説明

車両用コネクタ保護構造

【課題】本発明は、車両用コネクタ保護構造に係り、車両衝突等に伴うコネクタ破損時における絶縁低下の発生を抑制することにある。
【解決手段】車両に搭載され、配線同士を接続するコネクタを保護する保護部材を備える車両用コネクタ保護構造において、保護部材は、コネクタの全体を覆いかつ伸張可能な絶縁カバーであり、所定以上の高圧電源に接続される高圧配線の端部に固着される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コネクタの保護構造に係り、特に、車両に搭載され、配線同士を接続するコネクタを保護部材で保護するうえで好適な車両用コネクタ保護構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、配線が接続されたコネクタを覆う保護部材を備えるコネクタ保護構造が知られている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1記載のコネクタ保護構造において、保護部材は、漏斗状に形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平8−195246号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記した特許文献1記載のコネクタ保護構造では、保護部材がコネクタを覆っているが、コネクタ全体を包み込むものではなく、コネクタの一部が外部に臨むように保護部材の一部が開口している。このため、かかるコネクタ保護構造が車両に搭載された場合において、車両衝突等に伴って配線が引っ張られてコネクタが破損した際に、保護部材の開口部からコネクタ端子が外部に露出し易くなり、その結果として、コネクタにおける絶縁性が低下する不都合が生じ得る。
【0005】
本発明は、上述の点に鑑みてなされたものであり、車両衝突等に伴うコネクタ破損時における絶縁低下の発生を抑制することが可能な車両用コネクタ保護構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的は、車両に搭載され、配線同士を接続するコネクタを保護する保護部材を備える車両用コネクタ保護構造であって、前記保護部材は、前記コネクタの全体を覆いかつ伸張可能な絶縁カバーである車両用コネクタ保護構造により達成される。
【0007】
この態様の発明において、配線同士を接続するコネクタを保護する保護部材は、コネクタの全体を覆いかつ伸張可能な絶縁カバーである。かかる構造においては、車両衝突等に伴ってコネクタが破損した際に保護部材が伸張することで、そのコネクタ全体を覆い易い。従って、本発明によれば、コネクタの破損時における絶縁低下の発生を抑制することができる。
【0008】
尚、上記した車両用コネクタ保護構造において、前記保護部材は、所定以上の高圧電源に接続される高圧配線の外部被膜に固着されることとしてもよい。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、車両衝突等に伴うコネクタ破損時における絶縁低下の発生を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の一実施例である車両用コネクタ保護構造の断面図である。
【図2】本実施例の車両用コネクタ保護構造の、車両衝突前と車両衝突後とを比較するための断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を用いて、本発明に係る車両用コネクタ保護構造の具体的な実施の形態について説明する。
【0012】
図1は、本発明の一実施例である車両用コネクタ保護構造10の断面図を示す。また、図2は、本実施例の車両用コネクタ保護構造10の、車両衝突前と車両衝突後とを比較するための断面図を示す。尚、図2(A)には車両衝突前を、また、図2(B)には車両衝突後を、それぞれ示す。
【0013】
本実施例の車両用コネクタ保護構造10は、車両に搭載された、コネクタ12を保護する構造である。コネクタ12は、銅線などの金属線からなる2つの電気配線14,16同士を接続する部材であり、例えば断面が方形状や円状,楕円状となる部材である。コネクタ12は、電気配線14の一端が接続する差込口としての凸状の雄コネクタ18と、電気配線16の一端が接続する凹状の雌コネクタ20と、からなり、両コネクタ18,20が嵌合可能な形状を有している。
【0014】
電気配線14の他端は、A/Cコンプレッサなどの高電圧で作動し得る車載電気機器に接続されている。尚、A/Cコンプレッサは、通常、エンジンルーム内においてファンモータの車両後方かつエンジンの車両前方或いは側方に配置されて、エンジンにボルト固定される。また、電気配線16の他端は、電気配線14の他端に接続された車載電気機器を制御する電子制御ユニットや、かかる車載電気機器に電源供給を行うイグニション電源やアクセサリ電源,昇圧電源(インバータ)に接続されている。電気配線16は、所定以上の高圧電源(例えば60ボルト)に接続される高圧配線である。尚、電子制御ユニットや電源は、通常、車室下などに配置されて、車体に固定される。
【0015】
電気配線14,16は、コネクタ12を介して連結される。コネクタ12は車載電気機器近傍に配置され、雄コネクタ18と雌コネクタ20との嵌合は車載電気機器近傍で行われる。電気配線14,16は、車載電気機器と電子制御ユニットとの間で信号通信を行う通信線や車載電気機器へ電源供給を行う電源線を纏めたワイヤハーネスである。電気配線14,16には、所定以上に高い高電圧(例えば60ボルト)が印加され得る。
【0016】
上記したコネクタ12の構成において、雄コネクタ18と雌コネクタ20とが互いに挿入されて嵌合されると、車載電気機器と電子制御ユニットや電源とが電気的に接続されることで、両者間の信号通信や電源供給が可能となり、車両走行時を含む車両起動中に車載電気機器の作動が可能となる。
【0017】
車両用コネクタ保護構造10は、上記したコネクタ12を保護する保護カバー22を備えている。保護カバー22は、コネクタ12(具体的には、雌コネクタ20)全体を覆い、そのコネクタ12全体を収容する略筒状の絶縁性樹脂等で成形された絶縁カバーである。保護カバー22は、蛇腹状に形成されており、雄コネクタ18と雌コネクタ20との挿入方向に伸縮可能に延在する伸縮性を有する部材である。保護カバー22の伸縮方向の一端は、高圧配線である電気配線16の外部被膜に接着剤などで固着されており、閉塞されている。また、保護カバー22の伸縮方向の他端は、雄コネクタ18の外壁(ストッパ等)に取り付け固定されている。保護カバー22は、雄コネクタ18と雌コネクタ20とが嵌合しかつ電気配線16の外部被膜への固着及び雄コネクタ18の外周への取り付けが行われた状態では、伸縮方向に伸張可能である。
【0018】
上記した車両用コネクタ保護構造10においては、図2(B)に示す如く、車両が衝突した際などに電気配線14,16同士が引っ張られるなどしてコネクタ12が破損し雄コネクタ18と雌コネクタ20との嵌合が外れた場合、保護カバー22が、その伸縮方向の他端が雄コネクタ18から外れることでその伸縮方向の一端を支点にして伸縮方向へ伸張する。この場合、保護カバー22は、伸張しない場合に比べて雌コネクタ20の全体を覆い易くなる。
【0019】
このため、仮にコネクタ12の破損により雌コネクタ20がその中途で破断することで高圧配線である電気配線16がその雌コネクタ20の外部に露出したとしても、その雌コネクタ20外部へ露出した電気配線16が保護カバー22の外部へ露出するのを抑制することができ、その結果として、その電気配線16が鉄製の車体ボディに触れる電気的短絡が生ずるのを防止することができる。従って、本実施例の車両用コネクタ保護構造10によれば、車両衝突などに伴うコネクタ12の破損時において、高圧が印加され得る電気配線16の絶縁低下が発生するのを抑制することが可能であり、その絶縁性を確保することが可能である。
【0020】
尚、上記の実施例においては、電気配線14,16が特許請求の範囲に記載した「配線」に、電気配線16が特許請求の範囲に記載した「高圧配線」に、保護カバー22が特許請求の範囲に記載した「保護部材」に、それぞれ相当している。
【0021】
ところで、上記の実施例においては、保護カバー22の形状を蛇腹状としたが、本発明はこれに限定されるものではなく、保護カバー22は通常時に伸張可能に取り付けられて、コネクタ12の破損時に伸張して雌コネクタ20を覆うものであれば、絶縁性樹脂等の弾性部材であってもよい。
【0022】
また、上記の実施例においては、電気配線14を雄コネクタ18に接続し、かつ、高圧配線である電気配線16を雌コネクタ20に接続したうえで、保護カバー22をコネクタ12破損時に雌コネクタ20の外周を覆うものとしたが、本発明はこれに限定されるものではなく、高圧配線である電気配線16が雄コネクタに接続される場合は、保護カバー22をコネクタ12破損時にその雄コネクタの外周を覆うものであればよい。
【符号の説明】
【0023】
10 車両用コネクタ保護構造
12 コネクタ
14,16 電気配線
18 雄コネクタ
20 雌コネクタ
22 保護カバー


【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載され、配線同士を接続するコネクタを保護する保護部材を備える車両用コネクタ保護構造であって、
前記保護部材は、前記コネクタの全体を覆いかつ伸張可能な絶縁カバーであることを特徴とする車両用コネクタ保護構造。
【請求項2】
前記保護部材は、所定以上の高圧電源に接続される高圧配線の外部被膜に固着されることを特徴とする請求項1記載の車両用コネクタ保護構造。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−146195(P2011−146195A)
【公開日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−4923(P2010−4923)
【出願日】平成22年1月13日(2010.1.13)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】