説明

車両用グリルシャッターの制御方法

【課題】 重量の増大を抑え、状況に合わせてモードを選択し燃費が向上する車両用グリルシャッターの制御方法を提供すること。
【解決手段】
ラジエータ3に外気を導入する外気導入口21a、21bに設けられるラジエータグリル20a、20bと、ラジエータグリル20a、20bとラジエータ3の間に設けられ、発電機能を有するクロスフローファン30a、30bと、クロスフローファン30a、30bを制御する制御装置50と、を備える車両用グリルシャッターの制御方法であって、制御装置50は、エンジン4内を通る冷却水の水温と、車両が減速中か、減速中ではないかの判定に基づいてクロスフローファン30a、30bを外気導入口21a、21bが閉じる閉位置と、開く開位置とを移動させ、回転が規制されるロック又は回転が許容されるアンロック若しくは駆動力を与える強制駆動のいずれか1つの制御を行うモードを選択するステップを有する車両用グリルシャッターの制御方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発電機能を備えた車両用グリルシャッターの制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の車両用グリルシャッターの制御方法として、外気を導入する状態と外気を塞ぐ状態とを切り替えられる開閉式グリル機構と、開閉式グリル機構とは別に外気導入口と、開閉式グリル機構の後ろにラジエータと、電動冷却ファンと、コントローラと、ファン状態切替機構と、を備え、暖機運転時や所定車速以上走行時には開閉式グリル機構を閉塞して外気導入口に冷却ファンを向けることで発電を行なうものがある(例えば特許文献1参照。)。
【0003】
また、他の車両用グリルシャッターの制御方法として、電動冷却ファンを供える車両用熱交換器において、電動冷却ファンのピッチ角度を、高速走行時には水平にして走行風による空気抵抗を減少させ、低温時には垂直にしてエンジン側への走行風を遮断することによってエンジンの過冷却を防止し、車両の高速走行時や減速時には最適な角度に回動させラジエータを通過した走行風によって電動冷却ファンを回転させ、発電を行なうものがある(例えば特許文献2参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−234874号公報
【特許文献2】特開2005−291025号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の走行状態に合わせてラジエータ後方で電動冷却ファンを回動させる車両用グリルシャッターの制御方法では、開閉式グリル機構と電動冷却ファンとを別々に設けている為、エンジンルーム内のスペースを必要とし、更には車両の重量が大きくなり燃費を悪化させる問題がある。電動冷却ファンを回転させて発電を行なう為の走行風を取込む外気導入口を車両正面に配置出来ない為、外気導入口を車両正面に配置した場合よりも走行風の取込みと電動冷却ファンで発電する場合に発電効率が低下する問題がある。
【0006】
また特許文献2の走行状態に合わせてラジエータ後方で回動させる電動冷却ファンの制御方法では、ラジエータを通過した走行風を利用する為、走行風の風速が落ち、電動冷却ファンによる発電効率が下がる問題がある。
【0007】
本発明は、上記問題点に鑑みて成されたものであり、重量の増大を抑え、状況に合わせてモードを選択し燃費が向上する車両用グリルシャッターの制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1の課題解決手段は、ラジエータに外気を導入する外気導入口に設けられるラジエータグリルと、
前記ラジエータグリルと前記ラジエータの間に設けられ、発電機能を有する電動冷却ファンと、エンジン内を通る冷却水の水温状態を検出する水温状態検出手段と、車両の走行状態を検出する走行状態検出手段と、前記電動冷却ファンを制御する制御手段とを備え、前記制御手段は、前記水温状態検出手段による水温の状況に基づき、暖機状態を前記水温が第1設定温度となるまで前記エンジンを暖める第1暖機状態と、前記第1暖機状態よりも前記水温が高く、前記水温が第2設定温度内にとどまる第2暖機状態と、前記第2暖機状態よりも前記水温が高い第3暖機状態とのいずれかに区分する第1ステップと、前記第2暖機状態または前記第3暖機状態の場合、前記走行状態検出手段により車両が減速中か否かを判定する第2ステップと、前記第1ステップと、前記第2ステップとの判定に基づいて前記電動冷却ファンを前記外気導入口が閉じる閉位置と前記外気導入口が開く開位置とを移動させ、前記電動冷却ファンの回転を規制するロック又は回転を許容するアンロック若しくは前記電動冷却ファンへ駆動力を与える強制駆動のいずれか1つの制御を行うモードを選択する第3ステップと、を有する車両用グリルシャッターの制御方法車両用グリルシャッターの制御方法である。
【0009】
本発明の第2の課題解決手段は、前記第1ステップで前記第2暖機状態と判定され、前記第2ステップで前記車両が減速中であると判定された場合は、前記第3ステップで第1の走行風発電モードと判定されると、前記電動冷却ファンは、前記閉位置にあり且つアンロックされる、ことを特徴とする車両用グリルシャッターの制御方法である。
【0010】
本発明の第3の課題解決手段は、前記第1ステップで前記第3暖機状態と判定され、前記第2ステップで前記車両が減速中であると判定された場合は、前記第3ステップで第2の走行風発電モードと判定されると、前記電動冷却ファンは、前記開位置にあり且つアンロックされる、ことを特徴とする車両用グリルシャッターの制御方法である。
【0011】
本発明の第4の課題解決手段は、前記第1のステップで前記第1暖機状態と判定される場合又は前記第1のステップで前記第2暖機状態と判定され、前記第2のステップで前記車両が減速中ではないと判定された場合は、前記第3ステップでグリルシャッターモードと判定されると、前記電動冷却ファンは、前記閉位置にあり且つロックされる、ことを特徴とする車両用グリルシャッターの制御方法である。
【0012】
本発明の第5の課題解決手段は、前記制御手段は、前記第2ステップと前記第3ステップとの間で、前記第3暖機状態であって前記車両が減速中ではないと判定されたとき、前記水温が第3設定温度より高い要冷却状態かどうかを判定する第4ステップを有する、ことを特徴とする制御方法である。
【0013】
本発明の第6の課題解決手段は、前記第1のステップで前記第3暖機状態と判定され、前記第2のステップで前記車両が減速中ではないと判定され、前記第4のステップで前記第3設定温度より低い前記第3暖機状態と判定された場合は、前記第3ステップで通常冷却モードと判定されると、前記電動冷却ファンは、前記開位置にあり且つロックされる、
ことを特徴とする、車両用グリルシャッターの制御方法である。
【0014】
本発明の第7の課題解決手段は、前記第1のステップで前記第3暖機状態と判定され、前記第2のステップで前記車両が減速中ではないと判定され、前記第4のステップで前記第3設定温度より高い前記要冷却状態と判定された場合は、前記第3ステップで強制冷却モードと判定されると、前記電動冷却ファンは、前記開位置にあり且つ前記電動ファンを強制駆動させる、ことを特徴とする、車両用グリルシャッターの制御方法である。
【発明の効果】
【0015】
本発明の車両用グリルシャッターの制御方法では、第1ステップと第2ステップと第3ステップとを用いてエンジンの暖機状態及び車両の走行状態に合わせてモードを選択し、電動冷却ファンを開位置又は閉位置に移動して外気導入口を開閉し、電動冷却ファンをロック又はアンロック若しくは駆動力を与える強制駆動のいずれか1つの制御を行うことで、グリルシャッター機能と発電機能とが一体で得られる。よって、従来の電動冷却ファンとグリルシャッターとを別々に設ける場合と比べてエンジンルーム内のスペースが広くなり重量の増大を抑え、状況に合わせてモードを選択し燃費を向上できる。さらに、電動冷却ファンは、ラジエータグリルとラジエータとの間に設けられる為、ラジエータグリルから導入された外気は直接電動冷却ファンに当たり、従来よりも高い発電効率が得られる。
【0016】
また、第4ステップで判定し、第3ステップで電動冷却ファンの回転を許容するアンロック又は駆動力を与える強制駆動の制御を行うことで、強制駆動時には、より多くの外気を直接ラジエータに当て、冷却性能を上げることができる。
【0017】
また、エンジンが第1暖機状態か、第2暖機状態であって車両が減速中でないときのグリルシャッターモードの場合、電動冷却ファンは、閉位置にあり且つロックされるため、車両走行時にラジエータへの外気の導入が抑制されエンジンの早期暖機が可能になる。更に、外気導入口を塞ぐことで走行抵抗が低減して、燃費向上が図れる。
【0018】
また、エンジンが第2暖機状態であって車両が減速中の第1の走行風発電モードの場合、電動冷却ファンは、閉位置にあり且つアンロックされるため、車両の減速時に外気により電動冷却ファンは回転して、走行風発電が可能で、走行エネルギー回生により燃費向上が図れる。更に、走行エネルギー回生時には、走行抵抗が増加するため、制動効果が得られる。
【0019】
また、エンジンが第3暖機状態であって車両が減速中でなく、前記水温が前記第3設定温度より低い、通常冷却モードの場合、電動冷却ファンは、開位置にあるため、外気は直接ラジエータに当たり、冷却性能を損なわない。
【0020】
また、エンジンが第3暖機状態であって車両が減速中の第2の走行風発電モードの場合、電動冷却ファンは、開位置にあり且つアンロックされるため、外気は直接ラジエータに当たり、冷却性能を損なわない。更に、車両の減速時に外気により電動冷却ファンは回転して、走行風発電が可能で、走行エネルギー回生により燃費向上が図れる。更に、走行エネルギー回生時には、走行抵抗が増加するため、制動効果が得られる。
【0021】
また、エンジンが第3暖機状態であって車両が減速中でなく前記水温が前記第3設定温度より高い、強制冷却モードの場合、電動冷却ファンは、開位置にあるため、外気は直接ラジエータに当たり、冷却性能を損なわない。更に、電動冷却ファンを強制駆動するため、より多くの外気を直接ラジエータに当て、冷却性能を上げることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明のグリルシャッターが設けられた車両の前方の斜視図である。
【図2】本発明のグリルシャッターがグリルシャッターモードの場合の説明図である。
【図3】本発明のクロスフローファン及び移動機構を駆動するための構成を示したブロック図である。
【図4】本発明のグリルシャッターが第1の走行風発電モードの場合の説明図である。
【図5】本発明のグリルシャッターが第2の走行風発電モードの場合の説明図である。
【図6】本発明のグリルシャッターが通常冷却モードの場合の説明図である。
【図7】本発明のグリルシャッターが強制冷却モードの場合の説明図である。
【図8】本発明のグリルシャッターの制御フローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下に本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0024】
図1は、グリルシャッター10(車両用グリルシャッター)が設けられた車両1の前方の斜視図である。車両1の前方には、フロントバンパー2の上方の外気導入口21a、下方の外気導入口21bにラジエータグリル20a、20bが各々設けられている。グリルシャッター10は、フロントバンパー2の内側で、ラジエータグリル20a、20bにより車両1の外側からは見えないように設けられている。
【0025】
図2は、本発明のグリルシャッター10がグリルシャッターモードの場合の説明図である。グリルシャッター10は、クロスフローファン30a、30b(電動冷却ファン)と、クロスフローファン30a、30bを上下方向に移動する移動機構40と、を備える構成である。なお、クロスフローファンとは、羽根の幅が直径に比べて大きく、気流は軸に垂直な方向から吸い込まれ、幅の広い膜状の吹き出し気流が得られるファン構造である。
【0026】
クロスフローファン30a、30bは、ラジエータ3へ外気を導入する外気導入口21a、21bに設けられるラジエータグリル20a、20bとラジエータ3との間で、フロントバンパー2内の曲線部に沿うように収納される。クロスフローファン30a、30bは、ラジエータ3を冷却する冷却ファンとしての機能と、走行風を受けて回転して発電する発電機としての機能とを備える。
【0027】
移動機構40は、アクチュエータ41と、アクチュエータ41により上下方向に移動するガイド42a、42bとから構成される。ガイド42a、42bの端部には、クロスフローファン30a、30bが各々取り付けられ、ガイド42a、42bと一体で上下方向に移動する。
【0028】
制御装置50(制御手段)は、クロスフローファン30a、30bが外気導入口21a、21bを閉じる位置(以下閉位置)と、外気導入口21a、21bを開く位置(以下開位置)とを移動するよう移動機構40を制御する。また、制御装置50は、クロスフローファン30a、30bの回転をロック又はアンロック又は強制駆動する。
【0029】
グリルシャッターモードは、クロスフローファン30a、30bが、制御装置50により閉位置で、回転がロックされた状態で、発電機としては機能しない。車両1の走行状態において、外気導入口21a、21bからエンジンルーム5内に外気を流入させないようにしている。
【0030】
ここで、クロスフローファン30a、30bが駆動するため構成を示したブロック図である図3について説明する。ラジエータ3とエンジン4との間の冷却水の循環構造は周知である。循環構造は、エンジン4内の冷却水がラジエータ3へと排出される排出側配管(図示せず)と、ラジエータ3内からエンジン4へと冷却水が供給される供給側配管(図示せず)と、排出側配管と供給側配管とを連結するバイパス配管(図示せず)と、冷却水を配管内で循環させるためのウォーターポンプ(図示せず)とで構成されている。冷却水を冷やす必要がある場合は、冷却水がエンジン4から排出側配管、ラジエータ3、供給側配管、そして、エンジン4へと循環する。冷却水を冷やす必要がない場合は、冷却水がエンジン4から排出側配管、バイパス配管、供給側配管、そして、エンジン4へと循環する。
【0031】
本発明は、循環構造内の冷却水の水温状態を検出する水温状態検出手段51(例えば水温センサ)が、バイパス配管よりもエンジン4側で排出側配管又は供給側配管のいずれか一方に設けられている。これにより、エンジン側の冷却水の温度変化を常に検出することができる。
【0032】
クロスフローファン30a、30b及び移動機構40は、エンジン4内の冷却水の水温状態を検出する水温状態検出手段51からの信号及び車両1の走行状態(減速中か否か)を検出する走行状態検出手段52からの信号が制御装置50へ入力され、これらの信号に基づき、制御装置50がモードを選択し、そのモードに適した信号を制御装置50から出力することで駆動する。走行状態検出手段52は、加速度等や制動動作を行ったことを検出することができる。例えば、タイヤに設けられた加速度センサ等によって加速度を検出する。
【0033】
図4は、本発明のグリルシャッター10が第1の走行風発電モードの場合の説明図である。第1の走行風発電モードは、クロスフローファン30a、30bが、制御装置50により閉位置で、回転がアンロックされた状態である。第1の走行風発電モードでは、車両1の減速、制動時等において、外気導入口21a、21bから流入した外気は、クロスフローファン30a、30bを回転して、エンジンルーム5内から掃気される。このときクロスフローファン30a、30bは発電機として機能し、走行エネルギーを回生する。
【0034】
車両1の上方に設けたクロスフローファン30aは、図中時計回りに回転し、外気導入口21aから流入した外気をエンジンルーム5内の上方へ掃気する。車両1の下方に設けたクロスフローファン30bは、図中反時計回りに回転し、外気導入口21bから流入した外気をエンジンルーム5内の下方へ掃気する。このとき、エンジンルーム5内に流入した外気は、ラジエータ3を回避するように上下方向に掃気されるため、外気がラジエータ3に直接当たることを抑制する。
【0035】
図5は、本発明のグリルシャッター10が第2の走行風発電モードの場合の説明図である。第1の走行風発電モードは、クロスフローファン30a、30bが、制御装置50により開位置で、回転がアンロックされた状態である。第2の走行風発電モードでは、車両1の減速、制動時等において、外気導入口21a、21bから流入した外気は、クロスフローファン30a、30bを回転して、エンジンルーム5内から掃気される。このときクロスフローファン30a、30bは発電機として機能し、走行エネルギーを回生する。
【0036】
車両1の上方に設けたクロスフローファン30aは、図中時計回りに回転し、外気導入口21aから流入した外気をエンジンルーム5内の下方へ掃気する。車両1の下方に設けたクロスフローファン30bは、図中反時計回りに回転し、外気導入口21bから流入した外気をエンジンルーム5内の上方へ掃気する。このとき、外気導入口21a、21bから流入した外気は直接ラジエータ3に当たり、エンジンルーム5内から掃気される。
【0037】
図6は、本発明のグリルシャッター10が通常冷却モードの場合の説明図である。第1の走行風発電モードは、クロスフローファン30a、30bが、制御装置50により開位置で、回転がロックされた状態で、発電機としては機能しない。車両1の走行状態において、外気導入口21a、21bから流入した外気は直接ラジエータ3に当たり、エンジンルーム5内から掃気される。
【0038】
図7は、本発明のグリルシャッター10が強制冷却モードの場合の説明図である。強制冷却モードは、クロスフローファン30a、30bが、制御装置50により開位置で、強制的に駆動するよう制御された状態である。制御装置50より電力が供給されて強制的に駆動し、強制冷却用ファンとして機能する。
【0039】
車両1の上方に設けたクロスフローファン30aは、図中反時計回りに回転し、外気導入口21aから取り入れられた外気はクロスフローファン30aを介して、ラジエータ3に送られ、ラジエータ3を強制冷却する。車両1の下方に設けたクロスフローファン30bは、図中時計回りに回転し、外気導入口21bから取り入れられた外気はクロスフローファン30bを介して、ラジエータ3に送られ、ラジエータ3を強制冷却する。
【0040】
図8は、本発明のグリルシャッターの制御フローチャートである。第1ステップS1はエンジン4内の水温Tに基づいて暖機状態を判定し、ステップS1AとステップS1Bを有する。第2ステップS2は減速しているかを判定し、ステップS2AとステップS2Bを有する。第3ステップS3は状況に応じてモードを選択し、ステップS3AとステップS3BとステップS3CとステップS3DとステップS3Eとを有する。第4ステップS4はエンジン4内の水温Tが第3設定温度より高い要冷却状態か否かを判定する。
【0041】
スタートして、ステップS1Aではエンジン4内の水温Tが第1設定温度T1(例えば90℃)未満かの判定を行い、水温Tが第1設定温度T1未満であればステップS1Bに、第1設定温度T1以上であればステップS2Bに進む。ステップS1Bでは水温Tが第2設定温度T2(例えば70℃)未満かの判定を行い、水温Tが第2設定温度T2未満であればステップS3Aのグリルシャッターモードとなり、第2設定温度T2以上であればステップS2Aに進む。ステップS2Aでは減速をしているかの判定を行い、減速していればステップS3Bの第1の走行風発電モードとなり、減速していなければステップS3Aのグリルシャッターモードとなる。ステップS2Bでは減速をしているか判定を行い、減速していればステップS3Cの第2の走行風発電モードとなり、減速していなければステップS4に進む。ステップS4では水温Tが第3設定温度T3(例えば95℃)未満か判定を行い、第3設定温度T3未満であればステップS3Dの通常冷却モードとなり、第3設定温度T3以上であればステップS3Eの強制冷却モードとなる。ステップS3Aのグリルシャッターモード、ステップS3Bの第1の走行風発電モード、ステップS3Cの第2の走行風発電モード、ステップS3Dの通常冷却モード、ステップS3Eの強制冷却モードからはリターンに進む。
【0042】
なお、エンジン4内の水温Tが第2設定温度T2未満(水温が第1設定温度となるまでエンジンを暖める第1暖機状態)を暖機状態、第2設定温度T2以上第1設定温度T1未満(水温Tが第2設定温度T2と第1設定温度T1と間にとどまる第2暖機状態)を半暖機状態、第1設定温度T1以上第3設定温度T3未満(水温Tが半暖機状態より高い第3暖機状態)を完全暖機状態、第3設定温度T3以上を要冷却状態とする。
【0043】
(グリルシャッターモード)
車両1のエンジン4の水温Tが第2設定温度T2未満の暖機状態であるか、水温Tが第2設定温度T2以上第1設定温度T1未満の半暖機状態であって車両が減速していない場合、図2に示すように、制御装置50は、アクチュエータ41を駆動して、クロスフローファン30aが外気導入口21aを閉位置までガイド42aを上昇させ、クロスフローファン30bが外気導入口21bを閉位置までガイド42bを下降させる。制御装置50は、クロスフローファン30a、30bが閉位置で、クロスフローファン30a、30bの回転をロックする。
【0044】
(第1の走行風発電モード)
水温Tが第2設定温度T2以上であり第1設定温度T1未満の半暖機状態であって車両が減速している場合、図4に示すように、制御装置50は、アクチュエータ41を駆動して、クロスフローファン30aが外気導入口21aを閉位置までガイド42aを上昇させ、クロスフローファン30bが外気導入口21bを閉位置までガイド42bを下降させる。制御装置50は、クロスフローファン30a、30bが閉位置で、クロスフローファン30a、30bの回転をアンロックする。制御装置50は、クロスフローファン30a、30bで発電した電力を図示しない蓄電池に貯える。
【0045】
(第2の走行風発電モード)
水温Tが第1設定温度T1以上第3設定温度T3未満の完全暖機状態であって車両が減速している場合、図5に示すように、制御装置50は、アクチュエータ41を駆動して、クロスフローファン30aが外気導入口21aを開位置までガイド42aを下降させ、クロスフローファン30bが外気導入口21bを開位置までガイド42bを上昇させる。制御装置50は、クロスフローファン30a、30bが開位置で、クロスフローファン30a、30bの回転をアンロックする。制御装置50は、クロスフローファン30a、30bで発電した電力を図示しない蓄電池に貯える。
【0046】
(通常冷却モード)
水温Tが第1設定温度T1以上第3設定温度T3未満の完全暖機状態であって車両が減速していない場合、図6に示すように、制御装置50は、アクチュエータ41を駆動して、クロスフローファン30aが外気導入口21aを開位置までガイド42aを下降させ、クロスフローファン30bが外気導入口21bを開位置までガイド42bを上昇させる。制御装置50は、クロスフローファン30a、30bが開位置で、クロスフローファン30a、30bの回転をロックする。
【0047】
(強制冷却モード)
水温Tが第3設定温度T3以上の要冷却状態であって車両が減速していない場合、図7に示すように、制御装置50は、アクチュエータ41を駆動して、クロスフローファン30aが外気導入口21aを開位置までガイド42aを下降させ、クロスフローファン30bが外気導入口21bを開位置までガイド42bを上昇させる。制御装置50は、クロスフローファン30a、30bに電力を供給して強制的に駆動し、エンジン4の冷却状態が最適となるようにラジエータ3を強制冷却する。
【0048】
次に、本発明のグリルシャッター10の効果について説明する。
【0049】
グリルシャッター10の制御方法では、車両1の走行状態に合わせて、クロスフローファン30a、30bを開位置又は閉位置に移動して外気導入口21a、21bを開閉し、クロスフローファン30a、30bをロック又はアンロック若しくは駆動力を与える強制駆動のいずれか1つの制御を行うことで、グリルシャッター機能と発電機能とが一体で得られる。よって、従来の電動冷却ファンとグリルシャッター10とを別々に設ける場合と比べてエンジンルーム5内のスペースが広くなり重量の増大を抑え、状況に合わせてモードを選択し燃費を向上できる。また、クロスフローファン30a、30bは、ラジエータグリル20a、20bとラジエータ3との間に設けられる為、ラジエータグリル20a、20bから導入された外気は直接クロスフローファン30a、30bに当たり、従来よりも高い発電効率が得られる。
【0050】
また、クロスフローファン30a、30bの回転を許容するアンロック又は駆動力を与える強制駆動の制御を行うことで、強制駆動時には、より多くの外気を直接ラジエータ3に当て、冷却性能を上げることができる。
【0051】
また、グリルシャッターモードの場合、クロスフローファン30a、30bは、閉位置にあり且つロックされ、車両走行時にラジエータへの外気の導入が抑制されエンジン4の早期暖機が可能になる。更に、外気導入口21a、21bを塞ぐことで走行抵抗が低減して、燃費向上が図れる。
【0052】
また、第1の走行風発電モードの場合、クロスフローファン30a、30bは、閉位置にあり且つアンロックされるため、車両1の減速時に外気によりクロスフローファン30a、30bは回転して、走行風発電が可能で、走行エネルギー回生により燃費向上が図れる。更に、走行エネルギー回生時には、走行抵抗が増加するため、制動効果が得られる。
【0053】
また、通常冷却モードの場合、クロスフローファン30a、30bは、開位置にあるため、外気は直接ラジエータに当たり、冷却性能を損なわない。
【0054】
また、第2の走行風発電モードの場合、クロスフローファン30a、30bは、開位置にあり且つアンロックされるため、外気は直接ラジエータ3に当たり、冷却性能を損なわない。更に、車両1の減速時に外気によりクロスフローファン30a、30bは回転して、走行風発電が可能で、走行エネルギー回生により燃費向上が図れる。更に、走行エネルギー回生時には、走行抵抗が増加するため、制動効果が得られる。
【0055】
また、強制冷却モードの場合、クロスフローファン30a、30bは、開位置にあるため、外気は直接ラジエータ3に当たり、冷却性能を損なわない。更に、クロスフローファン30a、30bを強制駆動するため、より多くの外気を直接ラジエータ3に当て、冷却性能を上げることができる。
【0056】
また、電動冷却ファンにクロスフローファン30a、30bを用いるため、ファンの枚数を減らし、開位置又は閉位置に移動する構造をとっても省スペースでかつ、モーターの個数も減らすことができる。さらに、外気導入口21a、21bからの外気の多くを回生することが可能になり、走行エネルギー回生により燃費向上が図れる。
【0057】
また、本発明のグリルシャッター10では、クロスフローファン30a、30bを開位置又は閉位置に移動して外気導入口21a、21bを開閉し、クロスフローファン30a、30bをロック又はアンロックすることで、グリルシャッター機能と発電機能とが一体で得られる。よって、従来のクロスフローファン30a、30bとグリルシャッター10とを別々に設ける場合と比べて、重量の増大を抑えることができる。また、クロスフローファン30a、30bは、ラジエータグリル20a、20bとラジエータ3との間に設けられる為、ラジエータグリル20a、20bから導入された外気は直接クロスフローファン30a、30bに当たり、従来よりも高い発電効率が得られる。
【0058】
本実施例では、通常冷却モードと強制冷却モードの判定に水温Tを用いているが、エンジンの油温、排気温といった温度を判定に用いても良い。
【0059】
また、通常冷却モードと強制冷却モードの判定に水温Tを用いているが、エンジン出力、エンジントルク、車速等から、車両の走行状態を検知して判定に用いても良い。
【0060】
また、通常冷却モードと強制冷却モードの判定に水温Tを用いているが、エアコンのオンオフを判定に用いても良い。
【0061】
また、通常冷却モードと強制冷却モードの判定に用いる、第1設定温度T1をサーモスタットの全開での開弁温度、第2設定温度T2をサーモスタットの開弁し始めの温度、としても良い。
【0062】
また、2個のクロスフローファン30a、30bを用いたが、1個又は3個以上でもよい。
【0063】
また、クロスフローファン30a、30bはアクチュエータ41を中心に上下方向対象に移動したが、別々に移動してもよい。
【0064】
また、クロスフローファン30a、30bの移動は上下方向に限定されず、他の方向(例えば、左右方向)でもよい。
【0065】
また、電動冷却ファンにクロスフローファン30a、30bを用いたが、これには限定されずに他の形式のファン(例えば、軸流ファン等)でもよい。
【0066】
また、移動機構40は、アクチュエータ41によりガイド42a、42bを上下方向に移動する構成であるが、これには限定されず、例えばナットが螺合するガイドをアクチュエータで回転して、ナットに取り付けた電動冷却ファンを上下方向に移動する等の構成でもよい。
【0067】
また、エンジン4の強制冷却は、クロスフローファン30a、30bが閉位置の場合に限定されず、開位置又は開位置と閉位置との間であってもよい。
【符号の説明】
【0068】
1 車両
3 ラジエータ
10 グリルシャッター(車両用グリルシャッター)
20a、20b ラジエータグリル
21a、21b 外気導入口
30a、30b クロスフローファン(電動冷却ファン)
50 制御装置(制御手段)
51 水温状態検出手段
52 走行状態検出手段
S1 第1ステップ
S2 第2ステップ
S3 第3ステップ
S4 第4ステップ
T 水温
T1 第1設定温度
T2 第2設定温度
T3 第3設定温度

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ラジエータに外気を導入する外気導入口に設けられるラジエータグリルと、
前記ラジエータグリルと前記ラジエータの間に設けられ、発電機能を有する電動冷却ファンと、
エンジン内を通る冷却水の水温状態を検出する水温状態検出手段と、
車両の走行状態を検出する走行状態検出手段と、
前記電動冷却ファンを制御する制御手段とを備え、
前記制御手段は、
前記水温状態検出手段による水温の状況に基づき、暖機状態を前記水温が第1設定温度となるまで前記エンジンを暖める第1暖機状態と、前記第1暖機状態よりも前記水温が高く、前記水温が第2設定温度内にとどまる第2暖機状態と、前記第2暖機状態よりも前記水温が高い第3暖機状態とのいずれかに区分する第1ステップと、
前記第2暖機状態または前記第3暖機状態の場合、前記走行状態検出手段により車両が減速中か否かを判定する第2ステップと、
前記第1ステップと、前記第2ステップとの判定に基づいて前記電動冷却ファンを前記外気導入口が閉じる閉位置と前記外気導入口が開く開位置とを移動させ、前記電動冷却ファンの回転を規制するロック又は回転を許容するアンロック若しくは前記電動冷却ファンへ駆動力を与える強制駆動のいずれか1つの制御を行うモードを選択する第3ステップと、
を有する車両用グリルシャッターの制御方法。
【請求項2】
前記第1ステップで前記第2暖機状態と判定され、前記第2ステップで前記車両が減速中であると判定された場合は、前記第3ステップで第1の走行風発電モードと判定されると、前記電動冷却ファンは、前記閉位置にあり且つアンロックされる、
ことを特徴とする請求項1に記載の車両用グリルシャッターの制御方法。
【請求項3】
前記第1ステップで前記第3暖機状態と判定され、前記第2ステップで前記車両が減速中であると判定された場合は、前記第3ステップで第2の走行風発電モードと判定されると、前記電動冷却ファンは、前記開位置にあり且つアンロックされる、
ことを特徴とする請求項1に記載の車両用グリルシャッターの制御方法。
【請求項4】
前記第1のステップで前記第1暖機状態と判定される場合又は前記第1のステップで前記第2暖機状態と判定され、前記第2のステップで前記車両が減速中ではないと判定された場合は、前記第3ステップでグリルシャッターモードと判定されると、前記電動冷却ファンは、前記閉位置にあり且つロックされる、
ことを特徴とする請求項1に記載の車両用グリルシャッターの制御方法。
【請求項5】
前記制御手段は、前記第2ステップと前記第3ステップとの間で、前記第3暖機状態であって前記車両が減速中ではないと判定されたとき、前記水温が第3設定温度より高い要冷却状態かどうかを判定する第4ステップを有する、
ことを特徴とする請求項1に記載の車両用グリルシャッターの制御方法。
【請求項6】
前記第1のステップで前記第3暖機状態と判定され、前記第2のステップで前記車両が減速中ではないと判定され、前記第4のステップで前記第3設定温度より低い前記第3暖機状態と判定された場合は、前記第3ステップで通常冷却モードと判定されると、前記電動冷却ファンは、前記開位置にあり且つロックされる、
ことを特徴とする請求項5に記載の車両用グリルシャッターの制御方法。
【請求項7】
前記第1のステップで前記第3暖機状態と判定され、前記第2のステップで前記車両が減速中ではないと判定され、前記第4のステップで前記第3設定温度より高い前記要冷却状態と判定された場合は、前記第3ステップで強制冷却モードと判定されると、前記電動冷却ファンは、前記開位置にあり且つ前記電動ファンを強制駆動させる、
ことを特徴とする請求項5に記載の車両用グリルシャッターの制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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