説明

車両用アンダーカバー

【課題】車両の製造工程において該車両に対して必要な作業を実施するための作業孔が形成されている場合であっても、該車両の走行時には空力性能の低下を防止することができる車両用アンダーカバーを提供することである。
【解決手段】車両のフレーム下面側に取り付けられる車両用アンダーカバー10であって、該車両の製造工程において該車両に対して必要な作業を実施するための作業孔10aが穿設されていると共に該作業孔10aを閉塞可能な蓋体11が形成されており、該作業終了後に該作業孔10aを完全に閉塞させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用アンダーカバーに関し、詳しくは、空力性能を向上させるために車両のフレーム下面側に取り付けられる車両用アンダーカバーに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、自動車等の車両のフレーム下面側には、空力性能を向上させるためにアンダーカバーを取り付けることが知られている。このアンダーカバーによって、車両下部を通過する空気の流れがスムーズになり、空気抵抗を減少させることができる。しかし、車両の製造工程(車両の製造ライン)において、例えば、このアンダーカバーが取り付けられた車両を吊り上げていたハンガーを異なるサイズのハンガーに取り替える必要が生じた場合、一旦、車両をリフトで持ち上げた(リフトアップした)状態にしてからハンガーの交換作業を実施しなければならなかった。そのため、リフトの先端が車両フレームのアンダーリンフォースを支持できるように、アンダーカバーにはリフトを貫通させるための作業孔が形成されている。
【0003】
なお、この出願の発明に関連する先行技術文献情報としては、例えば、特許文献1が知られている。
【特許文献1】特開2001−233252号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述したアンダーカバーでは、リフトを貫通させるための作業孔が形成されているため、車両の走行時における空力性能が低下するという問題が発生していた。そこで、この問題を解決するためのアンダーカバーが求められていた。
【0005】
本発明は、このような課題を解決しようとするもので、その目的は、車両の製造工程において該車両に対して必要な作業を実施するための作業孔が形成されている場合であっても、該車両の走行時には空力性能の低下を防止することができる車両用アンダーカバーを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記の目的を達成するためのものであって、以下のように構成されている。
請求項1に記載の発明は、車両のフレーム下面側に取り付けられる車両用アンダーカバーであって、該車両の製造工程において該車両に対して必要な作業を実施するための作業孔が穿設されていると共に該作業孔を閉塞可能な蓋体が形成されており、該作業終了後に該作業孔を完全に閉塞させる構成である。
この構成によれば、車両用アンダーカバーに作業孔が穿設されている場合であっても、車両の走行時には空力性能の低下を防止することができる。
【0007】
また、請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の車両用アンダーカバーであって、前記作業とは、該車両をリフトによって持ち上げる作業であり、前記作業孔は、前記リフトを貫通させるための孔である。
この構成によれば、製造工程において車両をリフトアップさせる場合であっても、車両用アンダーカバーを取り外す必要がないため作業性を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明を実施するための最良の形態を、図面を用いて説明する。
(実施例1)
まず、図1〜2によって実施例1を説明する。
図1は、車両用アンダーカバー10の分解斜視図である。図2は、図1の車両用アンダーカバー10の組付状態におけるA−A断面図である。この種の車両用アンダーカバーは、車両1の下面側の全てを覆うように取り付けられる樹脂製のカバーである。そして、取り付けの作業性を向上させる観点から、車両用アンダーカバーは、例えばフロントアンダーカバー、センターアンダーカバー、リアアンダーカバー(いずれも図示しない)に3分割され構成されている。なお、この実施例1で説明する車両用アンダーカバー10は、フロントアンダーカバーの左側の一部である。
【0009】
図1からも明らかなように、車両用アンダーカバー10には、該車両用アンダーカバー10を車両のフレーム下面側に取り付けたときに該フレームにおけるアンダーリンフォース(図示しない)の下方位置となるように四角形状の作業孔10aが穿設されている。また、車両用アンダーカバー10には、この作業孔10aを塞ぐための四角形状の蓋体11が組み付け可能となっている。
【0010】
そのため、車両用アンダーカバー10における作業孔10aの四隅の近傍部位には、後述するクリップ12を係止させるための係止孔10bが穿設されている。また、蓋体11の四隅の近傍部位には、蓋体11を車両用アンダーカバー10に取り付けた状態で車両用アンダーカバー10に穿設された係止孔10bと対応する位置に貫通孔11bが穿設されている。車両用アンダーカバー10に蓋体11を組み付けた状態でクリップ12を蓋体11の貫通孔11bを介して車両用アンダーカバー10の係止孔10bに差し込むと、蓋体11は車両用アンダーカバー10に取り付けられた状態となる(図2参照)。
【0011】
この状態では、クリップ12の頭部12aと係止部12bとの間に蓋体11と車両用アンダーカバー10が挟み込まれた状態となっているため、作業孔10aの上方から蓋体11に対して大きな力が作用した場合でも、蓋体11は車両用アンダーカバー10から脱落することはない。このようにして、作業孔10aは蓋体11によって完全に閉塞された状態となる。
【0012】
続いて、上述した車両用アンダーカバー10が適用された車両に対して必要となる作業の実施例を説明する。まず、車両の製造工程において、車両をハンガーで吊り上げた状態で車両のフレーム下面側に車両用アンダーカバー10を取り付ける。この状態では、まだ、蓋体11は車両用アンダーカバー10に取り付けられていない。その後、従来技術で説明したように、車両を吊り上げていたハンガーを異なるサイズのハンガーに取り替える必要が生じた場合、リフトの先端を車両用アンダーカバーの作業孔10aに貫通させた状態でアンダーリンフォースに支持させリフトアップさせ車両を持ち上げる。ハンガー取り替え後、リフトアップを解除する。
【0013】
その後、車両の組み立てが完成して、作業孔10aが不必要になると、上述したように蓋体11によって作業孔10aを完全に閉塞させる。これにより、作業孔10aが穿設されている場合であっても、車両の走行時には空力性能の低下を防止することができる。また、このように作業孔10aを穿設しておくことで、車両用アンダーカバー10を車両のフレームに取り付けた状態でも容易に車両を持ち上げることができる。これにより、製造工程において車両をリフトアップさせる場合であっても、車両用アンダーカバー10を取り外す必要がないため作業性を向上させることができる。
【0014】
(実施例2)
次に、図3〜4によって実施例2を説明する。
図3は、車両用アンダーカバー20の分解斜視図である。図4は、図3の車両用アンダーカバー20の組付状態におけるB−B断面図である。この実施例2は、既に説明した実施例1と比較すると、蓋体21(11)を車両用アンダーカバー20(10)に取り付ける構造が相違しているものである。
【0015】
実施例2の車両用アンダーカバー20は、図3から明らかなように、実施例1の車両用アンダーカバー10と同様に形成されている。そのため、実施例1と同様に、車両用アンダーカバー20には作業孔20aが穿設されている。また、車両用アンダーカバー20には、この作業孔20aを塞ぐための四角形状の蓋体21が組み付け可能となっている。
【0016】
そのため、車両用アンダーカバー20における作業孔20aの前側二隅の近傍部位には、後述するクリップ22を係止させるための係止孔20bが穿設されている。一方、蓋体21には車幅方向にヒンジ部21cが形成されており、このヒンジ部21cを境とする前側端部の2個所には、蓋体21を車両用アンダーカバー20に取り付けた状態で車両用アンダーカバー20に穿設された係止孔20bと対応する位置に貫通孔21bが穿設されている。また、蓋体21の後側端部には、断面略逆V字形状の撓み片21dが一体成形されている。この撓み片21dの先端側には、略クランク形状をなす係止部21eが形成されている。
【0017】
そして、撓み片21dの逆V字が狭まる方向に撓んだ状態で、この係止部21eに車両用アンダーカバー20の作業孔20aの孔縁が係合可能となっている。これにより、蓋体21によって作業孔20aを閉塞させた状態でクリップ22を蓋体21の貫通孔21bを介して車両用アンダーカバー20の係止孔20bに差し込んだ状態で、撓み片21dの係止部21eに作業孔20aの孔縁を係合させると、蓋体21は車両用アンダーカバー20に取り付けられた状態となる(図4参照)。
【0018】
この状態では、蓋体21の撓み片21dが撓んだ状態であり、この撓みの反力によって係止部21eに車両用アンダーカバー20の作業孔20aの孔縁がしっかりと係合した状態となっているため、作業孔20aの上方から蓋体21に対して大きな力が作用した場合でも、蓋体21は車両用アンダーカバー20から脱落することはない。このようにして、作業孔20aは蓋体21によって完全に閉塞された状態となる。なお、作業孔20aを開放するときには、蓋体21の撓み片21dをさらに撓ませて係止部21eと作業孔20aの孔縁との係合を解除させればヒンジ部21cによって蓋体21を開放することができる。
【0019】
上述した構成によれば、実施例1と同様の作用効果を得ることができる。また、ヒンジ部21cを備えているため、実施例1の蓋体11を開閉する構成よりさらに簡便な構成で蓋体21を開閉することができる。
【0020】
上述した内容は、あくまでも本発明の一実施の形態に関するものであって、本発明が上記内容に限定されることを意味するものではない。
実施例1では、製造工程において車両用アンダーカバー10が取り付けられた車両に対して必要となる作業の例として、車両を吊り上げていたハンガーを異なるサイズのハンガーに取り替える作業を例に説明した。しかし、これに限定されるものでなく、例えば燃料配管の連結を検査する作業であっても構わない。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】図1は、車両用アンダーカバー10の分解斜視図である。
【図2】図2は、図1の車両用アンダーカバー10の組付状態におけるA−A断面図である。
【図3】図3は、車両用アンダーカバー20の分解斜視図である。
【図4】図4は、図3の車両用アンダーカバー20の組付状態におけるB−B断面図である。
【符号の説明】
【0022】
10 車両用アンダーカバー(実施例1)
10a 作業孔
11 蓋体
20 車両用アンダーカバー(実施例2)
20a 作業孔
21 蓋体



【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のフレーム下面側に取り付けられる車両用アンダーカバーであって、
該車両の製造工程において該車両に対して必要な作業を実施するための作業孔が穿設されていると共に該作業孔を閉塞可能な蓋体が形成されており、該作業終了後に該作業孔を完全に閉塞させる車両用アンダーカバー。
【請求項2】
請求項1に記載の車両用アンダーカバーであって、
前記作業とは、該車両をリフトによって持ち上げる作業であり、前記作業孔は、前記リフトを貫通させるための孔である車両用アンダーカバー。




【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−30512(P2008−30512A)
【公開日】平成20年2月14日(2008.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−203156(P2006−203156)
【出願日】平成18年7月26日(2006.7.26)
【出願人】(000185617)小島プレス工業株式会社 (515)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】