説明

車両用ウインドガラス

【課題】ワイパーブレードの上に異物が堆積した状態でワイパーを作動させる場合でも、ウインドガラスの傷付を抑制する。
【解決手段】ワイパーブレード9の先端に可撓性のリップ部10が形成されたワイパー2を備えた車両用ウインドガラス1である。ワイパーブレード9はワイパー2の作動停止時は略水平姿勢をとる。ワイパー2の作動停止時におけるリップ部10の上方近傍部分には、このリップ部10に沿うように、ワイパー2の作動時にリップ部10が乗り越え可能な突出高さを有する突条部11が一体に形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワイパーを備えた車両用ウインドガラスに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、ワイパーを備えた車両用ウインドガラスが知られている。このワイパーのワイパーブレードは、ゴム製で且つその先端にリップ部が形成されているものが多く、このリップ部の先端部をウインドガラス面に摺接させることにより、ウインドガラス面上の雨水等を払拭して運転者等の視界を良好に確保する。
【0003】
ところで、ワイパーブレードは運転者等の視界を確保するためにワイパーの作動停止時はウインドガラスの下縁近傍で略水平姿勢をとるが、ワイパーを長期間使用しない場合には、ワイパーブレード先端のリップ部の上に砂や車両走行時に跳ねた小石などの異物が溜まることがある。リップ部の上に異物が溜まった状態でワイパーを作動させると、この異物がリップ部とウインドガラス面との間に挟まってウインドガラス面に擦りつけられて、ウインドガラスを傷付けるおそれがある。
【0004】
このような異物によるウインドガラスの傷付きを防止するために、例えば、特許文献1には、ワイパーブレードの払拭部(先端部)を断面略円形状とするとともに、この払拭部の外周面の一部に断面波形状をなす波形部が形成されたワイパーブレードのブレードゴムが開示されている。特許文献1では、ワイパーブレード先端が先の鋭いリップ状に形成されていることに起因して、異物の介在によるウインドガラスの傷付きが発生すると考え、波形部が形成された断面略円形状の先端部を線状に密接自在とすることによりウインドガラスの傷付きを確実に防止することができるとしている。
【特許文献1】特開2005−193879号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1では、ワイパーブレードの先端部に形成された波形部の谷部に小石、砂などが嵌ることがあり、谷部に小石、砂などが嵌った状態でワイパーを作動させると、ウインドガラスを傷付けるおそれがある。特に、ウインドガラスが樹脂製の場合、樹脂ガラスの表面の硬度がガラスに比べて低いため、その傷付きが顕著である。
【0006】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、ワイパーブレード先端のリップ部の上に異物が堆積した状態でワイパーを作動させても、ウインドガラスの傷付きを抑制できる技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の発明は、ワイパーブレードの先端に可撓性のリップ部が形成されたワイパーを備えた車両用ウインドガラスであって、上記ワイパーブレードは上記ワイパーの作動停止時は略水平姿勢をとり、上記ワイパーの作動停止時における上記リップ部の上方近傍部分には、該リップ部に沿うように、上記ワイパーの作動時に上記リップ部が乗り越え可能な突出高さを有する突条部が一体に形成されていることを特徴とするものである。
【0008】
第2の発明は、上記第1の発明において、上記突条部は、上記ワイパーの作動初期は上記リップ部が該突条部を乗り越え且つ該作動初期より後の作動時には上記リップ部が該突条部と接触しない位置に形成されていることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0009】
第1の発明によれば、ウインドガラスにはワイパーの作動停止時におけるリップ部の上方近傍部分に、可撓性のリップ部が乗り越え可能な突出高さを有する突条部が形成されているので、ワイパーの作動時にはリップ部が突条部に当接して摺接することにより下方に撓み、突条部を乗り越えると元の形状に戻る。これにより、元の形状に戻るときのリップ部の弾性力によってリップ部の上に堆積した異物を飛散させることができる。したがって、リップ部の上に異物が堆積した状態でワイパーを作動させても、この異物がウインドガラスとリップ部との間に挟まるのを抑えて、ウインドガラスの傷付きを抑制できる。
【0010】
第2の発明によれば、ワイパーの作動初期にはリップ部の弾性力により堆積した異物を飛散させてウインドガラスの傷付きを抑制できるとともに、ワイパーの作動初期より後の作動時にはリップ部が突条部と接触しないので、リップ部の摩耗による劣化、及びリップ部が突条部を乗り越えるときのウインドガラスに対するリップ部の打音の発生を防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0012】
図1は、本実施形態に係るリアウインドガラス1がバックドア4に装着された車両3の後部を示す。リアウインドガラス1には下縁近傍部にリアワイパー2が装着されており、このリアワイパー2は、図2に示すように、ワイパーアーム5とワイパーブレード9とを備えている。
【0013】
上記ワイパーブレード9は、図3に示すように、取付基部13とネック部14とリップ部10とをゴム材料により一体に形成したものである。取付基部13は、リアウインドガラス1とは反対側(ワイパーアーム5側)に配置された横断面矩形の頭部13aと、リアウインドガラス1側に配置された板状の底部13cと、頭部13aと底部13cとを連結する横断面矩形の胴部13bとからなっており、ワイパーブレード9がワイパーアーム5に取り付けられた状態では、頭部13aが上記ワイパーアーム5のホルダー8に把持される。
【0014】
ワイパーブレード9の先端、すなわち、上記底部13cのリアウインドガラス1側にはネック部14を介して可撓性のリップ部10が形成されている。このリップ部10は、リアワイパー2の動作時に後述する突条部11と当接して摺接することにより力を受けるとワイパーブレード9の移動方向と反対方向に撓む一方、この力が解放されると元の形状に戻る弾性力を有している。このリップ部10がリアウインドガラス1の外面上を摺動することにより、リアウインドガラス1面上の雨水等を払拭する。
【0015】
上記ワイパーアーム5は、リアウインドガラス1に形成された貫通孔1aを貫通しているワイパーピボット軸6の先端部に取り付けられている。そして、ワイパーブレード9は、そのリップ部10がワイパーアーム5を介して常時リアウインドガラス1に押圧されるようになっている。すなわち、ワイパーアーム5はバネ(図示せず)によりリアウインドガラス1側に付勢されている。ワイパーアーム5のリアウインドガラス1側の先端縁部には、ワイパーブレード9を把持するためのホルダー8が設けられている。ホルダー8は、図3に示すように、リアウインドガラス1側の面に開口8aが形成された、ワイパーアーム5と同じ方向に延びている略筒状の部材であり、略C字状の横断面を有している。このホルダー8にワイパーブレード9の取付基部13の頭部13aを嵌入することにより、ワイパーブレード9がワイパーアーム5と略同じ方向に延びた状態でワイパーアーム5に固定される。また、ワイパーアーム5は車内側に備えられたケーシング7内に収納配置されているワイパーモータ及び駆動機構(図示せず)にワイパーピボット軸6を介して連結されており、ワイパーアーム5がワイパーモータ及び駆動機構に駆動されることによりリアワイパー2がワイパーピボット軸6を中心として回動する。
【0016】
リアワイパー2は、図7に示すように、作動停止時は所定停止位置(図7中のAの位置)でワイパーブレード9が略水平姿勢をとるとともに、作動時には異なる範囲で回動するように構成されている。具体的には、図7に示すように、リアワイパー2の作動初期には、ワイパーブレード9が所定停止位置Aと第1折返し位置(図7中のCの位置)との間で回動する一方、リアワイパー2の作動初期より後の作動時(以下、払拭作動時という)には、ワイパーブレード9が第1折返し位置Cと第2折返し位置(図7中のBの位置)との間で回動して往復摺動を繰り返すように構成されている。
【0017】
上記リアウインドガラス1は樹脂製であり、図4及び図5に示すように、その外表面上に車幅方向に延びる突条部11が一体形成されている。この突条部11は、リアウインドガラス1の、所定停止位置Aの上方近傍部分に配置されており、略水平に延びていてワイパーブレード9と略同じ長さを有する。換言すれば、この突条部11は、リアワイパー2の作動停止時におけるリップ部10の上方近傍部分にリップ部10に沿うように形成されている。
【0018】
また、突条部11は、図7に示すように、第2折返し位置Bの下方、すなわち、所定停止位置Aと第2折返し位置Bとの間に位置している。つまり、突条部11は、リアワイパー2の作動初期はリップ部10が突条部11を乗り越えるが、リアワイパー2の払拭作動時にはリップ部10が突条部11と接触しない位置に形成されている。突条部11をこのような位置に形成するのは、払拭作動時にリップ部10が突条部11と繰り返し接触することにより、リップ部10が摩耗するのを防止するとともに、リップ部10が突条部11を乗り越えるときのリアウインドガラス1に対するリップ部10の打音の発生を防止するためである。
【0019】
突条部11は、図5に示すように、リアウインドガラス1から最も突出した頂部11aよりも下側の部分が横断面4分の1円形状であり、頂部11aよりも上側の部分が上方に向かって徐々に薄肉になるように傾斜面11bが形成されている。そして、頂部11aのウインドガラス1からの高さ、すなわち、突条部11の突出高さはリアワイパー2の作動時にリップ部10が乗り越え可能な高さに形成されている。突条部11の突出高さをこのような高さに設定しているのは、可撓性のリップ部10を突条部11を乗り越える際に撓ませて、リップ部10が突条部11の頂部11aを乗り越えて元の形状に戻るときの弾性力を利用して、リップ部10に堆積した砂や小石等の異物12を飛散させるためである(図6(a)〜(c)参照)。また、突条部11に傾斜面11bを形成しているのは、突条部11とリアウインドガラス1との境界部に砂や小石等が堆積するのを防止するためである。
【0020】
−リアワイパーの動作−
〈リアワイパーの作動初期〉
図6(a)に示すように、リアワイパー2の作動停止期間中に、砂や小石などの異物12がリップ部10の上に堆積した状態でリアワイパー2を作動させると、図6(b)に示すように、リップ部10が突条部11に当接して摺接することで下向きに力を受けて、異物12が堆積した状態のままリップ部10が下方に撓む。そして、図6(c)に示すように、リップ部10が突条部11の頂部11aを乗り越えると、リップ部10に働く下向きの力が解放されて、リップ部10が元の形状に戻る。その際のリップ部10の弾性力によって、リップ部10に堆積した砂や小石等の異物12が飛散する。
【0021】
リップ部10が突条部11を乗り越えた後、リアワイパー2は図7に示す反時計回りに回動して第1折返し位置Cに達する。そして、リアワイパー2が第1折返し位置Cから図7に示す時計回りに回動して、第2折返し位置Bに達すると作動初期が終了する。
【0022】
また、リップ部10に堆積した異物12の飛散をより確実に行うために、作動初期にワイパーブレード9を所定停止位置Aと第1折返し位置Cとの間で複数回回動させることも可能である。このようにすれば、所定停止位置Aから図7に示す反時計回りに回動する度に、リップ部10に堆積した異物12を飛散させることができる。
【0023】
〈リアワイパーの払拭作動時〉
作動初期より後は、リアワイパー2は第1折返し位置Cと第2折返し位置Bとの間で往復回動を繰り返し行う。つまり、リアワイパー2が停止するまでは、リップ部10が突条部11に接触することはない。
【0024】
−効果−
本実施形態では、リアウインドガラス1にはリアワイパー2の作動停止時におけるリップ部10の上方近傍部分に、可撓性のリップ部10が乗り越え可能な突出高さを有する突条部11が形成されているので、リアワイパー2の作動時にはリップ部10が突条部11に当接して摺接することにより下方に撓み、突条部11を乗り越えると元の形状に戻る。これにより、元の形状に戻るときのリップ部10の弾性力によってリップ部10の上に堆積した異物12を飛散させることができる。したがって、リップ部10の上に異物12が堆積した状態でリアワイパー2を作動させても、この異物12がリアウインドガラス1とリップ部10との間に挟まるのを抑えて、リアウインドガラス1の傷付きを抑制できる。
【0025】
本実施形態では、突条部11が所定停止位置Aと第2折返し位置Bとの間に形成されているので、リアワイパー2の作動初期にはリップ部10の弾性力により堆積した異物12を飛散させてリアウインドガラス1の傷付きを抑制できるとともに、リアワイパー2の払拭作動時にはリップ部10が突条部11と接触しないので、リップ部10の摩耗による劣化、及びリップ部10が突条部11を乗り越えるときのリアウインドガラス1に対するリップ部10の打音の発生を防止することができる。
【0026】
(その他の実施形態)
上記実施形態では、車両3のリアウインドガラス1に突条部11を形成したが、これに限らず、車両3のフロントウインドガラスに突条部11を形成してもよい。これにより、フロントワイパーのリップ部10に堆積した砂や小石等の異物12を飛散させて、フロントウインドガラスの傷付きを抑制できる。
【0027】
上記実施形態では、ワイパーブレード9は取付基部13とネック部14とリップ部10とを備え、取付基部13が頭部13aと底部13cと胴部13bとからなるものを用いたが、ワイパーブレード9の先端に可撓性のリップ部10が形成されているのであれば、どのような横断面形状でもよい。
【0028】
上記実施形態では、突条部11は、下側部分が横断面4分の1円形状であり、上側部分が上方に向かって徐々に薄肉になるように傾斜面11bを形成しているが、リアワイパー2の作動時にリップ部10が乗り越え可能な突出高さを有するのであれば、様々な横断面形状の突条部11を採用することができる。例えば、突条部11の上側部分の傾斜面11bを横断面4分の1円形状とし下側部分の横断面4分の1円形状と合わせて横断面2分の1円形状としてもよい。
【0029】
上記実施形態では、リアウインドガラス1は、樹脂製のガラスであるが、樹脂材料以外の材料で成形したガラスであってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0030】
以上説明したように、本発明は、ワイパーを備えた車両用ウインドガラス等について有用である。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本実施形態にかかるリアウインドガラスを備えた車両の斜視図である。
【図2】ワイパー装置の取付状態を示すリアウインドガラスの横断面図である。
【図3】ワイパーブレードの横断面図である。
【図4】リアウインドガラスの正面図である。
【図5】図4のv−v線の矢視断面図である。
【図6】作動初期のリップ部の動作を説明する横断面図である。
【図7】リアワイパーの作動範囲を模式的に示すリアウインドガラスの正面図である。
【符号の説明】
【0032】
1 リアウインドガラス(車両用ウインドガラス)
2 リアワイパー(ワイパー)
9 ワイパーブレード
10 リップ部
11 突条部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワイパーブレードの先端に可撓性のリップ部が形成されたワイパーを備えた車両用ウインドガラスであって、
上記ワイパーブレードは上記ワイパーの作動停止時は略水平姿勢をとり、
上記ワイパーの作動停止時における上記リップ部の上方近傍部分には、該リップ部に沿うように、上記ワイパーの作動時に上記リップ部が乗り越え可能な突出高さを有する突条部が一体に形成されていることを特徴とする車両用ウインドガラス。
【請求項2】
請求項1記載の車両用ウインドガラスにおいて、
上記突条部は、上記ワイパーの作動初期は上記リップ部が該突条部を乗り越え且つ該作動初期より後の作動時には上記リップ部が該突条部と接触しない位置に形成されていることを特徴とする車両用ウインドガラス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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