説明

車両用エンジン始動装置

【課題】回動操作阻止機構全体の大型化を阻止することができる車両用エンジン始動装置を提供する。
【解決手段】インターロック機構4は、ロータ回動規制部44A及びカム部45を外周面に有し、操作ノブ3の回動操作によって回動するロータ4Aと、ロータ回動規制部44Aを係止可能な係止部40Bを有し、ロータ回動規制位置P1とロータ回動許容位置P2との間を回動可能なストッパ4Bと、ストッパ4Bのロータと反対側への回動を規制する2位置間を進退するプランジャ41Cを有するソレノイド4Cと、ソレノイド4Cの非通電状態においてカム部45に係合し、ストッパ4Bをロータ回動規制位置P1からロータ回動許容位置P2に回避させる回避リフタ4Dとを含み、ストッパ4Bは、ロータ4Aと回避リフタ4Dとの間に配置され、ロータ4Aと反対側への弾撥力が常時付与されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用エンジン始動装置に関し、特に自動車等のエンジンを始動する車両用エンジン始動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の車両用エンジン始動装置として、車両のシフトレバーがパーキングポジション(Pポジション)以外のポジション(ニュートラルポジション:Nポジション,ドライブポジション:Dポジション)に切り換えられている場合にACC(アクセサリ)位置,ON(イグニッションオン)位置又はST(スタータ駆動)位置からLOCK位置への操作ノブの回動操作を阻止する回動操作阻止機構(インターロック機構)を備えたものがある(特許文献1)。
【0003】
このインターロック機構は、操作ノブを回動可能に保持するボディと、この操作ノブの回動操作によって回動するロータと、このロータの回動を規制するロータ回動規制位置とその回動を許容するロータ回動許容位置との間を回動可能なロック部材と、このロック部材を連結して2位置間を進退するプランジャを有するソレノイドと、このソレノイドの非通電状態においてロック部材をロータ回動許容位置に回避させる回避リフタとが含まれている。
【0004】
以上の構成により、車両のシフトレバーがPポジション以外のポジションに切り換えられている状態においては、ソレノイドがプランジャを退避させた状態で励磁される。この場合、ロック部材がロータ回動規制位置に保持されているため、ロータが所定の回動位置でロック部材に係止される。これにより、操作ノブがACC位置,ON位置又はST位置からLOCK位置へ回動することはない。
【0005】
一方、車両のシフトレバーがPポジションに切り換えられている状態においては、ソレノイドが消磁される。この場合、ロック部材がロータ回動規制位置からロータ回動許容位置に回動可能となるため、回避リフタによってロック部材がロータ回動規制位置からロータ回動許容位置に回動すると、ロータがロック部材によって係止されることはない。これにより、操作ノブがACC位置,ON位置又はST位置からLOCK位置へ回動可能となる。
【特許文献1】特開2001−301571号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1の車両用エンジン始動装置によると、インターロック機構のロック部材がプランジャに連結されているため、ロック部材としての機能を発揮させるためにはそのロック(係止)部とロータとの間の干渉長(掛り代)を十分に確保する必要があった。この結果、ロック部材のサイズが大きくなり、インターロック機構全体が大型化するという問題があった。
【0007】
従って、本発明の目的は、ロック部材のサイズを小さくすることができ、もって回動操作阻止機構全体の大型化を阻止することができる車両用エンジン始動装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記目的を達成するために、操作部材の回動操作によってエンジンを始動させる車両用エンジン始動装置であって、車両のシフトレバーがパーキングポジション以外のポジションに切り換えられている状態において、前記操作部材の特定の位置以外の位置から前記特定の位置への回動操作を阻止する回動操作阻止機構を備え、前記回動操作阻止機構は、ロータ回動規制部及びカム部を外周面に有し、前記操作部材の回動操作によって回動するロータと、前記ロータ回動規制部を係止可能な係止部を有し、前記ロータの回動を規制するロータ回動規制位置と前記回動規制部に対する干渉を回避して前記ロータの回動を許容するロータ回動許容位置との間を回動可能なロック部材と、前記ロック部材の前記ロータと反対側への回動を規制する2位置間を進退するプランジャを有するソレノイドと、前記ソレノイドの非通電状態において前記カム部に係合し、前記ロック部材を前記ロータ回動規制位置から前記ロータ回動許容位置に回避させる回避部材とを含み、前記ロック部材は、前記ロータと前記回避部材との間に配置され、前記ロータと反対側への弾撥力が常時付与されていることを特徴とする車両用エンジン始動装置を提供する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によると、ロック部材のサイズを小さくすることができ、回動操作阻止機構全体の大型化を阻止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
[実施の形態]
図1は、本発明の実施の形態に係る車両用エンジン始動装置を説明するために示す断面図である。図2は、本発明の実施の形態に係る車両用エンジン始動装置に対するキー挿入状態を示す断面図である。図3は、本発明の実施の形態に係る車両用エンジン始動装置の操作部材とロータとの連結状態を説明するために示す分解斜視図である。図4は、本発明の実施の形態に係る車両用エンジン始動装置の操作部材を説明するために示す正面図である。図5は、本発明の実施の形態に係る車両用エンジン始動装置の回動操作阻止機構を説明するために示す組立斜視図である。図6は、本発明の実施の形態に係る車両用エンジン始動装置の回動操作阻止機構を説明するために示す断面図である。図7は、本発明の実施の形態に係る車両用エンジン始動装置のロータを示す斜視図である。図8は、本発明の実施の形態に係る車両用エンジン始動装置のロック部材と回避部材との組立状態を説明するために示す分解斜視図である。
【0011】
〔車両用エンジン始動装置の全体構成〕
図1及び図2において、符号1で示す車両用エンジン始動装置は、装置本体としてのボディ2と、このボディ2の外部に一部が露呈する操作部材としての操作ノブ3と、この操作ノブ3の回動操作を阻止する機能を備えた回動操作阻止機構としてのインターロック機構4とから大略構成されている。
【0012】
(ボディ2の構成)
ボディ2は、図1及び図2に示すように、インターロック機構4のロータ4A(後述)等を収容する収容空間2Aを内部に有し、車両における運転席前方のインストルメントパネルに配設されている。そして、軸線両方向に開口し、全体が例えば合成樹脂によって形成された段状の略円筒体によって形成されている。
【0013】
ボディ2には、ボディ内外に開口する貫通孔20A(図6に示す)が、また収容空間2Aを軸線方向に2分するロータ位置決め用の仕切壁20Bがそれぞれ配置されている。ボディ2の一方側開口部には操作ノブ3のノブカバー3A(後述)が、また他方側開口部にはイグニッションスイッチ6がそれぞれ配置されている。ボディ2の内周面には、仕切壁20Bのノブカバー側端面を指向する環状の段部20Cが設けられている。
【0014】
(操作ノブ3の構成)
操作ノブ3は、図1〜図4に示すように、ノブ本体3A及びノブカバー3Bからなり、ボディ2の収容空間2Aにボディ軸線方向に進退可能に保持され、かつ進退操作によってノブ進行(押圧操作)位置又はノブ退避(待機)位置に配置されている。
【0015】
また、操作ノブ3は、ボディ2の収容空間2Aにボディ軸線回りに回動可能に収容され、かつ回動操作によって特定の位置としてのLOCK位置及び特定の位置以外の位置としてのACC位置,ON位置,ST位置のうちいずれかの位置に選択的に配置されている。そして、遠隔制御用携帯機としてのキーK(図2に示す)から送信されるIDコード信号に対応するIDコードと車両に搭載されている送受信装置に予め登録されたIDコードとを照合し、この照合結果に基づいて切り換え(回動)操作し得るように構成されている。
【0016】
この場合、両IDコードが一致すると、LOCK位置からACC位置,ON位置又はST位置への操作ノブ3の切り換えが可能となる。また、各IDコードが互いに異なると、LOCK位置からACC位置,ON位置又はST位置への操作ノブ3の切り換えは不可能である。
【0017】
なお、キーKには、トランスポンダ及びアンテナコイル・コンデンサ・IC(いずれも図示せず)等が内蔵されている。このうちICには、車両側のIDコードと同じICコードが記憶されている。このため、車両の送受信装置から送信されるリクエスト信号をキーKが受信すると、キーK(発信器)からIDコードがIDコード信号として車両の送受信装置に送信される。リクエスト信号は、キーKをもつ運転者等が操作ノブ3をボディ2内における所定の位置に配置すると、キーKから送信される。また、キーKには、その先端部両側縁を切り欠くことにより係止凹部K1,K2が設けられている。
【0018】
ノブ本体3Aは、ボディ2の段部20Cに当接する段部30A、イグニッションスイッチ側に開口する凹部31A、及びイグニッションスイッチ側に突出する凸部32Aを有し、ボディ2の収容空間2Aに軸線回りに回動可能に、かつ軸線方向に進退可能に収容されている。
【0019】
ノブ本体3Aには、ノブカバー側の外周面に開口し、かつキー係止用のレバー部材7,8を収容するレバー収容孔33A,34Aが設けられている。
【0020】
レバー部材7,8は、キーKの係止凹部K1,K2を係止可能な係止凸部7A,8Aを有し、ノブ本体3Aに支軸35A,36Aを介して回動可能に保持され、かつキーKを係止する方向の弾撥力をもつ係止用スプリング9,10によって復帰習性が付与されている。そして、操作ノブ3に対するキーKの挿入状態において、係止凸部7A,8ABがキーKの係止凹部K1,K2を係止してキーKを挟圧保持するように構成されている。
【0021】
また、ノブ本体3Aには、凹部31Aに連通し、かつノブカバー側に開口するシャッタ収容孔37Aが設けられている。シャッタ収容孔37Aには、ボディ2の軸線方向に沿って移動可能なシャッタ11が収容されている。
【0022】
シャッタ11は、周囲に突出する環状のスプリング受部11Aを有し、ノブカバー3Bのキー挿入口30B(後述)を開放するキー挿入口開放位置又はそのキー挿入口30Bを閉塞するキー挿入口閉塞位置に配置されている。この場合、操作ノブ3をノブ待機位置からノブ押圧操作位置に進行させると、シャッタ11がロック機構(図示せず)によってキー挿入口開放位置に配置される。また、操作ノブ3をノブ押圧操作位置からノブ待機位置に退避させると、シャッタ11がロック機構のロック解除によってキー挿入口閉塞位置に配置される。
【0023】
なお、シャッタ11のロック機構は、移動体及び圧縮スプリングからなり、例えば特開2001−301571号公報に本出願人によって先に開示されている。
【0024】
一方、ノブカバー3Bは、キー挿入口30Bを有し、ノブ本体3Aのノブカバー側端部に装着されている。キー挿入口30Bは、外部に開口され、かつノブ本体3Aのシャッタ収容孔37Aに連通されている。そして、キーKの先端部を挿入し得るように構成されている。
【0025】
(インターロック機構4の構成)
インターロック機構4は、図5及び図6に示すように、ロータ4A及びロック部材としてのストッパ4B・プランジャ型のソレノイド4C・回避部材としての回避リフタ4Dを含み、ボディ2の外周面に取り付けられている。そして、車両のシフトレバーがPポジション以外のポジションとしてNポジション又はDポジションに切り換えられている状態において、操作ノブ3のACC位置,ON位置又はST位置からLOCK位置への回動操作を阻止するように構成されている。
【0026】
ロータ4Aは、図1〜図3に示すように、仕切壁20Bを挿通してイグニッションスイッチ6を作動するスイッチ作動部40A、操作ノブ3(ノブ本体3A)の凸部32Aに嵌合する凹部41Aを有し、ボディ2の収容空間2Aに回動可能に収容され、かつ操作ノブ3のノブ本体3Aに連結されている。そして、操作ノブ3の回動操作によって図6に実線で示す第1回動位置R1及び図6に2点鎖線で示す第2回動位置R2)を含む円周上を回動し、イグニッションスイッチ6をスイッチON又はスイッチOFF状態とするように構成されている。
【0027】
ロータ4Aの軸線方向略中央部は、図7に示すように、各外径を互いに異にする大小2つのロータ径部(ロータ大径部400Aとロータ小径部401A)によって形成されている。ロータ大径部400Aとロータ小径部401Aとの間には、ロータ軸線方向に並列し、かつロータ周方向に所定の間隔をもって開口するロータ回動規制部44A,カム部45Aが設けられている。
【0028】
ロータ4Aには、ノブ本体3Aの軸線上に位置し、かつノブカバー側に開口する内外2つのスプリング収容部42A,43Aが設けられている。
【0029】
スプリング収容部42Aには、ロータ4(スプリング収容部42Aの底面)とシャッタ11(スプリング受部11Aのイグニッションスイッチ側端面)との間に介在し、かつノブカバー3Bのキー挿入口30Bを閉塞する方向の弾撥力をシャッタ11に付与する小径の復帰用スプリング12が収容されている。
【0030】
スプリング収容部43Aには、ロータ4(スプリング収容部43Aの底面)とノブ本体3A(凹部31Aの底面)との間に介在し、かつノブ本体3A(段部30Aのノブカバー側端面)をボディ2の段部20C(イグニッションスイッチ側端面)に当接させる方向の弾撥力を操作ノブ3に付与する大径の復帰用スプリング13が収容されている。
【0031】
ロータ回動規制部44Aは、カム部35Aのノブカバー側に配置され、ストッパ4Bの係止部40B(後述)に対応する切り欠き面で形成されている。これにより、ロータ回動規制部44Aが係止部40Bに干渉する場合、ストッパ4Bが回動枢支ピン14を中心として若干回動する方向(ストッパ4Bが連結ピン16から若干離間する方向)にロータ4Aからの回動力が作用する。カム部45Aは、ロータ回動規制部44Aのイグニッションスイッチ側に配置され、回避リフタ4Dの摺動部40D(後述)に対応する傾斜面で形成されている。
【0032】
ストッパ4Bは、図6及び図8に示すように、回避リフタ4Dに回動枢支ピン14を介して回動可能に一体化され、かつロータ4Aと回避リフタ4Dとの間に配置され、全体が平面略矩形状の板部材によって形成されている。そして、ソレノイド4Cのプランジャ41C(後述)に連結する連結ピン16(後述)にロータ4Aと反対側で圧接され、ロータ4Aの回動を規制するロータ回動規制位置P1(図6に示す)とロータ回動規制部44Aに対する干渉を回避してロータ4Aの回動を許容するロータ回動許容位置P2(図6に示す)との間を回動し得るように構成されている。また、ストッパ4Bは、係止部40Bとロータ回動規制部44Aとの干渉(係止)を維持しながら、ロータ4Aからの回動力を受けて連結ピン16から離間し、回動枢支ピン14を中心にしてロータ回動規制位置P1からロータ側に若干回動し得るように構成されている。これにより、係止部40Bのロータ回動規制部44Aへの干渉はストッパ4Bが回動枢支ピン14を中心として連結ピン16から離間する方向に回動して行われるため、ストッパ4Bとしての機能を発揮させるためにその係止部40Bとロータ4Aのロータ回動規制部44Aとの間の干渉長(掛り代)L(本実施の形態ではL≒1.8mm)を従来(最大でL≒3.4mm)のようには確保する必要がなくなる。
【0033】
ストッパ4Bの長手方向中央部には、図6及び図8に示すように、ストッパ一方側側縁のロータ側に全体をボディ2の貫通孔20A内に臨ませて位置し、かつロータ4Aのロータ回動規制部44Aを係止可能な係止部40Bが設けられている。係止部40Bは、回動枢支ピン14と連結ピン16との間に配置されている。また、ストッパ4Bの長手方向中央部には、ストッパ他方側側縁に位置する貫通窓41Bが設けられている。
【0034】
ストッパ4Bの長手方向一方側端部には、図8に示すように、ソレノイド4Cのプランジャ41C(後述)を挿通する切り欠き42B、及び連結ピン16の外周面に対応する切り欠き43Bが設けられている。ストッパ4Bの長手方向他方側端部には、図8に示すように、トーションスプリング15(ストッパ4B及び回避リフタ4Dを含む組立体の回動枢支ピン14に対する組付性を容易にするために、各スプリング端部の長さが互いに異なるトーションスプリング)の一部(コイル部)を収容する切り欠き44Bが設けられている。また、ストッパ4Bの長手方向他方側端部には、切り欠き44Bと反対側に突出する平面略矩形状のピン保持部45Bが一体に設けられている。ピン保持部45Bには、回動枢支ピン14の外周面に適合する断面半円形状の切り欠き450Bが設けられている。
【0035】
ソレノイド4Cは、図6に示すように、コイル(図示せず)を内蔵するソレノイド本体40C、及びこのソレノイド本体40C内のコイルへの通電・非通電によってストッパ4Bのロータ4Aと反対側への回動を規制する2位置間を進退するプランジャ(鉄心)41Cを有するソレノイドからなり、ボディ2の外周面にホルダ(図示せず)を介して固定されている。そして、車両のシフトレバーがPポジションに切り換えられている状態において消磁され、車両のシフトレバーがNポジシャン又はDポジションに切り換えられている状態において励磁される。
【0036】
プランジャ41Cは、ソレノイド本体40Cに進退可能に保持され、外部に突出(進退)する方向の弾撥力が圧縮スプリング(図示せず)によって常時付与されている。プランジャ41Cには、プランジャ進退方向と直交する方向に軸線をもち、かつストッパ4Bからの圧接力を受ける連結ピン(連結部)16が取り付けられている。
【0037】
回避リフタ4Dは、図6及び図8に示すように、ストッパ4Bに回動枢支ピン14を介して回動可能に一体化され、かつ連結ピン16におけるストッパ4Bと反対側に配置され、全体がストッパ4Bの平面サイズと略同一の平面サイズをもつ平面略矩形状の板部材によって形成されている。そして、ロータ回動規制位置P1に対応するリフタ回動始端位置P3とロータ回動許容位置P2に対応するリフタ回動終端位置P4との間を回動し得るように構成されている。
【0038】
また、回避リフタ4Dは、ストッパ4Bに接近する方向の弾撥力がトーションスプリング15によって付与されている。このため、図5に示すように、トーションスプリング15の一方側端部が回避リフタ4Dの反ストッパ側端面(ストッパ側の端面と反対側の端面)に係止されている。また、トーションスプリング15の他方側端部がストッパ4Bの反リフタ側端面(回避リフタ側の端面と反対側の端面)に係止されている。これにより、回避リフタ4D及びとストッパ4Bは、それぞれが互いに接近する(引き付ける)方向の弾撥力によって回動枢支ピン14の回りに回動可能に連結されている。
【0039】
回避リフタ4Dの長手方向中央部には、図8に示すように、リフタ一方側側縁のロータ側にストッパ4Bの貫通窓41Bに挿通させて位置し、かつロータ4A(ロータ)の外周面を摺動するリフタ摺動部40Dが設けられている。リフタ摺動部40Dは、ロータ4Aの軸線方向に沿ってストッパ4Bの係止部40Bに並列して配置されている。そして、ソレノイド4Cの非通電状態においてロータ4Aのカム部45Aに係合し、ストッパ4Bをロータ回動規制位置P1からロータ回動許容位置P2に回避させるように構成されている。
【0040】
回避リフタ4Dの長手方向一方側端部には、図8に示すように、ソレノイド4Cのプランジャ41Cを挿通する切り欠き41D、及び連結ピン16の外周面に対応する切り欠き42Dが設けられている。回避リフタ4Dの長手方向他方側端部には、図8に示すように、トーションスプリング15の一部(コイル部)を収容する切り欠き43D、及び回動枢支ピン14の外周面に適合する断面半円形状の切り欠き44Dが設けられている。また、回避リフタ4Dの長手方向他方端部には、切り欠き44Dに連通する切り欠き45Dが設けられている。切り欠き45Dは、ストッパ4Bのロータ側への回動時にピン保持部45Bの一部を収容して逃がすように構成されている。
【0041】
〔車両用エンジン始動装置1におけるインターロック機構4の動作〕
次に、本実施の形態に示す車両用エンジン始動装置1におけるインターロック機構4の動作につき、図6及び図9・図10を用いて説明する。
【0042】
図9は、本発明の実施の形態に係る車両用エンジン始動装置の回動操作阻止機構(インターロック機構)において、車両のシフトレバーがパーキングポジションに切り換えられている場合の動作を説明するために示す断面図である。図10は、本発明の実施の形態に係る車両用エンジン始動装置の回動操作阻止機構(インターロック機構)において、車両のシフトレバーがパーキングポジションに切り換えられていない場合の動作を説明するために示す断面図である。
【0043】
「Pポジションに切り換えられている場合の動作」
車両のシフトレバーがPポジションに切り換えられると、プランジャ41Cをソレノイド本体40C内に退避させた状態でソレノイド4Cが消磁される。この場合、操作ノブ3がACC位置に、ロータ4Aが図6に実線で示す第1回動位置R1にそれぞれ配置されている。また、ストッパ4Bが図6に実線で示すようにロータ4Aの回動を規制するロータ回動規制位置P1に、回避リフタ4Dが図6に実線で示すようにリフタ回動始端位置P3(回避リフタ4Dの摺動部40Dはロータ4Aのロータ小径部401A)にそれぞれ配置されている。
【0044】
ソレノイド4Cの消磁(非通電)状態において、操作ノブ3をACC位置からLOCK位置に向かって回動操作すると、この回動操作方向にロータ4Aが第1回動位置R1から第2回動位置R2に向かって回動し、回避リフタ4Dの摺動部40Dがロータ4Aのロータ小径部401Aを摺動してカム部45Aに乗り上げる。この場合、摺動部40Dのロータ小径部401Aからカム部45Aへの乗り上げによって回避リフタ4Dが回動枢支ピン14を中心として図6に実線で示すリフタ回動始端位置P3から図6に2点鎖線で示すリフタ回動終端位置P4に向かって反時計方向に回動し、この回動動作に追随してプランジャ41Cがソレノイド本体40C外に進行するとともに、トーションスプリング15の弾撥力によってストッパ4Bが回動枢支ピン14を中心として反時計方向に回動する。
【0045】
そして、操作ノブ3をLOCK位置に向かってさらに回動操作すると、この回動操作方向にロータ4Aが図6に2点鎖線で示す回動位置(第1回動位置R1と第2回動位置R2との間の回動位置)に回動し、回避リフタ4Dの摺動部40Dがロータ4Aのカム部45Aを摺動してロータ大径部400Aに乗り上げる。この場合、摺動部40Dのカム部45Aからロータ大径部400Aへの乗り上げによって回避リフタ4Dが回動枢支ピン14を中心として反時計方向に回動し、図9に示すようにリフタ回動終端位置P4に配置される。これに伴い、トーションスプリング15の弾撥力によってストッパ4Bが回動枢支ピン14を中心として反時計方向に回動し、その係止部40Bとロータ4Aの回動規制部44Aとの干渉を回避するロータ回動許容位置P2に配置される。
【0046】
この後、操作ノブ3をLOCK位置に回動操作して配置すると、ロータ4Aが図6に2点鎖線で示す第2回動位置R2に配置され、操作ノブ3がACC位置からLOCK位置に切り換えられる。
【0047】
「Nポジション又はDポジションに切り換えられている場合の動作」
車両のシフトレバーがPポジションからNポジション又はDポジションに切り換えられると、ソレノイド4Cが励磁される。このため、プランジャ41Cがソレノイド本体40C内に退避した状態で保持される。この場合、操作ノブ3がACC位置に、ロータ4Aが図6に実線で示す第1回動位置R1にそれぞれ配置されている。また、ストッパ4Bが図6に実線で示すようにロータ4Aの回動を規制するロータ回動規制位置P1に、回避リフタ4Dが図6に実線で示すようにリフタ回動始端位置P3(回避リフタ4Dの摺動部40Dはロータ4Aのロータ小径部401A)にそれぞれ配置されている。
【0048】
ソレノイド4Cの励磁(通電)状態において、操作ノブ3をACC位置からLOCK位置に向かって回動操作すると、この回動操作方向にロータ4Aが第1回動位置R1から第2回動位置R2に向かって回動し、回避リフタ4Dの摺動部40Dがロータ4Aのロータ小径部401Aを摺動してカム部45Aに乗り上げる。この場合、摺動部40Dのロータ小径部401Aからカム部45Aへの乗り上げによって回避リフタ4Dが回動枢支ピン14を中心として図6に実線で示すリフタ回動始端位置P3から図6に2点鎖線で示すリフタ回動終端位置P4に向かって反時計方向に回動する。一方、プランジャ41Cがソレノイド本体40C内に退避した状態で保持されているため、ストッパ4Bが図6に2点鎖線で示すロータ回動許容位置P2に向かって回動せず、図6に実線で示すロータ回動規制位置P1に配置されたままである。
【0049】
そして、操作ノブ3をLOCK位置に向かってさらに回動操作すると、この回動操作方向にロータ4Aが図6に2点鎖線で示す回動位置(第1回動位置R1と第2回動位置R2との間の回動位置)に回動し、回避リフタ4Dの摺動部40Dがロータ4Aのカム部45Aを摺動する。この場合、摺動部40Dがカム部45Aを摺動してロータ大径部400Aに乗り上げる直前の位置に到達すると、ストッパ4Bの係止部40Bが図10に実線で示すようにロータ4Aのロータ回動規制部44Aに干渉する。この干渉は、ロータ4Aの回動力がロータ回動規制部44Aから係止部40Bを介してストッパ4Bに伝達されるため、図10に2点鎖線で示すようにストッパ4Bが回避リフタ4D(連結ピン16)から離間する方向に若干回動して行われる。これにより、ロータ4Aが操作ノブ3の回動操作方向に回動せず、操作ノブ3のACC位置からLOCK位置への切り換えが行われない。
【0050】
[実施の形態の効果]
以上説明した実施の形態によれば、次に示す効果が得られる。
【0051】
ストッパ4Bとしての機能を発揮させるためにその係止部40Bとロータ4Aのロータ回動規制部44Aとの間の干渉長(掛り代)Lを従来のようには確保する必要がないため、ストッパ4Bのサイズを小さくすることができ、インターロック機構4の大型化を阻止することができる。
【0052】
以上、本発明の車両用エンジン始動装置を上記の実施の形態に基づいて説明したが、本発明は上記の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々の態様において実施することが可能であり、例えば次に示すような変形も可能である。
【0053】
(1)本実施の形態では、操作ノブ3の回動操作位置としての特定の位置をLOCK位置とする場合について説明したが、本発明はこれに限定されず、特定の位置をACC位置,ON位置又はST位置に変更することが可能である。
【0054】
(2)本実施の形態では、ストッパ4B及び回避リフタ4Dに弾撥力を付与する弾性体としてトーションスプリング15が用いられる場合について説明したが、本発明はこれに限定されず、ストッパと回避リフタとが互いに接近する方向の弾撥力をもつものであれば、他の弾性体を用いてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】本発明の実施の形態に係る車両用エンジン始動装置を説明するために示す断面図。
【図2】本発明の実施の形態に係る車両用エンジン始動装置に対するキー挿入状態を示す断面図。
【図3】本発明の実施の形態に係る車両用エンジン始動装置の操作部材とロータとの連結状態を説明するために示す分解斜視図。
【図4】本発明の実施の形態に係る車両用エンジン始動装置の操作部材を説明するために示す正面図。
【図5】本発明の実施の形態に係る車両用エンジン始動装置の回動操作阻止機構を説明するために示す組立斜視図。
【図6】本発明の実施の形態に係る車両用エンジン始動装置の回動操作阻止機構を説明するために示す断面図。
【図7】本発明の実施の形態に係る車両用エンジン始動装置のロータを示す斜視図。
【図8】本発明の実施の形態に係る車両用エンジン始動装置のロック部材と回避部材との組立状態を説明するために示す分解斜視図。
【図9】本発明の実施の形態に係る車両用エンジン始動装置の回動操作阻止機構において、車両のシフトレバーがパーキングポジションに切り換えられている場合の動作を説明するために示す断面図。
【図10】本発明の実施の形態に係る車両用エンジン始動装置の回動操作阻止機構において、車両のシフトレバーがパーキングポジションに切り換えられていない場合の動作を説明するために示す断面図。
【符号の説明】
【0056】
1…車両用エンジン始動装置
2…ボディ、2A…収容空間、2A…貫通孔、20B…仕切壁、20C…段部
3…操作ノブ
3A…ノブ本体、30A…段部、31A…凹部、32A…凸部、33A,34A…レバー収容孔、35A,36A…支軸、37A…シャッタ収容孔
3B…ノブカバー、30B…キー挿入口
4…インターロック機構
4A…ロータ、400A…ロータ大径部、401A…ロータ小径部、40A…スイッチ作動部、41A…凹部、42A,43A…スプリング収容部、44A…ロータ回動規制部、45A…カム部
4B…ストッパ、40B…係止部、41B…貫通窓、42B〜44B…切り欠き、45B…ピン保持部、450B…切り欠き
4C…ソレノイド、40C…ソレノイド本体、41C…プランジャ
4D…回避リフタ、40D…リフタ摺動部、41D〜45D…切り欠き
6…イグニッションスイッチ
7,8…レバー部材、7A,8A…係止凸部
9,10…係止用スプリング
11…シャッタ、11A…スプリング受部
12,13…復帰用スプリング
14…回動枢支ピン
15…トーションスプリング
16…連結ピン
K…キー、K1,K2…係止凹部
P1…ロータ回動規制位置
P2…ロータ回動許容位置
P3…リフタ回動始端位置
P4…リフタ回動終端位置
L…干渉長

【特許請求の範囲】
【請求項1】
操作部材の回動操作によってエンジンを始動させる車両用エンジン始動装置であって、
車両のシフトレバーがパーキングポジション以外のポジションに切り換えられている状態において、前記操作部材の特定の位置以外の位置から前記特定の位置への回動操作を阻止する回動操作阻止機構を備え、
前記回動操作阻止機構は、
ロータ回動規制部及びカム部を外周面に有し、前記操作部材の回動操作によって回動するロータと、
前記ロータ回動規制部を係止可能な係止部を有し、前記ロータの回動を規制するロータ回動規制位置と前記回動規制部に対する干渉を回避して前記ロータの回動を許容するロータ回動許容位置との間を回動可能なロック部材と、
前記ロック部材の前記ロータと反対側への回動を規制する2位置間を進退するプランジャを有するソレノイドと、
前記ソレノイドの非通電状態において前記カム部に係合し、前記ロック部材を前記ロータ回動規制位置から前記ロータ回動許容位置に回避させる回避部材とを含み、
前記ロック部材は、前記ロータと前記回避部材との間に配置され、前記ロータと反対側への弾撥力が常時付与されている
ことを特徴とする車両用エンジン始動装置。
【請求項2】
前記回避部材は、前記ロック部材に接近する方向に弾撥力が常時付与されている請求項1に記載の車両用エンジン始動装置。
【請求項3】
前記ロック部材は、前記プランジャの進退方向と直交する連結部に圧接されている請求項1に記載の車両用エンジン始動装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate