説明

車両用ウォッシャ装置

【課題】部品点数を低減し配管ホースの配索を簡単にしつつも、ウォッシャノズルの噴射角度を適宜(任意)に変更することができ、使用状況に応じて適切に着水させることができる車両用ウォッシャ装置を得る。
【解決手段】ウォッシャ装置10のウォッシャノズル72は、ノズル本体26がベース部材28に回動可能に支承されている。また、洗浄液送給用の配管ホース78には長手方向に伸縮可能な伸縮部64が設けられており、圧送された洗浄液によって伸縮されるようになっている。したがって、洗浄液が高圧で送給された場合には、配管ホース78の伸縮部64が伸長してウォッシャノズル72の噴射口34がウインドガラスの上方へ向けて回動し、低圧状態の噴射に設定された場合には、配管ホース78の伸縮部64の伸長量が小さくなりもしくは伸長せず、ウォッシャノズル72の噴射口34がウインドガラスの下方に向けられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両のウインドシールドガラス等の洗浄を行うために洗浄液を噴射する車両用ウォッシャ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両のウインドシールドガラス等の洗浄を行うためのウォッシャ装置では、ウォッシャノズルに洗浄液を送給(圧送)させるためのウォッシャポンプを備えているが、このウォッシャポンプのうち、異なる2つの洗浄液送給系統へそれぞれ互いに異なる吐出圧で洗浄液を送給できるものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
前記特許文献1に示すような車両用ウォッシャ装置では、ウォッシャポンプが2つの吐出口を備えており、モータ(インペラ)の回転方向を切り替えることにより、一方の吐出口または他方の吐出口にそれぞれ洗浄液を吐出することができ、しかも、一方の吐出口と他方の吐出口とで吐出圧を異ならせた構成となっている。
【0004】
この車両用ウォッシャ装置によれば、車速が所定値以上の高速時(車両走行時の気流の影響を受け易い状態)には洗浄液を高圧で吐出してウォッシャノズルより流速の速い液粒を噴射し、気流の影響による着水エリアの移動量を低減させることができ、一方、車速が所定値未満の低速時もしくは駐停車時にはもともと気流の影響が少ないので、洗浄液を低圧で吐出してウォッシャノズルより比較的流速の遅い液粒を噴射することで洗浄液の噴射流量を節約しながらも目標着水エリアに着水させることができる。
【0005】
しかしながら、このような従来の車両用ウォッシャ装置では、ウォッシャノズルの噴射角度が低噴射角度のものと高噴射角度のものとをそれぞれ用意しなければならず、これをドライバ席側と助手席側とにそれぞれ対応して配置する場合には、さらに部品点数が多くなると共に、洗浄液供給用の配管ホースの配索も複雑となってしまうといった問題点があった。
【0006】
また、前述の如きウォッシャノズルの噴射角度は、予め固定された(画一的に設定された)2種類の噴射角度であったため、適用の範囲や使用状況に応じた噴射角度の設定に限界があった。
【特許文献1】特開2004−314792号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は上記事実を考慮し、部品点数を低減し配管ホースの配索を簡単にしつつも、ウォッシャノズルの噴射角度を適宜(任意)に変更することができ、使用状況に応じて適切に着水させることができる車両用ウォッシャ装置を得ることが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に係る発明の車両用ウォッシャ装置は、車両のウインドガラスに洗浄液を噴射するウォッシャノズルと、前記洗浄液を貯留するタンクと、前記ウォッシャノズルに洗浄液を圧送するポンプ装置と、前記ポンプ装置により圧送された洗浄液を前記ウォッシャノズルに送給する配管ホースと、前記ポンプ装置の駆動を指令するウォッシャ指令スイッチと、を有する車両用ウォッシャ装置において、前記ウォッシャ指令スイッチは、前記ポンプ装置の吐出圧力を少なくとも高圧または低圧にて設定して洗浄液を吐出させる吐出圧力設定手段を有し、前記配管ホースは、前記ウォッシャノズル近傍においてその長手方向に伸縮可能な伸縮部を有し、前記吐出圧力設定手段により吐出圧力が設定されたポンプ装置からの洗浄液によって前記伸縮部が伸縮され、前記ウォッシャノズルは、噴射口が前記ウインドガラスの上下方向に向けて回動可能に車体に取り付けられ、前記配管ホースの前記伸縮部が伸長したとき前記噴射口が前記ウインドガラスの上方へ向け回動し、前記配管ホースの前記伸縮部が収縮したとき前記噴射口が前記ウインドガラスの下方へ向け回動する、ことを特徴としている。
【0009】
請求項1記載の車両用ウォッシャ装置では、ウォッシャ指令スイッチが駆動操作されたときには、ポンプ装置から圧送された洗浄液がウォッシャノズルから噴射されて車両のウインドガラスに着水する。
【0010】
ここで、この車両用ウォッシャ装置では、ウォッシャ指令スイッチの吐出圧力設定手段によって、ポンプ装置の吐出圧力を少なくとも高圧または低圧に設定することができる。
【0011】
すなわち、高圧と設定した場合には、ポンプ装置の高い吐出圧力により配管ホースの伸縮部が伸長してウォッシャノズルの噴射口がウインドガラスの上方へ向けて回動する。これにより、高速走行時などの走行風の影響を受け難く上方へ向けて高圧力で噴射され、着水エリアの移動量(目標着水エリアからの着水変移量)を低減させる。さらに、高圧状態の噴射から低圧状態の噴射に設定変更した場合には、配管ホースの伸縮部が伸長状態から収縮してウォッシャノズルの噴射口がウインドガラスの下方へ向けて回動する。
【0012】
一方、低圧と設定した場合には、配管ホースの伸縮部の伸長量が小さくなりもしくは伸長せず、ウォッシャノズルの噴射口がウインドガラスの下方に向けられ、少量の洗浄液が低圧力にて噴射される。これにより、洗浄液の噴射流量を節約しながらも目標着水エリアに着水させることができる。
【0013】
このように、請求項1記載の車両用ウォッシャ装置では、部品点数を低減して配管ホースの配索を簡単にしつつも、ウォッシャノズルの噴射角度を適宜(任意)に変更することができ、使用状況に応じて適切に着水させることができる。
【0014】
請求項2に係る発明の車両用ウォッシャ装置は、請求項1記載の車両用ウォッシャ装置において、前記吐出圧力設定手段は、前記ポンプ装置の吐出圧力を前記高圧から前記低圧まで無段階にもしくは多段階に設定変更可能である、ことを特徴としている。
【0015】
請求項2記載の車両用ウォッシャ装置では、ポンプ装置の吐出圧力を高圧から低圧まで無段階にもしくは多段階に設定変更可能であるため、その吐出圧力を利用してウォッシャノズルの噴射口角度を適宜(任意)に変更することができる。
【0016】
請求項3に係る発明の車両用ウォッシャ装置は、請求項1または請求項2記載の車両用ウォッシャ装置において、前記吐出圧力設定手段は、前記ポンプ装置のポンプモータの回転数を可変させて前記吐出圧力を設定する、ことを特徴としている。
【0017】
請求項3記載の車両用ウォッシャ装置では、ポンプモータの回転数を可変することでインペラの回転数が可変され、ポンプ装置の吐出圧力を変更することが可能であり、簡単な構成で達成できる。
【0018】
請求項4に係る発明の車両用ウォッシャ装置は、請求項3記載の車両用ウォッシャ装置において、前記吐出圧力設定手段は、前記ポンプ装置の前記ポンプモータに直列に接続された可変抵抗器である、ことを特徴としている。
【0019】
請求項4記載の車両用ウォッシャ装置では、ポンプモータに直列に接続された可変抵抗器を調整することで、ポンプモータへの印加電圧を変更して回転数(すなわち、インペラの回転数)を変更し、吐出圧力を変更することができ、吐出圧力設定手段を簡単な構成で達成できる。
【0020】
請求項5に係る発明の車両用ウォッシャ装置は、請求項1乃至請求項4の何れか1項に記載の車両用ウォッシャ装置において、前記ウォッシャノズルは、前記配管ホースが接続される接続部と前記噴射口とが設けられたノズル本体と、車体に固定されるベース部材と、前記ノズル本体及びベース部材の一方に設けられた回動軸と、前記ノズル本体及びベース部材の他方に設けられ前記回動軸を支承する軸受部と、を有し、前記接続部は、前記回動軸に対し前記噴射口と反対側に配設されている、ことを特徴としている。
【0021】
請求項5記載の車両用ウォッシャ装置では、接続部に接続された配管ホースが伸長されるとノズル本体は噴射口が上方を向き、一方、接続部に接続された配管ホースが収縮するとノズル本体は噴射口が下方を向くよう、簡単な構成にて実現できる。
【0022】
請求項6に係る発明の車両用ウォッシャ装置は、請求項5記載の車両用ウォッシャ装置において、前記ウォッシャノズルの前記ベース部材は、前記ノズル本体の上方への回動限界位置を設定する上限ストッパを有する、ことを特徴としている。
【0023】
請求項6記載の車両用ウォッシャ装置では、上限ストッパによってノズル本体の上方への回動が制限されるため、配管ホースの伸縮によりノズル本体が上方へ向けて回動し過ぎて噴射口から噴射された洗浄液がウインドガラスを超えて上方へスプレーアウトするほどまで回動されないようにすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
図1(A)には本発明の第1の実施の形態に係るウォッシャ装置70の全体構成が断面図を含んで示されている。
【0025】
ウォッシャ装置70は、ポンプ装置としてのモータポンプ12、一対のウォッシャノズル72、バルブ装置74、制御装置20、及びウォッシャ指令スイッチ62を備えている。
【0026】
モータポンプ12は、洗浄液圧送用のインペラが出力軸に固定された正逆回転可能なモータ(図示省略)を有しており、さらに、洗浄液を吐出(圧送)する高圧側吐出口22と低圧側吐出口24とを備えている(所謂「ダブルアウトレットタイプ」とされている)。このモータポンプ12は、モータの回転方向によって高圧側吐出口22と低圧側吐出口24から択一的に洗浄液を吐出することができ、しかも、これら高圧側吐出口22と低圧側吐出口24とで吐出圧が異なって設定されている。
【0027】
なお、前述の如きモータポンプ12における高圧吐出(高圧側吐出口22からの吐出)と低圧吐出(低圧側吐出口24からの吐出)とを切替える方法としては、例えば、前述の如く高圧吐出と低圧吐出でモータの回転方向を切り替えるように構成し、一方の回転方向においては高回転数で回転させて高圧吐出とし、他方の回転方向においては低回転数で回転させて低圧吐出とするものである。
【0028】
またここで、前述の如きモータポンプ12の回転数Nは、以下の関係式によって得られるため、当該回転数Nを変更する(切り替える)方法としては、例えば、モータ端子電圧Vを正転と逆転とで変化させることで実施できる。
【0029】
モータの回転数N(rpm)=[{60(V−RI−Vb)}/φZ]×108
V:モータ端子電圧 R:アーマチャ巻線抵抗 I:モータ電流
b:ブラシ抵抗 φ:総磁束 Z:導体数
また、高圧吐出と低圧吐出とを切替える方法としては、その他に、インペラの形状を変えるとか、吐出口の形状を異ならせるなどの方法がある、何れによっても実施可能である。
【0030】
一方、各ウォッシャノズル72は、それぞれ独立して車体に固定されており、車両の低速走行時または駐停車時であってもあるいは高速走行時であっても共に使用される。
【0031】
ここで、図2にはウォッシャノズル72の構成及び全体的な取付け状態が側面図にて示されている。また、図3(A)にはウォッシャノズル72の構成が正面図にて示されており、図3(B)にはウォッシャノズル72の構成が側面図にて示されている。
【0032】
これらのウォッシャノズル72は、ノズル本体26とベース部材28によって構成されている。図4(A)及び図4(B)に示す如く、ノズル本体26の長手方向各端部には、配管ホース78が接続される接続部32と洗浄液を噴射する噴射口34とが設けられており、さらに、ノズル本体26の長手方向中央部分(接続部32と噴射口34との間)には、回動軸36が左右両側へ突出して設けられている。すなわち、接続部32は、回動軸36に対して噴射口34と反対側に配設された構成となっている。このノズル本体26は、ベース部材28に回動可能に支承されている。
【0033】
ベース部材28は、図5(A)及び図5(B)に示す如く、全体として枠状に構成されており、その側壁部分には、ノズル本体26の回動軸36に対応して軸受部38が形成されている。この軸受部38に回動軸36が嵌入することで、ノズル本体26がベース部材28に回動可能に支承された構成となっている。またベース部材28の前後両端部分には、係止爪44、46が形成されており、図2に示す如く、これらの係止爪44、46が車体のウインドガラス近傍のボディーパネルP(例えば、エンジンフードの後端縁部)に係止することで、ベース部材28がノズル本体26を支承した状態で車体に固定される構成となっている。したがって、このベース部材28の車体固定状態では、ノズル本体26の噴射口34がウインドガラスの上下方向に向けて回動可能に車体に取り付けられた状態となる。
【0034】
さらに、ベース部材28の上壁内周部分には、ノズル本体26の上方への回動限界位置を設定する上限ストッパ58が設けられている。この上限ストッパ58は、上述の如くノズル本体26の噴射口34がウインドガラスの上方向に向けて回動した際にノズル本体26に係合して、ノズル本体26の上方への回動を制限することができる。
【0035】
これらのウォッシャノズル72は、図6に示す如く、運転席D側及び助手席P側のウインドガラスGに対応してそれぞれ共に独立して配置されており、運転席側ワイパブレード110の払拭範囲DHと助手席側ワイパブレード112の払拭範囲PHのそれぞれに洗浄液を噴射することができる。
【0036】
またさらに、以上の構成のモータポンプ12とウォッシャノズル72との間にはバルブ装置74が配置されている。
【0037】
バルブ装置74は、高圧側流入口40及び低圧側流入口42が形成されると共に、図1(B)に示す如く一対の流出口76が形成されている。この高圧側流入口40と一対の流出口76とは弁室48を介して連通しており、また、低圧側流入口42と一対の流出口76とも弁室48を介して連通している。弁室48には、弁体50とこの弁体50を付勢する付勢手段としてのスプリング52が配置されている。
【0038】
この弁体50は、弁室48において、低圧側流入口42と一対の流出口76との連通を阻止する方向にスプリング52によって付勢されており、通常は、高圧側流入口40と一対の流出口76とを連通すると共に低圧側流入口42と一対の流出口76との連通を遮断するように保持されている。一方、スプリング52の付勢力に抗して弁体50が動作(移動)すると、低圧側流入口42と一対の流出口76とを連通すると共に高圧側流入口40と一対の流出口76との連通を遮断するように構成されている。
【0039】
以上の構成のバルブ装置74は、その高圧側流入口40が配管ホース54を介してモータポンプ12の高圧側吐出口22に接続され、低圧側流入口42が配管ホース56を介してモータポンプ12の低圧側吐出口24に接続されている。さらに、一対の流出口76は、配管ホース78を介してそれぞれウォッシャノズル72の接続部32に接続されている。
【0040】
ここで、図1(A)及び図2に示す如く、各配管ホース78には、ウォッシャノズル72の近傍においてその長手方向に伸縮可能な伸縮部64を有している。この伸縮部64は、所謂「蛇腹ホース」となっており、モータポンプ12から圧送された洗浄液によって伸縮されるようになっている。したがって、モータポンプ12の高圧側吐出口22から洗浄液が高圧で送給された場合には、配管ホース78の伸縮部64が伸長してウォッシャノズル72の噴射口34がウインドガラスの上方へ向けて回動し、高圧状態の噴射から低圧状態の噴射に設定変更してモータポンプ12の低圧側吐出口24から洗浄液が送給されると、配管ホース78の伸縮部64が伸長状態から収縮してウォッシャノズル72の噴射口34がウインドガラスの下方へ向けて回動する。また一方、低圧状態の噴射に設定されてモータポンプ12の低圧側吐出口24から洗浄液が送給される場合には、配管ホース78の伸縮部64の伸長量が小さくなりもしくは伸長せず、ウォッシャノズル72の噴射口34がウインドガラスの下方に向けられる構成である。
【0041】
なお、この配管ホース78の伸縮部64は、自然状態(無負荷状態)では「収縮した状態」となっている。
【0042】
またさらに、モータポンプ12には、制御装置20が接続されている。制御装置20には、ウォッシャ指令スイッチ62が接続されている。ウォッシャ指令スイッチ62は、前記モータポンプ12の吐出圧力を高圧または低圧にて設定して洗浄液を吐出させる吐出圧力設定手段としての機能も有しており、前記何れかの吐出圧力を選択することができるように構成されている。
【0043】
ウォッシャ指令スイッチ62が駆動操作されたときには、モータポンプ12を駆動制御することができると共に、モータポンプ12の吐出圧力を高圧または低圧にて設定して洗浄液を吐出させることができる。すなわち、ウォッシャ指令スイッチ62を選択的に操作することで、モータポンプ12によって高圧で高圧側吐出口22から洗浄液を吐出するか、あるいは、モータポンプ12によって低圧で低圧側吐出口24から洗浄液を吐出することができるようになっている。また、このウォッシャ指令スイッチ62は、運転席Dのハンドル近傍に配置されている。
【0044】
次に本第1の実施の形態の作用を説明する。
【0045】
上記構成の車両用ウォッシャ装置70では、ウォッシャ指令スイッチ62が駆動操作されると、モータポンプ12から圧送された洗浄液がウォッシャノズル72から噴射されて車両のウインドガラスGに着水する。
【0046】
この場合、このウォッシャ装置70では、モータポンプ12の2つの吐出口(高圧側吐出口22または低圧側吐出口24)と一対のウォッシャノズル72とを連通する流路が、バルブ装置74によって自動的に切り替えられる。
【0047】
すなわち、モータポンプ12で洗浄液を高圧吐出する際には、バルブ装置74の弁体50が、高圧側流入口40と一対の流出口76とを連通すると共に低圧側流入口42と一対の流出口76との連通を遮断するように保持されているため、モータポンプ12の高圧側吐出口22と一対のウォッシャノズル72とが連通されると共に、モータポンプ12の低圧側吐出口24と一対のウォッシャノズル72との連通が遮断される。一方、モータポンプ12で洗浄液を低圧吐出する際には、バルブ装置74の弁体50がモータポンプ12の低圧側吐出口24からの吐出圧によってスプリング52の付勢力に抗して移動して、低圧側流入口42と一対の流出口76とを連通すると共に高圧側流入口40と一対の流出口76との連通を遮断する。これにより、モータポンプ12の低圧側吐出口24と一対のウォッシャノズル72とが連通されると共に、モータポンプ12の高圧側吐出口22と一対のウォッシャノズル72との連通が遮断される。
【0048】
ここで、この車両用ウォッシャ装置70では、ウォッシャ指令スイッチ62によって、モータポンプ12の吐出圧力を高圧または低圧に設定することができる。
【0049】
すなわち、ウォッシャ指令スイッチ62を選択的に操作することでモータポンプ12によって高圧で高圧側吐出口22から洗浄液を吐出すると、ウォッシャノズル72から洗浄液が高圧で噴射されて車両のウインドガラスGに着水する。しかもこのとき、図2に二点差線で示す如く、モータポンプ12の高い吐出圧力により配管ホース78の伸縮部64が伸長してウォッシャノズル72の噴射口34がウインドガラスの上方へ向けて回動する。これにより、高速走行時などの走行風の影響を受け難く上方へ向けて高圧力で噴射され、着水エリアの移動量(目標着水エリアからの着水変移量)を低減させることができる。すなわち、一般的に、車両の高速走行時には噴射ノズルから噴射された洗浄液は、図6に破線でエリアYにて示す如く、気流の影響を受けて目標着水エリアXよりも下方へ移動して着水してしまう。この点、本第1の実施の形態に係るウォッシャ装置70では、車両の高速走行時等において洗浄液をモータポンプ12によって高圧で吐出して流速の速い液粒をウォッシャノズル72から噴射し、これにより気流の影響による着水エリアの移動量(目標着水エリアXからの着水変移量)を低減させることができる。
【0050】
しかもこの場合、ウォッシャノズル72には、ベース部材28にノズル本体26の上方への回動限界位置を設定する上限ストッパ58が設けられているため、上述の如くノズル本体26の噴射口34がウインドガラスの上方向に向けて回動した際にノズル本体26に係合してノズル本体26の上方への回動を制限することができるため、配管ホース78の伸縮によりノズル本体26が上方へ向けて回動し過ぎて噴射口34から噴射された洗浄液がウインドガラスを超えて上方へスプレーアウトすることを防止できる。
【0051】
さらに、高圧状態の噴射から低圧状態の噴射に設定変更した場合には、配管ホース78の伸縮部64が伸長状態から収縮してウォッシャノズル72の噴射口34がウインドガラスの下方へ向けて回動する。
【0052】
一方、ウォッシャ指令スイッチ62を選択的に操作することでモータポンプ12によって低圧で低圧側吐出口24から洗浄液を吐出すると、ウォッシャノズル72から洗浄液が低圧で噴射されて車両のウインドガラスGに着水する。しかもこのときには、配管ホース78の伸縮部64の伸長量が小さくなりもしくは伸長せず、ウォッシャノズル72の噴射口34がウインドガラスの下方に向けられ、少量の洗浄液が低圧力にて噴射される。これにより、洗浄液の噴射流量を節約しながらも目標着水エリアに着水させることができる。すなわち、車両の低速走行時もしくは駐停車時等においては、もともと気流の影響が少ないので、洗浄液をモータポンプ12によって低圧で吐出して比較的流速の遅い液粒をウォッシャノズル72から噴射し、洗浄液の噴射流量を節約しながらも目標着水エリアXに着水させることができる。
【0053】
またしかも、この車両用ウォッシャ装置70では、従来のウォッシャ装置の如くウォッシャノズルの噴射角度が低噴射角度のものと高噴射角度のものとをそれぞれ用意する必要がなく、さらにこれをドライバ席D側と助手席P側とにそれぞれ対応して配置する必要がなくなる。したがって、部品点数が不要に多くなったり、洗浄液供給用の配管ホース78の配索が複雑となってしまうといった問題を全く解消することができる。
【0054】
以上の如く、本第1の実施の形態に係る車両用ウォッシャ装置70では、部品点数を低減して配管ホース78の配索を簡単にしつつも、ウォッシャノズル72の噴射角度を適宜(任意)に変更することができ、使用状況に応じて適切に着水させることができる。
【0055】
なお、前述した第1の実施の形態においては、モータポンプ12を駆動制御するウォッシャ指令スイッチ62によって、モータポンプ12の吐出圧力を高圧または低圧にて設定して洗浄液を吐出させることができる構成として(高圧で高圧側吐出口22から洗浄液を吐出するか、低圧で低圧側吐出口24から洗浄液を吐出するか)説明したが、これに限らず、車両の走行速度に応じてモータポンプ12の吐出圧力を高圧または低圧にて設定して洗浄液を吐出させることができる構成としてもよい。
【0056】
この場合には、ウォッシャスイッチ62のみならず、制御装置20に車両の走行速度を検出する車速センサを接続した構成とし、ウォッシャスイッチ62が駆動操作されたときにモータポンプ12を駆動制御することができると共に、ウォッシャスイッチ62が駆動操作されたときには車両の走行速度検出信号が入力されるように構成とする。しかもこの場合、制御装置20は、入力された前記車両の走行速度検出信号に基づいて、車両が所定速度以上と判断されたときにはモータポンプ12によって高圧で高圧側吐出口22から洗浄液を吐出し、車両が所定速度未満と判断されたときにはモータポンプ12によって低圧で低圧側吐出口24から洗浄液を吐出するように構成する。
【0057】
ここで、図7には、上記の如く構成した場合にウォッシャスイッチ62が駆動操作されたときの装置の作動プログラムが流れ図にて示されている。
【0058】
すなわち、ウォッシャスイッチ62が駆動操作されたときには、ステップ99において車速設定(吐出圧力の選択のための速度設定:例えば、80km/h)が成され、ステップ100において、車両の走行速度が車速センサによって検出され当該走行速度検出信号が制御装置20に入力される。次いで、ステップ102において、車両が所定速度(例えば、前記80km/h)以上で走行しているか否かが判断される。
【0059】
車両が所定速度以上と判断されたときには、ステップ104へ進み、モータポンプ12によって高圧で洗浄液が吐出され、前述と同様にウォッシャノズル72から洗浄液が高圧で噴射されて車両のウインドガラスGに着水する。一方、ステップ102において車両が所定速度未満と判断されたときには、ステップ106へ進み、モータポンプ12によって低圧で洗浄液が吐出され、ウォッシャノズル72から洗浄液が低圧で噴射されて車両のウインドガラスGに着水する。
【0060】
このように、車両の走行速度に応じてモータポンプ12の吐出圧力を高圧または低圧にて設定して洗浄液を吐出させることができる構成とした場合であっても、高圧噴射または低圧噴射に応じてウォッシャノズル72を回動させてウォッシャノズル72の噴射角度を適宜(任意)に変更することができ、部品点数を低減して配管ホース78の配索を簡単にしつつも、使用状況に応じて適切に着水させることができる。
【0061】
また、前述した第1の実施の形態においては、モータポンプ12における高圧吐出(高圧側吐出口22からの吐出)と低圧吐出(低圧側吐出口24からの吐出)とを切替える方法として、高圧吐出と低圧吐出でモータの回転方向を正逆に切り替える構成として説明したが、モータポンプ12の吐出圧力を切り替える(変更する)方法としてはこれに限らず、例えばPWM制御することで一方向に回転するモータポンプ12の回転数を可変させて前記吐出圧力を設定(変更)するように構成することもできる。なお、このような構成とした場合には、このモータポンプ12は、高圧側吐出口22と低圧側吐出口24に代えて、単一の吐出口を備えた構成(所謂「シングルアウトレットタイプ」)となる。このようにポンプモータ12の回転数を可変させて前記吐出圧力を設定する構成とした場合には、ポンプモータ12の回転数を可変することでインペラの回転数が可変され、モータポンプ12の吐出圧力を変更することが可能であり、簡単な構成で達成できる。
【0062】
またさらに、モータポンプ12において高圧吐出と低圧吐出とを2段階で切替えるのみならず、モータポンプ12の吐出圧力を高圧から低圧まで無段階にもしくは多段階に設定変更可能なように構成することもできる。
【0063】
例えば、図8に概略的な回路図にて示す如く、吐出圧力設定手段としての可変抵抗器66をポンプモータ12に直列に接続した構成とすれば実現可能である。この吐出圧力設定手段としての可変抵抗器66も、ウォッシャ指令スイッチ62と共に運転席Dのハンドル近傍に配置されている。このように吐出圧力設定手段として可変抵抗器66を用いた場合には、当該可変抵抗器66を調整することで、ポンプモータ12への印加電圧を変更して回転数(すなわち、インペラの回転数)を変更し、吐出圧力を変更することができ、吐出圧力設定手段を簡単な構成で達成できる。
【0064】
また、上記第1の実施形態では、配管ホース78に設けた伸縮部64を、自然状態(無負荷状態)では伸縮状態とし、洗浄液が圧送された圧力に応じて伸長することでウォッシャノズル72が回動されることとしたが、図10に示すように、回動軸36周りにウォッシャノズル72とベース部材28との間にトーションスプリング200を設けてウォッシャノズル72を低位置側に回動する回動力を付与するようにしてもよい。これにより、より確実に、しかも応答性よく収縮させてウォッシャノズル72を初期位置である低位置に戻すことができる。
【0065】
次に、本発明の第2の実施の形態を説明する。なお、前記第1の実施の形態と基本的に同一の部品には、前記第1の実施の形態と同一の符号を付与し、その説明を省略する。
【0066】
図9(A)には、第2の実施の形態に係るウォッシャ装置80の全体構成が断面図を含んで示されている。
【0067】
このウォッシャ装置80は、前述した第1の実施の形態に係るウォッシャ装置70と基本的に同様の構成であるが、前記バルブ装置74に代えてバルブ装置82を備えている。
【0068】
バルブ装置82は、前記バルブ装置74と同様に、高圧側流入口40及び低圧側流入口42が形成されると共に、図9(B)に示す如く単一の流出口84が形成されている。この高圧側流入口40及び低圧側流入口42と単一の流出口84とは弁室48を介して共に連通しており、他の構成は前記バルブ装置74と同様である。
【0069】
このバルブ装置82は、単一の流出口84が配管ホース86を介して二股分岐ジョイント88に接続されており、さらにこの二股分岐ジョイント88が配管ホース90を介してそれぞれウォッシャノズル72の接続部32に接続されている。
【0070】
各配管ホース90には、前記第1の実施の形態の配管ホース78と同様に、ウォッシャノズル72の近傍においてその長手方向に伸縮可能な蛇腹状の伸縮部64を有しており、モータポンプ12から圧送された洗浄液によって伸縮されるようになっている。
【0071】
上記構成の車両用ウォッシャ装置80においても、前記第1の実施の形態に係るウォッシャ装置70と同様に、単一のモータポンプ12によって、車両の走行状態や駐停車状態に応じて洗浄液の噴射流量を節約しながらも目標着水エリアに適切に着水させることができる。すなわち、部品点数を低減して配管ホース90の配索を簡単にしつつも、ウォッシャノズル72の噴射角度を適宜(任意)に変更することができ、使用状況に応じて適切に着水させることができる。
【0072】
またしかも、この車両用ウォッシャ装置80においても、従来のウォッシャ装置の如くウォッシャノズルの噴射角度が低噴射角度のものと高噴射角度のものとをそれぞれ用意する必要がなく、さらにこれをドライバ席D側と助手席P側とにそれぞれ対応して配置する必要がなくなる。したがって、部品点数が不要に多くなったり、洗浄液供給用の配管ホースの配索が複雑となってしまうといった問題を全く解消することができる。
【図面の簡単な説明】
【0073】
【図1】(A)は本発明の第1の実施の形態に係るウォッシャ装置の全体構成図であり、(B)は第1の実施の形態に係るウォッシャ装置のバルブ装置の平面図である。
【図2】本発明の第1の実施の形態に係るウォッシャ装置のウォッシャノズルの構成及び取り付け状態を示す側面図である。
【図3】(A)は本発明の第1の実施の形態に係るウォッシャ装置のウォッシャノズルの構成を示す正面図であり、(B)は第1の実施の形態に係るウォッシャ装置のウォッシャノズルの構成を示す側面図である。
【図4】(A)は本発明の第1の実施の形態に係るウォッシャ装置のウォッシャノズルのノズル本体の構成を示す正面図であり、(B)は第1の実施の形態に係るウォッシャ装置のウォッシャノズルのノズル本体の構成を示す側面図である。
【図5】(A)は本発明の第1の実施の形態に係るウォッシャ装置のウォッシャノズルのベース部材の構成を示す正面図であり、(B)は第1の実施の形態に係るウォッシャ装置のウォッシャノズルのベース部材の構成を示す側面図である。
【図6】本発明の第1の実施の形態に係るウォッシャ装置の洗浄液噴射エリアを示す正面図である。
【図7】本発明の第1の実施の形態の変形例に係るウォッシャ装置の作動プログラムを示す流れ図である。
【図8】本発明の第1の実施の形態の変形例に係るウォッシャ装置の可変抵抗器の接続状態を示す概略的な回路図である。
【図9】(A)は本発明の第2の実施の形態に係るウォッシャ装置の全体構成図であり、(B)は第2の実施の形態に係るウォッシャ装置のバルブ装置の平面図である。
【図10】本発明の第1の実施の形態の変形例に係るウォッシャ装置のウォッシャノズルの構成を示す側面図である。
【符号の説明】
【0074】
12・・モータポンプ(ポンプ装置)、20・・制御装置、26・・ノズル本体、28・・ベース部材、32・・接続部、34・・噴射口、36・・回動軸、38・・軸受部、58・・上限ストッパ、62・・ウォッシャ指令スイッチ(吐出圧力設定手段)、64・・伸縮部、66・・可変抵抗器(吐出圧力設定手段)、70・・ウォッシャ装置、72・・ウォッシャノズル、74・・バルブ装置、78・・配管ホース

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のウインドガラスに洗浄液を噴射するウォッシャノズルと、前記洗浄液を貯留するタンクと、前記ウォッシャノズルに洗浄液を圧送するポンプ装置と、前記ポンプ装置により圧送された洗浄液を前記ウォッシャノズルに送給する配管ホースと、前記ポンプ装置の駆動を指令するウォッシャ指令スイッチと、を有する車両用ウォッシャ装置において、
前記ウォッシャ指令スイッチは、前記ポンプ装置の吐出圧力を少なくとも高圧または低圧にて設定して洗浄液を吐出させる吐出圧力設定手段を有し、
前記配管ホースは、前記ウォッシャノズル近傍においてその長手方向に伸縮可能な伸縮部を有し、前記吐出圧力設定手段により吐出圧力が設定されたポンプ装置からの洗浄液によって前記伸縮部が伸縮され、
前記ウォッシャノズルは、噴射口が前記ウインドガラスの上下方向に向けて回動可能に車体に取り付けられ、前記配管ホースの前記伸縮部が伸長したとき前記噴射口が前記ウインドガラスの上方へ向け回動し、前記配管ホースの前記伸縮部が収縮したとき前記噴射口が前記ウインドガラスの下方へ向け回動する、
ことを特徴とする車両用ウォッシャ装置。
【請求項2】
前記吐出圧力設定手段は、前記ポンプ装置の吐出圧力を前記高圧から前記低圧まで無段階にもしくは多段階に設定変更可能である、
ことを特徴とする請求項1記載の車両用ウォッシャ装置。
【請求項3】
前記吐出圧力設定手段は、前記ポンプ装置のポンプモータの回転数を可変させて前記吐出圧力を設定する、
ことを特徴とする請求項1または請求項2記載の車両用ウォッシャ装置。
【請求項4】
前記吐出圧力設定手段は、前記ポンプ装置の前記ポンプモータに直列に接続された可変抵抗器である、ことを特徴とする請求項3記載の車両用ウォッシャ装置。
【請求項5】
前記ウォッシャノズルは、前記配管ホースが接続される接続部と前記噴射口とが設けられたノズル本体と、車体に固定されるベース部材と、前記ノズル本体及びベース部材の一方に設けられた回動軸と、前記ノズル本体及びベース部材の他方に設けられ前記回動軸を支承する軸受部と、を有し、
前記接続部は、前記回動軸に対し前記噴射口と反対側に配設されている、
ことを特徴とする請求項1乃至請求項4の何れか1項に記載の車両用ウォッシャ装置。
【請求項6】
前記ウォッシャノズルの前記ベース部材は、前記ノズル本体の上方への回動限界位置を設定する上限ストッパを有する、
ことを特徴とする請求項5記載の車両用ウォッシャ装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate