押込み規制弾性変形爪における上記突起の係止状態が解除されて、上記操作部が上記ベース部に対して所定量押し込まれた位置で停止するよう構成してあることを特徴とする車両用の操作ノブ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−54466(P2011−54466A)
【公開日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−203494(P2009−203494)
【出願日】平成21年9月3日(2009.9.3)
【出願人】(000110321)トヨタ車体株式会社 (1,272)
【出願人】(000003551)株式会社東海理化電機製作所 (3,198)
【Fターム(参考)】