説明

車両用アーム部材

【課題】防振のためのブッシュを圧入嵌着したブッシュ連結部を有し、防振性に優れ、軽量化を図るのに効果的な車両用のアーム部材の提供を目的とする。
【解決手段】車両の複数の部材間を連結するアーム部材であって、アーム部材は複数の連結孔を有し、当該複数の連結孔のうち、少なくとも1つ以上はブッシュ部材を介したブッシュ連結孔であり、当該ブッシュ連結孔は、ブッシュ中心軸とは直交方向に延在する複数の縦壁と、当該複数の縦壁の間を複数の横壁でつないであり、最も上部の横壁のつなぎ部は縦壁の上端より内側に位置し、最も下部の横壁のつなぎ部は縦壁の下端より内側に位置し、それぞれの横壁を上下対向するように部分的に切欠き、複数の横壁の切欠き端部がブッシュ部材の外周廻りに概ね等間隔に当接するように配置されていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばサスペンションアーム等のように車両の部材間を懸架連結するアーム部材に関する。
【背景技術】
【0002】
車両等の懸架装置に用いられるサスペンション等の各種アーム部材においては、引張荷重、圧縮荷重及び曲げ荷重の他に大きい振動も受ける。
そこで、ゴム製等の防振ブッシュを介して連結される場合が多い。
例えば特許文献1には、パイプ状に形成した押出成形材の中空部の幅寸法よりも大きい直径の貫通孔を形成し、この貫通孔にブッシュを圧入嵌着したサスペンションアームを開示する。
しかし、同公報に開示するブッシュ圧入構造では、図5に示すようにパイプ材100の切欠き内壁とブッシュ20の外周面とが当接する部分100aは、図5にて上下の一部分であり、周廻り方向に接触している部分100aの位置と、接触していない部分100bの位置が周廻り全体としてアンバランスなために、上下方向に受ける振動と左右方向に受ける振動とで振動吸収パターンが異なることになり、ブッシュの防振特性が充分に出現しない問題があった。
【0003】
また、アーム部材がサスペンションアーム等の場合にはアーム部材の一方端部付近を車両のボディ側(サスペンションメンバ)に連結支持し、他方の端部付近をホイール側に連結支持することで車体を懸架する際にアーム部材の途中にショックアブソーバー、コイルスプリング、スタビライザー等を取り付けたものもある。
このような場合に、例えばショックアブソーバー等の下端部がアーム部材の途中に取り付けられるため、垂下方向の曲げ荷重がアーム部材に負荷される。
例えば、特許文献2には、ショートアームとロングアームとの間に形成したスタビライザー取付部を縦長四角形状とすることで曲げ荷重に耐えられるようにしたアーム部材を開示する。
しかし、同公報に開示するアーム部材は中実断面であるために軽量化が難しく、肉抜きを図ると応力が局部的に集中しやすい問題もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−225821号公報
【特許文献2】特開2000−142052号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、防振のためのブッシュを圧入嵌着したブッシュ連結部を有し、防振性に優れ、軽量化を図るのに効果的な車両用のアーム部材の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係るアーム部材は、車両の複数の部材間を連結するアーム部材であって、アーム部材は複数の連結孔を有し、当該複数の連結孔のうち、少なくとも1つ以上はブッシュ部材を介したブッシュ連結孔であり、当該ブッシュ連結孔は、ブッシュ中心軸とは直交方向に延在する複数の縦壁と、当該複数の縦壁の間を複数の横壁でつないであり、最も上部の横壁のつなぎ部は縦壁の上端より内側に位置し、最も下部の横壁のつなぎ部は縦壁の下端より内側に位置し、それぞれの横壁を上下対向するように部分的に切欠き、複数の横壁の切欠き端部がブッシュ部材の外周廻りに概ね等間隔に当接するように配置されていることを特徴とする。
ここで車両の複数の部材間には、車両のボディと他の部品との連結のみならず、車両用部品間の連結も含まれる。
また、複数の縦壁としたのは、左右一対の縦壁のみならず3つ以上設けた縦壁構造でもよく、複数の横壁としたのは上下一対の二重の横壁のみならず、三重以上の横壁構造でもよい趣旨である。
上下一対の二重の横壁の場合には、上下対向して一部を部分的に切欠くことで上部に2ヶ所、下部に2ヶ所、合計4ヶ所の切欠き端部が形成されることになるので、ブッシュの外周面とは側面視45°上下にクロスした90°の等間隔に当接することになる。
また、横壁が三重の場合にはブッシュの外周面とは60°等間隔に6ヶ所でそれぞれ水平方向の帯状の接触面で当接することになる。
【0007】
このようなアーム部材はアルミニウム合金の中空断面からなる押出材で容易に製作することが可能であり、2つ以上の縦壁部を有し、当該縦壁部は2つ以上の横壁でつないであることになる。
【0008】
本発明にあって、アーム部材はサスペンションアームであり、当該サスペンションアームは、一方の端部付近にボディ側連結部を有し、他方の端部付近にホイール側連結部を有し、当該ボディ側連結部とホイール側連結部との間にショックアブソーバーの下端部を連結するアブソーバー連結部を有し、前記ボディ側連結部、ホイール側連結部及びアブソーバー連結部のうち、少なくとも1つ以上がブッシュ連結孔であってよい。
【0009】
また、縦壁の下端部付近に厚肉部を形成することで連結部中心よりも下側に曲げ応力に対する中立軸を形成すると、垂直荷重における曲げモーメントに対する断面係数を大きくすることができ、軽量化とともにショックアブソーバーの下端部取り付け位置が下がり、その分だけショックアブソーバーの長さが長くできる。
【発明の効果】
【0010】
本発明にあっては、アーム部材の横壁の切欠き端部がブッシュ部材の周廻りに等間隔に接触支持することになるため、ブッシュにどの方向から振動が負荷されても従来の不均一に当接しているものよりも均一に作用する。
また、アーム部材をアルミニウム合金押出材にて製作すると、縦壁の下端部よりに容易に厚肉部を形成することができるので、上下方向の曲げ荷重に対して中立軸を取付部中心よりも下側に移動でき、その分だけショックアブソーバーの長いものを採用することで乗り心地や操縦安定性を向上することができる。
また、コイルスプリング等の衝撃部材を取り付ける場合も同様の効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明に係るアーム部材においてサスペンションアームとしての実施例を示す。
【図2】サスペンションアーム外観図を示し、(a)は上方から見た斜視図、(b)は下側から見た斜視図を示す。
【図3】サスペンションアームの(a)は側面図、(b)は底面図、(c)はA−A線断面図、(d)はB−B線断面図をそれぞれ示す。
【図4】ブッシュ連結孔の拡大図を示し、(a)は拡大側面図、(b)はブッシュの正面図、(c)はブッシュの斜視図を示す。
【図5】従来のブッシュ嵌着例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明に係るアーム部材は車両の部材間に取り付けられ、引張荷重、圧縮荷重を受ける各種アーム部材に適用でき、特に曲げ荷重等も加わるサスペンション部品に展開するのが効果的である。
以下、サスペンションアームの実施例にて説明する。
【0013】
サスペンションアームとしてのアーム部材10は図1に示すように一方の端部付近がボディ側1のメンバ等に連結支持され、他方の端部付近がホイール側2のアクスルキャリア等に連結支持されている。
アーム部材10はボディ側の連結孔15とホイール側の連結孔17の間であって、ホイール側よりにショックアブソーバー3の下端部側を取り付けるショックアブソーバー連結孔16を有する例になっている。
また、アーム部材10はスタビライザー取付部18を設けてもよく、その他にコイルスプリングの取付部等を有する場合もある。
なお、図1においてGLは路面を表し、連結孔15,16,17の間を結んだ取付中心線よりも、上下方向の曲げ荷重に対する引張応力と圧縮応力の中立軸が下に位置した例になっている。
【0014】
アーム部材10は図2,図3に示すように第1縦壁11と第2縦壁12とを有し、縦壁の上端より内側[図3(c),(d)では下側]の位置を第1横壁13でつなぎ、縦壁の下端より内側[図3(c),(d)では上側]の位置を第2横壁14でつないだ中空断面形状のアルミニウム合金押出材になっている。
左右の縦壁11,12を貫通させて連結孔15,16,17を形成する際に上下の横壁13,14を上下対向した位置で、略同じ大きさのロ字形状に一部切欠く。
図3(c)を例にして説明すると、防振のためのゴム製等のブッシュ20を圧入するためのブッシュ連結孔15の直径tよりも上下の横壁13,14の間隔tの方が小さくなっていて、横壁が二重の場合には図4(a)に示すようにブッシュ20の周面部に45°クロスに切欠き端部が当接するように寸法tをブッシュ圧入径t(圧入後の直径)に対して設定してある。
【0015】
これにより図4(c)に想像線で示すように、a,b,c,dの4ヶ所に水平方向帯状の当接支持面が形成され、a,b,c,dは周廻りに90°毎に等間隔に配置されている。
なお、図4(c)において、想像線e,fで示した部分は縦壁に形成した連結孔端部との接触面である。
【0016】
本実施例においてはボディ側連結孔15、ショックアブソーバー連結孔16、ホイール側連結孔17のいずれも横壁を部分的に切欠いて開口部13a,13b,13c,14a,14b,14cをそれぞれ形成したブッシュ連結孔の例になっているが、そのうちの少なくとも1つ以上がブッシュ連結孔になっていれば本実施例に限定されない。
【0017】
本実施例では、さらに図3に示すように縦壁11,12の下端部付近に厚肉部11a,12aを形成し、先に説明したようにブッシュ20の取付中心よりも下側に中立軸を移動形成した例になっている。
これにより、図1に示すように中立軸が取付中心より寸法dだけ下側に移動した分だけ曲げモーメントにおける断面係数が大きくなり、発生する応力を緩和することができるとともにショックアブソーバー3のストロークを長くすることができる。
なお、厚肉部11a,12aの形状は、本実施例のように内側に突起部を形成した例に限定されるものでなく、徐々に肉厚を大きくしたものや、左右の縦壁の下端部をつないだ形状でもよい。
ただし、縦壁の下端部をつないだ場合には、本発明における横壁には含まれない。
また、全長にわたって厚肉部を形成してもよいが、軽量化の観点からは、図4(a)に示すように応力が集中する部分以外は除肉部11b,11cを形成してもよい。
【符号の説明】
【0018】
1 ボディ側
2 ホイール側
3 ショックアブソーバー
10 アーム部材
11 第1縦壁
11a 厚肉部
12 第2縦壁
12a 厚肉部
13 第1横壁
14 第2横壁
20 ブッシュ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の複数の部材間を連結するアーム部材であって、
アーム部材は複数の連結孔を有し、
当該複数の連結孔のうち、少なくとも1つ以上はブッシュ部材を介したブッシュ連結孔であり、
当該ブッシュ連結孔は、ブッシュ中心軸とは直交方向に延在する複数の縦壁と、
当該複数の縦壁の間を複数の横壁でつないであり、
最も上部の横壁のつなぎ部は縦壁の上端より内側に位置し、最も下部の横壁のつなぎ部は縦壁の下端より内側に位置し、
それぞれの横壁を上下対向するように部分的に切欠き、複数の横壁の切欠き端部がブッシュ部材の外周廻りに概ね等間隔に当接するように配置されていることを特徴とするアーム部材。
【請求項2】
アーム部材は、アルミニウム合金の中空断面からなる押出材で製作してあり、
2つ以上の縦壁部を有し、当該縦壁部は2つ以上の横壁にてつないであることを特徴とする請求項1記載のアーム部材。
【請求項3】
アーム部材はサスペンションアームであり、当該サスペンションアームは、一方の端部付近にボディ側連結部を有し、他方の端部付近にホイール側連結部を有し、当該ボディ側連結部とホイール側連結部との間にショックアブソーバーの下端部を連結するアブソーバー連結部を有し、前記ボディ側連結部、ホイール側連結部及びアブソーバー連結部のうち、少なくとも1つ以上がブッシュ連結孔であることを特徴とする請求項1又は2記載のアーム部材。
【請求項4】
縦壁の下端部付近に厚肉部を形成することで連結部中心よりも下側に曲げ応力に対する中立軸を形成したことを特徴とする請求項3記載のアーム部材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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