説明

車両用の電源装置

【課題】外装缶の表面を導電性のある状態としながら、結露水による電池セルのショート、漏電、腐食などの弊害を有効に防止する。
【解決手段】車両用の電源装置は、外装缶1Aの表面が導電性を有する複数の電池セル1をセパレータ15を介して互いに絶縁して配置してなる電池ブロック2を備えている。さらに、車両用の電源装置は、電池セル1の表面に撥水層7を設けている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主として、ハイブリッド自動車、燃料自動車、電気自動車等の自動車を駆動するモータの電源用に使用される車両用の電源装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車を走行させるモータを駆動する電源に使用される大電流、大出力用の電源装置は、複数の電池を直列に接続して出力電圧を高くしている。駆動モータの出力を大きくするためである。この種の用途に使用される電源装置は、大きな電流で充放電される。たとえば、ハイブリッド自動車等では、スタートするときや加速するときに、電池でモータを駆動して自動車を加速するので、100A以上と極めて大きな電流が流れる。さらに、急ブレーキをかけて回生制動するときは、大きな電流で充電される。
【0003】
大電流を流して使用される電源装置は、電池の温度が上昇するので強制的に冷却する必要がある。電池の温度が高くなると、性能や寿命が低下するからである。電池の温度が設定温度よりも高くなると、電池を冷却するバッテリシステムは開発されている。(特許文献1参照)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平5−343105号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の公報に記載されるバッテリシステムは、電池の間に多数の貫通孔のあるセパレータを配設し、このセパレータの貫通孔に温度調節用媒体を流して電池を冷却している。この構造のバッテリシステムは、温度調節用媒体で電池を冷却できるが、空気に含まれる水分が電池の外装缶表面で結露することがある。とくに、空気の相対湿度が高い状態で運転するときに、外装缶の表面に結露水が付着しやすくなる。たとえば、寒冷地の屋外で冷え切った車両が暖かい駐車場に入庫する状態で発生しやすい。冷たい電池が暖かい駐車場の空気を冷却して結露を発生させるからである。この状態になると、電池の熱容量が大きく、電池の温度上昇が緩慢であるから、長い時間にわたって空気を冷却して、表面に次々と結露水を発生させる。結露水は、隣接する電池の外装缶に電位差があると、これをショートさせる。とくに、多数の電池セルを積層状態に配置している車両用の電源装置は、出力電圧を高くするために隣接する電池セルを直列に接続することから、隣の電池セルの外装缶の間に電位差がある。このため、外装缶の表面に導電性があると、結露水でショート電流が流れる弊害がある。発生した結露水は外装缶を腐食させる原因となり、さらに、複数の電池セルに漏電して電流ループができると、外装缶の内部で化学反応が起きて外装缶の腐食を進行させる原因となる。この状態が継続すると、外装缶に穴があいて漏液やガス漏れなどが起こる可能性もある。
【0006】
さらに、車両は、温度と湿度が著しく変化する種々の外的環境で使用されることから、結露水の発生を皆無にはできない。冷却された空気が過飽和状態になると、結露水が発生するからである。さらに、発生する結露水は、電池セルを漏電して安全性を低下させる原因にもなる。
【0007】
本発明は、以上の欠点を解決することを目的に開発されたものである。本発明の重要な目的は、外装缶の表面を導電性のある状態としながら結露水による電池セルのショート、漏電、腐食などの弊害を有効に防止できる車両用の電源装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段及び発明の効果】
【0008】
本発明の請求項1の車両用の電源装置は、外装缶1Aの表面が導電性を有する複数の電池セル1をセパレータ15、55を介して互いに絶縁して配置してなる電池ブロック2、52を備えている。さらに、車両用の電源装置は、電池セル1の表面に撥水層7を設けている。
【0009】
本発明の請求項2の車両用の電源装置は、外装缶1Aの表面が導電性を有する複数の電池セル1をセパレータ15を介して互いに絶縁して配置してなる電池ブロック2と、この電池ブロック2を定位置に配置しているフレーム30とからなる。さらに、車両用の電源装置は、セパレータ15の少なくとも表面に撥水層7を設けている。
【0010】
以上の車両用の電源装置は、外装缶の表面を導電性のある状態としながら結露水による電池セルのショート、漏電、腐食などの弊害を防止できる特徴がある。それは、本発明の電源装置が、結露する電池セルの外装缶やセパレータの表面に撥水層を設けているからである。撥水層は、表面に付着する結露水を全面に拡散することなく水滴に集合して流れやすくして速やかに排水する。このため、付着した結露水が広い面積に拡散して毛細管現象によって狭い隙間に浸透し、浸透する結露水が電池セルをショートし、あるいは漏電させる弊害を防止できる。また、撥水層で水滴に集合される結露水は、電池セルの表面で連続しない状態となって電流を遮断し、結露水によるショートや漏電を防止できる。
【0011】
とくに、本発明の請求項1の電源装置は、電池セルの表面に設けている撥水層でもって、電池セルの表面に付着する結露水を水滴に集合して速やかに排水する。このため、電池セルの表面に付着する結露水による電池セルのショートや漏電を確実に防止できる。
【0012】
また、本発明の請求項2の電源装置は、セパレータの表面に設けている撥水層でもって、セパレータの表面に付着する結露水を水滴に集合して速やかに排水する。このため、セパレータの表面に付着する結露水による電池セルのショートや漏電を防止できる。
【0013】
本発明の車両用の電源装置は、電池ブロック2、52を固定してなるフレーム30、60を備えて、このフレーム30、60の表面に撥水層7を設けることができる。
以上の電源装置は、フレームに付着する結露水を速やかに排水できる。このため、結露水が電池セルをフレームに電気接続してショートし、あるいは漏電する弊害を防止できる。
【0014】
本発明の車両用の電源装置は、フレーム30、60を金属製として、車両のシャーシーアースに接続することができる。
以上の電源装置は、シャーシーアースに接続しているフレームに撥水層を設けているので、フレームに付着する結露水を速やかに排水することで、結露水が電池セルを、フレームを介して車両のシャーシーアースに接続するのを防止できる。このため、結露水で電池セルとシャーシーアースが接続されて漏電するのを防止できる。
【0015】
本発明の車両用の電源装置は、セパレータ15を、撥水剤を充填してなるプラスチック製とすることができる。
以上の電源装置は、セパレータの撥水剤を充填してセパレータの表面を撥水するようにしているので、撥水層の寿命を極めて長くでき、長期間にわたってセパレータ表面の撥水性を保持できる。
【0016】
本発明の車両用の電源装置は、撥水剤がフッ素樹脂とシリコン樹脂のいずれかを含むことができる。
以上の電源装置は、セパレータに混合する撥水剤をフッ素樹脂やシリコン樹脂とするので、これらの撥水樹脂によって、セパレータの表面に優れた撥水特性の撥水層を設けることができる。
【0017】
本発明の車両用の電源装置は、電池セル1の表面に、フッ素コーティング又はシリコンコーティングをして撥水層7を設けることができる。
以上の電源装置は、電池セルの表面をフッ素コーティングし、あるいはシリコンコーティングすることで簡単に撥水層を設けることができる。
【0018】
本発明の車両用の電源装置は、フレーム30、60の表面に、フッ素コーティング又はシリコンコーティングをして撥水層7を設けることができる。
以上の電源装置は、フレームの表面を、フッ素コーティング又はシリコンコーティングすることで簡単に撥水層を設けることができる。
【0019】
本発明の車両用の電源装置は、電池ブロック2、52が、互いに積層してなる複数の電池セル1を両側から挟着する一対のエンドプレート4と、この一対のエンドプレート4を連結してなる金属バンド5とを備えて、エンドプレート4と金属バンド5のいずれか又は両方の表面に撥水層7を設けることができる。
以上の電源装置は、エンドプレートや金属バンドの表面に撥水層を設けているので、これ等の表面に付着する結露水を速やかに排水して、この表面に付着する結露水による電池セルのショートや漏電を有効に防止できる。
【0020】
本発明の車両用の電源装置は、電池セル1をリチウムイオン電池とすることができる。
以上の電源装置は、充電容量を大きくしながら、結露水によるショートや漏電を防止し、さらに、電池セルの外装缶の腐食も防止できる特徴がある。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の一実施例にかかる車両用の電源装置の斜視図である。
【図2】図1に示す車両用の電源装置の上フレームを外した斜視図である。
【図3】図1に示す車両用の電源装置の一部拡大横断面図である。
【図4】図1に示す車両用の電源装置の内部構造を示す斜視図である。
【図5】図1に示す車両用の電源装置の概略水平断面図である。
【図6】図1に示す車両用の電源装置の電池ブロックの斜視図である。
【図7】図6に示す電池ブロックの分解斜視図である。
【図8】電池セルとセパレータの積層構造を示す分解斜視図である。
【図9】図6に示す電池ブロックの一部拡大垂直断面図である。
【図10】本発明の他の実施例にかかる車両用の電源装置の一部拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施例を図面に基づいて説明する。ただし、以下に示す実施例は、本発明の技術思想を具体化するための車両用の電源装置を例示するものであって、本発明は車両用の電源装置を以下のものに特定しない。
【0023】
さらに、この明細書は、特許請求の範囲を理解しやすいように、実施例に示される部材に対応する番号を、「特許請求の範囲」および「課題を解決するための手段の欄」に示される部材に付記している。ただ、特許請求の範囲に示される部材を、実施例の部材に特定するものでは決してない。
【0024】
本発明の車両用の電源装置は、主として、ハイブリッドカーや電気自動車などの電動車両に搭載されて、車両の走行モータに電力を供給して、車両を走行させる電源装置に使用される。
【0025】
図1ないし図4は、本発明の実施例にかかる車両用の電源装置を示す図である。さらに、図5は概略水平断面図、図6と図7は電池ブロックを示す斜視図、図8は角形電池とセパレータを示す分解斜視図、図9は電池ブロックの一部拡大垂直断面図をそれぞれ示している。
【0026】
これらの図に示す電源装置は、外装缶1Aの表面が導電性を有する複数の電池セル1を互いに絶縁して積層状態で配置してなる電池ブロック2と、この電池ブロック2を構成する電池セル1の外装缶1Aの表面を強制冷却する冷却機構8とを備える。以上の電源装置の冷却機構8は、冷却用の空気を強制送風する送風ファン8Aを備えている。送風ファン8Aの運転は、制御回路(図示せず)で制御される。制御回路は、電池セル1の温度を検出して送風ファン8Aの運転を制御する。制御回路は、電池セル1の温度が設定温度よりも高くなると、送風ファン8Aを運転して電池セル1を冷却する。電池セル1の温度が設定温度よりも低くなると送風ファン8Aの運転を停止する。
【0027】
電池セル1はリチウムイオン電池からなる角形電池である。ただし、電池セルは、リチウムイオン二次電池には特定されず、充電できる全ての電池、たとえばニッケル水素電池なども使用できる。電池セル1は、正負の電極板を積層している電極体を外装缶1Aに収納して電解液を充填して気密に密閉したものである。外装缶1Aは、図8に示すように、底を閉塞する四角い筒状に成形したもので、上方の開口部を封口板1Bで気密に閉塞している。外装缶1Aは、アルミニウムやアルミニウム合金などの金属板を深絞り加工したもので、表面が導電性を有する。積層される電池セル1は、薄い角形に成形される。封口板1Bもアルミニウムやアルミニウム合金などの金属板で製作される。この封口板1Bは、正負の電極端子13を両端部に、絶縁材14を介して固定している。正負の電極端子13は内蔵する正負の電極板に接続される。リチウムイオン二次電池は、外装缶1Aを電極に接続しない。ただ、外装缶1Aは電解液を介して電極板に接続されることから、正負の電極板の中間電位となる。ただし、電池セルは、一方の電極端子をリード線で外装缶に接続することもできる。この電池セルは、外装缶に接続される電極端子を絶縁することなく封口板に固定できる。さらに、封口板1Bは、安全弁11の開口部12を設けている。安全弁11は、外装缶1Aの内圧が設定値よりも高くなると開弁して、外装缶1Aが破損するのを防止する。安全弁11が開弁すると内部のガスが封口板1Bの開口部12から外部に排出される。図8の電池セル1は、封口板1Bに安全弁11の開口部12を設けている。この外装缶1Aは、開弁する安全弁11の開口部12からガスを排出できる。それは、外装缶1Aの内部にはガスが溜まっているからである。電池セルは、外装缶の底部や側部に安全弁の開口部を設けることもできる。ただ、この電池セルは、安全弁が開口するときに電解液が排出される。電解液は導電性の液体で、これが排出されると、接触部をショートさせることがある。外装缶1Aの封口板1Bに安全弁11を設ける電池セル1は、開口する安全弁11からガスを排出して内圧を低下できる。このため、安全弁11が開口するときに、電解液の排出を制限して、電解液による弊害を少なくできる。
【0028】
積層される電池セル1は、隣接する電極端子13を連結具(図示せず)で連結して、互いに直列に接続される。さらに、各々の電池セル1の電極端子13にはリード線(図示せず)が接続される。このリード線は、電池の電圧を検出する保護回路を実装する回路基板(図示せず)に接続される。図示しないが、回路基板は、図4において、電源装置の上方に配設される。
【0029】
電池セル1は、その間にセパレータ15を挟着している。セパレータ15は、隣接する電池セル1の外装缶1Aを絶縁すると共に、電池セル1の間に電池を冷却する冷却隙間16を設ける。したがって、セパレータ15は、プラスチック等の絶縁材を成形して製作される。セパレータ15は、両面に送風溝15Aを設けて、電池セル1の間に冷却隙間16を設ける。セパレータ15は、水平方向、いいかえると電池セル1の両側に連結するように送風溝15Aを設けている。このセパレータ15で設けられる冷却隙間16は、空気を水平方向に送風して電池セル1を冷却する。
【0030】
セパレータ15を介して積層される電池セル1は、固定部品3で定位置に固定される。固定部品3は、積層している電池セル1の両端面に配置される一対のエンドプレート4と、このエンドプレート4に、端部を連結して積層状態の電池セル1を圧縮状態に固定してなる金属バンド5とからなる。
【0031】
エンドプレート4は、硬質のプラスチックで成形され、あるいはアルミニウムやその合金などの金属で製作される。図のエンドプレート4は、外側面に縦横に伸びる補強リブ4Aを一体的に成形して設けている。このエンドプレート4は、補強リブ4Aで曲げ強度を強くできる。曲げ強度の優れたエンドプレート4は、電池セル1の中央部分の膨張を有効に阻止できる。金属バンド5に連結されるエンドプレート4が変形しないかぎり、電池セル1の中央部分は膨張しないからである。エンドプレート4は、広い面積で電池セル1を挟着するために、その外形を電池セル1と同じ四角形としている。四角形のエンドプレート4は、電池セル1と同じ大きさに、あるいは電池セル1よりもわずかに大きくしている。さらに、図のエンドプレート4は、電池セル1との対向面に送風溝15Aを設けて、電池セル1との間に冷却隙間16を設けている。ただ、エンドプレートは、電池セルとの対向面を平面状として、電池セル又はセパレータと面接触状態に接触させることもできる。プラスチック製のエンドプレート4は、直接に電池セル1に積層され、金属製のエンドプレートは、積層材を介して電池セルに積層される。
【0032】
エンドプレート4には、金属バンド5の端部が連結される。金属バンド5は、止ネジ6を介してエンドプレート4に連結している。止ネジ6で金属バンド5を連結するエンドプレート4は、止ネジ6をねじ込む雌ネジ孔4aを設けている。雌ネジ孔4aは、エンドプレート4の外側表面に設けられて、金属バンド5の折曲部5Aを貫通する止ネジ6をねじ込んで金属バンド5を連結する。図の金属バンド5は、止ネジ6でエンドプレート4に固定しているが、金属バンドの端部を内側に折曲してエンドプレートに連結し、あるいはまた、端部をカシメてエンドプレートに連結することもできる。
【0033】
図4の電源装置は、電池セル1の上端部に沿って配置される金属バンド5と、電池セル1の下端部に沿って配設される金属バンド5をエンドプレート4に連結している。この電源装置は、エンドプレート4の上端と下端であって、外側表面の両側部に雌ネジ孔4aを設けている。この電源装置は、電池セル1の上下を金属バンド5で固定する。電源装置は、図示しないが、金属バンドを上下の中間であって、中央部の上下に配設することもできる。金属バンド5の端部を止ネジ6で固定するエンドプレート4は、雌ネジ孔4aを金属バンド5の連結位置に設けている。
【0034】
金属バンド5は、所定の厚さの金属板を所定の幅に加工して製作される。金属バンド5は、端部をエンドプレート4に連結して、一対のエンドプレート4を連結して、その間に電池セル1を圧縮状態に保持する。金属バンド5は、一対のエンドプレート4を所定の寸法に固定して、その間に積層される電池セル1を所定の圧縮状態に固定する。電池セル1の膨張圧力で金属バンド5が伸びると、電池セル1の膨張を阻止できない。したがって、金属バンド5には、電池セル1の膨張圧で伸びない強度の金属板、たとえばSUS304等のステンレス板や鋼板等の金属板を十分な強度を有する幅と厚さに加工して製作される。さらに、金属バンドは、金属板を溝形に加工することもできる。この形状の金属バンドは、曲げ強度を強くできるので、幅を狭くしながら、積層する電池セルをしっかりと所定の圧縮状態に固定できる特長がある。
【0035】
金属バンド5は、端部に折曲部5Aを設けて、折曲部5Aをエンドプレート4に連結する。折曲部5Aは、止ネジ6の貫通孔を設けて、ここに挿入される止ネジ6を介してエンドプレート4に固定される。
【0036】
図1ないし図4の電源装置は、図5の概略断面図に示すように、電池ブロック2を平行な姿勢で2列に配列して、2列の電池ブロック2の間に冷却気体を強制送風する冷却ダクト33を設けている。冷却気体は送風ファン8Aで送風される空気である。空気は、車内の空気又は車外の空気である。ただし、冷却気体は、必ずしも空気とする必要はなく、たとえば、車両の冷房装置で冷却されて循環される気体とすることもできる。冷却ダクト33に送風される冷却気体は、電池セル1の間にセパレータ15で設けている冷却隙間16を通過して、電池セル1を冷却する。
【0037】
車両用の電源装置は、温度と湿度が著しく変化する種々の外的環境で使用されるので、電池セル1の表面に結露が発生することがある。冷却された電池セル1の表面に周囲の空気が接触し、電池セル1の外装缶1Aの表面が周囲の空気を冷却して過飽和な状態とすることがあるからである。電池セル1の外装缶1Aが周囲の空気を冷却して過飽和な状態になると、空気中の水蒸気が凝結して電池セル1の表面に付着して結露が発生する。この状態は、外気や冷却機構で冷却された電源装置の内部に、外部から暖かい空気が流入する状態で発生しやすい。たとえば、寒冷地の屋外で冷え切った車両を暖かい車庫や屋内の駐車場等に入庫させるときに、電源装置の冷却ダクトや冷却隙間に外部から暖かい空気が流れ込む状態で発生し、あるいは、冷却機構によって電池セルが冷却された状態で、電源装置の冷却ダクトや冷却隙間に、外部から暖かい空気が流入する場合に発生する。水蒸気を多く含む暖かい空気が電池セルの表面付近で冷却されて結露を発生させるからである。このように、結露して電池セル1の表面に付着する結露水は、電池セル1をショートし、漏電し、あるいは外装缶1Aを腐食させる原因となる。結露による弊害を防止するために、電池セル1は、図9の一部拡大断面図に示すように、外装缶1Aの表面に撥水層7を設けている。
【0038】
電池セル1は、外装缶1Aの表面をフッ素コーティング又はシリコンコーティングして撥水層7を設けている。電池セル1は、外装缶1Aの全面に撥水層7を設けている。ただ、電池セルは、表面の全面でなくて、部分的に撥水層を設けることもできる。部分的に撥水層を設ける電池セルは、セパレータから露出する外装缶の両側縁部の結露しやすい面に撥水層を設ける。外装缶のこの領域は、冷却ダクトに露出するので、空気に接触しやすく、結露しやすい面となる。ここに帯状に設けられる撥水層は、その幅を電池セルの両側面の幅よりも広くして、隣接する電池セルの対向面に跨るように設けられる。すなわち、この撥水層は、電池セルの両側面と対向面の側縁部に設けられる。対向面に付着する幅は、たとえば5mm〜1cmとしている。さらに、部分的に撥水層を設ける電池セルは、セパレータの送風溝に露出する面にも撥水層を設ける。外装缶の表面であって、送風溝に露出する部分は、空気に接触しやすく、結露しやすい面となるからである。
【0039】
結露は電池セル1のみでなくセパレータ15の表面にも発生する。外気や冷却空気で冷却されたセパレータ15が、周囲の空気を冷却して過飽和な状態とするからである。セパレータ15の表面に発生する結露水が電池セル1の表面に付着すると、電池セル1をショートし、あるいは漏電させ、あるいはまた、外装缶1Aを腐食させる原因となる。この弊害を防止する電源装置は、図9の一部拡大断面図に示すように、セパレータ15の表面にも撥水層7を設けている。
【0040】
セパレータ15の表面は、電池セル1と同じようにフッ素コーティングし、又はシリコンコーティングして設けることができる。セパレータ15は、絶縁材のプラスチックを成形して製作されるので、撥水剤を混合して成形することで、撥水層を設けることもできる。セパレータに混合される撥水剤は、フッ素樹脂又はシリコン樹脂である。
【0041】
さらに、図6と図7の斜視図に示す電池ブロック2は、2列の金属バンド5を、電池ブロック2の両側面の上下に配設して、一対のエンドプレート4の両側を上下で連結している。この構造の電池ブロック2は、2列の金属バンド5でエンドプレート4を強固に連結できる。電池セル1の外装缶1Aは、エンドプレート4に接触して、金属バンド5に接近する。エンドプレート4や金属バンド5に結露して、結露水が電池セル1に付着するとショートや漏電の原因となる。この弊害は、図9の一部拡大断面図に示すように、電池セル1とエンドプレート4との対向面に撥水層7を設けて、さらに、図示しないが、金属バンド5の表面であって電池セル1に接近する部分に撥水層を設けて防止できる。この撥水層7も、エンドプレート15や金属バンド5の表面をフッ素コーティングし、あるいはシリコンコーティングすることで設けることができる。
【0042】
図1ないし図4に示す電源装置は、外装ケースに併用されるフレーム30に電池ブロック2を固定している。外装ケースのフレーム30は、下フレーム31と上フレーム32とで構成している。電源装置は、外装ケースのフレーム30に、複数の電池ブロック2を縦横に並べて固定する。図2と図4の斜視図に示す電源装置は、下フレーム31の上に、2個の電池ブロック2を直列に並べて、これを2列に配置して、4組の電池ブロック2を収納している。2列に配置される電池ブロック2は、その間に冷却ダクト33ができるように、互いに離して配設している。
【0043】
下フレーム31と上フレーム32は、溝型に加工された金属プレートである。下フレーム31と上フレーム32は、同じ厚さの金属プレートで製作され、あるいは下フレーム31を上フレーム32よりも厚い金属プレートで製作する。下フレーム31と上フレーム32は、両側に側壁部31A、32Aを設けて溝型としている。図の電源装置は、下フレーム31の横幅を上フレーム32よりも広くして、下フレーム31の側壁部32Aと上フレーム32の側壁部31Aの間に部品ケース40を配置できるようにしている。下フレーム31は、部品ケース40の幅に相当する横幅を、上フレーム32の横幅よりも広くしている。すなわち、下フレーム31の横幅は、上フレーム32の横幅に部品ケース40の横幅を加算した幅としている。
【0044】
下フレーム31は、一方の、図1ないし図4において、左側に設けている側壁部31Aを上フレーム32の側壁部32Aに固定している。上フレーム32の右側の側壁部32Aは、下フレーム31の底部に固定されて、電池ブロック2の収納部と部品ケース40の収納部とを区画している。底部に固定される上フレーム32の右側の側壁部32Aは、左の側壁部32Aよりも高さを高くして、下端縁を下フレーム31の底部に固定できるようにしている。下フレーム31と上フレーム32は、互いに固定する先端縁に、外側に折曲された折曲片31a、32aを設けている。折曲片31a、32aを貫通する止ネジ34とナット35で折曲片31a、32aが固定され、あるいは折曲片を貫通するリベットなどで固定されて、下フレーム31と上フレーム32は連結される。
【0045】
図3に示す電源装置は、下フレーム31の両側にほぼ同じ高さの側壁部31Aを設けている。図において、下フレーム31の左側の側壁部31Aは、上フレーム32の左側の側壁部32Aを固定している。下フレーム31の右側の側壁部31Aは、上フレーム32の側壁部32Aに固定することなく、上フレーム32に固定される部品ケース40の固定プレート41の側壁部41Aが固定される。上フレーム32も両側に側壁部32Aを設けている。図において、上フレーム32の右側の側壁部32Aは、左側の側壁部32Aよりも高さが高く、高さの低い側壁部32Aを、下フレーム31の左側の側壁部31Aに固定して、高さの高い右側の側壁部32Aを、下フレーム31の底部に固定している。
【0046】
上フレーム32は、図3に示すように、右側の側壁部32Aの上端に部品ケース40の固定プレート41が固定される。固定プレート41は、金属板をL字状に加工して、天板41Bの片側に側壁部41Aを設けた形状とする。この固定プレート41は、天板41Bの端縁を、上フレーム32の側壁部32Aの上縁に固定して、側壁部41Aの下端縁に設けた折曲片41aを下フレーム31の右側の側壁部31Aの上端に設けた折曲片31aに固定する。固定プレート41の折曲片41aと下フレーム31の折曲片31aを固定して、固定プレート41と下フレーム31は連結される。この構造の外装ケースは、上フレーム32の右側に設けている側壁部32Aが、電池ブロック2の収納部と部品ケース40とを区画する。
【0047】
下フレーム31と上フレーム32からなる外装ケースに併用されるフレーム30は、電池ブロック2の外側に冷却ダクト33ができるように幅を広くしている。図2ないし図4の電源装置は、2列に配置している電池ブロック2の中間に冷却ダクト33を設け、さらに電池ブロック2の外側であって側壁部31A、32Aとの間にも冷却ダクト33を設けている。この電源装置は、2列の電池ブロック2の中間に形成される中間冷却ダクト33Aと、電池ブロック2の外側に形成される側部冷却ダクト33Bのいずれか一方を冷却空気の供給ダクトとし、他方を排出ダクトとして、電池セル1の間の冷却隙間16に送風して電池セル1を冷却する。
【0048】
図3に示す電源装置は、電池ブロック2の外側(図において右側)と上フレーム32の側壁部32Aとの間に側部冷却ダクト33Bを設け、この側部冷却ダクト33Bの外側であって、側部冷却ダクト33Bを構成する上フレーム32の側壁部32Aの外側に、部品ケース40の収納スペースを設けている。この構造は、部品ケース40に収納する電子部品(図示せず)と、電池ブロック2との間に、側部冷却ダクト33Bと側壁部32Aとが設けられる。この構造は、電池ブロック2の熱が電子部品を加熱することがなく、電子部品に対する電池ブロック2の発熱による弊害を防止できる。
【0049】
2列の電池ブロック2の間に設ける中間冷却ダクト33Aは、上方の開口部をエアーシールプレート42で閉塞して、下方の開口部を下フレーム31で閉塞している。エアーシールプレート42は、2列の電池ブロック2の間にできる中間冷却ダクト33Aに沿って伸びる細幅の金属プレートで、両側の電池ブロック2に固定して中間冷却ダクト33Aの上面の開口部を閉塞する。エアーシールプレート42は、止ネジ(図示せず)を介して両側に配設される電池ブロック2のエンドプレート4の上面に固定される。エアーシールプレート42は、両端部の両側と、中間の2カ所の両側に突出部を設けて、この突出部を貫通する止ネジを介して電池ブロック2に固定することができる。
【0050】
以上の外装ケースに併用されるフレーム30は、下フレーム31を止ネジ36でエンドプレート4に固定して、電池ブロック2を固定している。止ネジ36は、下フレーム31を貫通してエンドプレート4のネジ孔(図示せず)にねじ込まれて、電池ブロック2を外装ケースのフレーム30に固定している。この止ネジ36は、頭部を下フレーム31から突出させている。さらに、下フレーム31は、電池ブロック2の両側に沿って、下方に突出する凸条31Bを設けている。これらの凸条31Bは、冷却ダクト33の幅を広くしてこれらのダクトの圧力損失を小さくする。さらに、これらの凸条31Bは、下フレーム31を補強して、下フレーム31の曲げ強度を強くする。さらにまた、下フレーム31の下面に設けている凸条31Bは、電池ブロック2を固定する止ネジ36の頭部よりも下方に突出し、あるいは頭部と同じ高さとしている。この下フレーム31は、車両などに搭載される状態では、凸条31Bを車両の固定プレートの上に載置して、広い面積で電源装置の加重を支えることができる。
【0051】
以上の電源装置は、フレーム30が車両のシャーシーアースに接続される。したがって、電池セル1とフレーム30との間に結露水が侵入すると、電池セル1をショートし、あるいは漏電させる原因となる。この弊害は、図3の一部拡大断面図に示すように、フレーム30の表面に撥水層7を設けて防止する。とくに、電池ブロック2の底面に接触している下フレーム31に結露水が付着すると、これが毛細管現象で電池セル1の間に浸透して、ショートや漏電の原因となりやすい。この弊害は、下フレーム31の表面、とくに下フレーム31の上面に撥水層7を設けて、下フレーム32の表面の結露水を集めて流れやすくして防止できる。さらに、下フレーム31のみでなく、上フレーム32の表面にも撥水層7を設けることで、上フレーム32に付着した結露水が落下し、あるいはフレーム30の内面に沿って流下して、電池セル1がショートし、あるいは漏電させる弊害を防止できる。下フレーム31と上フレーム32は導電性のある金属板であるから、表面にフッ素コーティングし、あるいはシリコンコーティングすることで撥水層7を設けることができる。
【0052】
以上の電源装置は、電池セル1を冷却気体で冷却するが、本発明の電源装置は、電池セルを冷却プレートに熱結合状態して冷却することもできる。その具体例の電源装置を図10に示している。この電源装置の冷却機構58は、電池ブロック52の底面に冷却プレート61を構成するフレーム60を熱結合状態に配置している。この電源装置は、フレーム60の冷却プレート61を強制冷却して、フレーム60の冷却プレート61を介して電池セル1を冷却する。図の電池ブロック52は、電池セル1の間にセパレータ55を挟着すると共に、冷却プレート61との間に絶縁シート59を配設している。
【0053】
フレーム60の冷却プレート61は、内部に冷媒配管62を配置している。冷媒配管62は、フレオンや炭酸ガスなどの冷媒が液状で供給され、内部で冷媒を気化させて気化熱で冷却プレート61を冷却する。この冷却プレート61は、図示しないが、冷媒配管62で気化された気体状の冷媒を加圧するコンプレッサと、このコンプレッサで圧縮された冷媒を冷却して液化させる冷却熱交換器と、この冷却熱交換器で液化された冷媒を冷媒配管に供給する膨張弁とを備える冷却装置に連結される。膨張弁を介して供給される液状の冷媒は、冷却プレート61内の冷媒配管62で気化され、気化熱で冷却プレート61を冷却して冷却装置に排出される。したがって、冷媒は冷却プレート61の冷媒配管62と冷却装置とに循環して、冷却プレート61を冷却する。この冷却機構58は、冷媒の気化熱で冷却プレート61を低温に冷却するが、冷却プレートは、気化熱によらず冷却することもできる。この冷却プレートは、媒配配管には、低温に冷却されたブラインなどの冷媒を供給して、冷媒の気化熱でなくて、低温の冷媒で直接に冷却プレートを冷却する。
【0054】
この電源装置は、冷却プレート61の表面が低温に冷却されて結露しやすい面となる。また、この冷却プレート61に併用されるフレーム60は、車両のシャーシーアースに接続される。したがって、この冷却プレート61のフレーム60も電池セル1との間に毛細管現象で結露水が侵入すると、電池セル1をショートし、あるいは漏電させる原因となる。この弊害は、前述したフレームと同じように、表面に撥水層7を設けて結露水による弊害を防止できる。とくに、電池ブロック52の底面に接触している冷却プレート61の上面に結露水が付着すると、これが毛細管現象で電池セル1の間に浸透して、ショートや漏電の原因となりやすい。この弊害は、冷却プレート61の上面に撥水層7を設けて防止できる。さらに、冷却プレート61の上面のみでなく、全面に撥水層7を設けて、結露水を速やかに排水することができる。
【符号の説明】
【0055】
1…電池セル 1A…外装缶
1B…封口板
2…電池ブロック
3…固定部品
4…エンドプレート 4A…補強リブ
4a…雌ネジ孔
5…金属バンド 5A…折曲部
6…止ネジ
7…撥水層
8…冷却機構 8A…送風ファン
11…安全弁
12…開口部
13…電極端子
14…絶縁材
15…セパレータ 15A…送風溝
15B…切欠部
16…冷却隙間
30…フレーム
31…下フレーム 31A…側壁部
31a…折曲片
31B…凸条
32…上フレーム 32A…側壁部
32a…折曲片
33…冷却ダクト 33A…中間冷却ダクト
33B…側部冷却ダクト
34…止ネジ
35…ナット
36…止ネジ
40…部品ケース
41…固定プレート 41A…側壁部
41a…折曲片
41B…天板
42…エアーシールプレート
52…電池ブロック
55…セパレータ
58…冷却機構
59…絶縁シート
60…フレーム
61…冷却プレート
62…冷媒配管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外装缶(1A)の表面が導電性を有する複数の電池セル(1)をセパレータ(15)、(55)を介して互いに絶縁して配置してなる電池ブロック(2)、(52)を備える車両用の電源装置であって、
前記電池セル(1)の表面に撥水層(7)を設けてなることを特徴とする車両用の電源装置。
【請求項2】
外装缶(1A)の表面が導電性を有する複数の電池セル(1)をセパレータ(15)を介して互いに絶縁して配置してなる電池ブロック(2)と、この電池ブロック(2)を定位置に配置しているフレーム(30)とからなる車両用の電源装置であって、
前記セパレータ(15)の少なくとも表面に撥水層(7)を設けてなることを特徴とする車両用の電源装置。
【請求項3】
前記電池ブロック(2)、(52)を固定してなるフレーム(30)、(60)を有し、このフレーム(30)、(60)の表面に撥水層(7)を設けてなる請求項1または2に記載される車両用の電源装置。
【請求項4】
前記フレーム(30)、(60)が車両のシャーシーアースに接続してなる金属製である請求項3に記載される車両用の電源装置。
【請求項5】
前記セパレータ(15)が、撥水剤を充填してなるプラスチック製である請求項2に記載される車両用の電源装置。
【請求項6】
前記撥水剤がフッ素樹脂とシリコン樹脂のいずれかを含む請求項5に記載される車両用の電源装置。
【請求項7】
前記電池セル(1)の表面に、フッ素コーティング又はシリコンコーティングをして撥水層(7)を設けてなる請求項1に記載される車両用の電源装置。
【請求項8】
前記フレーム(30)、(60)の表面に、フッ素コーティング又はシリコンコーティングをして撥水層(7)を設けてなる請求項3に記載される車両用の電源装置。
【請求項9】
前記電池ブロック(2)、(52)が、互いに積層してなる複数の電池セル(1)を両側から挟着する一対のエンドプレート(4)と、この一対のエンドプレート(4)を連結してなる金属バンド(5)とを備えており、前記エンドプレート(4)と金属バンド(5)のいずれか又は両方の表面に撥水層(7)を設けてなる請求項1または2に記載される車両用の電源装置。
【請求項10】
前記電池セル(1)がリチウムイオン電池である請求項1または2に記載される車両用の電源装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate


【公開番号】特開2010−170870(P2010−170870A)
【公開日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−12895(P2009−12895)
【出願日】平成21年1月23日(2009.1.23)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【Fターム(参考)】